JP6256805B2 - 吊りクランプ用幅調整治具 - Google Patents

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本発明は、鋼材の如き重量運搬物を挟持し吊り上げるためのクランプにおける治具に関し、特に、運搬物の大きさに対応して挟持幅を調整するための吊りクランプ用の幅調整治具に関する。
掴み部を有さない重量運搬物を吊り上げてクレーンやフォークリフトなどで運搬する吊り上げ・運搬作業のために吊りクランプが使用される。特に、棒状の重量運搬物を運搬するための吊りクランプの1つの種類において、一対の円弧状のアームの一端部を回動自在に軸支するとともにその円弧内側を対向させて備え、アームを回動させるようにした吊りクランプが知られている。一対のアームを回動させながらその間の幅を変化させて円弧内側に棒状の運搬物を側部から包み込むようにして挟持し固定(クランピング)するのである。吊りクランプに固定された運搬物はこの吊りクランプを介してクレーンなどの搬送機構に取り付けられて運搬される。かかる重量運搬物用の吊りクランプでは、運搬物が落下しないような、強固な挟持・固定機構が要求される。
例えば、特許文献1では、このような吊りクランプとして、運搬物を挟持し固定する一対の円弧状アームの軸支側の端部を外方に向けて延長させた下部リンクと、該下部リンクの延長端部の幅を「てこの原理」によって変化させるように組み合わせられた上部リンクと、を有する丸棒運搬用の吊りクランプを開示している。下部リンクと上部リンクとは、パンタグラフの如き4節のリンク機構を構成し、上部リンクをクレーンで吊り上げると、アームの自重によって上部リンク同士の幅が小さくなり、これにより下部リンク同士の幅も小さくなるように回動する。「てこの原理」によって下部リンクの円弧状アーム同士が近接しようとして、アームの下側左右及び上側左右の4カ所に設けられた支持部が丸棒をそれぞれ強固に点支持して確実に挟持する。そして連結ピンで固定されるロックレバーによって上部リンクの幅を固定すると丸棒は円弧状アームの間にしっかりと固定できて、吊りクランプごとクレーンに取り付けられて吊り上げて運搬できるのである。
ところで、吊りクランプの一対の円弧状アームの間に運搬物を挟持し固定しようとする場合において、アーム同士が完全に閉じた状態でその間に形成される幅(隙間)よりも断面寸法の小さい運搬物では、これを挟持することはできない。また、アーム同士が開きすぎた状態でないと運搬物を挟持できないほどに大きい断面寸法を有する運搬物では、やはりこれを固定することができない。また、特許文献1のように、アームの内側に板状の支持部を取り付けて運搬物の軸線方向へのブレを抑制させるような吊りクランプでは、運搬物がアームの間で所定通りに位置し支持部に正確に当接できるような断面寸法でないと、やはり安定して挟持し固定することができない。つまり、支持部の位置や形状及び大きさによっても挟持し固定できる運搬物の断面寸法が異なり得るのである。
そこで、吊りクランプはアーム同士を完全に閉じた状態での幅(隙間)やアームの長さ、支持部の位置など変えて挟持できる運搬物の寸法の範囲を変えた数種類を予め用意し、運搬物の大きさに合わせて適宜選択して用いている。
実開平7−12380号公報
一方、運搬物の吊り上げ・運搬作業において、運搬物の寸法が異なるごとに重量物である吊りクランプをクレーン等で作業場所まで運んでくることは、作業効率の低下を招く。そこで、広い寸法範囲の運搬物に対応して、強固に運搬物を挟持し固定できる吊りクランプが求められたが、吊りクランプを更新するためのコストが必要となる。故に、既存の吊りクランプに取り付け可能な治具が求められた。
本発明は、上記したような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、広い寸法範囲の運搬物に対応して、強固に運搬物を挟持・固定できる吊りクランプ用の幅調整治具を提供することにある。
本発明による吊りクランプ用幅調整治具は、それぞれの一端部を回転軸の周りで回動自在に軸支させた一対の円弧状のアームを回転近接させて円弧内側の支持部に運搬物を点支持させる吊りクランプの幅調整治具であって、前記支持部に着脱自在に与えられて、前記円弧内側に向けて突出する曲面を与えることを特徴とする。
かかる発明によれば、幅調整治具を支持部に取り付けることでアームの円弧内側に向けて曲面を突出させるので、かかる曲面の広範囲において運搬物を強固に点支持することを可能とする。つまり、幅調整治具によって、より小さな断面寸法の運搬物を強固に挟持・固定できて、結果として広い寸法範囲の運搬物に対応して、強固に運搬物を挟持・固定できるのである。
上記した発明において、前記曲面は引きバネを間に与えられた一対の丸管によって与えられ、前記丸管の軸線に沿って与えられた角管に角材を挿入することで前記丸管の一対を前記アームの前記円弧内側に配置し、前記引きバネを前記アームの円弧外側に引き回してこれを前記支持部に固定することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、幅調整治具を着脱自在するとともに、丸管による曲面を円弧内側に向けて突出させることができる。つまり、簡単な構成でありながら、広い寸法範囲の運搬物に対応して、強固に運搬物を挟持・固定できるのである。
上記した発明において、前記角材は前記アームの前記円弧内側の前記支持部に固定されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、支持部に固定されている角材により簡便に幅調整治具を取り付けることができるとともに、運搬物のより強固な点支持を可能とする。その結果、広い寸法範囲の運搬物に対応して、より強固に運搬物を挟持・固定できる。
上記した発明において、前記丸管は前記軸線を前記角材の長手方向中心線とオフセットさせて固定されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、幅調整治具の向きを変えて取り付けることで強固な挟持・固定の可能な運搬物の断面寸法の範囲を変化させることができ、より広い寸法範囲の運搬物に対応できる。
本発明による幅調整治具の斜視図である。 幅調整治具の要部の正面図である。 幅調整治具を用いる吊りクランプの(a)正面図及び(b)側面図である。 幅調整治具を固定した吊りクランプの要部の(a)正面図及び(b)側面図である。 幅調整治具を固定した吊りクランプの正面図である。 幅調整治具を異なる向きで固定した吊りクランプの正面図である。
まず、本発明による1つの実施例である幅調整治具について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、幅調整治具1は、一対の治具本体10と、これを互いに接続する引きばね11とを含む。治具本体10は、略円筒形の管体である丸管部2と、丸管部2の外周面に主面を固定された平板部材3と、平板部材3の丸管部2に固定された主面とは反対側の主面に固定された門型断面を有する門型部材4と、門型部材4に固定されたアイボルト状の環状部5とを含む。丸管部2と平板部材3、平板部材3と門型部材4、及び、門型部材4と環状部5のそれぞれは、例えば溶接によって固定される。環状部5は引きばね11の両端に接続され、これによって治具本体10同士の接続をなしている。
図2を併せて参照すると、門型部材4は、平板部材3とともに略角管体形状である角管部9を形成する。このとき、角管部9の内部空間の対称軸である軸線C2は丸管部2の内部空間の中心線である軸線C1と平行になっている。また、軸線C1及び軸線C2は、平板部材3の主面と平行な方向に幅Wだけオフセットされている。角管部9には、後述するように角材である押さえ板24a(図3参照)を挿入させてその内部空間に嵌合させるので、押さえ板24aの長手方向の中心線は軸線C2と重なる。つまり、軸線C1は、押さえ板24aの長手方向の中心線に対してもオフセットされる。なお、角管部9は両側の開口のどちらからでも押さえ板24aを挿入可能であり、後述するように冶具本体10を反転させ得る。
次に、幅調整治具1を着脱させる吊りクランプについて、図3を用いて詳細に説明する。
図3に示すように、吊りクランプであるクランプ20は、クレーンなどに接続される吊り環25とその下端に軸体31によって回動自在に取り付けられる一対の上部リンク21と、上部リンク21のそれぞれの下端に一対の軸体32によって回動自在に取り付けられる一対の下部リンク22とを含む。下部リンク22はそれぞれの下端で軸体33によって互いに回動自在に軸支され、上部リンク21とともにパンタグラフの如き4節の略菱形(パンタグラフ形)のリンク機構を構成する。
下部リンク22の下端には、下部リンク22のそれぞれを下方に延長して一体に形成される一対の円弧状のアーム23が備えられ、円弧内側を互いに対向させている。また、アーム23の円弧内側の上部及び下部のそれぞれには、平板状の角材である押さえ板24a及び24bを一対ずつ備える。押さえ板24a及び24bは、その主面の法線をアーム23の円弧の接線に垂直な方向に向けており、アーム23の内側に挟持する棒状の運搬物としての丸棒材Bの外側面に主面を当接させることができる。つまり、押さえ板24a及び24bはアーム23上で丸棒材Bを支持する支持部に設けられている。
なお、軸体32の一方は、ロックレバー26の一端を回動自在に軸支し、軸体32の他方はロックレバー26の他端側の長孔27にスライド自在に挿通されている。長孔27において、ロックレバー26の他端側の端部には軸体32を係合させる溝部27aが設けられている。
続いて、クランプ20への幅調整治具1の取り付け方法について、図4を用いて詳細に説明する。
図4に示すように、アーム23の一方において、上側の押さえ板24aの両方の端部を一対の治具本体10の角管部9にそれぞれ挿入させ、引きばね11をアーム23の円弧外側に引き回す。引きばね11は、挿入させた押さえ板24aからの治具本体10の脱落を防止しつつ、幅調整治具1の着脱を自在とする。また、引きばね11により平板部材3を押さえ板24aに押し付けるようにして治具本体10のそれぞれをアーム23に固定できる。固定された治具本体10は、丸管部2をアーム23の円弧内側に位置させ、丸管部2の外周面である曲面を円弧内側に向けて突出させる。このとき、治具本体10のそれぞれは、丸管部2の軸線C1のオフセットされている向きを合わせて固定される。これにより、一対の治具本体10のそれぞれの軸線C1を重ねて、後述する丸棒材B1などの棒状の運搬物の外側面に対して、丸管部2の外周面を揃えるのである。ここでは丸管部2の軸線C1を角管部9の軸線C2よりアーム23の回動軸である軸体33に近い側に位置させる向きで治具本体10を固定した場合を示している。同様に、アーム23の他方にも幅調整治具1を固定する。
次に、クランプ20の動作について図5及び図6を用いて詳細に説明する。
図5(a)に示すように、クランプ20は、吊り環25をクレーン等に接続されて、アーム23の先端を接地させるなどして上部リンク21及び下部リンク22を回動させ、アーム23の互いを開放ロック位置まで離間させる。すると、ロックレバー26の長孔27内の溝部27a(図3参照)に軸体32が係合する。すなわち、開放ロックの状態となる。これにより、クレーン等によりクランプ20を吊り上げても、アーム23の互いは離間したまま開放ロック位置で保持される。続いて、運搬物として例えば丸棒材B1の外側面を挟むようにアーム23のそれぞれを位置させ、ロックレバー26を操作して軸体32と溝部27aとの係合を解除させる。ここで、クランプ20を吊り環25によって吊り上げると、アーム23同士を近接させように下部リンク22が回動する。
すると、図5(b)に示すように、アーム23同士が近接して円弧内側に丸棒材B1を挟む。丸棒材B1は、その外側面の下側に押さえ板24bを左右から当接させ、上側に治具本体10の丸管部2の外周面を左右から当接させる。つまり、丸棒材B1は下側2箇所と上側2箇所との合計4箇所で点支持される。治具本体10の平板部材3は押さえ板24aによって支持されるため、丸管部2を強固に支持できて、丸棒材B1を強固に点支持できる。よって、幅調整治具1を固定したクランプ20によって運搬物である丸棒材B1を強固に挟持・固定できる。
ところで、上記した図5(b)では、アーム23同士を完全に閉じて最も近接させた状態を示している。すなわち、幅調整治具1の治具本体10を上記した向きで固定した場合において、強固に挟持・固定できる最小の断面寸法を有する丸棒材B1を挟持した場合を示している。このとき、幅調整治具1を外すと、アーム23同士をこれ以上近接させることはできないので、上側2箇所の支持ができなくなる。つまり、幅調整治具1なしでは、丸棒材B1を挟持し固定することはできなくなる。換言すれば、幅調整治具1によって、より小さな断面寸法の丸棒材をクランプ20で強固に挟持・固定できるのである。特に、幅調整治具1は、丸管部2の外周面の曲面をアーム23の円弧内側に向けて突出させているので、かかる曲面の広範囲において丸棒材B1などの運搬物を強固に点支持することを可能とする。つまり、幅調整冶具によって広い寸法範囲の運搬物を強固に点支持し得る。結果として、クランプ20は、幅調整冶具を用いない場合も含めて、より広い寸法範囲の運搬物に対応して、これを強固に挟持・固定できる。
また、図6に示すように、治具本体10の向きを変えることもできる。すなわち、オフセットされた軸線C1(図2参照)を角管部9の軸線C2よりアーム23の回動軸である軸体33から離間する側に位置させる向きとなるよう治具本体10を反転させて固定する。すると、治具本体10を反転させる前(図5(b)参照)に比べ、反転の対称線でもある軸線C2に対する軸線C1のオフセットに応じて丸管部2の外周面が下方に移動し、丸棒材B1より小さな断面寸法の丸棒材B2を強固に挟持・固定できる。すなわち、丸管部2の軸線C1を角管部9の軸線C2からオフセットさせたことで、治具本体10を反転させて強固な挟持・固定の可能な運搬物の断面寸法の範囲を変化させることができる。結果として、クランプ20はより広い寸法範囲の運搬物に対応できる。
例えば、幅調整治具を用いない場合に、強固な挟持・固定の可能な丸棒材の断面の直径を150〜220mmとするクランプ(φ150〜220)と、220〜300mmとするクランプ(φ220〜300)との2種類の吊りクランプがある。幅調整冶具を用いないのであれば、挟持する丸棒材の断面の直径に応じて、これら2種類の吊りクランプを交換する必要がある。ここで、クランプ(φ220〜300)に幅調整治具1を取り付けたところ、断面の直径を130〜220mmとする丸棒材でも強固に挟持・固定することができた。すなわち、クランプ(φ220〜300)の1種類であっても、幅調整治具1を、適宜、取り付け又は取り外しすることで、強固に挟持・固定の可能な丸棒材の断面の直径を130〜300mmの範囲まで広げることができた。これにより、運搬物の寸法の異なる場合でも、重量物である吊りクランプを交換せずに幅調整治具の着脱だけで対応できる機会が増える。つまり、作業効率を向上させ得る。
本実施例では、治具本体10は押さえ板24aを角管部9に挿入させることでアーム23に固定されたが、押さえ板のないクランプにおいても角管部9に押さえ板24aの代わりに角材を挿入させることでアームに固定可能である。すなわち、引きばね11をアーム23の円弧外側に引き回し、角管部9に挿入した角材をアームの円弧内側に押し付けて固定するのである。
なお、押さえ板24aを角管部9に挿入させる角材として用いる場合、押さえ板24aはアーム23に固定されているので、引きばね11をアーム23の円弧内側に引き回すこともできる。
また、上記したように、引きばね11と角材との組み合わせによって幅調整治具1をアームに着脱自在とするので、強度設計をなされたアームに孔開け等の加工を施すことなく幅調整治具1を固定することができる。
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく改変例について説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例を見出すことができるだろう。
1 幅調整治具
2 丸管部
5 環状部
9 角管部
10 治具本体
20 クランプ
24a 押さえ板(角材)

Claims (2)

  1. それぞれの一端部を回転軸の周りで回動自在に軸支させた一対の円弧状のアームを回転近接させて円弧内側の支持部に運搬物を点支持させる吊りクランプの幅調整治具であって、
    前記支持部に着脱自在に与えられて、前記円弧内側に向けて突出する曲面を与え
    前記曲面は引きバネを間に与えられた一対の丸管によって与えられ、前記丸管の軸線に沿って与えられた角管に、前記アームの前記円弧内側の前記支持部に固定された角材を挿入することで前記丸管の一対を前記アームの前記円弧内側に配置し、前記引きバネを前記アームの円弧外側に引き回してこれを前記支持部に固定することを特徴とする吊りクランプ用幅調整治具。
  2. 前記丸管の軸線は、前記角材の長手方向の中心線に対して、前記角管の主面に平行な方向で異なる位置にあることを特徴とする請求項1に記載の吊りクランプ用幅調整治具。

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