JP6238403B2 - 結晶粒微細化剤およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、鋳造用の結晶粒微細化剤およびその製造方法に関する。特に、鋳造Al及びAl合金用の結晶粒微細化剤およびその製造方法に関する。
鋳造法は、形状付与性が大であること、利用可能な金属・合金の幅が広いこと、加工重量の制限が少ないこと等の利点があるが、その一方で、鋳造時の溶融金属のガス吸収や粘性の影響、溶融金属の凝固時の体積変化、合金成分による編析などに起因して、鋳造材の内部に欠陥が生じやすいといった問題がある。このように生じた内部欠陥は、亀裂の基点ともなり、鋳造品の機械的強度を低下させる。
鋳造材の機械的強度の向上させる方法の1つとして、結晶粒微細化剤を添加し、鋳造材の結晶粒を微細化する方法が用いられている。結晶粒微細化剤は、溶融金属の凝固に先立って、溶湯中に多数の微細な結晶核(異質核)を供給し鋳造材の結晶粒を微細化する添加材である。
結晶粒微細化剤を用いて結晶粒子を微細化させるほど、結晶粒界の密度は高くなり、析出物が分散しやすくなるため、熱処理によって容易に溶体化処理をすることができ、鋳造材の機械強度を向上させることができる。また、結晶粒の微細化により、高温での亀裂の発生も低減でき、鋳造割れの改善にも大きな効果をもたらすことができる。
ところで、金属の機械的強度と結晶粒径との間には、数式(1)に示されるようなホールペッチの関係が成立することが知られている。
[数1]
σ=σ+kd−1/2 ・・・(1)
(ここで、σは多結晶体の降伏応力、dは結晶粒径、σは転位運動に対する摩擦応力、kはホールペッチ係数である)
凝固において有効な異質核となるためには、異質核物質と鋳造材との界面エネルギーが小さい必要がある。非特許文献1によると、異質核物質と鋳造材の結晶格子の低指数面における1方向の原子配列の不整合度δの大小により異質核物質の有効性が議論できるとされている。不整合度δは、数式(2)で表され、一般的に、不整合度δが10%以下の物質であれば異質核として有効に働くことが知られている。
(ここで、aは異質核物質の低指数面の格子定数、aは鋳造材の低指数面の格子定数である)
鋳造Alの製造現場においては、結晶粒微細化剤として、Al−Ti−X(X=BまたはC)が広く用いられており、その中でも特に、D022構造をとるAlTiの役割が重要視されている。
図1(a)に示すように、純Alの格子定数はa=0.4049nmであるのに対し、図1(b)に示すD022構造のAlTiの格子定数はa=0.3846nm、c=0.8594nmである。結晶粒微細化剤中のAlTiは板形状を有し、最も占有率の大きい板面は、[001] Al3Ti面になる。ここで、D022構造は結晶の対称性が悪いため、各面ごとに不整合度が異なる。最大面積を有する[001] Al3Ti面とそれと結晶学方位関係を有する[001] Al面の平面不整合度の値は5%程度であり、他の面に比較して不整合度が大きい。なお、平面不整合度は、数式(3)で得ることができる。
(ここで、(hkl)sは、異質核粒子の低次指数面、[uvw]sは、(hkl)sの低次指数方向、(hkl)nは、核生成する金属の低次指数面、[uvw]nは、(hkl)n面の低次指数方向、d[uvw]sは、[uvw]s方向に沿った原子間距離、d[uvw]nは、[uvw]n方向に沿った原子間距離、θは、[uvw]sと[uvw]nとの間の角度である)
そこで、図1(c)に示されるようなD022構造のAlTiに第三元素Yを加えたL1構造の金属間化合物((Al,Y)Tiが注目されている。第三元素Yの添加により格子定数を変化させることができると同時に結晶の対称性がよくなるため、結晶学的に等価な面が増える。そのため、不整合度の小さな面を多数有する異質核粒子を選択することができる。たとえば、第三元素YをCuとしたAl5CuTi2の格子定数は、a=0.3927nmであり、Alとの不整合度は、3%と小さい。このような不整合度の小さい化合物を異質核とすれば、より優れた微細化能、すなわち、鋳造材の結晶粒をより微細化する効果が期待できる。
ところで、このような不整合度が小さいL1構造の金属間化合物(Al,Y)Tiを用いた結晶粒微細化剤の作製方法としては、例えば、アーク溶解により作製したバルク状のL1構造の金属間化合物を均一処理した後、ハンマーにより粉砕し、これを粉末状の純Alと混合し、焼結することにより作製する方法が知られている(特許文献1参照)。
国際公開2012/102162号公報
Turnbull and Vonnegut, Ind. Eng. Chem., 1952. Metal. Trans. A, Vol. 23A, 1992, 2963.
しかし、特許文献1に記載の方法は、特に、金属間化合物を取得する際、手順が多工程である上に煩雑であるため、工業的な生産に適用しにくいという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、簡単な製造工程で、不整合度の小さいL1構造の金属間化合物粒子を有する結晶粒微細化剤を大量に生産することができる製造方法を提供することを目的とする。
この発明に係る結晶粒微細化剤の製造方法は、L1構造の式(1)で示される金属間化合物の粒子を、Alを主成分とする母相に分散させてなる固形状の鋳造用結晶粒微細化剤を製造する方法であって、
(Al,Y)Z・・・(1)
(ここで、Yは、Cu、Fe、Ni、Zn、Pd、Cr、Mn、Co、Ag、Rh、Pt、AuおよびHfから選択されるいずれか1つであり、Zは、Ti、ZrおよびZnから選択されるいずれか1つである)
Alと1種または2種の金属をガスアトマイズして金属間化合物の粉末を作製する工程と、金属間化合物の粉末とAl粉末とを混合して成形体を形成した後、成形体を放電プラズマ焼結する工程と、を含むことを特徴とするものである。
金属間化合物は、Al5CuTi2であることが好ましい。
この発明に係る結晶粒微細化剤は、上記製造方法により製造される結晶粒微細化剤であることを特徴とする。
この発明によれば、優れた微細化能を有する不整合度の小さい異質核粒子、すなわち、金属間化合物の粒子を有する結晶粒微細化剤を、従来よりも容易に且つ大量生産することが可能な製造方法を提供することができる。
図1(A)はfcc構造のAlの結晶構造と格子定数を示し、図1(B)はD022構造のAl3Tiの結晶構造と格子定数を示し、図1(C)は、L1構造の(Al,Y)Tiの結晶構造とY=Cuの場合の格子定数を示す図である。 ガスアトマイズ装置の模式図である。 実施例のAl5CuTi2金属間化合物粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例のAl5CuTi2金属間化合物粒子のX線回析パターンを示す図である。 実施例の結晶粒微細化粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例の結晶粒微細化粒子のX線回析パターンを示す図である。 実施例のAl鋳造材の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例及び参考例のAl鋳造材の結晶粒微細化と保持時間との関係を示す図である。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の結晶粒微細化剤の製造方法は、L1構造の金属間化合物粒子を製造する方法であって、Alと1種または2種の金属をガスアトマイズして金属間化合物の粉末を作製する工程と、金属化間合物の粉末と前記Al粉末とを混合して成形体を形成した後、前記成形体を放電プラズマ焼結する工程とを含む。
本発明により製造する結晶粒微細化剤は、式(1)で示されるL1構造の金属間化合物の粒子を、Alを主成分とする母相に分散させてなるものである。
(Al,Y)Z・・・(1)
(ここで、Yは、Cu、Fe、Ni、Zn、Pd、Cr、Mn、Co、Ag、Rh、Pt、AuおよびHfから選択されるいずれか1つであり、Zは、Ti、ZrおよびZnから選択されるいずれか1つである)
この金属間化合物の具体的としては、Al5CuZr2:格子定数a=0.404nm、Al2HfZn:a=0.4033nm、Al5NiZr2:a=0.406nmや表1に示すものがあり、これら化合物の格子定数aは、Alの格子定数0.40496nmに近い。
なお、本発明による金属間化合物は、本来Alと平衡状態にて安定に存在できないものであるが、D022構造のAlTiと比較して、より不整合度δの小さな異質核となりうるものであれば、Alと平衡状態にて安定に存在できるものでも良い。
ここで、「Alを主成分とする母相」とは、Alを成分として最も多く含み、純AlもしくはAl合金を成分とする母相を意味する。鋳造材の組成変動を抑制するという観点では、母相は鋳造材の成分と同じであることが好ましい。すなわち、純Al鋳造材の製造では、母相を純Alとし、Al合金鋳造材の製造では、母相を鋳造材の成分と同じAl合金とすることが好ましい。
式(1)で示されるL1構造の金属間化合物の中でも、5以下、好ましくは4以下の値の不整合度を有するものであることが好ましい。このように不整合度の小さいL1構造の金属間化合物を異質核とすれば、優れた微細化能、すなわち、鋳造材の結晶粒を微細化する効果を期待できるからである。
また、本発明により製造する結晶粒微細化剤は、式(1)で示されるL1構造の金属間化合物の粒子を、Alを主成分とする母相に分散させてなる固形状のものである。
粉末状のL1構造の式(1)に示される金属間化合物を直接溶湯に添加した場合、濡れ性の関係から浮いてしまい、十分に撹拌されない可能性あるが、固体構造(バルク)にすることにより、この問題を回避することができる。そのため、結晶粒微細化剤を溶湯に添加した際に、L1構造の式(1)に示される金属間化合物を、溶湯中に分散させて異質核として有効に機能させることができる。
粉末状の金属間化合物は、ガスアトマイズ装置により作製することができる。図2に示すガスアトマイズ装置は、溶融金属収容部1、ガス噴射部2、反応器3を備える。
溶融金属収容部1は、ガスアトマイズして金属間化合物の原材料となる溶融金属Mを収容するためのものであり、その底部にはノズル1aが設けられ、ノズル1aから溶融金属Mが垂直方向に流下する。そのため、溶融金属Mを溶融金属収納部1に収容させておくと、ノズル1aから反応器3内に溶融金属Mを安定的に流下させることができ、また、連続的に金属間化合物の粉末粒子Pを製造することができる。
溶融金属収容部1内の温度は、溶融させる金属の融点に応じて適宜設定することができるが、例えば、金属間化合物の原材料として、Al、Ti及びCuを使用する場合は、通常1450〜1700℃、好ましくは1500〜1600℃である。
ガス噴射部2は、図2に示すように、高圧ガスGを溶融金属収納部1のノズル1aから流下する溶融金属に向けて噴射するノズル2aを備える。このように高圧ガスGを溶融金属の流体へ噴きつけることにより流体を粉砕し、溶融金属粒子Pが形成される。
高圧ガスGは、不活性ガスであれば特に限定されないがアルゴン、ヘリウム等のガスを使用することが好ましい。
溶融金属に吹き付ける高圧ガスGの圧力は、3.5〜10MPaであることが好ましく、5〜10MPaであることが好ましい。高圧ガスの圧力が3MPa以下であると粒子Pの形成が不十分となる可能性がある。
反応器3は、鉛直方向に延びる円筒部を備えており、ノズル2aから高圧ガスGを噴射することにより、金属間化合物の粉末粒子Pが形成される。
放電プラズマ焼結によれば、式(1)で示されるL1構造の金属間化合物の粒子を、Alを主成分とする母相に分散させてなる固形状にすることができる。
AlとL1構造(Al,Y)Ti等の式(1)に示される金属間化合物は平衡に存在し得ないために、この金属間化合物の粒子をAlに分散させたバルクを製造しようとすると、この金属間化合物が分解しない条件である低温かつ短時間での焼結が必要となる。放電プラズマ焼結(SPS)は低温かつ短時間での焼結が可能なため、非平衡な系においてもバルク化が可能である。そのため、本実施の形態においては、金属間化合物の粉末と母相の粉末とを混合して成形体を形成した後、この成形体をSPS法により焼結させることで、鋳造用結晶粒微細化剤を製造することができる。
ここで、金属間化合物粒子は、結晶粒微細化剤全体に対する体積分率が5〜40%であることが好ましい。結晶粒微細化剤全体に対する金属間化合物の粒子の体積分率が大きすぎると、結晶粒微細化剤を溶湯に添加した際に、金属間化合物粒子を分散させることができず、体積分率が小さすぎると、結晶粒微細化剤を多量に添加しなければならず、鋳造品のコスト上昇を招いたり、省資源等の観点から好ましくないからである。
例えば、Alを主成分とする母相にAl5CuTi2金属間化合物を分散させる場合、粒径75〜150μmのAl5CuTi2金属間化合物の粉末粒子と純度99.9%以上、粒径106〜180μmの純Al粉末との体積分率が10:90になるように混合することが好ましい。
なお、Alと金属間化合物が非平衡な系であってもバルク化することができれば、この方法に限定されず、例えば、ホットプレス法、熱間静水圧成形、冷間静水圧成形後の常圧焼結等の焼結法を用いて鋳造用結晶粒微細化剤を製造することもできるが、SPS法はこれらの方法よりも短時間で容易に本発明の結晶粒微細化剤を製造することができる。
以上、本発明に係る結晶粒微細化剤及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
以下、本発明の具体的な実施例をあげ、本発明をより詳細に説明する。
なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるものではない。
(実施例1)
(Al5CuTi2金属間化合物粒子の作製とその評価)
まず、図2に示されるガスアトマイズ装置(株式会社 真壁技研製、RQM−P−1)を用いて、粉末状のAl5CuTi2金属間化合物粒子を作製した。ガスアトマイズの条件は、溶湯温度(出湯温度)1550℃、ノズル1aの最小部径2.0mm、高圧ガス圧力4.0MPaとした。
作製したAl5CuTi2金属間化合物粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察およびX線回析(XRD)による測定を行った。
図3は、作製したAl5CuTi2金属間化合物粒子のSEM写真である。この写真から、ガスアトマイズにより作製した金属間化合物粒子は球状であることがわかる。
図4は、作製したAl5CuTi2金属間化合物粒子のXRDパターンを示すものである。図に示されるように、(001)と(110)のピークパターンが明確に出ているため、ガスアトマイズにより作製した金属間化合物粒子の結晶構造がL1構造であることが確認できる。
(結晶粒微細化剤の作製とその評価)
ガスアトマイズで作製したAl5CuTi2金属間化合物粒子は、75μmおよび150μmのふるいを用いて分級し、直径75〜150μmの粒子を得た。次いで、分級されたAl5CuTi2金属間化合物粒子と、純度99.9%以上、粒径106〜180μmの純Al粉末との体積分率が10:90になるように混合するとともに、金属間化合物粒子を均一に分散させるためのステアリン酸も少量添加して成形体を形成した。成形体は、小型プラズマ放電焼結装置(住友石炭鉱業株式会社製、ドクターシンターシリーズ、SPS−515S)を用いて焼結し、バルク状の結晶粒微細化剤を作製した。成形条件および焼結条件は、成形圧力は45MPa、昇温速度は1.67℃/秒、焼結温度は500℃、保持時間300秒とした。
このように作製された結晶粒微細化剤は、マイクロカッターを用いて切断し、#100から#2400までのエミリー紙による湿式研磨及びアルミナ懸濁液を用いたバフ研磨を施した後、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察およびX線回析(XRD)による結晶構造の同定を行った。
図5(A)は、90倍で観察したSEM組織写真を示し、図5(B)は、1200倍で観察したSEM組織写真を示す。
低倍率で観察した図5(A)より、Al母相中に球状のAl5CuTi2金属間化合物粒子が均一に分散していることが確認できる。また、高倍率で観察した図5(B)により、Al母相とAl5CuTi2金属間化合物粒子との間に界面が明確に存在しているため、AlとAl5CuTi2金属間化合物粒子との反応が進行していないことが確認できる。
図6は、X線回析(XRD)パターンを示す。体積分率90%のAlのピークパターンが強くでているものの体積分率10%のAl5CuTi2金属間化合物粒子のピークパターンも明確にでているため、このXRDパターンからもAl5CuTi2金属間化合物粒子とAl母相との間に反応が生じていないことがわかる。
このように、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察およびX線回析(XRD)による結晶構造の同定の結果から、Al中に球状のAl5CuTi2金属間化合物粒子を含有する結晶粒微細化剤が作製されていることがわかる。
(鋳造材の作製とその評価)
次に、作製した結晶粒微細化剤を使用して鋳造材を作製し、その評価を行った。
まず、純度99.99%の純Alインゴット148.8gをアルミナるつぼに入れ、電気抵抗炉を用いて750℃で溶融したAl溶湯に作製した結晶粒微細化剤1.2gを添加した。なお、Al溶湯の酸化を防ぐために、アルゴン雰囲気中で溶解を行った。
結晶粒微細化剤を添加した直後に30秒撹拌した後、0、210、300、390および600秒保持した後に鋳型に注湯し空冷した。使用した鋳型は鉄鋼製の金型で、内径45mm、外径70mm及び高さ70mmの寸法を有する。
作製したAl鋳造材は底面から約5mm部分を切断し、その切断面を観察面とした。切断後の面は、#100から#2400までのエミリー紙を用いた湿式研磨、アルミナ懸濁液を用いたバフ研磨を施し、10%フッ酸水溶液を用いて腐食を施した。
このように作製された観察面は、光学顕微鏡を用いて組織観察を行った。
図7は、光学顕微鏡によるAl鋳造材の断面組織写真であり、図7(A)は結晶粒微細化剤の添加なしの場合、図7(B)〜(F)は結晶粒微細化剤の添加ありの場合の写真である。図7(B)〜(F)は、撹拌後の保持時間0、210、300、390および600秒の条件下で得られた鋳造材の断面組織写真である。
図7(B)〜(F)に示される結晶粒微細化剤を添加した鋳造材の方が、(図7(A)に示される結晶粒微細化剤を添加していない鋳造材よりも均質で微細な組織を有しており、微細化剤が有効に機能していることがわかる。
このように、ガスアトマイズにより作製したAl5CuTi2金属間化合物粒子も異質核として働くことを確認することができた。
また、光学顕微鏡により得られた組織写真を用いて、切片法(Mean Linear Intercept法)により平均結晶粒径を測定した。
鋳造材の結晶粒微細化に及ぼすプロセス変数の1つに、溶湯に結晶粒微細化剤を添加した後の保持時間がある。鋳造アルミの製造現場では、この保持時間を調整することにより、非平衡状態での異質核を利用して鋳造材の微細化を行っている。
図8は、Al鋳造材の結晶粒微細化に及ぼす保持時間の影響を示したものである。図8の縦軸は、鋳造材の組織写真から測定された平均結晶粒径(μm)、横軸は、保持時間(秒)を示す。なお、参考例として、特許文献1に示される方法により作製された結晶粒微細化剤の結果も実施例ともに示した。
(参考例)
原材料(バルク状のAl−40質量%Cu合金、純Al及び純Ti)を真空アーク溶解装置(日新技研株式会社製、NEV-ADR-P05)でアルゴン雰囲気中にて最低7回アーク溶解した。アーク溶解のまま直方体に試料を切り出してアルミナ板に乗せ、赤外線ゴールドイメージ炉(株式会社サーモ理工製、IVF298W-S)の均熱帯の中央に配置し、真空中において、1100℃、1時間にて均質化処理を行い、得られたAl5CuTi2金属間化合物をハンマーで粉砕したAl5CuTi2金属間化合物粒子を得た。このように得られたAl5CuTi2金属間化合物粒子を用いて、実施例1と同様に、結晶粒微細化剤や鋳造材を作製し、その断面組織の観察や平均結晶粒径を測定した。
図8の結果より、ガスアトマイズにより作製されたAl5CuTi2金属間化合物粒子を含む結晶粒微細化剤(実施例)を使用した場合も、アーク溶解により作製されたAl5CuTi2金属間化合物粒子を含む結晶粒微細化剤(参考例)を使用した場合も、最適保持時間は同一の300秒であることが確認された。
1.溶融金属収容部
1a.ノズル
2.ガス噴射部
2a.ノズル
3.反応器

Claims (3)

  1. L1構造の式(1)で示される金属間化合物の粒子を、Alを主成分とする母相に分散させてなる固形状の鋳造用結晶粒微細化剤を製造する方法であって、
    (Al,Y)Z・・・(1)
    (ここで、Yは、Cu、Fe、Ni、Zn、Pd、Cr、Mn、Co、Ag、Rh、Pt、AuおよびHfから選択されるいずれか1つであり、Zは、Ti、ZrおよびZnから選択されるいずれか1つである)
    Alと1種または2種の金属をガスアトマイズして金属間化合物の粉末を作製する工程と、
    前記金属間化合物の粉末と前記Al粉末とを混合して成形体を形成した後、前記成形体を放電プラズマ焼結する工程と、
    を含むことを特徴とする結晶粒微細化剤の製造方法。
  2. 前記金属間化合物はAl5CuTi2である請求項1に記載の結晶粒微細化剤の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の結晶粒微細化剤の製造方法で製造された結晶粒微細化剤。
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