JP6253056B2 - 振動測定装置および振動測定方法 - Google Patents

振動測定装置および振動測定方法 Download PDF

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本発明は、振動測定装置および振動測定方法に関する。さらに詳しくは、橋梁や建物などの振動を測定するための振動測定装置および振動測定方法に関する。
橋梁(コンクリート橋やトラス橋)などの構造物は、経年劣化し劣化に伴って安全性が低下するので、構造物の劣化状態(言い換えれば健全性)を適切に評価することが必要である。
構造物の劣化診断には、目視観察や打音検査などが広く用いられており、長年に渡る検査でそれなりに実績がある。しかし、これらの検査は、検査員の五感を使用する官能検査であり、どうしても検査員の主観的が入り込むため、実効性という観点からは精度は高くない。したがって、検査員の主観を含まない客観的な検査を実施できる方法が求められている。
橋梁などの劣化を客観的に診断する方法として、特許文献1に記載の技術が開発されている。
特許文献1の技術は、大型建造物の劣化及び/又は健全度を診断する大型建造物の診断システムであって、大型建造物の所定の部位に配置された複数の無線付橋梁センサーと、複数の無線付橋梁センサーにより計測され無線付橋梁センサーの無線により送信されたセンサー情報を記録する記録装置と、記録装置から転送されたセンサー情報に基づき大型建造物の劣化及び/又は健全度を診断する診断装置とを備えている。そして、特許文献1の技術では、診断装置が、複数のセンサー情報から独立成分分析による独立成分の変化を検出して大型建造物全体の異常診断を行う全体異常診断手段と、全体異常診断手段による異常診断に基づき、異常箇所の特定及び劣化診断を行うように構成されている。
かかる構成であるので、特許文献1には、特許文献1のシステムを用いることによって、複数のセンサー情報から独立成分分析によって独立な信号に分離し、この結果である複数の独立成分信号のスペクトル信号の周波数あるいは信号ゲインの以前の結果との違いから劣化があるかどうかにより劣化の有無を診断することができる旨が記載されている。つまり、特許文献1には、特許文献1のシステムを用いることによって、大型建造物の振動特性の変化により、大型建造物の経年変化を振動特性で評価することができる旨が記載されている。
特開2008−255571号公報
しかるに、特許文献1の方法は、振動モードを求めて劣化を評価するために多数のセンサーを設置しなければならず、大型建造物の場合には、設置するセンサーの数も膨大になる。このため、センサーを設置するためのコストと作業が膨大になるという間題がある。
本発明は上記事情に鑑み、構造物の振動特性を簡便に把握できる振動測定装置および振動測定方法を提供することを目的とする。
第1発明の振動測定装置は、構造物の振動特性を測定する装置であって、構造物に1カ所または2カ所以上設置されるセンサーを備えた測定手段と、該測定手段からの信号に基づいて構造物の振動モードを算出する解析手段と、を備えており、該解析手段は、構造物に衝撃が加わった際における前記測定手段からの信号に基づいて、1次および2次の振動モードを算出するものであることを特徴とする。
第2発明の振動測定装置は、第1発明において、前記解析手段は、1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじれ、2次そりの6つの振動モードのうち、4〜6つの振動モードを算出するものであることを特徴とする。
第3発明の振動測定装置は、第1または第2発明において、前記センサーが、構造物の変形速度を測定する速度計であることを特徴とする。
第4発明の振動測定装置は、第1、2または第3発明において、構造物に衝撃を加える打撃手段を備えていることを特徴とする。
第5発明の振動測定装置は、第4発明において、前記打撃手段が、木製またはプラスチック製のハンマーであることを特徴とする。
第6発明の振動測定装置は、第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記解析手段は、1次および2次の振動モードに基づいて固有振動数を算出し、算出された固有振動数記憶する機能を有しており、記憶されている構造物の固有振動数を比較する比較部を備えていることを特徴とする。
第7発明の振動測定装置は、第1乃至第6発明のいずれかにおいて、測定手段が、構造物の温度を測定する温度測定部を備えており、前記解析手段は、1次および2次の振動モードに基づいて固有振動数を算出し、算出された固有振動数記憶する機能を有しており、記憶されている構造物の低温時の固有振動数と高温時の固有振動数に基づいて、固有振動数を補正する補正機能を有していることを特徴とする。
第8発明の振動測定装置は、第1乃至第7発明のいずれかにおいて、コンクリート橋の固有振動数を測定するものであることを特徴とする。
第9発明の振動測定装置は、第1乃至第8発明のいずれかにおいて、算出された1次および2次の振動モードを主とした(その他の高次も理論上可能なので)構造物の変形状態を算出し、該変形状態を表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
(測定方法)
第10発明の振動測定方法は、構造物の振動特性を測定する方法であって、構造物の1カ所または2カ所以上にセンサーを設置し、構造物に衝撃が加わった際における前記測定手段からの信号に基づいて、1次および2次の振動モードを算出することを特徴とする。
第11発明の振動測定方法は、第10発明において、構造物における1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モード最大振幅となる部分を打撃して、構造物に衝撃を加えることを特徴とする。
第12発明の振動測定方法は、第10または第11発明において、第1乃至第8発明のいずれかに記載の振動測定装置を使用することを特徴とする。
第1発明の振動測定方法は、コンクリート橋の振動特性を測定する方法であって、コンクリート橋の固有振動モードの山・腹となる地点を求め、コンクリート橋の1カ所または2カ所以上にセンサーを設置し、コンクリート橋における1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モードが最大振幅となる部分を打撃して、コンクリート橋に衝撃が加わった際における構造物の振動を測定し、この測定値に基づいて1次および2次の振動モードを特定することを特徴とする。
第2発明の振動測定方法は、第1発明において、コンクリート橋における橋脚間の中間および、一方の橋脚から橋脚間の距離の1/4となる位置にセンサーを設置することを特徴とする。
第3発明の振動測定装置は、第1または第2発明のコンクリート橋の振動測定方法に使用される装置であって、コンクリート橋に1カ所または2カ所以上に設置されるセンサーを備えた測定手段と、該測定手段からの信号に基づいてコンクリート橋の振動モードを特定する解析手段と、を備えており、該解析手段は、コンクリート橋に衝撃が加わった際における前記測定手段からの信号に基づいて、1次および2次の振動モードを特定するものであることを特徴とする。
第4発明の振動測定装置は、第3発明において、前記解析手段は、1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじれ、2次そりの6つの振動モードのうち、4〜6つの振動モードを特定するものであることを特徴とする。
第5発明の振動測定装置は、第3または第4発明において、前記センサーが、コンクリート橋の変形速度を測定する速度計であることを特徴とする。
第6発明の振動測定装置は、第3、第4または第5発明において、コンクリート橋に衝撃を加える打撃手段を備えていることを特徴とする。
第7発明の振動測定装置は、第6発明において、前記打撃手段が、木製またはプラスチック製のハンマーであることを特徴とする。
第8発明の振動測定装置は、第3乃至第7発明のいずれかにおいて、前記解析手段は、1次および2次の振動モードに基づいて固有振動数を算出し、算出された固有振動数記憶する機能を有しており、記憶されているコンクリート橋の固有振動数を比較する比較部を備えていることを特徴とする。
第9発明の振動測定装置は、第3乃至第8発明のいずれかにおいて、測定手段が、コンクリート橋の温度を測定する温度測定部を備えており、前記解析手段は、1次および2次の振動モードに基づいて固有振動数を算出し、算出された固有振動数記憶する機能を有しており、記憶されているコンクリート橋の低温時の固有振動数と高温時の固有振動数に基づいて、固有振動数を補正する補正機能を有していることを特徴とする。
第10発明の振動測定装置は、第3乃至第9発明のいずれかにおいて、特定された1次および2次の振動モードにおけるコンクリート橋の変形状態を特定し、該変形状態を表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
第1、第2発明によれば、コンクリート橋に衝撃が加わった際におけるコンクリート橋の振動を測定し、この測定値に基づいて1次および2次の振動モードを特定するので、1次および2次の振動モードからコンクリート橋の固有振動数を算出することができる。すると、コンクリート橋の固有振動数に基づいて、コンクリート橋の耐震性や劣化の状態を推定することができる。しかも、コンクリート橋における1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モードを正確に求めることができるので、固有振動数を正確に把握することができる。
第3発明によれば、コンクリート橋に衝撃が加わった際に測定手段が送信する信号に基づいて解析手段が1次および2次の振動モードを特定するので、1次および2次の振動モードからコンクリート橋の固有振動数を算出することができる。すると、コンクリート橋の固有振動数に基づいて、コンクリート橋の耐震性や劣化の状態を推定することができる。しかも、センサーは、コンクリート橋に1カ所または2カ所設置するだけでよいので、振動を測定するための作業を低減でき、コストも押さえることができる。
第4発明によれば、によれば、4〜6つの振動モードが求められれば、固有振動数を算出することができる。
第5発明によれば、速度計を利用してコンクリート橋の変形速度を測定しているので、コンクリート橋の変位を把握することも可能となる。しかも、大規模なコンクリート橋にも適用することができる。
第6発明によれば、打撃手段によってコンクリート橋の所望の位置に衝撃を加えることができるので、振動モードの測定を精度よく実施することができる。
第7発明によれば、木製またはプラスチック製のハンマーを使用するので、打撃を加えた際にコンクリート橋の損傷を防ぐことができる。しかも、打撃を加える作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
第8発明によれば、異なる時期に測定された固有振動数を比較することにより、コンクリート橋の振動特性の変化を把握することができる。
第9発明によれば、温度変動の影響を排除して固有振動数を求めることができるので、固有振動数を正確に把握することができる。
第10発明によれば、コンクリート橋の特定された1次および2次を主とした任意の振動数での振動モードにおけるコンクリート橋の変形状態を画像として認識できるので、コンクリート橋の振動状況のイメージを把握しやすくなり、固有振動モードを特定することができる。
本発明の振動測定装置は、橋梁などの構造物の振動特性を測定する装置であって、構造物の固有振動数を把握できるようにしたことに特徴を有している。
本発明の振動測定装置によって振動特性を測定する構造物は、例えば、コンクリート製の橋やトラス橋、ビルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の振動測定装置は、橋のように両端が支持された梁状構造を有する構造物であれば振動特性を測定することが可能である。
後述するように、本発明の振動測定装置は、その装置の構成が単純であり、また、必要とする装置なども少なくできる。このため、本発明の振動測定装置は、大規模な橋梁の振動特性を測定する場合には作業工数を少なく点検できるという利点を有している一方、大規模な橋梁に比べて多数設置されている比較的小さい橋(例えば、橋長が短いコンクリート製の橋)の振動特性を安価に測定できるという利点も有している。
以下では、一般的な橋梁B(図3参照)において、その橋脚P,P間の橋板Dの振動特性を本発明の振動測定装置によって測定する場合を説明する。このような橋板Dは、両端が橋脚P,Pによって支持された梁のように振動するので、かかる橋板Dの振動特性を測定する場合を説明する。
(本実施形態の振動測定装置1)
図1に示すように、本実施形態の振動測定装置1は、振動特性を測定する橋板Dに設置されるセンサー11を備えた測定手段10と、この測定手段10から送信される信号に基づいて橋板Dの振動特性を解析する解析手段20と、を備えている。
(測定手段10)
図1に示すように、測定手段10はセンサー11を備えている。
このセンサー11は、橋板Dに設置されて、橋板Dの振動を時間連続的に測定するものである。例えば、センサー11には、橋板Dが変形する際の加速度を時間連続的に測定する加速度センサーや、橋板Dが変形する際の速度を時間連続的に測定する速度センサーを使用することができる。
なお、センサー11として速度センサー使用した場合には、その測定結果を用いて橋板Dが変形した際の変位を把握することができるので好ましい。しかも、センサー11として速度センサー使用した場合には、長周期振動でも正確な測定が可能となるので、大規模な構造物(例えば長さが100m以上の橋板Dを有する橋梁など)にも適用することができる。
もちろん、加速度センサー使用した場合でも、その測定結果を二回積分することによって変位を算出することができる場合がある。しかし、測定データに含まれるノイズなどの影響を考慮すれば、測定データを一回積分するだけで変位を把握することができる速度センサーを使用する方が好ましい。以下では、センサー11として速度センサーを使用することを前提として説明する。
また、測定手段10は、センサー11を2つ備えている。センサー11を2つ備えていれば、2箇所で同時に振動を測定できるので、測定データから振動モードを特定でき、この振動モードに基づいて固有振動数を算出することができる。例えば、図3(B)におけるMS(橋板Dの幅方向の端部であって橋脚P,Pの中間点)とQS(橋板Dの幅方向の端部であって一方の橋脚Pから橋脚P,Pの長さLの1/4になる点)に設置すれば、振動モードに基づいて橋板Dの固有振動数を算出することができる。
なお、測定に必要な時間と手間が2倍以上になっても構わない場合や1次曲げ振動モードと1次ねじれ振動モードだけに注目する場合には、センサー11は1つでもよい。もちろん、センサー11は3つ以上でもよい。3つ以上設けた場合には、振動モードの特定などをより精度よく行うことができる。
また、測定手段10のセンサー11は、測定データを無線によって解析手段20に送信できる機能を有していることが望ましい。この場合、センサー11の設置が容易になるし、センサー11の設置場所の自由度を高めることができる。
一方、センサー11は電線などによって解析手段20に接続されていてもよい。この場合には、センサー11が必要とする電力を解析手段20側から供給できるので、センサー11を小型化することができる。
さらに、リアルタイムでデータを解析手段20に送信する必要がないのであれば、センサー11にデータ記憶機能を設けるか、または、センサー11とともにデータ記憶装置を設置してその記憶装置にデータを記憶させるようにしてもよい。この場合でも、測定時間と測定データを対応させて記憶させておけば、測定終了後にデータを解析することが可能となる。
(解析手段20)
図1に示すように、解析手段20は、測定手段10のセンサー11によって測定された測定データを解析する演算部21と、演算部21の解析結果や測定データの生データを記憶する記憶部27を備えている。
演算部21は、測定手段10のセンサー11からの信号に基づいて、橋板Dの1次および2次の振動モードを特定する機能(振動モード演算部22)を有している。具体的には、橋板Dにおける、1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじれ、2次そりの6つの振動モード、または、6つの振動モードのうちすくなくとも4つの振動モードを特定する機能を有している。少なくとも4つの振動モードを特定することができれば、得られた振動モードを用いて橋板Dの固有振動数を特定することができる。すると、算出された固有振動数に基づいて、橋板Dの耐震性や劣化の状態を推定することができる。
なお、振動モード演算部22が特定した振動モードの結果を、別の装置などにおいて演算し固有振動数を求めてもよいが、演算部21が固有振動数を算出する固有振動数演算部23を備えていてもよい。この場合には、測定結果を迅速に解析できるし、固有振動数を算出するための別な装置が不要となるので、測定や解析に必要な機器を少なくすることができる。
記憶部27は、上述したように、演算部21の解析結果や測定データの生データを測定条件や測定時間などとともに記憶しておく機能を有している。しかも、記憶部27は、記憶しているデータを外部や演算部21などからの要求に応じて供給する機能も有している。
(打撃手段2)
そして、本実施形態の振動測定装置1は、橋板Dに衝撃を加える打撃手段2を備えている。この打撃手段2は、橋板Dに対して瞬間的な衝撃を一回加えるものである。打撃手段2には、例えば、木製またはプラスチック製のハンマーなどを使用できるが、橋板Dに対して瞬間的な衝撃を一回だけ加えることができるものであれば限定されない。とくに、木製またはプラスチック製のハンマーを使用することが好ましい。木製またはプラスチック製のハンマーを使用すれば、金属製のハンマーや機械式打撃装置を使用する場合に比べて、橋板Dの損傷を防ぐことができる。しかも、木製またはプラスチック製のハンマーは、他の器具に比べて軽量であるので、打撃を加える作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
なお、打撃手段2として木製またはプラスチック製のハンマーを使用する場合には、ハンマーに加速度センサー3を設けてもよい(図2参照)。すると、毎回の打撃のエネルギー(つまり橋板Dに加えた力)を把握できるので、打撃エネルギーの相違を補正することも可能となる。
また、外力などによって橋板Dに対して瞬間的な衝撃が加わるのであれば、打撃手段2は必ずしも使用しなくてもよい。しかし、この場合には、橋板Dに対して外力が加わる位置やタイミング、また、衝撃力が振動モードの特定に適しない場合がある。打撃手段2を使用すれば、打撃手段によって橋板Dの所望の位置に、所望のタイミングで衝撃を加えることができるので、振動モードの測定を精度よく実施することができる。
(本発明の振動測定装置1による測定作業)
本実施形態の振動測定装置1を使用した振動特性の測定作業を説明する。
以下では、打撃手段2を使用して橋板Dに打撃を加え、その打撃により発生する振動を2個のセンサー11によって測定する場合を説明する。
まず、橋板Dの所定の位置、具体的には、上述したMS(図3(B)の上側のMS)およびQS(図3(B)の下側のMS)の点に設置する。
ついで、橋板Dの所定の位置に打撃手段2によって衝撃を加える。例えば、木製のハンマーによって、橋板Dの中央(図3(B)の格子点MC)に打撃を加える。
すると、センサー11を設置した位置において、打撃手段2の打撃によって発生する橋板Dの振動がセンサー11によって検出される。なお、センサー11が測定したデータが、センサー11または解析手段20の記憶部27に記憶される。
データが記憶されると、位置を変えて再び打撃手段2によって橋板Dに打撃を加えて、橋板Dの振動がセンサー11によって測定する。例えば、図3(B)におけるセンサー11を設置したMSの反対側に位置するMSに打撃を加えて、橋板Dの振動をセンサー11によって検出する。
そして、順次打撃を加える位置を変えて、全ての格子点または、橋板Dにおける1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モードが最大振幅となると推定される部分(図3(B)におけるMC、MS、QC、QS)に打撃を加えると測定が終了する。
ついで、センサー11を設置する位置を順次変えて、上記と同様に測定を繰り返す。
そして、全ての格子点における測定が終了すると、解析手段20の演算部21によって1次および2次の振動モードを特定することができる。
すると、得られた1次および2次の振動モードを用いて、橋板Dの固有振動数を求めることができる。
なお、上記例では、橋板Dの橋脚P,P間を8分割し、橋板Dの幅方向を5分割した場合の格子点にセンサー11は設置し、その格子点に打撃を加える場合を説明した。しかし、格子点を設ける位置は上記位置に限定されない。
また、打撃は全ての格子点に加えなくてもよく、上述したように、橋板Dにおける1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モードが最大振幅となると推定される部分(例えば、図3の5点)だけに打撃を加えてもよい。この場合でも、橋板Dにおける1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モードを正確に求めることができるので、固有振動数を正確に把握することができる。しかも、打撃を加える位置を少なくできるので、作業工数を少なくすることができる。
さらに、1次および2次の振動モードを特定し固有振動数を算出するだけでよいのであれば、全ての格子点にセンサー11を設置して測定する必要はない。つまり、同じ側に位置するMSとQSに設置して各格子点に打撃を加えてそれぞれ振動を測定すれば、その測定データを利用して、1次および2次の振動モードを特定し固有振動数を算出することができる。
(演算部21について)
演算部21は、振動モード演算部22が振動モードを特定した場合、この振動モードに対応するバンドパスフィルター濾過の自由振動波形に基づいて、この振動モードに対応する減衰定数を把握することが可能となる。すると、固有振動モード対応の減衰定数の経時変化によって、構造物損傷に関する情報を得ることができる。
また、演算部21は、指定する振動数狭帯域における振動モードを特定する機能を有している。指定する振動数帯域における振動モードを特定するには、帯域濾過波(バンドパスフィルターを通過させた波形)を計算すればよい。そして、指定する振動数狭帯域における振動モードを把握できれば、固有振動モードと固有振動モード対応減衰定数(モード減衰)が特定でき、理論モデルとの対比が可能となるという利点が得られる。
(比較部26)
なお、解析手段20は、記憶部27に記憶されている測定結果を比較する比較部26を備えていてもよい。具体的には、同じ橋板Dについて、異なる時期に測定された固有振動数を比較する比較部26を設けてもよい。すると、橋板Dの固有振動数の変化、つまり、橋板Dの振動特性の時間経過に伴う変化を把握することができるので、この橋板Dの耐震性や劣化の状態を推定することができる。
(温度測定部12)
また、橋板Dの測定する時間や時期によっては、橋板Dの温度が異なる。温度が異なる場合、固有振動数が変化するので、得られた結果を比較することができない。そこで、橋板Dの低温時の固有振動数と高温時の固有振動数を予め求めておき、これらの固有振動数を記憶部27に記憶しておく。そして、これらの固有振動数に基づいて、測定された固有振動数について温度補正を行う温度補正機能を演算部21に設けておくことが望ましい。すると、温度変動の影響を排除して橋板Dの固有振動数を求めることができるので、橋板Dの固有振動数を正確に把握することができる。例えば、測定手段10に温度測定部12を設け、測定された温度データに基づいて、演算部22が算出した固有振動数を補正するようにすればよい。
例えば、温度補正機能による温度補正は、橋板Dもしくはその周辺外気の温度と橋板Dの固有振動数の関係を表す曲線を事前に求めておき、その曲線を用いて、基準温度(たとえば摂氏20度)の際の固有振動数に換算することで補正することができる。
曲線は、固有振動数をf、温度をTとし、基準温度20度の際の固有振動数(基準固有振動数)をf20とすると、たとえば、f=f20×exp(b×(20−T))やf=f20+b×(20−T)のように表される。この曲線の2つのパラメータであるf20とbは、低温期と高温期の異なる時期に数日間連続で振動測定することにより、昼夜の寒暖の差に起因する温度変化と、測定される固有振動数のデータに基づいて、最小二乗法などの方法を用いて決定することができる。なお、2つのパラメータのうち、bを不変とすると、測定されたfとTを用いてf20が得られる。つまり、温度補正した基準固有振動数f20が得られる。この基準固有振動数は、健全性の指標とすることができる。
また、橋板Dの固有振動数は、摂氏零度(氷点)付近を境にして、その傾向が大きく変化する。したがって、摂氏零度(氷点)よりも高温の状態と低音の状態を取る橋板Dの場合には、高温領域の曲線と低温領域の曲線をそれぞれ求めておけば、bを不変とすることによって、橋板Dもしくはその周辺外気の温度Tに係わらず、f20を得ることができる。
なお、基準固有振動数は、構造物の設計で材料諸定数の前提とされることの多い摂氏20度の場合に限られず、それ以外の温度でもよい。つまり、各橋梁Bを設置している環境に合わせて、適切な温度を適宜選択すればよい。
(表示手段)
また、振動測定装置1は、解析手段20によって得られた1次および2次の振動モードのデータ(または記憶部27に記憶されているデータ)を用いて、橋板Dの変形状態を算出し、その変形状態を表示する表示手段を備えていることが望ましい。この場合、橋板Dの1次および2次の振動モードにおける橋板Dの変形状態を画像として認識できるので、橋板Dの振動状況のイメージを把握しやすくなる。
本発明の振動測定装置を用いた振動特性の測定の有用性を確認するために、コンクリート橋(プレキャスト橋(PC橋))を建設する各ステージにおける構造物や橋梁の固有振動数を測定した。
まず、実施例を説明する前に、構造物や橋梁に適用される振動理論について簡単に説明する。
単純桁橋の全体的振動特性は、単純支持の曲げ剛性で等価な梁もしくは板とみなして考えることができる。特に、1次モードにのみ着目するのであれば、対辺自由対辺単純支持(S-F-S-F)の板の厳密解(A.WLeissa,1969,p.45-58)を参考にすると、アスペクト比(長さ幅比、a/b=LB)に関わらずボアソン比vが同じであれば1次振動数は大きく変わらない。
また、等方性版の場合、固有振動数は単純梁に対して1/(1-v)1/2倍となり、鉄(v=0.3)の場合、5%増、コンクリート(v=O.2)の場合、2%増となる。また、逆に板の固有振動数を単純梁の固有振動数と見なして曲げ剛性を用いて単純梁の曲げ剛性を逆算する場合には、1/(1-v)倍とみなすことになるので、鉄で約10%、コンクリートで約4%過大に算定することとなる。したがって、これらの差より小さい固有振動数比の差を間題とする際には単純梁仮定は不適切であるが、間題としないでよい場合には適切であると言える。桁橋の場合には、橋軸直角方向の剛性は相対的に小さいので、単純梁仮定でも適切であると言える。
また、同じ文献には、高次モードの変化についても、さまざまな研究者の成果を紹介した計算表やノモグラムが掲載されている。特に、高次モードの変化について、この文献のp.54-57に示されたZeissig(1898)が求めた厳密解に基づいて描いた正規化振動数(横軸)とアスペクト比(縦軸)の空間に描かれた軸方向曲げ(n,1)モードに対する(n,m)モードの正規化振動数の変化を図2.2に示す。実線は軸対称、破線は軸非対称(逆対称)モードである。
通常の単純支持橋では、アスペクト比は0.5〜2の間のものが多いと思われる。交通量が多い古い都市内の橋梁ではアスペクト比は0.5〜1の間のものが多い。この場合、振動数の低い方から、1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、順に2次でも同じく曲げ、ねじれ、そりの振動モードが現れることが予想される。そりモードは橋軸直角方向に3点以上のセンサーを配置しないと検出できないので厳密に言えば、既存橋梁を供用下で計測するのは困難である。しかしながら、都市内の中規模道路橋梁や地方の1車線道路橋ではアスペクト比が比較的大きく1〜2以上になることがある。この場合、1次そりモードより2次曲げや2次ねじれが早く出現する可能性が高くなり、計測やモードの同定は一段と容易になる。ただし、以上の考察は板と見なせる場合のことであり、桁橋の場合には、橋軸直角方向の剛性は相対的に小さいので、そりモードに貢献する剛性は小さくなることから、このノモグラムよりも低い振動数でそりモードが現れることになり、場合によっては、1次曲げよりも低い振動数でそりモードが出現する可能性すら否定できない。
以上を具体的に理解しやすくするため、図2.3に板の低次の振動モードとアスペクト比(辺長比)の異なる板の振動モードの出現順の交替の説明を示す。対辺単純支持対辺自由の境界条件の矩形板の場合、アスペクト比(長さ幅比)a/bの大きさによって、振動モードの出現する順序が異なる。a/bが2.0の場合、低振動数側より、1次曲げ、1次ねじれ、2次曲げ、2次ねじれ、3次曲げの順に出現する。しかし、a/b=1.6の場合、2次ねじれの次に1次そりモードが現れる。a/b=0.8の場合には、1次ねじれの次に1次そりモードが現れる。a/b=1あたりでは、1次そりと2次曲げが同時に現れる場合があり、判断が困難となる可能性がある。a/b=3以上では、1次曲げ、2次曲げと続き、低振動数領域では梁と見なせる場合もありうる。
また、桁橋の場合、曲げ剛性が、軸方向に比べて軸直角方向が小さいので、そりモードが低振動数側に移動して、より早く出現することが考えられる。
したがって、梁の振動モードである軸方向の曲げ振動モードや低次のねじれモードだけでなく、異方性板としての振動モードを常に念頭に置く必要がある。このことは、経年に起因する劣化・損傷による振動モードの変化を捉えるには、均質な材料特性と理想的な構造性能が発揮される可能性の最も高い初期の状態をベースライン情報として獲得しておく必要を強く示唆している。
1)振動測定での加振方法
振動測定での加振方法としては、微動、車両走行、ハンマー打撃の3つの方法を考える。
(1)微動
走行車両のない微動状態は、桁(または床版)の上下振動には上下並進振動モードが基本モードとして卓越していると想定される。したがって、微動状態の測定により、基本振動モードと基本振動数を確認する。ただし、厳密な振動モードの確認は、道路の両側を同時測定する必要があり、供用開始前に行うことはできるが、供用開始後は困難な場合が多いので原則として行わない。
微動を原因として橋梁に入力される振動は、架橋地点の地盤の固有振動特性が反映されたスペクトル特性を有していると考えられる。また、風の影響も考えられる。
常時微動の場合は、微動の安定した状態で10回程度、不安定であると100回程度の平均化操作が必要と考えられる。異常値部分の排除と良好な部分のみの採用を、統計理論を援用して自動的に行ったり、丁寧に時刻歴やスペクトルを見ながらマニュアルで行ったり、という準備作業が欠かせない。これまでの橋梁振動の設計モデル検証や損傷探知に関する実橋への適用事例の多くは、振動データ分析で基礎となるこの部分の記述が含まれている論文・報告は意外と少ない。したがって、交通量が少ないことが必須条件となり、深夜や過疎など、時間・空間的な制約がある。精度はせいぜい数%であると考えられる。基本的な準備作業を怠れば、数10%にもなるであろう。
(2)車両走行
車両の走行により、励起される固有振動モードと移動荷重によるたわみ振動が生じる。前者は励起される固有振動であるので、固有振動数は構造物性を反映している。それに対して、後者では振輻はたわみそのものであるが、卓越振動数は走行速度と支間長から決まるもので、構造物性とは無関係である。前者はスペクトル解析から、後者はたわみの時刻歴解析から知ることができる。たわみには、動的波形として記録されるが、それには固有振動モードと移動荷重による静的たわみ成分の和として記録されるはずである。静的たわみ成分は、動的成分の除去や中央たわみを求めることなどにより求めることができる。
車両の走行は、車線の規制を受けることから、1車線の一方通行できる橋梁であれば、橋軸上を走行することも可能であるが、普通は、2車線以上であるので、車線上を走行する荷重は橋軸に対して偏った載荷状態であるので、ねじれ振動が励起されやすい。
車両走行の場合、橋梁に入力される振動は、車両の重量、寸法、速度、道路舗装面の状態など様々な要因によって引き起こされる。橋梁全面に1台のみ載っている場合には、分析は容易であるが、複数台載っている場合には分析が困難となる。単純桁橋で、多径間の場合でも、他の径間の走行車両の影響は明瞭に受けることがわかっており、1台のみ載っている状況が作る出されることを待つ必要がある。
試験車の走行実験なども、他の車両が通っていないことや残留振動がないことが望ましいこと、試験車の運転の速度や走行位置に関する再現性にも限度があるので、精度向上のためには、誤差を少なくするための多数回の試行が必要である。また、これらの方法では、精度はせいぜい数%であると考えられる。
(3)ハンマー打撃
理論的に、荷重載荷時間が無限小のインパルスの場合、荷重入力のスペクトルが一定になり、応答のスペクトルがそのまま対象の系の伝達特性(固有振動特性)となることからハンマー打撃の利点は古くから認知されている。実際には載荷時間が有限時間であり、載荷時間が長くなると入力スペクトルは高振動数側で急激に低下する。したがって、ハンマーの材質が間題となる。機械工学の分野では、標準的な方法である。
橋梁の振動測定の場合、橋梁の重量が大きなことから大きな打撃荷重が必要となり、車両の段差落下がよく利用されている。また、重錘落下も利用されており、落下した後のリバウンドによる繰り返し載荷による波形の複雑化を避けるために接地面にゴムなどを用いてリバウンドした重錘を空中で止めることなどがなされている。しかし、これらの方法では接地時間が長くなり、その結果として、入力スペクトルは低振動数域で急激に低下して、高振動数領域の入力が消失し、高振動数域の固有振動を捉えることは難しくなると考えられる。
一方、ハンマー打撃については、実験室(西村ほか[1987])だけでなく、実橋でも利用されるがあまり知られていない(岡林・原⊂1988]、TwayanaandMori[2012a])がこれもまた有効である。精度の良い記録を得るためには、載荷荷重を大きくするか、振動計の感度を高めるかのいずれかの方略が考えられる。既往の例では、前者の方略に立ったものが多いが、著者は後者の方略に立つ。多くの研究者は加速度計を用いているが、本実施例では、動コイル型の高感度の速度計を用いる。総合ゲイン特性は、加速度計に比べて平坦さには劣るが、感度の面で圧倒的に有利である。
ハンマー打撃は、加振の繰り返しが容易であり、加振場所の制御も再現性が高く、1回の観測時間が短くて済むために、短時間でも交通流のないか停止した時間帯を選べば、大がかりな交通規制をすることなく、比較的簡単に実施することができる。
精度としては、室内実験はもとより、実橋でも繰り返し行えば、1-2%程度が望める。我々は、系統的な打撃振動実験TwayanaandMori[2012b])により、効率的な実験方法を開発した。損傷程度によって打点を制御する方法である。
(1)振動モードを絞り込んだ振動測定
センサーは、車道の車両走行や歩行者・自転車の通行の妨げとならないように、(1)車道外側線よりも外側に置く、(2)歩道端部に置く、(3)地覆に置く、などの方法を採ってきた経験から、いずれかで対応した。
また、道路両端部を同時に測定するためには、これまで有線でケーブルカバーをして道路を横断させたり、橋の下を通したりして同時観測を行ってきたが、これにはかなりの注意と時間と要するために時間がかかる。また、無線による計測は予算上、今回叶わなかった。
したがって、片側計測(常に車道の走行方向左側)とした。これでは、板の1次そりモード(L3モード:支間方向軸方向に1次モードで、支間軸に対称で軸上と端部とが正負逆になる振動モード)は特定できない。したがって、1次曲げ、1次ねじれ、2次曲げの3つの低次振動モードに着目することとした。
(2)振動モードを絞り込んだ振動測定を実現させる方法
短時間で効率的な振動測定を行えるようにするため、構造振動の知識を必要とするが、機動性の増すMS(センサーを置く道路端部の道路中心軸平行線上の支間中央で、Mはmid-spanを、sはsensorを表す)、QS(同じ道路端部センサー測線上の支間長の1/4地点、Qはquarter-spanを表す)の2点測定に重点を置く。これは、1径間に最低2点(MS、QS)のセンサーを配置して計測すると言う意味である。
地方道で、車の往来が極めて少なく、長い距離を見通せる場合や片側1車線の場合には、一部で(主に深夜に限り)、道路中心線上の支間中央(MC)とMSの2点配置やMC、MSに加えて、QC(道路中心線上の支間長の1/4地点)やQS(道路端部センサー測線上の支間長の1/4地点)にも配置した(3点または4点測定)。
(3)発展的モード励起ハンマー打撃法
本実施例で採用する手法は、発明者が以前から開発してきた方法である。基本的な概念は、極めて基礎的なことの組み合わせであるものの、橋梁に適用した事例は国内国外とも40年間の文献を対象に調べたが、誰も行っていない。
本実施例で採用する手法を、「発展的モード励起ハンマー打撃法(EvolutionalHammerImpactModeExcitationMethod)」と呼ぶ(Mori,SeeReference)。
一言で言えば、梁や板の固有振動モードの山・腹に相当する地点を正確に求めて正確に打撃し、打撃点の組み合わせで、基本モードの特定から始まり、順次、低次より発展的に振動モードとそれに対応する固有振動数を求めていくことである。
木製ハンマーやプラスチック製ハンマー(いわゆる「かけや」)を用いれば、道路の車両走行が完全に途切れれば、走行車両通過後の自由減衰振動中に道路中心線に移動し、打撃前1分間の静止と打撃後の1分間の静止を確保すれば、ノイズの少ないSN比の高い極めて良好な記録が得られる。わずか2分間で1打撃が終了するという極めて効率の高い手法である。交通流の注意を怠らず、両側に見張りを設置していれば、打撃者と測定者の2人で測定できる。
実際の測定で、センサー設置や配線が完了し、振動測定が始まれば、極めて手際よく行える。最も時間を要するのは、交通流が止まる時間帯を待つことである。
梁でモデル化できるような支間の長さ幅比LIB(アスペクト比)の場合には、梁でモデル化して十分であると考えられる。多点で振動モードを検出するような構造同定の場合を除くと、基本振動モードであるので、橋梁面のどこを打撃しても励起される(TwayanaandMori,2012)振動モードである。そのことを考えれば、MCを打撃すれば、明瞭に特定できる。図2.6に発展的モード励起ハンマー打撃法の原理とセンサーと打撃点配置(梁の場合)を示す。梁と見なす場合の基本の1次と2次の振動モードとそれらを最も励起する打撃点を示している。
一般に橋梁は、径間の長さと幅を有するので、厳密には、また、基本振動よりも高次の振動モードを対称とする場合には、梁ではなく板としての振動を考える必要がある。そこで、板の振動理論を念頭に置き、発展的モード励起ハンマー打撃法の利用法について解説する。図2.7に発展的モード励起ハンマー打撃法の原理とセンサーと打撃点配置(板の場合)を示す。桁橋を片方の対辺が自由で他の対辺が単純支持状態の均質な板と見なす場合の低次の1〜5次(1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじれ)の振動モードとそれらを最も励起する打撃点を示している。
また、図2.8に、発展的モード励起ハンマー打撃法の原理と手順(板の場合)を示す。MCは、道路軸方向に均質な梁や板の場合に、1次曲げ、3次曲げなどの支間中央が山になる振動モードが最大となる点であり、ねじれモードの場合には節となるために振幅は小さいる。MSは、同様に1次ねじれ、3次ねじれなど支間中央の両端部が山・腹となり、かっ道路中心点の振幅がゼロになる最大となる点である。板のL3次モード(そりモード)ではMC、MSともに振幅は相応の大きさで現れるが位相が逆転する。
すなわち、MC+MSの組み合わせは、打撃点によって励起させる振動モードを制御すれば、1次曲げ、1次ねじれ、1次そりの3種の板の基本モードが区別され、固有振動数が特定できる。損傷が道路軸に非対称な場合は、均質(無損傷)の場合にゼロになるべき点が有意な振幅を生むようになると考えられる。そのような場合には、工夫すれば解決できる。
MCにセンサーが設置できない場合が普通であるので、この際には、MSとは反対側のMA(mid-spanでセンサーとは反対側notherside:A)と組み合わせて、MS+MAに配置することによって容易に解決できる。MSとMAを同時に測定するためには、有線の場合、ケーブルカバーをして道路を横断させるか、橋梁のドをくぐらせるかして対応する。無線のセンサー計測系を準備できる場合は、特別に間題がない。
しかし、打撃点にある工夫をするのみで、MSにのみ配置しただけでも、1次曲げ振動と1次ねじれ振動であることは確実に特定できる。したがって、試験時間の延長を受け入れれば、MCだけで1次曲げと1次ねじれは特定が可能である。同様に、MS、QSの組み合わせで、2次曲げが容易に特定できる。
(4)発展的モード励起ハンマー打撃法の検証(TwayanaandMori[2012b])
図2.9に実施した新設(供用直前)の吉田橋(YSD橋)の平面形状、断面形状、ハンマー打撃点とセンサー一配置図、そしてYSD橋においてハンマー打撃法の6回繰り返し実施したMC打撃時のMSの速度フーリエスペクトル6回分の繰り返し行ったハンマー打撃法によるフーリエスペクトルの再現性の検討結果を示す。200Hzサンプリングで、1回の打撃とフーリエ解析には約20秒を用いているので、振動数分解能は0.05Hzである。図では、6っのフーリエスペクトルに差異は認められない。特定した卓越振動数は6回分ともに、7.8Hzである。ばらつきはO.05/7.8・0.6%の最大2倍である1.2%より小さい。図2.10に打撃場所によるMSの速度フーリエスペクトルから読み取れる卓越振動数のばらつきを示す。道路中心位置だけでなく、中央部の1/2支間長、1/2橋幅の以内であれば中心打撃と同等の卓越振動数が得られるのがわかる。7.8Hzは基本振動モードである1次曲げであることが、MC打撃で特定できる。図2.llに、打撃場所によるMSの速度フーリエスペクトルの変化を示す。打撃点によってそれぞれスペクトル形状が微妙に変化しているが、ほかで現れて特定のスペクトルで振幅が発現しないピークがある。たとえば、道路中心(MC)を打撃したときのみ、ねじれ振動の12Hzのピークが現れない。これによって、12.1Hzは1次ねじれ振動モードであることがわかる。MC+MSまたはMAの打撃の組み合わせで特定できる。それ以上の振動モードは、このYSD橋が一端の片側だけに拡幅部が付いており、それ以上の高次モードは、検出するための打撃点設定やセンサー配置に工夫が要る。
ここで、26Hzは1次振動数の比から、2次曲げ振動モードであることは推定できるが、1次そりとの区別が必要である。また、それ以上の卓越振動モードの特定は容易ではない。ここでは、1次曲げのみ特定できる。別の打撃点で1次ねじれも特定できる。[]内の振動モードは、数値解析により推定。端部1測線だけでは特定できない。そこで、打設されたコンクリート強度やその経時増加、組み立て前の単独桁の全ての卓越振動数から逆算されるヤング係数などから推定されるコンクリートのヤング係数とゴム支承の一般的なヤング係数とボアソン比などを用いて3D-FEM(ABAQUS)で固有値解析を行った。図2.12に解析モデルと1次・2次の固有振動モードを、図2.13に3〜5次、図2.14に6〜8次、図2.15に9〜10次の固有振動モードを、また、表2.1に1次から12次までの固有振動数を示す。
それぞれのピークを3D-FEM結果との比較により、36Hzは2次曲げ+1次そりモード、58-66Hzの幅の太い卓越は、3次曲げや3次曲げ+1次そりなどの複数の振動モードの固有振動数が近接しており、高次振動は測定されたフーリエスペクトルからだけでは同定が困難であることがわかる。85Hz付近の卓越は関係しそうな固有振動モードが多くあるので全く不明である。
以上により、斜角があり、片端部片側だけに拡幅部を持つような場合にでも、1次曲げ、1次ねじれの低次モードは確実に、2次ねじれについてもほぼ確実に測定だけで固有振動モ一ドとそれに対応する卓越振動数(すなわち固有振動数)が得られることが、発展的モード励起ハンマー打撃法による測定と3D-FEMによる数値解析の両面で検証された。
(振動測定の機器と道具)
測定は、以下の機器を用いてかけやによる打撃実験をおこなった。使用した機器を写真2.1に示す。
・地表用微動計CR4.5-2S(6個)
・収録装置GEODAS-12-USB-24ch(物探サービス社製)(1台)
・微動計接続用ケーブル(IOOm×5本,5m×1本)
・バッテリーパック(車両用4台)
・電源用ケーブルACIOOV用(200mxl本)
・GPS測定器(GARMIN社製)(1個)
・レーザーセンサー・-LV-H67(2個)(通過物検知・速度計測用)
・レーザーセンサー用リフレクター(2個)(通過物検知・速度計測用)
・かけや(1個)
その他に測定に必要な備品として以下の物がある。
・センサーカバー(センサーへの風の影響を低減するためのもの)
・センサーカバー用重しコンクリート(ビニール袋に入れた土砂でもよい)
・バブル方式水準器(3台)(センサーの水平制御のため)
・50m巻尺、コンベックス(橋梁の測量)
・トランシーバー(人数分:5台、見張り・ステーション)
・移動式調査表示看板(鉄製2台、プラスチック製2台)
・赤コーン(20個)(調査表示、ケーブル・センサー保護:車両・歩行者)
・短寸点滅赤色灯(12台)(夕刻、夜間調査表示用)
・赤白旗(2式〉(車両一時停止用)
・ビニールテープ(ケーブル結束用)
・赤白粘着テープ、強力粘着ガムテープ(車両通過位置測定用)
・チョーク(位置出し用)
・ヘルメット、作業服、安全反射ベスト、防寒作業着、長靴(人数分)
・ヘルメット用ランプ(人数分)
1)GEODAS-12-USB-24ch:ノートパソコンをベースとした増幅器、AD変換器、記録機から成る測定器である。センサーからのデータを収集し、その波形を液晶画面に描写する。
計測制御アプリケーションMTOBSで制御する。これは測定の際にサンプリング周波数や測定時間、測定するチャンネル数、ローパスまたはハイパスフィルタの範囲の設定などの測定パラメーターの変更ができる。これらのパラメーターはその測定に必要な値や要求される値に設定する。我々の測定では、サンプリング周波数は200Hz、測定時間は180秒でおこなった。
2)センサーCR4.5-2S:3成分(水平2成分と鉛直1成分)の動コイル型の速度計である。
平坦なゲインの特性が0.5Hzから23Hzであり、45Hz(05Hzは電気による)の圃有振動数を持つバネ型のペンデュラム(振り子)から成る。皿接続ケーブルと動力供給:ケーブルはセンサーとGEODASの接続に用いる。センサーは構造物と物理的に接触させ、構造物の応答を検知する。これらの応答はケーブルを通して測定器GEODASに伝達される。
我々の測定では、100mのケーブル5本と20mのケーブル1本を用いる。カーバッテリー(38B19L型)で外部からDC電源としてGEODASに供給する。
CR4.5-2S(以下速度計とする)とかけやの詳細は以下の通りである。また、速度計の周波数特性を図2.16に示す。
〈CR4.5-2S>
・測定方式:動コイル型
・感度LOV/cm/sec
・測定周波数:0.5-20Hz
・測定範囲:振子可動クリアランスの範囲で±1mm
・外形:10×10×10cm
・重量:約1.2kg
3)木製ハンマー:橋梁は本実施例においてインパクトハンマー法によって励起させる。橋への加振は基本的に2.55kgの木製ハンマーによっておこなう。このハンマーのヘッドは直径10cmの円筒状であり、円筒の高さは24cmである。ハンマーの持ち手の長さは90cmである。橋への予備テストによって木製ハンマーの自由落下によって起こす衝撃で橋の低次の固有振動モードを励起させることは十分可能であることを確認している。
〈かけや〉
・頭部寸法:φ100mm×230mm
・柄の長さ:900mm
・重量:2.72kg
4)実験車両:比較するために車両を用いて橋梁に移動荷重を載荷する車両走行実験もおこなった。ただし、橋梁は完成検査を受けるまでは、実験車両を走らせることを禁じられていたので、これは供用開始後のみである。実験車両は愛媛大学所有のトヨタ製のハイエースを使用した。
〈ハイエース:カタログ値〉
・型式:CBF-TRH200V
・車体の形状:バン
・車両重量:1730kg
・前軸重:1020kg
・後軸重二710kg
・寸法(長さ×幅×高さ):469×169×198cm
・ホイールベース:257cm(軸間距離のことで、軸矩と言う)
実験車両には、荷台を空にしてもカタログ値とは異なる。国十交通省四国地方整備局計量機での測定値は車両重量1.88tであり、特定運転手(研究担当者)を含むと全重量1.94tである。
4)吉田橋
吉田橋は今治市菊間に位置しており、長坂川に掛っている。2011年lHに建設が開始され、2011年8月に完成した。この橋はプレキャスト箱型プレストレストコンクリート桁である。斜角60°を持つ単径間の橋である。桁長は16.54m、幅は北側の端部で1L98m、南側の端部で15.72mである。南側の端部には曲線部が片持ち梁のように追加されている。
橋梁の主要寸法を図2.20に示す。図2.21に示すように、プレキャストの14本の箱型プレストレストコンクリート桁から成る。どの箱桁も17.14mで750mm×700mmの断面積を持つ。簡便のために、桁をGl、G2〜G13、G14とナンバリングする。G1桁は上流側であり、Gl4が下流側である。
5)第二馬越橋
第二馬越橋は今治市馬越に位置しており、日吉川に掛っている。2012年4月に橋の上部構造の建設が開始され、建設段階において研究が実行された。斜角87°を持っ単径間の橋である。中央部において橋長は1410m、幅は6.20mである。円滑な交通のために端部が広く作られている。橋の幅は、端部において9mである。プレキャストの8本の箱型プレストレストコンクリート桁から成り、どれも14.04mで500×700mm2の断面積を持つ。
橋梁の主要寸法と共に図2.22に平面図を、図2.23に横断面図を示す。簡便のために、桁をG1、G2〜G7、G8とナンバリングする。Gl桁は上流側であり、G8が下流側である。
6)御照橋
御照橋のみが直橋(斜角90度)である。図2.24に平面図を、図2.25に横断面図を示す。
橋長14.Omで、幅が12.8mである。終点側半分には、両側に道路曲線部の実現のために三角形上の拡幅部がついている。
(測定の手順)
1)共通事項
測定は、基本的に橋梁の支間中央・1/4地点・3/4地点と地盤に速度計を設置し、かけやを用いた打撃実験と車両走行実験の2通りをおこなう。速度計は,設置箇所の小石や砂を払ったあと水平に設置する。その後、ケーブルで速度計と収録装置GEODASを接続し、すべてのセンサーを完了したら電源を入れる。速度計を起動させ、わずかに刺激を与えて正常に作動しているかを確認する。速度計が正常に作動すること、正しい水平向きであること、正しく結線されていること、異常な長周期成分がないことなどを確認できた場合、風による影響を排除するためのカバーをする。確認できなかった場合は、一旦速度計を停止させて設置をやり直す。サンプリング周波数は,200〜1000Hzの範囲で求める振動数により変化させておこなうが、本実施例の対象橋梁では原則として200Hzである。
以下では、3種類の加振による測定手順を、2011年8月30日に測定した吉田橋の事例を参照して述べる。支間長16.54m、幅11.33mであり、アスペクト比a/b=16,54/11.33・=1.46である。
2)微動
微動は、周辺に振動源となるものが少ない時間帯に実施した。吉田橋の例を示す。吉田橋では、微動、車両走行、ハンマー打撃の3種類の加振による振動測定を行った。図2.26にその状況を示す。5台のセンサーを支間長の1/4、1/2、3/4、端部、橋台から8.6m離れた背後地盤の5点に設置した。写真2.16には、微動測定の様子を示す。1回の計測で200Hzサンプリングで180秒間記録した。図2.27に微動による支間中央での橋の上下成分速度時刻歴を示す。定常的な小さな信号であるが、1次振動数が卓越する定常的な振動を呈している。
3)ハンマー打撃
ハンマー打撃による過渡応答振動と自由滅衰振動を得るため、あらかじめ現地で測量した橋面寸法、支承位置に基づいて、橋軸線・橋両端部線の上に、それぞれ支間中央、1/4点、3/4点にチョークで十文宇マークを記し、橋梁の道路面のマーク上をかけやで打撃する。このとき、かけやの打撃面と道路面が平行になるように打撃する。打撃に当たっては、かけやの自由落下に少しカを加える程度とする。また、かけやが接地した後にリバウンドするが、リバウンドしたかけやの頭部が頂点に到ったときに静止させるようにかけやを制御する。これらは、打撃に加える力とかけや接地後の力の差が両足を伝わる潜在的な加振力を低減するためである。打撃と計測は、車両交通や歩行者を妨げないよう、それらが無いときを待って行う。
1回の計測で200Hzサンプリングで180秒間記録した。ハンマー打撃の場合には、車両走行があった場合、通過後でも自由振動が残留しており、大型車ではその振幅が大きい。
これらの残留振動が、微動レベルになったのを確認して打撃した。ハンマー打撃の場合には、その自由減衰振動が微動レベルに収まるまで、多くの短・中径間橋梁で10〜20秒を要したという経験から20秒〜40秒間隔でハンマー打撃を実施した。
打撃は、打撃者の挙動が橋の振動に極力影響を及ぼさないように座って打撃している(交通がまばら〉。図2.28にハンマー打撃(橋軸上の支間中央を打撃)による端部支間中央での橋の上下成分速度時刻歴を示す。約2秒時点で与えられた打撃により、直後にはゼロクロスが小さく頂部が鋭い波形であるが、時間とともに減衰して、ゼロクロス幅が安定し、また波形形状も安定して振幅のみが小さくなっており、打撃により直後に励起された高振動数成分が早く減衰・消失し、時間とともに1次振動数が卓越する減衰自由振動の様相を呈している。
4)車両走行
実験車両を用いて橋梁に一定の移動荷重を載荷する。実験車両の走行速度は、橋梁を通過し始める前から通過の直後まで一定の速度を保つように運転し、運転者からトランシーバーでステーション側の物に伝えられたものを記録する。また、車線を直角に横切るように赤白テープを道路面に貼り,目視とビデオ撮影により軸直角方向の走行位置を記録し、レーザーにより車輪の通過時刻が正確にわかるので、走行速度は後に正確に知ることができる。
1回の計測で200Hzサンプリングで180秒間記録した。写真2.18に吉田橋の車両走行実験の様子を示す。この際は、時速30〜40km/hで走行している。図2.29に走行車両による端部支間中央での橋の上下成分速度時刻歴を示す。橋長165mを前記の時速から換算した秒速8.3〜11.lm/sで走行しているので、橋の通過時間はL99〜L49秒となる。理想的には、1秒でわたり切る165m/sであり、9,4km/hとなり、この速度で走れば、走行車両のたわみ振動は2秒となり、センサーの総合ゲイン特性の平坦領域の振動となるのでたわみが正確に求められる。時速30〜40kmhでは、ゲインが低下するため、振幅の低下は避けられない。
振動計と同じデータ収録装置でレーザー計測し、0.005秒単位で波形との相対関係で通過時刻を知ることができるのに、この図には記入されていないし、どの地点で前の車輪が桁端を通過したかがわかるように実験・計測のシステムは設計されている。それにもかかわらず記入されていないのは、速度を計測する意味が理解されていない。時間積分すると変位(たわみ)時刻歴となり、2軸車両によるたわみ応答を理解する上で極めて重要となる。
図2.30に、以上の3つの手法による占田橋の常時微動,木製ハンマーおよび実験車両走行による加振時の速度フーリエスペクトルを示す。スペクトル振幅の大きさは、車両走行、ハンマー打撃、微動の順である。3つに共通して、7.OHz、11.0Hzに共通のピークが見られる。これらは、1次モード、2次モードで、それぞれ、1次曲げと1次ねじれの振動モードである。微動ではこれらのみ卓越している。微動では、それら2つのピーク以外の振動数範囲では、電気ノイズレベルであることから、中山間部の谷底低地のような微動レベルの低い地点ですら、基本モードが出やすく安定して検出でき事がわかる。
一方、車両走行では、0.4Hz(25秒)で緩やかなピークがあるが、これは通過する時間の2倍の時間に相当し、移動荷重によるたわみ振動であるためである。2.8Hzと3.3Hzにもピークが現れているが、この理由は定かではないが、車両の振動であるものと推察される。14,18,20,25,29,32,47,51,54Hz付近にもピークがあるが、固有振動の発現に由来する卓越したピークかどうかは、判断不能である。最後に、ハンマー打撃によるスペクトルを見ると、7.OHz,11Hz,26Hz,32H,52Hz,58Hzに明瞭なピークが見られる。1次、2次は測定法と測定データのみで容易に判定できる。梁の振動理論によれば、曲げの2次、3次は、曲げ1次の4倍、9倍であるので、28Hzと63Hzとなる。この橋には張り出し付属部がついていることを考えれば梁のようにはならないので、梁理論からのずれが考えられることを考慮すれば、26Hzの卓越は、2次曲げである可能性は容易に推定できる。また、58Hzも明瞭なピークであり、63Hzとも近いことから3次曲げである可能性の推定も容易である。
3次モードの検出は、支間長の1/4,1/2,3/4の点に置いたセンサーの位相差(スペクトル比の位相)を見ることにより、容易に判断できる。
ここでは、先に示した図2.12〜1.15の振動モードと表2.1の固有振動数一覧と比較して検討する。表2.1の1次固有振動数が7.7Hzであり、ここで示す測定値7.OHzとの間に大きな差があるが、後述するように、これは温度の影響である。表2.1によれば、1〜3次は、7.7Hz(1次曲げ)、12.OHz(1次ねじれ)、24,6Hz(2次曲げ)であるので、先に示した測定値の7.OHz,llHz,26Hzにほぼ対応する。また、FEMモデルの4次と5次は、25.IHzと29.7Hzであり、3次と4次は極めて近接しており、振動モードから、4次は軸方向には2次ねじれで拡幅部側がそりモードになっており、5次は1次そりモードが卓越している。
よくモード図を見ると3次の2次曲げモードにすら、そり変形が含まれている。このことから、図2.2で解説したように、吉田橋のアスペクト比は、a/b=1.46であるが、60度の斜橋であるので、支承線間の距離を用いたアスペクト比a'/bは、L46×cos(30deg)=1.27であることを適用するなら、1次そりモードの曲線が、2次曲げと2次ねじれお曲線に順に交差する。その所為で2次曲げにも2、次そりモードにも、そり変形が重なり始めていると理解することができる、5次モードでようやくそりモードが卓越するようになっている。
前述したように、そりモードは、道路中心橋にもセンサーをおく必要があるため、検出は困難である。このような理由から、1〜3次(1次曲げ、1次ねじれ、2次曲げ)の低次振動に注目して、測定計画を行い、測定を実施すれば、FEMなどの数値解析を使うことなく、振動数と振動モードを特定できる。
(各建設段階における測定方法とセンサー配置)
橋桁は3つの異なった状態において測定している。初めに、桁がPC製造工場にある状態、次に桁が工:事期間中の状態、最後に橋が供用開始後の状態である。故に、様々なセンサー配置を測定の際に取っている。
1)工場
プレストレスト箱型コンクリート桁の測定は株式会社愛橋の工場でおこなった。測定の際には、桁は木片により支持されており、できる限り設計上の支間長に等しく桁が仮置きされている。桁の仮置き後、桁の全長および支間長を計測し記録した。桁の中心線上の1/2、1/4、3/4点にチョークで印を付け、2つのセンサーCR4.5-2Sを同じ1/2点に設置した。これは万が一データが取れない場合に備えて、予備のデータを取るためである。時間の許す限り、1/2点、1/4点の同時測定を行った。これは、1〜3次の振動モードを確認するための物である。センサー設置後、センサーをセンサーカバー(風よけ)で覆った。センサーからのデータはケーブルを通してGEODASに伝達される。測定では写真2.19に示すように、木製ハンマーによりセンサーから05m離れた地点の桁を40秒の間隔を開けて起振した同様にして、全ての桁で測定した。
上記の方法で、吉田橋(G9とGl1)、篠田橋(Gl-G13)、第二馬越橋(G1-G8)、御照橋(Gl-G董2)を対象に測定した。
2)工事期間中
工事期間中のセンサー配置状況を写真2.20に示す。桁の振動応答測定は異なる建設段階で6つのセンサーを用いておこなった。6つのセンサーの設置状況の内訳は、1つは橋台、もう一つは基準とするセンサー、残りの4つは桁の中央に橋の横断方向に設置した。センサーのx方向成分は橋軸方向であり、y方向成分は橋の横断方向である。センサーを適切に設置した後、センサーの水平を水平調節・ネジで合わせ、測定器GEODASによるセンサーチェソクの後、センサーカバーをかぶせる。測定ではセンサー設置場所から2m離れた部分の桁を木製ハンマーで起振する。桁の自山振動を全て捉えるために起振する間隔を40秒開ける。一つのセンサー配置での測定が終了した後、桁上の4つのセンサーを次のセンサー設置場所に移動させる。例として、篠田橋のセンサー配置状況を示す。
篠田橋は13個のプレストレスト箱型から成る。桁Gl3は全ての測定において基準として設置する。3種類のセンサー配置で測定する。初めに、図2.31に示すように橋台とG13桁に1台ずつ設置し、残りの4つのセンサーを桁Gl、G2、G3、G4に設置する。次に、最初のパターンの測定が終了した後、図2.32に示すように桁Gl、G2、G3、G4を桁G5、G6、G7、G8に移動させる。橋台と基準のセンサーは移動させない。最後に、2つ目のパターンの測定が終了した後、図2.33に示すように桁G5、G6、G7、G8を桁G9、GlO、G11、G12に移動させる。
普段は、測定は人や機械が起こす振動が入らないように昼休憩(12:00PM-1:00PM)の時間におこなう。上記のように全3橋でその橋の主要な建設段階に測定した。ここで、振動を測定した主要な建設段階を以下に示す。
(1)橋台に桁を設置した後
(2)シアキーにグラウトを注入する前後
(3)桁の横締めをする前後
(4)地覆の建設前後
(5)高欄取り付け後
(6)均しコンクリート打設後
(7)アスファルト舗装前
3)供用開始後
橋の建設が完成した後、写真221に示すように6つのセンサーを橋梁の片側にスパン長の1/4間隔で設置する。1つのセンサーは橋構造から8.6m離した地面に設置する。センサーを適切な方向に合わせ水平を合わせた後、橋のいくつかの場所を起振し測定する。
加振は橋に交通のない状態(車などが載荷していない状態)でおこなう。異なる励起時の橋の挙動を知るために実験車両を橋に通過させる場合もある。
(データ解析の方法)
1)データ分析
測定後、記録データを収録システムから取り出す。デジタルデータは測定器GEODASに共通規格であるMTD形式で保管されている。これらのデータはConvert1というソフトウェアによりMTD形式からCSV形式(カンマ区切りフォーマット)に変換される。
センサーをどんなに精度良く水平においても完全な水平は実現できない。鉛直軸とセンサーの上下軸との間の差異がドリフトとなって現れる。高精度の速度計では、その僅かな量も無視できない。これを除くには、定常状態の平均値をドリフト量と見なして、全てのサンプルの振幅値から差し引く作業をドリフト補正という。このため速度時刻歴のドリフト補正を行う。理想的には、微動状態の平均値を採用するのが望ましいが、微動状態でない場合でも、打撃時でも車両走行時でも、その振動が始まる以前から減衰して微動状態に戻るまでの時間を採用した揚合には、全記録を対象にしてドリフト量を算定しても良い。
そこで、ここでは、そのような微動状態から始まり微動状態で終わるような記録の取り方を設定しておき、全記録の平均値を採用してドリフト補正をおこなった。
全速度時刻歴を描画し、その刻歴から実験車両またはかけやによる振動波形を抽出する。
抽出サンプル数は、FFTを考慮して2の累乗個とする。FFTは自作のAVE2というプログラムを用いておこなう。本実施例では、200Hzサンプリングなので、4096個(20.48秒間)を抽出した。抽出したセグメントは加振による桁の自由振動までを完全に含んだものである。これを1セグメントとする。1セグメントのデータをFFTで高速フーリエ変換し、得られたフーリエスペクトルは適切なバンド幅でParzenウィンドウを用いて平滑化する。得られた速度フーリエスペクトルを描画し、卓越振動数を読みとる。解析は測定データの鉛直方向成分のみを対象とする。
1例として、図2,34にデータ解析の手順を示す。図2.34(a)は木製ハンマーによる起振時の篠田橋の桁G1における全速度時刻歴である。図2.34(b)は4096個のデータを1セグメントとして抽出した解析速度時刻歴であり、図2.34(c)はそれを高速フーリエ変換により変換したフーリエスペクトルである。
2)理論面からの分析
前述の梁理論の固有振動数の式を用いる。ヤング係数は、設計基準強度の同じ号機をまとめた実強度の採用値を設計基準強度Fcと読み替えて、目本建築学会編『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(1999年版)』(以下,RC規準という)の下式で算定する。

Ec=3.35×104×(γ/24)2×(Fc/60)1/3

Ec:ヤング係数(N/mm2)Fc:設計基準強度(N/mm2)γ:コンクリートの気乾単位体積重量(kN/m3)
今回は橋のコンクリート強度の設計値に50N/mm2を用い、コンクリートの単位重量に24.5kN/m3を用いている。これらを代入した場合、eqn.10によりEc=3.29×1010N/m2が得られる。
3.各橋梁の建設過程における測定結果
3.1篠田橋
篠田橋のG13桁の異なる建設段階における速度時刻歴を図3.1に、同様のフーリエスペクトルを図3.2に示す。
工場では橋の全ての桁の振動応答を測定した。G13桁の代表的な速度時刻歴を図3⊥aに示す。これより、加振による振動は振動の振幅の継続的な減衰により約12秒まで確認できる。12秒後は均衡状態となっている。この速度時刻歴に対応するフーリエスペクトルを図3.2.aに示す。図3.3に示すように、桁の1次卓越振動数は3.40Hzから3,75Hzの範囲である。桁の卓越振動数の平均は350Hzで標準偏差は0.08Hzである。この振動数のバラツキの少なさは桁の製造時の高い品質管理を意味する。桁の理論固有振動数は338Hzである。この橋の桁は一様断面ではない。そのため、理論固有振動数は桁の中央の断面による一様断面として算定している。図3.3.からわかるように,全ての桁の卓越振動数が理論固有振動数より高くなっている。
橋台への桁の架設後では、図3.4.に示すように、桁の1次卓越振動数は3.4Hzから3.5Hzの範囲である。桁の振動数の実験値と理論値は類似している。速度時刻歴を図3。1.bに示し、対応するフーリエスペクトルを図3,2.bに示す。この建設段階で得られた速度時刻歴の振動波形とフーリエスペクトルの形は工場で得られたものと非常に似ている。
桁間の縦方向のすきま(シアキー)へのグラウト注入完了の3時間後では、桁の振動数は3,5Hzに見られた。桁の振動数には橋台への桁の架設後からシアキーへのグラウト注入後ではわずかな変化があり、全ての桁の振動数が一つの固有なものに変えられている。この結果はプレキャストの箱桁をシアキーが接合したことを意味する。図3.2.cにこの建設段階でのフーリエスペクトルを示す。シアキーへのグラウト注入後におけるフーリエスペクトルの形にはいくつかの変化がある。2つのスペクトルでは、1次卓越のピークは3,5Hz付近に表れているが,シアキーへのグラウト注入後のフーリエスペクトルにのみ6.2Hzの2次ピークがはっきりと出ている。6.2Hzの振動数は橋の振動の1次ねじれに相当する。この結果はシアキーへのグラウト注入によって個々の桁の集合体から1枚の板への構造的な変化を意味している。
橋の1次卓越振動数は桁の横締め前では3.9Hzである。シアキーへのグラウトが硬化したことにより35Hzから3.9Hzに増加している。振動数はグラウトが硬化する前と後では8.6%増加している。Eq(9)を用いると、シアキーへのグラウト注入後の橋の理論固有振動数は3.26Hzである。
桁には長手方向に6つの横板がある。その横板にはテンドンを通すための穴が設定されている。横締め方向のポストテンショニングは、ジャッキ圧力36.2MPaでテンドンを緊張することによってかけた。テンドンはテンションによって70mm伸びた。桁の横締めポストテンショニングを作用させた後には1次卓越振動数は3.9Hzになった。したがって、横締めプレストレスの効果は1次卓越振動数には認められなかった。ダクトへのグラウト注入後の速度時刻歴を図3.1.fに示す。この波形は建設現場近くのブルドーザーの走行によって生起された人工的な雑振動による影響を受けているためであると推察される。この段階では、橋梁の1次卓越振動数は図32£に示すように3.9Hzであることがわかった。したがって、ダクトへのグラウト注入後の1次宅卓越振動数には変化が認められなかったために、橋梁の振動特性への影響はほとんどなかったことになる。また,橋台の胸壁へのコンクリー1・打設の後には4.OHzになっていた。この原因については不明である。
その次に、地覆部へのコンクリート打設の直前直後に振動測定をおこなった。地覆コンクリート打設前の振動測定によれば橋の1次卓越振動数は3.9Hzであるが、打設直後ではそれは3.7Hzに低下している。このことは、地覆コンクリートの重量増加による影響が寄与したものと考えられる。なぜならば、地覆のフレッシュコンクリートの剛性は打設直後には無視できるほど小さいと考えられるからである。その後、コンクリート打設後5日後に振動測定をしたところ1次卓越振動数は4,2Hzに増加していた。したがって、コンクリート硬化による剛性増加の影響はかなり大きいと言える。これらの結果が示唆することは、現場打ちコンクリートの影響は極めて大きく、打設直後と硬化後の振動測定をすることによって重量増加と剛性増加の寄与分を分離できることがわかった。表3.2.に地覆打設後の橋梁の断面2次モーメントの計算結果を示す。地覆打設後の固有振動数の理論値は表3.3に示したように4.49Hzである。そして、地覆の上に高欄を設置する直前直後に振動測定をおこなったところ、1次卓越振動数は両方とも4.3Hzであった。このことは、2つの意味がある。1つ目は高欄の設置は橋梁の卓越振動数に影響がないということである。もう1つは地覆打設より12日後の卓越振動数が43Hzになったということで、5H後の4.2Hzより0.1Hzだけ増加していることになる。このことは、地覆コンクリートはこの間も硬化過程にあり、コンクリート強度,弾性係数の両方が増加過程であることを反映していると考えられる。理論値の4.49Hzというのは、設計値に対応する弾性係数であるためにこの直後に計測された卓越振動数よりもわずかに大きいと考えられる。
さらに,デッキスラブのコンクリート打設の前後で測定したフーリエスペクトルと図4.2mと図3.2n.に示す。その両段階共に、1次卓越振動数は4.3Hzである。したがって、デッキスラブの打設による重量増加と剛性増加による卓越振動数の低下と増加は見かけ上、相互にキャンセルしているものと考えられる。また、デッキスラブのコンクリート打設後14日を経過しアスファルト舗装の施工前に振動測定をおこなったところ、橋の1次卓越振動数は4.5Hzに増加していた。この0.2Hz分の増加はデッキスラブの硬化と地覆コンクリートの硬化の両方の弾性係数の効果を反映しているものと考えられる。
次に、アスファルト舗装をデッキスラブの上に敷設した後には、1次卓越振動数は4.4Hzになっていた。このO.lHzの振動数の減少はアスファルト舗装の重量増加による影響であると言える。
種々の建設過程での全ての桁において計測された1次卓越振動数を要約したものを図3.5に示すとともに、それらの値を表3⊥に示した。これらの図表には振動測定をした日付をそれぞれ示している。また、現場における卓越振動数を基準として、建設過程における振動数の変化分を相対的な百分率の変化として図3.6.に示した。この図によれば、1次卓越振動数の最大変化量は約31%である。
3.2.吉田橋
吉田橋では桁Gllを基準桁として取り扱った。図3.7と図3.8にそれぞれ異なる建設過程によって得られた基準桁のフーリエスペクトルを示す。
工場では2つの桁G9とGl1について測定した。それらの1次卓越振動数はそれぞれ6.3Hzと69Hzであった。この2つの振動数の差は仮に据え置かれた2支点間の径間長の違いによるものである。径間長はG9桁が15.62m、Gl1桁が16.40mである。この径間長の違いによる影響を消去するために梁の固有振動数の理論式に基づき、設計上の橋の径間長(1654m)の長さに等価なものとして補正した。そのように径間長に関して補正した後のG9桁とGll桁の1次卓越振動数はそれぞれ5.7Hzと5.8Hzになる。
現地において桁を設置したG11桁の速度時刻歴を図3.7b.に示す。この波形はG6桁に打撃を与えたときのGll桁の応答である。この図では明瞭なビーティング(成長消失)が見られる。図3.9.に示すように、橋台上に桁を設置した後の桁の1次卓越振動数は5.9Hzから6.3Hzの範囲にある。1次卓越振動数の平均値は6.06Hzであり,標準偏差は0.08Hzである。一方、桁の1次固有振動数の理論値は5.24Hzである。図3.9.にこれら実現値と理論値の比較を示す。この実現値が理論値よりもかなり大きくなっているのはコンクリート強度が設計強度よりもかなり大きく強度が発現するような配合設計をしたためと考えられる。
シアキーへのグラウト注人にともない横締めプレストレスの施工後は、桁の1次卓越振動数じゃ平均値が6.65Hzであり、標準偏差が0.Ol7Hzであった。図3.8bに桁の設置直後のフーリエスペクトルを、図3.8cに横締めプレストレス後のフーリエスペクトルを示す。
その両方にはかなりの違いが見られる。図3.8cには10.9Hz付近に2つ目の明瞭なピークが見られる。このピークは橋梁の1次ねじれ振動モードに対応するものである。このことは、シアキー打設と横締めプレストレスによる桁間の合結効果を意味するものであり、個々の桁の集合体から1枚の板への構造的な変化を意味している。1つ目の明瞭なピークは1次卓越振動数に対応するものであり、シアキーのグラウト注入と横締めプレストレスの後に0.6Hzだけ増加していることにもこの効果が見られる。
次にダクトへのグラウト注入直後の測定によるフーリエスペクトルを図3.8dに示す。
橋梁の1次卓越振動数は6。65Hzである。したがってダクトへのグラウト注入による卓越振動数の変化は見られない。したがって、ダクトのグラウト注入による重量増加の影響は見られない。吉田橋ではGl4桁の半分の長さ分だけ曲線状の拡幅部が場所打ちコンクリートによって製作されや。この曲線部の長さは7.47mであり、厚さは750mmである。この曲線部のせり出し長さは、桁中央でOmであり、桁南端部では3.5mとなる(図3.3.)。この曲線部のコンクリート打設前の橋の平均1次卓越振動数は6.81Hzであったが打設後は7.10Hzにまで増加した。このことから、曲線部の負荷は重量増加の影響による振動数低下よりも構造的な剛性増加の方が大きいと言える。
その後、地覆のコンクリート打設と高欄の設置の後、振動測定を実施したところ、桁の1次卓越振動数は平均値が7.47Hzで、標準偏差が0.07Hzであった。つまり、1次卓越振動数は地覆と高欄の設置によって5%分だけ増えた。このことから、地覆の建設による剛性増加の影響は大きいと言える。地覆の増加後の橋の断面2地モーメントの計算を表3.5に示す。この段階での1次固有振動数の理論値は表3.6.に示すように5。65Hzである。
最後にアスファルト舗装の前後で振動測定をした。舗装前の1次卓越振動数の平均値は7.37Hzで標準偏差が0.013Hzであった。それに対してアスファルト舗装後には、平均値は6,97Hzになっていた。この卓越振動数の低下はアスファルト舗装の重量増加による影響と考えらえる。以上の1次卓越振動数の建設過程での変化を図3.10に示すと共に、それらの値を表3.4に示した。また、現場における卓越振動数を基準として、建設過程における振動数の変化分を相対的な百分率の変化として図3.11に示した。これにより、建設段階での1次卓越振動数は最大約23%の変化があったことがわかる。吉田橋では建設完了の4ヵ月後に1ヵ月間隔で、卓越振動数をモニターした。モニター期間は建設完了から時間が経っていないため、経年に影響は無いと考えられる。このモニターの目的は、同一条件下での測定の再現性と温度変化による影響把握である。したがって、振動測定の際には気温も測定した。モニター期間は2011年12月から2012年5月まである。図3.12に吉田橋の建設過程と供用下における測定期間中の1次卓越振動数の変化を示す。建設完了後に一定の卓越振動数とはなっていないのが明瞭である。そこで、図3.13に卓越振動数と気温の関係を示す。両者には負の相関があり、気温が高くなると低下する。
この関係は線形と見なすことができるが、指数関数で近似曲線を求めた。決定係数はO.98と極めて高い。データ数が少ないこともあるが、それにしても高い。
温度が高くなると固有振動数が低くなると言うのには、原因として2つ考えられる。(1)材料のヤング係数の温度依存性であり、ヤング係数が温度と負の相関や反比例の関係にある。(2)コンクリートの熱膨張特性。(2)の場合、桁が伸び、その結果見かけの支間長が大きくなるので、単純梁の理論式によれば、支間長が長くなると固有振動数は低下することになる。したがって、定性的には負の相関は理論と整合している。一方、(1)の場合について考えてみる。図3.14に吉田橋の卓越振動数の温度依存性の解釈を示す。太田らによれば、

E=2.71×105e-0.001804T(kgf/cm2)

の実験式が得られている。これに基づき、5〜30度の変化でヤング係数は5%程度低下する。
それにより梁の振動式によれば固有振動数の変化は3%程度の低下である。したがって、IO%の約越振動数の変化にしては大きい。また、アスファルトも温度の影響を強く受ける。すなわち、温度が高くなるとアスファルトの剛性は大きく低下する。既往の研究によれば温度が0°から20°まで変化すると弾性係数は約5分の1程度にまで低下する。これらのことを考慮すると、橋の全体としてのヤング係数も低下することになる。単純梁の理論式によれば1次固有振動数は低下することになる。したがって、弾性係数の面からも気温と卓越振動数の間の負の相関は整合する。この測定結果を踏まえると、PCコンクリート桁橋梁の振動測定においては気温やアスファルト舗装、コンクリート桁などの温度を測定することは温度の影響を補正するために必須の条件である。
3.3第二馬越橋
図3.14と図3.15にそれぞれ異なる建設段階でのGl桁の速度時刻歴とそれに対応するフーリエスペクトルを示す。この橋梁はこの研究期間内は建設途中であり、デッキスラブの構築が完成したばかりであった。したがって、アスファルト舗装にまで達していない状態であった。
建設過程を述べる。工場での測定では8本の桁を木製の支点の上に置いて計測を実施した。支点間は13.43mから1355mの範囲であった。これらは供用する際の橋梁の支間長に等しい。工場での8本の1次卓越振動数は5.5Hzから5,8Hzの範囲にあった。これらの結果を図3.16に示す。また、梁理論により1次固有振動数は5.14Hzである。これら実験値と理論値の比較を図3,16に示す。この図では工場での各卓越振動数を実際の橋梁の支間長の長さに等価であるように補正したものである。
8本の卓越振動数が固有振動数の理論値よりも大きいのは品質管理上、設計強度よりも大きい強度が発現するように設計したためであり、実際の卓越振動数のバラツキが0.3Hz内にあるのは晶質のバラツキを反映していると考えられる。このことは、工場での卓越振動数の測定が桁全体としての品質管理に用いることができることを示唆している。
図3.14b.に桁設置直後のGl4桁の速度時刻歴を示す。8本の桁の1次卓越振動数は5.4Hzから5.6Hzの範囲にあった。1次卓越振動数の測定値と1次固有振動数の比較を図3.17に示す。実験値は理論値より0.46Hz大きい。
次に、桁間のシアキーのグラウト注入の3日後におこなった振動測定によれば1次卓越振動数は5.3Hzであった。
図3.15bに桁設置直後のフーリエスペクトル,図3.15cにシアキーのグラウト段階でのフーリエスペクトルを示す。両者は大きく異なっており、図3.15cが示すようにシアキー打設後には13.7Hz付近に第2の卓越振動数のピークが表れている。このピークは橋全体の1次ねじれ振動モードに対応する。このことから、2つのことが言える。1次ねじれ振動数が表れたのはシアキーのグラウト注入により、独立した桁が独立した梁として振動していた状態から全体が一体化して一枚の板として挙動するように変化したことである。第2に1次卓越振動数がやや低下したのが認められたが、シアキーのグラウト重量の増加が橋全体の重量増加による振動数低下の効果として表れたことである。次に横締めプレストレスの前後で振動測定を行い、横締めの影響を調べた。横締めの緊張力はテンドンへの圧力として37.1MPaである.その結果テンドンの伸びは40mmであった。横締めテンショニングは両側の側面に載荷しており、載荷点は径間長の1/4間隔に設定してある。横締めプレストレスの前後におけるフーリエスペクトルを図3.15dと図3.15eにそれぞれ示す。横締めプレストレスの前後とともに、1次卓越振動数は5.4Hzである。このことから、直橋においては横締めプレストレスは卓越振動数の変化に影響を及ぼさないと言える。同様にダクトのグラウトの前後でも5.4Hzであり、これもまた影響を及ぼしていないが、直橋であるためである。
この橋には、橋梁両端部において現場打ちコンクリートによる拡幅部が付いている。図3.5に平面図を示し、それらの寸法を示した。地覆は橋梁の両側端部の桁GlとG8、あるいは拡幅部にコンクリート打設された。拡幅部と地覆コンクリート打設の前後で振動測定をおこなった。1地卓越振動数はロンクリート打設前で5.4Hzであったのに対し、打設後は6.OHzまで増加した。このコンクリート打設後の測定は打設終了から3時間後におこなったものである。打設後6日後におこなった振動測定によれば1次卓越振動数は7.OHzまで増加していた。このことから、地覆と拡幅部のコンクリートの打設による重量増加に起因する振動数低下よりもコンクリート剛性増加による影響が大きく、硬化が進行したことによる剛性増加の影響はいっそう大きいものであることがわかった。表3.9に示したように、1次固有振動数の理論値は6.81Hzである。実際の振動数は理論値よりも大きくなっているがこれは品質管理上、設計強度よりも大きい強度が発現するように設計したためだと思われる。
次にエキスパンションジョイントと高欄の設置後におこなった振動測定によれば、1次卓越振動数は68Hzであった。また、デッキスラブでのコンクリート打設直後の1次卓越振動数も6.8Hzであった(図3.15k)。表3.8にデッキスラブ打設後の断面2次モーメントの計算を示し、表3,9に1次固有振動数の理論値を示すが,6.92Hzであった。
地覆コンクリートの打設後に見られた1次卓越振動数が理論固有振動数よりも約O.2Hz大きいが、6臼後に発現した弾性係数を考えると設計基準強度に相当する28R後にはさらに卓越振動数は高い方に変化すると考えられる。このことから、デッキスラブ打設後に期待される1次卓越振動数は7.lHzに達するものと考えられ、理論固有振動数に比べて、約0.2Hz大きいものとなっている。
全ての桁の卓越振動数の各建設段階での変化を要約したものを図3.18に示し,その値を表3.7に示す。図3.9には桁設置時点での1次卓越振動数を基準としたときの振動数の差を示す。最大の振動数変化は25%となった。
3.4御照橋
1)建設段階における測定結果
写真3.1に御照橋の桁の振動試験の様子を示す(上段:全景、中段左:中央には異なる速度計3台、サーボ加速度計1台を設置、中段右:打撃の様子、作業者が、かけやを落下高さ10cmで打撃した。下段:17本中、最後の2本は3種類の速度計と変位帰還型加
速度計を利用して、センサー1本に8点16台設置)。工場では、17本すべての桁の測定を2012年5月23日に実施した。
図3.20、図3.21にそれぞれ御照橋のグラウト後にG9中央起振時における解析区間の全センサーの速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。図3.22、図3.23に同様にGl7中央起振時における速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。ここで、G9桁は橋軸中心に位置し、Gl7は最外縁の桁に相当する。G9打撃は、対称点への打撃であるので、橋軸対称挙動、均等ねじれ挙動が生じにくいが、そり挙動は生じやすく、Gl7打撃は、ねじれが生じやすい。
橋軸中心打撃と最外縁打撃の両者の波形を比較すると、いずれも自由減衰振動波形を呈しているが、後者で振幅が小刻みに上下しながら減衰しているのに対して、前者の方は全体的に滑らかに減衰している。また、フーリエスペクトルでは、前者と後者で共通するピークとそうでないもの、場所によりピークの同じものと異なるものなどがある。これらは一括して見ることと、出現とセンサー箇所による振幅の違いに注目すれば、梁で学んだ1次:2次:3次==1:4:9という目安を参考にしながら、低次より振動モードを特定し続けることができる。
図3.24に支間中央の橋軸線上(G9)と最外縁(G17)を打撃した際の(上)反対最外縁(G1)、(中)1/4線上(G5)、(下)橋軸中心(G9)の速度フーリエスペクトルを示すとともに、ピークを縦に結ぶ点線を書き添えた。1次曲げ、1次ねじれは明瞭な特徴を確認することで特定できる。また、支間中央を直角に横断する測線を設定したため、そりモード(Warpmode)も確認できる。順に、それら、曲げ、ねじり、そりの2次は前述の比を参考に特定できる。橋軸線上(G9)打撃だとねじれ振動はあまり生じない。最外縁打撃だとねじれが励起されるが、橋軸線上(G9)にはピークは現れない。しかし○印の@ピークの振動モードは不明である。
いずれにせよ、このような短径間橋梁で、曲げ、ねじり、そりの3種の振動モードをそれぞれ2次まで特定できたのは、あまり例が無く画期的である。
同様に、図325、図3.26にそれぞれ御照橋の横締め後にG9中央起振時における解析区間の全センサーの速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。図3.27、図3.28に同様にGl7中央起振時における速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。
図3.29、図3.30にそれぞれ御照橋の地覆工・高欄工後のG9中央起振時、およびG17中央起振時における速度時刻歴および速度フーリエスペクトル(1セグメント:20.48秒,バンド幅:OHz)を示す。
図3.31、図3.32にそれぞれ御照橋の横締め後にG9中央起振時における解析区間の全センサーの速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。図3.33、図3.34に同様にGl7中央起振時における速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。
図3.35、図3.36にそれぞれ御照橋の横締め後にG9中央起振時における解析区間の全センサーの速度時刻歴とフーリエスペクトルを示す。
図3,24で実施したような検討をすることで、6次まで特定できる。
2)建設段階における一次卓越振動数の変化
図3.37に御照橋の生産から建設過程の1次卓越振動数の変化を示す。工場段階や現場での設置直後での桁間でのばらつきは他の事例と同様で、中埋めコンクリートによる卓越振動数の低下は重量効果が優勢であることを示している。横締めによって卓越振動数が変化しないが、これは直橋には剛性増加の影響はほとんど見られないと解釈できる。付帯コンクリートの打設では、振動数が増加しており、剛性増加の寄与が大きいことがわかる。
高欄工以降は、重量物もなく振動数に変動はないが、舗装工の後に僅かに下がっているのは重量増による効果である。
表3.2には断面2次モーメントの計算表を示す。
4.橋梁の建設過程における振動測定の成果の実際的応用
4.1振動測定から得られる卓越振動数の解釈モデル
1)基本的な考え方
上記3.1から3.4までで述べた4つの新設橋梁の製造過程・建設過程での高精度度計による振動測定により、ハンマー打撃による振動測定で、効率的に正確に低次の固有振動モードに対応する卓越振動数として固有振動数を検出することができることを明ら
かにした。
このように現地で測定された卓越振動数の意味を評価するためには、理論モデルとの対比が欠かせない。特に、供用下の経年による損傷・劣化については、膨大な数の橋梁を詳細に点検することは現実的な可能性が低いので、客観的なデータに基づくふるいわけ、すなわち、スクリーニングが必要不可欠である。
そこで、測定された卓越振動数が理論モデルとの観点から、弾性係数(ヤング係数)の一致・変化という観点から性能指標として捉えられる可能性を検討する。理論モデルにっいては、2章で触れた。有限要素法(FEM)については、その分析能力と適用性は高いことは、吉田橋に対する検証(2章)で示された。ここでは、梁理論とFEMの適用性を検討し、標準化のための一つのステップとして考えたい。
2)建設過程における橋梁の構造変化に対する梁理論の適用性
(1)内容と方法論
振動モードが確認された卓越振動数は、理論上の固有振動数と見なすことができる。梁の式によれば、ヤング係数がわかれば固有振動数が求められる。このことを確認するために、御照橋では、桁制作時のコンクリート供試体を系統的な調査に必要なだけ準備し、それらを用いて圧縮試験を実施し、ヤング係数を求めた。御照橋は、4つの橋の中で、唯一、直橋であるので、理論からの検証に適しているからである。
(2)コンクリート供試体による弾性係数の測定
図4.1にコンクリート供試体へのひずみゲージ貼付位置を示す。図4.2に応力ーひずみ曲線の例(御照橋)を示す。はじめに、通常のヤング係数を決定する方法でヤング係数を決定した。写真4.1に御照橋テストピースのコンクリート圧縮強度試験の様子を示す。図4.3にテストピースの圧縮強度(御照橋)図4.4にテストピースの圧縮強度試験によるヤング係数Ec(御照橋)を示す。このヤング係数を用いて梁理論に基づき固有振動数を算定した。
(3)ヤング係数の測定値と橋梁振動測定による平均的ヤング係数の推定値
図45に御照橋における圧縮試験,卓越振動数それぞれから推定したヤング係数と材齢の関係を示す。圧縮試験より得られたものよりも、卓越振動数より推定されたヤング係数が2割大きい。これは、通常のヤング係数が終局強度の1/3応力レベルの点に着目した割線弾性係数を採用しているため、コンクリートの弾性係数のひずみレベル依存性を考慮しないで決めることになっているからである。
図4.6に圧縮試験を行った供試体のデータからヤング係数とひずみの関係の例(御照橋)を示す。全てのひずみレベルの割線弾性係数を示したものである。これを見るとひずみが微小な場合、ヤング係数は33〜38×103N/mm2となっており、卓越振動数から推定したヤング係数と全く同じになる。したがって、振動測定により固有振動数を論じる場合には、このようにひずみレベルの違いを考慮したヤング係数(割線弾性係数)を用いる必要がある。この概念を共有できないと、まともな議論は不可能である。
(4)建設過程における橋梁の曲げ剛性の理論値と推定値
図4.7に御照橋における各建設段階の1次卓越振動数の変化を再度示す。梁理論に基づけば、測定した固有振動数より梁の曲げ剛性が推定できる。一方、コンクリートの各部のヤング係数を計測値に基づいて設定すれば、曲げ剛性EIは計算で求められ、これを理論値とする。固有振動数で議論するか、曲げ剛性で議論するかは、等価である。
図4.8に御照橋における各建設段階の卓越振動数から推定した曲げ剛性の推定値とコンクリート供試体の圧縮試験(3〜4種の材齢)の結果に基づいて計算で求めた理論値の建設段階にわたる変化を示す。両者はよく合致しており、建設過程の卓越振動数(固有振動数)の変化は梁理論から指示されることを示した。
これを詳細に議論する際には、各部材のコンクリートの材齢に見合う弾性係数の推定が不可欠である。推定される任意の材齢に対するヤング係数の推定技術が今後求められる。
4.2 供用下にある実橋梁の局所的品質と振動測定から得られる全体的品質の関係
振動測定による性能評価の基本的な考えは、上記でも説明したが、実際の橋梁で、設計図書・資料や製造時の仕様や管理図書がない場合には、現場でのコンクリートの局所的品質を求めるという要請が、スクリーニングや点検・維持管理の面から考えられる。
試料など現地での局所的品質管理と卓越振動数の測定を関連づけることができるようにするために、リバウンドハンマー(シュミットハンマー)とコンクリートテストハンマーを用いて、それぞれの機器に対応する形で提案されている強度推定式と、先述の強度からヤング係数を推定する式とを併せ用いることで、これら現地試験機から得られた局所的な推定ヤング係数と卓越振動数から逆算されるヤング係数を比較した。
写真42に現地品質調査に用いた機器を示す。使用した機器は以下の3種類である.
・N型シュミットハンマー(RH)(1台)
・コンクリートテストハンマー(IH)(1台)
・EL-SONIC(US)(1台)
図4.9にコンクリート圧縮試験に用いた供試体を利用してリバウンドハンマー反発値と割線弾性係数の関係を示す。これから曲げ剛性推定の実験式を求めた。
図4.10に同様にコンクリート圧縮試験に用いた供試体を利用してインパルスハンマー反発値における反発値と割線弾性係数の関係を示す。これから曲げ剛性推定の実験式を求めた。
これらに基づいて、図4.11に御照橋(橋梁桁)におけるリバウンドハンマーと卓越振動数それぞれから推定したヤング係数の関係を示す。卓越振動数から推定したヤング係数が約2割大きい。これは前述の理由と同じで、ひずみレベルの違いである。したがって、これを考慮すれば、これら現地試験装置も十分に利用できると思われる。
本発明の振動測定装置は、コンクリート橋やトラス橋などの橋梁や梁構造を有する構造物の振動解析や劣化診断を行う装置として採用できる。
また、本発明の振動測定方法は、コンクリート橋やトラス橋などの橋梁や梁構造を有する構造物の振動解析や劣化診断を行う方法として採用できる。
1 振動測定装置
2 打撃手段
10 測定手段
11 センサー
12 温度センサー
20 解析手段
21 演算部
22 振動モード演算部
23 固有振動数演算部
26 比較部
27 記憶部
B 橋梁
P 橋脚
D 橋板

Claims (10)

  1. コンクリート橋の振動特性を測定する方法であって、
    コンクリート橋の固有振動モードの山・腹となる地点を求め、
    コンクリート橋の1カ所または2カ所以上にセンサーを設置し、
    コンクリート橋における1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじりの振動モードが最大振幅となる部分を打撃して、
    コンクリート橋に衝撃が加わった際における構造物の振動を測定し、この測定値に基づいて1次および2次の振動モードを特定する
    ことを特徴とする振動測定方法。
  2. コンクリート橋における橋脚間の中間および、一方の橋脚から橋脚間の距離の1/4となる位置にセンサーを設置する
    ことを特徴とする請求項1記載の振動測定方法。
  3. 請求項1または2に記載のコンクリート橋の振動測定方法に使用される装置であって、
    コンクリート橋に1カ所または2カ所以上に設置されるセンサーを備えた測定手段と、
    該測定手段からの信号に基づいてコンクリート橋の振動モードを特定する解析手段と、を備えており、
    該解析手段は、
    コンクリート橋に衝撃が加わった際における前記測定手段からの信号に基づいて、1次および2次の振動モードを特定するものである
    ことを特徴とする振動測定装置。
  4. 前記解析手段は、
    1次曲げ、1次ねじれ、1次そり、2次曲げ、2次ねじれ、2次そりの6つの振動モードのうち、4〜6つの振動モードを特定するものである
    ことを特徴とする請求項3記載の振動測定装置。
  5. 前記センサーが、
    コンクリート橋の変形速度を測定する速度計である
    ことを特徴とする請求項3または4記載の振動測定装置。
  6. コンクリート橋に衝撃を加える打撃手段を備えている
    ことを特徴とする請求項3、4または5記載の振動測定装置。
  7. 前記打撃手段が、
    木製またはプラスチック製のハンマーである
    ことを特徴とする請求項6記載の振動測定装置。
  8. 前記解析手段は、
    1次および2次の振動モードに基づいて固有振動数を算出し、算出された固有振動数記憶する機能を有しており、
    記憶されているコンクリート橋の固有振動数を比較する比較部を備えている
    ことを特徴とする請求項3乃至7記載の振動測定装置。
  9. 測定手段が、
    コンクリート橋の温度を測定する温度測定部を備えており、
    前記解析手段は、
    1次および2次の振動モードに基づいて固有振動数を算出し、算出された固有振動数記憶する機能を有しており、
    記憶されているコンクリート橋の低温時の固有振動数と高温時の固有振動数に基づいて、固有振動数を補正する補正機能を有している
    ことを特徴とする請求項3乃至8記載の振動測定装置。
  10. 特定された1次および2次の振動モードにおけるコンクリート橋の変形状態を特定し、該変形状態を表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
    ことを特徴とする請求項3乃至9記載の振動測定装置。
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