JP6253554B2 - 複合耐火物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態の窒化ケイ素結合SiC耐火物は、原料調合〜混合〜成形(鋳込等)〜離型〜乾燥〜一次焼成(窒素雰囲気焼成)〜二次焼成(酸化焼成)の各工程を経て製造される。以下、各工程について説明を行う。
0.05〜3000μmのSiCを65〜88質量%、0.01〜100μmの金属Siを9〜20質量%含有させ、その他の原料として、Fe2O3を0.5質量%、Al2O3を0.3〜5質量%、B4Cを2.5〜15質量%含有させて、原料の調合を行う。本実施形態では、焼結助剤としてFe2O3を添加し、ガラス被膜を形成するガラス被膜形成物質としてAl2O3、B4Cを添加している。SiC粒子径が0.05μm以下になると、充填密度が低くなることにより、見掛け気孔率が大きくなり本実施形態での酸化抑制効果が得られにくく、また、SiC粒子径が3000μm以上になると、見掛け気孔率は低下するが、曲げ強度の低下が大きくなり、耐火物としての必要強度が得にくくなるため、何れも好ましくない。金属Siは、窒素含有雰囲気下での焼成時に、窒化ケイ素を生成しSiC粒子間の結合を成すが、この時に粒子径が0.01μm以下になると、SiC粒子間を十分に結合することが出来ず、見掛け気孔率が大きく、かつ、低強度となり、また、100μm以上の場合になると、金属Si全体が窒化物化することが出来ず、金属Siが残留することとなり耐火物としての機能を果たさなくなるため、何れも好ましくない。
混合工程では、上記の原料調合工程で調合した原料に、水、バインダー、分散剤等を添加して混合して坏土を製作、もしくはスラリー化させる。
成形工程では、上記の混合工程で得られた坏土もしくはスラリーを使用し、モールド内での圧力成形、鋳込み成形等、任意の成形方法で、所望の形状に成形し、所定時間経過後、離形および乾燥を行う。
上記の乾燥工程を経た成形体を、窒素含有雰囲気下において焼成する。ここで、窒素含有雰囲気における窒素濃度としては、90%以上が好ましく、99%以上が更に好ましい。焼成温度は、その最高保持温度が通常1100〜1500℃の範囲、好ましくは1300〜1450℃の範囲であり、焼成時間としては5〜30hrが適当である。窒素含有雰囲気下での焼成により、成形体中のSiと雰囲気中の窒素との反応が生じ、窒化ケイ素が、骨材(SiC粒子)の粒界に生成される。これにより、骨材同士を窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素で結合させた窒化ケイ素結合SiC耐火物が得られる。
本実施形態では、上記の一次焼成工程で得られた焼成体を、更に、酸素濃度4〜10%、焼成温度1300〜1600℃、最高温度保持時間5〜15時間の条件で焼成する。当該条件下での焼成により、耐火物表面にガラス被膜が形成され、酸化等に起因する劣化を抑制することができる。
(製造)
下記表1に示す各配合で原料調合、成形を行い、一次焼成(窒素濃度100%、1430℃、6hr)行った後、酸素濃度8%、焼成温度1400℃、最高温度保持時間9時間の条件下で二次焼成を行って窒化ケイ素結合SiC耐火物を製造した(実施例1〜13、比較例1〜5)。
(耐火物の成分分析)
製造後、各窒化ケイ素結合SiC耐火物の成分分析を行い、Al、Bの含有量および、Si3N4/SiC比を調べた結果を、下記表1に示している。成分分析はJIS R2011に準拠して実施した。
(物性測定)
また、下記表1には、製造後、各窒化ケイ素結合SiC耐火物の嵩比重、見掛け気孔率、3点曲げ強度、および、二次焼成工程における重量増加率を測定した結果も示している。嵩比重、見掛け気孔率、はJIS R2205の煮沸法に準拠して測定した。3点曲げ強度の測定は、JIS R1601に準拠して行った。
(耐酸化性能評価)
更に、下記表1には、製造後、各窒化ケイ素結合SiC耐火物の酸化による劣化を評価するために、各耐火物を、1hPaのAr雰囲気中に、温度1600℃で5hr曝露し、「曝露中の重量減少率」および「浸食深さ」および「粒子保持性」および再度「曲げ強度(以下、評価後3点曲げ強度、という)」を測定した結果も示している。
「曝露中の重量減少率」の測定は、試験前後での変化率を算出して行った。「曝露中の重量減少率」により、組織の分解、浸食による重量変化を評価することができる。
「浸食深さ」の測定は、テストピース50*50*8mmの断面組織を電子顕微鏡で観察し、窒化ケイ素結合SiC耐火物の健全部と浸食部(図1参照)で、表層からの分解・浸食深さを測定して行った。
「粒子保持性」の測定は、耐火物の表層に粘着テープを張り付け、これを引き剥がした時に付着する50μm以上のSiC粗粒の粒子数を2mm四方の範囲で数えて行った。 「粒子保持性」は、結合相の浸食による粒子保持性の低下を評価する指標となる。粘着テープは日本電子(株)製カーボン両面テープ P/N780004523 を用いて、50g/cm2で10秒間押さえた後、引き剥して上記測定を行った。
「評価後3点曲げ強度」の測定は、JIS R1601に準拠して行った。
「耐火物全体」の化学組成として、Alを0.25〜2.4質量%、Bを1.5超〜8.5質量%含有し、かつ、見掛け気孔率が10%以下である実施例1〜8では、「曝露中の重量減少率」を7.84%以下、「浸食深さ」を355μm以下、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数を40以下に、各々、抑制されることでき、「評価後3点曲げ強度」は、110MPa以上に維持されることが確認された。
見掛け気孔率が10%超である比較例1および比較例4では、「曝露中の重量減少率」が10%超、「浸食深さ」が480μm以上、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が223以上となり、「評価後3点曲げ強度」は、78MPa以下にまで低下し、上記実施例1〜8と比べて、耐酸化性能が劣ることが確認された。
Bの含有量が1.5質量%未満の比較例2およびBの含有量が8.5質量%超の比較例5では、何れも、「曝露中の重量減少率」が9%超、「浸食深さ」が650μm以上、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が196以上となり、「評価後3点曲げ強度」は、82MPa以下にまで低下し、上記実施例1〜8と比べて、耐酸化性能が劣ることが確認された。
Alの含有量が0.25質量%未満の比較例3およびAlの含有量が2.4質量%超の比較例6、7では、何れも、「曝露中の重量減少率」が9%超、「浸食深さ」が590μm以上、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が180以上となり、「評価後3点曲げ強度」は、101MPa以下にまで低下し、上記実施例1〜8と比べて、耐酸化性能が劣ることが確認された。
Alの含有量が2.4質量%超で、かつ、Si3N4/SiC比率でSi3N4成分が0.5超の比較例8では、「評価後3点曲げ強度」は実施例と同程度に良好な結果(122MPa)を示すが、「曝露中の重量減少率」が10.2%、「浸食深さ」が885μm、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が263となり、上記実施例1〜8と比べて、耐食性が得にくいことが確認された。
(製造)
SiCを65〜88質量%、Siを9〜20質量%含有させた原料を混合して、窒素雰囲気下での一次焼成した後、基材表面に、固形分として、B4CとAl2O3とSiO2を下記表2に示す割合で含有するスラリーを用いてコーティング処理を行い、その後、酸素濃度8%、焼成温度1400℃、最高温度保持時間9時間の条件下で二次焼成を行って窒化ケイ素結合SiC耐火物を製造した(実施例9〜14、比較例9〜14)。
(耐火物の成分分析)
製造後、各窒化ケイ素結合SiC耐火物の複合耐火物の表面から0.5mm深さまでの部分をサンプリングして成分分析を行い、Al、Bの含有量および、Si3N4/SiC比を調べた結果を、下記表2に示している。成分分析はJIS R2011に準拠して実施した。
(物性測定)および(耐酸化性能評価)は、上記実施例Aと同様に行い、その結果を下記表2に示している。
「複合耐火物の表面から0.5mm深さ間の部分」の化学組成として、Alを0.25〜2.4質量%、Bを1.5超〜8.5質量%含有し、かつ、見掛け気孔率が10%以下である実施例9〜14では、「曝露中の重量減少率」を6.8%以下、「浸食深さ」を290μm以下、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数を33以下に、各々、抑制されすることができ、「評価後3点曲げ強度」は、135MPa以上に維持されることが確認された。
Bの含有量が1.5質量%未満の比較例9およびBの含有量が8.5質量%超の比較例12では、何れも、「曝露中の重量減少率」が8.9%以上、「浸食深さ」が602μm以上、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が71以上となり、「評価後3点曲げ強度」は、120MPa以下にまで低下し、上記実施例9〜14と比べて、耐酸化性能が劣ることが確認された。
Alの含有量が0.25質量%未満の比較例10およびAlの含有量が2.4質量%超の比較例11、13、14では、何れも、「曝露中の重量減少率」が11.6%以上、「浸食深さ」が702μm以上、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が87以上となり、「評価後3点曲げ強度」は、119MPa以下にまで低下し、上記実施例1〜8と比べて、耐酸化性能が劣ることが確認された。
(製造)
下記表3に示す各配合で原料調合、成形を行い、一次焼成(窒素濃度100%、1430℃、6hr)行った後、酸素濃度8%、焼成温度1400℃、最高温度保持時間9時間の条件下で二次焼成を行って窒化ケイ素結合SiC耐火物を製造した(実施例15〜17、比較例16〜17)。
(耐火物の成分分析、物性測定および耐酸化性能評価)
上記実施例Aと同様に、耐火物の成分分析、および、物性測定、および耐酸化性能評価を行った結果を下記表3に示している。なお、表3には、二次焼成での重量変化(酸化重量変化率)を調べた結果も示している。
0.05〜3000μmのSiCを65〜88質量%、0.01〜100μmの金属Siを9〜20質量%使用している実施例15〜17では、見掛け気孔率が10%以下、酸化重量変化率が0.55以下に抑制されることが確認された。これら実施例15〜17では、「曝露中の重量減少率」を6.18%以下、「浸食深さ」を298μm以下、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数39以下に、各々、抑制することができ、「評価後3点曲げ強度」は、138MPa以上に維持されることが確認された。
0.05〜3000μmのSiCの使用量が65質量%未満である比較例16および0.01〜100μmの金属Siの使用量が65質量%未満である比較例17では、何れも、見掛け気孔率が10%超となり、「曝露中の重量減少率」が9.13%以上、「浸食深さ」が799μm以上、「粒子保持性」測定における粘着テープへの付着数が196以上となり、「評価後3点曲げ強度」は、70MPa以下にまで低下し、上記実施例15〜17と比べて、耐酸化性能が劣ることが確認された。
(製造)
実施例3と同様の原料組成で、原料調合、成形を行い、一次焼成(窒素濃度100%、1430℃、6hr)行った後、酸素濃度8%、最高温度保持時間10時間とし、焼成温度は1200〜1700℃の間で変化させて条件変更を行いながら、各条件下で二次焼成を行い、上記実施例A〜Cと同様の手法で「粒子保持性」を評価した結果、および「(評価前後の比較による)3点曲げ強度の低下率」を算出した結果を図2に示している。
また、実施例3と同様の原料組成で、原料調合、成形を行い、一次焼成(窒素濃度100%、1430℃、6hr)行った後、焼成温度1400℃、最高温度保持時間10時間とし、酸素濃度を2〜12%の間で変化させて条件変更を行いながら、各条件下で二次焼成を行い、上記実施例A〜Cと同様の手法で「粒子保持性」を評価した結果、および「(評価前後の比較による)3点曲げ強度の低下率」を算出した結果を図3に示している。
また、実施例3と同様の原料組成で、原料調合、成形を行い、一次焼成(窒素濃度100%、1430℃、6hr)行った後、酸素濃度8%、焼成温度1400℃として、最高温度保持時間を3〜17時間での間で変化させて条件変更を行いながら、各条件下で二次焼成を行い、上記実施例A〜Cと同様の手法で「粒子保持性」を評価した結果、および「(評価前後の比較による)3点曲げ強度の低下率」を算出した結果を図4に示している。
酸素濃度4〜10%、焼成温度1300〜1600℃、焼成時間5〜15時間で二次焼成を行うことにより、粒子保持性が改善され、強度低下が抑制されることが確認された。
Claims (8)
- 炭化ケイ素を、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素で結合させた窒化ケイ素結合SiC耐火物に、SiO2系ガラス被膜を形成した複合耐火物であって、
見掛け気孔率が10%以下であり、
化学組成として、Alを0.25〜2.4質量%かつBを1.5超〜8.5質量%含有する
ことを特徴とする複合耐火物。 - 炭化ケイ素を、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素で結合させた窒化ケイ素結合SiC耐火物に、SiO2系ガラス被膜を形成した複合耐火物であって、
見掛け気孔率が10%以下であり、
該複合耐火物の表面から少なくとも0.5mm深さの部分に、化学組成として、Alを0.25〜2.4質量%かつBを1.5超〜8.5質量%含有することを特徴とする複合耐火物。 - 前記SiO2系ガラス被膜が、SiO2の他、Al2O3とB2O3を含有するガラス被膜であることを特徴とする、請求項1または2記載の複合耐火物。
- 前記窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と炭化ケイ素を、質量比=(窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素)の質量/炭化ケイ素の質量=0.2〜0.5の割合で含有することを特徴とする、請求項1または2記載の複合耐火物。
- 請求項1記載の複合耐火物を製造するための方法であって、SiCを65〜88質量%、Siを9〜20質量%、B4Cを2.5〜15質量%、Al2O3を0.5〜10質量%含有させた原料を混合し、窒素雰囲気下での一次焼成後、更に、酸素濃度4〜10%の酸素雰囲気下で二次焼成を行うことを特徴とする複合耐火物の製造方法。
- 請求項2記載の複合耐火物を製造するための方法であって、
SiCを65〜88質量%、Siを9〜20質量%含有させた原料を混合し、窒素雰囲気下での一次焼成後、この一次焼成により得られた焼成体の表面に、固形分として、B4Cを2.5〜15質量%、Al2O3を0.5〜10質量%含有させたスラリーを用いてコーティング処理を行い、その後、酸素濃度4〜10%の酸素雰囲気下で二次焼成を行うことを特徴とする複合耐火物の製造方法。 - 前記固形分の残部の化学組成として、Siを含むことを特徴とする請求項6記載の複合耐火物の製造方法。
- 前記SiCとして粒径0.05〜3000μmのSiCを使用し、Siとして粒径0.01〜100μmのSiを使用することを特徴とする請求項5または6記載の複合耐火物の製造方法。
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