以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のヘアケア装置の外観斜視図である。図2および図3は、本実施形態のヘアケア装置の側面断面図及び上面断面図である。図1から図3を参照して、本実施の形態に係るヘアケア装置1について説明する。
ヘアケア装置1はブラシ付きヘアドライヤを構成し、使用者が把持する柱状の把持部10と、把持部10の軸方向に着脱可能に連結されるブラシ部30とを備えている。ブラシ部30における周方向の一部を除く約半周の範囲には、多数のブラシ毛31が列状に立設されている。
ブラシ部30は、ブラシ毛31の周囲に設けられた多数の吹出口33を含む。吹出口33は、小孔から成る吹出口33aと、ブラシ部30側面に設けられた吹出口33bとを含む。吹出口33aは、ブラシ毛31の列間に列状に設けられている。吹出口33bは、ブラシ部30の周方向においてブラシ毛31の植設領域を間に挟みこむようにブラシ部30の両側面に列状に設けられている。
把持部10の軸方向における一端から電源コード17が導出されている。把持部10は、電源コード17の周囲に設けられた多数の小孔から成る吸込口15を有する。図2に示すように把持部10のブラシ部30側の端部には操作スイッチ18、19を有した操作部12が設けられる。操作スイッチ18により後述する送風機3及び帯電粒子発生装置20のオンオフが切り替えられる。操作スイッチ19により後述する加熱装置としてのヒータ4のオンオフが切り替えられる。
また、把持部10には操作部12に隣接して縮径部11が設けられる。縮径部11は外周面を円錐面に形成され、吸込口15側から操作部12に向かって把持部10の外径を縮径する。使用者は操作部12に隣接する外径の小さい縮径部11を把持することによって、ヘアケア装置1の移動操作及び操作スイッチ18、19の切替え操作を容易に行うことができる。
把持部10の軸方向における他端にはブラシ部30に嵌合する連結部16が設けられている。連結部16の端面に連結口16aが開口する。連結口16aは異物侵入防止のためにメッシュ状や連続した6角形状に形成した格子で保護される。
把持部10の内部には空洞部25が設けられ、ブラシ部30の内部には空洞部36が設けられる。空洞部25、および空洞部36によって把持部10及びブラシ部30の内部に連通する空気通路24が形成される。空洞部36は連結口16aの中心に対して一方に偏って形成され、連結口16aとのずれ部分に吹出口34が設けられる。ブラシ部30の一方端に接続部が設けられ、連結部16と勘合するように繋がる。吹出口34から見てブラシ部30の先端方向に向かってブラシ毛31が配される。
空洞部25内には吸込口15に面して送風機3が配される。送風機3は送風機モータ3aにより駆動される軸流ファンを備える。送風機3を遠心ファンにより形成してもよい。送風機3を駆動すると空気通路24によって吸込口15から吹出口33、および吹出口34に気流が導かれる。吹出口33は、ブラシ毛列間に配される吹出口33aと、ブラシ毛列の領域の外側に配される33bとを含む。
空洞部25内の送風機3の下流には隣接して駆動回路5が配される。駆動回路5によって送風機3や、ヒータ4及び帯電粒子発生装置20が駆動される。空気通路24内に駆動回路5を配置することにより、空気通路24を流通する気流によって送風機モータ3aおよび駆動回路5を冷却することができる。
空洞部25内には送風機3の下流で内壁面を傾斜して流路を絞る絞り部26が設けられる。縮径部11の外周面は絞り部26に沿って形成され、縮径部11の外径を容易に縮径することができる。絞り部26内にはコイル形状のヒータ4が配され、気流を昇温する。絞り部26の下流にはイオン混合部27が設けられる。
イオン混合部27は絞り部26の下流端の流入口26aと略等しい流路面積を有している。絞り部26を流通する気流は流路を絞られるため流速が増加し、流路の中央部に向かって案内される。このため、イオン混合部27の中央部をヒータ4により昇温された気流が流通する。イオン混合部27の流路面積を流入口26aよりも広くしてもよい。
イオン混合部27の周面には操作部12の外面に露出した平面の取付面27aが形成され、取付面27a上に平面視矩形の帯電粒子発生装置20が着脱可能に配される。操作部12の縮径部11に隣接した壁面には図示していない接点が露出しており、駆動回路5に接続される。帯電粒子発生装置20の端面には接点を介して電力供給される端子51が設けられる。帯電粒子発生装置20の外周面は操作部12に対して着脱されるカバー23により覆われる。
図4は、本実施形態のヘアケア装置に搭載する帯電粒子発生装置の概略外観図である。図4を参照して、帯電粒子発生装置20について説明する。本実施の形態においては、帯電粒子発生装置として、正負のイオンを発生するイオン発生装置を例示して説明する。
帯電粒子発生装置20は一対の針状の放電電極21を有している。帯電粒子発生装置20は取付面27a上に開口する開口部27bを介して空気通路24に臨む。放電電極21は帯電粒子発生装置20の前部である空気通路24の気流流通方向の一方の端部に配される。これにより、帯電粒子発生装置20の一方の端部が開口部27bに面して配される。帯電粒子発生装置20の放電電極21から離れた後部である他方の端部には回路基板50が内装され、後端面には端子51が設けられる。
帯電粒子発生装置20には放電電極21の上方を覆うカバー部22が設けられる。カバー部22には、放電電極21が臨む貫通孔22aが開口している。カバー部22によって帯電粒子発生装置20を着脱する際に使用者の手指と放電電極21との接触を防止して放電電極21が保護される。
帯電粒子発生装置20は、内蔵する回路基板50で高圧電気を発生させる。一方の放電電極21には正の高電圧パルスが印加され、他方の放電電極21には負の高電圧パルスが印加される。これにより、放電電極21の先端でコロナ放電が発生する。正電圧を印加した放電電極21のコロナ放電により空気中の水分子が電離して水素イオンが生成される。この水素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングする。これにより、正極性の帯電粒子としてH+(H2O)m(mは任意の自然数)から成る空気イオン(正のイオン)が発生し、気流に混合される。
また、負電圧を印加した放電電極21のコロナ放電により空気中の酸素分子または水分子が電離して酸素イオンが生成される。この酸素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングする。これにより負極性の帯電粒子として、O2 −(H2O) n(nは任意の自然数)から成る空気イオン(負のイオン)が発生し、気流に混合される。
この時、一対の放電電極21はイオン混合部27の周方向に所定量離れてそれぞれイオン混合部27の周部に配される。また、イオン混合部27の上流の絞り部26により流速が増加した気流がイオン混合部27の中央部を流通する。このため、周部の放電電極21で発生した正負両方のイオンがイオン混合部27の中央部を流通する気流に負圧により吸引されて混合される。
イオン混合部27の周部を気流が流通すると、気流によって空気通路24の内壁に衝突して消滅するイオンが増加する。このため、絞り部26を通過した気流にイオン混合部27の中央部を流通させて放電電極21で発生した正負のイオンを吸引して混合することで、イオンの消滅を低減することができる。また、イオン混合部27の中央部に放電電極21を配置すると空気通路24の圧力損失が大きくなる。このため、放電電極21をイオン混合部27の周部に配置することで送風効率を向上させることができる。
また、図2に示すように、絞り部26の軸心に対して放電電極21と同じ側に空洞部36が配され、絞り部26の軸心に対して放電電極21の反対側にブラシ毛31が配される。これにより、放電電極21で発生したイオンが円滑に空洞部36に導かれる。従って、ブラシ毛31間の吹出口33a及びブラシ部30側面の吹出口33bから正負のイオンを多く送出することができる。
この場合において、帯電粒子発生装置20から吹出口34、33a、33bに至るまでの空気通路24内における正のイオンおよび負のイオンのいずれかの濃度が、5000個/cm3より大きく、50000000個/cm3より小さいことが好ましい。
正のイオンおよび負のイオンのいずれかの濃度が、5000個/cm3以下である場合には、後述する整髪の際に、高密度ブラシ毛31bと頭髪(毛髪群)38(図7、図8参照)との摩擦により発生する静電気を十分に除去することができない場合がある。この結果、ツヤの改善効果、キューティクルのダメージ抑制効果、枝毛・切れ毛の発生を抑制する効果等を十分に発揮することができない場合がある。
正のイオンおよび負のイオンのいずれかの濃度が、50000000個/cm3以上である場合には、正のイオンと負のイオン同士が衝突することにより、正負両方の空気イオンが消滅してしまう。この結果、十分な量の正のイオンおよび負のイオンの両方を頭髪38に供給することができず、ツヤの改善効果、キューティクルのダメージ抑制効果、枝毛・切れ毛の発生を抑制する効果等を十分に発揮することができない場合がある。
カバー23は樹脂成形品により形成され、操作部12の軸方向にスライドして開閉する。カバー23のブラシ部30側の両側部には係止爪23aが設けられ、縮径部11側の両側部には係止爪23bが設けられる。また、カバー23のブラシ部30側の端面には押圧リブ23dが設けられる。
また、カバー23を端子側から放電電極21側にスライドして取り外し、帯電粒子発生装置20を着脱することができ、放電電極21の清掃や帯電粒子発生装置20の交換を行うことができる。
カバー23の内面には帯電粒子発生装置20の外周面に近接する格子状の遮蔽リブ23cが設けられる。遮蔽リブ23cはカバー23の内側で帯電粒子発生装置20の前部と後部との間を遮蔽する。帯電粒子発生装置20は後端面に配した端子51が接点に接触し、開口部27bと帯電粒子発生装置20の前端面との隙間から高温の気流が漏出する場合がある。このとき、該気流は遮蔽リブ23cによって遮蔽され、帯電粒子発生装置20の後部に配した回路基板50の昇温を防止することができる。
図5は、本実施形態のヘアケア装置のブラシ部の内部構造を示す軸方向断面図であり、ブラシ部30の軸線に沿った断面図である。図6は、本実施形態のヘアケア装置のブラシ部の内部構造を示す軸に垂直な方向の断面図であり、図2中のA−A線で切断し矢印方向に見た断面図である。図5および図6を参照して、ブラシ部30の構造について説明する。
図5および図6に示すように、複数のブラシ毛31は、後述する複数の単線ブラシ毛列32と後述する2本の高密度ブラシ毛列(不図)とを構成する。
単線ブラシ毛列32は、先端部が丸く形成された単毛のブラシ毛(単線ブラシ毛)31aをブラシ部30の軸方向に沿って列設されることにより形成される。単線ブラシ毛列32は、ブラシ部30の周方向の一部を除く約半周の範囲(周面)に所定の間隔で複数列並設される。
単線ブラシ毛列32を構成する単線(単毛)の単線ブラシ毛31aは、ポリアセタール等の樹脂により太さ1mm前後、長さ十数mmに形成された単毛であり、ゴム等により形成されるベース材35上に植設される。
高密度ブラシ毛列は、細い毛を複数本束にした高密度ブラシ毛31bをブラシ部30の軸方向に沿って列設されることにより形成される。2本の高密度ブラシ毛列は、ブラシ部30の周方向に互いに離間して配置される。2本の高密度ブラシ毛列は、ブラシ部30の軸方向に交差する周方向に複数の単線ブラシ毛列32を挟み込むように配置される。
高密度ブラシ毛31bは、具体的には豚やイノシシなどの獣毛を数本〜十数本束ねたものが単位となっている。獣毛は、単線ブラシ毛31aよりも細く短いものが使用される。獣毛としては、静電気を発生させにくいものが好ましい。また、獣毛を数本束ねることにより、その隙間に頭髪38を捕捉して適度な摩擦を発生させることができる。このため、高密度ブラシ毛31bで頭髪を梳く場合には、単線ブラシ毛31aで梳く場合よりも大きな引張力を頭髪38に作用させることができる。
たとえば重量が15gであり長さが500mmである毛髪群に対して毛髪群の根本側から毛先側に100mm/secの速さでヘアケア装置1を移動させた場合に、0.5Nより大きく10.0Nより小さい範囲で引張力が毛髪群に作用することが好ましい。
引張力が0.5N以下では、頭髪38の有するくせ毛・うねりを十分に改善することができない場合がある。一方、引張力が10.0N以上では、毛髪が抜けたり、破断したりするおそれがある。
小さい範囲の引張力は、単線ブラシ毛31aで頭髪38を梳くことにより、当該頭髪38に作用させることができる。たとえば単線ブラシ毛31aでは、0.5Nより大きく3.0Nより小さい範囲で引張力を作用させることができ、1.5N程度の引張力を作用させることが好ましい。
大きい範囲の引張力は、高密度ブラシ毛31bで頭髪38を梳くことにより、当該頭髪38に作用させることができる。たとえば高密度ブラシ毛31bでは、3.0N以上10.0Nより小さい範囲で引張力を作用させることができ、5.0N程度の引張力を作用させることが好ましい。
なお、高密度ブラシ毛31bを構成する細い毛には、獣毛の他に樹脂毛なども使用することができる。この場合には、適度の柔軟性と毛同士に適度な隙間を形成でき、頭髪38を捕捉して適度な摩擦を発生させることができる樹脂毛が好ましい。
吹出口33は、ベース材35に設けられ、隣接する単線ブラシ毛列32の間のそれぞれに配される吹出口33aと、周方向の両端最外列に設けられる高密度ブラシ毛31bのブラシ列のさらに外側であって、ブラシ部30の両側面に設けられる吹出口33bとを有する。
ブラシ部30の内部には、空洞部36が単線ブラシ毛列32方向に形成されており、送風機3によって帯電粒子を含む空気が空洞部36の軸方向に供給される。この気流をブラシ部30に開口する吹出口33a、吹出口33bに向けて方向変更させるために気流進行方向と交差するように整流リブ37が設けられる。整流リブ37は、気流の風上から順に第1リブ37a、第2リブ37b、第3リブ37cと並び、第1リブ、第2リブ、第3リブの順に下方への突き出し長さが長くなっている。
送風機3によって供給された空気は空洞部36を先端方向に向けて進み、吹出口33a、吹出口33bからブラシ部30の径方向に噴出するために、先端に近づくにしたがって次第に体積が減少する。整流リブ37をこのような形状及び配置とすることで、気流の衝突面を次第に大きくし、気流の体積が減少しても効率よく吹出口33a、吹出口33bから噴出させることができる。
上記構成のヘアケア装置1において、整髪を行う場合の動作説明を行う。使用者が把持部10を把持して操作スイッチ18、19を操作することにより送風機3、ヒータ4及び帯電粒子発生装置20が駆動される。これにより、吸込口15を介して空気通路24内に外気が流入する。空気通路24を流通する空気は絞り部26でヒータ4により昇温され、流入口26aを介してイオン混合部27に流入する。
イオン混合部27に流入した気流は、イオン混合部27の中央部を高速で流通し、帯電粒子発生装置20の放電電極21から発生したイオンを負圧により吸引して混合する。イオンを含む気流は、連結口16aを通過して一部が吹出口34からブラシ毛31間に軸方向に送出される。
また、イオンを含む気流は空洞部36を流通して吹出口33aによって単線ブラシ毛31a間から径方向に、同時に吹出口33bからブラシ部30の側面方向に送出される。使用者が把持部10を把持して頭髪38に沿って移動させることにより、単線ブラシ毛31aが頭髪38に摺動してブラッシングされる。この時、吹出口33、および吹出口34から送出された高温の気流によって頭髪38を乾燥させるとともに単線ブラシ毛31aにより整髪が行われる。
また、吹出口33、および吹出口34から並行して単線ブラシ毛31a間にイオンを含む気流が送出されるため、頭髪38に到達、付着するイオンを増加させることができる。イオンによって頭髪38に潤いを与えるとともに、単線ブラシ毛31aとの摺動により発生した頭髪38の静電気が除電される。これにより、頭髪38を保湿し、静電気による頭髪の広がりを抑制して良好な整髪を行うことができる。
図7および図8を参照して、本実施の形態に係るヘアケア装置1を用いたヘアケア方法について説明する。図示はしていないが、図7、図8ともに頭髪38の左側に人の頭部があり、頭髪38は上端が頭部側であって、人の頭部と繋がっているものとする。
本実施の形態に係るヘアケア装置1を用いたヘアケア方法は、単線ブラシ毛31aを用いて毛髪群を梳いて整髪する方法と、高密度ブラシ毛31bを用いて毛髪群を梳いて整髪する方法とを含む。なお、単線ブラシ毛31aを用いた整髪方法と、高密度ブラシ毛31bを用いた整髪方法とは、切り替えることができる。
図7は、本実施形態のヘアケア装置を用いたヘアケア方法の一例を示す図である。図7に示すように、単線ブラシ毛31aにて毛髪群を梳いて整髪する方法にあっては、単線ブラシ毛31aを頭髪38に挿入してヘアケア装置1を頭髪38の根本側から毛先側へ移動させる。これにより、単線ブラシ毛31aが頭髪38と接触して摺動される。この時にブラシ部30の吹出口33aから温風と正負両方のイオンが噴出されて頭髪38および単線ブラシ毛31aに吹き付けられる。
これにより、単線ブラシ毛31aと頭髪38との摩擦により発生して、頭髪38に帯電した正極性の静電気と、単線ブラシ毛31aに帯電した負極性の静電気とを除去することができる。この結果、ブラッシングの際に発生する静電気を大幅に抑制することができ、静電気による毛髪の損傷を抑制することができる。
また、単線ブラシ毛31aにて頭髪38を捕捉して引張力を作用させた状態で正負両方のイオンを含む温風を頭髪38に吹き付けることにより、頭髪38に潤いを与えつつ、くせ毛・うねり等の髪質を改善することができる。また、髪のつやも改善させることができる。
図8は、本実施の形態のヘアケア装置を用いたヘアケア方法のその他の例を示す図である。図8に示すように、高密度ブラシ毛31bにて毛髪群を梳いて整髪する方法にあっては、高密度ブラシ毛31bが頭髪38に挿入されるようにブラシ毛31を頭髪38に挿入する。この状態で、ヘアケア装置1を頭髪38の根本側から毛先側に移動させる。
単線ブラシ毛31aを用いた整髪方法から高密度ブラシ毛31bを用いた整髪方法へヘアケア方法を切り替える際には、使用者は、適当な位置で把持部10を持つ手を約90度捩じって高密度ブラシ毛31bが頭髪38を捕捉する方向にブラシ部30を回転させる。これにより、高密度ブラシ毛31bが頭髪38に挿入される。なお、高密度ブラシ毛31bを用いた整髪方法のみが実施されてもよい。
ここで、高密度ブラシ毛31bは、獣毛を数本束ねることにより構成されているため、獣毛の隙間に頭髪38が入り込むことにより、頭髪38を捕捉することができる。このため、高密度ブラシ毛31bは、単線ブラシ毛31aと比較して毛髪との摩擦が大きくなるように構成されている。これにより、高密度ブラシ毛31bにて頭髪38を梳くことにより、単線ブラシ毛31aで梳く場合よりも大きな引張力を頭髪38に作用させることができる。
さらに、高密度ブラシ毛31bから見て高密度ブラシ毛31bの進行方向(毛髪を梳かす方向)の後方側に位置する領域38aには、高密度ブラシ毛31bの外側でブラシ部30の側面に位置する吹出口33bから正負両方のイオンを含む温風が吹き付けられる。また、高密度ブラシ毛31bの内側に位置する吹出口33aから正負両方のイオンを含む温風が高密度ブラシ毛31bにも吹き付けられる。
これにより、高密度ブラシ毛31bと頭髪38との摩擦により発生して、頭髪38に帯電した正極性の静電気と、高密度ブラシ毛31bに帯電した負極性の静電気とを除去することができる。この結果、ブラッシングの際に発生する静電気を大幅に抑制することができ、静電気による毛髪の損傷を抑制することができる。
また、単線ブラシ毛31aのみを使用した場合よりも大きな引張力を作用させた状態で正負両方のイオンを含む温風を頭髪38に吹き付けることにより、頭髪38に潤いを与えつつ、くせ毛・うねり等の髪質を効果的に改善することができる。これらの結果、髪のつやも効果的に改善させることができる。
尚、操作スイッチ19の切り替えによってヒータ4をオフの状態で送風機3及び帯電粒子発生装置20を駆動することもできる。この場合には、正負のイオンを含む冷風が吹出口34から送出されることにより、暑い時期などに頭部の熱を取るとともにイオンによって頭髪38に潤いを与え、整髪時の静電気を除去することができる。
このように吹出口33から送出される気流は、温風であっても冷風であってもよい。この場合には、吹出口33から送出される気流の温度は、たとえば環境温度が30℃の場合には、ブラシ毛31の先端近傍において30℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。
ブラシ毛31の先端近傍において気流の温度が30℃よりも低い場合には、熱に因るくせ毛・うねりの改善効果が低くなる。一方、ブラシ毛31の先端近傍において気流の温度が120℃よりも高い場合には、短時間のブローであっても毛髪を傷めるおそれがある。また、ブラシ毛31の先端近傍において気流の温度が50℃以上120℃以下となることにより、程よい熱の効果によってくせ毛・うねりをより改善することができる。
以上説明したように、本実施形態によると、把持部10及びブラシ部30に連通する空気通路24の吹出口33がブラシ毛31間に開口し、放電電極21が空気通路24に臨んで配される。このため、ブラシ毛31間の吹出口33から正負両方のイオンを含む気流を送出して頭髪に到達するイオンを増加させることができる。
また、絞り部26よりも下流の空気通路24の周部に放電電極21が配されるので、イオンの消滅を抑制して頭髪に到達するイオンを増加させることができる。従って、頭髪38の保湿や除電を十分行うことができ、良好な整髪を行うことができる。
また、帯電粒子発生装置20を把持部10に対して着脱可能に設け、空気通路24の周面に開口する開口部27bを介して放電電極21が空気通路24に臨んで配される。これにより、帯電粒子発生装置20を取り外して放電電極21を容易に清掃できるとともに回路基板50と放電電極21が一体化された帯電粒子発生装置20を容易に交換することができる。また、空気通路24の周部に放電電極21を配置するため、中央部に配置するよりも簡単な構造で帯電粒子発生装置20を着脱可能に構成することができる。
また、カバー23が帯電粒子発生装置20の周面に近接して帯電粒子発生装置20の前部と後部との間を遮蔽する遮蔽リブ23cを有する。これにより、開口部27bと帯電粒子発生装置20との隙間から漏出する高温の気流による回路基板50の昇温を防止し、ヘアケア装置1の信頼性を向上することができる。
また、絞り部26の軸心に対して放電電極21と同じ側に空洞部36が形成され、絞り部26の軸心に対して放電電極21の反対側にブラシ毛31が配される。これにより、放電電極21で発生したイオンが円滑に空洞部36に導かれ、吹出口33から高濃度のイオンを送出することができる。
また、単線ブラシ毛31aがブラシ部30の周方向の一部を除く所定範囲に設けられ、吹出口33aが、単線ブラシ毛列32間に設けられる。さらに、ブラシ部30の周方向の両端に高密度ブラシ毛31bのブラシ列を配し、その外側でブラシ部30の側面に吹出口33bが設けられる。これにより、頭髪38から単線ブラシ毛31aや高密度ブラシ毛31bが離れる際に発生する静電気を効率良く除電することができる。
吹出口33aは列数が多く吹出口面積の総和も大きくなるので、吹出口33aの各々の開口面積を吹出口33bの開口面積よりも小さくすることで、両者のバランスを変更することができる。吹出口33bからの吹き出し気流の量を増加させることで、頭髪38の癖取りに寄与する効果が大きくできる。
また、吹出口33a、もしくは吹出口33bの開口面積を変更する代わりに吹出口の数を変更することで両者のバランスを変更することも可能である。
また、把持部10の縮径部11の外周面を絞り部26に沿って形成したので、縮径部11の外径を容易に縮径し、使用者が持ちやすくすることができる。即ち、縮径部11は外周面を円錐面に形成され、吸込口15側に対して操作部12に向かって把持部10の外径を縮径する。このため、使用者は操作部12に隣接する外径の小さい縮径部11を把持することができる。
さらに縮径部11の下流側に帯電粒子発生装置20を配し、帯電粒子発生装置20の格納により体積が大きくなった箇所に設けた操作部12に操作スイッチ18、19が設けられる。これにより、ヘアケア装置1の移動操作及び整髪動作中の操作スイッチ18、19の切替え操作を容易に行うことができる。
また、本実施の形態に係るヘアケア方法を用いて、毛髪群に引張力を作用させながら正負両方のイオンを含む気流を引張力が作用する毛髪群、および、単線ブラシ毛31aまたは高密度ブラシ毛31bに吹き付けて整髪することにより、毛髪の損傷を抑制でき、髪質を向上させることができる。
<第2実施形態>
次に、図9は本発明の第2実施形態のヘアケア装置の斜視図である。図10は、本実施形態のヘアケア装置のブラシ部の内部構造を示す軸に垂直な方向の断面図であり、図9中のB−B断面を矢印の方向から見たブラシ部30の断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図8に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態はブラシ毛31がブラシ部30の周方向の全周に設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
本実施形態では、ブラシ部30は複数のブラシ毛31を軸方向に並設した単線ブラシ毛列32が周方向の全周にわたって均等な間隔で24列に並設される。第1実施形態と同様に、ブラシ毛31は、合成樹脂の単線からなる単線ブラシ毛31aと、短い獣毛を束にした高密度ブラシ毛31bとを含む。
高密度ブラシ毛31bは、ブラシ部30の周を3等分する位置に列をなして配置される。すなわち、高密度ブラシ毛列がブラシ部30の周を3等分する位置に設けられている。互いに周方向に間隔をあけて配置される高密度ブラシ毛列の間には、単線ブラシ毛31aを列設させた単線ブラシ毛列32が複数並設して設けられている。
隣接する単線ブラシ毛列32の間および隣接する高密度ブラシ毛列と単線ブラシ毛列32との間には、多数の小孔から成る吹出口33が設けられる。本実施形態では、単線ブラシ毛列32の間に設けられた吹出口を吹出口33aと呼び、ブラシ部30の周方向における高密度ブラシ毛列の両側に設けられた吹出口を吹出口33bと呼ぶ。
本実施形態では、第1実施形態と異なり、ブラシ部30の内部に設けられる空洞部36は連結口16aと同心円状に、かつ連結口16aよりも小径に形成される。連結口16aよりも空洞部36の直径が小さいことにより径方向に隙間が生じ、この隙間が吹出口34を構成する。これにより、イオンを含む気流がブラシ毛31に向かって吹出口34からブラシ列間に送出される。
空洞部36に侵入した正負両方のイオンを含む気流は、ブラシ部30の周上に設けられた吹出口33から径方向に噴出される。これにより頭髪38の整髪に伴って、正負のイオンが頭髪38に付着し潤いを与えるとともにブラシ毛31と頭髪38との摩擦により発生する静電気を除去することができる。吹出口33および34から正負のイオンを含む気流を送出することで、多くのイオンを頭髪38に到達させることができる。
空洞部36の内部には、第1実施形態と同様に整流リブ37が設けられるが、第1実施形態ではほぼ半円の形状であった整流リブは、構造的に不可欠な分割をした同心円状に形成される。連結口16aから見て手前から第1リブ37a、第2リブ37b、第3リブ37cの順に配置され、第1リブ37a、第2リブ37b、第3リブ37cの順にリブの突き出し長さが長く形成されることは第1実施形態と同じである。
第1実施形態と第2実施形態では単線ブラシ毛列32、高密度ブラシ毛列の数と配置部分の面積が異なるが、同一の思想で配置されており、第1実施形態同様の効果を得ることができる。また、ブラシ部30の周上3か所に配した高密度ブラシ毛31bの少なくともいずれかまたは単線ブラシ毛31aを用いて頭髪38を捕捉して引張力を掛けながら吹出口33bから正負両方のイオンを含む温風を引張力が作用する毛髪群および高密度ブラシ毛列に吹き付けることにより、毛髪の損傷を抑制でき、髪質を向上させることができる。
また、単線ブラシ毛列32間および高密ブラシ毛列と単線ブラシ毛列32との間に設けた吹出口33からイオンが噴出されるので、ブラシ部30の周方向のどの位置でブラッシングを行っても頭髪からブラシ毛31が離れる際に発生する静電気を効率良く除電することができる。
図11は、本実施形態のヘアケア装置を用いたヘアケア方法の一例を示す図である。図11を参照して、本実施の形態に係るヘアケア方法について説明する。図11では、高密度ブラシ毛31bを用いた整髪方法の一例を示している。
本実施の形態に係るヘアケア方法にあっては、使用者は、ブラシ部30の周面上の3か所に配置した高密度ブラシ毛31bのうち少なくともいずれかを頭髪38に挿入して、この状態でブラシ部30を頭髪38の根本側から毛先側へブラシ部30を移動させている。
具体的には、図中のブラシ部30の最も下部にある高密度ブラシ毛31bにて頭髪38を捕捉して当該頭髪38に引張力を加えながら、高密度ブラシ毛31bと単線ブラシ毛31aの両方で頭髪38を梳いている。
頭髪38を補足している高密度ブラシ毛31bの両側にある吹出口33bから正負両方のイオンを含む温風が、高密度ブラシ毛31bの周辺領域である領域38aに吹き付けられる。これにより、高密度ブラシ毛31bと毛髪群との摩擦により発生して、毛髪群に帯電した正極性の静電気と、高密度ブラシ毛31bに帯電した負極性の静電気とを除去することができる。この結果、ブラッシングの際に発生する静電気を大幅に抑制することができ、静電気による毛髪の損傷を抑制することができる。
また、引張力を作用させた状態で正負両方のイオンを含む温風を頭髪38に吹き付けることにより、頭髪38に潤いを与えつつ、くせ毛・うねり等の髪質を効果的に改善することができる。これらの結果、髪のつやも効果的に改善させることができる。
同時に、図中左上に示すように、毛髪群を補足する高密度ブラシ毛31bから見てブラシ部30の進行方向(毛髪を梳かす方向)の後方に位置し、他の高密度ブラシ毛31bの近傍に位置する領域38bにも、他の高密度ブラシ毛31bの両側にある吹出口33bから正負両方のイオンを含む温風が吹き付けられる。
他の高密度ブラシ毛31bの近傍に位置する(領域38bに位置する)毛髪群にも、図中のブラシ部30の最も下部にある高密度ブラシ毛31bによって引張力が作用している。このため、他の高密度ブラシ毛31bの近傍に位置する毛髪群においても、頭髪38に潤いを与えつつ、くせ毛・うねり等の髪質を改善することができる。
使用者が、図中で反時計回りに持った把持部10を少し回転させると、図中左上にある他の高密度ブラシ毛31bも頭髪38を捕捉出来るようになるため、さらに強く引張力を掛けることができる。この場合においても、上述同様の理由により、ブラッシングの際に発生する静電気を大幅に抑制することができ、静電気による毛髪の損傷を抑制することができる。また、頭髪38に潤いを与えつつ、くせ毛・うねり等の髪質を効果的に改善することができる。
このように、複数個所において、毛髪の損傷を抑制しつつ髪質を改善することもできるため、整髪時間を短縮することもできる。また、単線ブラシ毛31aを用いつつ、高密度ブラシ毛31bも用いて頭髪38を梳くことになるため、この点においてもくせ毛・うねり等の髪質をより効果的に改善することができるとともに、整髪時間を短縮することができる。
<第3実施形態>
第2実施形態において、高密度ブラシ毛31bはブラシ部30の全周を3等分する位置に列状に配置したが、全周を2等分する位置に配置してもよく、4等分〜6等分する位置に配置してもよい。
この場合には、より多くの高密度ブラシ毛列で毛髪を補足することにより、第1実施形態と比較して、くせ毛・うねり等をより改善することができる。また、整髪時間も短縮することもできる。
ただし、高密度ブラシ毛列の列数が多くなると整髪時に摩擦が大きくなり使用者の腕の負担が増すばかりでなく頭髪を痛めることも考えられる。高密度ブラシ毛31bの毛の材質や植設密度によって本数や列数など適切に配置するのが好ましい。
本発明のようなヘアケア装置の主たる使用者は女性であると考えるため、腕力や手首の力が弱く腕への負担が大きいことや、長い頭髪による首への負担も考慮すべきであり、負担が少なく扱いやすいことが重要である。
<第4実施形態>
また、第1実施形態から第3実施形態では高密度ブラシ毛31bは、それぞれの位置に1列で配置したが、複数列であってもよい。この場合にも、あまり過剰に設置をすると整髪時に摩擦が大きくなり使用者の腕力、体力への負担が増すばかりでなく頭髪を痛めることも考えられるので、高密度ブラシ毛31bの毛の材質や植設密度によって適切な配置が求められるべきである。なお、この場合には、第1実施形態と比較して、くせ毛・うねり等をより改善することができる。また、整髪時間も短縮することもできる。
<第5実施形態>
以上の実施形態において、ヘアケア装置1がヒータ4を省いて冷風を送出するヘアドライヤであってもよい。温風を使用しない場合では、イオンによる潤い付与によって癖取りが緩やかに行われる。この場合においても、正負両方のイオンにより、高密度ブラシ毛31bと毛髪群の摩擦により発生する静電気を除去することができる。このため、第5実施の形態においても、第1実施形態とほぼ同等の効果が得られる。
<第6実施形態>
また、本発明で使用する帯電粒子発生装置20は空気イオンを発生しているが、これに限らない。例えば、帯電粒子発生装置20を静電霧化装置によって構成してもよい。静電霧化装置では、放電電極21をペルチェ素子により冷却することで放電電極21の表面に結露水が生じる。放電電極21に負の高電圧を印加すると、結露水から負イオンを含む帯電微粒子水が生成される。また、放電電極21に正の高電圧を印加すると、結露水から正イオンを含む帯電微粒子水が生成される。これにより、帯電微粒子水から成る正負の帯電粒子を送出して頭髪の保湿及び除電を行うことができる。
このため、本実施の形態に係るヘアケア方法にあっても、実施の形態1に係るヘアケア方法とほぼ同様の効果を得ることができる。
また、放電電極21を空気通路24の周部に配して上流側に絞り部26を設けることにより、帯電微粒子水に気流が直接接触して帯電微粒子水が蒸発することによる帯電微粒子水の消滅を防止することができる。
(検証実験1)
図12は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験1の条件および結果を示す図である。図13は、図12に示す検証実験1の結果を数値で示す図である。図12および図13を参照して、本発明の効果を検証するために行なった検証実験1について説明する。
図12および図13に示すように、検証実験1においては、実施例1、2、比較例1から3におけるヘアケア方法を使用して整髪した際の髪のつやを評価した。実施例1におけるヘアケア方法としては、高密度ブラシ毛31bで毛髪群を梳きながら、正負両方のイオンを含む温風を毛髪群に吹き付けた。実施例2におけるヘアケア方法としては、単線ブラシ毛31aで毛髪群を梳きながら、正負両方のイオンを含む温風を毛髪群に吹き付けた。
比較例1におけるヘアケア方法としては、高密度ブラシ毛31bで毛髪を梳きながら、正負両方のイオンを含まない温風を毛髪群吹き付けた。比較例2におけるヘアケア方法としては、単線ブラシ毛31aで毛髪群を梳きながら、正負両方のイオンを含まない温風を毛髪群に吹き付けた。比較例3におけるヘアケア方法としては、単線ブラシ毛31aで毛髪群を梳きながら、負イオンのみを含む温風を毛髪群に吹き付けた。
髪のつやを評価するに際し、頭頂部から後頭部にかけてヘアケア装置によるブロー前後の状態を暗室内にてカメラを用いて撮影した。カメラは、EOS Kiss X5(キャノン社製)を使用した。ブローは、頭頂部および後頭部を6ブロックに区画して各ブロックあたり3回行なった。
図12に示すように、実施例1に示す画像においては、比較例1から3と比較して、光を反射して輝いている環状の明るい部分(いわゆる天使の輪)がまっすぐにそろっている。これにより、実施例1におけるヘアケア方法を実施した場合には、最も美しいツヤが得られることが確認できる。
また、画像処理ソフトウェア(製品名:「Photoshop(登録商標)」、Adobe System Inc)を用いて撮影した画像からツヤ値を算出した。
ツヤ値は、最も輝度が高い部分(図12中において天使の輪のように見える環状の明るい部分)の平均輝度/暗い部分の平均輝度にて算出した。ここで、暗い部分とは、図12中において天使の輪のように見える環状の明るい部分の周囲に位置し、当該明るい部分から縦方向に所定の距離下がった部分である。
ブロー前の初期状態におけるツヤ値(初期値)とブロー後の状態におけるツヤ値とを比較し、実施例1、2、比較例1〜3のそれぞれにおいて初期値を100とした場合における相対値を算出した。図13においては、実施例1、2、比較例1〜3と相対値との関係を図示している。
図13に示すように、実施例1では、初期値を100とした場合におけるブロー後の相対値は143となっており、ツヤ値が43%増加している。一方、比較例1,実施例2においては、ブロー後の相対値は122,113となっており、実施例1には及ばないもののツヤ値が向上していることが確認できる。なお、比較例2,3においては、ブロー後の相対値は両方とも105となっており、ツヤ値にほとんど変化が見られなかった。
実施例1、実施例2の結果と、比較例2,3の結果とを比較して、毛髪群に正負両方のイオンを吹き付けることにより、ツヤが向上することが確認できる。また、実施例1の結果と実施例2との結果、および、比較例1の結果と比較例2の結果を比較して、高密度ブラシ毛31bを用いて毛髪群に引張力を作用させながら毛髪群を梳くことにより、ツヤがより向上することが確認できる。
さらに、実施例1の結果と比較例2の結果とを比較して、高密度ブラシ毛31bを用いて毛髪群に引張力を作用させながら正負両方のイオンを吹き付けることにより、大幅にツヤ値を向上させることができることが確認できる。
(検証実験2)
図14は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験2の条件および結果を示す図である。図14を参照して、本発明の効果を検証するために行なった検証実験2について説明する。
図14に示すように、検証実験2においては、実施例1、比較例1、比較例3におけるヘアケア方法を使用して整髪した際の毛髪群とブラシ部30との電位差を測定した。実施例1、比較例1,3におけるヘアケア方法は、検証実験1におけるヘアケア方法と同様の方法である。
電位差の測定においては、ブロー後の毛髪群およびブラシの帯電量を表面電位計FMX−003(シムコ製)で測定し、両者の電位差を比較した。なお、帯電量は、後述する試験用毛髪群ごとに3回測定し、平均値を算出した。高密度ブラシ毛31bと毛髪群との摩擦により毛髪群側が正極性に帯電し、ブラシ側が負極性に帯電する。
ブローする毛髪群の準備に際して、15gの毛髪群を試験用毛髪群とした。これら試験用毛髪群を所定の個数準備し、各試験用毛髪群での電位差の平均値を算出した。
実施例1、比較例1においては、ブローは、高密度ブラシ毛31bにて毛髪群を補足して、ブラシ部30を毛髪群の一端側から他端側に移動させることにより行なった。また、ブローを5回行なった後に、帯電量を測定した。比較例3においては、ブローは、単線ブラシ毛31aを毛髪群に挿入してブラシ部30を毛髪群の一端側から他端側に移動させることにより行なった。また、ブローを5回行なった後に、帯電量を測定した。
実施例1における電位差は、比較例1および比較例3における電位差よりも十分に小さくなっている。比較例1における電位差は、比較例3における電位差とほぼ同等の値であった。
これらの結果から、実施例1では、正負両方のイオンを含む温風を引張力が作用する毛髪群に吹き付けることにより、毛髪群側に帯電する正極性の静電気とブラシ部側に帯電する負極性の静電気の両方を除去することができ、この結果、上記電位差を低くすることができたと言える。
一方、比較例1の結果と比較例3の結果とを比較して、以下のことが考察される。負イオンを毛髪群に吹き付けることにより、毛髪群側に帯電した正極性の静電気を除去することができるものの、ブラシ部30側に帯電した負極性の静電気を除去することができない。このため、負極性に帯電するブラシ部30によって毛髪群を梳くこととなり、静電気の発生を抑制することができず、ブラシ部30側と毛髪群側との電位差を改善できなかったと考察される。
(検証実験3)
図15は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験3の条件および結果を示す図である。図15を参照して、本発明の効果を検証するために行なった検証実験3について説明する。
図15に示すように、検証実験3においては、実施例1、比較例1および比較例3におけるヘアケア方法を使用して整髪した後の毛髪群における枝毛および切れ毛の本数を計測した。実施例1、比較例1,3におけるヘアケア方法は、検証実験2における各ヘアケア方法と同様である。
ブローする毛髪群の準備に際して、黒色の毛髪を5g(1500本)に分けて束ねた後に40cmの長さに切り揃えて毛束を作成した。この毛束を調髪用ハサミによって30cmに切り揃えることにより、枝毛および切れ毛が除去して試験用毛髪群を得た。
実施例1および比較例1においては、ブローは、高密度ブラシ毛31bにて毛髪群を補足して、ブラシ部30を毛髪群の一端側から他端側に移動させることにより行なった。これを300回連続で繰り返した後の毛髪群において枝毛および切れ毛の本数を計測した。比較例3においては、単線ブラシ毛31aを用いて毛髪群を300回梳いた。
実施例1では、比較例1,3よりも枝毛および切れ毛の本数が少なくなった。これにより、実施例1におけるヘアケア方法を用いて、毛髪群に引張力を作用させながら正負両方のイオンを含む温風を引張力が作用する毛髪群に吹き付けて整髪することにより、毛髪の損傷を抑制できることが確認された。
また、比較例1の結果から、正負両方のイオンと含む温風を吹き付けない場合には、毛髪の損傷を十分に抑制することができないことが確認された。さらに、比較例3の結果から、負イオンのみを毛髪群に吹き付けても毛髪の損傷を十分に抑制することができないことが確認された。
負イオンを毛髪群に吹き付けることにより、毛髪群側に帯電した正極性の静電気を除去することができる。しかしながら、ブラシ部30側に帯電した負極性の静電気を除去することができないため、ブラシ部30側と毛髪群側との電位差を改善できない。この結果、高密度ブラシ毛31bと毛髪群との摩擦による静電気を抑制することができず、毛髪が損傷しやくなったと考察される。
(検証実験4)
図16は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験4の条件および結果を示す図である。図16を参照して、本発明の効果を検証するために行なった検証実験4について説明する。
図16に示すように、検証実験4においては、実施例1、比較例1および比較例3におけるヘアケア方法を使用して整髪した後の毛髪群の表面状態を観察した。実施例1、比較例1,3におけるヘアケア方法は、検証実験3における各ヘアケア方法と同様である。
また試験用の毛髪群として検証実験3と同様のものを用い、同様の条件にて300回連続でブローした。300回連続で繰り返しブローした後の毛髪群に含まれる毛髪を超深度マルチアングルレンズマイクロスコープVHX−500(キーエンス社製)にて観察した。なお、観察の際には毛髪は中央部である略15cmの位置で片結びし、結び目近傍を観察した。
実施例1では、キューティクルの剥がれや浮きがほとんど認められなかった。一方、比較例1,3では、キューティクルの剥がれや浮きが認められ、毛髪が損傷していた。
このような結果からも、実施例1におけるヘアケア方法を用いて、毛髪群に引張力を作用させながら正負両方のイオンを含む温風を引張力が作用する毛髪群および高密度ブラシ毛31bに吹き付けて整髪することにより、毛髪の損傷を抑制できることが確認されたと言える。
(検証実験5)
図17は、本発明の効果を検証するために行なった検証実験5の条件および結果を示す図である。図17を参照して、本発明の効果を検証するために行なった検証実験5について説明する。
図17に示すように、検証実験5においては、実施例1、2、比較例1から3におけるヘアケア方法を使用して整髪した場合における整髪前後の毛髪の長さの変化率を評価した。実施例1、2、比較例1から3におけるヘアケア方法は、検証実験1におけるヘアケア方法と同様の方法である。
毛髪の長さの変化率の評価においては、くせ毛・うねりを有する毛髪群を準備し、ブロー前の毛髪群の長さと、ブロー後の毛髪群の長さとを測定した。
くせ毛・うねりを有する毛髪群を準備するに際して、まず、総重量15gの毛髪群を作成した。次に、この毛髪群を5分以上水に浸漬し、φ24mmの試験管に巻きつけた。この状態で、当該毛髪群を24時間以上自然乾燥し静置した。試験管から毛髪群を外すことにより、くせ毛・うねりを有する毛髪群を準備した。
上記変化率の測定においては、まず、試験管から外した状態の毛髪群の長さをブロー前の毛髪群の長さとして測定した。この場合におけるブロー前の長さは、略20cm〜23cmとなった。続いて、高密度ブラシ毛31bを使用する場合には高密度ブラシ毛31bにて毛髪群を捕捉し、単線ブラシ毛31aを使用する場合には単線ブラシ毛31aを毛髪群に挿入し、ブラシ部30を毛髪群の一端側から他端側に移動させることによりブローを行なった。なお、ブローは5回行なった。
5回ブローした後(ブロー処理後)の毛髪群の長さを測定し、ブロー前の毛髪群の長さと比較した。この際、ブロー処理後の毛髪群の長さとブロー処理前の毛髪群の長さとの差分をブロー処理前の毛髪群の長さで除算した値を変化率とした。
実施例1においては、変化率が最も大きく、くせ毛・うねりを最も改善することができた。実施例2においては、実施例1に次いで、変化率が大きくなっており、くせ毛・うねりを改善することができた。
実施例2においては、比較例2よりも変化率が大きくなっている。実施例2の結果と比較例2の結果とを比較して、正負両方のイオンを含む温風を毛髪群に吹き付けることにより、くせ毛・うねりを改善することが確認できる。
また、比較例1は、比較例2よりも若干変化率が大きくなっている。比較例1の結果と比較例2の結果を比較して、高密度ブラシ毛31bにて毛髪群を補足して毛髪群に引張力を作用させることにより、くせ毛・うねりを改善することが確認できる。
このように、正負両方のイオンを含む温風を毛髪群に吹き付けること、および毛髪群に引張力を作用させることのそれぞれが、くせ毛・うねりの改善に貢献する。このため、これらの両方の動作を含む実施例1,2におけるヘアケア方法を用いた場合には、上述のように変化率が大きくなり、くせ毛・うねりを改善することができた。さらに、高密度ブラシ毛31bを用いて、単線ブラシ毛31aよりも大きな引張力を頭髪に毛髪群に作用させることにより、よりくせ毛・うねりを改善することができた。
以上のように、検証実験1〜5の結果から、本実施の形態に係るヘアケア方法を使用することにより、毛髪の損傷を抑制でき、髪質を向上させることができることが確認されたと言える。
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。