本発明は、燃焼室内で断続的に燃焼したガスによりタービンを駆動するエンジンに関するものである。
日本国特開2005−207359号公報には、衝撃波を伴う爆発的燃焼のデトネーションを間欠的に発生させ、デトネーションにより得られるエネルギを発電の動力とする発電システムが開示されている。パルスデトネーションエンジン発電システムは、デトネーションが発生する所定長さの筒状の空洞を有するデトネーション管と、デトネーション管の管内に所定の間隔で気体を送り込み、デトネーション管の管内に所定の間隔で燃料を供給する。燃料に点火し、デトネーション管内で衝撃エネルギを発生させタービンに誘導し、このタービンを駆動し発電を行う。また、気体の供給は過大にして、デトネーション管に供給しコールドフローを生成し間欠的に冷却を行う。さらに、衝撃エネルギを気体の圧力により緩和するショックダンパを有する。
デトネーションエンジンは、デトネーションと呼ばれる燃焼波の伝達形態を利用したエンジンであり、理論的には高効率であるが、燃焼室内にデトネーション波を形成し、それをいかに伝達させるかが重要であり、そのための燃料の選択、点火方法、吸気過程、燃焼室形状などの課題が多い。このため、デトネーションエンジンは一見、単純な構成であるが、安定した性能を発揮できる小型で高効率なエンジンの実現は難しい。
本発明の一態様は、ガスタービンユニットと、ガスタービンユニットに燃焼ガスを供給する複数の燃焼ユニットとを有するエンジンである。複数の燃焼ユニットは、それぞれ、燃焼室と、燃焼室の一部を構成する第1の壁面を弾性力により移動し、燃焼室の容積を縮小して燃焼室内の気体を加圧する第1の機構と、燃焼室の排気口を開閉し、排気口から燃焼ガスを排気するタイミングを制御する第2の機構とを含む。これらの燃焼ユニットは、第1の機構により、弾性力、典型的にはバネにより燃焼室の容積(体積)を縮小して燃焼室内の気体を断熱圧縮する。したがって、極めて簡易な機構で燃焼室内の気体の圧縮比を高めることができる。燃焼室内の気体は、燃料と空気との混合気体であってもよく、圧縮した段階でイグナイタなどにより着火させてもよい。また、燃焼室内の気体は空気であってもよく、燃料を噴射して圧縮点火させてもよい。
さらに、第2の機構により、着火させた後の燃焼ガスを排気(噴出)するタイミングを制御することが可能であり、タービンユニットに対して燃焼ガスを供給するタイミングおよび燃焼中の燃焼室内の圧力を制御することができる。さらに、これらの燃焼ユニットでは、第1の機構を駆動する弾性力に対抗する程度の一定の負荷で、2サイクルの短周期で燃焼を繰り返して燃焼ガスをタービンユニットに供給できる。
このため、タービンユニットに対して、簡易な構成の複数の燃焼ユニットを配置することが可能となり、それらの複数の燃焼ユニットから異なるタイミングで、短いサイクルでタービンユニットに対して燃焼ガスを供給することが可能となる。したがって、このエンジンにおいては、燃焼側は、間欠燃焼として、オットーサイクル、ディーゼルサイクルあるいはサバテサイクルのように、燃焼温度を高くでき、ガスタービンユニットに対しては複数の燃焼ユニットから短いサイクルで燃焼ガスを疑似連続的に供給することが可能となり、高い効率でガスタービンユニットを駆動できる。
燃焼ユニットにおいては、排気口を第1の壁面、例えばピストンの移動途中に設けることが可能であり、第1の機構が第2の機構を兼ねてもよい。また、燃焼ユニットは、第1の壁面の位置を弾性力に対抗して保持する第3の機構を含んでもよい。第1の壁面が燃焼圧力により移動して燃焼室の容積が拡大した状態で第1の壁面の動きを固定し、排気と給気とを行うことができる。燃焼ユニットは、第1の壁面の位置を燃焼室内の圧力に対抗して保持する第4の機構を含んでもよい。燃焼室における燃焼を定積(定容)燃焼に近づけて燃焼温度をさらに高くしたり、燃料噴射による圧縮点火後の燃焼効率を高めたりすることができる。
複数の燃焼ユニットは、それぞれ、第1の壁面を弾性力に対抗して燃焼室の容積を拡大する方向に移動して前記する第5の機構を含んでもよい。この第5の機構は、スタータとしても機能する。さらに、第5の機構を駆動する電動アクチュエータと、エンジンが稼働すると電動アクチュエータによる発電を行うエネルギー回生機構とを含んでもよい。また、エンジンは、複数の燃焼ユニットのそれぞれの第5の機構を独立して駆動する機構を含んでもよい。複数の燃焼ユニットは、それぞれ、燃焼室内で移動するピストンであって、燃焼室側に向いた第1の壁面を備えたピストンを含んでいてもよい。複数の燃焼ユニットのピストンを起動時などに連動して動かしてもよいが、バネなどの弾性力を供給する手段や、電動のアクチュエータなどで燃焼ユニットのピストンを独立して動かすことにより、個々の燃焼室内における燃焼を独立して制御できる。
また、燃焼ユニットは、燃焼室に供給される圧縮ガスを燃焼室とピストンを挟んだ反対側の領域に一時的に格納するガス供給システムとを含んでもよい。燃焼室に供給される前の圧縮気体、例えば、燃焼空気または混合気体を、燃焼室とピストンを挟んで反対側の領域に一時的に格納しておくことにより、ピストンの前後の部屋(領域)、すなわち燃焼室と反対側の領域との圧力差が少なくなり、燃焼室が燃焼により高圧になるときは、ピストンの反対側の領域により第1の機構とともに圧力を受けることができる。ピストンを動かして燃焼室内の気体をさらに圧縮するときは、ピストンの前後の圧力がほぼバランスしているのでバネなどの弾性体でピストンを動かしやすい。
複数の燃焼ユニットは、それぞれ、燃焼室とガスタービンユニットとを接続する臨界ノズルを含み、第2の機構は、燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に開閉するものであってもよい。燃焼室と臨界ノズル(超音速ノズル、ラバールノズル)とを背圧制御ユニットと機能する第2の機構を介して接続することにより、燃焼室で断続的に発生する燃焼ガスが臨界ノズルのスロート部分に流入する圧力を制御することができる。さらに、第2の機構により臨界ノズルから分離された状態で燃焼室において断続的な燃焼を開始できるので、燃焼室内の燃焼の制御が容易となる。
ガスタービンユニットは、ラジアルタービンユニットを含み、複数の燃焼ユニットを、ラジアルタービンユニットの周囲に沿って配置してもよい。また、上記のエンジンと、ガスタービンに接続された発電機とを有する発電装置も本発明に含まれる。
エンジンを含む発電装置の一例を示す図であり、図1(a)は上面から見た構成の概要を示し、図1(b)は側面から見た構成の概要を示す。
燃焼ユニットの概略構成を示す図であり、図2(a)はピストンが上方に位置した状態を示し、図2(b)はピストンが下方に位置した状態を示す。
図3(a)はストッパの一例を示し、図3(b)はストッパの他の例を示す。
異なる燃焼ユニットの概略を示す図。
さらに異なる燃焼ユニットの概略を示す図。
さらに異なる燃焼ユニットの概略を示す図であり、図6(a)は背圧制御ユニットが燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に閉じた状態を示し、図6(b)は背圧制御ユニットが燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に開いた状態を示す。
さらに異なる燃焼ユニットの概略を示す図であり、図7(a)は背圧制御ユニットが燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に閉じた状態を示し、図7(b)は背圧制御ユニットが燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に開いた状態を示す。
さらに異なる燃焼ユニットの概略を示す図。
図9(a)および(b)は、さらに異なる燃焼ユニットの概略を示す図。
異なるエンジンを含む発電装置の一例を示すブロック図。
異なる燃焼ユニットの概略を示す図。
複数の燃焼ユニットを含むエンジンの概略を示す図であり、図12(a)は斜視図、図12(b)は後方から見た図、図12(c)および(d)は第1および第2の開閉パネル、図12(e)および(f)はこれらの開閉パネルにより燃焼室が開閉される状態を示す図。
異なるエンジンの概略を示す図。
さらに異なる燃焼ユニットの概略を示す図であり、図14(a)は背圧制御ユニットが燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に閉じた状態を示し、図14(b)は背圧制御ユニットが燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に開いた状態を示し、図14(c)は、図14(b)より開口面積を小さくした状態を示す。
発明の実施の形態
図1に、複数の燃焼ユニット80とガスタービンユニット39とを備えたエンジン10と、エンジン10によりシャフト38を介して回転駆動される発電機31とを含む発電装置(発電ユニット)30を示している。ガスタービンユニット39は、上流に配置されたラジアルタービン(半径流タービン)39aと、下流に配置された軸流タービン39bとを含み、4つの燃焼ユニット80がラジアルタービン39aの周囲の対称な位置に配置されている。燃焼ユニット80の数は4つに限定されず、5つ以上であってもよく、配置も90度ピッチに限定されない。複数の燃焼ユニット80は、それぞれノズル15によりガスタービンユニット39に接続され、燃焼ユニット80から供給される燃焼ガス51によりガスタービンユニット39が駆動される。ガスタービンユニット39は、ラジアルタービン39aで構成されていてもよく、軸流タービン39bで構成されていてもよい。
図2(a)および(b)に、1つの燃焼ユニット80を抜き出して、その構造を、断面図を用いて簡易的に示している。図2(a)はピストン81が上方に移動した状態を示し、図2(b)はピストン81が下方に移動した状態を示す。燃焼ユニット80は、円筒状の燃焼室11を内部に含むシリンダ(シリンダー枠)88と、燃焼室11の内部で長手方向89に移動するピストン81と、ピストン81に繋がったロッド82と、ロッド82に沿ってピストン81を長手方向89に移動するように配置されたバネ83とを含む。燃焼室11は長手方向89が上下方向ではなく左右(水平)方向に延びていてもよいが、以降においては長手方向89が上下方向の例で説明する。
本例のバネ83はコイルバネであり、ロッド82がバネ83の中心を通り、ロッド82の周囲でバネ83が伸び縮みするようになっている。バネ83は、燃焼室11の一部を構成するピストン81の燃焼室11の側の面(第1の壁面)81aをバネ83の弾性力により移動し、燃焼室11の容積を縮小して燃焼室11内の気体を加圧する第1の機構(第1のユニット)71として動作する。この例ではバネ83は圧縮コイルばねであり、円筒状のコイルばねであっても円錐状のコイルばねであってもよい。
燃焼ユニット80は、さらに、燃焼室11へ気体(ガス)58を供給するように燃焼室11の上部に設けられた吸気口84と、吸気口84を開閉する吸気バルブ(吸気口バルブ)84vと、吸気口84から供給された空気が第1の機構71により圧縮された後に燃料を噴射して燃焼室11内で燃焼させて燃焼ガス51を形成する燃料噴射装置86と、燃焼室11から燃焼ガス51を排気(噴出)するように設けられた排気口(噴出口)85とを含む。排気口85は第1の壁面81aを構成するピストン81の移動途中の燃焼室11の壁面に設けられており、ピストン81が下方に移動して第1の壁面81aが排気口85を通過すると、排気口85と燃焼室11とが連通し、燃焼室11で形成された燃焼ガス51が排気口85からノズル15を通ってタービン39に排出(噴出)される。したがって、この燃焼ユニット80においては、第1の壁面81aを動かす第1の機構71が排気口85を開閉して排気口85から燃焼ガス51を排気するタイミングを制御する第2の機構(第2のユニット)72を兼ねる。
燃焼ユニット80は、さらに、第1の壁面81aを構成するピストン81の位置をバネ83の弾性力に対抗して燃焼室11の下方に保持する第3の機構(第1のストッパ)73と、第1の壁面81aを構成するピストン81の位置を燃焼室11内の圧力に対抗して燃焼室11の上方に保持する第4の機構(第2のストッパ)74とを含む。第4の機構(第2のストッパ)74は、ピストン81を上方に駆動する弾性力に対抗してピストン81の燃焼室11の上方における位置を決める機能を兼ね備えていてもよい。ストッパ73および74は、機械的にピストン81と直にかみ合ってピストン81の位置を一時的に固定するものであってもよく、磁力などの間接的な力を用いてピストン81の位置を一時的に固定するものであってもよい。
図3(a)は第1のストッパ73および第2のストッパ74の構成の一例であり、シリンダー枠88の所定の位置にバネなどの反発部材(スプリング)73aにより支持された係合部材73sを含む。係合部材73sがピストン81に設けられた受け部81sに嵌り、ピストン81の移動を一時的に停止させるための抵抗になる。図3(b)は他の一例であり、シリンダー枠88の所定の位置に埋設または取り付けられたマグネット73mと、ピストン81に埋設または取り付けられたマグネット81mとを含む。マグネット73mおよび81mの磁力がピストン81の移動を一時的に停止させるための抵抗になる。これらの方式のいずれか、または他の方式でピストン81の位置を一時的に固定する第1のストッパ73および第2のストッパ74は、電動アクチュエータまたは電磁石などを用いてピストン81の位置を一時的に固定するか否かを選択でき、また、ピストン81をその位置に一時的に固定する時間を自由に制御することができる。
燃焼ユニット80は、さらに、第1の壁面81aを有するピストン81を、ロッド82により、バネ83の弾性力に対抗して下側、すなわち、燃焼室11の容積を拡大する方向に移動する第5の機構75を含む。燃焼ユニット80は、第5の機構75を駆動する電動アクチュエータ、例えばモーターと適当な輪列などの動力伝達機構とを含む電動のスタータユニット92を含む。スタータユニット92は、個々の燃焼ユニット80のロッド82を独立して動かすように設けられていてもよく、複数の燃焼ユニット80のロッド82を連動して動かすように共通に設けられていてもよい。個々の燃焼ユニット80のロッド82を独立して動かすように設けられたスタータユニット92は、個々の燃焼ユニット80のピストン81の位置を独立して制御することが可能であり、燃焼室11内の燃焼状態、例えば、着火の条件などを、より最適に制御しやすい。スタータユニット92は、燃焼ユニット80の燃焼室11において燃焼が繰り返され、燃焼ガス51の圧力とバネ83の弾性力によりピストン81が上下に動作するようになると内蔵しているモーターを発電機として使用してエネルギー回生を行う機構を含む。
燃焼ユニット80は、さらに、シリンダー枠88内に、燃焼室11の少なくとも一部を覆うように設けられた供給路87と、供給路87にコンプレッサー93から供給される圧縮気体、典型的には圧縮空気58を供給する供給口87aと、供給口87aを開閉する供給バルブ87vとを含む。コンプレッサー93は複数の燃焼ユニット80に共通して設けられていてもよく、その一例はガスタービンユニット39に接続されたものであり、ガスタービンユニット39の排気で駆動されるターボチャージャーであってもよい。供給路87は、シリンダー枠88のピストン81の下側、すなわち、ロッド82およびバネ83が配置された空間(一次格納室)88sに連通しており、供給口87aから注入された圧縮空気58は、一次格納室88sに入る。一次格納室88sは、燃焼室11とはピストン81を挟んだ反対側の領域であり、供給路87は、圧縮空気58を、燃焼室11に供給される前に一時的にピストン81の反対側の一次格納室88sに格納するガス供給システムとしての機能を含む。
一次格納室88sに圧縮空気58を格納することにより、格納された圧縮空気58は、燃焼室11内における燃焼によりピストン81が下側に移動したときに圧縮され、バネ83とともにピストン81の急激な動きを和らげるダンパーとしての機能を果たす。一次格納室88sには、ピストン81の位置を検出するための位置センサー(接触センサー、光学的センサーなど)88pを含む。また、ピストン81が上側に移動して燃焼室11内の圧縮空気58を圧縮する際は、供給バルブ87vを開いて、一次格納室88sにさらに圧縮空気58を入れることも可能であり、ピストン81を挟んだ燃焼室11の圧力と一次格納室88sとの圧力をできるだけ近づけて圧力差を少なくしてバランスさせることができる。すなわち、バネ83の弾性力がなければ、ピストン81が燃焼室11と一次格納室88sとの間でフローティングするような条件で動かすことができる。これにより、バネ83の弾性力によりピストン81を上側に移動させることが容易となり、少ない弾性力で燃焼室11内の燃焼空気58をさらに圧縮できる。例えば、コンプレッサー93で着火温度近くではあるが、着火温度まで至らない程度に断熱圧縮した燃焼空気58を、一次格納室88sを経由して燃焼室11に供給し、ピストン81で断熱圧縮して着火温度まで燃焼空気58の温度を上げることができる。
このような条件でピストン81を駆動する第1の機構71としての弾性力が得られる弾性体としては、金属製のバネ83が好ましい。ピストン81の移動量、移動するための弾性力(圧力)、温度などの条件を満足するものであれば、他のタイプの弾性体、例えば、ゴム等であってもよい。粘弾性を備えたダンパー、またはダンパーとバネとの組み合わせであってもよい。
燃焼ユニット80は、さらに、吸気バルブ84vのアクチュエータ84w、供給バルブ87vのアクチュエータ87w、燃料噴射装置(注入装置)86、スタータユニット92などを制御する制御ユニット(コントローラ)90を含む。コントローラ90は、第1のストッパ73および第2のストッパ74によりピストン81の位置を積極的に制御する機能を備えていてもよく、ピストン81の位置を位置センサー88pにより監視する機能を備えていてもよい。各燃焼ユニット80にピストン81の位置を制御するストッパ73および74を設けることにより、燃焼ユニット80の単位で、または燃焼室11の単位で、ピストン81の動き、停止位置、停止時間を独立して、すなわち、個別に、フレキシブルに制御することができる。
第1のストッパ73は、ピストン81、すなわち、第1の壁面81aの下方の位置を制御して燃焼室11の最大の容積を規定する機能を含む。第2のストッパ74は、ピストン81、すなわち、第1の壁面81aの上方の位置を規定して燃焼室11の最小の容量を規定する機能を含む。これら第1のストッパ73および第2のストッパ74は複数であってもよく、第1のストッパ73および第2のストッパ74の燃焼室11内の位置を動かす機構を備えていてもよい。弾性力および/または燃焼圧力に対抗してピストン81の位置を一時的に固定する上方および/または下方の位置をフレキシブルに制御することにより、燃焼室11の容積、ピストン81のストロークを燃焼ユニット80の単位で、個別に、また、間欠燃焼の単位でも、フレキシブルに制御できる。
図2(a)に示すように、この燃焼ユニット80においては、ピストン81がバネ83の弾性力を用いた第1の機構71により燃焼室11の上方に移動し、燃焼室11に供給されている圧縮空気58をさらに圧縮(断熱圧縮)する。断熱圧縮の過程において、吸気バルブ84vは閉になっている。この断熱圧縮の過程において圧縮率を十分高くすることができ、燃料の着火温度まで燃焼室11内の圧縮空気58の温度を高くできる場合は、燃料噴射装置86から燃料を噴射することにより燃焼室11内において燃焼を開始できる(圧縮点火エンジン)。断熱圧縮の過程において圧縮空気58の圧縮率を着火温度まで上げることが難しい場合は、圧縮空気58の代わりに、燃料との混合空気を燃焼室11に供給し、燃料噴射装置86の代わりに点火装置を設けることにより、燃焼室11内において燃焼を開始できる(火花点火エンジン)。
いずれの場合も、燃料を燃焼室11で燃焼させる際は、燃焼室11内で断続的な燃焼が行われる間欠燃焼サイクルであり、理論的には定圧で燃焼が行われるディーゼルエンジンサイクル、定積で燃焼が行われるオットーサイクル、あるいはその両方の特徴を持つサバテサイクルとして呼ばれる状態が実現される。間欠燃焼サイクルにおいては、燃焼室11内の燃焼時の圧力を、生成される燃焼ガス51自身、またはピストン81などの簡易な機構で高めることが可能であり、高温高圧の燃焼ガス51を得やすい。
燃焼ユニット80においては、燃焼室11において燃焼が開始されて、燃焼室11内の圧力が高くなり、バネ83の弾性力よりもピストン81を加圧する力が強くなり、さらに、第2のストッパ74からピストン81がリリースされると、燃焼室11の内圧によりピストン81は下側に移動する。ピストン81が、燃焼室11の体積(容積)を拡大する方向、すなわち、シリンダー88の下側への移動を開始するタイミングは、バネ83の弾性力(バネ定数)、第2のストッパ74がピストン81を保持する力、例えばスプリング73aの弾性力、マグネット73mの磁力などを調整したり、第2のストッパ74がメカ的なロックを備えていたり、電磁石を用いている場合は、コントローラ90がそれを解除してピストン81を積極的にリリースするタイミングを制御することにより調整できる。
この燃焼ユニット80においては、ピストン81が第2のストッパ(第4の機構)74からリリースされると、ピストン81が燃焼室11の内圧(燃焼圧)により下側に移動し燃焼ガス51が膨張するとともに、ピストン81の移動途中に設けられた排気口85が開き、燃焼室11内で生成された燃焼ガス51がさらに膨張してノズル15を介してタービンユニット(タービン)39に供給される。したがって、ピストン81をリリースするタイミングが排気口85を開にするタイミングとなる。排気口85をオープンして燃焼ガス51をタービン39に供給するタイミングは、燃焼室11で生成される燃焼ガス51で最も効率よくタービン39を駆動できるタイミングであればよく、燃焼室11で燃焼が開始された後、燃焼が継続している途中であってもよく、燃焼が終了した後であってもよい。
典型的なタイミングは燃焼室11で燃焼が継続している途中でピストン81をリリースして動かすとともに排気口85をオープンすることである。このタイミングで排気口85をオープンすることにより、燃焼を定積燃焼から定圧燃焼に移行でき、爆発的な燃焼に対して燃焼時間を延ばし、燃焼ガス51の供給時間を延長できる。燃焼終了後は、燃焼ガス51は断熱膨張し、燃焼室11からタービン39に供給される。さらに、火花点火でもよく、空気または混合気体を圧縮することにより自己着火させる圧縮点火でもよく、圧縮点火は燃焼時間を延長でき、タービン39に燃焼ガス51を連続的に供給できる時間を延長する一例であるかもしれない。例えば、近年、予混合圧縮自動着火(HCCI、Homogeneous Charge Compression Ignition)を用いたガソリンエンジンが開発されているが、その燃焼技術をこの燃焼ユニット80に適用することが可能である。燃焼途中で排気口85をオープンすることにより、燃焼ユニット80においては間欠的な燃焼が繰り返されるが、タービン39に対しては、高温高圧の燃焼ガス(排気ガス)51を、より連続的に供給できる。
また、燃焼ユニット80は、第1のストッパ(第3の機構)73を備えており、図2(b)に示すように、ピストン81の位置を下方に移動した状態で、バネ83の弾性力に対抗して一時的に固定できる。したがって、燃焼室11の内圧が、バネ83によりピストン81が加圧される圧力より低い状態に達するまでピストン81を固定して排気口85をオープンに保持でき、燃焼ガス51を、より長期間にわたりタービン39に供給できる。また、この状態で、吸気バルブ84vを開けて吸気口84および供給路87を介して、一次格納室88sに格納されていた燃焼空気58を燃焼室11に供給でき、燃焼室11をパージし、燃焼室11を燃焼空気58で置換できる。燃焼空気58の代わりに、吸気口84から燃焼室11に対し、燃料と空気との混合ガスを供給して混合ガスで置換してもよい。
燃焼空気58は、図2(a)に示す、ピストン81が燃焼室11の上方に位置しているときに、供給口87aを介して一次格納室88sに供給され、保持される。図2(b)に示すように、その後、ピストン81が下方に移動することにより一次格納室88s内の燃焼空気58はさらに圧縮され、吸気口84がオープンすると供給路87を介して燃焼室11内に燃焼空気58が噴出される。その後、ピストン81が第1のストッパ73からリリースされることにより、ピストン81がバネ83の弾性力により上方に移動する。ピストン81が上方に移動することにより排気口85が閉となり、また、吸気口84を吸気バルブ84vで閉にすることによりが燃焼室11内に供給された燃焼空気58は断熱圧縮される。第1のストッパ73によりピストン81を開放するタイミングは、上述した第2のストッパ74と同様の方法により制御または調整できる。
この燃焼ユニット80において、ピストン81は燃焼ガス51の圧力により下方に移動し、その際に縮んだ(変形した)バネ83の弾性力によりピストン81を上方に移動することにより空気または混合ガスを圧縮する。燃焼ユニット80の起動時は、スタータユニット92によりロッド82を介してピストン81を下方(燃焼室11の体積が増大する方向)へ移動しバネ83を強制的に変形することによりバネ83の弾性力を利用可能とする。スタータ92は、燃焼ユニット80においてピストン81がバネ83の弾性力と燃焼ガス51の圧力とにより連続(断続)して上下に動き、燃焼が継続するようになると、ピストン81の上下動により発電を行い、ピストン81を上下動するエネルギーを電力として回生することを可能とする。
このように、この燃焼ユニット80においては、バネ83の弾性力を用いてピストン81を動かし、簡易な構成で、燃焼室11内における空気または混合気体の圧縮率を上げ、自己着火させたり、火花点火することにより燃焼室11で燃焼ガス51を生成できる。ピストン81が上方あるいは下方において移動するタイミングを第1および第2のストッパ73および74により制御することが可能であり、排気口85を開閉するタイミングを調整して、間欠燃焼により生成される燃焼ガス51がタービン39に供給される状態を制御できる。
さらに、燃焼ユニット80においては、第1の機構71を駆動するバネ83の弾性力に対抗する程度の一定の負荷でピストン81を動かし、2サイクルの短周期で燃焼を繰り返して燃焼ガス51をタービン39に供給できる。このため、タービン39に対して、簡易な構成の複数の燃焼ユニット80を配置し、それらの複数の燃焼ユニット80から、異なるタイミング、またはいくつかの群に分かれて同期させた適当なタイミングで、短いサイクルでタービン39に対して燃焼ガス51を供給できる。したがって、このエンジン10においては、燃焼側は、間欠燃焼として、オットーサイクル、ディーゼルサイクルあるいはサバテサイクルのように、燃焼温度を高くでき、連続燃焼のブレイトンサイクルで近似されるガスタービンユニット39に対して複数の燃焼ユニット80から短いサイクルで燃焼ガス51を疑似的に連続して供給することが可能となり、高い効率でガスタービンユニット39を駆動できる。
燃焼ユニット80における燃焼サイクルの速度(周期)は、燃焼室11に供給する燃料量(混合比)を変えたり、燃焼室11内において着火するタイミングを変えたり、リリーフバルブなどの燃焼室11内の圧力を制御する機器を設けたり、ピストン81を移動するバネ83の長さを制御するなどの方法で弾性力を変えたりすることにより制御できる。燃焼ユニット80の始動時と通常動作時とで上記の状態を変えてもよい。また、燃焼ユニット80においては、ピストン81の動きを制御し、燃焼室11における燃焼状態をフレキシブルに制御できるので、燃料としては、軽油、ガソリン、アルコール、水素など様々なものを使用できる。
図4に、燃焼ユニット80の異なる例を示している。この燃焼ユニット80は、燃焼ガス51を噴出する排気口85が燃焼室11の上部に設けられており、排気口85を開閉する排気バルブ85vを含む。したがって、排気バルブ85vをコントローラ90で制御することにより燃焼室11から燃焼ガス51が排気されるタイミングを制御することが可能であり、排気バルブ85vが第2の機構72として機能する。その他の構成は、上述した燃焼ユニット80と共通する。この燃焼ユニット80においては、排気口85の開閉をピストン81の動きと関連させることなく制御できる。したがって、第2のストッパ74によりピストン81を燃焼室11の上部に一時的に固定した状態で排気口85を開けて、燃焼ガス51をタービン39に供給できる。また、ピストン81が移動する途中で排気口85を開けて燃焼ガス51をタービン39に供給することも可能であり、よりフレキシブルにタービン39に供給される燃焼ガス51の状態を制御できる。
図5に、燃焼ユニット80のさらに異なる例を示している。この燃焼ユニット80は、ピストン81の上下の動きを安定化させるガイド95と、シリンダー枠88の冷却機構96とを含む、冷却機構96は、コンプレッサー93から供給される圧縮空気58の一部を、ノズル15を含めたシリンダー枠88を囲むように、その外側に設けられた二重構造(ジャケット)96gに流して燃焼ユニット80を冷却する。
図6(a)および(b)に、燃焼ユニット80のさらに異なる例を示している。この燃焼ユニット80は、燃焼室11と、燃焼室11の排気口85に接続された臨界ノズル15と、燃焼室11から臨界ノズル15に供給される燃焼ガス51の圧力を制御する背圧制御ユニット60とを含む。背圧制御ユニット60は、ニードルバルブタイプであり、円錐状または円錐台状のバルブヘッド(第1の部分)61を含み、バルブヘッド61が排気口85のロート状の部分(第2の部分)62に接することによりノズル15への燃焼ガス51の流れを閉じる。したがって、背圧制御ユニット60が排気口85から燃焼ガス51が噴出するタイミングを制御する第2の機構72として機能する。
この燃焼ユニット80においては、燃焼室11を構成するシリンダー枠88がケース98の内部に収納されており、燃焼室11の燃焼時(爆発時)の内圧により、排気口85を含むシリンダー枠88の一部(前部)88bがケース98の内部でバネ65の弾性力に対抗して移動する。したがって、シリンダー枠88の前部88bの燃焼室11に面した壁面88cが第1の壁面となり、図6(a)に示すように、バネ65の弾性力により燃焼室11の容積を縮小する方向に移動し、燃焼室11に供給される燃焼空気または混合ガスを圧縮する。したがって、バネ65が第1の機構71として機能する。なお、燃焼ユニット80は、上記の燃焼ユニット80と同様に、燃焼空気または混合ガスを燃焼室11に供給する機構、燃焼室11の内部で燃料を噴出したり着火する機構を含むが、図示を省略している。
燃焼室11内で燃焼ガス51が生成されると、その圧力により、図6(b)に示すように、上述した燃焼ユニット80のピストン81の代わりに、前部88bが移動し、排気口85が開いて燃焼ガス51がタービン39へ供給される。前部88bの移動量を制御する第1の機構71は、バネ65であってもよく、油圧式のダンパーなどの適当な機械的機構であってもよい。
燃焼室11から燃焼ガス51をタービン39へ供給するノズル15の一例は臨界ノズル(超音速ノズル、ラバールノズル)である。臨界ノズル15は、流れをいったん絞るように断面積が狭まったスロート部15aと、拡管されたディフィーズ(ディフーザ)15bと、ノズル出口15cとを含む。臨界ノズル15のノズル出口15cから出力される燃焼ガス51が超音速であるためには、スロート部15aの流速が音速(マッハ1)であることが必要である。スロート部15aの流速が音速に達するためには、スロート部15aの背圧(流入する燃焼ガス51の圧力)Pbが、ノズル出口15cの圧力に対して、臨界背圧比Rc以上であることが必要である。
背圧Pbが臨界背圧比Rc以下であると、臨界ノズル15のディフーザ15bでは流速が加速されず、逆に減速してしまい燃焼ガス51のタービン39への寄与が減少し、逆にエネルギーロスになる可能性があり、さらにタービン39の側の圧力が燃焼室11に伝播する可能性があるので燃焼室11内の燃焼にも悪影響を与える可能性がある。
燃焼ユニット80において排気口85を開閉する第2の機構72に、排気口85をオープンするタイミングを、燃焼開始後の燃焼室11内の圧力が、臨界圧力比(臨界背圧比)Rc以上の所定の範囲内の間に制御する背圧制御ユニット60として機能を持たせることが可能である。背圧制御ユニット60により、臨界ノズル15のスロート部15aの流速は音速になり、臨界ノズル15からは超音速の燃焼ガス51がタービン39に供給される。
燃焼室11の内圧(背圧)Pbは、ノズル15に燃焼ガス51が供給されると、燃焼後の初期状態から徐々に低下する。このため、臨界ノズル15は、減圧後の背圧Pbで設計されるが、臨界圧力比Rc以下になると超音速の燃焼ガス51が得られない。また、燃焼室11に燃料ガスが供給されている間および点火直後は燃焼室11の内圧は低い。このため、背圧制御ユニット60を兼ねる第2の機構72により、排気口85は燃焼室11が所定の圧力に達するまでクローズされる。
図7(a)および(b)に、燃焼ユニット80のさらに異なる例を示している。この燃焼ユニット80においては、排気口85を含むシリンダー枠88の前部88bがシリンダー枠88の後端88eにバネ65により取り付けられており、燃焼室11の燃焼時の内圧により前部88bがバネ65の弾性力に対抗して移動する。したがって、シリンダー枠88の前部88bの燃焼室11に面した壁面88cが第1の壁面となり、バネ65が第1の機構71として機能する。本例のバネ65は、圧縮タイプではなく、引っ張りの弾性力により第1の壁面88cを燃焼室11の容積が縮小する方向に移動する引張タイプのコイルバネである。
図7(a)に示すように、壁面88cがバネ65の弾性力により燃焼室11の容積を縮小する方向に移動し、燃焼室11に供給される燃焼空気または混合ガスを圧縮する。燃焼室11内で燃焼ガス51が生成されると、その圧力により、図7(b)に示すように、シリンダー枠の前部88bが移動し、排気口85が開いて燃焼ガス51がタービン39へ供給される。燃焼室11内に排気口85を開閉するニードルタイプの背圧制御ユニット60が設けられており、排気口85から燃焼ガス51が噴出されるタイミングを制御する第2の機構72として機能する。なお、燃焼ユニット80は、上記の燃焼ユニット80と同様に、燃焼空気または混合ガスを燃焼室11に供給する機構、燃焼室11の内部で燃料を噴出したり着火する機構を含むが、図示を省略している。
図8に、燃焼ユニットのさらに異なる例を示している。この燃焼ユニット100は、ピストン81を外部動力により上下に動かす駆動機構101を含む。図8に示した燃焼ユニット100は一例であり、駆動機構101は、2本の棒状の部材が回転可能に連結したクランク103と、クランク103の一方の端を回転することによりクランク103を上下に伸び縮みさせ、ピストン81の上下の位置をフレキシブルに制御するモーター104とを含む。この燃焼ユニット100においては、ピストン81を上下に動かして燃焼室11の容積を変化させるためにモーター104のような外部動力を常に必要とする。したがって、外部動力を動かす電力が常に必要になる。その一方、ピストン81の位置制御は駆動機構101を用いてクランク103の回転角度を、90度、180度などの所定の角度に固定することにより、燃焼ユニット100の単位で個別に制御することが容易である。また、クランク103の回転方向を変えて、反転させることにより、ピストン81のストロークを変えることも可能である。燃焼ユニット100の単位でピストン81を駆動する機構101を設けることにより、燃焼ユニット100の単位で、独立して、ピストン81の停止位置、停止時間、移動速度などの動作(動作条件)を精度よく、フレキシブルに、制御できる。燃焼室11において燃焼が行われる都度、ピストン81を上下に動かして燃焼空気あるいは混合ガスを圧縮してもよく、ピストン81の位置を固定して燃焼室11の容積を固定し、燃焼室11の内部で定積(定容)燃焼が行われるように制御してもよい。
図9に、燃焼ユニット100のさらに異なる例を示している。図9(a)に示した燃焼ユニット100の駆動機構101は、モーター104によりピストン81を回転するタイプである。シリンダー枠88の内周面にねじ(雌ねじ)106が設けられており、ピストン81の外周面に対応するねじ(雄ねじ)107が設けられている。したがって、ピストン81を所定の方向に回転または反転させることにより燃焼室11内におけるピストン81の動きを、停止位置、停止時間、移動スピード、ストロークなどを含めて、個別に自由に制御でき、最も燃焼状態がよい条件で燃焼を開始したり、最もよい条件の燃焼ガス51がタービン39に供給されるように調整できる。
図9(b)に示した燃焼ユニット100の駆動機構101は、モーター104により回転するねじ棒108を含み、ねじ棒108を回転することによりねじ棒108に沿ってピストン81が上下方向に移動する。したがって、ねじ棒108を所定の方向に回転または反転させることにより燃焼室11内におけるピストン81の位置を自由に制御できる。
図10に、異なるエンジン10を備えた発電装置30の例を示している。この発電装置30は、パルス燃焼型のエンジン(パルス燃焼装置)10と、エンジン10により回転駆動される発電機31とを含むパルス燃焼発電装置の一例である。エンジン10は、定容積の燃焼室11を備えた複数の燃焼ユニット110を含む。発電ユニット30は、さらに、燃料および燃焼用空気を含む燃焼用の混合ガスをエンジン10へ供給する燃料供給システム7と、燃焼のタイミングを含めたエンジン10の制御を行う制御システム8とを含む。制御システム8は、点火する手段であるイグナイタ42の点火のタイミングを制御する点火制御ユニット8aと、バルブ等の制御を行う開閉制御ユニット8bとを含む。
エンジン10のそれぞれの燃焼ユニット110は、燃焼室11の燃焼により生成された燃焼ガス51を主な駆動力(動力源)として出力(噴出)するタイプである。このエンジン10は、容積が一定の燃焼室11を備えた燃焼ユニット110と、燃料供給システム7から燃焼室11に燃料および酸化剤である空気とを混合したガス(混合ガス)58を供給する燃料供給路(給気ポート)13と、燃料供給路13を開閉するバルブ(開閉装置)41と、燃焼室11の混合ガス58に点火するイグナイタ42と、燃焼室11で生成されたガス(燃焼ガス、高圧ガス)51を放出するノズル15を含むノズルユニット16と、ノズル15と燃焼室11との間を断続的に開閉してノズル15の背圧を制御する背圧制御ユニット20と、ノズル15から放出された燃焼ガス51により発電を行うMHD発電ユニット36と、その下流に配置されたマイクロガスタービンユニット(タービン)39と、タービン39の回転軸(シャフト)38に接続された発電機31とを含む。発電系統35は、MHD−マイクロガスタービンのコンバインドサイクルであってもよく、ガスタービン単独のサイクルであってもよく、ガスタービンの下流に燃料電池ユニット、熱発電ユニットなどを接続したコンバインドサイクルであってもよい。
燃焼室11に混合ガス58を供給する燃料供給システム7は、タービン39の排気系7sに設けられたターボチャージャー7tにより加圧された燃焼用空気59に燃料を注入するインジェクションシステム19と、注入するタイミングを制御する燃料注入制御システム7aとを含む。燃料供給システム7は、タービン39により駆動されるコンプレッサー、ブロワー、スーパーチャージャ、または、他の独立した空気圧縮ユニットを備えていてもよい。エンジン10は、さらに、燃焼室11から背圧制御ユニット20により断続的にノズル15に供給された後の燃焼ガス51をパージし、その後、燃料供給システム7により燃焼用空気59を燃焼室11に注入するためのパージシステムを備えていてもよい。パージシステムの一例は適当なタイミングで、たとえば、背圧制御ユニット20と連動して燃焼室11と排気系7sとを断続的に接続するバルブである。
図10に示したエンジン10は、2つの燃焼ユニット110を含むが、燃焼ユニット110は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。タービン39に燃焼ガス51を連続的に供給するためには、間欠燃焼を行う燃焼ユニット110を複数配置することが望ましいことは上述した通りである。燃焼ユニット110の燃焼室11は、円筒形であってもよく、卵型や球状であってもよく、燃焼室11において生成する燃焼および燃焼ガスの出力に適した形状であればよい。
このエンジン10において、ノズル15と燃焼室11との間を断続的に開閉してノズル15に対する背圧と燃焼ガス51を噴出するタイミングとを制御する背圧制御ユニット20は、2枚の回転板(円盤)21および22と、これらの回転板21および22を同期して回転する駆動装置29とを含む。それぞれの回転板21および22は、それぞれの燃焼室11と、燃焼室11に対応したノズル15との間で移動する開口21aおよび22aを含み、駆動装置29により同期して回転板21および22が逆方向に回転する。それぞれの回転板21および22の開口21aおよび22aの位置が合致するとそれらの開口21aおよび22aにより燃焼室11とノズル15とが連通し、燃焼室11から燃焼ガス51がノズル15を介して発電系統35に供給される。駆動装置29は、制御システム8により制御され、点火のタイミングから所定の時間を経過して燃焼室11の内圧が燃焼により所定の圧力に達したタイミングで開口21aおよび22aにより燃焼室11とノズル15とが連通し、所定の圧力の燃焼ガス51がノズル15に供給される。
図11に、ノズル15と、燃焼室11と、背圧制御ユニット20とを備えた燃焼ユニット110を抜き出して示している。背圧制御ユニット20は2枚の円盤状の開閉パネル(回転板)21および22を含み、それらの開口21aおよび22aが燃焼室11の開口(排気口)11aを開閉し、燃焼室11からノズル15への燃焼ガス51aの流入を制御する。
ノズル15の一例は上述した臨界ノズル(超音速ノズル、ラバールノズル)であり、流れをいったん絞るように断面積が狭まったスロート部15aと、拡管されたディフィーズ(ディフーザ)15bと、ノズル出口15cとを含む。このエンジン10においては、背圧制御ユニット20を設け、逆方向に回る円盤21および22の速度を制御し、燃焼開始後の燃焼室11内の圧力が、臨界圧力比Rc以上の所定の範囲内の間、開口21aおよび22aにより臨界ノズル15と燃焼室11とを連通する。これにより、臨界ノズル15のスロート部15aの流速は音速になり、臨界ノズル15からは超音速の燃焼ガス51が発電系統35に供給される。
エンジン10においては、背圧制御ユニット20により、燃焼室11は所定の圧力に達するまでクローズされ、所定の圧力に低下するまでクローズされる。背圧制御ユニット20により燃焼室11の圧力が制御されるので、燃焼前に、燃料供給システム7により混合ガス58を燃焼室11に加圧した状態で注入でき、圧縮比を向上できる。また、燃焼室11では、点火の後、定積燃焼(定容燃焼)となるので、サイクル効率を向上できる。
図12に、エンジン10の異なる例を示している。図12(a)および(b)に示すように、このエンジン10においては、円周状に4つ燃焼ユニット110が配置され、2枚の円盤状の開閉パネル21および22を含む背圧制御ユニット20と、4つの燃焼ユニット110の燃焼室11のそれぞれに対応した4つの臨界ノズル15を含むノズルユニット16とを含む。図12(c)および(d)に示すように、それぞれの開閉パネル(第1の円盤および第2の円盤)21および22は、180度対称な位置に開口21aおよび22aを含み、それぞれの開口21aおよび22aは、燃焼室11の端壁の中央に設けられた燃焼室開口11aの前方(噴射側)を通過する。二重に重ねられた開閉パネル21および22は、逆方向に回転する。このため、図12(e)および(f)に示すように、90度ピッチで上下および左右の燃焼室11の開口11aが背圧制御ユニット20でオープンになり、燃焼室11中央の開口11aから所定の圧力の燃焼ガス51aがノズル15に供給される。
さらに、開閉パネル21および22に設けられた開口21aおよび22aが開口11aより小さいときは、いずれか小さい方の開口21aおよび22aによりノズル15に供給される燃焼ガス51aの流量が制御される。
図13に、開口サイズが異なる開口を備えた開閉パネル23、24および25を備えた背圧制御ユニット20の一例を示している。円盤状の第1の開閉パネル23は、第1の径d1の第1の開口23aおよび23bを含む。第2の開閉パネル24は、第1の開口23aの径d1よりも小径d2の第2の開口24aと、第1の開口23aと同じ径d1の開口24bとを含む。第3の開閉パネル25は、第2の開口24aの径d2よりも小径d3の第3の開口25aと、第1の開口23aと同じ径d1の開口25bとを含む。
この背圧制御ユニット20においては、第2および第3の開閉パネル24および25の開口24bおよび25bを燃焼室11の開口11aの位置に合致させた状態で第1の開閉パネル23を回転することにより、ノズル15と燃焼室11とを第1の開口23aの径d1の通路で連通できる。第2の開閉パネル24の第2の開口24aおよび第3の開閉パネル25の開口25bを燃焼室11の開口11aの位置に合致させた状態で第1の開閉パネル23を回転することにより、ノズル15と燃焼室11とを第2の開口24aの径d2の通路で連通できる。第2の開閉パネル24の第2の開口24aまたは開口24bおよび第3の開閉パネル25の第3の開口25aを燃焼室11の開口11aの位置に合致させた状態で第1の開閉パネル23を回転することにより、ノズル15と燃焼室11とを第3の開口25aの径d3の通路で連通できる。
このように、径の異なる開口23a、24a、25aをそれぞれ備えた開閉パネル(円盤)23、24および25を駆動装置29により適当な位置に回動することにより、いずれかの径d1〜d3の開口(排気口)を介して燃焼ガス51aをノズル15に供給できる。臨界ノズル15のスロート15aを通過するガス量を制御することにより、ノズル開口(ノズル出口)15cから発電系統35に供給される燃焼ガス51の流速および温度を制御することが可能となる。
図14(a)〜(c)に、異なる燃焼ユニットの例を示している。この燃焼ユニット120も燃焼室11と、臨界ノズル15と、燃焼室11から臨界ノズル15に供給される燃焼ガスの圧力を制御する背圧制御ユニット60とを含む。本例の背圧制御ユニット60は、ニードルバルブタイプであり、円錐状または円錐台状のバルブヘッド(第1の部分)61と、バルブヘッド61が接してノズル15への燃焼ガス51aの流れを閉じる開口部(第2の部分)62と、バルブヘッド61の動きを制御する開閉制御ユニット66と、バルブヘッド61と開口部62とが離れたとき(開のとき)の距離を制御する開度制御ユニット67とを含む。開閉制御ユニット66は、先端がバルブヘッド61となったバルブシャフト63を閉にロックした状態、すなわち、バルブヘッド61が開口部62に押し付けられた状態を開放し、バルブシャフト63をバネ65により燃焼室11から引き抜かれる方向に動かす。内部開度制御ユニット67は、バルブシャフト63の内部に同軸上に収納され、バルブシャフト63のガイドを兼ねた開度調整用のロッド64の突出量(長さ)を制御し、閉状態から開状態に動くバルブシャフト63、すなわちバルブヘッド61の移動量を制限する。
したがって、図14(a)に示す閉状態から図14(b)に示す開状態にバルブヘッド61が動くと、ロッド64によりバルブヘッド61の動きが規制され、所定の開度(開口面積)となるようにバルブヘッド61と開口部62との間の距離が制御された状態で開口11aが形成される。図14(c)に示すようにロッド64の引抜量が少なければ、バルブヘッド61と開口部62との距離が小さくなり、開口11aの開度(開口面積)が小さくなる。
上記のように、断続的に燃焼を行う燃焼室と、燃焼室に繋がった臨界ノズルと、燃焼室と臨界ノズルのスロート部分との間を断続的に開閉する背圧制御ユニットとを有するパルス燃焼装置を供給できる。燃焼室と臨界ノズル(超音速ノズル、ラバールノズル)とを背圧制御ユニットを介して接続することにより、燃焼室で断続的に発生する燃焼ガスが臨界ノズルのスロート部分に流入する圧力を制御することができる。さらに、背圧制御ユニットで臨界ノズルから分離された状態で燃焼室において断続的な燃焼を開始できるので、燃焼室内の燃焼の制御が容易となる。したがって、たとえば、圧縮比がジェットエンジンより高く、サイクル効率が高い定積燃焼またはそれに近い燃焼形態で、高効率かつ安定した燃焼を実現し、超音速の燃焼ガスを出力できるパルス燃焼装置を提供できる。
パルス燃焼装置は、円周に沿って配置された複数の燃焼室と、複数の燃焼室のそれぞれに繋がる複数の臨界ノズルとを有していてもよい。背圧制御ユニットは、複数の燃焼室と複数の臨界ノズルとの間で逆方向に旋回する第1の円盤および第2の円盤を含み、第1の円盤および第2の円盤は、それぞれ燃焼室と臨界ノズルとの間に配置された少なくとも1つの開口を含んでもよい。第1および第2の円盤により燃焼室と臨界ノズルとを連通するタイミングを制御し、それによりスロート部分へ供給される燃焼ガスの圧力を制御できる。
また、背圧制御ユニットは、複数の燃焼室と複数の臨界ノズルとの間で旋回する第1の円盤および第2の円盤を含み、第1の円盤は燃焼室と臨界ノズルとの間に配置された少なくとも1つの第1の開口を含み、第2の円盤は燃焼室と臨界ノズルとの間に配置された複数の開口であって、第1の開口と同じまたは大きな開口と、第1の開口より小さな第2の開口とを含む複数の開口を含んでもよい。燃焼室とスロート部分とを連通する開口サイズを変えることにより臨界ノズルへ流入する燃焼ガスの圧力および流量を制御できる。
また、背圧制御ユニットは、円錐状または円錐台状の第1の部分と、第1の部分が接して流れを閉じる第2の部分と、第1の部分と第2の部分とが離れたときの距離を制御する開度制御部とを含んでもよい。第1の部分または第2の部分が燃焼室の内圧により移動するものであってもよい。
複数の燃焼ユニット80、100、110、120を備えたエンジン10においては、それらのうちの1つを起動して、間欠燃焼により生成された燃焼ガス51をタービンユニット39に供給し、タービンユニット39を回転駆動することが可能である。例えば、複数の燃焼ユニット80を起動し、それらの燃焼ユニット80に含まれる燃焼室11で間欠的ではあるが連続して燃焼を行い、生成された燃焼ガス51をタービンユニット39に供給することにより、タービンユニット39に対して連続的に燃焼ガス51を供給できる。複数の燃焼ユニット80において燃焼を行うタイミングは同時であってもよい。より連続的に燃焼ガス51がタービンユニット39に供給されるように、複数の燃焼ユニット80を複数のグループに分けて、あるいはペアにして燃焼のタイミングを制御したり、周方向に順番に、あるいは対角方向に交互に、燃焼を開始するタイミングをシフトさせて位相差を設けてもよい。