しかしながら、上記従来の装置は、マスタシリンダの液圧センサを有する車両にのみ適用可能である。更に、マスタシリンダの液圧センサは、スイッチに比べて高価であり、制動判定のために新たに液圧センサを設けることは車両コストを上昇させる。
本発明は、上記した問題に対処するためになされ、その目的の一つは、液圧センサを用いることなく制動判定を精度よく行うことができる車両を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による車両は、制動操作部材、制動装置、スイッチ、減速度取得部及び判定装置を備える。
前記制動操作部材は、例えば、ブレーキペダル及びブレーキレバー等であり、車両の制動を行うときに運転者により操作される。
前記制動装置は、例えば、油圧回路及びホイールシリンダ等を含むブレーキユニット、並びに、回生モータを有するブレーキユニット等を含む装置であり、前記制動操作部材に対する操作に応じて車輪に制動力を発生させる。
前記スイッチは、前記制動操作部材が操作されたとき同制動操作部材の操作に連動して第1状態(例えば、オフ状態)から第2状態(例えば、オン状態)へと接続状態が切り替わる。前記スイッチは、例えば、ストップランプを点灯させるためのストップランプスイッチ及びクルーズコントロールを停止させるためのクルーズコントロールキャンセルスイッチ等である。
前記減速度取得部は、車両の減速度を取得する。この減速度取得部は、例えば、車速の単位時間あたりの変化量(車速の時間微分値に相当する値)を減速度として取得するように構成され得る。この場合、車速は、略総ての車両に搭載されている「車速センサ及び車輪速センサ等」の一以上からの信号に基づいて取得することができる。或いは、減速度取得部は、例えば、多くの車両に搭載されている加速度センサ(実質的には、減速度センサ)からの信号に基づいて減速度を取得するように構成され得る。
減速度取得部が取得する減速度は、上述したように取得される「減速度そのもの」であってもよい。更に、減速度取得部が取得する減速度は、その減速度を取得すべき条件が成立している特定の期間内において複数回の時点で取得された減速度の「最大値、単純平均値、加重平均値及び一次フィルタ等のフィルタ処理がなされた値等」であってもよい。換言すると、ある時点で求められる減速度を瞬時減速度と称呼すれば、減速度取得部が取得する減速度は「瞬時減速度に相関を有する(瞬時減速度に応じて変化する)」パラメータと言うこともできる。
前記判定装置は、操作後減速度の大きさが所定の操作後閾値よりも大きいとき、前記制動装置が前記制動力を発生させている状態(即ち、制動状態)が発生していると判定する。操作後減速度は、「前記スイッチの状態が前記第1状態から前記第2状態へと切り替わった時点(即ち、切替り時点)よりも後であって同スイッチの状態が前記第2状態であるときに前記減速度取得部により取得される減速度」である。従って、「操作前減速度」は、減速度取得部が取得していた減速度のうちの「切替り時点において最新の減速度」であってもよい。
前述したように、前記スイッチの状態が第1状態から第2状態へと切り替わったことのみをもって制動状態が発生したと判定すると、制動操作部材が遊び範囲内において操作されていて制動力が実際には発生していない場合にも制動状態が発生したと誤って判定する場合が生じる。これに対し、本発明の車両は、前記スイッチの状態が第1状態から第2状態へと切り替わった後に減速度の大きさが所定の閾値(操作後閾値)よりも大きくなったとき、制動状態が発生したと判定する。前記スイッチの状態が第2状態となっていて且つそのときの減速度の大きさが操作後閾値よりも大きいということは、制動力が発生している可能性が高いことを意味する。従って、本発明の車両は、前記スイッチの状態のみから判定する車両に比べ、制動判定を精度よく行うことができる。
加えて、前記スイッチは、一般に、液圧センサに比べて比較的安価であり且つ略総ての車両において搭載されている。更に、減速度は、一般に、略総ての車両に備えられたセンサ(車速センサ、車輪速センサ及び加速度センサ等)から得られる値に基づいて取得可能である。よって、本発明は、車両コストの増大又は大きな増大を招くことなく制動判定を精度よく行うことができる車両を提供することができる。
ところで、例えば、車両の減速度の大きさは、車両が急な登坂路を走行している場合及び強いエンジンブレーキが発生させられている場合等において大きくなる。これは、このような場合において車両に加わる「制動装置による制動力以外の外力」が車両を急減速させるからである。このような外力が車両に加わっている場合に制動操作部材が遊び範囲内において操作されて前記スイッチが第2状態へと切り替わると、実際には制動状態が発生していないにもかかわらず、大きさが大きい操作後減速度が取得される。従って、このような外力が車両に加わっている場合に操作後減速度のみに基づいて制動判定を行うと、その制動判定は誤判定となる場合が生じる。
そこで、本発明の一態様は、前記切替り時点又は同切替り時点の直前において前記減速度取得部により取得された減速度(即ち、操作前減速度)の大きさが「前記操作後閾値よりも小さい所定の操作前閾値」よりも小さいことを条件に前記制動状態が発生していると判定する。即ち、この態様は、操作前減速度の大きさが操作前閾値よりも小さく、且つ、操作後減速度の大きさが操作後閾値よりも大きい場合に制動状態が発生したと判定する。
操作前減速度は制動力が発生していない場合の車両の減速度であるから、操作前減速度の大きさは「制動力以外の外力に応じた値」となる。従って、操作前減速度の大きさが操作前閾値よりも大きければ、車両を減速させる制動力以外の外力が大きいから、制動力が実際に発生していない状態における操作後減速度の大きさが操作後閾値よりも大きくなる可能性が高くなる。それ故、上記態様のように、操作前減速度の大きさが操作前閾値よりも小さいことを制動状態が発生していると判定するための条件に加えることにより、制動力以外の外力に起因する誤った制動判定を行ってしまう可能性を低下させることができる。
更に、例えば、車両の減速度が大きくない状態において制動操作部材が「遊び操作範囲」内で操作されてスイッチの状態が第2状態へと切り替わり、その後暫くしてから、車両が急登坂路に差し掛かったり、強いエンジンブレーキが作動したりする場合がある。この場合、操作前減速度は操作前閾値よりも小さく、且つ、操作後減速度の大きさは操作後閾値よりも大きくなり得るから、車両は制動状態であるという誤った判定が行われる可能性がある。
そこで、上記態様において、前記判定装置は、「前記スイッチの状態が第1状態から第2状態へと切り替わった時点(即ち、切替り時点)から所定時間が経過するまでに前記減速度取得部により取得された減速度」を操作後減速度として用いるように構成されることが好適である。
切替り時点から所定時間が経過するまでに、制動操作部材が遊び範囲内に維持され且つ車両が急登坂路に差し掛かったり或いは強いエンジンブレーキが作動したりする可能性(又は頻度)は極めて少ない。これに対し、通常の制動操作がなされる場合には、スイッチの切替り時点から所定時間が経過するまでに車両の減速度の大きさは操作後閾値を超える。従って、上記態様によれば、より一層精度よく制動判定を行うことができる。
本発明の他の態様においては、前記判定装置が、前記操作前減速度の大きさに応じて変化する値を前記操作後閾値として用いるように構成される。前記操作前減速度の大きさに応じて変化する値は、例えば、前記操作前減速度に一定値を加えた値であってもよく、前記操作前減速度に車速及び操作前減速度等の一つ以上に応じて変化する値を加えた値であってもよい。
上述したように、操作前減速度の大きさは「制動力以外の外力に応じた値」となる。更に、切替り時点の前後で車両を減速させる「制動力以外の外力」が大きく変化する可能性は一般に小さい。加えて、操作後減速度は、制動力以外の外力の影響を受ける。以上のことから、上記他の態様のように、操作後閾値を操作前減速度の大きさに応じて変化する値に設定することにより、制動力以外の外力が操作後減速度に及ぼす影響を実質的に排除できるので、より精度よく制動判定を行うことができる。
尚、前記操作前減速度の大きさに応じて変化する値を前記操作後閾値として用いた場合において前記操作後減速度の大きさが前記操作後閾値よりも大きいということは、前記操作後減速度の大きさと前記操作前減速度の大きさとの差(差の大きさ)が前記操作前閾値の大きさに応じて変化する値よりも大きいということ、と同義である。
更に上記他の態様においても、前記判定装置は、「前記スイッチの状態が第1状態から第2状態へと切り替わった時点(即ち、切替り時点)から所定時間が経過するまでに前記減速度取得部により取得された減速度」を操作後減速度として用いるように構成されることが好適である。
スイッチの切替り時点以降において、制動操作部材が遊び範囲内に維持されることによりスイッチの状態が第2状態に維持されている場合に、車両が急登坂路に差し掛かったり或いは強いエンジンブレーキが作動したりする可能性は切替り時点後の経過時間が長くなるほど高くなる。従って、切替り時点以降において、操作後減速度の大きさが操作後閾値を超えるか否かの判定を時間的制限なく継続して行うと、誤った制動判定がなされる可能性が高くなる。これに対し、通常の制動操作がなされる場合には、切替り時点から所定時間が経過するまでに車両の減速度の大きさは操作後閾値を超える。従って、操作後減速度の取得期間を切替り時点から所定時間が経過するまでに限定する上記構成によれば、より一層精度よく制動判定を行うことができる。
・第1実施形態
以下、本発明の各実施形態に係る車両について図面を参照しながら説明する。
図1に示したように、車両10は、制動装置11を備えている。制動装置11は、車両10の左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrのそれぞれに配置されるブレーキユニット11aを有しており、同ユニット11aと連通する油圧回路を備えている。制動装置11は、制動に際して運転者が踏み込み操作を行う「制動操作部材」としてのブレーキペダル12を備えている。
制動装置11は、運転者によりブレーキペダル12が踏み込み操作されると、踏み込み操作に応じてブレーキユニット11aに所定の油圧を発生させる。これにより、制動装置11のブレーキユニット11aは左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに摩擦による制動力を発生させる。尚、制動装置11(ブレーキユニット11a及びブレーキペダル12を含む。)は通常の車両に搭載された装置であり、その構成及び作動については周知である。更に制動装置11自体の構成及び作動は本発明に直接関係しないので、その説明を省略する(必要があれば、例えば、特開2001−151092等公報及び特開2011−56969号公報等を参照。)。
ブレーキペダル12には、車両10に設けられたストップランプ13を点灯させるためのHi信号(以下、このHi信号を「オン信号」とも称呼する。)を出力するストップランプスイッチ14が設けられる。ストップランプスイッチ14は、運転者によりブレーキペダル12が踏み込み操作されると、同ペダル12の遊び範囲に関係なく、直ちにストップランプ13及び後述の判定装置20(制動判定ECU21)に対してオン信号を出力する。ストップランプスイッチ14は、ブレーキペダル12が運転者により踏み込み操作されていない原位置にあるときは、ストップランプ13を消灯させるためにLo信号を出力する。従って、ストップランプスイッチ14は、「制動操作部材」であるブレーキペダル12の操作に連動してストップランプ13を点灯させるように第1状態(Lo信号出力状態、オフ状態)から第2状態(Hi信号出力状態、オン状態)へと接続状態が切り替えられる「スイッチ」に対応する。
車両10は判定装置20を搭載している。判定装置20は、図1及び図2に示したように、制動判定ECU21を備える。ECU21は、CPU、ROM、RAM、タイマ等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品とする。ECU21は、インタフェース(図示省略)を介して車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)と接続されている。車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)は、左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrのそれぞれに設けられて車輪速度WSi(i=Fl,Fr,Rl,Rr)を検出し、同車輪速度WSi(i=Fl,Fr,Rl,Rr)を表す信号をECU21に出力する。更に、ECU21は、インタフェースを介してストップランプスイッチ14とも接続されている。これにより、ECU21は、ストップランプスイッチ14からオン信号(Hi信号)及びLo信号を取得する。
ECU21は、車両走行時において、車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)から車輪速度WSi(i=Fl,Fr,Rl,Rr)を表す信号を所定の時間が経過する毎に入力する。ECU21は、入力した信号により表される車輪速度WSi(i=Fl,Fr,Rl,Rr)の平均値を車速として算出し、その車速を図示省略のメータに表示する。ECU21は、演算した車速を時間微分することにより、車両10の減速度を繰り返し演算する。尚、ECU21は、一定時間(微小時間)の経過毎の車速の変化(一定時間前の車速から現時点の車速を減じた値)を求め、その値を減速度として採用してもよい。従って、本実施形態においては、ECU21及び車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)が「減速度取得部」を構成する。尚、以下の説明において、「減速度」は負の加速度であり、「減速度が大きくなる」とは、負の加速度の絶対値が大きくなることと同義である。
ECU21は、演算した車両10の減速度のうち、ブレーキペダル12が操作されてストップランプスイッチ14からオン信号を入力する前(ストップランプスイッチ14の接続状態切り替え前)に演算した減速度を操作前減速度G1として取得する。更に、ECU21は、演算した車両10の減速度のうち、ブレーキペダル12が操作されてストップランプスイッチ14からオン信号を入力した後(ストップランプスイッチ14の接続状態切り替え後)に演算した減速度を操作後減速度G2として取得する。
ストップランプスイッチ14がオフ状態からオン状態に切り替わったことのみをもって制動装置11が制動力を発生させている制動状態が発生したと判定すると、ブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されて制動力が実際には発生していない場合にも制動状態が発生したと誤って判定する場合が生じる。これに対し、ECU21は、ストップランプスイッチ14がオフ状態からオン状態に切り替わった後の操作後減速度G2の大きさが所定の閾値(例えば、後述する操作後閾値X2)よりも大きくなったとき、制動状態が発生したと判定する。ストップランプスイッチ14がオン状態になっていて且つ操作後減速度G2の大きさが所定の閾値(例えば、操作後閾値X2)よりも大きいということは、制動装置11が制動力を発生している可能性が高い。
従って、ECU21は、ストップランプスイッチ14の状態のみから判定する場合に比べて、制動判定を精度よく行うことができる。尚、以下の説明においては、制動装置11が左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させていて「制動状態が発生している」ことを「制動中」とも称呼する。
ところで、例えば、走行している車両10が急な登坂路に差し掛かった場合及び車両10に対して強いエンジンブレーキを加える操作がなされた場合等においては、制動装置11が作動しなくても車両10の減速度が大きくなる場合がある。即ち、この場合には、「制動装置による制動力以外の外力」が車両10に加わるため、車両10の減速度が大きくなる。尚、以下の説明においては、制動装置11による制動力以外の外力により車両10の減速度の大きさが大きくなる場合等をまとめて「非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況」とも称呼する。
今、非制動操作に起因して車両10の減速度が大きくなっている状況において運転者がブレーキペダル12を遊び範囲内で操作したと仮定する。この場合、ストップランプスイッチ14がオン信号を出力している状況(オン状態)において操作後減速度G2は大きい値となる。よって、操作後減速度G2が所定の閾値(例えば、操作後閾値X2)以上であるから制動中であると判定すると(制動状態が発生したと判定すると)、実際には制動装置11が車輪に制動力を発生させていない(制動状態が発生していない)ので、その判定は誤判定となる。尚、以下の説明においては、「制動状態が発生していない」ことを「非制動中」とも称呼する。
(作動)
係る事象に鑑み、本実施形態においては、「制動中」と「非制動中」とを精度よく判定するために、操作前減速度G1の大きさを評価するための減速度として操作前閾値X1を設定する。操作前閾値X1の大きさは、制動装置11が左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させていない場合に車両10に発生する減速度の大きさに基づいて設定される。加えて、本実施形態においては、「制動中」と「非制動中」とを精度よく判定するために、操作後減速度G2に大きさを評価するために操作後閾値X2を設定する。この操作後閾値X2は操作前閾値X1よりも大きな減速度である。操作後閾値X2の大きさは、制動装置11が左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させた場合に車両10に発生する減速度の大きさに基づいて設定される。即ち、操作前閾値X1は制動状態が発生していないことを確認できる値に設定され、操作後閾値X2は制動状態が発生したことを確認できる値に設定される。
そして、ECU21は、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下であり、且つ、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上であるとき、制動状態が発生した(制動中である)と判定する。非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況がブレーキペダル12が操作される前の時点から生じていたのであれば、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1よりも大きくなる。このため、ECU21は、この場合には、例え操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上となっても、制動中であると判定しない。よって、ECU21による誤判定は回避できる。
具体的に、ECU21は、図3に示す制動判定プログラムを実行することにより、前述した「制動中」であるか「非制動中」であるかを判定する。ECU21は、所定の短時間の経過毎に、制動判定プログラムの実行をステップS10にて開始する。
ECU21は、前記ステップS10にてプログラムの実行を開始した後、ステップS11において操作前減速度G1を取得する。加えて、ECU21は、例えば、ステップS11の実行周期毎に、取得した操作前減速度G1を自身のRAMの所定記憶位置に記憶する。この場合、ECU21は、予め設定された取得回数分の操作前減速度G1を時系列により所定記憶位置に記憶しておくことができる。ECU21は、操作前減速度G1を記憶すると、ステップS12に進む。
ECU21は、ステップS12において、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に連動して、ストップランプスイッチ14がストップランプ13を点灯させるようにオン状態に切り替えられたか否かを判定する。具体的に、ECU21は、ストップランプスイッチ14からの信号がHi信号(オン信号)の場合、ストップランプスイッチ14がオン状態となっていると判定する。この場合、ECU21はステップS12にて「Yes」と判定してステップS13に進む。
一方、ECU21は、ストップランプスイッチ14からの信号がLo信号の場合、運転者によりブレーキペダル12が踏み込み操作されておらず、ストップランプスイッチ14がオン状態となっていないので、ステップS12にて「No」と判定する。この場合には、運転者によりブレーキペダル12が踏み込み操作されていないので、制動装置11は左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させるように作動しない。このため、ECU21は制動判定を行う必要がない。従って、ECU21は、ステップS12にてストップランプスイッチ14が「オン」状態となっていると判定されるまで、繰り返し、前記ステップS11にて操作前減速度G1を取得して記憶する。
ECU21は、前記ステップS12にてストップランプスイッチ14がオン状態となっていると判定した場合には、下記(A).〜(C).の場合に応じて制動判定プログラムの各ステップ処理を実行する。
以下、
(A).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合、
(B).操作前減速度G1と操作前閾値X1との比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
(C).操作後減速度G2と操作後閾値X2との比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
について順に説明する。
(A).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合
ECU21は、ステップS13において、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下であるか否かを判定する。尚、このステップS13にて用いる操作前減速度G1は、前記ステップS11にて記憶されている複数の操作前減速度G1のうち、前記ステップS12にてストップランプスイッチ14がオン状態であると判定した直前に記憶した操作前減速度G1である。上記(A)の場合、非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではないので、操作前減速度G1の大きさは操作前閾値X1よりも大きくならない。
よって、ECU21は、ステップS13にて「Yes」と判定してステップS14に進み、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上であるか否かを判定する。尚、このステップS13にて用いられる操作後減速度G2については、ストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられた時点よりも後に得られた減速度、ストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられた時点よりも後の特定の時間内における減速度の「平均値又は最大値」を用いることができる。
上記(A)の場合、ブレーキペダル12の踏み込み操作に応じて制動装置11のブレーキユニット11aが左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させる。従って、操作後減速度G2の大きさは操作後閾値X2以上になる。よって、ECU21はステップS14にて「Yes」と判定してステップS15に進み、制動中であると判定する。
この場合、より具体的に、ECU21は、ステップS14において、制動状態が発生していることを示す制動中フラグの値を「1」に設定する。この制動中フラグはストップランプスイッチ14がLo信号を出力するオフ状態であるときに「0」に設定される。更に、この制動中フラグの値は、制動状態であると判定されたときに行われる他の制御(例えば、ブレーキブースタの負圧が小さいときにエアコンコンプレッサのクラッチを切り離して同負圧を増大する制御、バキュームブースタ内の圧力センサの故障判定等)を行うために参照される。その後、ECU21は、ステップS16に進む。
ECU21は、ステップS16において、ストップランプスイッチ14がオン状態のままで維持されているか否かを判定する。具体的に、ECU21は、ストップランプスイッチ14からの信号がHi信号(オン信号)の場合、ステップS16にて「Yes」と判定してステップS15に戻る。即ち、ECU21は、ステップS16にて「Yes」と判定する限り、ステップS15において制動中であると判定し続ける。一方、ECU21は、ストップランプスイッチ14がオン状態となっていない場合には、ステップS16にて「No」と判定する。この場合、ECU21はステップS17に進み、このプログラムの実行を一旦終了する。このとき、ECU21は、制動中フラグの値を「0」に戻す。
(B).操作前減速度G1と操作前閾値X1との比較に基づき「非制動中」と判定する場合
この場合においては、前記ステップS12における「Yes」判定に続いて前記ステップS13にて、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下であるか否かが判定される。上記(B)の場合、操作前減速度G1の大きさは操作前閾値X1よりも大きいため、ECU21は前記ステップS13にて「No」と判定して前記ステップS12に戻る。よって、制動状態が発生していると判定されることなく、制動中フラグの値は「0」に維持される。
具体的に、操作前減速度G1は、ストップランプスイッチ14の作動前、換言すれば、ブレーキペダル12が踏み込み操作される前に取得された減速度である。従って、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1よりも大きいということは、制動装置11の作動に起因するものではなく非制動操作に起因して減速度が大きくなっていると推定できる。この場合には、ECU21は、前記ステップS15に進むことがなく、その結果、非制動中であると判定する。
(C).操作後減速度G2と操作後閾値X2との比較に基づいて「非制動中」と判定する場合
この場合においては、前記ステップS12における「Yes」判定に続いて前記ステップS13において操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下であるか否かが判定される。上記(C)の場合、操作前減速度G1の大きさは操作前閾値X1以下であるので、ECU21は前記ステップS13にて「Yes」と判定して前記ステップS14に進む。
前記ステップS14においては、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上であるか否かが判定される。上記(C)の場合、操作後減速度G2の大きさは操作後閾値X2よりも小さいため、ECU21は前記ステップS14にて「No」と判定して前記ステップS12に戻る。
具体的に、操作後減速度G2は、ストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられた時点よりも後、換言すれば、ブレーキペダル12が踏み込み操作された後に取得された減速度である。このため、通常は(制動力が実際に発生させられていれば)、運転者によるブレーキペダル12の操作に応じて制動装置11が作動し、その結果、操作後減速度G2の大きさは操作後閾値X2以上になる。尚、この場合には、上記(A)の場合に従って、ECU21は車両10が制動中であると判定する。
ところが、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2よりも小さい場合、運転者によりブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されており、その結果、制動装置11は作動していないと推定できる。従って、この場合には、ECU21は、前記ステップS15に進むことがなく、その結果、非制動中であると判定する。
以上の説明から理解できるように、上記第1実施形態によれば、ECU21は、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下となり、且つ、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上となる場合に、車両10が制動中であると判定することができる。これにより、ECU21は、制動装置11による制動力以外の外力に起因する誤った制動判定を行ってしまうことなく、車両10が制動中であることを精度よく判定することができる。
(第1実施形態の変形例の作動)
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態では、図3に示した制動判定プログラムの前記ステップS13にて操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下であると判定した後、前記ステップS14にて操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上であるか否かを判定した。この場合、ECU21は、前記ステップS14にて、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上となるか、又は、ストップランプスイッチ14がLo信号を出力するまで、「No」判定を繰り返す。このため、ブレーキペダル12が遊び範囲内において操作され続けることによってストップランプスイッチ14がHi信号(オン信号)を出力した状態が比較的長時間継続し、且つ、非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況が生じると制動中であるという誤判定がなされる虞がある。
この第1実施形態の変形例では、前記ステップS12にてストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられたと判定した後の制動判定時間に制限を設けて、ECU21による判定精度をより高める。
この第1実施形態の変形例は、ECU21が図3に代わる図4に示された制動判定プログラムを所定の短時間の経過毎に実行する点でのみ、上記第1実施形態と相違している。従って、以下、この相違点を中心に説明する。尚、図4に示した各ステップのうち既に説明したステップと同一の処理を行うステップについては、その既に説明したステップと同一の符号を付している。これらのステップの詳細な説明は適宜省略される。
ECU21は、前記ステップS12にてストップランプスイッチ14がオン状態であると判定すると、自身のタイマのカウントアップを開始する。これにより、ECU21は、ストップランプスイッチ14が「オン」に切り替えられた時点から、より詳しくは、ストップランプスイッチ14からオン信号(Hi信号)を取得した時点からの経過時間Tを取得する。
この第1実施形態の変形例においては、ECU21は、経過時間Tを考慮して、(A’).〜(C’).の場合に加え、下記(D).の場合に応じて制動判定プログラムの各ステップ処理を実行する。
以下、
(A’).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合、
(B’).操作前減速度G1と操作前閾値X1との比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
(C’).操作後減速度G2と操作後閾値X2との比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
(D).経過時間Tと所定時間Toとの比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
について順に説明する。
(A’).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合
上記(A’)の場合、操作前減速度G1の大きさは操作前閾値X1よりも大きくならないので、ECU21は、前記ステップS13にて「Yes」と判定してステップS20に進む。ECU21は、ステップS20において、経過時間Tが所定時間To以下であるか否かを判定する。尚、所定時間Toは、例えば、走行している車両10を制動して減速させるために、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作する際に必要な時間に基づいて設定される。
上記(A’)の場合、経過時間Tが所定時間Toを超えるまでに、運転者はブレーキペダル12を踏み込み操作して制動装置11を作動させ、その結果、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上になる。従って、ECU21はステップS20にて「Yes」と判定し、前述した第1実施形態における(A)の場合と同様に、前記ステップS14、前記ステップS15及び前記ステップS16の各ステップ処理を実行する。尚、この場合においても、ECU21は、ステップS14において、制動状態が発生していることを示す制動中フラグの値を「1」に設定する。そして、ECU21は、ステップS17に進んでプログラムの実行を一旦終了する場合は、制動中フラグの値を「0」に戻す。
(B’).操作前減速度G1と操作前閾値X1との比較に基づき「非制動中」と判定する場合
この場合においては、非制動操作に起因して操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1よりも大きくなるため、ECU21は前記ステップS13にて「No」と判定し、前述した第1実施形態の(B)の場合と同様に、前記ステップS12に戻る。即ち、上記(B’)の場合には、ECU21は前記ステップS20に進むことはない。尚、この場合、制動状態が発生していると判定されることなく、制動中フラグの値は「0」に維持される。
(C’).操作後減速度G2と操作後閾値X2との比較に基づいて「非制動中」と判定する場合
上記(C’)の場合、経過時間Tが所定時間Toを超えるまでは、ECU21は前記ステップS20にて「Yes」と判定し、前記ステップS14に進む。上記(C’)の場合、操作後減速度G2の大きさは操作後閾値X2よりも小さいため、ECU21は前記ステップS14にて「No」と判定し、前述した第1実施形態の(C)の場合と同様に、前記ステップS12に戻る。
(D).経過時間Tと所定時間Toとの比較に基づいて「非制動中」と判定する場合
この場合においては、操作前減速度G1の大きさは操作前閾値X1以下であるので、ECU21は前記ステップS13にて「Yes」と判定して前記ステップS20に進む。前記ステップS20においては、ECU21は、経過時間Tが所定時間To以下であるか否かを判定する。上記(D)の場合、経過時間Tが所定時間Toを超えているので、ECU21は前記ステップS20にて「No」と判定して前記ステップS12に戻る。従って、この場合には、ECU21は、車両10が非制動中であると判定する。
ところで、前記ステップS20において、経過時間Tが所定時間Toを超えたと判定されるのは、ストップランプスイッチ14がオン状態であるにもかかわらず前記ステップS14にて操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上であると判定されない場合である。この場合、運転者によりブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されていると推定することができる。
従って、経過時間Tが所定時間To以内であるか否かを判定することにより、ブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されている場合、非制動操作に起因して操作後減速度G2の大きさが大きくなったことが制動中として誤判定されることを防止することができる。
以上の説明からも理解できるように、上記第1実施形態の変形例によれば、ECU21が、非制動操作に起因して操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上になるような状況(非制動中)を制動中であると誤判定してしまう可能性を大幅に低減することができる。その結果、ECU21は、極めて高い精度により制動判定を行うことができる。
・第2実施形態
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態においては、ECU21が、操作後減速度G2の大きさを、操作前減速度G1の大きさに応じて変化する値を操作後閾値X2として用いて評価することにより、「制動中」と「非制動中」とを精度よく判定する。具体的に、操作後減速度G2の大きさと操作前減速度G1の大きさとの差分値Gdの大きさを評価するための減速度として所定判定値Goを設定する。所定判定値Goは、制動装置11が左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させた場合に車両10に発生する減速度の大きさに基づいて設定され、制動状態が発生したこと(制動中であること)を確認(判定)できる値に設定される。
上記第1実施形態では、操作前減速度G1の大きさが操作前閾値X1以下である場合に、操作後減速度G2の大きさが操作後閾値X2以上であるか否かを判定する。前述したように、操作前減速度G1の大きさは、非制動操作に起因して車両10が自然に減速した場合の影響を受けて、大きくなる場合がある。このため、上記第1実施形態では、操作前減速度G1の大きさが前記影響を受ける状況では、制動判定が行われない。
これに対し、この第2実施形態では、操作後減速度G2の大きさと操作前減速度G1の大きさとの差である差分値Gdの大きさを用いることにより、操作前減速度G1を基準にして前記操作後減速度G2の大きさを判定する。これにより、ECU21は、操作前減速度G1の大きさが前記影響を受けている場合であっても、差分値Gdの大きさを所定判定値Goを用いて評価することにより、車両10が「制動中」であるか「非制動中」であるかを精度よく判定する。換言すれば、ECU21は、操作後減速度G2の大きさを、大きさが変化し得る操作前減速度G1の大きさに所定判定値Goを加算して得られる操作後閾値X2を用いて評価することにより、車両10が「制動中」であるか「非制動中」であるかを精度よく判定する。
(作動)
この第2実施形態は、ECU21が図3に代わる図5に示された制動判定プログラムを所定の短時間の経過毎に実行する点でのみ、上記第1実施形態と相違している。具体的に、この第2実施形態における制動判定プログラム(図5を参照)は、上記第1実施形態にて説明した制動判定プログラム(図3を参照)における前記ステップS13及び前記ステップS14が省略される。加えて、この第2実施形態における制動判定プログラム(図5を参照)は、新たにステップS30が追加される。
従って、以下、この第2実施形態の説明では、上記相違点を中心に説明する。尚、図5に示した各ステップのうち既に説明したステップと同一の処理を行うステップについては、その既に説明したステップと同一の符号を付している。これらのステップの詳細な説明は適宜省略される。
この第2実施形態においては、前記ステップS10にてプログラムの実行を開始した後、前記ステップS11において操作前減速度G1を取得して時系列により記憶する。ECU21は、操作前減速度G1を記憶すると、前記ステップS12に進む。
ECU21は、前記ステップS12において、ストップランプスイッチ14「オン」に切り替えられて同スイッチ14からの信号がHi信号(オン信号)の場合、「Yes」と判定してステップS30に進む。一方、ECU21は、ストップランプスイッチ14からの信号がLo信号の場合、ストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられていないので、前記ステップS12にて「No」と判定する。この場合、ECU21は前記ステップS11に戻り、新たな操作前減速度G1を取得して記憶する。
この第2実施形態においては、ECU21は、前記ステップS12にてストップランプスイッチ14がオン状態となっていると判定した場合には、下記(E).及び(F).の場合に応じて制動判定プログラムの各ステップ処理を実行する。
以下、
(E).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合、
(F).差分値Gdと所定値Goとの比較により「非制動中」と判定する場合、
について順に説明する。
(E).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合
ECU21は、ステップS30において、操作後減速度G2の大きさと操作前減速度G1の大きさとの差分値Gdを演算し、差分値Gdの大きさが所定判定値Go以上であるか否かを判定する。上記(E)の場合、ブレーキペダル12が操作されて制動装置11が作動しているので、操作後減速度G2の大きさは操作前減速度G1の大きさに所定判定値Goの大きさを加算した減速度よりも大きくなる。このため、上記(E)の場合、操作後減速度G2の大きさと操作前減速度G1の大きさとの差分値Gdの大きさは、所定判定値Go以上になる。よって、ECU21はステップS30にて「Yes」と判定してステップS15に進み、制動中であると判定する。
この場合、より具体的に、ECU21は、ステップS30において、制動状態が発生していることを示す制動中フラグの値を「1」に設定する。この制動中フラグはストップランプスイッチ14がLo信号を出力するオフ状態であるときに「0」に設定される。尚、この制動中フラグの値は、制動状態であると判定されたときに行われる他の制御(例えば、ブレーキブースタの負圧が小さいときにエアコンコンプレッサのクラッチを切り離して同負圧を増大する制御、バキュームブースタ内の圧力センサの故障判定等)を行うために参照される。その後、ECU21は、ステップS16において、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に連動してストップランプスイッチ14がオン状態となっている限り(「Yes」と判定する限り)、ステップS15において制動中であると判定し続ける。
一方、ECU21は、ストップランプスイッチ14からの信号がLo信号の場合、運転者によりブレーキペダル12が踏み込み操作されておらず、ストップランプスイッチ14がオン状態となっていないので、ステップS16にて「No」と判定する。この場合、ECU21はステップS17に進み、このプログラムの実行を一旦終了する。このとき、ECU21は、制動中フラグの値を「0」に戻す。
(F).差分値Gd及び所定値Goを比較して「非制動中」と判定する場合
この場合においては、前記ステップS12における「Yes」判定に続いて前記ステップS30にて、差分値Gdの大きさが所定値Go以上であるか否かを判定する。上記(F)の場合、差分値Gdの大きさは所定判定値Goよりも小さいため、ECU21はステップS30にて「No」と判定して前記ステップS12に戻る。
通常(制動力が実際に発生させられていれば)は、運転者によるブレーキペダル12の操作に応じて制動装置11が作動するために操作後減速度G2の大きさが第1減速度の大きさに所定判定値Goの大きさを加算した減速度よりも大きくなる。その結果、差分値Gdの大きさは所定判定値Go以上になる。尚、この場合には、上記(E)の場合に従って、ECU21は車両10が制動中であると判定する。
ところが、差分値Gdの大きさが所定判定値Goよりも小さい場合、非制動操作に起因して車両10が自然に減速した場合の影響を受けて、第1減速度が大きくなっていると推定される。又は/及び、運転者によりブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されており、その結果、制動装置11は作動しておらず操作後減速度G2が小さいままであると推定される。従って、これら場合には、ECU21は、制動装置11が左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させて車両10を制動する制動中ではないので、非制動中であると判定する。
以上の説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、ECU21は、操作後減速度G2の大きさと操作前減速度G1の大きさとの差分値Gdの大きさが所定値Go以上となる場合に、車両10が制動中であると判定することができる。これにより、制動力以外の外力が操作後減速度G2に及ぼす影響を実質的に排除できるので、ECU21は、高い精度で車両10が制動中であるか否かを判定することができる。
(第2実施形態の変形例の作動)
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態では、図5に示した制動判定プログラムの前記ステップS30にて操作後減速度G2の大きさと操作前減速度G1の大きさとの差分値Gdの大きさが所定値Go以上であるかを判定した。この場合、ECU21は、前記ステップS30にて、差分値Gdの大きさが所定値Go以上となるか、又は、ストップランプスイッチ14がLo信号を出力するまで「No」処理を繰り返す。このため、ブレーキペダル12が遊び範囲内において操作され続けることによってストップランプスイッチ14がHi信号(オン信号)を出力した状態が比較的長時間継続し、且つ、非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況が生じると制動中であるという誤判定がなされる虞がある。
この第2実施形態の変形例では、上記第1実施形態の変形例と同様に、前記ステップS12にてストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられたと判定した後の制動判定時間に制限を設けて、ECU21による判定精度をより高める。
この第2実施形態の変形例は、ECU21が図5に代わる図6に示された制動判定プログラムを所定の短時間の経過毎に実行する点でのみ、上記第2実施形態と相違している。従って、以下、この相違点を中心に説明する。尚、図6に示した各ステップのうち既に説明したステップと同一の処理を行うステップについては、その既に説明したステップと同一の符号を付している。これらのステップの詳細な説明は適宜省略される。
この第2実施形態の変形例においても、上記第1実施形態の変形例と同様に、ECU21は、ストップランプスイッチ14がオン状態に切り替えられた時点から、より詳しくは、ストップランプスイッチ14からLo信号に代えてHi信号(オン信号)を取得した時点からの経過時間Tを取得する。
この第2実施形態の変形例においては、制動判定ECUは、経過時間Tを考慮して、(E’).及び(F’).の場合に加え、下記(G).の場合に応じて制動判定プログラムの各ステップ処理を実行する。
以下、
(E’).非制動操作に起因して減速度が大きくなる状況ではなく、ブレーキペダル12の操作に基づく制動がなされた場合、
(F’).差分値Gdと所定値Goとの比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
(G).経過時間Tと所定時間Toとの比較に基づいて「非制動中」と判定する場合、
について順に説明する。
(E’).「制動中」であると判定する場合
上記(E’)の場合、経過時間Tが所定時間Toを超えるまでに、運転者はブレーキペダル12を踏み込み操作して制動装置11を作動させている。従って、ECU21は前記ステップS20にて「Yes」と判定し、前述した第2実施形態の(E)の場合と同様に、前記ステップS30、前記ステップS15及び前記ステップS16の各ステップ処理を実行する。尚、この場合においても、ECU21は、ステップS30において、制動状態が発生していることを示す制動中フラグの値を「1」に設定する。そして、ECU21は、ステップS17に進んでプログラムの実行を一旦終了する場合は、制動中フラグの値を「0」に戻す。
(F’).差分値Gdと所定値Goとの比較に基づいて「非制動中」と判定する場合
上記(F’)の場合、経過時間Tが所定時間Toを超えるまでは、ECU21は前記ステップS20にて「Yes」と判定し、前記ステップS30に進む。上記(F’)の場合、差分値Gdの大きさは所定値Goよりも小さいため、ECU21は前記ステップS30にて「No」と判定し、前述した第2実施形態の(F)の場合と同様に、前記ステップS12に戻る。
(G).経過時間Tと所定時間Toとの比較に基づいて「非制動中」と判定する場合
この場合においては、ECU21は、前記ステップS12にて「Yes」と判定して前記ステップS20に進む。上記(G)の場合、経過時間Tが所定時間Toを超えているので、ECU21は前記ステップS20にて「No」と判定して前記ステップS12に戻る。従って、この場合には、ECU21は、車両10が非制動中であると判定する。
ところで、この第2実施形態の変形例においても、上記第1実施形態の変形例と同様に、前記ステップS20にて、経過時間Tが所定時間To以内であるか否かが判定される。従って、この第2実施形態の変形例においても、上記第1実施形態の変形例と同様に、前記ステップS20において、経過時間Tが所定時間Toを超えたと判定されるのは、ストップランプスイッチ14がオン状態であるにもかかわらず、前記ステップS30にて差分値Gdの大きさが所定判定値Go以上であると判定されない場合である。
この場合、運転者によりブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されていると推定することができる。従って、経過時間Tが所定時間To以内であるか否かを判定することにより、ブレーキペダル12が遊び範囲内で操作されている場合、非制動操作に起因して差分値Gdの大きさが大きくなったことが制動中として誤判定されることを防止することができる。
以上の説明からも理解できるように、上記第2実施形態の変形例によれば、ECU21が、非制動操作に起因して差分値Gdの大きさが所定判定値Go以上になるような状況(非制動中)を制動中であると誤判定してしまう可能性を大幅に低減することができる。その結果、ECU21は、極めて高い精度により制動判定を行うことができる。
(その他の変形例)
上記第1実施形態及びその変形例と、上記第2実施形態及びその変形例とにおいては、ECU21が車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)から入力した信号により表される車輪速度WSi(i=Fl,Fr,Rl,Rr)を平均化して車速を演算する。ECU21は、演算した車速を時間微分することにより、車両10の減速度を繰返し演算する。即ち、上記第1実施形態及びその変形例と、上記第2実施形態及びその変形例とにおいては、ECU21及び車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)が減速度取得手段を構成する。
しかし、図1及び図2にて破線により示したように、加速度センサ23(減速度センサ23)が車両10に搭載されている場合には、この加速度センサ23(実質的には減速度センサ23)により取得された減速度を用いることが可能である。この場合には、加速度センサ23(減速度センサ23)はインタフェースを介してECU21に接続される。これにより、ECU21は、加速度センサ23(減速度センサ23)により取得された減速度を表す信号を入力する。ECU21は、この入力した信号により表される減速度を用いて、図3〜図6に示した各制動判定プログラムを実行する。従って、この場合も、上記各実施形態及び各変形例と同等の効果を得ることができる。
本発明は上記各実施形態及び各変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記各実施形態及び各変形例では、「スイッチ」が、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に連動してストップランプ13を点灯させるストップランプスイッチ14であるとした。この場合、「スイッチ」として、運転者により指定された車速を維持する車両のクルーズコントロールをオフするためのクルーズコントロールキャンセルスイッチ(以下、単に「キャンセルスイッチ」と称呼する。)を用いることができる。
このキャンセルスイッチは、ストップランプスイッチ14と同様に、ブレーキペダル12に設けられる。従って、運転者により指定された車速で車両10を走行させているときに、運転者がブレーキペダル12を踏み込み操作すると、この踏み込み操作に連動して、キャンセルスイッチは、クルーズコントロールを停止させるように切り替えられる。従って、上記各実施形態及び各変形例で用いたストップランプスイッチ14に代えてキャンセルスイッチを用いた場合にも、上記各実施形態及び各変形例と同様の効果を得ることができる。
上記各実施形態及び各変形例では、ECU21が車輪速センサ22i(i=Fl,Fr,Rl,Rr)から入力した信号により表される車輪速度WSi(i=Fl,Fr,Rl,Rr)を平均化して車速を演算した。この場合、従来から広く行われているように、例えば、トランスミッション出口におけるシャフトの回転数から車速を演算したり、車両挙動制御(具体的にはABS制御等)で演算される推定車体速度や4輪の平均回転数から車速を演算したりする等、種々の方法を用いて車速を演算することができる。
上記各実施形態及び各変形例では、車両10を制動するために運転者により踏み込み操作されるブレーキペダル12を用いた。しかし、「制動操作部材」としては、車両10を制動するために運転者により操作されるものであれば、如何なるものであってもよく、例えば、ブレーキレバー等を用いることができる。
更に、上記各実施形態及び各変形例では、制動装置11が、例えば、ディスクブレーキ装置のような摩擦により左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに摩擦による制動力を発生させるブレーキユニット11aを有するようにした。しかし、運転者によるブレーキペダル12の操作に応じて左右前輪Fl,Fr及び左右後輪Rl,Rrに制動力を発生させることができれば、例えば、制動装置11が、回生制御により制動力を発生する回生モータを備えたブレーキユニットを有することもできる。