JP6551885B2 - 非破壊検査装置及び非破壊検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属構造物の腐食や亀裂を磁気的に検査する非破壊検査装置及び非破壊検査方法に関する。
橋梁など鉄鋼材料で作られたインフラ構造物は、作られてから長い年月が経ったものがその安全性確保が現在大きな社会問題となっている。このため、簡単にしかも精度良い検査方法が望まれている。
検査方法には、超音波検査や、x線検査、打音検査などがあり、そのなかでも簡易に測定でき、検査結果を定量化できるものとして渦電流探傷法がある。これは金属性の対象物に交流磁場を印加して、渦電流を発生させる方法である。対象物に傷などがあると渦電流の分布が変化して、渦電流が作る磁場が変化するので、その変化量を計測している。この方法は表面探傷法とも呼ばれ、表面の傷の検査に多く用いられている。
表面探傷法においては、交流磁場が表皮効果のために深くは浸透しないため、表面の傷の検査に多く用いられることとなっている。表皮効果による磁場の浸透は、周波数が低いほど深くすることができる。さらに、最近では磁場を検出するセンサとして検出コイルの変わりに磁気センサを用いることで、低周波計測による深部の探傷が行われ始めている。
深部の探傷として、たとえば鋼板で囲まれて、外部からでは見えない内部側の腐食を検査する方法として、印加コイルを取り付けたヨーク材を鋼板に当てて鋼板内部に磁場を生じさせ、表面から漏れてくる表面に平行な磁束成分を磁気センサで計測する磁束漏洩法を報告した。この方法により、厚みのある鋼板の裏面側の腐食を検知できることを報告した(たとえば、特許文献1参照。)。ここでは磁界強度の変化だけでは判別が難しく、位相を含めた磁場強度に変換することにより、厚い鋼板の裏側の信号変化を捉えることが可能となった。
一方、ほかの方法として厚い金属板材を計測する方法として、印加コイルと磁気センサからなる渦電流プローブにおいて1Hz前後から数kHzまでの周波数を走査し、その磁気応答における強度と位相による磁気ベクトルを実軸と虚軸のグラフにプロットした応答曲線(以下磁気スペクトルと呼ぶ)によって調べることを報告した(たとえば、非特許文献1参照)。この方法では、厚みによって磁気スペクトルが変化することから、この応答曲線の違いにより判別することができる。この磁気スペクトルを作成することによって、測定対象がアルミニウムや銅などの非磁性体であるか、鉄などの磁性体であるか、また、着磁しているかなどの磁気的特性の違いを判別できた。ここで、厚みの違いを見る方法として、磁気スペクトルにおいて位相情報を抽出し、周波数に対する位相変化のグラフを書くことによって、わかりやすいことを報告した。さらに、磁性体を計測する場合には、位相として印加コイルの参照信号に対する遅れ位相をとることを報告した(たとえば、非特許文献2参照。)。
一方、磁気センサを用いないで従来の印加コイルと検出コイルが同じものを使った計測においても、電圧駆動により対象物との相互インダクタンス変化による検出コイル自身のインピーダンスの周波数変化を実軸(抵抗分)と虚軸(リアクタンス分)にプロットしたインピーダンス曲線はよく知られている(たとえば、非特許文献3参照。)。
また、印加コイルと検出コイルを別に設けたものでの計測された信号の実軸と虚軸の図にプロットして、この軌跡により板厚ではないが、焼結金属の品質判断ができることが報告されている(たとえば、特許文献2参照。)。
また、信号強度だけの周波数応答特性を報告しているものもある。ここで、検査のときは時間のかかる周波数応答特性曲線を求めるものでなく、欠陥の深さにより周波数応答曲線が異なるので、任意の2つの周波数での信号強度の差を捕らえることによって欠陥の深さを判定する方法が報告されている(例えば、特許文献3参照。)。
周波数を広く走査するためには時間がかかるので、時間短縮する方法として、パルス磁場を印加し、得られた信号をフーリエ解析して各周波数における磁場強度と位相の変化を捉える方法が報告されている(例えば、特許文献4参照。)。
特許第4487082号公報 特開2011-85502号公報 特開2012-68061号公報 特許第3924626号公報
Keiji Tsukada, et al., Review of Scientific Instruments 77, pp063703-1-6 林孝之 他,日本非破壊検査協会,平成21年度春季大会,公演概要集,pp203-204 渦電流探傷試験実技参考書,日本非破壊検査協会pp21-24 (2008)
コイル用いて電圧駆動して得られるインピーダンス曲線では、非磁性の金属に対しては薄いものならば厚みを検査できるが、高周波を用いるために表皮深さの制限から数cmになる厚いものは計測できなかった。また、対象が鋼板のように磁性体の場合には、同じ板厚でも透磁率の違いや、磁化の状態の違いによって渦電流による磁気信号への影響が大きく、厚み計測が困難であった。
非磁性のみならず磁性体の厚み計測を可能とした方法として、電流駆動させた印加コイルにより磁場を印加し、発生した渦電流による磁場を磁気センサを用いて計測する方法によって得られる磁気スペクトルを報告した。しかし、この方法では、周波数を走査する時間がかかる問題があり、また、その得られたスペクトル曲線が厚みによって変化することはわかったが、どのように曲線の違いを扱うのか不明であった。
また、計測の高速化としてパルス磁場を印加して応答磁場をフーリエ解析する方法も報告したが、この方法では、数Hz以下の低周波を含むと信号のSNが悪く、パルスを何回も加算する必要があり、時間短縮の効果がそれほど大きくなかった。
さらに、磁気スペクトルにおいて、厚みを見るパラメータとして強度ではなく、得られた信号そのものの位相を見る方法では、特に磁性体の場合において、鋼板の厚みが厚くなるにつれて変化が少なくなり、判別が困難であった。
以上のことから、より高速に計測可能であって、さらに様々な厚みに対応できる計測方法が望まれていた。
本発明の非破壊検査装置では、検査対象物に磁場を印加する印加コイルと、この印加コイルに所定の周波数の交流電流を通電させる交流定電流源と、印加コイルで印加した磁場により検査対象物に誘引された磁場を検出する磁気センサと、この磁気センサの出力信号のうち所定周波数の信号を検波する検波器と、この検波器の出力信号を解析する解析器とを有する非破壊検査装置である。
特に、本発明の非破壊検査装置では、交磁気センサは低周波から感度があるセンサであって、流定電流源において、第1の周波数とした第1の交流電流と、第1の周波数よりも周波数の小さい第2の周波数とした第2の交流電流で印加コイルを駆動させ、解析器では、検波器で第1の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第1の磁場ベクトルと、検波器で第2の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第2の磁場ベクトルとのベクトルの差として得られる差ベクトルの位相成分を検出して、この位相成分から前記検査対象物の厚みを検出することとしている。
さらに、本発明の非破壊検査装置では、磁気センサを、磁気抵抗素子(MR)、磁気インピーダンス素子(MI)、超伝導量子干渉素子(SQUID)のいずれかとしていることにも特徴を有し、さらには、第1と第2の周波数は可変として、予め設定されている検査対象物の厚みに対応させた周波数の組み合わせとするとともに、検査対象物が10mm以下の厚みの鋼板である場合には、第1の周波数を10〜100Hzとすることにも特徴を有するものである。
また、本発明の非破壊検査方法では、印加コイルで検査対象物に所定の周波数の交流磁場を印加して、検査対象物に誘引した磁場を磁気センサで検出し、この磁気センサの出力信号の所定周波数成分を検波器で検波し、この検波器の出力信号を解析器で解析することで検査対象物の厚みを検出する非破壊検査方法において、磁気センサは低周波から感度があるセンサとし、印加コイルには、第1の周波数とした第1の交流電流と、第1の周波数よりも周波数の小さい第2の周波数とした第2の交流電流とを通電し、解析器では、検波器で第1の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第1の磁場ベクトルと、検波器で第2の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第2の磁場ベクトルとのベクトルの差として得られる差ベクトルの位相成分を検出して、この位相成分から検査対象物の厚みを検出するものである。
本発明によれば、差ベクトルの位相成分から検査対象物の厚みを検出することで、短時間で精度の高い検査対象物の厚み検査を可能とすることができる。検査対象物の厚み検査が可能となったことにより、例えば検査対象物が鋼板等である場合には、腐食などでの鋼板の表面ならず裏面に生じた減肉や亀裂を検知することもできるようになる。
本発明に係わる非破壊検査装置の構成図である。 各周波数における磁場ベクトルをプロットした磁気スペクトルである。 0.5Hzの磁気ベクトルを基準ベクトルとしてその差ベクトルをプロットした磁気スペクトルの板厚依存性を示した図である。(a)周波数0.5Hzから1kHzまでの周波数帯域、(b)原点付近の拡大図 本発明に係わる0.5Hz磁場ベクトルと各周波数における磁場ベクトルとの差ベクトルの位相の板厚依存性を示した図である。 本発明に係わる任意の周波数の組み合わせによる差ベクトルの位相の板厚依存性。 磁場ベクトルにおけるリフトオフ変化を示した図である。(a)磁場ベクトルの強度,(b)磁場ベクトルの位相 本発明に係わる漏洩磁束法を用いた非破壊検査装置の構成図を示す。 本発明に係わる10Hzと5Hzの周波数における磁場ベクトルの差ベクトルの位相の板厚変化を示した図である。
本発明の非破壊検査装置及び非破壊検査方法は、金属構造物の腐食や亀裂を磁気的に検査可能とした非破壊検査装置及び非破壊検査方法である。
すなわち、本発明の非破壊検査装置では、検査対象物に磁場を印加する印加コイルと、この印加コイルに所定の周波数の交流電流を通電させる交流定電流源と、印可コイルで印加した磁場により検査対象物に誘引された磁場を検出する磁気センサと、この磁気センサの出力信号のうち所定周波数の信号を検波する検波器と、この検波器の出力信号を解析する解析器とを設けている。
そして、交流定電流源では、第1の周波数とした第1の交流電流と、第1の周波数よりも周波数の大きい第2の周波数とした第2の交流電流で印加コイルを駆動させ、検波器では、検波器で第1の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第1の磁場ベクトルと、検波器で第2の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第2の磁場ベクトルとのベクトルの差として得られる差ベクトルの位相成分を検出して、この位相成分から検査対象物の厚みを検出することとしている。
なお、第1と第2の磁場ベクトルの位相の基準は、第2の周波数より小さい1Hz以下の周波数として得られた磁場ベクトルの位相を基準とすることが望ましい。また、第1と第2の周波数は可変として、予め設定されている検査対象物の厚みに対応させた周波数の組み合わせとすることで、たとえば検査対象物に減肉が生じている場合の評価精度を高めることができる。
以下において、具体的な実施例を示しながら説明する。
図1は、第1の実施例の非破壊検査装置の概略模式図を示している。この非破壊検査装置では、検査対象物である金属性の試験体1−1に印加コイル4−1で磁場を印加して、試験体1−1に渦電流を誘引させている。この渦電流が作る磁場を磁気センサ2−1で計測している。本実施例では、磁気センサ2−1は磁気抵抗素子(MR)であるが、トンネル型抵抗素子(TMR)や、磁気インピーダンス素子(MI)、超伝導量子干渉素子(SQUID)など、低周波から感度があるものであれば、なんでも使うことができる。
印加コイル4−1は、交流の定電流源3−1で駆動して、試験体1−1に一定の交流磁場を印加している。ここで周波数の異なる複数種類の磁場を印加できるように、複数の周波数を含む信号を周波数発振器5−1等で合成して定電流源3−1に入力することで、印加コイル4−1に所定の周波数の交流電流を通電している。なお、各周波数における印加電流値は、試験体1−1に同じ磁場を印加させるために同一の交流電流値としている。
本実施例では、磁気センサ2−1の近傍に、印加コイル4−1で生起した磁場が直接入ってこないようにキャンセルコイル6を設けている。なお、キャンセルコイル6は用いなくてもよいが、キャンセルコイル6を用いない場合は、磁気センサ2−1で得られた信号に、印加コイル4−1による印加磁場の信号も直接はいるので、ダイナミックレンジが狭くなる問題がある。このため、キャンセルコイル6を用いたほうが、微弱な磁場を計測することができる。
本実施例では、磁気センサ2−1は計測回路7−1に接続しており、計測回路7−1を介して磁気センサ2−1の出力信号を取り出している。
磁気センサ2−1の出力信号は、検波器に入力して、印加コイル4−1による印加磁場の周波数での検波を行っている。特に、印加コイル4−1による印加磁場は、周波数の異なる複数種類の交流磁場の合成磁場であり、周波数ごとに検波するために合成した周波数の数だけ検波器を設けて、それぞれの周波数での検波を行うこととしている。説明の便宜上、本実施例では2種類の異なる周波数を用いていることとし、2台のロックイン検波器8−1,8−2によって、第1の周波数と第2の周波数での検波を行っている。3種類の異なる周波数を用いた場合には、3台のロックイン検波器を用いることとなる。
ロックイン検波器8−1,8−2による検波では、参照信号と同位相である実数成分の信号と、90°位相がずれた虚数成分の信号を検波している。印加磁場の周波数と同じ周波数でロックイン検波した信号は、実数成分が強度、虚数成分が位相である2成分ベクトルとして見なすことができ、これを磁場ベクトルと呼ぶこととする。
ロックイン検波器8−1,8−2の各出力信号は、マルチプレクサ9−1を介して切り替えながら解析器10−1に取り込み、データ収録するとともに解析することとしている。本実施例では、解析器10−1はパーソナルコンピュータで構成している。
本実施形態ではロックイン検波器8−1,8−2を用いているが、ロックイン検波器8−1,8−2を使わなくても、磁気センサ2−1の出力信号の時間波形をAD変換してデータ収録し、解析器10−1でデジタル的に同相成分と、90°位相成分を解析することもできる。この場合にはロックイン検波器8−1,8−2が必要ないので、装置の小型化ができる。あるいは、本実施例では、印加コイル4−1による印加磁場を周波数の異なる複数種類の交流磁場の合成磁場としているが、所定の時間で印加磁場の周波数を切り替えながら測定するようにすることで、1台のロックイン検波器で対応可能としてもよい。
本実施例の非破壊検査装置はこのように構成しており、以下において本発明の非破壊検査装置の原理を説明する。
まず、試験体1−1は鋼板として、板厚の異なる鋼板を用いて印加コイル4−1による印加磁場の周波数を0.5Hzから1kHzの間で走査した際における磁気センサ2−1の出力信号の解析結果を図2に示す。
磁気センサ2−1の出力信号は、上述したように参照信号と同位相である実数成分と、90°位相がずれた虚数成分の信号として表され、実数成分は信号の強度、虚数成分は信号の位相であり、図2は横軸を実軸、縦軸を虚軸とした2次元平面として、それぞれの板厚で各周波数における磁場ベクトルを計測して描いた磁気スペクトルとなっている。ここで、磁気スペクトルは周波数を上げていくにつれ時計回りする曲線となっている。しかし、これらの曲線には特に板厚の依存性は見られず強度がばらばらである。
ここで、もっとも低い周波数の0.5Hzでの磁場ベクトルを基準磁場ベクトルとして、各周波数の磁場ベクトルから0.5Hzの基準磁場ベクトルを引いた差ベクトルを求めてプロットを描くと、図3左図となる。そうすると一見,すべてが重なっているようにみえるが、低周波領域を拡大してみると、図3右図に示すように基準磁場ベクトルとの差ベクトルを用いた磁気スペクトルには、板厚依存性がはっきりとしてきて、板厚が厚くなるにつれ内側の曲線となっていることがわかる。
すなわち、差ベクトルを用いることで、板厚の判別ができることがわかった。ただし、0.5Hzから1kHzの間で多くの周波数を走査することは、検査時間が長くなってしまうことが考えられた。
そこで、差ベクトルを用いた磁場スペクトルをさらに解析してみたところ、図4に示すように同じ周波数での各板厚において位相の相関を調べると、位相と板厚に依存性があることがわかった。
このことから、少なくとも2種類の任意の周波数の交流信号でそれぞれ得られた磁気ベクトルの差である差ベクトルを用いることで、板厚を判別できることがわかった。この差ベクトルは上述した基準磁場ベクトルを使わなくても求めることができ、最低でも2種類の周波数の交流信号による計測で、試験体1−1の板厚の検査ができ、検査時間の大幅な短縮が可能となることを示している。
特に、図4から、10mm以上の厚い鋼板の場合では高い周波数の方では10Hz以下の極低周波が必要であるが、10mm以下の薄い鋼板では周波数を上げて20Hzから50Hzの周波数での差ベクトルの方が板厚変化に対して大きな位相変化が得られることが分かった。
このことから、差ベクトルを生成するための2つの磁場ベクトルの選び方も、計測対象において予め設定されている板厚に応じて適宜選択することで、腐食などにより予め設定されている板厚からどのくらい減肉したかを最も感度良く検出することができる。
一方、差ベクトルを生成する際における一方の磁場ベクトルとして周波数が20Hzの磁場ベクトルを用いた場合の位相の板厚依存性を調べたところ、図5に示すように板厚が10mm以上の厚い方では、他方の磁場ベクトルとして周波数が0.5Hzや1Hzの磁場ベクトルが必要であるが、板厚が10mm以下であれば他方の磁場ベクトルとして周波数が5Hzや10Hzの磁場ベクトルの方が変化量である感度が高いことが分かった。したがって、試験体1−1の板厚に応じて、周波数の組み合わせを最適化することにより、最適な感度を得ることが分かった。特に、できるかぎり大きい周波数を利用することで、計測に要する時間を短縮させることもできる。
実際の検査においては、試験体1−1等の対象物にはごみの付着や塗装はがれなどのように、表面に凸凹が生じていて平らでない場合が多い。このため試験体1−1等の対象物と、磁気センサ2−1との間のギャップ(リフトオフ)が変動することが多い。
図6はリフトオフの変化による信号変化を調べたもので、リフトオフを1mm、2mm、3mm、4mmとして複数の周波数で出力信号を計測した結果である。図6(a)は出力信号の強度の変化を示したグラフであり、周波数が大きくなるにつれ、同じ対象物を計測しても信号強度が大きく変化することが分かる。特に、リフトオフが大きくなると信号強度が小さくなっている。図6(b)は出力信号の位相の変化を示したグラフであり、各周波数においてリフトオフ変化に対して位相は変化しなかった。このことから、差ベクトルの位相を用いることによりリフトオフに影響を受けにくい検査を実現することができる。
このように、2つの磁場ベクトルの差である差ベクトルの位相から板厚がわかることを示したが、他の方法として、例えば、1Hz以下で計測した磁場ベクトルを基準磁場ベクトルとして、任意の2つの磁場ベクトルそれぞれに対して基準磁場ベクトルからの位相差を算出し、さらにそれぞれの位相の差を求めても、板厚依存性を得ることができる。しかし、この場合には任意の2つの周波数の磁場ベクトルのほか、1Hz以下の基準磁場ベクトルが必要であるため、3つの周波数測定が最低でも必要となる。
上述した実施例では、試験体として特に難しい強磁性体である鋼板の測定例を示したが、アルミニウムや銅など非磁性の金属でも同様に適用ができる。ここで非磁性体では磁気スペクトルは0.5Hzなどの極低周波では信号が非常に弱く、原点からの曲線となるので、1Hz以下の基準磁場ベクトルは必要としない。
他の実施例として、印可コイルで検査対象物に磁場を印可するのではなく、例えば図7に示すように、両端に励磁コイル4−2を設けたヨーク材11で検査対象物に磁場を印可し、検査対象物の表面から漏洩した磁場を検査対象物の表面に設けた磁気センサ2−2で検出する漏洩磁束法の非破壊検査装置とすることもできる。
なお、漏洩磁束法では、ヨーク材11と測定対象物1−2の間で磁気回路を形成する必要があるので、測定対象は磁性体に限定される。
励磁コイル4−2は、印加コイル4−1と同様に、複数の周波数を含む信号を周波数発振器5−2等で合成して定電流源3−2に入力することで、励磁コイル4−2に所定の周波数の交流電流を通電している。
磁気センサ2−2は計測回路7−2に接続しており、計測回路7−2を介して磁気センサ2−2の出力信号を取り出し、2台のロックイン検波器8−3,8−4によって、第1の周波数と第2の周波数での検波を行い、ロックイン検波器8−3,8−4の各出力信号をマルチプレクサ9−2を介して切り替えながら解析器10−2に取り込み、データ収録するとともに解析することとしている。
図8は、第1の周波数を5Hzとし、第2の周波数を10Hzとして数発振器5−2で合成して定電流源3−2に入力することで励磁コイル4−2に交流電流を通電した場合の差ベクトルの位相をとって板厚による変化を調べた結果である。図8から明らかなように、位相は板厚依存性を示しており、この曲線から板厚を検査できることが分かる。
このように本発明では、磁場を印加することで誘引される渦電流が作る磁場を磁気センサで検出する非破壊検査装置全般に適用することができる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
本発明は、金属性の構造物の腐食などの欠陥検出に広く用いることができ、特に従来困難であった鉄鋼製の構造物、たとえば橋梁やビル、工場プラント、発電設備など幅広い分野での応用ができる。
1−1 試験体
1−2 試験体
2−1 磁気センサ
2−2 磁気センサ
3 定電流源
4−1 印加コイル
4−2 励磁コイル
5−1 周波数発信器
5−2 周波数発信器
6 キャンセルコイル
7−1 計測回路
7−2 計測回路
8−1 ロックイン検波器
8−2 ロックイン検波器
8−3 ロックイン検波器
8−4 ロックイン検波器
9−1 マルチプレクサ
9−2 マルチプレクサ
10−1 解析器
10−2 解析器
11−1 ヨーク材

Claims (4)

  1. 検査対象物に磁場を印加する印加コイルと、
    この印加コイルに所定の周波数の交流電流を通電させる交流定電流源と、
    前記印加コイルで印加した磁場により前記検査対象物に誘引された磁場を検出する磁気センサと、
    この磁気センサの出力信号のうち所定周波数の信号を検波する検波器と、
    この検波器の出力信号を解析する解析器と
    を有する非破壊検査装置において、
    前記磁気センサは、低周波から感度があるセンサであって、
    前記交流定電流源は、第1の周波数とした第1の交流電流と、第1の周波数よりも周波数の小さい第2の周波数とした第2の交流電流で前記印加コイルを駆動させ、
    前記解析器は、前記検波器で前記第1の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第1の磁場ベクトルと、前記検波器で前記第2の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第2の磁場ベクトルとのベクトルの差として得られる差ベクトルの位相成分を検出して、この位相成分から前記検査対象物の厚みを検出する非破壊検査装置。
  2. 前記磁気センサは、磁気抵抗素子(MR)、磁気インピーダンス素子(MI)、超伝導量子干渉素子(SQUID)のいずれかである請求項1に記載の非破壊検査装置。
  3. 前記第1と第2の周波数は可変として、予め設定されている前記検査対象物の厚みに対応させた周波数の組み合わせとするとともに、
    前記検査対象物が10mm以下の厚みの鋼板である場合には、前記第1の周波数を10〜100Hzとする請求項1または請求項2に記載の非破壊検査装置。
  4. 印加コイルで検査対象物に所定の周波数の交流磁場を印加して、前記検査対象物に誘引した磁場を磁気センサで検出し、この磁気センサの出力信号の所定周波数成分を検波器で検波し、この検波器の出力信号を解析器で解析することで前記検査対象物の厚みを検出する非破壊検査方法において、
    前記磁気センサは、低周波から感度があるセンサとし、
    前記印加コイルには、第1の周波数とした第1の交流電流と、第1の周波数よりも周波数の小さい第2の周波数とした第2の交流電流とを通電し、
    前記解析器では、前記検波器で前記第1の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第1の磁場ベクトルと、前記検波器で前記第2の周波数で検波して得られた信号の強度と位相とを成分とする第2の磁場ベクトルとのベクトルの差として得られる差ベクトルの位相成分を検出して、この位相成分から前記検査対象物の厚みを検出する非破壊検査方法。
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