〔実施例1〕
以下、本実施例の画像形成装置の概略構成を図1に示す。本実施例における画像形成装置は、電子写真プロセスを用いて画像を紙などの記録媒体に形成するモノクロレーザービームプリンタである。
画像形成装置の装置本体Mのほぼ中央には、像担持体として、ドラム型の感光体1が配設されている(以下、感光ドラム1と記述)。感光ドラム1は、アルミニウム等の導電性ドラム基体の外周面にOPC(有機光半導体)感光層を形成したものであり、所定のプロセススピード(周速度)200mm/sをもって回転駆動される。
上述の感光ドラム1の表面(周面)は、帯電手段としての帯電ローラ2により所定の極性・電位に均一(一様)に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、露光手段としてのレーザビームスキャナ3から出力されたレーザビームによって露光される。このレーザービームは、目的の画像情報に対応して変調され、感光ドラムに静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤であるトナー5が付着されてトナー像として現像される。
記録媒体9は給紙ローラによって給紙され、感光ドラム1上に書き込まれたトナー像と同期をとるように感光ドラム1と転写ローラ10との間の転写ニップ部に送られて表面にトナー像が転写される。転写ローラ10には転写時に転写バイアス印加電源(不図示)から転写用の転写バイアスが印加される。
トナー像の転写を受けた記録媒体9は、感光ドラム1表面から分離されて定着手段としての定着器11に搬送され、ここで加熱・加圧されて表面にトナー像が定着される。一方、トナー像転写後の感光ドラム1は、記録媒体9に転写されないで表面に残ったトナー5がクリーニング手段としてのクリーニング部材12によって除去され、次の画像形成に供される。
本実施の形態に係る画像形成装置では、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4、クリーニング部材12の4つのプロセス機器が一体的に組み込まれて、装置本体Mに対して着脱可能のプロセスカートリッジ(プロセスユニット)13を構成している。
(現像装置の構成概要)
本実施例の特徴である現像装置について図1から図5を用いて説明する。図2は本実施例における現像装置4の外観斜視図である。図3は現像装置の平面図である。図4は図3において現像容器14の天井板14gを取り除いて内部を見せた現像装置4の平面図である。図5は本実施例のプロセスカートリッジを示したものである。
なお以下の説明において、現像装置4に関して、正面側は現像スリーブが像担持体としての感光ドラムに対面する側である。手前側又は前側又は前方も正面側と同義である。背面側は正面側とは反対面側である。奥側又は後側又は後方も背面側と同義である。左右は正面から見て左又は右である。上下は重力方向において上又は下である。長手方向は回転体の軸線方向又はその軸線方向に並行な方向である。符号の末尾にLまたはRを付した場合は、特に断りがない場合、現像装置の左側(L)または右側(R)に設けられた部材であることを示す。
本実施例においては現像装置4内に現像剤担持体としての現像スリーブ6が設けられている。現像スリーブ6と感光ドラム1の間には約300μmの空隙を設けており、現像時には、現像スリーブ6に、現像バイアス電源7によって直流と交流の重畳電圧である現像バイアス電圧が印加される。具体的には、本実施例では、交流成分が周波数2.5kHz、振幅が1.6kV、直流成分が‐400Vの重畳電圧を印加した。この現像バイアスの作用によって、トナー5が現像スリーブ6から感光ドラム1に形成された静電像に転移される。
図2、図3、図4に記載されるように、現像スリーブ6の両端部には、現像スリーブ6と同心円状にリング形状のスペーサーが取り付けられる。 スペーサーは厚み300μmであって、感光ドラム1と接触することで、感光ドラム1と現像スリーブ6間の空隙を300μmに維持する。感光ドラム1を現像スリーブ6に押しあてる方向を、ドラム押しあて方向B(図5参照)とすると、本実施例のドラム押しあて方向Bは、感光ドラム1と現像スリーブ6の中心を結ぶ方向である。
現像スリーブ6は一方の端部(駆動側端部)に取り付けられた駆動ギア17に、不図示の画像形成装置本体Mから駆動を受け、回転駆動される。以降の説明において、現像スリーブ6の長手方向において、現像スリーブ6にスリーブ駆動ギア17が設けられている側を駆動側、駆動側とは反対側を非駆動側と呼ぶ場合がある。
本実施例の現像装置4は、現像容器14が形成する現像剤収容室14aに、現像剤としてのトナー5が収容されている。現像容器14は、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HI−PS)で金型成型されたものであり、トナー5は磁性トナー、正規の帯電極性(正規極性)すなわち画像形成時に帯電される極性はマイナス極性である。又、感光ドラム1と対向する現像装置4の開口部14b(図2参照)には、現像剤担持体としての現像スリーブ6が回動可能に配置されている。
図4のように、現像容器14の内部において、現像容器14の左側板14cLに対して所定の間隔をあけて寄せた位置に前後方向に延びている左内側板14dLが設けられている。また、現像容器14の右側板14cRに対して間隔をあけて寄せた位置に前後方向に延びている右内側板14dRが設けられている。現像容器14の正面側の開口部14b(図2参照)には現像スリーブ6が軸線方向を左右方向にして左右の軸受け機構18(18L・18R)により回転可能に保持されて配置されている。
本実施例においては、現像容器14内において、現像容器14の、底板14e、左内側板14dL、右内側板14dR、後板14f、天井板14g、および現像スリーブ6とで囲われた閉空間部を現像剤収容室14aとしている。
なお、本実施例の現像容器14においては、図5のように、底板14eのほぼ後半部を後板14f側から現像スリーブ6側に前下がりの傾斜面にして現像剤収容室14a内のトナー5に現像スリーブ6方向へ寄り移動する流動性が生じるようにしている。現像剤収容室14a内にトナー5を攪拌して現像スリーブ方向へ積極的に寄せ移動する回転駆動されるパドル部材(トナー攪拌搬送部材)を配設することもできる。
図4において、W6は現像スリーブ6(スリーブ部6a)の全幅(現像スリーブ6の全長)である。左右のスペーサー8L・8Rの間隔もこの現像スリーブ全幅W6にほぼ対応している。W1はドラム1の全幅(ドラム1の全長)であり、スペーサー8L・8Rの間隔W6よりも大きい。
W6dは現像スリーブ6における現像剤供給領域幅、W6eは現像剤非供給領域幅である。現像剤供給領域幅W6dはドラム1における最大画像形成領域幅にほぼ対応している。本実施例においては、現像剤供給領域幅W6dは現像容器14の左内側板14dLと右内側板14dRとの間隔で規定されている。現像剤規制部16の全幅(現像剤規制部16の全長)W16は現像剤供給領域幅W6dにほぼ対応している。現像剤非供給領域幅W6eは左内側板14dLと右内側板14dRとの間隔よりも外側に対応する現像スリーブ表面部分幅である。
20(20L・20R)は左内側板14dLの前面側と現像スリーブ6との間および右内側板14dRの前面側と現像スリーブ6との間にそれぞれ介在させた、トナー5の隙間漏れを防止弾性シール部材である。
本実施例の現像スリーブ6は、φ16[mm]の円筒状のアルミニウム素管上に、結着樹脂、導電性微粉末、粗し粒子を含有した導電性樹脂層を形成したものであり、体積抵抗が10−2〜104[Ωcm]のものを用いた。結着樹脂にはフェノール樹脂を、導電性微粉末としては、カーボンブラック及びグラファイトを、粗し粒子としては球状炭素化粒子を用いた。
図5に示すように現像スリーブ6内には、磁界を発生させるための磁界発生手段としてマグネットローラ15が固定配置されている。トナー5は、マグネットローラ15の磁力により現像スリーブ6上に引きつけられ、取り込まれる。
前述したように、現像スリーブ6は回転可能に配置されており、矢印R1方向に回転することで、現像スリーブ6上に引きつけられたトナー5は、現像剤規制部16において規制される。現像剤規制部16は現像容器14の一部である。つまり現像剤規制部16は現像容器14と一体的に形成されている。
本実施例では、現像スリーブ6を現像容器14に設けた現像剤規制部16に加圧しながら回転させることにより、現像スリーブ6上のトナー5を所望の量に規制する。現像剤規制部16の表面は、ほぼ平滑であり、表面粗さRa=0.15μmである。現像スリーブの表面粗さは、Ra=1.2μmである。尚、表面粗さRaは、JIS−B0601−1994で規定される算術平均粗さ(中心線平均粗さ)[μm]であり、接触式表面粗さ測定器SE3500(株式会社小坂研究所製)を用い、以下の条件下で測定したものである。
基準長: 0.8[mm]
評価長さ: 4.0[mm]
送り速度: 0.1[mm]
フィルター: ガウス
また、本実施例において、現像スリーブ6が現像剤規制部16へ当接する際の当接圧は線圧で30g/cmである。尚、当接圧は以下の手順で求めた値である。トナーのない状態で現像スリーブ6と現像剤規制部16との当接ニップ間にSUSシート(厚さ50μm,巾はw[cm])を3枚挿入し、真ん中のシートを引き抜くときのバネ圧F[gf]を測定する。SUSシート同士の摩擦係数μを測定する。そして、当接圧(線圧)P=μF/wを求める。
以上の構成において、現像剤規制部16を通過した後、現像スリーブ6上に担持されるトナーの帯電量(単位重量当たりの帯電量)は、10μC/gである。また現像剤規制部16通過後、現像スリーブ6上に担持されるトナーの乗り量(単位面積当たりの重さ)は15g/m2であった。
図5、図6、図7を用いて、現像スリーブ6の可動、加圧機構について説明する。現像スリーブ6は、図5に示すように、その長手方向における端部において、加圧部材としての弾性部材(以下、バネ部材とよぶ)19に加圧され、現像容器14の一部である現像剤規制部16に押し付けられている。なお、現像スリーブ6の長手方向とは、現像スリーブ6の回転軸線と平行な方向(軸線方向)である。
図6は、図5における点線Lでの断面図である。現像スリーブ6は、図6に示すようにその長手方向の両端においてバネ部材19によって加圧されている。
現像スリーブ6は軸受け機構18に回転可能に取り付けられている。軸受け機構18はガイド部材18bと、ガイド部材18bにガイドされる軸受け部材18aを有する。軸受け部材18aは、現像スリーブ6の軸を支持する支持部である。上述のバネ部材19はその一端部19aがこの軸受け部材18aに取り付けられている。一方、バネ部材19の他端部19bは現像容器14に突き当たっている。バネ部材19は、軸受け部材18aを介して現像スリーブ6を現像剤規制部16に加圧している。
ここで、図6に示すように、現像スリーブ6は、円柱状の形状をとり、トナーを担持する部分であるスリーブ部(担持部)6aと、スリーブ部6aよりも径の小さな軸部6c(6cL・6cR)を有している。また、現像スリーブ6はスリーブ部6aの左右の開口部を閉鎖している左右の端板部6bL・6bRを有する。軸部6cはスリーブ部6aと同心であり、外径はスリーブ部6aの外径よりも小さい。軸受け部材18aは、この軸部6cにおいて、現像スリーブ6を回転可能に支持する。
そのため、図5に示すように、現像装置4を現像スリーブ6の長手方向に沿って見たとき、軸受け部材18aに取り付けられたバネ部材19の一端部19aは、スリーブ部6aの外周よりも内側に位置する。現像容器14内部でバネ部材19が占める領域S3は、ほぼ現像スリーブ6が占める領域に重なることになる。バネ部材19を設置するために現像容器14に新たな空間を設ける必要がない。
すなわち、バネ部材19が、現像スリーブ6を、径の小さい軸部6cにて加圧する構成にすることで、バネ部材19を設けるために必要な空間を減らし、より現像装置4を小型化することが可能になる。図5に示すように、軸受け部材18aは、現像容器14に設けられたガイド部材18bに沿ってスライド可能となる。
図7は現像スリーブ6の一方の端部(駆動側端部)を図6のH方向に沿って見た図である。軸受け部材18aには凹部を形成するガイド溝aが存在し、この凹部が現像容器14に設けられたガイド部材18bの凸部bにはめ込まれる。 この構成により、軸受け部材18aはガイド部材18bに沿って図5における矢印A方向に移動可能である。つまり軸受け部材18aは現像スリーブ6を矢印A方向に変位させることで、現像剤規制部16に接触させることができる。
現像スリーブ6は、図5における矢印A方向にのみスライド可能になる。この現像スリーブ6の変位方向はバネ部材19よる加圧方向Aでもある。加圧方向Aは、スリーブ中心と現像剤規制部16とを結ぶ方向であり、前述したドラム押しあて方向Bとのなす角θ(図8参照)は90度である。現像スリーブ6の他方の端部(非駆動側端部)も同様の構成で支持されている。
本実施例では、現像スリーブ6の両端に配置したバネ部材19による圧により、現像容器14に対し不動の現像剤規制部16に対して現像スリーブ6を押圧している。この構成をとることで、現像スリーブ6に担持されるトナーを規制する規制圧、およびトナーの規制位置を安定して保つことができる。すなわち現像装置をより小型化、薄型化しつつ、現像スリーブ6に担持されるトナー5の量および現像スリーブ6上に形成されるトナー層の層厚を一定に保つことができる。
すなわち従来では、図27、28に示されるように規制ブレード23を撓ませるスペースS1や、現像剤規制部材28を現像剤担持体24に押圧するバネ29を設けるためのスペースS2が必要であった。その結果、現像容器26、22を小型化するのが難しかった。
これに対して本実施例では、図8に示すように現像剤規制部16は現像容器14と一体化していて、現像剤規制部16と現像容器14の間に空間を設ける構成ではない。これにより現像容器14を小型化するのが容易である。
また従来例の規制ブレード23(図27参照)は、現像剤担持体24との接触部である規制位置25が、現像容器22から離れている。つまり現像剤担持体24と接触する規制ブレード23の接触部と、現像容器22とを間隔をあけて配置することで、規制ブレード23を変形させるための空間を設けてある。このため規制ブレード23の変形によって規制位置25が多少移動する可能性がある。
これに対して図8に示す本実施例では現像剤規制部16と現像容器14に一体化している。そのため現像剤規制部16が現像スリーブ6を介してバネ部材19の加圧力を受けても、現像スリーブ6に対する現像剤規制部16の接触部(現像剤の規制位置)が現像容器14に対して移動しまうことがない。
つまり本実施例では、現像剤規制部16と現像容器14とを間隔をあけて配置する構成ではない。現像剤規制部16と現像スリーブ6の接触部よりも加圧方向Aの下流側には、現像容器14に対して現像剤規制部16の変形を許容する空間がない。よって現像剤規制部材16がバネ部材19に押圧されていても、現像スリーブ6に対する現像剤規制部16の接触部の位置は、現像容器14に対して固定される。
これにより、現像剤規制部16は、現像スリーブ6上の現像剤量を安定して規制することができる。
なお、現像剤規制部16に荒し処理などの加工をすることで、現像剤の規制力を高めることも可能である。現像スリーブ6に担持されるトナーの量が多く、トナーが記録媒体の余白領域に転移する、所謂かぶりが生じた場合には、現像剤規制部16に荒し処理をすることで、現像スリーブ6に担持されるトナーの量を減らすと良い。
現像剤規制部16に荒し処理をするためには、現像剤規制部16を成形するための成形金型の表面をアトランダムでブラストし凹凸をつくるとよい。
例えば、荒し処理によって現像剤規制部16の表面粗さをRa=1.2μmとした場合、現像剤規制部16を通過した後、現像スリーブ6に担持されるトナーの乗り量は、12g/m2であった。これは現像スリーブ6の単位面積当たりに担持されるトナーの重さである。現像剤規制部16に荒し処理を行なわず、ほぼ平滑な表面形状で成形した場合よりも小さい値となる。
なお本実施例において、バネ部材19によって現像スリーブ6を現像剤規制部16に加圧するスリーブ加圧方向Aは、スリーブ中心と現像剤規制部16とを結ぶ方向であるとした。しかし現像スリーブ6が、現像剤規制部16に加圧される方向であれば、これにかぎるものではない。また、本実施例では図5に示すように、感光ドラム1が現像スリーブ6を押圧するドラム押しあて方向Bと、バネ部材19によって現像スリーブ6を現像剤規制部16に加圧するスリーブ加圧方向Aとがなす角θは90度であるとしたが、これに限るわけではない。感光ドラム1が現像スリーブ6を押圧する力により、現像スリーブ6と現像剤規制部16とが離間しなければ良い。
これは、以下に示す式1が成り立つ場合である。
F1+F2×cosθ>0 ・・・・式1
ここで図8に示すように、F1は、バネ部材19が現像スリーブ6を現像剤規制部16に向けて押圧する力である。またF2は感光ドラム1が現像スリーブ6を押圧する力である。θは、現像スリーブ6の軸と直交する平面(図8)においてF1が作用する方向とF2が作用する方向とが成す角度である。
式1の左辺においてF2×cosθは、バネ部材19の加圧方向Aに作用するF2の分力である。この分力はθが90度よりも小さければプラスの値であり、θが90度より大きければマイナスの値をとる。
式1が成り立つとき、感光ドラム1が、現像スリーブ6を現像剤規制部16から離そうとする力より、バネ部材19が現像スリーブ1を現像剤規制部16に押し付ける力が大きくなる。
本実施例において、現像剤担持体にアルミスリーブを用いたが、これに限るものではない。例えば、現像剤担持体にゴム製のローラを用いて、現像剤に非磁性トナーを用いてもよい。
〔実施例2〕
実施例2について図9を用いて説明する。実施例1では、現像剤規制部16は、現像容器14の一部であって、現像容器14と一体的に形成されていたが、本実施例では、現像容器14側にシート部材40を張り付け、これを現像剤規制部としている。
シート部材40には厚み0.5mm、表面粗さRa=0.1μmのウレタンゴムを採用した。シート部材40のJIS−A硬度は65°、ヤング率E=3×106Paである。シート部材40の一方の面を、厚み0.1mmの両面テープを用いて現像容器14の天井板14gに張り付けた。他方の面は、現像スリーブ6と接触し、現像スリーブ6に担持されるトナーを規制する。現像剤規制部であるシート部材40は、現像スリーブ6と接触する接触部において、現像容器14の固定部である天井板14gと現像スリーブ6との間に挟みこまれる部材である。なお、シート部材40以外の構成は、実施例1の現像装置4と同様である。
シート部材40は、現像スリーブ6と接触する面とは反対側の面を天井板14gに支えられて固定されることになるので、現像スリーブ6から押圧されても現像容器14に対して動くことがない。つまり、バネ部材19の加圧方向において、シート部材40と現像スリーブ6の接触部より下流側(接触部の裏側)には、現像容器14の固定部(天井板14g)がシート部材40と間隔を空けずに配置される。シート部材40が現像スリーブ6との接触によってバネ部材19の加圧力を受けても、この加圧方向においてシート部材40よりも下流側にはシート部材40の移動を可能とするような空間がない。つまりシート部材40と現像スリーブ6の接触部は現像容器14に対して移動することなく、その位置が固定される。これによりシート部材40は現像スリーブ6上に一定の厚さのトナー層を安定して形成することができる。
ウレタンゴムは、HI−PSに比べ、耐摩耗性が優れているため、プロセスカートリッジの耐久性が向上する。本実施例では、シート部材の材質としてウレタンゴムを用いたが、耐摩耗性向上のために規制部に別材質のものを用いるのであれば、これに限定するものではない。
また、シート部材40として、現像容器14とはトナーに対する帯電性が異なる材料を採用することもできる。
例えば、トナーの帯電量が高くなりすぎると、現像剤規制部でトナーが静電気によって凝集してしまいトナー層が均一に規制できなくなる場合がある。このような課題が生じる場合は、シート部材40としてポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を用いることができる。PPSは、現像容器14の材料であるHI‐PSよりも帯電系列(帯電列)がマイナス側の材料である。すなわちPPSはHI−PSとこすり合わせたときマイナスに帯電する部材である。つまりPPSはHI−PSよりも、トナー5をマイナス極性(正規極性)に帯電させにくい。
実際、シート部材40として厚み100μm、表面粗さRa=0.1μmのPPSを採用した場合には、シート部材40と現像スリーブの間を通過した後、現像スリーブ6上に担持されるトナーの帯電量(単位重量当たりの帯電量)は、7μC/gであった。これは、実施例1における、トナーの帯電量より低い値である。
PPSに限らず現像容器14よりもトナーを帯電しにくい材質のものを現像剤規制部に用いれば、静電凝集の発生を抑え、画像不良の発生を抑えることができる。これは、現像剤規制部にシート部材40を用いる場合に限らず、現像剤規制部を現像容器の一部として形成する場合も同様である。
また逆に、確実にトナーを帯電させるためには、シート部材40として現像容器14よりもトナーを帯電させやすい材料を選択する。このような構成については、実施例3以降で詳細に後述する。
〔実施例3〕
本発明の別の実施例について図面に基づいて説明する。まず本実施例で用いる現像装置100について図10を用いて説明する。
本実施例では、現像装置100は、感光ドラム120と一体となって、プロセスカートリッジB1を形成する。プロセスカートリッジB1は画像形成装置の装置本体に取り外し可能に装着される。
現像装置100は、現像容器110の内部に収容されているトナーを回転する撹拌部材109によって撹拌し、現像剤担持体である現像ローラ101の近傍に搬送する。撹拌部材109は、現像容器110に回転可能に支持された回転支持部材108および、この回転支持部材108に取り付けられた可撓性のシート107を有する。可撓性のシート107は、現像容器110の底面にトナーが滞留することがないよう、底面と接するだけの長さを有している。
撹拌部材109によって現像ローラ101の近傍に搬送されたトナーは現像ローラ101に担持される。本実施例において現像ローラ101は、アルミ管からなる現像スリーブであって、内部にマグネットローラを有する。トナーは磁性を有する磁性トナーであって、このマグネットローラが生じる磁力によって現像ローラ101に引きつけられる。
現像ローラ101に担持されるトナー量は現像剤規制領域111において一定に規制され、現像ローラ101上に所定の層厚となったトナー層が形成される。本実施例では、現像剤規制領域111は現像容器110に形成されたシート座面104および、シート座面104に張り付けられたシート部材103によって構成される。
シート座面104は、シート部材103を固定する固定部である。シート部材103は現像ローラ101と、シート座面104の間に挟み込まれる位置に配置され、両面テープ106によってシート座面104に張り付けられる。シート部材103は現像ローラ101と実際に当接する部材であり現像剤規制部を形成する。
現像ローラ101に現像剤規制領域111のシート部材103が当接することで、現像ローラ101に担持されるトナー量は一定に規制され、現像ローラ301上に、所定の層厚となったトナー層が形成される。また現像ローラ101と、シート部材103とが当接する規制ニップ部102において、トナーは所望の帯電電荷を付与される。
電荷を与えられた現像ローラ101上のトナーは、現像ローラ101と感光ドラム120とが対向する対向部121にて感光ドラム120上に形成された静電潜像を現像する。本実施例の現像工程には、現像ローラ101に直流電圧に交流電圧を重畳した重畳バイアスを用いる。対向部121で現像ローラ101と感光ドラム120とは非接触状態で、電荷を持ったトナーを、現像ローラ101と感光ドラム120間で形成された電界によって飛翔させる。
ここで現像ローラ101は、その軸部101bを軸受け部材(支持部)112に回転可能に支持されている。軸受け部材112は、移動可能に設けられ、現像ローラ101と現像剤規制領域111の距離を可変にしている。付勢部材(加圧部材)としてのバネ部材(弾性部材)113が、軸受け部材112に取り付けられ、現像ローラ101を現像剤規制領域111に向けて加圧している。
この構成により本実施例のプロセスカートリッジB1においても、現像ローラ101のトナーを規制する規制圧、および規制位置が精度よく保たれる。
現像容器110の材料は、耐衝撃性・材料コスト・加工性等の観点から、スチレン系樹脂を用いたHI‐PSを採用した。トナーは、現像容器収納時に不要な帯電電荷を持って、現像容器内で静電凝集してしまうことを抑制するため、現像容器110と同じスチレン系樹脂にて造粒したものを用いた。現像容器110の内部でトナーが凝集し、トナーの搬送性が低下することを抑制するためである。
すなわち本実施例ではトナーが現像容器110の現像剤収容室110aにて静電凝集することを防止するため、現像容器110およびトナーの材料としてトナーを帯電させにくいものを選択した。しかし一方で、画像形成時に、現像剤を用いて潜像を現像する為には、現像ローラに担持されるトナーを現像剤規制部によって帯電させる必要がある。
特に、温度、湿度が高くトナーを帯電させにくい環境下では、現像剤規制部によって十分にトナーを帯電させる必要がある。トナーの帯電電荷量が低下した場合に、現像ローラに保持されにくく、トナーが現像ローラから飛散し、画像形成装置の機内を汚してしまう可能性があるためである。
そこで、本実施例では、現像剤規制領域111に設けられたシート部材103に、現像剤収容室110aよりもトナーに対する帯電性が高い材料を用いた。これにより温湿度環境が変化した場合であっても、トナーの静電凝集を抑制し、現像ローラ101からトナーが飛散しないように、現像ローラ101に担持させるトナーには適切な帯電電荷を与えることを特徴とする。
以下、実験によって本実施例における効果を検証したので以下に説明する。
(実験条件)
実験条件としては、現像ローラ101は径をφ12mmとし、感光ドラム120は径をφ20mmとする。規制ニップ部102において現像ローラ101が現像剤規制領域111に当接する当接圧は線圧において30[g/cm]となるようにバネ部材113を調節した。ここで、線圧を測定する方法は、以下のとおりである。
まずトナーの介在しない状態で現像ローラ101と現像剤規制領域111との規制ニップ部102にSUSシートを3枚挿入し、真ん中のシートを引き抜くときのバネ圧F[gf]を測定する。ここでSUSシートの厚さは50[μm]であり,幅をw[cm]とする。そしてSUSシート同士の摩擦係数μを測定する。これらの数値から線圧PをP=μF/wの計算式にて求める。
なお、現像ローラ101にトナーを担持させる条件として、現像容器110内に100gのトナーを充填し、30rpmの回転数(1分あたりの回転数)で現像ローラを1分間回転させた。
そのあと、現像ローラ101に担持されたトナーの単位質量当たりの帯電電荷量の測定をクーロンメーターと電子天秤を用いて行った。また、機内に飛散するトナーを確認するため、図11に示すように現像容器110の下部にOHPシート401を貼付し、現像ローラ101から落下してくるトナーの有無を確認した。
(比較例の測定)
初めに、本実施例に対する比較例として図12に示すプロセスカートリッジB2を用いて実験を行った。プロセスカートリッジB2は、現像剤規制部304を、現像容器307と同じHI−PS材で形成したものである。その他の構成は本実施例におけるプロセスカートリッジB1と同様である。
プロセスカートリッジB2で実験した結果が表1である。表1に示すように、代表的な3つの温湿度条件において、帯電電荷量および、トナーの落下について確認した。各条件はそれぞれ
条件1:温度15℃・湿度10%
条件2:温度23℃・湿度60%
条件3:温度32℃・湿度80%
とした。トナーの帯電電荷量の単位は[μC/g]である。また、トナー落下有無の判断基準は、「○」:トナーの落下なし、「×」:トナーの落下ありと判断した場合である。
実験の結果、温湿度条件によって、帯電電荷量が異なることが分かった。また、トナー落下についても、温湿度条件において発生の有無が異なり、トナーの帯電電荷量が−5[μC/g]から−2[μC/g]となる間に、トナーが落下する閾値があることが分かった。表1から明らかなように、現像ローラ上のトナーの摩擦帯電電荷量とトナー落下に傾向があることが分かる。
すなわち、比較例のプロセスカートリッジB2では、条件1(低温低湿:温度15℃、湿度10%)の時、および条件2(常温常湿:温度23℃、湿度60%)の時にはトナーは十分に帯電し、トナーが現像ローラから落下することはない。一方、条件3(高温高湿:温度32℃、湿度80%)ではトナーの帯電量が低下する傾向がみられ、トナーが現像ローラから落下する場合があった。
(本実施例の測定)
そこで、上記結果を踏まえ、本実施例のプロセスカートリッジB1では、上述したように、現像剤規制部であるシート部材103を現像容器110よりもマイナス極性(正規極性)に帯電させ易い材料で形成した。つまりシート部材103は、帯電系列において現像容器110よりもプラス極性側である材料からなり、現像容器110を構成するHI−PSとこすり合わせたときにプラス極性に帯電する性質を有する。
シート部材103はプラス極性に帯電することで、現像ローラ101に担持するトナーをマイナス極性に帯電する。
実際には、シート部材103として、ポリカーボネート製(PC)のシート、ポリエチレンテレフタレート製(PET)のシートおよび、金属シート(本実施例ではステンレス鋼(SUS)を使用)を利用した。これらのシート部材103を、現像ローラ101とシート座面104の間に挟ませて、それぞれ実験を行った。
本実施例におけるプロセスカートリッジB1において、シート部材103として上記各材料を採用したものをそれぞれ実験した結果が表2となる。表1と表2を比較すると、現像剤規制部にトナーを帯電しやすいシート部材103を設置することによって、比較例と比べてトナーの摩擦帯電電荷量を大きくすることが可能となったことが分かる。更に摩擦帯電電荷量の向上に伴い、高温高湿下においてもトナー落下が発生しないことを確認できた。
以上、本実施例で説明したように、現像剤規制部に、現像容器よりトナーをマイナス極性(画像形成時におけるトナーの正規極性)に帯電させやすいシート部材を設けることで、トナーへ適切な電荷を付与し、よりトナー飛散を抑制できるようになった。
(変形例)
次に、図13(a)、(b)において本実施例の変形例を2つ図示する。図13(a)に示すように、本変形例では、現像容器110の座面部(固定部)110bに現像剤規制部となる、現像剤規制部材114をはめ込み、固定したことを特徴とする。また、図13(b)に示すように現像剤規制部115を固定部110bに固定したことを特徴とする。現像剤規制部材114は、現像ローラ101と座面部110bに挟み込まれる位置に配置される。すなわち、現像剤規制部材114は現像ローラ101との接触部の反対側を座面部110bに支えられる。また現像剤規制部115は、現像ローラ101との接触部の反対側に設けられた被固定部115bが座面部110bに差し込まれ、固定される。
現像剤規制部材114、115は、現像容器110よりも帯電系列においてプラス側にある材料(プラスに帯電しやすい材料)で形成され、トナーをマイナス極性(画像形成時におけるトナーの正規極性)に帯電させやすい部材である。
本変形例の現像剤規制部に設けられた現像剤規制部材114,115は剛性を有しており、可撓性のあるシート部材103(図10参照)と比べ、現像剤を規制する位置が安定する特徴がある。
なお以上に述べた構成は、一例であって本発明はこれに限られたものではない。たとえば、本実施例では、シート部材103としてトナーをマイナス極性に帯電させやすい材料のものを用いた。これは本実施の説明で用いた画像形成システムが、トナーをマイナス極性に帯電することで画像を形成する構成だからである。画像形成にプラス極性に帯電したトナーを用いる画像形成システムにおいては、トナーを現像容器よりもプラス極性に帯電させやすいシート部材を選択することで、同様の効果を得られる。
現像剤規制部によってトナーを確実に正規極性に帯電させるためには、現像剤規制部が現像容器の現像剤収容室より、トナーの正規極性とは逆極性に帯電しやすければよい。つまり帯電系列において、現像剤規制部は、現像剤収容室よりも、トナーの正規極性とは逆極性側にある材料で形成されるとよい。
〔実施例4〕
実施例3において、現像剤規制部に、トナーに摩擦帯電電荷量を与え易いシート部材等を用いることで、現像容器の枠体と現像ローラとの当接のみでトナーを帯電させる構成に比べ、トナーを効率よく帯電させることが可能となった。
一方、本実施例では、現像容器に別材質の部材を固定する代わりに、二色成形やインサート成型を用いて、現像剤規制部を現像容器と一体的に成型する構成について説明する。本実施例においても、トナーを現像剤規制部において適切に帯電させる現像装置、プロセスカートリッジを提供することが可能になる。
初めに、本実施例で用いる構成を図14、図15と図16とを用いて説明する。なお前記実施例3と構成が同様な部分に関しては、説明を省略する。
図14はインサート成型と呼ばれる成形手段を説明する説明図である。図14(a)に示すように、金型601と金型602などの型内に、現像剤規制部となるインサート部材603を設置する。本実施例の場合、一例として金属シートであるSUS板をインサート部材603として設置した。
金型601には樹脂などを金型内に注型するために注型口604が設けられている。注型口604は図14に示す場所に設けられると限られるわけではなく、注型する樹脂の粘性や成形する部材の大きさなどによって、最適化された場所や数を選択することができる。
図14(b)のようにインサート部材603を設置し、金型601と金型602を、合わせ注型する樹脂が金型内に十分に流れ込む程度に加熱し、注型口604より樹脂を注入する。図14(c)のように十分に樹脂の注型が行われたら、金型を冷却しながら、金型601と金型602を再度分離させる。その際、インサート成型された樹脂部材は金型より引き離されて、現像容器および現像剤規制部となる部材が製品に近い形(図14(d)参照)で得られる。その後、注型口の残りなど余分な部分605を切断し、最終的な成形部品を得る。このようにインサート成形を用いることで、インサート部材603からなる現像剤規制部が現像容器の枠体607と一体的に成形される。
一方、現像剤規制部を図15に示すように二色成形やダブルモールドと呼ばれる成形手段を用いて成形することもできる。
図15(a)に示すように、金型701と金型702などの型を合わせ、図15(b)に示すように注型口710より樹脂を注型する。この際、金型701と金型702により形成される第一段階の成形部材は、異なる材質としたい箇所(現像剤規制部となる箇所)703が除かれた状態で得られる。その後、図15(c)に示されるように金型702を外し、現像剤規制部とすべき箇所にのみ樹脂を注型可能な金型704を図15(d)に示すように金型701と合わせる。その後、図15(e)に示すように、注型口710より注型した樹脂とは異なる材質の樹脂を注型口709から注型する。
これにより成形された部材は、現像容器の現像剤収容室を形成する樹脂705と現像剤規制部となる樹脂706の2種類を成形した部材となる(図15(f)参照)。
得られた成形部材は、注型口の内部に残った余分な部分707及び708を切断し製品の形状とすることができる。このように、二色成形によっても、現像剤規制部(図15の樹脂706)と、現像容器(図15の樹脂705)が一体的に形成できる。
なお本説明で用いた金型704については説明を分かりやすくするために、現像ローラと当接する現像剤規制部の当接面が形成される位置に注型口709を設置した。しかし、現像ローラと当接する当接面は、現像ローラのトナー層を均一にコートするために重要な部分であるため、高い面精度が必要とされる。そのため、注型口709の設置場所は、現像剤規制部の当接面から離れた場所とすることが望ましい。
以下、図15で示した二色成形を用いて、現像容器および現像剤規制部を成形した場合を例に本実施例の説明を行う。
本実施例では現像剤規制部となる樹脂706としてPET(ポリエチレンテレフタレート)製樹脂を選択した。また現像容器の主要部分(現像剤収容室となる部分)を形成する樹脂705にHI‐PS(ハイインパクトポリスチレン)を選択した。すなわち現像容器のうち、現像剤規制部は、現像剤収容室よりも、帯電系列がプラス極性側であって、トナーをマイナス極性(正規極性)に帯電しやすい材料が採用されることになる。
本実施例における、トナーの帯電量と、トナー落下の有無を示した結果が表3である。実験の手法については、前述の実施例3で行ったものと同様である。
なお参考のため、本実施例に加えて、現像剤規制部にPETからなるシート部材を用いた構成(実施例3で示した構成。図5参照)で実験した結果を載せてある。
本実施例においても、前記実施例3の構成(現像剤規制部にPETからなるシート部材を設ける構成)と同様の結果を得ることができた。すなわち、二色成形によって現像剤規制部を形成した場合もトナーを適切に摩擦帯電させるために十分な効果が得られた。
さらに、本実施例では、現像剤規制部が現像容器の枠体に対し相溶した形で固定されているため、現像剤規制部を安定して設置できる。
〔実施例5〕
前記実施例3および4において、現像剤規制部の材料をトナーを帯電させ易い部材に変更することによる効果および手段を説明してきた。
本実施例では、前記実施例3、4の構成をさらに発展させ、画像形成領域の端部においてトナーが過剰帯電することを抑え、画像不良を確実に抑制することを目的とする。
低温低湿環境下で大量の印刷を短時間に行った場合に、記録紙(記録媒体)の端部余白にトナーが付着してしまう可能性がある。これは、現像ローラの長手方向の端部に位置するトナーは、画像形成に使用されにくく、現像剤規制部に帯電され続けてしまうからである。つまり現像ローラの端部においてトナーが過剰に帯電されると、現像ローラから感光ドラムの非画像形成領域(本来トナー像を形成しない領域)に転移し、最終的に記録紙に付着してしまう可能性がる。
特に、現像ローラの端部には、現像剤が現像容器から外部に漏れ出ないように、シール部材が接触することで、現像容器と現像ローラの隙間を埋めている。このシール部材が現像ローラに接触する位置より外側ではトナーは画像形成に利用されることがほぼない。つまりシール部材より外側でトナーが現像ローラに担持されると、担持され続け過剰に帯電されやすくなる。
そこで本実施例では、現像剤規制部において、現像ローラの端部と当接する領域を、現像ローラの中央部と当接する領域より、トナーを帯電させにくい材料で形成した。これにより現像剤規制部がトナーに与える電荷を適切にコントロールして、現像ローラの端部に担持されるトナーが過剰帯電されることを抑制する。
以下図16を用いて、本実施例における現像剤規制部804の構成を説明する。本実施例では、現像ローラ101の長手方向において、現像剤規制部804の中央部804aをPETで形成し、現像剤規制部804の端部804b、804cを現像剤収容室と同じHI‐PSで形成した。
現像ローラ101において、その長手方向の中央部に位置し、803で示される領域は現像剤収容室からトナーが供給されるトナー供給領域である。
トナー供給領域803の両端側には現像ローラ101にはシール部材(不図示)が接触する。またシール部材が接触する位置から外側には現像ローラの端部領域801及び802がある。
トナー供給領域803より外側に位置する端部領域801,802には、現像容器からトナーは供給されず、トナーをほとんど担持しない。しかし一度、端部領域801および、端部領域802にトナーが担持されると過剰に帯電される場合がある。
そこで図16に示すようにトナー供給領域803には、PETで形成した現像剤規制部の中央部804aを当接させる一方、端部領域801、802にはHI−PSで形成した現像剤規制部の端部804b、804cを当接させた。HI−PSは帯電系列において、PETよりも、マイナス極性側の部材である。つまりHI−PSはPETよりもトナーをマイナス極性に帯電させにくく、現像ローラの端部でトナーが過剰に帯電することを抑制することができる。これにより過剰帯電したトナーが、記録紙の端部に付着してしまう現象を抑制する。
試験によって本実施例の効果を確かめたので、以下その結果を説明する。試験では、上記した現像剤規制部804を採用したプロセスカートリッジを画像形成装置に装着し、この画像形成装置によって連続して記録紙に画像を印刷した。印刷した記録紙を確認し、記録紙の端部にトナーが付着するか否かを判定した。
画像形成装置の動作条件として、感光ドラムを回転させるプロセススピードを周速200mm/secとし、記録紙に画像を印刷させるスピードを1分あたり30枚とした。記録紙にはA4サイズの紙を用い、印刷する画像には、4ドット幅の横ラインを、100ドットのピッチで並べた600dpiの解像度の画像を用いた。記録紙において画像が印刷される領域の比率、すなわち印字率は4%となる。
連続して印刷した記録紙の枚数ごとに、記録紙の端部にトナーが付着するか否かを判定したものが表4である。○が記録紙にトナーが付着されなかった場合、×が記録紙にトナーが付着した場合ある。
なお、本実施例に対する比較例として、図17に示すように、現像剤規制部904の全域をPETで形成したプロセスカートリッジを用いて、同様の条件で試験を行ったので、本実施例とあわせて試験の結果を表4に示す。
表4から分かるように、現像剤規制部904(図17参照)を全てPETで形成した比較例では1600枚以上の記録紙を連続して印刷した場合に、記録紙の端部にトナーの付着(転移)が見られた。一方、本実施例(図16参照)では1800枚の印刷に渡って記録紙へトナーが付着することを抑制できた。
また、試験前と、記録紙1200枚印刷時において、現像ローラの中央部と、端部とに担持されたトナーの帯電電荷量を測定した結果が表5である。
表5に示すように、比較例で示した構成では、記録紙を1200枚印刷することで、現像ローラの端部に担持されるトナーの帯電電荷量が非常に高くなったことが分かる。これに対し、本実施の構成では、試験前と1200枚の記録紙を印刷した後とで、現像ローラの端部に担持されるトナーの帯電量に変化がほとんどなかった。また、現像ローラの中央部と同じ程度の帯電電荷量を得ていることが確認できた。
本実施で説明した構成は一例にすぎない。現像剤規制部の材質の組み合わせとしてPETとHI‐PSを用いて説明したが、この限りではない。たとえば、現像剤収容室をHI‐PSで形成した現像容器において、現像剤規制部の中央部をPCによって形成する場合には、現像剤規制部の端部をPCよりもトナーに対する帯電性の低いPETによって形成しても効果がある。
すなわち、現像剤規制部の端部を、帯電系列において、現像剤規制部の中央部よりも、トナーの正規極性側にある材料で形成すると良い。
また、現像剤規制部の材料を切り替える場所については、画像に影響の及ばない範囲内であれば、どのような場所でもよい。本実施例では記録用紙にA4サイズを採用する場合を基準にして、現像剤収容室の中央部804aと端部804bの位置を決定したが、それに限られたものではない。
〔実施例6〕
以下、別の実施例について説明する。
上述の実施例1等では現像剤担持体が現像容器に対し変位可能な構成であるが故に、現像剤担持体が回転に伴って揺動し、現像剤担持体の軸線が設計時に狙った向きに対して傾いてしまう可能性が考えられる。このように現像剤担持体が揺動すると、現像剤担持体の長手方向における端部は、現像剤規制部が設けられた位置から移動してしまう。この結果、現像剤担持体の端部で現像剤を安定的に規制することが出来なくなる可能性がある。その結果、画像両端でカブリや画像濃度ムラといった問題が発生してしまうことがある。
よって、現像剤担持体が現像容器に対し変位可能であり、現像剤規制部に現像剤担持体を加圧することで、現像剤担持体上の現像剤を規制する構成においては、現像剤担持体の揺動を抑制することが重要となる。本実施例では、現像剤担持体の搖動を規制する移動規制部30を備えたことを特徴とする。なお以下の説明においては、実施例1と同様の構成については同様の符号を用いて説明する。また実施例1と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図18は図3における(7)−(7)線矢視の断面図(縦断正面図)、図19は図3における(8)−(8)線矢視の断面図(横断左側面図)である。図20の(a)は現像スリーブ6とマグネットローラ15のアセンブリの一部切り欠き斜視図、(b)は(a)の部分的な拡大斜視図である。(a)には後述する現像剤規制部16及び現像スリーブ6の両端部(現像スリーブ6の軸線方向における一端側と他端側)を規制する左右側の移動規制部30L・30Rも合わせて記載している。マグネットローラ15はスリーブ部6aの内径よりも少し小さい外径を有する。マグネットローラ15の軸部15aの左右の軸端部15aL・15aRはそれぞれ現像スリーブ6の左右の軸部6cL・6cRに挿通されている。軸端部15aL・15aRの外径は軸部6cL・6cRの内径とほぼ同じであり、軸部6cL・6cRは軸端部15aL・15aRに回転可能に支持される。即ち、現像スリーブ6はマグネットローラ15の外回りを同軸に回転可能である。
軸部15aの左側の軸端部15aLは、図20の(b)ように、左側の軸部6cLから外方に突出している。そして、その突出している軸端部15aLの端部にはキー15bLを具備させてある。左側の軸部6cLから外方に突出している軸端部15aLのキー15bLは現像容器14の左側板14cL内面側に具備させた上下方向のキー溝14hLに嵌係合されている。また、右側の軸部6cRは現像容器14の右側板14cRに具備させた上下方向の長穴14j(図18)から右側板14cRの外方に外方に突出させてある。そして、その突出した軸部6cRに同心一体に同心一体に駆動ギア17が配設されている。
図21は右側の軸受け機構18Rの斜視図である。左側の軸部6cLから外方に突出している軸端部15aLのキー15bLは現像容器14の左側板14cL内面側に具備させた上下方向のキー溝14hLに嵌係合されている。そして、右側の軸部6cRは現像容器14の右側板14cRに具備させた上下方向の長穴14jから右側板14cRの外方に外方に突出している。従って、マグネットローラ15を含む現像スリーブ6はマグネットローラ15が回転止めされた状態で上下方向への移動が許容される。そして、現像スリーブ6は駆動ギア17に回転力が伝達されることで、回転止めされているマグネットローラ15の外回りを回転可能である。
実施例1と同様、本実施例でも軸線方向を長手とする現像スリーブ6の左右両端側はそれぞれガイド部材18bL・18bRに沿って上下方向にスライド移動可能である左右の可動の軸受け部材18aL・18aRに支持されている。そして、左右の可動の軸受け部材18aL・18aRをバネ部材19L・19Rで押し上げ付勢することで、現像スリーブ6を現像剤規制部16に対して加圧する方向Aに変位可能である。
それが故に、ある程度は軸受け部材18aL・18aRと現像容器側のガイド部材18bL・18bRとの嵌合部に隙間(ガタ)が必要である。設計をする際には、このガタを極力少なくするように配慮はするものの、部品の寸法のバラツキ等によって、比較的ガタが大きくなってしまうことがある。
このガタがあることで、現像スリーブ6が回転に伴って、図22の模式図に示すように、X1、X2方向(現像スリーブ6の軸線と直交する平面(図22)において、矢印A方向と交差する方向)に揺動することがある。現像スリーブ6が揺動すると、特に現像スリーブ6の長手方向両端部は、現像剤規制部16が設けられた位置から移動してしまう。この結果、現像スリーブ6の長手方向両端部において、トナー5の規制が不安定となり、現像スリーブ6上のトナー5の乗り量が多くなってしまう。これによって、画像両端部において、カブリや濃度ムラといった問題が発生し、画像品質の低下を招いてしますことがある。
そこで、本発明では、図23、図18、図20、図21に示すように、現像スリーブ6の長手両端部の揺動(移動)を規制する移動規制部30L・30Rを現像装置4の現像容器14に設けた。これにより、可動の軸受け部材18aL・18aRと現像容器側のガイド部材18bL・18bRとの嵌合部にガタがあっても、現像スリーブ6の揺動を抑えることが可能となる。その結果、現像スリーブ6上のトナー5の乗り量が安定する。
本実施例では、移動規制部30L・30Rは、現像剤規制部16の外側かつ現像スリーブ6の両端部の現像剤非供給領域幅W6e内に配置している。図21に示されるように、移動規制部30L・30Rはバネ部材19L、19Rが現像スリーブ6を加圧する方向(矢印A方向)において、現像スリーブ6よりも下流側にあって、バネ部材19L、19Rによって加圧された現像スリーブ6が押圧される。図24は現像剤規制部16と移動規制部30L・30Rを設けた、現像容器14の天井板14gの内面側を見た部分的斜視図である。移動規制部30L・30Rは、それぞれ、現像スリーブ6の両端部の上面部を受け止める現像スリーブ受け面30aを有する。本実施例においてその現像スリーブ受け面30aは、図25の(a)の模式図のように、現像スリーブ6の曲率に合わせた円弧形状面にしてある。つまり現像スリーブ受け面30aは現像スリーブ6の周面に沿った曲面部である。
現像スリーブ6は左右の軸受け機構18L・18Rにより上方(加圧方向A)に押し上げ付勢されることで、スリーブ頂面が現像剤規制部16の長手に沿って所定の押圧力で当接する。また、現像剤規制部16の長手方向左右の外側において現像スリーブ6の左右両端部側の上面部が左右の移動規制部30L・30Rの円弧形状面である現像スリーブ受け面30aに嵌り込んで押圧されて受け止められた状態になる。
本実施例においては上記のように現像スリーブ6の外周面に沿った円弧形状面の現像スリーブ受け面30aを有する左右の移動規制部30L・30Rにて現像スリーブ6の左右両端部側の上面部を嵌合的に当接させて受け止めさせている。これにより、現像スリーブ6を図25の(b)や(c)のように前後方向に揺動しにくくして、即ち現像スリーブ6の長手両端部の揺動を規制して現像スリーブ6の揺動を低減している。つまり、現像スリーブ6の軸と直交する平面において、加圧ばね19の加圧方向(図22に示す矢印A方向)と交差する方向(図22に示す矢印X1、X2方向)に、現像スリーブ6が移動するのを抑制できる。
移動規制部30L・30Rは、現像スリーブ6の回転時に、現像スリーブ6の担持部6a表面と摺擦するので、このとき受ける摩擦力が小さくなるように滑らかな部材を用いることが好ましい。具体的には、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのプラスチックが好ましい。
移動規制部30L・30Rは現像剤規制部16の外側に配置することで、現像スリーブ6上のトナー5の乗り量に影響を与えずに、現像スリーブ6の揺動を抑えることができる。現像スリーブ16の両端部に配置することで、現像スリーブ6の揺動を効果的に抑えることができる。
移動規制部30L・30Rは、現像容器14と一体成型で成型することができるが、より耐摩耗性の良い材質の部材を2色成型もしくは、別部材として取り付けても良い。これによって、高寿命の現像装置に対応できる。
〔実施例7〕
上記の実施例6においては、移動規制部30L・30Rの現像スリーブ受け面30aの形状は現像スリーブ6の曲率に合わせた円弧形状とした。この構成では、移動規制部30L・30Rと現像スリーブ6は1点での接触となる。現像スリーブ6の揺動を抑えることはできるが、現像剤規制部16が延びる方向(現像剤規制部16の長手方向)に対して現像スリーブ6の軸線が多少傾いてしまう可能性がある。
本実施例7においては、図26の模式図のように、移動規制部30L・30Rの現像スリーブ受け面30aの形状をV字型とした。この構成では、現像スリーブ6の軸線と直交する平面(図26)において、移動規制部30L・30Rと現像スリーブ6は異なる2点(2か所)P・Qで接触する。なお現像スリーブ6の回転方向において、点Pは現像剤規制部16と現像スリーブ6の接触部に対して下流側にある点であり、点Qは上流側にある点である。これにより現像スリーブ6の揺動をより確実に抑えることが可能である。つまり、現像剤規制部16に対する現像スリーブ6の長手方向両端部の位置をより確実に決めることができる。これによって、長手方向における現像スリーブ6上のトナー5の乗り量がより安定し、長手方向の画像ムラのない、より高品位な画像が得ることができる。