JP6232034B2 - 鋳抜きピンおよび鋳造用金型 - Google Patents
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Description
鋳抜きピンには、溶湯が凝固する際の収縮力、スプレーやエアブローによる急冷、膨張や収縮が部分的に起こることによって生じる応力差、さらには鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)が繰り返し作用する。
特許文献1に記載される鋳抜きピンは、一体に形成される鋳抜きピンの中径部と先細りテーパ部との境界部に繰り返し応力が作用することによる折損を抑制するために、インナーピンとスリーブとを組み合わせたものである。特許文献1に開示される鋳抜きピンは、中径部と先細りテーパ部との間の応力集中部を排除した構造とすることにより、先細りテーパ部の根元からの折損を抑制することができる。
本発明の一態様に係る鋳抜きピンは、鋳造用金型に軸線に沿って形成された挿入穴に挿入され、前記挿入穴の形状に対応するように前記軸線に沿って形成された本体部と、前記本体部の先端側に連結されるとともに前記挿入穴からキャビティ部へ突出する突出部とを備え、前記突出部は、基端側の第1位置から先端側の第2位置に向けて漸次外径が小さくなるとともに勾配変化位置において前記軸線に対する傾斜角度が前記基端側の第1角度から前記先端側の第2角度に変化する抜き勾配が形成されたテーパ部を有し、D1<L1<2・D1を満たす鋳抜きピン。ここで、D1:前記第1位置における前記テーパ部の外径、L1:前記第1位置から前記勾配変化位置までの前記軸線に沿った距離である。
第1位置から第2位置へ向けて一定の傾斜角度の抜き勾配を形成した鋳抜きピンにおいては、テーパ部の全領域において略均一の離型抵抗が作用し、テーパ部の基端側に金属疲労が過大に蓄積する。一方、本発明の一態様に係る鋳抜きピンによれば、勾配変化位置の基端側または先端側において傾斜角度の大きい領域が形成されるため、テーパ部の一部の領域において離型抵抗が低減されるため、テーパ部の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
そこで、本発明の一態様に係る鋳抜きピンは、D1<L1を満たすようにした。ここで、L1は、第1位置から勾配変化位置までの軸線に沿った距離である。
このようにすることで、テーパ部の勾配変化位置よりも基端側の領域の離型抵抗を低減し、テーパ部の基端側に蓄積される金属疲労によって鋳抜きピンが折損に至る不具合を抑制することができる。
このようにすることで、テーパ部の勾配変化位置よりも先端側の領域の離型抵抗を低減し、テーパ部の基端側に蓄積される金属疲労によって鋳抜きピンが折損に至る不具合を抑制することができる。
このようにすることで、鋳抜きピンの内部に形成される有底穴に冷却水を導く冷却パイプを配置して鋳抜きピンの周囲の鋳造製品を冷却し、鋳造製品の凝固を促進することができる。
本発明の一態様に係る鋳造用金型によれば、キャビティ部へ突出する突出部が有するテーパ部に作用する離型抵抗を低減させてテーパ部の根元が折損に至る不具合を抑制した鋳抜きピンが挿入された鋳造用金型を提供することができる。
本発明の第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200について、図面を参照して説明する。
図1に示す本実施形態のダイカスト鋳造用金型200は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等の金属の溶湯を金型に射出して製品の鋳造を行うダイカスト鋳造装置に用いられる金型である。
以上のようにして、ダイカスト鋳造装置は、鋳造された製品を固定型および可動型から離型する。
図1に示すように、ダイカスト鋳造用金型200には、挿入穴210に挿入された状態で固定型に固定される鋳抜きピン100が設けられている。鋳抜きピン100は、締結ボルトが締結されるボルト穴の下穴等を鋳造製品に形成するために用いられるものである。
例えば、可動型に挿入穴210が形成されているとともに挿入穴210に鋳抜きピン100が固定されていてもよい。
また、例えば、可動型に対して相対的に移動可能な摺動中子(スライドコア)に固定されていてもよい。
図1に示すように、本実施形態の鋳抜きピン100は、挿入穴210の形状に対応するように軸線X1に沿って形成される本体部10と、本体部10の先端側(キャビティ部300側)に連結されるとともに挿入穴210からキャビティ部300へ突出する突出部20と、本体部10および突出部20の軸線X上の位置を位置決めする拡径部(位置決め部)30とを備える。
図1に示すように、拡径部30の先端側の端面30aは、挿入穴210に挿入された状態で、挿入穴210の段部220に突き当てられる。これにより、鋳抜きピン100の本体部10および突出部20の軸線X1上の位置が固定される。
図2に示すように、突出部20は、抜き勾配が形成されたテーパ部21と、テーパ部21の基端側に連結される基端部22と、テーパ部21の先端側に連結される先端部23とを有する。
図2および図3(図2に示すテーパ部の勾配変化位置Pc近傍を示す縦断面図)に示すように、テーパ部21の軸線X1に対する傾斜角度は、勾配変化位置Pcにおいて基端側の角度θ1(第1角度)から先端側の角度θ2(第2角度)に変化するようになっている。
θ1>θ2 (1)
0.5°<θ1≦2.0° (2)
0.5°≦θ2<2.0° (3)
以上の条件式(1)〜(3)の全てを満たす角度θ1および角度θ2は、例えば、角度θ1が1.5°であり角度θ2が0.5°である。
一方、実線で示す本実施形態のテーパ部21の外周面の軸線X1に対する傾斜角度は、想像線ILで示す傾斜角度に比べ、勾配変化位置Pcよりも基端側で大きく、勾配変化位置Pcよりも先端側で小さくなっている。
D1<L1<2・D1 (4)
以上の条件式のD1<L1を満たすようにしたのは、発明者らが、以下の知見を得たからである。
・位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピン100の折損が発生する頻度が高い。
・勾配変化位置Pcを、位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
先端部23は、テーパ部21の先端側の位置P2から鋳抜きピン100の先端と一致する位置P3までの部分である。図2に示すように、位置P1から位置P3までの距離はL2となっている。
次に、以上の条件式(1)〜(4)を満たす鋳抜きピン100を用いて製品を鋳造した場合の実施例と比較例について説明する。本実施例は、鋳抜きピン100が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数を測定した実験例である。
本実施例は、図2および図3において、D1=4.5mm,D2=3.9mm,L1=6.0mm,D3=2.0mm,L2=22.4mm,θ1=1.5°,θ2=0.5°とした鋳抜きピン100を用いて行ったものである。
すなわち、本実施例では勾配変化位置Pcでテーパ部21の傾斜角度が1.5°から0.5°に変化するのに対して、比較例ではテーパ部21の傾斜角度が位置P1から位置P2に至るまで1.0°で一定である。
本実施例による結果として、鋳抜きピン100が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、本実施例では約34000個(鋳造回数約34000回)であったのに対し、比較例では約2000個(鋳造回数約2000回)であった。
このように、本実施形態の鋳抜きピン100を用いた実施例では、使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、比較例に比べて約17倍となった。
本実施形態の鋳抜きピン100によれば、鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)が作用するテーパ部21の基端側の位置P1と先端側の位置P2との間の勾配変化位置Pcにおいて、鋳抜きピン100が延びる軸線X1に対する傾斜角度が角度θ1から角度θ2に変化するようにテーパ部21に抜き勾配が形成されている。
そこで、本実施形態の鋳抜きピン100は、D1<L1を満たすようにした。ここで、L1は、位置P1から勾配変化位置PCまでの軸線X1に沿った距離である。
次に、本発明の第2実施形態のダイカスト鋳造用金型について図面を参照して説明する。
本実施形態のダイカスト鋳造用金型は、第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200の変形例であり、以下で特に説明する場合を除いて第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200と同様であるものとする。
それに対して本実施形態のダイカスト鋳造用金型は、鋳抜きピン100’の突出部20’のテーパ部21’の軸線X1に対する傾斜角度が勾配変化位置Pcにおいて角度θ1’から角度θ1’よりも大きい角度θ2’に変化するものである。
図4および図5(図4に示すテーパ部の勾配変化位置Pc近傍を示す縦断面図)に示すように、テーパ部21’の軸線X1に対する傾斜角度は、勾配変化位置Pcにおいて基端側の角度θ1’(第1角度)から先端側の角度θ2’(第2角度)に変化するようになっている。
θ1’<θ2’ (5)
0.5°≦θ1<2.0° (6)
0.5°<θ2≦2.0° (7)
以上の条件式(5)〜(7)の全てを満たす角度θ1’および角度θ2’は、例えば、角度θ1’が0.5°であり角度θ2’が1.5°である。
一方、実線で示す本実施形態のテーパ部21の外周面の軸線X1に対する傾斜角度は、想像線ILで示す傾斜角度に比べ、勾配変化位置Pcよりも基端側で小さく、勾配変化位置Pcよりも先端側で大きくなっている。
D1<L1<2・D1 (8)
以上の条件式のD1<L1を満たすようにしたのは、発明者らが、以下の知見を得たからである。
・位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピン100’の折損が発生する頻度が高い。
・勾配変化位置Pcを、位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部21’の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
次に、以上の条件式(5)〜(8)を満たす鋳抜きピン100’を用いて製品を鋳造した場合の実施例と比較例について説明する。本実施例は、鋳抜きピン100’が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数を測定した実験例である。
本実施例は、図4および図5において、D1=4.5mm,D2=3.9mm,L1=6.0mm,D3=2.0mm,L2=22.4mm,θ1’=0.5°,θ2’=1.5°とした鋳抜きピン100’を用いて行ったものである。
また、本実施例は、テーパ部21’を構成する材料として内部の硬さがHRC(ロックウェル硬さ)47以上かつHRC49以下に調整され、表面の硬さがHV(ビッカーズ硬さ)1000以上かつHV1200以下に調整された合金工具鋼であるSKD61を用いて行ったものである。実験例に用いたテーパ部21’の表面の硬さを向上させる表面処理としては、塩溶剤を用いた窒化処理である塩溶窒化処理を用いた。具体的には、大同DMソリューション株式会社によるPS処理(Prevents Scoring and scuffing処理)を用いて塩溶窒化処理を行った。
すなわち、本実施例では勾配変化位置Pcでテーパ部21’の傾斜角度が0.5°から1.5°に変化するのに対して、比較例ではテーパ部21’の傾斜角度が位置P1から位置P2に至るまで1.0°で一定である。
本実施例による結果として、鋳抜きピン100’が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、本実施例では約13000個(鋳造回数約13000回)であったのに対し、比較例では約2000個(鋳造回数約2000回)であった。
このように、本実施形態の鋳抜きピン100’を用いた実施例では、使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、比較例に比べて約6.5倍となった。
本実施形態の鋳抜きピン100’によれば、鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)が作用するテーパ部21’の基端側の位置P1と先端側の位置P2との間の勾配変化位置Pcにおいて、鋳抜きピン100が延びる軸線X1に対する傾斜角度が角度θ1’から角度θ2’に変化するようにテーパ部21’に抜き勾配が形成されている。
そこで、本実施形態の鋳抜きピン100’は、D1<L1を満たすようにした。ここで、L1は、位置P1から勾配変化位置PCまでの軸線X1に沿った距離である。
以上の説明において、鋳抜きピンは、インナーピン110とスリーブ120との2つの部材を組み合わせたものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、インナーピン110とスリーブ120とにより形成された鋳抜きピン100,100’を単一の部材として形成してもよい。
20 突出部
20a 根元部
21,21’ テーパ部
22 基端部
23 先端部
30 拡径部(位置決め部)
30a 端面
100,100’ 鋳抜きピン
110 インナーピン
110a 冷却穴(有底穴)
120 スリーブ
130 冷却パイプ
200 ダイカスト鋳造用金型
210 挿入穴
220 段部
300 キャビティ部
IL 想像線
P1 位置(第1位置)
P2 位置(第2位置)
Pc 勾配変化位置
X1,X2,X3 軸線
θ1,θ1’ 角度(第1角度)
θ2,θ2’ 角度(第2角度)
Claims (5)
- 鋳造用金型に軸線に沿って形成された挿入穴に挿入される鋳抜きピンであって、
前記挿入穴の形状に対応するように前記軸線に沿って形成された本体部と、
前記本体部の先端側に連結されるとともに前記挿入穴からキャビティ部へ突出する突出部とを備え、
前記突出部は、
基端側の第1位置から先端側の第2位置に向けて漸次外径が小さくなるとともに勾配変化位置において前記軸線に対する傾斜角度が前記基端側の第1角度から前記先端側の第2角度に変化する抜き勾配が形成されたテーパ部を有し、D1<L1<2・D1を満たす鋳抜きピン。
ここで、
D1:前記第1位置における前記テーパ部の外径、
L1:前記第1位置から前記勾配変化位置までの前記軸線に沿った距離である。 - 前記第1角度が前記第2角度より大きい請求項1に記載の鋳抜きピン。
- 前記第2角度が前記第1角度より大きい請求項1に記載の鋳抜きピン。
- 前記本体部および前記突出部には、前記軸線に沿って延びる有底穴が内部に形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鋳抜きピン。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鋳抜きピンが前記挿入穴に挿入された鋳造用金型。
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