JP6234871B2 - 表面疵の少ない鋼材の製造方法 - Google Patents
表面疵の少ない鋼材の製造方法Info
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工程1(温度域:鋼片装入温度〜900℃未満)
O2濃度:1容量%未満、H2O濃度:15容量%未満
工程2(温度域:900〜1170℃未満)
O2濃度:1容量%以上、H2O濃度:15容量%以上
工程3(温度域:1170℃〜鋼片抽出温度)
O2濃度:1容量%未満、H2O濃度:15容量%未満
まず、本発明が採用した鋼材の表面疵の低減方法につき、その考え方、すなわち解決原理、作用などにつき、前記鋼板ヘゲ疵を例にとりその発生機構から説明する。
通常、精錬を終えた溶鋼は、連続鋳造工程へ運ばれ、タンディッシュから鋳型に注がれる。鋳型で溶鋼を凝固させて一定の形の半製品である鋳片が作られる。連続鋳造機は、鋳型に垂直に注がれた溶鋼は冷え固まって水平方向に引き抜かれる。引き抜かれた鋳片は、所定長さにガスカットされ、熱間圧延に供する鋼片(スラブ)となる。スラブは熱間圧延に運ばれ、加熱炉で再加熱されて、1000〜1200℃で粗圧延、900〜1100℃で仕上圧延、300〜700℃で巻き取られて熱延鋼板となる。熱延鋼板は、その後、酸洗、冷間圧延されることで冷延鋼板となる場合、酸洗、冷延、亜鉛めっき等が施されて表面処理鋼板となる場合もある。
加熱炉でのスラブの加熱工程で酸化生成するスケールは、元の鋼表面(地鉄面)から外方に向かって成長する外方酸化層と内側に向かって成長する内方酸化層に分けることができる。ヘゲ疵は鋼表面の内側近傍に発生するため、この疵の消失に効果があるのは内方酸化層で、この成長を促進することが肝要である。本発明では、この内方酸化層を成長、発達させ、この疵の内部にこれを侵入、充填して同酸化層に疵を一体的に取り込んで、疵の消失、あるいは最少化を図るものである。一方、外方酸化層はスケールロスとなるためできるだけその成長を抑制する必要がある。Siが1%以上添加される高Si含有鋼では、スケール/鋼界面にファイアライト(Fe2SiO4)というFeとSiの複合酸疵化物が形成される。ファイアライトは約1170℃で液相となり、このファイアライトが液相となると外方酸化層の成長が急激に促進されるためスケールロスが大きく増加することになる。
すなわち、本発明では、加熱工程をその温度域により下記の3つの工程(工程1〜工程3)分け、各工程での加熱雰囲気のO2濃度、H2O濃度を下記の条件を満たすように調整、保持してスラブなどの鋼片の加熱、酸化を実施する。
工程1(温度域:鋼片装入温度〜900℃未満)
O2濃度:1容量%未満、H2O濃度:15容量%未満
工程2(温度域:900〜1170℃未満)
O2濃度:1容量%以上、H2O濃度:15容量%以上
工程3(温度域:1170℃〜鋼片抽出温度)
O2濃度:1容量%未満、H2O濃度:15容量%未満
「Si:1%以上3%以下」
Siは強度を発現しつつ、延性や加工性を確保できる重要な元素であるため1%以上添加する。一方過剰添加は、溶接性、延性を損なうためその上限を3%とする。
Cは鋼材の強度を高めるために必要な元素であり0.04%以上添加することが好ましいが、0.50%を超えると冷間加工性が低下する。
Mnは強度及び靭性を確保できる重要な元素であり高強度鋼材に最低限必要なMn量としてその下限を0.1%とする。しかし過剰添加は延性を損なうためその上限を3.0%とする。
「P:0.03%以下(0は含まない)」
Pは不可避的に含有される元素であるが、微量のPの存在はセメンタイトの析出を遅延し変態を抑制する。しかしながら、過剰添加は延性の劣化とめっき密着性の悪化を招くため0.03%以下とする。
Sは不可避的に含有される元素であるが、硫化物系介在物MnSを形成し、これが鋼材の熱間圧延時に偏析することにより鋼材を脆化させるので、0.03%以下にすることが望ましい。
「Al:0.1%以下」
Alは、脱酸のため、及び焼ならし加熱の際にオーステナイト結晶粒の粗大化を防止するため、好ましくは鋼材に添加する。一方、過剰添加は効果を飽和することに加えて、結晶粒が不安定になるため、0.1%以下にする。より好ましくは0.05%以下である。
Crは鋼材および冷間鍛造品に強度を付与するために必要に応じて添加することができる。効果を発現するために好ましくは0.01%以上添加する。しかし、多量に添加すると延性を失うので2%以下とする。
Tiは、脱酸剤として添加され、好ましくは0.01%以上添加する。しかし、多量に添加すると靭性が低下するので0.1%以下とする。
Niは焼き入れ性を向上させる元素であり、適量添加すれば、CAL焼鈍、冷却時点でのマルテンサイト比率の増大とマルテンサイトのラス構造を微細化する作用を通じて、次工程のCGL焼鈍時における2相域再加熱-冷却処理時の焼き入れ性を良好にし、冷却後の最終的な複合組織を良好なものとし、各種整形加工性を向上させることができる。Niを微量添加することでかかる効果を得ることができるが、かかる効果を得るために好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上添加する。しかしながら高価な元素であるため、製造コストの観点から2%以下にする。好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。
CuもNiと同様に焼き入れ性を向上させる元素であり、Niと同様の作用により各種成型加工性を向上する。かかる効果を得るために好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上添加する。しかしながら高価な元素であるため、製造コストの観点から2%以下にする。好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。
Moは、めっき性を損ねることなく、固溶強化を図る上で重要な元素である。また、Ni、Cuと同様に焼き入れ性を向上させる元素であり、Niと同様の作用により各種成型加工性を向上する。かかる効果を得るために好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上添加する。しかしながら高価な元素であるため、製造コストの観点から2%以下にする。好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下とする。
Bは焼き入れ性を向上する効果があり、必要に応じて添加する。かかる効果を得るために好ましくは0.0001%以上、さらに好ましくは0.0002%以上添加する。しかしながら過剰添加するとめっき性を劣化するため、0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.001%以下とする。
Nbは、微量の添加で微細組織を得ることができ、靭性を損なわずに高強度化を図れる元素である。かかる効果を得るために好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.005%以上添加する。しかしながら、多量添加により過剰に炭化物が生成し、マルテンサイトの堆積率減少或いはその析出強化により強度と加工性のバランスを劣化する。そのため、上限は1%とする。好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。
VもNb同様炭化物の生成する元素であり、鋼板の強度向上に寄与する。かかる効果を得るために好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.005%以上添加する。しかしながら、過剰添加は、コスト高の原因となるだけでなく、降伏点(降伏比)を上昇させて加工性を低下してしまうため、その添加量は1%以下とし、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。
Wは、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転移強化により、鋼板の強度上昇に寄与する。かかる効果を得るために好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.005%以上添加する。しかしながら、過剰添加は炭窒化物の析出を過剰にし、成形性劣化を招くため上限を0.3%とする。好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下とする。
これらの元素は、脱酸に用いられる元素であり、好ましくは0.002%以上、さらに好ましくは0.003%以上添加する。しかしながら、0.03%を超えて添加した場合は、成形性を劣化するのでこれ以下とする。好ましくは合計で0.02%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。
以下に実施例を挙げて本発明の優れた効果を実証することにする。
表1に示す各種成分(鋼種A〜O))の鋼を真空誘導溶解炉にて溶解・鋳造して作製した鋳塊に対して、1100℃×10hの加熱処理を施した後、鍛造(1100℃×2h:30t)、熱間圧延(1100℃×1.5h:30t⇒10t)を施した。当該熱間圧延材から、20mm×20mm×8mmの小片サンプル(本発明の鋼片に相当)を切り出し、小片表面に0.5mm×5mm、深さ2mmの人工疵を放電加工により形成して供試材とした。なお、人工疵は疵の消失状況や内方酸化層厚さを評価するための指標として設けたものである。
Claims (2)
- 成分組成が、C:0.04質量%以上0.50質量%以下、Si:1質量%以上3質量%以下、Mn:0.1質量%以上3.0質量%以下、Al:0.1質量%以下(0質量%を含む)、Cr:2質量%以下(0質量%を含む)、Ti:0.1質量%以下(0質量%を含む)、Ni:2質量%以下(0質量%を含む)、Cu:2質量%以下(0質量%を含む)、Mo:2質量%以下(0質量%を含む)、B:0.01質量%以下(0質量%を含む)、Nb:1質量%以下(0質量%を含む)、V:1質量%以下(0質量%を含む)、W:0.3質量%以下(0質量%を含む)、及び、Ca、Mg、REMの1種または2種以上の元素:合計で0.03%以下(0%は含まない)であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼片を加熱工程により加熱した後に熱間圧延して、鋼材を製造するにあたり、前記加熱工程を温度域により下記3つに分けたとき(工程1、工程2、工程3)、各工程の加熱雰囲気におけるO2濃度、H2O濃度を下記のように保持することにより鋼片疵を低減することを特徴とする表面疵の少ない鋼材の製造方法。
工程1(温度域:鋼片装入温度〜900℃未満)
O2濃度:1容量%以下、H2O濃度:15容量%未満
工程2(温度域:900〜1170℃未満)
O2濃度:1容量%以上、H2O濃度:15容量%以上
工程3(温度域:1170℃〜鋼片抽出温度)
O2濃度:1容量%未満、H2O濃度:15容量%以下
- 前記鋼材が鋼板である請求項1に記載の製造方法。
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JP2014077750A JP6234871B2 (ja) | 2014-04-04 | 2014-04-04 | 表面疵の少ない鋼材の製造方法 |
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JP5128401B2 (ja) * | 2008-07-22 | 2013-01-23 | 株式会社神戸製鋼所 | スケール剥離性に優れたCr含有条鋼材の製造方法 |
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