以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
(ライン型インクジェットプリンタの全体構成)
図1は本発明が適用されるライン型インクジェットプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態のライン型インクジェットプリンタ(以下、「インクジェットプリンタ」と略記する。)1は、原稿上の原稿画像を読み取って画像信号を出力するスキャナ部101と、スキャナ部101から出力された画像信号に基づいて印刷用紙(片面又は両面)に原稿画像を印刷(記録)するプリンタ部102と、各種表示入力用のディスプレイ103と、全体制御用の制御ユニット10とを備えている。
図2は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のプリンタ部102において、画像形成が行われる画像形成経路CR1を側方から示す説明図であり、図3は、画像形成経路CR1の上方に配置される図2のヘッドホルダ500を下方から示す説明図である。
図2に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1のプリンタ部102は、画像形成経路CR1と、画像形成部であるラインヘッド110を有している。
画像形成経路CR1は、無端状の搬送ベルトであるプラテンベルト160、プラテンベルト160の駆動機構である駆動ローラ161及び従動ローラ162等から構成される。画像形成経路CR1では、プラテンベルト160によって、印刷条件により定められる速度で印刷用紙が搬送される。プラテンベルト160の上方にはラインヘッド110が対向配置されている。
(ラインヘッドの構成と配置)
ラインヘッド110は、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色別に設けられている。各色のラインヘッド110は、印刷用紙の搬送方向である副走査方向と直交する主走査方向に、複数のヘッドモジュール110aを並べて構成されている。
各ヘッドモジュール110aは、図3中のK(ブラック)のヘッドモジュール110aの一つに代表して模式的に示すように、ノズル列110bをそれぞれ有している。各ノズル列110bは、主走査方向に並んだ複数のノズル110cで構成されている。各ノズル110cは、プラテンベルト160上の印刷用紙に対し、ライン単位で各色のインクを吐出し、複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aは、図2に示すように、プラテンベルト160の上方に配置したヘッドホルダ500に保持されている。ヘッドホルダ500は、図3に示すように、ヘッドホルダ面500aを底面に有する函体であり、ヘッドホルダ面500aには、ヘッドモジュール110aを挿通する複数の取付開口部500bが、各ラインヘッド110単位で複数列形成されている。
各ラインヘッド110に対応する複数の取付開口部500bは千鳥状に配列されており、各取付開口部500bは、ヘッドモジュール110aの水平断面と同形状に形成されている。各ラインヘッド110のヘッドモジュール110aは、対応する列の各取付開口部500bにそれぞれ挿通されて、ノズル列110b側を図2に示すようにヘッドホルダ面500aから突出させている。
ヘッドホルダ500に保持された各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aは、図3に示すように、主走査方向に並べて配置されており、かつ、1つおきに副走査方向の位置をずらして配置されている。これにより、隣り合う2つのヘッドモジュール110aの最端部のノズル(図示せず)どうしの間隔が、各ヘッドモジュール110aの隣り合うノズルの間隔と一致するようにしている。なお、以後の説明において、各ラインヘッド110の各ヘッドモジュール110aを、主走査方向における並び順で「1列目」、「2列目」、「3列目」、・・・のように呼ぶことがある。
各ヘッドモジュール110aは、インク液滴の吐出ドロップ数を変えることができる。この吐出するドロップの数(液滴数)によりドットの濃度が変化する。
(ヘッドモジュール列間の着弾位置ずれと色味度合い変化)
ところで、図2を参照して説明したように、各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aは共通のヘッドホルダ500に取り付けられている。ヘッドホルダ500に対するヘッドモジュール110aの取付位置が主走査方向においてズレると、そのヘッドモジュール110aのノズルから吐出されたインク液滴が着弾する印刷用紙上の画素において、同じ画素に対する各色のインク液滴の着弾位置が主走査方向にズレる。この着弾位置ずれが目立つと、色合いが本来の色合いから変化する。したがって、取付位置がズレていない他のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されたインク液滴が着弾する印刷用紙上の画素との間に色差が生じる。
図4は、ヘッドホルダ500にヘッドモジュール110aが主走査方向にズレて取り付けられた場合に印刷用紙上の画像に生じる色差の状態を示す説明図である。なお、説明を容易にするため、図4では、2色分のラインヘッド110を抜粋して示している。
例えば、図4の右側部分に示す2列目(ヘッド列2)及び3列目(ヘッド列3)において、一方のラインヘッド110のヘッドモジュール110aに主走査方向への取付位置ズレが生じ、その度合いが、2列目(ヘッド列2)よりも3列目(ヘッド列3)の方が大きい場合を想定する。
この場合には、図4の左側部分に示すように、2列目及び3列目に対応する印刷用紙上の画素部分の画像の色合いが、1列目に対応する画素部分の画像の正規の色合いから徐々に変化し、各画素部分の間に色差が生じる。このような色差は、ヘッドモジュール110aの主走査方向への取付位置ズレに伴って、そのヘッドモジュール110aのノズルから吐出されたインク液滴の印刷用紙に対する着弾位置が、正規の画素位置から主走査方向にズレて目立つことが原因で発生する。
図5は、図2のヘッドホルダ500にヘッドモジュール110aが主走査方向にズレて取り付けられた場合のインク液滴の着弾位置ズレの状態を示す説明図である。なお、図5では、図面の見やすさのため、2つのラインヘッド110の同じ列のヘッドモジュール110aの各ノズルから同じ画素に吐出されたK(ブラック)及びM(マゼンタ)のインク液滴のドットを、図面の上下方向にずらして記載している。したがって、図5では、図面の左右方向における2つのドットの位置によって、主走査方向におけるK(ブラック)及びM(マゼンタ)のインク液滴の着弾位置ズレの有無を表している。
また、図5では、各ヘッドモジュール110aのノズル列110bの各ノズル110cが主走査方向における1つおきにインク液滴を吐出し、その他のノズル110cはインク液滴を吐出していない場合を示している。
そして、主走査方向において、各色のヘッドモジュール110aともヘッドホルダ500に位置ズレなく取り付けられていれば、図5に1列目(ヘッド列1)のヘッドモジュール110aの場合として例示するように、同じ列のヘッドモジュール110aからそれぞれ吐出されたK(ブラック)及びM(マゼンタ)のインク液滴が、印刷用紙の同じ位置に着弾する。
しかし、ヘッドホルダ500に対する取付位置が主走査方向にズレたヘッドモジュール110aが存在すると、図5に2列目(ヘッド列2)や3列目(ヘッド列3)のヘッドモジュール110aの場合として例示するように、同じ列のヘッドモジュール110aからそれぞれ吐出されたK(ブラック)及びM(マゼンタ)のインク液滴の着弾位置が、印刷用紙の主走査方向にズレる。
例えば、図5に例示したパターンでは、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aの取付位置ズレのために、2つの色のインク液滴の着弾位置間に、2列目のヘッドモジュール110aでは主走査方向に20μmのズレが生じ、3列目では40μmのズレが生じている。
また、各色のヘッドモジュール110aのノズル列110b同士で、隣り合うノズル110cのピッチが異なっているある場合にも、同じドット位置に着弾する各色のインク液滴の間に主走査方向への着弾位置ズレが生じる。
上述したようなインク液滴の主走査方向における着弾位置ズレが、図4に示すような色差の原因となる。例えば、図5の2列目(ヘッド列2)や3列目(ヘッド列3)に示すように、K(ブラック)に対してM(マゼンタ)のインク液滴の着弾位置が主走査方向にズレると、着弾位置ズレ量が大きいほど色合い変化が目立つようになり、それが原因で、本来の黒い色合いよりも赤みがかった色合いに変化してしまう。
(ヘッドモジュール列間のドット濃度差と色味度合い変化)
以上に、各ラインヘッド110のヘッドモジュール110aの主走査方向への取付位置ズレや、隣り合うノズル110c同士のピッチの相違に起因する画像の色合いの変化(相違)について説明した。しかし、画像の色合いの相違は、各ラインヘッド110を構成する各列のヘッドモジュール110aの相互間で、ノズル110cから吐出されるインク液滴によるドットの濃度に差がある場合にも発生する。
図6は、あるラインヘッド110を構成する複数のヘッドモジュール110a間にノズルから吐出されるインク液滴によるドットの濃度差がある状態を示す説明図である。例えば、図6の上部の表に例示したM(マゼンタ)のラインヘッド110に、1列目(ヘッド列1)及び2列目(ヘッド列2)の濃度0.5(単位省略)に対して、3列目(ヘッド列3)の濃度0.7という、ノズルから吐出されたインク液滴によるドットの濃度差が存在する場合を想定する。この場合、マゼンタの単色印刷で画像を印刷用紙に印刷すると、各ヘッドモジュール110aに対応する画素部分間に、図6の下部左側に示すような濃度差が生じる。
同様に、図6の上部の表に例示したK(ブラック)のラインヘッド110には、2列目(ヘッド列2)及び3列目(ヘッド列3)の濃度0.5(単位省略)に対して、1列目(ヘッド列1)の濃度0.6という、ノズルから吐出されたインク液滴によるドットの濃度差が存在する場合を想定する。この場合、ブラックの単色印刷で画像を印刷用紙に印刷すると、各ヘッドモジュール110aに対応する画素部分間に、図6の下部左側に示すような濃度差が生じる。
このような、同じ色の各ヘッドモジュール110aに対応する画素部分間にドットの濃度差がある場合、他の色とコンポジット印刷すると、各ヘッドモジュール110aに対応する画素部分間に色合いの相違が生じる。
図7は、各ヘッドモジュール110aに対応する画素部分間にドット濃度差がある色を使って2色コンポジット印刷を行った場合に、印刷用紙上の画像に生じる色差の状態を示す説明図である。
図7の1段目に例示するように、ここでは、K(ブラック)のラインヘッド110において、3列目(3ヘッド)のヘッドモジュール110aに対応する画素部分のドットの濃度が、他の列のヘッドモジュール110aに対応する画素部分のドットの濃度に比べて薄いものとする。また、図7の2段目に例示するように、M(マゼンタ)のラインヘッド110において、4列目(4ヘッド)のヘッドモジュール110aに対応する画素部分のドットの濃度が、他の列のヘッドモジュール110aに対応する画素部分のドットの濃度に比べて薄いものとする。
上述したドットの濃度差があるK(ブラック)のラインヘッド110とM(マゼンタ)のラインヘッド110とを用いて、2色コンポジット印刷を行うと、図7の3段目に示すように、印刷された画像上の3列目のヘッドモジュール110aに対応する画素部分では、M(マゼンタ)の色味が強くなり、4列目のヘッドモジュール110aに対応する画素部分では、K(ブラック)の色味が強くなる。
以上に説明したように、ヘッドホルダ500に対するヘッドモジュール110aの主走査方向への取付位置ズレや、隣り合うノズル110c同士のピッチの相違、あるいは、同じ色のヘッドモジュール110a間でのドット濃度のバラツキがあると、ノズル110cから吐出したインク液滴により印刷用紙に形成される画像の色合いが、ヘッドモジュール110aの列単位で、本来とは異ったものに変化してしまい、画像の品質を損ねてしまう。
そこで、本実施形態では、ヘッドホルダ500に対するヘッドモジュール110aの主走査方向への取付位置ズレや、隣り合うノズル110c同士のピッチの相違、あるいは、同じ色のヘッドモジュール110a間でのドット濃度のバラツキに応じて、ノズル110cから吐出されるインク液滴の吐出ドロップ数を、ヘッドモジュール110a単位で調整できるようにしている。
(ライン型インクジェットプリンタと周辺機器の電気的構成)
図1に示すように、インクジェットプリンタ1の制御ユニット10には、外部インタフェース部11を介して、後述するクライアント端末14の外部インタフェース部15が接続されている。制御ユニット10は、原稿画像の印刷ジョブをクライアント端末14から受け取り、受け取った印刷ジョブによる原稿画像の画像データを印刷用階調データに変換し、これに基づいて、原稿画像の印刷用紙に対する印刷をプリンタ部102において実行する。
また、制御ユニット10のCPU90には、ディスプレイ103が接続されている。このディスプレイ103は、スキャナ部101によって印刷用紙から画像を読み取るスキャナモードでインクジェットプリンタ1を使用する場合に、読み取った画像の電子データ化や自己診断等のメニューをユーザが選択入力する入力操作部として利用することができる。
上述したプリンタ部102に印刷動作を行わせるインクジェットプリンタ1の制御ユニット10は、CPU90を備える。このCPU90は、ROM91に格納されているプログラム及び設定情報に基づいて、ディスプレイ103から入力設定される内容に応じたスキャナ部101やプリンタ部102の動作を制御する。
なお、制御ユニット10には、CPU90のワーキングエリアとして機能するRAM92と、各種ファームウェアやデータの格納に用いられるフラッシュメモリ93とが設けられている。
クライアント端末14は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成されるものであり、ROM17に格納された制御プログラムに基づいて各種の処理を実行するCPU16と、CPU16のワーキングエリアとして機能するRAM18と、キーボードやマウス等から構成される入力部19と、液晶ディスプレイ等から構成される出力部20とを備えている。
CPU16には、上述した外部インタフェース部15の他に、各種アプリケーションプログラムやデータ等が格納される外部記憶装置21と、ディスク状記録媒体50から各種プログラムやデータを読み取るディスクドライブ22とが接続されている。
CPU16は、アプリケーションプログラムの起動中に入力部19から印刷指令が入力された場合に、印刷対象の原稿画像のデータを外部記憶装置21から読み出す等して印刷ジョブを生成し、制御ユニット10に出力する。この印刷ジョブは、外部記憶装置21に格納されたプリンタドライバプログラムを実行したCPU16がプリンタドライバとして機能することによって、制御ユニット10に出力することができる。
(色味度合い変化の抑制処理)
上述したインクジェットプリンタ1の制御ユニット10や、プリンタドライバとして機能するクライアント端末14は、インクジェットプリンタ1でテスト印刷した結果から得た調整内容を適用して、印刷ジョブに基づいて決定されたヘッドモジュール110aの列単位でノズル110cからの吐出ドロップ数を増減補正するための処理を行い、印刷用紙上の画像の色合いが本来とは異ったものに変化するのを抑制することができる。
(インクジェットプリンタによる処理例)
そこで、まず、インク液滴の吐出ドロップ数調整処理を図1のインクジェットプリンタ1側において行う場合の手順について、図8のフローチャートを参照して説明する。図8のフローチャートは、図1に示す制御ユニット10のCPU90がROM91に記憶されたプログラムを実行することにより行う処理を示している。
図8に示すように、CPU90は、まず、ヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴によるドットの濃度を示す濃度情報を、テスト印刷を行って測定した結果から、各色のラインヘッド110の各ヘッドモジュール110a単位で取得し(ステップS1)、取得した濃度情報をインク液滴の吐出ドロップ数調整用の情報として設定する(ステップS3)。
また、CPU90は、各色のラインヘッド110の同じ列のヘッドモジュール110aのノズルからそれぞれ吐出されるインク液滴の主走査方向における着弾位置ズレ量を示す位置ズレ情報を、テスト印刷を行って測定した結果から、同じ列のヘッドモジュール110a単位で取得し(ステップS5)、取得した位置ズレ情報をインク液滴の吐出ドロップ数調整用の情報として設定する(ステップS7)。
ここで、ステップS1やステップS5の濃度情報や位置ズレ情報のテスト印刷による取得は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、例えば、ディスプレイ103の操作によりスキャナモードの自己診断メニューを選択し、チャート用紙をインクジェットプリンタ1にテスト印刷させる。
図9は印刷されたチャート用紙上のチャート画像の内容を示す説明図である。図9に示すように、チャート用紙200には、濃度情報を含む濃度チャート310と、位置ズレ情報を含む位置ズレチャート330とを含むチャート画像300が印刷される。
濃度チャート310は、例えば図7の1段目と2段目に示すような、各色のラインヘッド110を構成する各ヘッドモジュール110aのノズルから、同じ濃度のドットが形成されるように制御してインク液滴を吐出させた結果を示す、帯状のチャートとすることができる。図9では、説明を容易にするため、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色分だけ示しているが、C(シアン)やY(イエロー)あるいはその他のインク色についても、同様のチャートが濃度チャート310として印刷される。
位置ズレチャート330は、違う色のラインヘッド110における同じ列のヘッドモジュール110aどうしの間で、同じ画素に対してノズルから吐出されるインク液滴によるドットの位置が、主走査方向において相対的にずれているか否かを確認するためのチャートである。図9では、説明の簡略化のため、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色の間でドットの位置ズレの有無を確認するチャートを示している。勿論、C(シアン)やY(イエロー)あるいはその他のインク色との相互間についても、同様のチャートが位置ズレチャート330として印刷される。
この位置ズレチャート330は、例えば、K(ブラック)とM(マゼンタ)の同じ列どうし(例えば、1列目どうし、2列目どうし、3列目どうし、・・・)のヘッドモジュール110a中の、主走査方向において互いに位置が異なるノズルからそれぞれ吐出されたインク液滴によるドット331,333を含んでいる。即ち、図9に示す例では、K(ブラック)のヘッドモジュール110aでインク液滴の吐出に用いたノズルと、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aでインク液滴の吐出に用いたノズルとは、主走査方向における位置が2ピッチ分シフトしている。
仮に、同じ列のK(ブラック)とM(マゼンタ)のヘッドモジュール110a中の、主走査方向における位置が同じノズルからのインク液滴によるドットを位置ズレチャート330に印刷すると、K(ブラック)とM(マゼンタ)の両ドットの大半または全部が重なっているので、両ドットが主走査方向において同じ位置にあるのかズレているのかを判別しづらくなってしまう。
そこで、各ヘッドモジュール110a中のノズルのピッチが同じであると言う前提で、本実施形態では、位置ズレチャート330に印刷するドット331,333のインク液滴を吐出するノズルを、K(ブラック)とM(マゼンタ)とで主走査方向に2ピッチ分シフトさせた位置のノズルとしている。そして、両ドット331,333の主走査方向における間隔Hが、各ドット331,333のインク液滴をそれぞれ吐出したノズルの主走査方向におけるシフト分と一致しているかどうかを、位置ズレチャート330上における各ドット331,333の位置によって確認する。この確認により、K(ブラック)とM(マゼンタ)の各ヘッドモジュール110aがヘッドホルダ500の正しい位置にそれぞれ取り付けられているかどうかや、各色のヘッドモジュール110aのノズル列110b同士で、隣り合うノズル110cのピッチに相違があるかどうかを、判別できるようにしている。
したがって、それぞれのヘッドモジュール110aがヘッドホルダ500の正しい位置にそれぞれ取り付けられていれば、K(ブラック)のドット331の中心とM(マゼンタ)のドット333の中心との間隔Hは、それぞれのインク液滴の吐出に使用したノズルの主走査方向におけるシフト分(つまり、図9の例では2ピッチ分)に等しい寸法となる。
上述したチャート用紙200のチャート画像300を、スキャナ部101で読み取り、読み取ったチャート画像300の内容をCPU90により解析することで、濃度チャート310の内容から濃度情報を、位置ズレチャート330の内容から主走査方向の位置ズレ情報を、それぞれ取得することができる。
なお、図9のチャート用紙200をインクジェットプリンタ1にテスト印刷させてスキャナ部101で読み取ることで、濃度情報や位置ズレ情報を取得する代わりに、それぞれの情報をテスト印刷の結果から別途取得して、例えばディスプレイ103の入力操作によりステップS3やステップS7で設定するようにしてもよい。
各列のヘッドモジュール110a単位で濃度情報や位置ズレ情報をそれぞれ取得、設定したならば、次に、設定した濃度情報や位置ズレ情報に基づいて、各列のヘッドモジュール110a単位で、各色のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴の吐出ドロップ数を調整しない場合の画像の色味度合いを特定(決定)する(ステップS9)。
図10は、ステップS3やステップS7で設定する濃度情報や位置ズレ情報の設定内容とそれに基づき特定される画像の色味度合いとの関係の一例を示す説明図である。図10の説明図では、図9のチャート用紙200を用いて取得した場合を例示しているため、K(ブラック)とM(マゼンタ)との関係で、濃度情報や位置ズレ情報の設定内容や特定した色味度合い(赤み度合い)を示している。
ここでは、1列目(ヘッド列1)〜3列目(ヘッド列3)の設定された濃度情報が、K(ブラック)のドットに対するM(マゼンタ)のドットの濃度差を示す段階値によって、それぞれ「−1」、「0」、「2」(「0」は濃度差なし)と設定されている。また、各列の設定された位置ズレ情報が、K(ブラック)とM(マゼンタ)の主走査方向におけるドットの位置ズレ量を示す段階値によって、それぞれ「0」、「2」、「4」(「0」は位置ズレなし)と設定されている。
そして、1列目のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴によるドットで形成される画像については、図8のステップS9において、「−1(黒い)」という色味度合い(総合赤み度合い)に特定(決定)される。これは、K(ブラック)のドットの濃度よりもM(マゼンタ)のドットの濃度が1段階低く、かつ、K(ブラック)のドットとM(マゼンタ)のドットとが主走査方向に位置ズレしていないので、ドットの濃度差によって色味度合い(赤み度合い)に「−1(黒い)」段階の変化が生じていることを意味している。
同様に、2列目のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴によるドットで形成される画像については、図8のステップS9において、「2(やや赤い)」という色味度合い(総合赤み度合い)に特定(決定)される。これは、K(ブラック)のドットの濃度とM(マゼンタ)のドットの濃度とが同じであり、かつ、K(ブラック)のドットとM(マゼンタ)のドットとが主走査方向に2段階位置ズレしているので、ドットの位置ズレによって色味度合い(赤み度合い)に「2(やや赤い)」段階の変化が生じていることを意味している。
さらに、3列目のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴によるドットで形成される画像については、図8のステップS9において、「6(赤い)」という色味度合い(総合赤み度合い)に特定(決定)される。これは、K(ブラック)のドットの濃度よりもM(マゼンタ)のドットの濃度が2段階高く、かつ、K(ブラック)のドットとM(マゼンタ)のドットとが主走査方向に4段階位置ズレしているので、ドットの濃度差と位置ズレとによって色味度合い(赤み度合い)に「6(赤い)」段階の変化が生じていることを意味している。
なお、図8のステップS3やステップS7で設定した濃度情報や位置ズレ情報から、ステップS9で色味度合い(総合赤み度合い)を特定(決定)するには、例えば、相互を関連付けて定義したテーブルや、各情報の値を用いて色味度合いの値を算出する換算式等を、RAM92に持たせて使用することができる。勿論、これに代わる別の方法で特定(決定)してもよい。
図8のステップS9で、各色のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴の吐出ドロップ数を調整しない場合の画像の色味度合いを特定(決定)したならば、特定した色味度合い(総合赤み度合い)を「0」に戻すのに適した、各色のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴の吐出ドロップ数をヘッドモジュール110a単位で調整するための数値を決定する。この数値は、インク液滴を元の吐出ドロップ数から増やす数値であってもよく、減らす数値であってもよい。
本実施形態では、ヘッドモジュール110aのノズル110cがマルチドロップ方式で複数ドロップを同一画素に吐出できるものとして、各ノズル110cの吐出ドロップ数の補正値(増減調整値)を色別にヘッド列単位で算出するものとする(ステップS11)。この補正値は、例えば、RAM92に持たせたテーブルを用いて算出することができる。
図11は、ステップS11でヘッドモジュール110aの吐出ドロップ数の補正値を算出する際に参照することができる、図10に示す各ヘッド列の総合赤み度合いに対応してRAM92のテーブルで定義されているヘッド列毎の色味度合いの補正内容の一例を示す説明図である。なお、図11では、M(マゼンタ)を補正対象とする場合(Mヘッド)と、K(ブラック)を補正対象とする場合(Kヘッド)とを示している。
図11に示すM(マゼンタ)を補正対象とする補正内容(Mヘッド)は、一番赤み度合いが強い3列目(ヘッド列3)に、1列目や2列目(ヘッド列1やヘッド列2)の赤み度合いを一致させるために、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aのノズル110cから吐出するインク液滴のドロップ数を補正する際の補正内容である。
一方、図11に示すK(ブラック)を補正対象とする補正内容(Kヘッド)は、一番赤み度合いが弱い(黒い)1列目(ヘッド列1)に、2列目や3列目(ヘッド列2やヘッド列3)の赤み度合い(黒さ)を一致させるために、K(ブラック)のヘッドモジュール110aのノズル110cから吐出するインク液滴のドロップ数を補正する際の補正内容である。
そして、1列目(ヘッド列1)のヘッドモジュール110aについては、図10に示すように総合赤み度合いが「−1(黒い)」という結果であったため、M(マゼンタ)を補正対象とする場合は色味度合い(色合い)を「赤くする」という補正内容が定義されている。また、K(ブラック)を補正対象とする場合は「何もしない」という補正内容が定義されている。
同様に、2列目(ヘッド列2)のヘッドモジュール110aについては、図10に示すように総合赤み度合いが「2(やや赤い)」という結果であったため、M(マゼンタ)については色味度合い(色合い)を「やや赤くする」という補正内容が定義されている。また、K(ブラック)については色味度合い(色合い)を「やや黒くする」という補正内容が定義されている。
さらに、3列目(ヘッド列3)のヘッドモジュール110aについては、図10に示すように総合赤み度合いが「6(赤い)」という結果であったため、M(マゼンタ)については「何もしない」という補正内容が定義されている。また、K(ブラック)については色味度合い(色合い)を「黒くする」という補正内容が定義されている。
この補正内容にしたがってCPU90は、図8のステップS11において、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aのノズル110cから吐出するインク液滴のドロップ数や、K(ブラック)のヘッドモジュール110aのノズル110cから吐出するインク液滴のドロップ数の、ヘッドモジュール110a単位での補正値を算出する。
そして、CPU90は、クライアント端末14から印刷ジョブが入力されて、印刷ジョブによる原稿画像の画像データを印刷用階調データに変換し、これに基づいて、原稿画像を印刷用紙にプリンタ部102で印刷する度に、印刷用階調データによる各ノズル110cからのK(ブラック)やM(マゼンタ)のインク液滴の吐出ドロップ数を、ヘッドモジュール110a単位で、ステップS11で算出した補正値により補正する。そして、補正後の吐出ドロップ数で、K(ブラック)やM(マゼンタ)の各ラインヘッド110の対応する列のヘッドモジュール110aに設けられたノズル110cから、インク液滴をそれぞれ吐出させる(ステップS13)。
なお、吐出ドロップ数の補正により補正後の吐出ドロップ数が上限ドロップ数を超える可能性もある。そこで、吐出ドロップ数の補正に当たっては、誤差拡散法等を用い、補正対象のノズル110cに対するインク液滴の吐出ドロップ数の補正値の一部を、主走査方向における近傍のノズル110cに分散して適用し、その吐出ドロップ数も合わせて補正するようにしても良い。
また、補正対象のノズル110cが吐出するインク液滴で印刷用紙上に形成されるドットの、例えば、印刷用紙の搬送方向(副走査方向)における下流側に隣接するドットや、さらにその主走査方向における隣接ドットに、補正対象のノズル110cに対する補正内容を一部分散して適用し、それらのドットに対応するインク液滴の吐出ドロップ数も合わせて補正するようにしても良い。
(吐出ドロップ数の補正内容例)
ここで、ステップS11で算出してステップS13で吐出ドロップ数の補正に用いる吐出ドロップ数の補正内容の例を、図12(a)〜(c)を参照して説明する。図12(a)〜(c)は吐出ドロップ数の補正を誤差拡散フィルタにより行う場合に用いられる誤差拡散テーブルの例をそれぞれ示す説明図である。この誤差拡散テーブルは、例えば、制御ユニット10のフラッシュメモリ93や、CPU90に接続された制御ユニット10の不図示の外部記憶装置(例えば、ハードディスク等)に記憶させることができる。なお、ここでは、注目画素のM(マゼンタ)について、注目画素の色味度合いに応じて吐出ドロップ数を補正する場合について説明する。
図12(a)〜(c)において、各マス目はそれぞれ画素を示し、「★」印は、補正対象の注目画素を示す。また、図12(a)〜(c)において、左から右が主走査方向の上流側から下流側の向き、上から下が副走査方向の上流側から下流側の向きをそれぞれ示し、各マス目の値が、誤差拡散係数をそれぞれ示す。
各誤差拡散テーブルを用いた誤差拡散処理では、注目画素のM(マゼンタ)の画素値を多段のしきい値により吐出ドロップ数に変換した際の余り(の画素値)を、誤差拡散テーブルで定義した誤差拡散係数に応じた割合で、周辺の各画素に分配する。
注目画素がヘッド列(ヘッドモジュール110a)の主走査方向における一番下流側のノズル110cに対応する画素である場合は、誤差拡散対象の画素を、隣のヘッド列(ヘッドモジュール110a)の主走査方向における一番上流側のノズル110cに対応する画素まで拡げてもよい。
ヘッドモジュール列の主走査方向における最も下流側のノズルに対応する画素が注目画素である場合、注目画素のインク液滴のドロップ数に応じた周辺画素のドロップ数の補正内容を、周辺画素が隣のヘッドモジュール列のノズルに対応する画素であっても適用すると、あるヘッドモジュール列のノズルに対する吐出ドロップ数の補正の傾向が、隣のヘッドモジュール列における最もこちらのヘッドモジュール寄りのノズル(主走査方向における一番上流側のノズル)にも反映される。このため、両ノズルの補正が似たような傾向となる。よって、ヘッドモジュール列どうしのつなぎ目における色味の変化を緩やかにし、ヘッドモジュール間での色味差を減らすことができる。
なお、ヘッド列(ヘッドモジュール110a)の主走査方向における一番下流側のノズル110cに対応する注目画素については、誤差拡散対象の画素を同じヘッド列(ヘッドモジュール110a)内のノズル110cに対応するノズルに限定した、専用の誤差拡散テーブルを用いて、周辺画素の補正内容を決定してもよい。
この場合、ヘッド列(ヘッドモジュール110a)の主走査方向における一番上流側のノズル110cに対応する画素の補正内容が決まらなくなる。そこで、ヘッド列(ヘッドモジュール110a)の主走査方向における一番上流側のノズルの補正内容を、専用の誤差拡散テーブルを用いて決定することが望ましい。
誤差拡散テーブルを用いて注目画素の画素値を吐出ドロップ数に変換する場合、吐出ドロップ数に変換した画素値の余り(誤差)分を、誤差拡散テーブルの誤差拡散係数に応じて周辺画素に割り振ることになる。そして、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルは誤差拡散係数の内容がそれぞれ異なる。そこで、赤みについて注目画素の色合いをどのようにしたいかによって、注目画素の画素値を吐出ドロップ数に変化するのに用いる誤差拡散テーブルを、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルから使い分けることになる。
ここで、各誤差拡散テーブルの誤差拡散係数の内容を比較すると、図12(a)の誤差拡散テーブルは、主走査方向への誤差分配の割合が図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルの中で一番小さく、図12(b)の誤差拡散テーブルは、主走査方向への誤差分配の割合が図12(a)の誤差拡散テーブルよりも大きい。また、図12(c)の誤差拡散テーブルは、主走査方向への誤差分配の割合が図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルの中で一番大きい。
したがって、注目画素の画素値を吐出ドロップ数に変換するのに当たり、主走査方向への誤差分配の割合が一番小さい図12(a)の誤差拡散テーブルは、注目画素の色味度合いを「赤くする」場合に用いられる。また、主走査方向への誤差分配の割合が図12(a)の誤差拡散テーブルよりも大きい図12(b)の誤差拡散テーブルは、注目画素の色味度合いを「やや赤くする」場合に用いられる。一方、主走査方向への誤差分配の割合が一番大きい図12(c)の誤差拡散テーブルは、赤みについて注目画素の色味度合いを「何もしない」場合に用いられる。なお、図12(c)の誤差拡散テーブルを、注目画素の色味度合いを「少し(ややよりも小さい度合いで)赤くする」場合にも用いるようにしてもよい。
そして、例えば図11のMヘッドの欄に示すようにM(マゼンタ)を補正対象とする場合、色味度合い(色合い)を「赤くする」1列目(ヘッド列1)では、注目画素の吐出ドロップ数に変換した際の余りの画素を主走査方向の隣接画素により多く分配するために、図12(c)の誤差拡散テーブルを吐出ドロップ数の補正に用いる。
つまり、1列目のMヘッドに対応する各画素のM(マゼンタ)の画素値に、図12(c)の誤差拡散テーブルを用いて誤差拡散処理を施し、誤差拡散処理の各画素値を、多段のしきい値により吐出ドロップ数に変換する。これにより、1列目のMヘッドの各ノズル110cによる吐出ドロップ数を、「赤くする」ように補正する。
また、色味度合い(色合い)を「やや赤くする」2列目(ヘッド列2)では、「やや赤くする」の度合いに応じて、注目画素の吐出ドロップ数に変換した際の余りの画素を主走査方向の隣接画素に分配する割合が少ない、図12(a)又は図12(b)の誤差拡散テーブルを吐出ドロップ数の補正に用いる。
つまり、2列目のMヘッドに対応する各画素のM(マゼンタ)の画素値に、図12(a)又は図12(b)の誤差拡散テーブルを用いて誤差拡散処理を施し、誤差拡散処理の各画素値を、多段のしきい値により吐出ドロップ数に変換する。これにより、2列目のMヘッドの各ノズル110cによる吐出ドロップ数を、「やや赤くする」ように補正する。
なお、色味度合い(色合い)を「何もしない」3列目(ヘッド列3)では、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルによる補正を行わず、元の画素値をそのまま多段のしきい値により吐出ドロップ数に変換する。
このように、各列間の色味度合いに違いがあるときには、図12(a)〜(c)の各誤差拡散テーブルを用いて、Mヘッドのノズル110cから吐出するインク液滴のドロップ数を各列毎に適宜補正する。すると、補正に使用する誤差拡散テーブルにそれぞれ応じた割合で、各ノズル110cに対応する画素のM(マゼンタ)の濃度が、同じヘッド列の主走査方向における隣りのノズル110cに対応する画素に分配される。
そして、M(マゼンタ)の濃度が隣りのノズル110cに対応する画素に分配される割合をヘッド列毎に異ならせる(ヘッド列によっては、補正せずM(マゼンタ)の濃度を隣のノズル110cに対応する画素に分配しない)ことで、各ヘッド列間の色味度合いの差を抑制することができる。
図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルを用いた吐出ドロップ数の補正処理を行った結果、ヘッド列間の色味度合いの差が解消されたどうかは、テストチャートをプリンタ部102によりテスト印刷することで確認することができる。このテストチャートは、例えば、補正処理によって注目画素からその主走査方向における隣接画素に、M(マゼンタ)の濃度をどのように分配したかを示す、図13に示すような内容のものとすることができる。
図13に示すテストチャートでは、KヘッドとMヘッドのそれぞれについて、各ヘッド列の主走査方向に隣接する2つのノズル110cに対応するインク液滴の着弾位置とその濃度を示すサンプル図が、Kヘッドに対するMヘッドの主走査方向における位置ズレ量を各ヘッド列毎に反映させて印刷される。Kヘッドに対するMヘッドの位置ズレ量は、例えば、ディスプレイ103(図1)の不図示の入力画面からタッチ操作によって入力し設定することができる。
図13に示すテストチャートの1列目(ヘッド列1)では、色味度合い(色合い)を「赤くする」ために、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aの、インク液滴を吐出していなかった主走査方向における1つおきのノズル110c(図5参照)から、隣のノズル110cと同じドロップ数でM(マゼンタ)のインク液滴を吐出するように、ノズル110cからの吐出ドロップ数が補正されている。
2列目(ヘッド列2)では、色味度合い(色合い)を「やや赤くする」ために、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aの、インク液滴を吐出していなかった主走査方向における1つおきのノズル110c(図5参照)から、隣のノズル110cよりも少ないドロップ数でM(マゼンタ)のインク液滴を吐出するように、ノズル110cからの吐出ドロップ数が補正されている。
3列目(ヘッド列3)では、色味度合い(色合い)を「何もしない」ので、M(マゼンタ)のヘッドモジュール110aのノズル110cからの吐出ドロップ数が、一切補正されていない(補正ドロップ数=±0)。
また、K(ブラック)を補正対象とした場合にも、補正結果を示すテストチャートを同様に体裁で構成することができる。即ち、図14に示すように、K(ブラック)を補正対象とするテストチャートの1列目(ヘッド列1)では、色味度合い(色合い)を「何もしない」ので、K(ブラック)のヘッドモジュール110aのノズル110cからの吐出ドロップ数が、一切補正されていない(補正ドロップ数=±0)。
2列目(ヘッド列2)では、色味度合い(色合い)を「やや黒くする」ために、K(ブラック)のヘッドモジュール110aの、インク液滴を吐出していなかった主走査方向における1つおきのノズル110c(図5参照)から、隣のノズル110cよりも少ないドロップ数でK(ブラック)のインク液滴を吐出するように、ノズル110cからの吐出ドロップ数が補正されている。
3列目(ヘッド列3)では、色味度合い(色合い)を「黒くする」ために、K(ブラック)のヘッドモジュール110aの主走査方向における全てのノズル110cから、補正前に1つおきのノズル110cが吐出していたドロップ数よりも少ないドロップ数でK(ブラック)のインク液滴を吐出するように、ノズル110cからの吐出ドロップ数が補正されている。
図15は、M(マゼンタ)のインク液滴の吐出ドロップ数を図13に示すテストチャートの補正内容により補正した場合の補正前に対する補正後の色味度合いの変化を示す説明図である。ここで、図15(a),(b)においては、印刷用紙の同じ画素位置に着弾したK(ブラック)とM(マゼンタ)の各インク液滴を、図中の上下方向に若干ずらして示している。これは、副走査方向において各インク液滴の着弾位置がズレていることを示すものではない。後に参照する図16においても同様である。
そして、図15(a)に示す補正前の吐出ドロップ数では、1列目(ヘッド列1)に対して2列目(ヘッド列2)がやや赤みがかった色味度合いとなり、3列目(ヘッド列3)はさらに赤みがかった色味度合いとなる。
これに対して、図15(b)に示す補正後の吐出ドロップ数では、まず、1列目(ヘッド列1)において、1つおきのノズル110cが隣のノズル110cと同じドロップ数で追加のM(マゼンタ)のインク液滴を吐出する。この追加のM(マゼンタ)のインク液滴は、K(ブラック)のインク液滴と重ならずに露出する。これにより、元々「黒い」色味度合いであったのが、赤みの増した色味度合いに変化する。
また、2列目(ヘッド列2)においても、1つおきのノズル110cが隣のノズル110cよりも少ないドロップ数で追加のM(マゼンタ)のインク液滴を吐出する。この追加のM(マゼンタ)のインク液滴は、K(ブラック)のインク液滴と重ならずに露出する。これにより、元々「やや赤い」色味度合いであったのが、やや赤みが増した色味度合いに変化する。
一方、3列目(ヘッド列3)においては、1つおきのノズル110cが追加のM(マゼンタ)のインク液滴を吐出しないので、赤み度合いに変化が生じない。このため、色味度合いは、元々の「赤い」色味のままである。
このような吐出ドロップ数の補正を行った結果、2列目(ヘッド列2)や3列目(ヘッド列3)で発生したK(ブラック)とM(マゼンタ)の着弾位置ズレが目立ちにくくなる。そして、1列目(ヘッド列1)〜3列目(ヘッド列3)が全て、元々の3列目(ヘッド列3)と同じ「赤い」色味度合いに統一され、ヘッドモジュール110aの列間における色味度合いの差(色差)が縮小される。
図16は、K(ブラック)のインク液滴の吐出ドロップ数を図14に示すテストチャートの補正内容により補正した場合の色味度合いの変化を示す説明図である。図15に示す補正後の吐出ドロップ数では、まず、1列目(ヘッド列1)においては、1つおきのノズル110cが追加のK(ブラック)のインク液滴を吐出しないので、赤み度合いに変化が生じない。このため、色味度合いは、元々の「黒い」色味のままである。
また、2列目(ヘッド列2)においては、1つおきのノズル110cが隣のノズル110cよりも少ないドロップ数で追加のK(ブラック)のインク液滴を吐出する。この追加のK(ブラック)のインク液滴は、M(マゼンタ)のインク液滴と重ならずに露出する。これにより、元々「やや赤い」色味度合いであったのが、やや黒さが増した色味度合いに変化する。
一方、3列目(ヘッド列3)においては、補正前に1つおきのノズル110cが吐出していたドロップ数よりも少ないドロップ数で、主走査方向における全てのノズル110cがK(ブラック)のインク液滴を吐出する。そして、追加のK(ブラック)のインク液滴がM(マゼンタ)のインク液滴と一部重なって隠蔽する。これにより、元々「赤い」色味度合いであったのが、黒さの増した色味度合いに変化する。
この結果、1列目(ヘッド列1)〜3列目(ヘッド列3)が全て、元々の1列目(ヘッド列3)と同じ「黒い」色味度合いに統一され、ヘッドモジュール110aの列間における色味度合いの差(色差)が縮小される。
なお、上述したM(マゼンタ)を補正対象とする補正内容や、K(ブラック)を補正対象とする補正内容は、それらを実行した場合の、1列目(ヘッド列1)〜3列目(ヘッド列3)の各列におけるK(ブラック)のドットの濃度とM(マゼンタ)のドットの濃度との濃度差の最大値が、補正前の最大値以下となるような内容としている。
このような補正内容とすることで、色味度合いを元に戻すための上記補正を行うことで、K(ブラック)のドットやM(マゼンタ)のドットに関する各列間での濃度差の拡大による色味度合いのさらなる変化を引き起こさないようにすることができる。
以上に、注目画素の色味度合いに応じて、注目画素のM(マゼンタ)について吐出ドロップ数を補正する場合について説明した。これと同様に、注目画素の色味度合いに応じて、K(ブラック)に関する図12(a)〜(c)のような誤差拡散テーブルを使い分け、注目画素のK(ブラック)の吐出ドロップ数を補正して黒み度合いを調整してもよい。また、注目画素の色味度合いに応じて注目画素のK(ブラック)とM(マゼンタ)との両方の吐出ドロップ数を補正してもよい。
そして、以上に説明した図8のフローチャートに示す各手順を、上述したK(ブラック)やM(マゼンタ)以外の色についても、インクジェットプリンタ1において実行する。そして、算出した補正値により補正した吐出ドロップ数で、対応する列のヘッドモジュール110aの各ノズル110cからインク液滴を吐出させる。これにより、各色のラインヘッド110における同じ列のヘッドモジュール110aの中に、ヘッドホルダ500に対して主走査方向に位置ズレして取り付けられたものが存在しても、同じ画素に対する各色のインク液滴間の主走査方向における着弾位置ズレが目立たないようになる。したがって、各ヘッドモジュール110aの列間で色味度合い(色合い)の変化が生じるのを、有効に抑制することができる。
また、各色のラインヘッド110中に、ノズル110cからのインク液滴の吐出により形成されるドットの濃度が他のヘッドモジュール110aとは異なるヘッドモジュール110aが存在しても、その濃度差を抑制して、各ヘッドモジュール110aの列間で色合いの変化が生じるのを、有効に抑制することができる。
さらに、上述したように、制御ユニット10が補正する対象をノズル110cからのインク液滴の吐出ドロップ数とすれば、ノズル110cからインク液滴を吐出させるための駆動(パルス)信号の電圧を補正対象とする場合のように、一度補正したら補正後の内容(吐出ドロップ数)に固定する必要がない。
このため、インク液滴の吐出ドロップ数に対する補正を、例えば、クライアント端末14から印刷ジョブが入力されて原稿画像の画像データから印刷用階調データへの変換が行われる度に、行ったり行わなかったり変更することができる。よって、例えば、印刷ジョブが2色以上のカラー画像であるときには、色味度合いの変化に応じてインク液滴の吐出ドロップ数の補正を行い、印刷ジョブが単色画像であるときには、色味度合いの変化が生じないのでインク液滴の吐出ドロップ数の補正を行わないようにする等の切り替えを、容易に行うことができる。
なお、クライアント端末14とインクジェットプリンタ1との間に、フォントデータ等を蓄積したプリンタサーバを設ける場合は、そのプリンタサーバにおいて図8のフローチャートに示す各手順を実行するようにしてもよい。
(クライアント端末による処理例)
以上に説明したように、インクジェットプリンタ1の制御ユニット10では、印刷用階調データで定義されたインク液滴の吐出ドロップ数を補正することで、インク液滴の吐出ドロップ数の調整を行うものとした。
これに対し、プリンタドライバとして機能するクライアント端末14では、インクジェットプリンタ1において印刷用階調データに変換する前の、インクジェットプリンタ1に印刷ジョブとして供給する画像データに対して、インク液滴の吐出ドロップ数を調整するための補正を行う。
以下、クライアント端末14が行う処理の手順について説明する。なお、この説明においても、説明を容易にするために、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色分についての手順を抜粋して説明する。
図17は、インク液滴の吐出ドロップ数調整処理の一部を図1のクライアント端末14側において行う場合の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、図17に示すように、濃度情報及び位置ズレ情報の取得、設定に係るステップS1〜ステップS9をインクジェットプリンタ1の制御ユニット10において行い、その後の手順をクライアント端末14で行う。
そして、制御ユニット10のCPU90は、各列のヘッドモジュール110a単位で特定(決定)したK(ブラック)及びM(マゼンタ)に関する色味度合い(総合赤み度合い)を、プリンタドライバ機能を有するクライアント端末14のCPU16に送信する(ステップS15)。
次に、CPU16は、受け取った各列のヘッドモジュール110a単位のK(ブラック)及びM(マゼンタ)に関する色味度合い(総合赤み度合い)に基づいて、その列のヘッドモジュール110aのノズルに対応する画素に関する、K(ブラック)及びM(マゼンタ)の各画像データの補正内容を示す補正カーブを作成する(ステップS17)。
この補正カーブは、クライアント端末14がインクジェットプリンタ1の制御ユニット10から受け取った、1列目(ヘッド列1)〜3列目(ヘッド列3)のK(ブラック)及びM(マゼンタ)に関する色味度合い(総合赤み度合い)から、それらのばらつきを少なくするような内容で作成する。
ところで、インクジェットプリンタ1では、印刷用紙が画像形成経路CR1上をプラテンベルト160によって副走査方向に搬送される際、主走査方向に印刷用紙の位置がズレる場合がある。その場合、例えば、インクジェットプリンタ1の制御ユニット10のCPU90が、画像形成経路CR1上における印刷用紙の主走査方向の位置を検出するラインセンサ(図示せず)で検出した、印刷用紙の主走査方向における位置ズレ量に応じて、クライアント端末14からの印刷ジョブ中の画像データの各画素と、各色のラインヘッド110のヘッドモジュール110aのノズル110cとの対応関係を変更することがある。
そのため、上述した手順で、各列のヘッドモジュール110aのノズル110cに対応する画素に対するK(ブラック)やM(マゼンタ)の多値データの補正内容を決定するだけでは、適切な補正内容とならない場合がある。つまり、印刷用紙が画像形成経路CR1上を主走査方向に位置ズレして搬送された場合に、自列のヘッドモジュール110aとは無関係な隣の列のヘッドモジュール110aのノズル110cに対応する画素に適用する補正内容で補正された多値データが、自列のヘッドモジュール110aのノズル110cに対応する画素の多値データとして使用される場合がある。
そこで、クライアント端末14のCPU16は、インクジェットプリンタ1の画像形成経路CR1上を印刷用紙が主走査方向に位置ズレして搬送された場合を考慮に入れて、補正カーブを作成するようにしている。具体的には、隣の列のヘッドモジュール110aとの境界に近い、各列のヘッドモジュール110aの主走査方向における最端部寄りのノズル110cに対応する画素の多値データについては、補正のボリュームを少なくしたり、補正を行わないようにしている。
また、補正のボリュームを少なくしたり補正を行わないようにするノズル110cについては、主走査方向における隣のノズル110cと比較して、段階的ではなく連続的になだらかにレベル変更量が変わるようにしている。
ここで作成した補正カーブは、ヘッドモジュール110aの交換等を行わない限り、継続して使用することができる。したがって、図17のステップS17までの各手順は、ヘッドモジュール110aの交換等の事情が新たに発生しない限り、一度行っておけばよい。
そして、CPU90は、クライアント端末14から印刷ジョブが発生する度に、プリンタドライバ機能を用いて生成した印刷画像のK(ブラック)とM(マゼンタ)の各多値データに対して、図17のステップS17で作成した補正カーブの内容に応じたレベル変更量による補正を施す(ステップS19)。そして、必要に応じてハーフトーニングやラスタイメージプロセッサによるRIP処理を施した後、印刷ジョブの画像データ(プリントデータ)としてインクジェットプリンタ1(装置本体)に送信する(ステップS21)。
以上のようにしてクライアント端末14から送信された印刷ジョブの画像データによる画像の印刷をインクジェットプリンタ1で行うことで、先に説明した、印刷用階調データで定義されたインク液滴の吐出ドロップ数をインクジェットプリンタ1の制御ユニット10により補正する場合と同様の効果を得ることができる。
なお、インクジェットプリンタ1側で濃度情報や位置ズレ情報を設定し、それに基づいて、各色のヘッドモジュール110aのノズル110cから吐出されるインク液滴の吐出ドロップ数を調整しない場合の画像の色味度合いを特定(決定)した。しかし、これらをクライアント端末14側で行うようにしてもよい。
その場合には、図18のフローチャートに示す手順のように、インクジェットプリンタ1の制御ユニット10において、図17のステップS3とステップS7の濃度情報や位置ズレ情報を設定する代わりに、図17のステップS1とステップS5で取得した濃度情報や位置ズレ情報を、プリンタドライバ機能を有するクライアント端末14のCPU16に送信する(ステップS23)。
次に、CPU16は、受け取った情報を濃度情報や位置ズレ情報としてそれぞれ設定し(ステップS25)、設定した濃度情報及び位置ズレ情報に基づいて、各列のヘッドモジュール110a単位で、各色のヘッドモジュール110aのノズル110cから吐出されるインク液滴の吐出量を調整しない場合の画像の色味度合いを特定(決定)する(ステップS27)。以後、図17のステップS17乃至ステップS21の手順を、CPU16が実行する。
上述した手順において、濃度情報や位置ズレ情報をインクジェットプリンタ1から受け取って設定する代わりに、それぞれの情報を別途取得して、例えば入力部19の入力操作によりステップS25でそれぞれ設定するようにしてもよい。
(変形例1)
以上に説明した各実施形態においては、濃度情報の取得、設定、及び、それに基づいたインク液滴の吐出ドロップ数の補正値算出や、画素の多値データのレベル変更量を示す補正カーブの作成、並びに、それらに基づいたノズルの駆動や多値データの補正を行う場合について説明した。
しかし、それらを省略し、インク液滴の着弾位置ズレ情報の取得、設定、及び、それに基づいたインク液滴の吐出ドロップ数の補正値算出や、画素の多値データのレベル変更量を示す補正カーブの作成、並びに、それらに基づいたノズルの駆動や多値データの補正だけを行う構成としてもよい。
その場合、図8のフローチャートのステップS13において、クライアント端末14から入力された印刷ジョブによる印刷が、単色印刷であるか否かを事前に確認し、単色印刷でない場合に限って、ステップS11で算出した補正値により補正した吐出ドロップ数や多値データに応じて、ノズル110cからインク液滴を吐出させるようにしてもよい。
(変形例2)
また、上述した実施形態では、制御ユニット10のCPU90が図8のステップS9で特定した色味度合い(総合赤み度合い)から、それを「0」に戻すのに適したインク液滴の吐出ドロップ数の補正値を、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルを用いた誤差拡散処理により、図8のステップS11において決定した。
そして、ここで決定した補正値は、主走査方向における各色のインク液滴の着弾位置ズレや、各色のノズル110c同士のピッチ相違、同じ色のヘッドモジュール110a間でのドット濃度のバラツキに起因する色合い変化を、抑制するための数値であった。
しかし、副走査方向における各色のインク液滴の着弾位置ズレに起因する色合い変化がある場合に、それを抑制するための補正値も、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルを用いた誤差拡散処理によって決定することができる。
その場合は、例えば、図9のチャート用紙200をテスト印刷し、そのチャート画像300の位置ズレチャート330上における各ドット331,333の位置を、スキャナ部101で読み取る。そして、読み取ったチャート画像300の内容をCPU90により解析し、例えば、ドット331,333の近傍に印刷した主走査方向を示す罫線335から各ドット331,333の中心までの間隔が等しいか否かによって、副走査方向に位置ズレがあるかどうかを判別する。この判別結果から、副走査方向の位置ズレ情報を取得する。
そして、取得した位置ズレ情報を加味して、図8のステップS9において、各列のヘッドモジュール110a単位で、各色のヘッドモジュール110aのノズルから吐出されるインク液滴の吐出ドロップ数を調整しない場合の画像の色味度合いを特定(決定)し、ステップS11で、ヘッドモジュール110aの吐出ドロップ数の補正値を算出する。
このとき、副走査方向において隣接する2つのドットの色味度合い(赤み度合い)を比較し、それらの間に差がある場合には、その差をなくすための補正成分を、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルを用いた誤差拡散処理によって、副走査方向下流側の隣接ドットやその主走査方向の隣接ドットの吐出ドロップ数の補正内容に含ませることができる。
(変形例3)
さらに、色味度合いの変化を抑制するための吐出ドロップ数の補正値は、図12(a)〜(c)の誤差拡散テーブルを用いた誤差拡散処理以外の方法によって決定してもよい。
例えば、図11のテーブルで定義されたM(マゼンタ)を補正対象とする場合の補正内容を、ヘッドモジュール110a単位で実行する際に、色味度合い(色合い)を「赤くする」という補正内容が定義された1列目(ヘッド列1)については、注目画素の主走査方向における上流側の隣接画素ドロップ数のX%(小数点以下切り捨て)を補正値とし、これを注目画素の吐出ドロップ数に加算する。
また、色味度合い(色合い)を「やや赤くする」という補正内容が定義された2列目(ヘッド列2)については、注目画素の主走査方向における上流側の隣接画素ドロップ数のY%(X>Y、小数点以下切り捨て)を補正値とし、これを注目画素の吐出ドロップ数に加算する。Yの値は、例えばX/2(Xの半分)とすることができる。
また、色味度合い(色合い)を「何もしない」という補正内容が定義された3列目(ヘッド列3)については、注目画素の主走査方向における上流側の隣接画素ドロップ数の0%を補正値とし、注目画素の吐出ドロップ数に何も加算しない。
このように、色味度合いの補正内容に応じて予め決めておいた補正値によっても、色味度合いの変化を抑制するようなインク液滴の吐出ドロップ数の補正を行うことができる。
(変形例4)
また、図17及び図18のステップS19において、クライアント端末14で発生した印刷ジョブによる印刷が、単色印刷であるか否かを事前に確認し、単色印刷でない場合に限って、ステップS17で作成した補正カーブを適用した多値データの補正を行うようにしてもよい。
このようにすれば、同一画素に単一色のインク液滴しか着弾せず、ドットの位置ズレによる色合いの変化が発生しない単色印刷の際に、インク液滴の吐出量が無用に補正されてしまうのを防ぐことができる。
(変形例5)
なお、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、図3に示すように、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色毎に副走査方向に位置をずらして、それぞれのラインヘッド110を構成する6列のヘッドモジュール110aが千鳥状に配置されているものとした。
これに対し、図19に示すように、各列毎に4色(C,K,M,Y)のヘッドモジュール110aを貼り合わせて6つのヘッドブロック111〜116を構成し、各ヘッドブロック111〜116を千鳥状にヘッドホルダ500に取り付けて、6つのヘッド列のヘッドブロック111〜116で1列のラインヘッド110を構成する場合がある。
この場合、ヘッドブロック111,113,115は、ヘッドブロック112,114,116に対して、印刷用紙の搬送方向における下流側(図19中の右側)に配置されている。また、ヘッドブロック111〜116は、主走査方向において、隣接するヘッドブロック間で一部が重なるように配置される。
即ち、ヘッドブロック111,112間、ヘッドブロック112,113間、ヘッドブロック113,114間、ヘッドブロック114,115間、ヘッドブロック115,116間に、ヘッドブロック111〜116が2つ重なるつなぎ目領域Aがそれぞれ生じる。
ここで、つなぎ目領域Aにおけるノズル列110b(ノズル110c)の配置について、図20の説明図を参照して説明する。なお、図20では、各つなぎ目領域Aを代表して、ヘッドブロック111,112のつなぎ目領域Aについて説明する。
各ヘッドブロック111,112のノズル列110bにおいて、ノズル110cは、主走査方向に所定のピッチPで等間隔に配置されている。各ヘッドブロック111,112の各色(C,K,M,Y)のヘッドモジュール110aは、隣に貼り付けたヘッドモジュール110aに対して、ノズル110cの位置が主走査方向に半ピッチ(P/2)分だけずれるように配置されている。
具体的には、K(ブラック)とY(イエロー)の各ヘッドモジュール110aが、C(シアン)とM(マゼンタ)の各ヘッドモジュール110aに対して、半ピッチ分だけずらして配置されている。C(シアン)とM(マゼンタ)の各ヘッドモジュール110aは、ノズル110cの主走査方向における位置が略同じになっている。同様に、K(ブラック)とY(イエロー)の各ヘッドモジュール110aでは、ノズル110cの主走査方向における位置が略同じになっている。
ヘッドブロック111,112のつなぎ目領域Aにおいては、各ヘッドブロック111,112の同じ色のヘッドモジュール110aが、主走査方向において同じ位置にノズル110cが位置するように配置されている。そして、それぞれのヘッドブロック111,112の同じ色のヘッドモジュール110aにおいて、主走査方向における位置が同じノズル110cがそれぞれ同じ画素にインク液滴をダブって吐出しないように、通常は、各ヘッドブロック111,112の端部寄りのノズル110cを、インク液滴の吐出ドロップ数=0に制御する。
ここで、例えば、つなぎ目領域A中のヘッドブロック111のノズル110cから吐出されたM(マゼンタ)とY(イエロー)のインク液滴による画像の色味度合いが、正規のものから変化してしまった場合を仮定する。この場合、色味度合いの変化を抑制するためにヘッド列1のヘッドブロック111のノズル110cに適用するドロップ数補正の対象に、通常はインク液滴を吐出しない、つなぎ目領域A中のヘッドブロック112の端部寄りのノズル110cを加えても良い。
この場合は、例えば、Y(イエロー)のインク液滴について、ヘッドブロック111のノズル110cの吐出ドロップ数を通常のドロップ数からゼロドロップに補正し、ヘッドブロック112のノズル110cの吐出ドロップ数をゼロから、ヘッドブロック111のノズル110cの通常ドロップ数に補正することができる。
これにより、印刷用紙に対するM(マゼンタ)とY(イエロー)のインク液滴の着弾順が、通常のM(マゼンタ)が先でY(イエロー)が後という順番から逆の順番に変わり、その結果、同じ色の組み合わせによる画像の色味度合いがインク液滴の着弾順の入れ替えで変化する。この色味度合いの変化を利用して、ヘッド列間での画像の色味度合いの変化を抑制することができる。
このような制御を行う場合も、インクジェットプリンタ1の制御ユニット10が印刷用階調データの吐出ドロップ数を補正するようにしてもよく、プリンタドライバとして機能するクライアント端末14のCPU16が画像データ(多値データ)を補正するようにしてもよい。
(変形例6)
また、図21に示すように、1つのヘッドモジュール110aに2つのノズル列110bを設け、各ノズル列110bのノズル110cの位置を主走査方向に半ピッチ分ずらして配置する場合もある。
この場合には、ヘッドモジュール110a当たりの印字解像度を高めるために、1つのヘッドモジュール110aの各ノズル列110bを同じ色のインク液滴を吐出するのに用いることもあれば、ヘッドモジュール110aの省スペース化を図るために各ノズル列110bを別々の色のインク液滴を吐出するのに用いることもある。
このようにヘッドモジュール110aを構成すると、ヘッドモジュール110aの取付位置ズレがなくても、各ノズル列110bの主走査方向において対応する位置の各ノズル110cからそれぞれ吐出されるインク液滴の着弾位置が、ノズル110cの半ピッチ分ズレて目立つようになり、各ノズル110cからのインク液滴の着弾位置がズレない場合に対し、画像の色味度合いが変化する。
このような原因で生じる色味度合いの変化を抑制するためにも、上述した本実施形態のインク液滴の吐出ドロップ数補正を適用することができる。