JP6234397B2 - 取水設備の水生生物付着低減方法 - Google Patents
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Description
防汚塗装法は、塗膜の劣化による性能劣化が生ずるため、定期的に塗り替えることが必要となり、そのための労力とコストを要する。
紫外線照射法は、特許文献1の記載では紫外線ランプをLED化することにより海棲生物の着生・繁殖を低コストで防止できるとしているが、これは実験室レベルでの検証であり、実際の発電所の取水設備において海水中の幼生を不活性化するためには、高いエネルギーが必要となりコスト高になると考えられる。また、取水設備内の海水の濁度により紫外線が減衰することから効果が安定しないという課題がある。
温水処理法は、取水設備のすべての付着生物を死滅させるには、大量の海水を一定時間以上加熱する必要があるため、多大なコストを要する。また、この方法は、取水設備の稼動を止めて行う必要があるため、長期運転のニーズに対応することができない。
レーザ照射法は、稼働中の取水設備に適用することが可能であるが、稼働中に取水される海水中のすべての水生生物の幼生を死滅させるためには、取水設備の大幅な改造を行うことが必要となり、多大なコストを要する。
このため、発電所では、取水設備に対して環境汚染を発生しない範囲で防汚塗装を施し、定期点検時や予防保全の必要時に取水設備を清掃して付着した水生生物を除去するようにしている場合が多く、発電所の稼働率向上の観点からも防汚塗装に加えて、稼働中の取水設備に適用できる新たな対策が望まれていた。
また、取水設備の上流側流水中に配備した人工基質を、付着した水生生物の幼生が大きく成長する前に回収して交換するので、成長した水生生物の幼生が流れを停滞させたり、一度付着した水生生物の幼生がはがれて取水設備内に取り込まれたりすることを抑制でき、取水設備への水生生物の付着を効果的に低減できる。
また、流水中から回収された人工基質は、付着した水生生物の幼生を除去して再利用するようにしたので、廃棄物の発生を抑制して低コストで効率よく取水設備への水生生物の付着を低減できる。
尚、人工基質を水上に回収する工程は、水生生物の幼生の付着効率が低下する前に行うことが好ましい。これにより、一度付着した水生生物の幼生がはがれて取水設備内に取り込まれることをより効果的に抑制し、取水設備への水生生物の付着を低減できる。
尚、上述のように、人工基質を水上に回収する工程は、水生生物の幼生の付着率が低下する前に行うことが好ましい。
人工基質を水洗い・乾燥させることで、人工基質に付着した水生生物の幼生を適切に除去し、人工基質の再利用を図ることができる。
水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でループ状に形成した紐状の担体を取水設備の上流側の配管内に付設することで、水流に対する人工基質の接触条件が一定化するので、所望の水生生物付着低減効果を安定的に達成することが可能となる。
尚、人工基質の設置・回収は、人工基質が付設された配管ごと行うようにしてもよく、上流側から配管内に人工基質を挿入することで設置し、配管内の人工基質を上流側から引き出すことで回収するようにしてもよい。
水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でフレーム内に充填して形成した人工基質充填ユニットを取水設備の上流側流水中に配備することで、水流に対する人工基質の接触条件が一定化するので、所望の水生生物付着低減効果を安定的に達成することが可能となる。
尚、人工基質ユニットは、水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でループ状に形成した紐状の担体を用い、これをフレームに設けた編地に配列して固定するようにしたものでもよく、ハニカム構造の通路を有するブロック内に付設するようにしたものでもよい。
ビニロンを含む混紡系の繊維体は、バイオフィルムが良く繁殖するので、水生生物の幼生の付着率が高い。また、流水中での使用に対して高い耐久性を有するため、繰り返し使用することができ、廃棄物の発生を抑制して低コストで取水設備への水生生物の付着低減を図ることができる。
人工基質に、対象とする水生生物の幼生が好むたんぱく質等の誘引物質を付着させておくことで、少ない人工基質によって、多くの水生生物の幼生を付着させることができ、より高い付着低減効果を得ることができる。
図1に、ロープ浸漬試験を行った実験装置の構成と、それによって得られた試験結果を示す。尚、対象とした発電所においては、取水設備に付着・成長して被害を発生させているのは主としてムラサキイガイであるため、除去対象とする水生生物をムラサキイガイとした。
モデル試験に用いた人工基質は、木綿製三つよりロープ、ポリプロピレン製三つよりロープ、ビニロン製三つよりロープ、ナイロン製三つよりロープ、ビニール製ネット、ナイロン製ネット、ビニール製ネット、ポリエチレン製接触材、ポリエステル製接触材、ビニロン製接触材、ポリプロピレン製接触材についての予備浸漬試験の結果に基づき、水生生物の幼生が付着しやすく、流れの停滞を発生させないビニロン製接触材を選定した。
また、ここで除去対象としたイガイは、経験上流速が15〜30cm/秒のときに好んで配管に付着することから、今回のモデル試験では、人工基質と海水との接触時間が最も長くなる流速15cm/秒とし、流量20L/分とした。
通常、接触材を排水浄化に用いる際には、流量60L/分、流速1cm/秒に対して60mを使用するので、流量20L/分、流速15cm/秒に対しては同率で使用するとすれば約1.4mと考えられ、確実な効果を得るため、約2倍の3mの接触材を使用することとした。
このようにすることで、水生生物が付着しやすい条件となった1〜3週間目の人工基質が流れの方向に常に含まれ、水生生物の幼生の付着率を全体として常に一定水準以上に保ちながら運用されるので、取水設備への水生生物の付着を安定的に低減できる。
また、これらの配管系統に対して、一定の流量20L/分で連続して通水するために500Lのヘッドタンクを設け、揚水ポンプにより汲み上げた海水を送水ポンプによりそれぞれの配管系統に通水するようにした。
上記のようなモデル試験系統を用い、約2ヶ月間の海水通水実験を行った。尚、モデル試験は、試験実施時期の関係で、春季に付着するムラサキイガイに代えて、夏場の高水温時期に付着するミドリイガイで効果を確認することとした。
設置後3週間で最も大きく成長したマガキは、殻長が14mmあったが、全体としては概ね10mm以下であり、幼生の成長によって流れを停滞させることや、脱落して下流に悪影響が生ずる可能性のないサイズであった。
図5に、設置50日後の人工基質を付設しない対照区の下流側配管0〜3mと、人工基質を付設した試験区の下流側配管0〜3mの生物付着状況を比較した写真を示す。写真に示すように、対照区の下流側配管には殻長約2〜4cmに成長したマガキが配管を閉塞した様子が観測された。一方、試験区の下流側配管にはマガキがほとんど認められず、閉塞は生じていなかった。但し、試験区の下流側配管の地側に堆積した泥の中には、イガイ科のホトトギスガイが多く付着していることが観測された。
図6に、試験終了後の対照区と試験区の下流側0m、4m、8m、12mの付着量測定管における生物付着状況を比較した写真を示す。写真に示すように、対照区の0mと4mにおいて殻長が約2〜3cmのマガキの付着が認められ、8mと12mにはフジツボの付着が認められた。一方、試験区の下流側配管の地側には泥状の堆積があり、そのなかにホトトギスガイが多く認められた。
尚、試験区の下流側配管の地側においては、泥を住処とするホトトギスガイが多く付着し、対照区を上回る結果となったが、これは試験装置の流速が発電所の取水設備の流速よりも低いため配管内に泥が堆積したことに起因して付着したものと想定され、発電所の取水設備に適用する場合には問題にならないと考えられる。
尚、上記モデル試験では、人工基質は配管とともに設置・交換するものとして説明したが、配管自体は固定設備とし、上流側から人工基質を配管内に挿入することで設置し、配管内から人工基質を引き出すことで回収するようにしてもよい。
まず、直径8mm、長さ15cmのビニロン製ロープを流れに対して垂直に1週間設置したときのムラサキイガイの付着低減率を試算する。ロープ浸漬試験を開始した際の発電所の取水設備に存在するムラサキイガイの幼生密度は、海水を採取して計測したところ、取水口で99個体/m3、循環水管(スポンジボール回収器のドレン)で41個体/m3であったことから、取水設備に付着するムラサキイガイは58個体/m3と推定される。これに対して、ロープ浸漬試験において付着した幼生の付着数の変化に基づいて幼生密度の変化率を求めて反映すると、1週間当りの幼生数は98.478個体/m3と推定される。従って、ビニロン製ロープを流れに対して垂直に1週間設置したときのムラサキイガイの付着低減率は、246÷98.478≒0.25%と推定される。また、取水路の流速は1.33m/秒であることから、直径8mmのロープが海水に接触する接触時間は、8÷1330=0.006秒である。
また、既存の接触材に対して、対象とする水生生物の幼生が好むたんぱく質等の誘引物質を付着するようにしてもよい。これにより、特定の水生生物の幼生に対して高い付着率を得ることが可能となり、設置場所の気候条件や設置目的等に対応したより実用性の高い水生生物の付着低減方法を実現できると考えられる。
このような除塵機への生物付着による障害発生を予防するためには、水深2mの範囲の水生生物の付着低減を図ればよいので、上記ビニロン製接触材を用いた本願発明の水生生物付着低減方法をそのまま適用することが可能と考えられる。
このような昇降架台28を用いて、人工基質ユニット結合体26を所定の水深に設置し、1週間ごとに人工基質ユニット結合体26を水上に引き上げ、水上で最後段の人工基質ユニットを取り外し、最前段に待機中の人工基質ユニットを連結し、再び流水中に投入することで、人工基質ユニットのローテーションを行う。
また、水生生物の幼生の付着率を全体として一定水準に保ちながら運用する必要がない場合には、1段の人工基質ユニットでもよい。
尚、本願発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を奏する限り、各実施形態で述べた構成要素を適宜入れ替えたり、新たな構成要素を追加したり、一部の構成要素を削除したりしてもよいことはいうまでもない。
12 人工基質付設配管
20 人工基質ユニット
22 人工基質固定網地
24 人工基質充填フレーム
26 人工基質ユニットの結合体
28 人工基質ユニットの昇降機構
30 除塵機
40 整流板
Claims (8)
- 取水設備の上流側流水中に、水生生物の幼生が付着しやすく、流れを停滞させない人工基質を配備することで、取水設備への水生生物の付着を低減させる方法であって、
前記取水設備の上流側流水中に配備された人工基質を付着した水生生物の幼生が大きく成長する前に水上に回収する工程と、水上で待機中の人工基質を前記回収された人工基質に代えて設置する工程と、前記回収された人工基質に付着した水生生物の幼生を除去する工程と、前記水生生物が除去された人工基質を次に設置する人工基質として水上で待機させる工程を繰り返し実行させ、
前記人工基質は、水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でループ状に形成した紐状の担体を取水設備の上流側の配管内に付設するようにしたことを特徴とする、取水設備の水生生物付着低減方法。 - 取水設備の上流側流水中に、水生生物の幼生が付着しやすく、流れを停滞させない人工基質を配備することで、取水設備への水生生物の付着を低減させる方法であって、
前記取水設備の上流側流水中に配備された人工基質を付着した水生生物の幼生が大きく成長する前に水上に回収する工程と、水上で待機中の人工基質を前記回収された人工基質に代えて設置する工程と、前記回収された人工基質に付着した水生生物の幼生を除去する工程と、前記水生生物が除去された人工基質を次に設置する人工基質として水上で待機させる工程を繰り返し実行させ、
前記人工基質は、水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でフレーム内に充填してブロック状に形成した人工基質充填ユニットを取水設備の上流側流水中に配備するようにしたことを特徴とする、取水設備の水生生物付着低減方法。 - 取水設備の上流側流水中に、水生生物の幼生が付着しやすく、流れを停滞させない人工基質を流れに沿って複数段配備することで、取水設備への水生生物の付着を低減させる方法であって、
前記取水設備の上流側流水中に配備された人工基質のうち、流れに対して最後段に配備された人工基質を付着した水生生物の幼生が大きく成長する前に水上に回収する工程と、残された流水中の人工基質を流れに対して後段側に移設する工程と、水上で待機中の人工基質を前記移設させた人工基質の前段側に設置する工程と、前記回収された人工基質に付着した水生生物の幼生を除去する工程と、前記付着した水生生物の幼生を除去した人工基質を次に設置する人工基質として水上で待機させる工程を繰り返し実行させるようにしたことを特徴とする、取水設備の水生生物付着低減方法。 - 前記人工基質を取水設備の上流側流水中に3段配備し、前記各工程を概ね1週間周期で実行するものであって、取水設備の上流側から第1段目に流水中に設置後概ね0〜1週間の人工基質が、第2段目に流水中に設置後概ね1〜2週間の人工基質が、第3段目に流水中に設置後概ね2〜3週間の人工基質が、それぞれ設置されるようにしたことを特徴とする、請求項3に記載の取水設備の水生生物付着低減方法。
- 前記人工基質は、水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でループ状に形成した紐状の担体を取水設備の上流側の配管内に付設するようにしたことを特徴とする、請求項3または4に記載の取水設備の水生生物付着低減方法。
- 前記人工基質は、水生生物の幼生が付着しやすい繊維体を所定の密度でフレーム内に充填してブロック状に形成した人工基質充填ユニットを取水設備の上流側流水中に配備するようにしたことを特徴とする、請求項3または4に記載の取水設備の水生生物付着低減方法。
- 前記人工基質は、ビニロンを含む混紡系の繊維体により形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の取水設備の水生生物付着低減方法。
- 前記人工基質は、対象とする水生生物の幼生を誘引する誘引物質を付着させたものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の取水設備の水生生物付着低減方法。
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