JP6242155B2 - 非破壊検査装置および非破壊検査方法 - Google Patents
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Description
この図23に示すように、センサは、被検体に強力な磁場を印加することを目的として、珪素鋼板、フェライト等の磁性体からなる励磁コア102に励磁コイル101を巻回してなる励磁器を被検体2に対向させ、その励磁コイル101を一定電圧の正弦波で励磁する。励磁コイル101の内側には、検出コイル104を配置している。
しかも、検出信号が小さくなると、センサの温度特性の影響をより強く受けるようになり、測定値が温度変化により漂動するという欠点があった。即ち、センサの巻線に使用されるホルマル線等銅線の電気抵抗の温度係数の影響を相対的に大きく受けるようになり、測定装置として温度的に不安定になるという欠点があった。
そこでなされた本発明の目的は、センサの被検体に対向する端面と被検体との距離、即ちリフトオフが大きい状態であっても被検体の探傷を精度よく行うことのできる非破壊検査装置および非破壊検査方法を提供することである。
すなわち、本発明の非破壊検査装置は、被検体に対向した第1のコイルと、前記第1のコイルに電磁的に結合した第2のコイルと、前記被検体に対向した第3のコイルと、前記第1のコイルを交番電圧で励振し、前記第2のコイルに発生する電圧と前記第3のコイルに発生する電圧との差である被測定信号の振幅および位相を、前記第1または前記第2のコイルの電圧を基準信号として検出する測定処理部と、を備えることを特徴とする。
図1は、本発明に係る非破壊検査装置の第1の実施形態を示す図である。図2は、非破壊検査装置を構成するセンサを示す図である。
図1、図2に示すように、非破壊検査装置は、センサ1と、測定装置(測定処理部)4と、を備えている。
まず、センサ1の検出コイル104と参照コイル105の発生電圧の差を被測定信号として出力する出力端子107b、108bの電圧が、マルチプレクサー403に入力される。
一方、励磁コイル101の端子106a,106b間の電圧も基準信号としてマルチプレクサー403に入力される。
コンピュータ405は、入力された被測定信号および基準信号を、高速フーリエ変換(FFT)により信号処理し、処理結果を表示記録器406に出力する。
測定装置4における高速フーリエ変換(FFT)による演算処理の結果、個々の正弦波の振幅と位相とが同一測定点位置で同時に得られる。
これらは、互いに無関係に変化するわけではなく、互いに相関性をもって変化している。従って各々単独で測定評価するよりも、振幅および位相を変数とし、被検体2の厚さDを推定する近似式を用いて測定評価するのが有効である。
被検体2の厚さDの近似式は線形近似とし、数式(21)を用いて説明する。振幅比をx,位相差をy、被検体の厚さをDとすれば、x,yは本来Dの関数であるが、Dをx,yの逆関数として数式(21)に示す線形式として定義する。
係数a,bおよび定数項cは、厚さの異なる3点の較正点を測定し、その測定値に基づき、数式(22)の如き連立方程式を解くことにより求める。
その変動要素の大きな要素としては、リフトオフを用いるのが有効である。これには、被検体の厚さの異なる2点、B、C点をとり、その部分の厚さを物理的に測定し、D2、D3とする。
厚さD2のB点でリフトオフを微小変化させた点をA点とすれば、D1=D2であるので、数式(23)の如き連立方程式が成立する。
このようにして、リフトオフ変化の影響を抑えて、被検体2の厚さを検出することが可能となる。
角度の相違した一般的な二つの三角関数の和は公式(1)、(2)、(3)で表される。
従って、励磁コイル101の巻線の抵抗の温度による変化は、参照コイル105、検出コイル104にはほぼ同等に作用するので、これらは相殺されることになり、より安定な測定が可能となる。
このようにして、リフトオフが大きい状態であっても、被検体2の肉厚変化、内面傷等による信号の変化分を精度よく検出することが可能となり、検査精度を高めることができる。
次に、本発明にかかる非破壊検査装置および非破壊検査方法の第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図3は、第2の実施形態に係る非破壊検査装置を示す図である。図4は、非破壊検査装置を構成するセンサを示す図である。
図3、図4に示すように、本実施形態における非破壊検査装置は、上記第1の実施形態で示した構成に対し、検出コイル104と参照コイル105の極性により逆接続してその差をとる検出出力端子107b,108b以外に、参照コイル105の出力そのものを取り出す端子108aが設けられている。そして、端子108a,108bは、端子108a,108b間の電圧を基準信号としてマルチプレクサー403に入力するように電気的に接続されている。
しかも、上記第1の実施形態とは異なり、第2のコイルである参照コイル105の出力電圧を基準としているので、そこに至るまでの変化、即ち巻線抵抗の温度による変化を無視することが可能となる。さらに、被検体2の厚さの違いによる変化分は、参照コイル105の変化分を相加的に取り込むことになるので、温度変化の少ない大きな検査出力を得ることが可能となる。
次に、本発明にかかる非破壊検査装置および非破壊検査方法の第3の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第3の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図5は、第3の実施形態に係る非破壊検査装置を示す図である。図6は、非破壊検査装置を構成するセンサを示す図である。
また、測定装置4は、参照コイル105の電圧を基準信号としてマルチプレクサー403に入力するようにした。さらに、測定装置4には、演算増幅器407と、抵抗R1,R2,R3からなる加算回路とが設けられている。この加算回路は、検出コイル104と参照コイル105の出力の差をとるように電気的に接続されている。なお、抵抗R1,R2,R3からなる回路そのものは加算回路であるが、参照コイル105の出力は逆極性で抵抗R2に入力されているので、実質的に検出コイル104の出力から参照コイル105の出力を減算する減算回路として機能する。また、抵抗R2は半固定とされ、引算する度合いを調節できるようにしている。
さらに、リフトオフが大きい場合であっても、温度ドリフトが少なく、被検体2の管壁厚変化に対応した大きな振幅、位相変化出力を取り出すことが可能となった。
次に、本発明にかかる非破壊検査装置および非破壊検査方法の第4の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第4の実施形態においては、上記第3の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図7は、第4の実施形態に係る非破壊検査装置を示す図である。この非破壊検査装置は、固定的な位相差Pの影響を除去することができる。ここでは、検出コイル104の出力信号が参照コイル105の信号より位相Pだけ遅れている場合について説明する。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
図8〜図10に本発明の他の実施形態を示す。
例えば、図8に示すように、励磁コイル101、これに電磁的に結合した参照コイル105、被検体に対向した検出コイル104の全てを空芯コイルとすることができる。励磁コイル101と参照コイル105は、例えば合成樹脂製の曲げやすいパイプに巻回したもので、検出コイル104の電圧と参照コイル105の電圧との差の電圧をとるごとく電気的に接続されている。
このように、励磁コイル101、参照コイル105、検出コイル104が空芯であるので、磁性コアを使用した場合のように磁極を生ずることがない。したがって、リフトオフに対する変化がゆるやかとなる。
このような構成によれば、簡易な検査に利便性がある。
このような構成によれば、被検体2の中心軸線に近い内部傷の探傷に有効である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
上記第1の実施形態で示した構成について、検証を行ったので、その結果を以下に示す。
被検体2を、図1に示した非破壊検査装置により測定した。
被検体2は保温材3で覆われている。
被検体2は、磁性を有する炭素鋼管65ASGPで、外直径約76.3mm、肉厚4.2mmとし、一部を肉厚2.4mmになるよう内側を切削加工した。
保温材3は厚さ20mmのグラスウールとした。保温材3の外表面は厚さ0.1mmの熱反射と防露を兼ねたアルミ箔で覆った。
そして、被検体2の外表面とセンサ1の被検体2に対向する面の距離、即ちリフトオフは、可動空間を含めて23mmとした。
また、参照コイル105として、直径0.2mmのホルマル線を640回巻回した。
検出コア103は、断面積0.75平方cm、磁路長10cmの積層方向性珪素電磁鋼板を使用した。検出コイル104は、直径0.2mmのホルマル線を両脚合計で2400回巻回した。
また、比較例として、参照コイル105の出力との差をとることなく、検出コイル104の出力をそのまま測定した結果を図13,図14に示す。これらのグラフは比較を容易にするため、縦軸の幅を振幅、位相ともにそれぞれ同一にしてある。
図12、図14は位相差(radian)の測定結果を示す。
図11〜図14において、前半は被検体の管壁厚4.2mmの部位を測定し、後半は管壁厚2.4mmの部位を測定している。
表1、表2は、図11〜14の詳細データである。このデータからわかるように、参照コイル105(後述)と検出コイル104(後述)の出力の差を取って検出信号とする本実施例は、保温材上で23mmという大きなリフトオフをとっているにもかかわらず、位相差において、比較例に対し、約41倍の感度がある。
これには、コンピュータ405によりデジタル的に複数の周波数の正弦波の合成信号を発生させ、それをデジタル・アナログ変換器401によりアナログ信号に変換して電力増幅器402を介して励磁コイル101を励振し、高速フーリエ変換(FFT)により、各周波数ごとの振幅、位相を測定した。このとき、振幅比は周波数15Hz,位相差は周波数35Hzとして、励磁コイル101を励磁して測定を行った。
被検体の管壁厚2.4mmの時の値から管壁厚4.2mmの時の値を引いた結果の振幅比を図15に、位相差を図16に示す。図17は図16の縦軸を拡大して一部を示した図である。
また、図16に示すように、本実施例は、比較例にくらべて極めて大きな位相差の変化を示し、35Hz付近に位相差変化のピークがあることを示す。
即ち、振幅比の変化最大の周波数と位相差変化の最大の周波数は必ずしも一致しないことが明らかである。したがって、振幅比、位相差変化のそれぞれ最良の周波数を選択することが有効である。つまり、振幅比と位相差を異なる周波数とすることにより、被検体の管壁厚の変化による検出信号をより大きく出来る。
また、図17においても参照コイル105と検出コイル104の被検体管壁厚の違いによる変化分が逆であり、差をとる本実施例の場合は相加的になることが明らかである。
また、比較例として、図23に示すように、検出コイル104のみの出力を使用して、被検体2の管壁厚を検出した。
なお、被検体2の管壁厚は、4.2mmと2.4mmの2通りとした。
図18,図19に示すように、いずれの管壁厚においても検出コイル104のみの従来手法では検出結果バラツキが大きく、温度変化等によるドリフトも大きい。
これに対し、実施例では、バラツキが少なく、ドリフトもごく僅かである。
図20は較正点と測定値を示すベクトル図である。図21は図20におけるB較正点付近の拡大図である。図22は図20におけるC較正点付近の拡大図である。
図20に示すように、B較正点は、リフトオフ23mm,管壁厚4.2mm,C較正点はリフトオフ23mmで、管壁厚2.4mmで較正している。A較正点は、B較正点と同一の管壁厚であるが、リフトオフを僅かに小さくし、23−0.2=22.8mmで較正している。したがって、BC直線上またはその延長上に管壁厚が分布していることとなる。
そして、図21、図22に示すように、連立方程式の性質上、各測定値の位置からAB直線に平行に直線を引き、BC直線との交点を、各測定値より推定した管壁厚推定値とすることができる。
2 被検体
4 測定装置(測定処理部)
101 励磁コイル
102 励磁コア(コア)
103 検出コア(第1のコイル)
104 検出コイル(第3のコイル)
105 参照コイル(第2のコイル)
Claims (4)
- 被検体に対向した第1のコイルと、
前記第1のコイルに電磁的に結合した第2のコイルと、
前記被検体に対向した第3のコイルと、
前記第1のコイルを交番電圧で励振し、前記第2のコイルに発生する電圧と前記第3のコイルに発生する電圧との差である被測定信号の振幅および位相を、前記第1または前記第2のコイルの電圧を基準信号として検出する測定処理部と、
を備え、
前記測定処理部は、前記基準信号と前記被測定信号とが入力されるステップと、
入力された前記被測定信号と前記基準信号との振幅比および位相差を、高速フーリエ変換により求めるステップと、
前記振幅比および前記位相差を変数とする連立方程式を立て、前記被検体の複数点の既知の厚さとその各点での振幅比および位相差の測定値により前記連立方程式の各係数を求めるステップと、
求まった各前記係数と未知の点での振幅比および位相差の測定値とから、該未知の点の被検体の厚さを推定するステップと、
を実行することを特徴とする非破壊検査装置。 - 前記連立方程式の各係数を求めるステップでは、前記被検体の特定較正点で前記被検体と前記第3のコイルとの間の距離であるリフトオフを変化させることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査装置。
- 前記測定処理部は、前記被測定信号と前記基準信号との振幅比の測定と、前記被測定信号と前記基準信号との位相差の測定とを、互いに異なった周波数で前記第1のコイルを励磁して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の非破壊検査装置。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の非破壊検査装置における非破壊検査方法であって、
前記第1および前記第3のコイルを前記被検体に対向させた状態で、前記第1のコイルを交番電圧で励振し、
前記第1のコイルを励振する交番電圧または前記第2のコイルに発生する電圧と、前記第3のコイルに発生する電圧と前記第2のコイルに発生する電圧の差の電圧を前記測定処理部に入力し、
前記測定処理部で、入力された前記交番電圧と前記差の電圧とについて、高速フーリエ変換によりそれぞれ振幅および位相を求め、
前記交番電圧を基準信号とした前記差の電圧との振幅比および位相差を検出することを特徴とする非破壊検査方法。
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