JP6234746B2 - 皮膜補修方法 - Google Patents

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Description

本発明は皮膜の損傷が、部分的に発生した部材の皮膜補修方法に関する。
動翼、静翼、分割環などのガスタービンの高温部材は、1000℃を超える高温ガス環境下で使用される。高温ガスによる熱的損傷を抑制するため、高温部材に特殊な冷却技術が適用される他、高温部材として高温強度に優れる材料が適用されるとともに高温部材の表面にセラミックス層を有する遮熱コーティングが施される。遮熱コーティングは、高温部材の基体上に減圧プラズマ溶射等で金属接合層を施した後、金属接合層上に大気圧プラズマ溶射により施工される。
高温での長時間に亘る使用や、タービンの発停に伴う温度変化により、遮熱コーティングに剥離や亀裂などの部分的な損傷が発生する。損傷が発生した箇所では、金属接合層や基体が露出して酸化されたりする場合がある。このため、損傷が発生した場合は皮膜の補修が行われる。
特許文献1は、超合金部材上に形成されるセラミックスの断熱被覆の良好な付着性及び体制を確実に与えるための、断熱皮膜を施す前の前処理方法を開示する。
特開2002−256452号公報
皮膜の補修方法として、損傷個所の皮膜を部分的に除去し、新たな皮膜を形成することが考えられていた。しかし、新旧皮膜の界面の密着性が悪く、補修部の皮膜強度が低下して高い皮膜性能(遮熱性、高温耐性)を維持することが困難であった。その後の使用において新旧皮膜界面が起点となり破壊が発生しやすくなることが問題となっていた。
さらに、新規のセラミックス層を形成した後に余剰の膜を除去する加工を施す場合には、加工応力が界面に付与されるとともに、界面に強度の不連続部分が発生する。また、新規のセラミックス層を形成すると膜内に残留応力が発生する。この加工応力、強度の不連続部分、残留応力が界面破壊を助長すると考えられた。
上記理由から、現状技術では損傷発生箇所の面積や損傷の程度に拘らず、部材全体の遮熱コーティング及び金属結合層が除去され、新たに金属結合層及び遮熱コーティングの施工が行われる。しかし、このような皮膜の全面補修はコストが多大となる上、工程数が多く長期間の工期を要していた。特に金属結合層は基体との密着性が高く、複雑な三次元形状を有する部材の場合にはブラスト処理による剥離やグラインダのような機械的除去は困難である。また、上記の方法では基体が切削される場合があることも問題となっていた。
金属結合層の剥離方法として酸洗剥離が用いられることがあるが、排液処理などの環境上の課題が多いのが問題である。また、長時間使用によって金属結合層中のAlが気体に拡散するが、拡散が進んだ部品で酸洗剥離を行うと剥離状況にムラが生じ、剥離されない部分が発生する可能性があり、施工管理が困難であった。
本発明は、損傷が発生した皮膜を簡易な工程で補修するとともに、補修後の皮膜の耐久性を向上させる皮膜補修方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、基体上に金属結合層とセラミックス層とが順に積層された皮膜を有し、前記皮膜の一部分に損傷が発生した部材の皮膜補修方法であって、前記損傷が発生した箇所及び前記損傷の近傍の前記セラミックス層が除去され、膜除去部が形成されて前記金属結合層が露出する膜除去工程と、前記膜除去部に、前記セラミックス層と同組成であり、気孔率が16%以上18%以下である補修セラミックス層が形成される補修工程と、を含み、前記膜除去工程において、前記膜除去部の断面が、5°以上20°以下の角度を有するテーパ状に加工される皮膜補修方法である。
本発明の第2の態様は、基体上に金属結合層とセラミックス層とが順に積層された皮膜を有し、前記皮膜の一部分に損傷が発生した部材の皮膜補修方法であって、前記損傷が発生した箇所及び前記損傷の近傍の前記皮膜が除去され、膜除去部が形成されて前記金属結合層または前記基体が露出する膜除去工程と、前記膜除去部に、前記金属結合層と同組成の補修金属結合層が形成され、前記補修金属結合層上に前記セラミックス層と同組成であり、気孔率が16%以上18%以下である補修セラミックス層が形成される補修工程と、を含み、前記膜除去工程において、前記膜除去部の断面が、5°以上20°以下の角度を有するテーパ状に加工される皮膜補修方法である。
本発明では、剥離などの損傷が発生した場合に部分的に皮膜を剥離させて補修する手法を採用する。
ガスタービンなどの高温部材に形成されるセラミックス層は、遮熱性や熱サイクル耐久性のバランスを考慮して10〜15%の気孔率とされることが多い。本発明では、補修セラミックス層として既存のセラミックス層よりも気孔率が高い膜を形成する。セラミックスは、気孔率が高い程、見かけのヤング率が低下する傾向がある。ヤング率が低い補修セラミックス層を形成すると、高温環境下で発生する熱応力が全方向に分散される。このため、既存のセラミックス層と補修セラミックス層との界面に付与される応力が低減されて、界面での剥離や亀裂などの破壊の発生を抑制することができる。従って、本発明の皮膜補修方法を用いれば、補修後の皮膜の熱耐久性を向上させることができる。
また、膜除去工程において、膜除去部の断面を、5°以上20°以下の角度を有するテーパ状に加工することにより、当該断面での補修セラミックス層の成膜角度が良好となり、断面に十分な厚さの補修セラミックス層が形成され、既存のセラミックス層と補修セラミックス層との密着性が向上する。また、断面において既存のセラミックス層と補修セラミックス層との界面の付与される剥離応力も小さくすることができ、界面での破壊発生を更に抑制することができる。
上記態様において、前記補修工程の前に、前記断面の前記セラミックス層にブラスト処理が施され、前記断面の前記セラミックス層が算術平均粗さRaが6μm以上の粗面に加工されるブラスト処理工程を更に備えることが好ましい。こうすることにより、既存のセラミックス層と補修セラミックス層との密着性が良好となる。
上記態様において、前記補修工程の前に、少なくとも前記膜除去部の周縁に位置する前記セラミックス層の上面が、算術平均粗さRaが3μm以下に研磨される研磨工程を更に備えることが好ましい。
セラミックス層の表面が上記のように滑らかな面であると、セラミックス層上に膜が形成されにくくなる。従って、補修工程においてセラミックス層上にマスクをする必要が無くなる上、補修工程後にセラミックス層上に形成された余剰の補修セラミックス層を除去する必要が無い。本態様に依れば、補修工程後の加工が必要ない為工程を簡略化できるとともに、加工応力等を発生させないために補修後の耐久性を更に向上させることができるという効果を奏する。
本発明では、損傷発生箇所及びその周辺のセラミックス層あるいは皮膜だけが除去されるので、補修に要するコストが低減するとともに補修工程が容易となる。
本発明の補修セラミックス層は既存のセラミックス層よりもヤング率が低いため、補修後の部材が高温環境下で使用されたときに皮膜に発生する熱応力を分散させる効果を発揮する。この結果、既存のセラミックス層と補修セラミックス層との界面への熱応力の集中が抑制され、破壊の発生が発生しにくくなる。
更に、本発明では補修セラミックス層内の残留応力を低減できるとともに、余剰に形成された補修セラミックス層を除去する際に発生する加工応力や強度の不連続部分の発生を抑制することができる。
高温部材の損傷発生箇所の一例を表す断面図である。 高温部材の損傷発生箇所の一例を表す断面図である。 第1実施形態の膜除去工程を説明する概略図である。 第1実施形態のブラスト処理工程を説明する概略図である。 第1実施形態の補修工程を説明する概略図である。 第2実施形態の膜除去工程を説明する概略図である。 第2実施形態の補修工程を説明する概略図である。
本実施形態の皮膜補修方法における対象部材は、基体上に皮膜を有し、皮膜の一部分に損傷が発生した部材である。図1及び図2を用いて、高温ガス環境下で使用された後のガスタービンの高温部材を例に挙げて説明する。
図1及び図2は、高温部材の損傷発生箇所の断面図である。部材1は、基体2上に皮膜3(遮熱コーティング)を有する。
基体2は耐熱合金製であり、例えばIN−738LC(商標名、化学組成:Ni−16Cr−8.5Co−1.75Mo−2.6W−1.75Ta−0.9Nb−3.4Ti−3.4Al(質量%))などが用いられる。
皮膜3は、基体2側から順に金属結合層4及びセラミックス層5が積層されている。
金属結合層4は、例えばMCrAlY合金(Mは、Ni,Co,Fe等の金属元素またはこれらのうち2種類以上の組合せを示す)が用いられる。金属結合層4の膜厚は、例えば、100μm程度である。
セラミックス層5は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が用いられ、溶射法やEBPVD法などにより形成される。セラミックス層5の膜厚は300〜500μmである。セラミックス層5は気孔率が10〜15%の範囲内になるように、成膜条件が制御されている。
例えば、大気圧プラズマ溶射法によるセラミックス層5の成膜は、以下の条件で実施される。
粉末粒度:10%
積算粒度:約20μm
電圧:60〜65V
電流:600A
粉末供給量:60g/min
溶射距離:150mm
図1はセラミックス層5が剥離し内側のセラミックス層5が露出した例である。図2に示すように、剥離面の傾斜が不連続に変化する箇所になどに位置するセラミックス層に亀裂6が残存している。
図2はセラミックス層5の剥離により金属結合層4が露出した例である。金属結合層4も剥離し、基体2が露出する場合もある。このようなケースでは、セラミックス層5と金属結合層4との界面に亀裂6が残存する。高温での酸化雰囲気に金属結合層4や基体2が曝されることにより、金属結合層4及び基体2表面に酸化膜7が形成される。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る皮膜補修方法では、図1のようにセラミックス層5内に損傷が発生している場合などにおいて、セラミックス層5を補修する。第1実施形態の皮膜補修方法は、膜除去工程及び補修工程を有する。
(膜除去工程)
図3は、第1実施形態の膜除去工程を説明する概略図である。損傷が発生した箇所及びその近傍のセラミックス層5の上方に、回転工具10が設置される(図3(a))。回転工具10は、テーパ部11と平面部12とを有し、テーパ部11に砥粒13が固定されている。砥粒13として、ダイヤモンドなどが用いられる。平面部12には砥粒は固定されていない。
次いで、回転工具10が回転しながら、損傷が発生した箇所及びその近傍のセラミックス層5に押圧される(図3(b))。これにより、砥粒13と接触したセラミックス層5が研削除去される。平面部12には砥粒13がないため、回転工具10と金属結合層4が接触しても金属結合層4は研削されない。従って、第1実施形態では加工深さが制限され、セラミックス層5のみが除去される。
損傷が発生した箇所が回転工具10の平面部12よりも大きい場合は、NC機械等のマニピュレータが回転工具10を把持し、マニピュレータが損傷領域で回転工具10を面方向に移動させても良い。この場合、マニピュレータが画像処理により損傷が発生した箇所の形状を認識し、マニピュレータが損傷領域の形状に合わせて回転工具10の移動パスを取得しても良い。
図3(c)に示すように、セラミックス層が除去された領域(膜除去部20)は、テーパ状の断面21と、膜除去部20は断面21に囲まれる平坦部22とを有する。この平坦部22で金属結合層4が露出する。
断面21の傾斜ψは回転工具10のテーパ部11の傾斜θに一致する。本実施形態において、テーパ部11の傾斜θ及び断面21の傾斜ψは特に限定されないが、後述する補修工程での補修セラミックス層の被覆性や界面強度を考慮すると、5°以上20°以下であることが好ましい。一方、傾斜ψが大きくなると剥離が発生しやすくなる。傾斜ψが20°以下であれば、確実に剥離発生を防止することができる。
膜除去工程後の断面21のセラミックス層5が算術平均粗さRa6μm未満の滑らかな面となる場合、断面21にブラスト処理が施されても良い。
(ブラスト処理工程)
図4はブラスト処理工程を説明する概略図である。膜除去工程後のセラミックス層5上に、開口部が膜除去部20に一致するようにマスク23が配置される。マスク23の開口部は、膜除去部20に対応した形状である。
マスク設置後、断面21のセラミックス層5にブラスト処理が施される。ブラスト材(粒子)は、アルミナなどのセラミックス製とされる。処理の効率化を図るため、ブラスト処理工程ではセラミックス層5の断面21に主としてブラスト材が衝突するように、ノズル24の位置が制御される。具体的に、ブラスト材の噴射方向が断面21に略直交するように、ノズル24位置が調整される。
このブラスト処理により、セラミックス層5の断面21は、算術平均粗さRaが6μm以上の粗面に加工される。上記の算術平均粗さRaとなるように、ブラスト処理条件としてノズル径、ブラスト材の種類及び粒度、噴射圧力等が設定される。例えば、以下の処理条件に設定される。
ブラスト材粒度:80メッシュ
噴射圧力:0.6MPa
(補修工程)
図5は第1実施形態の補修工程を説明する概略図である。膜除去工程後のセラミックス層5上に、マスク23の開口部が膜除去部20に一致するようにマスク23が配置される。ブラスト処理工程を行った場合は、マスク23を設置したままにしておく。
マスク23が設置された状態で、膜除去部20に補修セラミックス層30が形成され、補修セラミックス層30により膜除去部20が充填される。
補修セラミックス層30は、基体2に既に施工されているセラミックス層5と同組成である。補修セラミックス層30は、大気圧プラズマ溶射などの溶射法などの物理蒸着法により形成される。補修セラミックス層30の成膜性を考慮すると、補修セラミックス層が基体2(あるいは平坦部22)に対して略直交する方向に成長させることが好ましい。例えば溶射法により補修セラミックス層を形成する場合は、溶射粒子の噴射方向が基体2あるいは平坦部22と略直交するように溶射ノズル25が設置される。溶射ノズルが走査されることにより、膜除去部20全体に補修セラミックス層30が形成される。
施工後の補修セラミックス層30の気孔率は、既存のセラミックス層5よりも高く16〜18%とされる。気孔率が18%を超えると、補修セラミックス層30の強度が低下するので好ましくない。
例えば大気圧プラズマ溶射法を用いる場合、粉末粒度:10%積算粒度;約40μm程度の粉末を用いる等、粒度の大きな粉末を用いることで、上記気孔率の補修セラミックス層が形成できる。
補修工程後、マスク23が取り外される。次いで、補修セラミックス層30の表面研磨が実施される。表面研磨により、マスク23で被覆されずに既存のセラミックス層5上に形成された補修セラミックス層30が除去されるとともに、既存のセラミックス層5と補修セラミックス層30の高さが均一化される。
セラミックス層5が補修された部材が高温環境下で使用されると、金属結合層4とセラミックス層5との熱膨張係数の違いに起因して、熱応力が発生する。金属結合層4の方がセラミックス層5よりも熱膨張係数が高いため、セラミックス層5には面方向に引張応力が負荷される。熱応力により断面21に付与される引張応力は、断面21の傾斜方向に平行な分力(平行分力)と、断面21の傾斜方向に直交する分力(垂直分力)とに分けられる。垂直分力は界面での剥離や亀裂などの破壊を発生させる力となる。
第1実施形態の皮膜補修方法により形成される補修セラミックス層は、既存のセラミックス層よりもポーラスであるため、ヤング率が低い。ヤング率が低い補修セラミックス層は熱応力を全方向に分散させる。このため、断面に付与される引張応力を低減することができ、垂直分力を小さくすることができる。
また、断面21の傾斜が小さい程、断面21でセラミックス層5と補修セラミックス層30とを剥離させる垂直分力が小さくなる。このため、5°〜20°のテーパ状断面となるようにセラミックス層を除去し、補修セラミックス層を膜除去部に充填すると、界面での破壊が更に抑制される。
第1実施形態の変形例として、補修工程の前に研磨工程が実施されても良い。
(研磨工程)
除去工程後、あるいは、ブラスト処理工程後、少なくとも膜除去部20の周縁に位置する既存のセラミックス層5の上面が研磨される。研磨方法としては、例えば、手研磨やバレル研磨などが挙げられる。研磨工程により、セラミックス層5の上面は算術平均粗さRaが3μm以下の滑らかな面に加工される。
研磨工程が実施される場合、後の補修工程ではセラミックス層5上にマスクが設置されないで補修セラミックス層30が形成される。セラミックス層5の表面が上記のように滑らかな面であると、セラミックス層5上に補修セラミックス層30が形成されにくくなる。このため、補修工程後にセラミックス層5上に形成された余剰の補修セラミックス層30が除去される必要が無い。補修工程後の加工が必要ない為工程を簡略化できるとともに、加工応力等が発生しないために、補修後の耐久性を更に向上させることができる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る皮膜補修方法を以下で説明する。第2実施形態では、図2のように金属結合層4や基体が露出している場合において、皮膜3(セラミックス層5及び金属結合層4)を補修する方法である。
(膜除去工程)
図6は、第2実施形態の膜除去工程を説明する概略図である。損傷が発生した箇所及びその近傍のセラミックス層5の上方に、回転工具110が設置される(図6(a))。回転工具110は、テーパ部111及び平面部112に砥粒113が固定されている。砥粒113は第1実施形態と同じものが使用できる。
次いで、回転工具110が回転しながら、損傷が発生した箇所及びその近傍のセラミックス層5に押圧される。これにより、砥粒113と接触したセラミックス層5が研削除去される。
平面部112の砥粒113が金属結合層4と接触すると、金属結合層4の研削除去が開始される。回転工具110は、金属結合層4の剥離により露出した面が研削される深さまで金属結合層4を研削する(図6(b))。基体2が露出し酸化膜7が形成された場合は、基体2の酸化膜7も研削する。回転工具110による研削により基体2が損傷しないように、第2実施形態では回転工具110の深さ方向の位置が制御されながら研削が行われる。
図6(c)に示すように、膜除去部120は、テーパ状の断面121と断面121に囲まれる平坦部122とを有する。この平坦部122で酸化されていない金属結合層4や基体2が露出する。断面121はセラミックス層5の面と金属結合層4の面とで構成される。断面121の傾斜ψは回転工具110のテーパ部111の傾斜θに一致する。本実施形態においても、断面121の傾斜ψは5°以上20°以下であることが好ましい。
第2実施形態においても、損傷箇所が回転工具110の平面部112よりも大きい場合は、マニピュレータが損傷領域で回転工具110を面方向に移動させても良い。この場合、マニピュレータが損傷領域の形状に合わせて回転工具110の移動パスを取得しても良い。
第2実施形態の変形例として、上記の膜除去工程でセラミックス層5の断面21が算術平均粗さRa6μm未満の滑らかな面となる場合、第1実施形態と同様のブラスト処理工程が施されても良い。
また、補修工程の前に、少なくとも膜除去部20の周縁に位置する既存のセラミックス層5の上面が研磨される研磨工程が実施されても良い。研磨工程は、第1実施形態と同条件で実施することができる。
(補修工程)
図7は第2実施形態の補修工程を説明する概略図である。膜除去工程後のセラミックス層5上に、マスクの開口部が膜除去部20に一致するようにマスク23が配置される。ブラスト処理工程を行った場合は、マスク23を設置したままにしておく。
補修金属結合層31は、基体2に既に施工されている金属結合層4と同組成である。補修金属結合層31は、大気圧プラズマ溶射などの溶射法や、補修金属結合層31の成膜性を考慮すると、補修金属結合層31が基体2に対して略直交する方向に成長させることが好ましい。例えば溶射法により補修金属結合層31を形成する場合は、溶射粒子の噴射方向が基体2と略直交するように溶射ノズルが設置される。大気圧プラズマ溶射法を用いて補修金属結合層31を形成する条件は以下のとおりである。
電圧:60〜65V
電流:500〜550A
粉末供給量:10g/min
溶射距離:150mm
補修金属結合層31は、金属結合層4と同一高さになるように形成される。このため、膜除去工程で除去された金属結合層4の厚さを考慮して、補修金属結合層31の厚さが決定される。
補修金属結合層31上の膜除去部120に、第1実施形態と同様の補修セラミックス層30が形成される。補修セラミックス層30は、第1実施形態と同様に、セラミックス層5と同組成であり、気孔率が16%以上18%以下の膜である。補修セラミックス層30の形成条件は、第1実施形態と同様とされる。
補修工程により、膜除去部120は、補修金属結合層31及び補修セラミックス層30で充填される。
第2実施形態においても、ヤング率が低いポーラスな補修セラミックス層により熱応力が全方向に分散されるため、断面に付与される引張応力の垂直分力を小さくすることができる。この結果、既存の皮膜と補修皮膜との間の界面での破壊を抑制することができる。
<実施例>
IN−738LC(商標名)製の基体上に、CoNiCrAlY合金の金属結合層(膜厚:100μm)、及び、YSZのセラミックス層(膜厚:500μm)が形成された試験片(大きさ:約30mm直径×5mm厚さ)を準備した。なお、セラミックス層は、大気圧プラズマ溶射を用いて以下の条件で形成した。セラミックス層の気孔率は断面組織から計測した。
粉末粒度:10%
積算粒度:約20μm
電圧:60〜65V
電流:600A
粉末供給量:60g/min
溶射距離:150mm
セラミックス層の気孔率:10〜15%
(膜除去工程)
図6に示す回転工具(テーパ部の傾斜:10°)を用い、試験片の金属結合層及びセラミックス層を除去し、基体を露出させた。
(ブラスト処理工程)
膜除去部のセラミックス層に対し、ブラスト材としてアルミナ(80メッシュ)を用い、噴射圧力:0.6MPaの条件でブラスト処理を行った。ブラスト処理後のセラミックス層における位置が異なる2点の算術平均粗さを計測したところ、6.6μm、6.3μmであった。
(補修工程)
膜除去部の基体に対し、上記金属結合層と同組成のMCrAlY合金を以下の条件で大気圧プラズマ溶射し、補修金属結合層を形成した。
電圧:60〜65V
電流:540A
粉末供給量:10g/min
溶射距離:150mm
膜厚:100μm
補修金属結合層上に、一般部に使用する粉末よりも粗い、粉末粒度:10%、積算粒度:約40μmの粉末を用いて、補修セラミックス層を形成した。補修セラミックス層の気孔率は16〜18%であった。
<比較例>
比較例でのテーパ部の傾斜は30°として、上述の膜除去工程を行った。補修工程において、本発明で記されているような前処理(界面加工、ブラスト等)を実施せずに、既存のセラミックス層と同条件で大気圧プラズマ溶射を行った。気孔率は、既存セラミックス層同様に10〜15%であった。
<熱サイクル試験>
実施例及び比較例の試験片に対し、熱サイクル試験を実施した。熱サイクル試験の条件は以下のとおりである。熱サイクル試験により皮膜で剥離が発生するまでの熱サイクル数を計測した。
表面温度:1300℃、1600℃
加熱時間:約3分
冷却時間:約3分
Figure 0006234746
傾斜10°のテーパ状に膜を除去し、ブラスト処理、アンダーコート施工、さらに気孔率16〜18%となる補修セラミックス層の成膜を実施した実施例は、比較例よりも高温耐久性が向上した。この結果から、気孔率が高い補修セラミックス層を、適正な前処理(テーパ加工及びブラスト処理等)の後に形成することにより、新旧の皮膜界面での剥離の発生が抑制され、良好な補修性能が得られることがわかった。
1 部材
2 基体
3 皮膜
4 金属結合層
5 セラミックス層
6 亀裂
7 酸化膜
10,110 回転工具
11,111 テーパ部
12,112 平面部
13,113 砥粒
20,120 膜除去部
21,121 断面
22,122 平坦部
30 補修セラミックス層
31 補修金属結合層

Claims (4)

  1. 基体上に金属結合層とセラミックス層とが順に積層された皮膜を有し、前記皮膜の一部分に損傷が発生した部材の皮膜補修方法であって、
    前記損傷が発生した箇所及び前記損傷の近傍の前記セラミックス層が除去され、膜除去部が形成されて前記金属結合層が露出する膜除去工程と、
    前記膜除去部に、前記セラミックス層と同組成であり、気孔率が16%以上18%以下である補修セラミックス層が形成される補修工程と、を含み、
    前記膜除去工程において、前記膜除去部の断面が、5°以上20°以下の角度を有するテーパ状に加工される皮膜補修方法。
  2. 基体上に金属結合層とセラミックス層とが順に積層された皮膜を有し、前記皮膜の一部分に損傷が発生した部材の皮膜補修方法であって、
    前記損傷が発生した箇所及び前記損傷の近傍の前記皮膜が除去され、膜除去部が形成されて前記金属結合層または前記基体が露出する膜除去工程と、
    前記膜除去部に、前記金属結合層と同組成の補修金属結合層が形成され、前記補修金属結合層上に前記セラミックス層と同組成であり、気孔率が16%以上18%以下である補修セラミックス層が形成される補修工程と、を含み、
    前記膜除去工程において、前記膜除去部の断面が、5°以上20°以下の角度を有するテーパ状に加工される皮膜補修方法。
  3. 前記補修工程の前に、前記断面の前記セラミックス層にブラスト処理が施され、前記断面の前記セラミックス層が算術平均粗さRaが6μm以上の粗面に加工されるブラスト処理工程を更に備える請求項1又は請求項に記載の皮膜補修方法。
  4. 前記補修工程の前に、少なくとも前記膜除去部の周縁に位置する前記セラミックス層の上面が、算術平均粗さRaが3μm以下に研磨される研磨工程を更に備える請求項1乃至請求項のいずれかに記載の皮膜補修方法。
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