JP6238282B2 - 磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、上記知見に基づき、鋭意研究の結果なされたものであり、以下の構成を有するものである。
セッター材を介してそれぞれ積層された複数のガラスブランクの積層体を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に行われ、前記積層体を冷却する冷却工程とを有する磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、前記冷却工程では、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を冷却することを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記加熱工程では、前記積層体を前記ガラスブランクのガラス転移点よりも高い温度まで加熱し、前記冷却工程は、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を前記ガラス基板のガラス転移点よりも低い温度まで冷却する一次冷却工程と、該一次冷却工程の後に行われ、冷却速度が前記一次冷却工程よりも速い二次冷却工程とを含むことを特徴とする構成1に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記一次冷却工程は、前記ガラスブランクのガラス転移点よりも50℃低い温度まで前記積層体を冷却する工程であることを特徴とする構成2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
(構成4)
前記セッター材の平坦度は、前記ガラスブランクの目標平坦度よりも小さいことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクの結晶化処理であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
(構成6)
結晶化度合いを55%以下とすることを特徴とする構成5に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクのアニール処理であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
(構成8)
前記加熱工程では、少なくとも2つ以上のヒーターが独立して温度制御可能で、前記積層体内の温度偏差を小さくすることが可能な熱処理炉を用いることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
構成1乃至8のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法によって製造されたガラスブランクに対して、機械加工を施す処理を含むことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
また、上記した積層ガラス全てが磁気ディスクに適した平坦度を得る方法は、結晶化ガラスに限らず、アモルファスガラスにも適用可能である。
本発明では、図1に示すように、熱処理炉(図示せず)内において、移動可能なように下部に複数のローラー5を取り付けた台座4の上に、セッター2とガラスブランク(以下、単にガラスと呼ぶこともある。)1を交互に積層し、最上段に荷重3を負荷し、結晶化の熱処理を行う。熱処理は、各々が独立して温度制御可能な上部ヒーター6及び下部ヒーター7によって施される。
本発明においては、結晶化度合いを55%以下とすることが好ましい。結晶化度合いが55%を超える場合には、加工性が低下し、低表面粗さと高加工性との両立が困難になるためである。
そして、上記一次冷却工程は、ガラスブランクのガラス転移点よりも50℃以上低い温度まで積層体を冷却する工程であることが好適である。
磁気ディスク用ガラス基板は、通常、主表面研削、端面研磨、主表面研磨、化学強化、等を経て製造される。
次に、高精度な平面を得るための主表面鏡面研磨加工を行う。
ガラス基板の鏡面研磨方法としては、酸化セリウムやコロイダルシリカ等の金属酸化物の研磨材を含有するスラリー(研磨液)を供給しながら、ポリウレタン等のポリシャの研磨パッドを用いて行うのが好適である。高い平滑性を有するガラス基板は、たとえば酸化セリウム系研磨材を用いて研磨した後(第1研磨加工)、さらにコロイダルシリカ砥粒を用いた仕上げ研磨(鏡面研磨)(第2研磨加工)によって得ることが可能である。
また、本発明において表面粗さ(上記算術平均粗さRa)は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定したときに得られる表面形状の表面粗さとすることが実用上好ましい。
以上の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
本実施形態で用いられるガラスの組成は、例えば、
SiO2:35〜65モル%、
Al2O3:5〜25モル%、
MgO:10〜40モル%、
TiO2:5〜15モル%、
ZrO2:0.5〜5モル%、
Y2O3:0.1〜1モル%、である
このとき、上記組成の合計が少なくとも92モル%以上であるガラス組成(第1のガラス組成)が好ましい。このようなガラスに結晶化処理を施すことによって、主結晶がエンスタタイト及びその固溶体の少なくとも一方となる結晶化ガラスとすることができる。
SiO2:45.60〜60%、
Al2O3:7〜20%、
B2O3:1.00以上8%未満、
P2O5:0.50〜7%、
TiO2:1〜15%、
ROの合計量:5〜35%(ただしRはZn及びMg)、である。この場合、CaOの含有量が3.00%以下、BaOの含有量が4%以下であり、PbO、As2O3およびSb2O3およびCl−、NO−、SO3−、F−成分を含有しないガラス組成(第2のガラス組成)を用いることも好ましい。
このようなガラスに結晶化処理を施すことによって、主結晶相としてRAl2O4、R2TiO4(ただしRはZn、Mgから選択される1種類以上)から選ばれる一種以上を含有し、主結晶相の結晶粒径が0.5nm〜20nmの範囲であり、結晶化度が15%以下であり、比重が2.95以下である結晶化ガラスとすることができる。
また、SiO2を56〜75モル%、Al2O3を1〜9モル%、Li2O、Na2OおよびK2Oからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%、MgO、CaOおよびSrOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3、Nb2O5およびTa2O5からなる群から選ばれる酸化物を合計で0%超かつ10モル%以下、含むガラスであってもよい。
本発明において、ガラス組成におけるAl2O3の含有量が15重量%以下であると好ましい。さらには、Al2O3の含有量が5モル%以下であるとなお好ましい。
磁気ディスクは、本発明による磁気ディスク用ガラス基板の上に少なくとも磁気記録層(磁性層)を形成して製造される。磁性層の材料としては、異方性磁界の大きな六方晶系であるCoCrPt系やCoPt系強磁性合金を用いることができる。磁性層の形成方法としてはスパッタリング法、例えばDCマグネトロンスパッタリング法によりガラス基板の上に磁性層を成膜する方法を用いることが好適である。
また、上記磁気記録層の上に、保護層、潤滑層を形成してもよい。保護層としてはアモルファスの炭素系保護層が好適である。また、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル化合物の主鎖の末端に官能基を有する潤滑剤を用いることができる。
本発明によって得られる磁気ディスク用ガラス基板を利用することにより、信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
(実施例1)
ダイレクトプレス法により作製したφ80mm×0.8mm厚み(最終的にはφ65mm×0.635mm厚みの材料向け)のガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。熱処理は、図1に示すように、セッターとガラスを交互に積層し、最上段に約400gの荷重を負荷した。ガラスを20枚、セッターを21枚使用した。セッターは、平坦度は2μm以下、厚み2mmのSiCを用いた。SiCを用いた理由は、耐熱衝撃性に優れており、耐熱性、熱伝導率も高いため、冷却時の温度制御範囲以降で急冷が可能で、生産性に優位と考えたためである。熱処理炉は、積層内の温度偏差を高精度に制御するために、図1のように上下にヒーターが設置されており、それぞれ独立して制御可能な電気炉を使用した。
磁気ディスク用のガラスブランクのような薄板材料は、シングアラウンド法によるヤング率の測定が困難である。そのため、事前に測定用のサンプルを作製し、種々の結晶化条件で、密度とヤング率の関係についてデータを取得した。この結果、図4に示すように密度とヤング率には、非常に高い相関が確認できた。つまり、薄板材料のヤング率は、密度を測定する事で換算出来る事が分かった。そこで、上記で測定した比重の値をヤング率に換算し、その値を作製した結晶化ガラスのヤング率とした。
実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、3.5℃になるように調整した。平坦度、比重測定、ヤング率への換算についても、実施例1と同様の方法を用いた。
実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、5.0℃になるように調整した。平坦度、比重の測定、ヤング率への換算についても、実施例1と同様の方法を用いた。
温度偏差2.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜4μm
温度偏差3.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜5μm
温度偏差5.0℃以下の条件では、平坦度2.5〜6μm
以上のように、温度偏差の最も小さい水準が、最も平坦度バラツキの小さい結果を示した。
密度とヤング率のばらつきは、密度が2.935±0.008g/cm3、ヤング率は、120±1.0GPaと非常にばらつきの小さな結晶化ガラスブランクが得られた。
実施例1の結晶化の温度条件を変更し、ヤング率130GPa、145GPa(これは、本発明で用いたガラスの物性で到達できる最大のヤング率)の結晶化ガラスを作製した。ヤング率130GPaは、核形成を770℃で30分行い、昇温2を850℃まで、5℃/minで昇温した。ヤング率145GPaは、核形成を760℃で4時間行い、昇温2を975℃まで、5℃/minで昇温した。そして、結晶成長を975℃で4時間行った。いずれも、冷却1は、温度偏差が2.5℃以下になる条件を用いた。
最大までヤング率が上がる熱処理条件(ヤング率145GPa作製時の条件)を用いて、冷却1の温度偏差を制御しないで冷却した時の段積み位置による平坦度の変化を確認した。
核形成を760℃で4時間行い、昇温2ステップを975℃まで、5℃/minで昇温した。結晶成長を975℃で4時間行った。その後の冷却1は、上下ヒーターの温度制御はせずに、900℃までを4℃/minで冷却を行った。その時、積層内の温度偏差は、10℃となっていた。
実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、8℃、10℃になるように調整した。ここで、作製した結晶化ガラスを非接触三次元測定機で、全数測定した。その結果を図6に示す。同図(a)に示す温度偏差8℃条件で処理したガラスの平坦度は2.5〜13μmとなった。また、同図(b)に示す温度偏差10℃条件で処理したガラスは、平坦度は2.5〜16μmとなった。低結晶化度のガラスブランクの場合、冷却1の積層内の温度偏差に依存して、平坦度バラツキが大きくなると言える。
アモルファスガラスでも平坦度のばらつきを抑制できるか確認するために、実施例1から3と同様の実験を行った。熱処理は、図1と同様にして行い、セッター、電気炉は実施例1と同様のものを用いた。実験に用いたガラスは、磁気ディスク用ガラスブランクに使用されているTg=500℃のアモルファスガラス、φ80mm×0.90mm厚み材を用いた。熱処理条件は、580℃まで1時間で昇温、580℃で1時間保持し、平坦度を修正した。その後の冷却工程おける積層内の温度偏差が2.5℃、3.5℃、5.0℃となるように調整しながら、450℃(Tg−50℃)まで冷却し、その後は、自然放熱で急冷した。得られたガラスブランクを非接触三次元測定機にて、平坦度を測定した。
温度偏差2.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜4μm
温度偏差3.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜5μm
温度偏差5.0℃以下の条件では、平坦度2.5〜6μm
以上のとおり、実施例1の低結晶化度の結晶化ガラス作製時と同様に、温度偏差の最も小さい水準が、最も平坦度バラツキの小さい結果を示した。冷却時、積層内の温度偏差が大きくなるにつれ、平坦度のバラツキが大きくなっている。求める平坦度の品質に応じて、冷却時の温度偏差を考えれば良い。
実施例5と同様の温度条件で、アモルファスガラスを熱処理し、平坦度を修正した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、8℃、10℃になるように、それぞれ調整した。熱処理後のガラスを非接触三次元測定機で、全数測定した。温度偏差8℃条件で処理したガラスの平坦度は2.5〜13μm、温度偏差10℃条件で処理したガラスは、2.5〜16μmとなった。低結晶化度のガラスブランク同様にアモルファスガラスでも、冷却1の積層内の温度偏差に依存して、平坦度バラツキが大きくなる。
3.5インチ用磁気ディスク用ガラス基板向けに、φ100mm×0.95mm厚み材を用いて、実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。この時、冷却1の積層内の温度偏差は、2.5℃、5.0℃、10℃となるように調整し、3水準評価した。得られたガラスの平坦度を測定した。
温度偏差2.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜4μm
温度偏差3.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜5μm
温度偏差5.0℃以下の条件では、平坦度2.5〜6μm
実施例1〜3と同様に、ガラスブランクの外形サイズに関わらず、温度偏差を適正な範囲に制御する事で、ガラス配置位置による平坦度バラツキの少ないガラスブランクを得る事ができる。
2 セッター
3 荷重
4 台座
5 ローラー
6 上部ヒーター
7 下部ヒーター
Claims (7)
- セッター材を介してそれぞれ積層された複数のガラスブランクの積層体を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後に行われ、前記積層体を冷却する冷却工程とを有する磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、
前記加熱工程では、前記積層体を前記ガラスブランクのガラス転移点よりも高い温度まで加熱し、
前記冷却工程は、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を前記ガラスブランクのガラス転移点よりも低い温度まで冷却する一次冷却工程と、該一次冷却工程の後に行われ、冷却速度が前記一次冷却工程よりも速い二次冷却工程とを含み、
前記一次冷却工程は、前記ガラスブランクのガラス転移点よりも50℃以上低い温度まで前記積層体を冷却する工程であり、
前記一次冷却工程での前記積層体内の温度偏差は、5.0℃以下となるように調整しながら、前記積層体を冷却することを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。 - 前記セッター材の平坦度は、前記ガラスブランクの目標平坦度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
- 前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクの結晶化処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
- 結晶化度合いを55%以下とすることを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
- 前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクのアニール処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
- 前記加熱工程では、少なくとも2つ以上のヒーターが独立して温度制御可能で、前記積層体内の温度偏差を小さくすることが可能な熱処理炉を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法によって製造されたガラスブランクに対して、機械加工を施す処理を含むことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
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