以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両制御装置が適用される車両の制駆動系のシステム構成を示した図である。ここでは、前輪側を主駆動輪、後輪側を従駆動輪とする駆動形態のフロント駆動ベースの4輪駆動車に対して本発明の一実施形態となる車両制御装置を適用した場合について説明するが、後輪側を主駆動輪、前輪側を従駆動輪とする駆動形態のリア駆動ベースの4輪駆動車に対しても適用可能である。
図1に示されるように、4輪駆動車の駆動系は、エンジン1、トランスミッション2、駆動力配分制御アクチュエータ3、フロントプロペラシャフト4、リアプロペラシャフト5、フロントデファレンシャル6、フロントドライブシャフト7、リアデファレンシャル8およびリアドライブシャフト9を有した構成とされ、エンジン制御手段となるエンジンECU10などによって制御されている。
具体的には、アクセルペダル11の操作量がエンジンECU10に入力されると、エンジンECU10によってエンジン制御が行われ、そのアクセル操作量に応じた駆動力を発生させるのに必要なエンジン出力(エンジントルク)が発生させられる。そして、このエンジン出力がトランスミッション2に伝えられ、トランスミッション2で設定されたギア位置に応じたギア比で変換されたのち、駆動力配分制御手段となる駆動力配分制御アクチュエータ3に伝えられる。トランスミッション2には、変速機2aと副変速機2bが備えられており、通常走行時には変速機2aで設定されたギア位置に応じた出力が駆動力配分制御アクチュエータ3に伝えられ、オフロード走行時や坂路走行時などにおいて副変速機2bが作動させられたときには副変速機2bで設定されたギア位置に応じた出力が駆動力配分制御アクチュエータ3に伝えられる。そして、駆動力配分制御アクチュエータ3によって決められた駆動力配分にしたがって、フロントプロペラシャフト4とリアプロペラシャフト5に駆動力が伝達される。
その後、フロントプロペラシャフト4にフロントデファレンシャル6を介して接続されたフロントドライブシャフト7を通じて前輪FR、FLに前輪側の駆動力配分に応じた駆動力が付与される。また、リアプロペラシャフト5にリアデファレンシャル8を介して接続されたリアドライブシャフト9を通じて後輪RR、RLに後輪側の駆動力配分に応じた駆動力が付与される。
エンジンECU10は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することでエンジン出力(エンジントルク)を制御し、各輪FL〜RRに発生させられる駆動力を制御する。例えば、エンジンECU10は、周知の手法によりアクセル開度を入力し、アクセル開度や各種エンジン制御に基づいてエンジン出力を演算する。そして、このエンジンECU10からエンジン1に対して制御信号を出力することにより、燃料噴射量の調整などを行い、エンジン出力を制御する。エンジンECU10では、アクセル開度がアクセルオン閾値を超えている場合にアクセルペダル11がオンしていると判定できるが、本実施形態では、アクセルペダル11の操作が行われているか否かを示すアクセルスイッチ11aを備えており、このアクセルスイッチ11aの検知信号を入力することによってアクセルペダル11がオンしていることを検知している。また、エンジンECU10では、トラクション制御(以下、TRCという)も実行している。例えば、エンジンECU10は、後述するブレーキECU19から車輪速度や車体速度(推定車体速度)に関する情報を取得し、これらの偏差で表される加速スリップが抑制されるように、ブレーキECU19に制御信号を出力して制御対象輪に制動力を加えることで駆動力を低下させる。これにより、加速スリップが抑制されて、効率良く車両を加速させられるようにしている。
なお、ここでは図示していないが、トランスミッション2の制御はトランスミッションECUで行われ、駆動力配分制御については駆動力配分ECUなどで行われている。これら各ECUとエンジンECU10とは車載LAN12を通じて互いに情報交換を行っている。図1では、トランスミッション2の情報が直接エンジンECU10に入力されるようになっているが、例えばトランスミッションECUから出力されたトランスミッション2のギア位置情報が車載LAN12を通じてエンジンECU10に入力されるようになっていても良い。
一方、制動系を構成するサービスブレーキは、ブレーキペダル13、マスタシリンダ(以下、M/Cという)14、ブレーキアクチュエータ15、W/C16FL〜16RR、キャリパ17FL〜17RR、ディスクロータ18FL〜18RRなどを有した構成とされ、ブレーキ制御手段となるブレーキECU19によって制御されている。
具体的には、ブレーキペダル13が踏み込まれて操作されると、そのブレーキ操作量に応じてM/C14内にブレーキ液圧が発生させられ、それがブレーキアクチュエータ15を介してW/C16FL〜16RRに伝えられる。これにより、キャリパ17FL〜17RRによってディスクロータ18FL〜18RRが挟み込まれることで、制動力が発生させられるようになっている。このような構成のサービスブレーキは、W/C16FL〜16RRを自動加圧できる構成であればどのようなものであっても良く、ここでは油圧によりW/C圧を発生させられる油圧サービスブレーキを例に挙げているが、電気的にW/C圧を発生させるブレーキバイワイヤなどの電動サービスブレーキであっても良い。
ブレーキECU19は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従った各種演算や処理を実行することで制動力(制動トルク)を制御し、各輪FL〜RRに発生させられる制動力を制御する。具体的には、ブレーキECU19は、各車輪FL〜RRに備えられた車輪速度センサ20FL〜20RRからの検出信号を受け取って、車輪速度や車体速度などの各種物理量を演算したり、ブレーキスイッチ21の検出信号を入力し、物理量の演算結果およびブレーキ操作状態に基づいてブレーキ制御を行う。また、ブレーキECU19は、M/C圧センサ22の検出信号を受け取ってM/C圧を検出している。
また、ブレーキECU19は、制動力の制御に基づいて、オフロード等における車両制御であるクロール制御等も実行している。具体的には、ブレーキECU19は、ドライバがクロール制御を要求する際に操作するクロールスイッチ23や目標速度設定スイッチ24の検出信号および前後加速度を検出する加速度センサ25の検出信号を入力し、これらの検出信号に基づいてクロール制御を実行している。クロールスイッチ23は、基本的にはオフロード走行を行う場合に押下されると考えられるが、急坂路などにおいて押下されても同様の制御が行われる。目標速度設定スイッチ24は、クロール制御が実行されるときの目標速度を設定するために用いられ、例えば1〜5km/hの速度範囲において目標速度を設定する。なお、図1ではM/C圧センサ22と加速度センサ25の検出信号はブレーキアクチュエータ15を介して、ブレーキECU19へ入力されるようになっているが、各センサから直接ブレーキECU19へ入力される構成であっても良い。
以上のようにして、本実施形態にかかる車両制御装置が適用される車両の制駆動系のシステムが構成されている。続いて、上記のように構成された車両制御装置の作動について説明する。なお、本実施形態にかかる車両制御装置では、車両制御として通常のエンジン制御やブレーキ制御も行っているが、これらについては従来と同様であるため、ここでは本発明の特徴に関わるクロール制御について説明する。本実施形態の場合、クロール制御のうちのブレーキ制御を車両制御として実行しており、ブレーキECU19がその制御を実行していることから、ブレーキECU19によって車両制御装置が構成されている。
クロール制御は、ドライバがクロールスイッチ23を押下し、かつ、目標速度設定スイッチ24で目標速度TBVを設定して、クロール制御の実行要求があったときに実行される。本実施形態にかかる車両制御装置では、クロール制御として、ドライバが目標速度TBVを設定すると、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差に基づいてブレーキ制御の制御量を設定することでフィードバック制御を行うのに加えて、応答性を高めるための処理を行っている。目標速度TBVは、クロールスイッチ23の操作に伴ってドライバが設定できるようになっており、例えば1〜5km/hの速度範囲において任意に設定可能となっている。車体速度V0は、ブレーキECU19で演算されており、各車輪FL〜RRに備えられた車輪速度センサ20FL〜20RRの検出信号から求められる車輪速度に基づいて周知の手法にて演算される。そして、車体速度V0が目標速度TBVに近づくように、基本的には、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差に基づき、車体速度V0が目標速度TBVよりも大きくなるほどフィードバック制御の制御量が大きくなるようにしている。
ただし、オフロードを走行する場合のように、車両の走行路面の傾斜や路面状態が急変して車両の走行状態が急変するということが頻繁に発生する場合、走行状態の急変に合わせて応答性良く目標制動力を変化させ、より素早くW/C圧を昇圧させられるようにすることが望ましい。このため、単なるフィードバック制御では、目標制動力を車両の走行状態の変化に合わせて変化させることができず、十分に応答できなくて、ドライバに違和感を与えてしまう。フィードバック制御における制御量を大きく設定すれば、高い応答性が得られるが、目標速度TBV近辺において常に車体速度V0が上下して、頻繁に加減速を繰り返すことになるため、単にフィードバック制御の制御量を大きくするのは好ましくない。
このため、ここでは、以下のように車両停止状態と通常走行状態とを判定し、車両停止状態と判定されたときにフィードバック制御におけるブレーキ制御の制御量がより素早く低下するような補正を行う。つまり、オフロードなどにおいて、クロール制御を実行している場合、基本的にはドライバは車両を停止させようとしていないと考えられるため、車両を停止させようとしていないのに停止してしまっている可能性がある。このような場合には、フィードバック制御におけるブレーキ制御の制御量がより素早く低下するような補正を行うことで、より素早くブレーキが抜けるように応答性を高くし、よりドライバの違和感を緩和できるようにする。具体的には、以下に示す(1)〜(4)の各制御を実行する。なお、本明細書では、フィードバック制御によるブレーキ制御の制御量としてフィードバック制動力と記載するが、フィードバック制動力としては制動トルクを想定している。ただし、制動トルクに対応する制御量として用いられることができる他の制御量、例えばW/C圧などであっても構わない。
(1)車両停止状態と通常走行状態とを判定し、車両停止状態と判定されたときには通常走行状態と比較して、フィードバック制動力FBbrakeForceがより素早く減少するように、フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行う。車両停止状態と通常走行状態との判定については、例えば車輪速度センサ20FL〜20RRからの検出信号に基づいて得られる車輪速度から車体速度V0を演算し、この車体速度V0が0であれば車両停止状態、0でなければ通常走行状態と判定することにより行える。フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainについては、例えば車両停止時間と減少側ゲインBrakeDownGainとの関係を示したマップを作成し、そのマップに示されたマップゲインBrakeDownGainMAPを用いて車両停止時間に対応する減少側ゲインBrakeDownGainを設定できる。
図2は、車両停止時間と減少側ゲインBrakeDownGainとの関係を示したマップの一例を示した図である。この図に示すように、車両停止時間が多くなるほど減少側ゲインBrakeDownGainが大きな値となるようなマップゲインBrakeDownGainMAPとし、減少側ゲインBrakeDownGainをこのマップゲインBrakeDownGainMAPに設定することができる。
ここでは、車両停止時間が第1所定時間(例えば、0.5s)までは車両停止時間が長くなるのに従って所定の勾配でマップゲインBrakeDownGainMAPを増加させ、車両停止時間が第1所定時間よりも長くなるとマップゲインBrakeDownGainMAPの増加勾配をより大きくし、更に車両停止時間が第2所定時間(例えば、1.0)になるとマップゲインBrakeDownGainMAPを一定値にするマップとしている。
(2)車両停止状態においてブレーキペダル13の踏み込みがあった場合には、(1)の制御の場合よりも更にフィードバック制動力FBbrakeForceが素早く減少するように、フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行う。
車体速度V0が目標速度TBVとなるようにフィードバック制動力FBbrakeForceを発生させている場合においてブレーキ操作が行われたときには、フィードバック制動力FBbrakeForceを素早く解除し、ドライバのブレーキ操作に基づくW/C圧の昇圧に変更する方がドライバの操作に合致した制動力を発生させられる。例えば、ブレーキ操作が行われることがクロール制御の終了条件とされるが、その場合にはクロール制御におけるフィードバック制動力FBbrakeForceを素早く解除し、ドライバのブレーキ操作に基づくW/C圧の昇圧に変更する方がドライバの操作に合致した制動力を発生させられる。このため、車両停止状態においてブレーキペダル13の踏み込みが合った場合に、更に減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行うことで、クロール制御におけるフィードバック制動力については素早く解除できるようにする。
(3)車両停止状態において車両が停止した路面の坂路勾配が急勾配である場合には、緩勾配のときと比べて、フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainを低くする補正を行う。坂路勾配が急勾配の場合、制動力を低下させてブレーキを抜いたときに加速し易くなるが、加速した場合に直ぐには車両を停止させることができない。このため、坂路勾配が急勾配である場合には緩勾配のときよりも減少側ゲインBrakeDownGainを低くすることで、緩やかに制動力が低下させられるようにし、車両が加速し難くなるようにする。フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainについては、例えば坂路勾配と減少側ゲインBrakeDownGainとの関係を示したマップを作成し、そのマップに示されるマップゲインBrakeDownSlopeGainMAPを用いて減少側ゲインBrakeDownGainを設定できる。
図3は、路面勾配と減少側ゲインBrakeDownGainとの関係を示したマップの一例を示した図である。この図に示すように、例えば、路面勾配が大きくなるほど減少側ゲインBrakeDownGainが小さな値となるようなマップゲインBrakeDownSlopeGainMAPとすることができる。ここでは、路面勾配が所定値(例えば、−11.5deg)までは路面勾配が負側に大きくなるのに従って所定の勾配でマップゲインBrakeDownSlopeGainMAPを低下させ、路面勾配が所定値以下になるとマップゲインBrakeDownSlopeGainMAPの低下勾配をより大きくしたマップとしている。このマップゲインBrakeDownSlopeGainMAPを減少側ゲインBrakeDownGainに掛けることで、減少側ゲインBrakeDownGainを補正することができる。
(4)上記した(1)、(2)の制御によって減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行う場合において、2系統に分けられる制動系について、減少側ゲインBrakeDownGainを変えるようにする。
例えば、2系統のうちのいずれか一系統のみについて減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行い、他系統については補正を行わないようにする。このようにすれば、4輪すべてにおいてブレーキ抜けが早く行われた場合に生じるブレーキの抜き過ぎを防止できる。この場合において、制動系が前後配管とされている場合、両前輪FR、FLの方については減少側ゲインBrakeDownGainFrontを高くする補正を行わず、両後輪RR、RLの方についてのみ減少側ゲインBrakeDownGainRearを高くする補正を行うようにすると好ましい。例えば下り坂においては、両後輪RR、RLについて両前輪FR、FLよりも先にブレーキが抜けるようにした方が車両の安定性が高くなる。このため、両後輪RR、RLの方についてのみ減少側ゲインBrakeDownGainRearを高くする補正を行うことで、両後輪RR、RLについて両前輪FR、FLよりも先にブレーキが抜けるようにでき、車両の安定性を高めることが可能となる。
図4は、減少側ゲインBrakeDownGainと後輪RR、RL側の減少側ゲインBrakeDownGainRearの関係を示すマップの一例を示した図である。この図に示すように、例えば、減少側ゲインBrakeDownGainが大きくなるほど後輪RR、RL側の減少側ゲインBrakeDownGainRearも大きくするが、減少側ゲインBrakeDownGainが大きくなるほど、減少側ゲインBrakeDownGainよりも後輪RR、RL側の減少側ゲインBrakeDownGainRearの方が大きくなる割合が少なくなるマップゲインBrakeDownGainMAPRearとすることができる。
なお、制動系がX配管とされる場合も同様のことが行え、右前輪FRと左後輪RLの組み合わせと左前輪FLと右後輪RRの組み合わせのいずれか一方については減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行い、他方については減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行わないようにすることができる。さらには、制動系の配管にかかわらず、前後で減少側ゲインBrakeDownGainの補正を変えるようにしても良い。
以上のように、クロール制御を実行する際には、上記した(1)〜(4)の制御を実行するようにしている。続いて、このようにして実行されるクロール制御の詳細について説明する。図5(a)、(b)は、TRCを含めたクロール制御の全体を示したフローチャートである。以下、この図を参照して、TRCを含めたクロール制御の詳細について説明する。
まず、ステップ100では、各種入力処理を行う。具体的には、各車輪速度センサ20FL〜20RRの検出信号、加速度センサ25の検出信号を入力することで、各車輪FL〜RRの車輪速度VW**を演算すると共に車両の前後加速度Gxを演算する。なお、車輪速度VW**に付した添え字の**は、FL〜RRのいずれかを示しており、VW**は対応する各車輪FL〜RRの車輪速度を統括的に表記したものである。以下の説明においても、添え字の**はFL〜RRのいずれかを示しているものとする。
また、M/C圧センサ22の検出信号を入力してM/C圧を検出したり、アクセル開度、駆動力、副変速機2bのギヤ位置、すなわちH4とL4のいずれに位置しているかをエンジンECU10などから車載LAN12を通じて入力する。さらに、クロールスイッチ23および目標速度設定スイッチ24の検出信号を入力し、ドライバがクロール制御を要求していて目標速度選択を行っている状態であるか否かを検出する。
次に、ステップ105に進み、クロール制御の実行条件を満たしているか否か、具体的には、副変速機2bのギア位置がL4、つまりオフロードなどで用いられる低速ギアのギア比が設定されており、かつ、クロールスイッチ23がオンされているか否かを判定する。ここで、肯定判定されればクロール制御の実行条件を満たしているためステップ110に進んでクロール制御許可を示すフラグをセットし、否定判定されればクロール制御の実行条件を満たしていないためステップ115に進んでクロール制御禁止を示すフラグをセットする。
続いて、ステップ120に進み、各車輪速度VW**に基づいて車体速度V0を演算する。さらに、ステップ125に進み、車体速度V0を時間微分することで車体加速度DV0を演算する。
その後、ステップ130に進み、坂路勾配SLOPEを演算する。まず、車体加速度DV0とステップ100で加速度センサ25の検出信号に基づいて演算した車両の前後加速度Gxとの差が重力加速度成分に相当することから、坂路勾配SLOPE=sin-1{(Gx−DV0)/9.8}の演算式を用いて、坂路勾配SLOPEを演算する。
続いて、ステップ135に進み、ドライバのブレーキ操作による制動力FOOTBRAKEを演算する。例えば、ステップ100で入力したM/C圧に基づいて、M/C圧と対応する制動力FOOTBRAKEを演算する。M/C圧と制動力FOOTBRAKEとの関係については、予め実験などによって調べておけるため、その関係を示すマップなどを作成しておき、そのマップを用いてM/C圧に応じた制動力FOOTBRAKEを演算すれば良い。
また、ステップ140に進み、目標速度TBVを演算する。目標速度TBVは、基本的にはドライバが目標速度設定スイッチ24で設定した速度範囲(例えば1〜5km/h)内の速度とされるが、ドライバが目標速度TBVの切替えを行った場合には、切替え後の目標速度TBVに急に変化させるのではなく、切り替え前の目標速度TBVから徐々に切り替え後の目標速度TBVに変化させるようにフィルタを掛けるようにしている。例えば、切り替え前の目標速度TBVから切り替え後の目標速度TBVに一定勾配で変化させるようにしており、その勾配が目標減速度(もしくは目標加速度)となる。
このようにして、各種パラメータの演算が完了すると、ステップ145においてクロール制御が禁止されているか否かを判定する。そして、禁止されていればステップ150においてフィードバック演算におけるフィードバック制動力FBbrakeForceを0[N]に設定すると共に、ステップ155において各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**を0[MPa]に設定してクロール制御を行わないようにし、禁止されていなければステップ160に進む。
ステップ160では、通常の制御ゲイン設定を行う。すなわち、フィードバック制御によるブレーキ制御を実行するために通常設定しているフィードバックゲインBrakeGainの設定、例えばPID制御におけるP項、I項、D項のゲインの設定を行う。このときのゲインは、ブレーキ制御として一般的に行われている通常のゲインを設定している。
続いて、ステップ165に進み、上記した(1)〜(4)の各制御によってフィードバックゲインBrakeGainにおける減少側ゲインBrakeDownGainの補正演算を行う。図6は、この処理の詳細を示したフローチャートである。なお、ここでは制動系が前後配管にて構成されている場合を想定したフローチャートとしている。
まず、ステップ165aでは、車体速度V0が0km/hであるか否か、つまり車両停止状態であるか通常走行状態であるかを判定している。ここで否定判定されれば、通常走行状態であり、上記した(1)〜(4)の制御を行う必要がないため、ステップ165bに進んで両前輪FR、FLにおける減少側ゲインBrakeDownGainFront および両後輪RR、RLにおける減少側ゲインBrakeDownGainFront に掛けられる補正値を共に1.0に設定し、減少側ゲインBrakeDownGainが通常の制御ゲインのままとなるようにする。そして、ステップ165aで肯定判定されて車両停止状態である場合には、ステップ165cに進む。
ステップ165cでは、ステップ165aの判定結果から車両停止状態であるため、(1)の制御として、通常走行状態と比較して制動トルクがより素早く減少するように、フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行う。具体的には、上記した図2に示すマップから車両停止時間に対応するマップゲインBrakeDownGainMAPを選択し、それを減少側ゲインBrakeDownGainに設定する。
その後、ステップ165dに進み、制動状態であるか否か、つまりドライバによるブレーキペダル13の踏み込みがあったか否かを判定する。ここで肯定判定された場合には、ステップ165eに進み、(2)の制御として、(1)の制御の場合よりも更に制動トルクが素早く減少するように、フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行う。具体的には、ステップ165cで設定した減少側ゲインBrakeDownGainを高くすべく、この減少側ゲインBrakeDownGainに対して制動時ゲイン増大係数KGain(例えば2.0)を掛けた値を新たな減少側ゲインBrakeDownGainとする。そして、ステップ165fに進む。一方、ステップ165dで否定判定された場合には、ステップ165eを経ることなくステップ165fに進む。
ステップ165fでは、(3)の制御として、坂路勾配に応じてフィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainを補正する。具体的には、上記した図3に示すマップを用いて、坂路勾配に応じたマップBrakeDownSlopeGainMAPを選択し、それを新たに減少側ゲインBrakeDownGainに掛けることで新たな減少側ゲインBrakeDownGainとする。
そして、ステップ165gに進み、(4)の制御として、上記した(1)、(2)の制御によって減少側ゲインBrakeDownGainを高くする補正を行う場合において、2系統に分けられる制動系について、減少側ゲインBrakeDownGainを変えるようにする。ここでは、両前輪FR、FLの方については減少側ゲインBrakeDownGainFrontを高くする補正を行わず、両後輪RR、RLの方についてのみ減少側ゲインBrakeDownGainRearを高くする補正を行うようにしている。すなわち、前輪FR、FLの方については、ステップ165fまでに演算された減少側ゲインBrakeDownGainをそのまま減少側ゲインBrakeDownGainFrontとして設定する。そして、両後輪RR、RLの減少側ゲインBrakeDownGainRearについては、上記した図4に示すマップを用いて、ステップ165fまでに演算された減少側ゲインBrakeDownGainと対応する後輪RR、RL側の減少側ゲインBrakeDownGainMapRearを選択し、それを減少側ゲインBrakeDownGainRearとして設定する。
このようにして、(1)〜(4)の制御に基づく減少側ゲインBrakeDownGainの補正値が演算される。この後、図5(b)のステップ170に進み、クロール制御におけるブレーキ制御において、W/C圧を減少させる減圧時のゲイン補正として、ステップ160で設定される通常設定されるフィードバックゲインBrakeGainに対して、ステップ165で演算した減少側ゲインBrakeDownGainFrontもしくは減少側ゲインBrakeDownGainRearを掛けることで、前輪FR、FLや後輪RR、RLそれぞれのフィードバックゲインBrakeGainを補正する。
そして、ステップ175に進み、最終的なフィードバック制動力FBbrakeForceの演算を行う。具体的には、前回の制御周期のときのフィードバック制動力FBbrakeForce(前回値)を用いて、このフィードバック制動力FBbrakeForce(前回値)に対して、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差にステップ170で演算したフィードバックゲインBrakeGainおよび制動力変換用の係数を掛けた値を足すことで、最終的なフィードバック制動力FBbrakeForceを演算している。
さらに、ステップ180に進み、ステップ175で演算したフィードバック制動力FBbrakeForceを各輪制動力に換算する。ここでは、フィードバック制動力FBbrakeForceに対して各輪FL〜RRの配分を決める各輪制動力ゲインEachBrakeGain**を掛けることで、各輪制動力BrakeForce**を演算している。各輪制動力ゲインEachBrakeGain**は、通常は4つの車輪FL〜RRで均一となるように1/4とされるが、前輪FR、FLの方の配分が後輪RR、RLよりも大きくなるように前後輪で配分を変えてあっても良い。そして、ステップ185に進み、ステップ180で演算した各輪制動力BrakeForce**に対して液圧換算値を掛けることにより、各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**を演算する。
この後は、TRCを加味した制御として、ステップ190においてTRCの制御中であるか否かを判定し、制御中であればステップ195に進んでTRC要求液圧演算として、TRCにより要求されているTRC要求液圧TrcTargetPress**を演算する。そして、ステップ200に進んでステップ195で求めた各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**にTRC要求液圧TrcTargetPress**を足すことで、クロール制御およびTRCを加味した最終的な各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**が演算される。なお、TRCの制御中であるか否かやTRC要求液圧TrcTargetPress**については、TRCを実行しているECU(ブレーキECU19もしくはエンジンECU10のいずれか)より取得することができる。
以上のようにして、クロール制御およびTRCを加味した最終的な各輪FL〜RRのW/C圧の目標圧TargetPress**が演算されると、その目標圧TargetPress**を発生させられるように、ブレーキアクチュエータ15が制御され、W/C16FL〜16RRのW/C圧が制御される。
図7および図8は、本実施形態で説明したフィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainの補正を実行した場合を示したタイムチャートである。
図7に示すように、下り坂において、車体速度V0が低下して車両停止状態になると、その時点でフィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainが大きくなって、急峻にW/C圧が低下させられる。このため、クロール制御を実行している場合のように、基本的にはドライバは車両を停止させようとしていないと考えられる状況において車両停止状態となった場合に、フィードバック制御におけるブレーキ制御の制御量がより素早く低下するような補正を行うことができる。これにより、より素早くブレーキが抜けるように応答性を高くでき、よりドライバの違和感を緩和することが可能となる。
そして、車体速度V0が復帰してきたときには、再びフィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainが通常走行時の値に戻され、車体速度V0と目標速度TBVとの偏差に基づいたフィードバック制御が行われるようになる。なお、図6中において、車体速度V0が再び正(V0>0)になってから車体速度V0が目標速度TBV以下の状態なのに、フィードバック制御に基づくW/C圧の制御圧が緩やかに増加している期間がある。これは、PID制御などによって行っているフィードバック制御のD項によって加速度成分に応じた制動力フィードバックがあり、車体速度V0が目標速度TBV以下の状態であってもW/C圧の制御圧が増加させられるためである。
一方、図8に示すように、車両た停止した路面の坂路勾配が急勾配である場合には、緩勾配のときと比較して、フィードバック制御における減少側ゲインBrakeDownGainが小さくなるため、W/C圧の低下が緩やかになる。これにより、坂路勾配が急勾配の場合に、制動力を低下させてブレーキを抜いたときに加速し易くなるのにもかかわらず、W/C圧が急峻に低下させられてしまうことを防止できる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、各車輪FL〜RRの制動力を制御することで車体速度を低速に保つ制御の一例としてクロール制御を挙げた。しかしながら、これは単なる一例を示したに過ぎず、他の制御、例えばダウンヒルアシスト制御(DAC)についても同様のことが言える。ダウンヒルアシスト制御の場合もクロール制御と同様であり、上記した第1実施形態で説明したクロール制御の部分をすべてダウンヒルアシスト制御に置き換えれば良い。
なお、各図中に示したステップを含めて、ブレーキECU19中において各種処理を実行している部分が各種処理を実行する手段に対応するものである。例えば、ステップ165aの処理を実行する部分が走行状態判定手段、ステップ165c〜165gの処理を実行する部分がゲイン補正手段、ステップ165dの処理を実行する部分がブレーキ操作判定手段に相当する。また、ステップ130勾配取得手段、ステップ170の処理を実行する部分がフィードバック制御手段に相当する。