以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る車両の走行制御装置を、車両に搭載された走行制御システムに適用した場合を例にして説明する。本発明の走行制御装置の実施の形態は限定されず、車両側と情報の授受が可能な携帯端末装置に適用することもできる。走行制御装置、走行制御システム、及び携帯端末装置は、いずれも演算処理を実行するコンピュータである。
《第1実施形態》
図1は、走行制御システム1のブロック構成を示す図である。本実施形態の走行制御システム1は、車両に搭載され、走行制御装置100と車載装置200とを備える。
本実施形態の走行制御装置100は、自車両が走行している車線を認識し、車線のレーンマークの位置と自車両の位置とが所定の関係を維持するように、自車両の動きを制御する車線逸脱防止機能(レーンキープサポート機能)を備える。本実施形態の走行制御装置100は車線の中央を自車両が走行するように、自車両の動きを制御する。走行制御装置100は、車線のレーンマークから自車両までの路幅方向に沿う距離が所定値域となるように、自車両の動きを制御してもよい。
本実施形態におけるレーンマーカは、車線を規定する機能を有するものであれば限定されず、路面に描かれた線図であってもよいし、道路の間に存在する植栽であってもよいし、道路の路肩側に存在するガードレール、縁石、歩道、二輪車専用道路などの道路構造物であってもよい。また、道路の路肩側に存在する看板、標識、店舗、街路樹などの不動の物体であってもよい。これらのレーンマーカの検出手法は限定されず、本願出願時に知られたパターンマッチングなどの各種の手法を用いることができる。
走行制御装置100は通信装置20を有し、車載装置200は通信装置40を有し、両装置は有線通信又は無線通信により互いに情報の授受を行う。
まず、車載装置200について説明する。
本実施形態の車載装置200は、検出装置50と、センサ60と、車両コントローラ70と、駆動装置80と、操舵装置90と、出力装置110と、ナビゲーション装置120とを備える。車載装置200を構成する各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
以下、車載装置200を構成する各装置についてそれぞれ説明する。
検出装置50は、自車両が回避するべき回避対象の存在及びその存在位置を検出する。特に限定されないが、本実施形態の検出装置50はカメラ51を含む。本実施形態のカメラ51は、例えばCCD等の撮像素子を備えるカメラである。本実施形態のカメラ51は自車両に設置され、自車両の周囲を撮像し、自車両の周囲に存在する回避対象を含む画像データを取得する。なお、本実施形態で説明する「回避対象」の具体例等については後述する。
検出装置50は、取得した画像データを処理し、自車両に対する回避対象の位置に基づいて、自車両から回避対象までの距離を算出する。検出装置50は、回避対象の位置の経時的な変化から自車両と回避対象との相対速度、自車両と回避対象との相対加速度を対象情報として算出する。画像データに基づく自車両と他車両との位置関係の導出処理、その経時的な変化量に基づく速度情報の導出処理については、本願出願時に知られている手法を適宜に用いることができる。
また、検出装置50は、画像データを解析し、その解析結果に基づいて回避対象の種別を識別してもよい。検出装置50は、パターンマッチング技術などを用いて、画像データに含まれる回避対象が、車両であるか、歩行者であるか、標識であるかを識別できる。また、検出装置50は、画像データから対象物の像を抽出し、その像の大きさや形状から対象物の具体的な種別(四輪車、二輪車、バス、トラック、工事車両など)、車種(小型車、大型車)を識別できる。さらに、検出装置50は、画像データに含まれるナンバープレートに表記された識別子から、その車両の種別、車種を識別することができる。この識別情報は、対象領域の設定処理において用いることができる。
なお、本実施形態の検出装置50はレーダー装置52を用いてもよい。レーダー装置52としては、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。
このように検出された少なくとも回避対象の位置を含む対象情報は、走行制御装置100側へ送出される。検出装置50は、回避対象の位置の変化から求めた自車両と回避対象との相対速度情報、相対加速度情報、回避対象の種別情報、回避対象が車両である場合には車種などの情報を対象情報に含めて、走行制御装置100側へ送出してもよい。
なお、本実施形態における「回避対象」は、自車両がそのものを避けて(接近しすぎないように)走行するべき対象である。検出装置50は、自車両と所定の位置関係を有する対象を回避対象として検出する。たとえば、検出装置50は、自車両の周囲に存在する物体等であって、自車両から所定距離以内に存在するものを回避対象として検出することができる。
本実施形態の回避対象は、静止物と移動物を含む。静止している回避対象としては、駐車中の他車両、停車中の他車両、歩道、中央分離帯、ガードレールなどの道路構造物、標識,電柱などの道路設置物、落下物や除雪された雪などの道路の載置物など、車両の走行の障害となる物体が含まれる。移動する回避対象としては、他車両、歩行者が含まれる。他車両としては、自車両の後方車両、対向車両が含まれる。車両としては、自転車、バイクなどの二輪車、バス,トラックなどの大型車両、トレーラ、クレーン車などの特殊車両が含まれる。さらに、回避対象としては、工事現場、路面の損傷エリア、水溜りなど、物体が存在しないものの自車両が回避すべき対象を含む。また、回避対象には、路肩や白線などの自車両が走行する車線の端部も含まれる。
本実施形態のセンサ60は、操舵角センサ61、車速センサ62を備える。操舵角センサ61は、自車両の操舵量、操舵速度、操舵加速度などの自車両の操舵に関する操舵情報を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。車速センサ62は、自車両の車速、加速度を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。
本実施形態の車両コントローラ70は、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit, ECU)などの車載コンピュータであり、車両の運転状態を電子的に制御する。本実施形態の車両としては、電動モータを走行駆動源として備える電気自動車、内燃機関を走行駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示することができる。なお、電動モータを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
本実施形態の駆動装置80は、自車両V1の駆動機構を備える。駆動機構には、上述した走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、及び車輪を制動する制動装置などが含まれる。駆動装置80は、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ70又は走行制御装置100から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む走行制御を実行する。駆動装置80に指令情報を送出することにより、車両の加減速を含む走行制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置80に送出される。
本実施形態の操舵装置90は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置90は、車両コントローラ70から取得した制御信号、又は運転者のステアリング操作により入力信号に基づいて車両の転回制御を実行する。車両コントローラ70は、操舵量を含む指令情報を操舵装置90に送出することにより、転回制御を実行する。また、走行制御装置100は、車両の各輪の制動量をコントロールすることにより転回制御を実行してもよい。この場合、車両コントローラ70は、各輪の制動量を含む指令情報を制動装置81へ送出することにより、車両の転回制御を実行する。
本実施形態のナビゲーション装置120は、自車両の現在位置から目的地までの経路を算出し、後述する出力装置110を介して経路案内情報を出力する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121と、道路種別、道路幅、道路形状その他の道路情報122と、道路情報122が各地点に対応づけられた地図情報123とを有する。本実施形態の位置検出装置121は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System, GPS)を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度)を検出する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121により検出された自車両の現在位置に基づいて、自車両が走行する道路リンクを特定する。本実施形態の道路情報122は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、追い越しの可否(隣接車線への進入の可否)その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。そして、ナビゲーション装置120は、道路情報122を参照し、自車両が走行する道路リンクが属する道路に関する情報を取得し、走行制御装置100へ送出する。自車両が走行する道路種別、道路幅、道路形状は、走行制御処理において、自車両が走行する目標経路の算出に用いられる。
また、本実施形態に係るナビゲーション装置120は、運転者が情報を入力するための入力装置124を備えている。このような入力装置124としては、たとえば、ディスプレイ画面上に配置されるタッチパネルまたはジョイスティックなどのユーザの手操作による入力が可能な装置、あるいは、マイクなどのユーザの発話音声による入力が可能な装置が挙げられる。
本実施形態の出力装置110は、走行支援に関する各種の情報をユーザ又は周囲の車両の乗員に向けて出力する。本実施形態において、出力装置110は、対象情報に応じた情報、対象領域の位置に応じた情報、目標経路の位置に応じた情報、及び目標経路上を自車両に走行させる指令情報に応じる情報のうち、何れか一つ以上を出力する。本実施形態の出力装置110は、ディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114を含む。車室外ランプ113は、ヘッドライト、ウィンカランプ、ブレーキランプを含む。車室内ランプ114は、インジケータの点灯表示、ディスプレイ111の点灯表示、その他ステアリングに設けられたランプや、ステアリング周囲に設置されたランプを含む。また、本実施形態の出力装置110は、通信装置40を介して、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)などの外部装置に走行支援に関する各種の情報を出力してもよい。高度道路交通システムなどの外部装置は、車両の速度、操舵情報、走行経路などを含む走行支援に関する情報を、複数の車両の交通管理に用いる。
情報の具体的な出力態様を、自車両の左側前方に回避対象としての駐車車両が存在する場合を例にして説明する。
出力装置110は、対象情報に応じた情報として、駐車車両が存在する方向や位置を自車両の乗員に提供する。ディスプレイ111は、駐車車両が存在する方向や位置を視認可能な態様で表示する。スピーカ112は「左側前方に駐車車両が存在します」といった駐車車両が存在する方向や位置を伝えるテキストを発話出力する。車室外ランプ113である左右のドアミラーに設けられたランプのうち、左側のランプのみを点滅させて、左側前方に駐車車両が存在することを自車両の乗員に知らせてもよい。車室内ランプ114であるステアリング近傍の左右に設けられたランプのうち、左側のランプのみを点滅させて、左側前方に駐車車両が存在することを乗員に知らせてもよい。
また、対象領域の位置に応じた情報として、対象領域の設定方向や設定位置を、出力装置110を介して出力してもよい。先述したように、対象領域が左側前方に設定されたことを、ディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114により乗員に知らせることができる。
本実施形態では、自車両の動きを他車両の乗員に予め知らせる観点から、対象領域の設定方向や設定位置を、車室外ランプ113を用いて外部に出力する。対象領域が設定されると、対象領域の側方を通過するために自車両の進行方向が変更される(転回が行われる)。対象領域が設定されたことを外部に知らせることにより、対象領域の側方を通過するために自車両の進行方向が変化することを、他車両のドライバに予告できる。例えば、対象領域が左側前方に設定されたときに、右側のウィンカランプ(車室外ランプ113)を点灯させることにより、左側に設定された対象領域の側方を通過するために自車両が右側に移動することを外部の他車両等に知らせることができる。
さらに、目標経路の位置に応じた情報として、目標経路の形状や曲点の位置をディスプレイ111、スピーカ112により乗員に知らせることができる。ディスプレイ111は、目標経路の形状等を視認可能な線図として表示する。スピーカ112は、「前方の駐車車両の側方を通過するため、右に転回します」などのアナウンスを出力する。
さらにまた、目標経路上を自車両に走行させる指令情報に応じた情報として、転回操作や加減速が実行されることをディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114を介して、自車両の乗員又は他車両の乗員に予め知らせる。
このように、対象領域の側方を通過する際の走行制御に関する情報を出力することにより、自車両及び/又は他車両の乗員に自車両の挙動を予め知らせることができる。出力装置110は、上述した情報を通信装置20を介して高度道路交通システムの外部装置に出力してもよい。これにより、自車両の乗員及び/他車両の乗員は、走行制御される自車両の挙動に応じた対応ができる。
次いで、本実施形態の走行制御装置100について説明する。
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置100は、制御装置10と、通信装置20と、出力装置30とを備える。通信装置20は、車載装置200との情報の授受を行う。出力装置30は、先述した車載装置200の出力装置110と同様の機能を有する。走行制御装置100が、乗員が持ち運び可能なコンピュータである場合には、走行制御装置100は、車載装置200の車室外ランプ113、車室内ランプ114の点滅を制御する指令情報を、各装置に出力してもよい。
走行制御装置100の制御装置10は、自車両の走行を制御する走行制御情報を提示させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、走行制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。
本実施形態に係る走行制御装置100の制御装置10は、自車情報取得機能と、対象情報取得機能と、先行車両追従機能と、車間距離設定機能と、対象領域設定機能と、目標経路設定機能と、制御機能と、提示機能とを有する。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
以下、本実施形態に係る走行制御装置100の各機能について説明する。
まず、制御装置10の自車情報取得機能について説明する。自動情報取得機能は、自車両の位置を含む自車情報を取得する。自車両の位置は、ナビゲーション装置120の位置検出装置121により取得できる。自車情報は、自車両の車速、加速度を含む。制御装置10は、自車両の速度を車速センサ62から取得する。自車両の速度は、自車両の位置の経時的な変化に基づいて取得することもできる。自車両の加速度は、自車両の速度から求めることができる。
制御装置10の対象情報取得機能について説明する。対象情報取得機能は、自車両が回避すべき回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報取得機能は、検出装置50により検出された回避対象の位置を含む対象情報を取得する。また、対象情報には、回避対象の相対位置、回避対象に対する自車両V1の相対速度および相対加速度が含まれる。
回避対象が他車両であり、この他車両と自車両とが車車間通信が可能であれば、自車両の制御装置10は、他車両の車速センサが検出した他車両の車速、加速度を対象情報として取得してもよい。もちろん、制御装置10は、高度道路交通システムの外部装置から他車両の位置、速度、加速度を含む対象情報を取得することもできる。
制御装置10の先行車両追従機能は、自車両が走行する車線を走行し、かつ、自車両よりも前方を走行する先行車両を検出し、先行車両から一定の車間距離を維持するように、自車両の走行を制御する。たとえば、先行車両追従機能は、カメラ51により撮像された撮像画像や、レーダー装置52による検知結果から、先行車両の位置および相対速度を含む情報を取得することで、先行車両を検出する。そして、先行車両追従機能は、先行車両と自車両とが一定の車間距離を維持するように、自車両と先行車両との相対位置や相対速度に基づいて車両コントローラ70を制御することで、自車両の車速および加減速度を制御する。
制御装置10の車間距離設定機能は、先行車両追従機能により先行車両を追従する際の、自車両と先行車両との車間距離を設定する。本実施形態では、ナビゲーション装置120の入力装置124を介して、運転者が所望する自車両と先行車両との車間距離を設定車間距離として入力することが可能となっている。そして、運転者が入力装置124を介して設定車間距離を入力した場合に、車間距離設定機能は、入力された設定車間距離を取得し、取得した設定車間距離を、先行車両追従機能により先行車両を追従する際の車間距離として設定する。たとえば、運転者は、設定車間距離として「短距離」、「中距離」、「長距離」のうちから1つを選択することができ、車間距離設定機能は、いずれか1つの設定車間距離が選択された場合に、選択された設定車間距離に応じた距離を、先行車両を追従する際の車間距離として設定する。これにより、先行車両追従機能は、車間距離設定機能により設定された設定車間距離を維持するように、自車両の走行を制御する。
制御装置10の対象領域設定機能は、自車両の位置と回避対象の位置との関係に基づいて対象領域Rを設定する。図2は、対象領域Rの設定手法の一例を示す図である。図2において、自車両の走行方向Vd1は、図中+y方向であり、自車両が走行する走行車線Ln1の延在方向も、図中+y方向である。また、図2では、自車両が走行する車線Ln1の左側の路肩に駐車された駐車車両V2が検出された場面を上方から見ている。なお、図2に示す場面において、自車両V1は、後方から駐車車両V2に接近し、駐車車両V2の側方を通り、車線Ln1上を走行方向Vd1に向かって走行している。
たとえば図2に示す例において、検出された駐車車両V2は、自車両V1の車線Ln1に存在し、自車両V1の直進を妨げるため、自車両V1の回避するべき回避対象である。そのため、対象領域設定機能は、自車両V1が走行方向Vd1に沿って駐車車両V2に接近するときに、駐車車両V2を含む範囲を対象領域Rとして設定する。なお、対象領域設定機能は、自車両V1と回避対象である駐車車両V2との距離が所定値未満となることで、自車両V1と駐車車両V2とが接近または接触することを避ける観点から対象領域Rを設定してもよいし、あるいは、自車両V1と駐車車両V2とが適切な距離を保つようにする観点から対象領域Rを設定してもよい。
また、対象領域Rは、駐車車両V2の外形に沿った形状としてもよいし、駐車車両V2を内包する形状としてもよい。また、対象領域Rは、駐車車両V2を包含する円形、楕円形、矩形、多角形としてもよい。さらに、対象領域設定機能は、対象領域Rの境界を駐車車両V2の表面(外縁)から所定距離(A)未満として、対象領域Rを狭く設定してもよいし、対象領域Rの境界を、駐車車両V2から離隔させた所定距離B(B>A)以上として、対象領域Rを広く設定してもよい。
図2に示すように、自車両の走行方向Vd1を前方とし、その逆方向を後方として定義した場合において、対象領域Rはその前後に前後端部RL1,RL2を有する。この前後端部RL1,RL2は、自車両が走行する車線Ln1の延在方向(+y)に沿う対象領域Rの長さを規定する端線である。図2に示す対象領域Rの車線Ln1の延在方向(+y)に沿う長さは、前後端部RL1の(y1)と前後端部RL2(y2)の間の距離であるL0である。前後端部RL1,RL2のうち、対象領域Rに接近する自車両V1から見て手前側(上流側)に位置する前後端部を第1端部RL1とする。一方、前後端部RL1,RL2のうち、対象領域Rに接近乃至通過する自車両V1から見て奥手側(下流側)に位置する前後端部を第2端部RL2とする。第1端部RL1と第2端部RL2は、対象領域Rの境界上に位置する。
また、図2に示すように、自車両の車幅方向をVw1(図中X方向)として定義した場合において、対象領域Rはその左右のそれぞれに左右端部RW1,RW2を有する。この左右端部RW1,RW2は、自車両V1との車幅方向に沿う距離を規定する端線(端部)である。また、左右端部RW1,RW2は、自車両が走行する車線Ln1の路幅方向(X)に沿う対象領域の長さ(幅)を規定する端線である。図2に示す対象領域Rの路幅方向に(X)沿う長さは、左右端部RW1(x1)と左右端部RW2(x2)との間の距離であるW0である。左右端部RW1,RW2のうち、自車両が車幅方向に沿って回避対象V2に接近するときに、対象領域Rの左右端部RW1,RW2のうち、自車両V1から見てその自車両V1の側方に位置する左右端部を第1横端部RW1とする。一方、左右端部RW1,RW2のうち、自車両V1から見てその自車両V1の側方とは反対の側方(路肩側)に位置する左右端部を第2横端部RW2とする。第1横端部RW1と第2横端部RW2は、対象領域Rの境界上に位置する。
なお、図2に示すように、自車両V1が走行する車線Ln1の対向車線Ln2を対向走行する他車両V3が存在する場合には、他車両V3は回避対象として検出される。同図には示さないが、他車両V3が回避対象として検出された場合には、同様の手法で、他車両V3を含む範囲が対象領域Rとして設定される。また、対象領域Rは、回避対象を検出したタイミング、つまり自車両V1の転回操作が行われるよりも前のタイミングにおいて設定される。
制御装置10の目標経路設定機能は、設定された対象領域Rの境界の位置に基づいて目標経路RTを算出する。ここで、「対象領域Rの位置に基づいて目標経路RTを算出する」とは、対象領域R内に自車両V1が進入しないように目標経路RTを算出してもよいし、対象領域Rと自車両V1の存在領域とが重複する面積が所定値未満となるように目標経路RTを算出してもよいし、対象領域Rの境界線から所定距離だけ離隔した位置を目標経路RTとして算出してもよいし、対象領域Rの境界線を目標経路RTとして算出してもよい。先述したように、対象領域Rは、自車両V1と回避対象との距離が所定値未満とならないように、又は、自車両V1と回避対象との距離が所定閾値に保たれるように設定されるので、結果的に、目標経路RTも自車両V1と回避対象との距離が所定値未満とならない位置に、又は、自車両V1と回避対象との距離が所定閾値に保たれる位置に設定される。
さらに、目標経路設定機能は、図3に示すように、自車両の前方に先行車両が存在する場合には、対象領域Rの境界の位置に基づいて設定した目標経路RTを補正する。ここで、図3に示すように、自車両の走行車線Ln1に隣接する隣接車線Ln2,Ln3に、自車両に接近する複数の接近車両V5〜V7が存在する場合には、これら接近車両V5〜V7がそれぞれ回避対象となる。そのため、自車両V1が接近車両V5〜V7に接近する度に、自車両V1の走行位置が左右(車幅方向)に変位するように、目標経路RTが設定されることとなる。なお、図3は、複数の接近車両が存在する場合に設定される目標経路RTの一例を示す図であり、括弧内に示す各時刻における車両V1、V4〜V7の位置を示している。
すなわち、図3に示す例では、自車両V1の左側の隣接車線Ln3を走行する接近車両V5,V7が自車両V1よりも車速が遅いため、自車両V1が接近車両V5,V7を追い越すとともに、自車両V1の右側の隣接車線Ln2を走行する接近車両V6が自車両V1よりも車速が速いため、自車両V1が接近車両V6に追い越される場面を例示している。そのため、図3に示す例において、目標経路設定機能は、時刻t1において自車両V1が接近車両V5を追い越す際に、接近車両V5の側方を通過するために、自車両V1が接近車両V5とは反対側の車幅方向右側(−x側)に移動するように、目標経路RTを設定する。また、目標経路設定機能は、時刻2において自車両V1が接近車両V6に追い越される際に、接近車両V6の側方を通過するために、自車両V1が接近車両V6とは反対側の車幅方向左側(+x側)に移動するように、目標経路RTを設定する。さらに、時刻t3において自車両V1が接近車両V7を追い越す際には、接近車両V7の側方を通過するために、自車両V1が接近車両V7とは反対側の車幅方向左側(−x側)に移動するように、目標経路RTを設定する。同様に、目標経路設定機能は、隣接車線を走行する接近車両と接近する際に、自車両V1が左右(車幅方向)に移動するように、目標経路RTを設定する。
これにより、本実施形態では、自車両V1が接近車両と接近するたびに、自車両V1の走行位置が左右(車幅方向)に変位することとなる。一方、このように、自車両V1の走行位置が左右に変位する場合、先行車両V4の運転者は、自車両V1の挙動を不審に思い、先行車両V4の運転者に、自車両V1の挙動に対して余計な注意を払わせてしまう場合がある。また、自車両V1と先行車両V4とが比較的接近している場合には、自車両V1の走行位置が左右(車幅方向)に繰り返し移動することで、先行車両V4の運転者に、自車両V1が先行車両V4を、いわゆる「煽っている」ように感じさせてしまう場合もある。
そこで、本実施形態において、目標経路設定機能は、図3に示すように、先行車両V4が存在する場合には、自車両V1と先行車両V4との車間距離が短いほど、回避対象である接近車両V5〜V7の側方を通過する際の車幅方向への移動量が小さくなるように、目標経路RTを補正する。なお、自車両V1と先行車両V4との車間距離に基づく走行制御の方法の詳細については後述する。
制御装置10の制御機能は、自車両V1に目標経路RTを走行させるための指令情報を、車両側の車両コントローラ70、駆動装置80、および操舵装置90に出力する。制御装置10から指令情報を取得した車両コントローラ70は、駆動装置80及び操舵装置90を制御して、目標経路RTに沿って自車両V1を走行させる。車両コントローラ70は、検出装置50により検出された道路形状や、ナビゲーション装置120の道路情報122及び地図情報123が記憶するレーンマーカモデルを用いて、自車両が車線に対して所定の横位置を維持しながら走行するように操舵装置90の制御を行う。車両コントローラ70は、操舵角センサ61から取得した操舵角、車速センサ62から取得した車速、およびステアリングアクチュエータの電流の情報に基づいて、転回制御量を算出し、ステアリングアクチュエータに電流指令を送ることで、自車両が目標の横位置を走行するように制御を行う。
なお、自車両V1の横位置を制御する方法として、上述した操舵装置90を用いる他、駆動装置80及び/又は制動装置81を用いて左右の駆動輪の回転速度差により自車両V1の走行方向(すなわち、横位置)を制御してもよい。その意味において、車両の「転回」とは、操舵装置90による場合の他、駆動装置80及び/又は制動装置81による場合も含む趣旨である。
これにより、たとえば図2に示す例では、自車両V1が、目標経路RTに沿って走行するため、回避対象である駐車車両V2の側方を適切に通過することが可能となる。一方、図3に示すように、自車両の走行車線L1に隣接する隣接車線L2,L3に、自車両に接近する複数の接近車両V5〜V7が存在する場合には、これら接近車両V5〜V7がそれぞれ回避対象となる。そのため、この場合、接近車両V5〜V7と自車両V1とが接近する度に、自車両V1が接近車両V5〜V7とは反対側に移動するように目標経路RTが設定され、自車両V1の走行位置は左右(車幅方向)に頻繁に変位することとなる。ただし、上述したように、自車両V1の前方に先行車両V4が存在する場合には、自車両V1と先行車両V4との車間距離が短くなるほど、回避対象である接近車両V5〜V7の側方を通過する際に自車両V1が車幅方向に移動する際の移動量が小さくなるように、目標経路RTが補正される。そのため、制御機能は、補正された目標経路RTに基づいて、自車両V1の車幅方向への移動量が小さくなるように、自車両V1の走行を制御する。
ここで、図4(A)は、自車両と接近車両との進行方向における距離の一例を示すグラフであり、距離が“0”である場合には、自車両と接近車両とが車幅方向に並んできる状態を表す。図4(A)に示すように、図4に示す例では、接近車両が自車両の後方から自車両に接近しており、時刻t11において、自車両と接近車両とが車幅方向において並び、その後、接近車両が自車両を追い越す場面を例示している。
また、図4(B)は、図4(A)に示す場面において、制御装置10による走行制御処理のオンオフを示すグラフである。図4に示す例では、図4(A)に示すように、自車両と接近車両との進行方向における距離が所定距離STよりも大きい場合には、制御装置10による走行制御処理はオフに設定され、自車両が接近車両の側方を通過するために自車両を車幅方向に移動させる制御は行われない。一方、時刻t10において、自車両と接近車両との進行方向における距離が所定距離ST以下となると、制御装置10による走行制御処理がオンに設定され、後述する図4(C)に示すように、自車両が接近車両の側方を通過するために、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させる制御が行われる。
図4(C)は、図4(A),(B)に示す場面において、自車両V1の車幅方向への移動量を示すグラフである。なお、図4(C)において、D1は自車両と先行車両との設定車間距離が「短距離」に設定されている場合の移動量を示し、D2は自車両と先行車両との設定車間距離が「中距離」に設定されている場合の移動量を示し、D3は自車両と先行車両との設定車間距離が「長距離」に設定されている場合の移動量を示している。
制御機能は、図4(B)に示すように、時刻t10において走行制御処理を開始すると、図4(C)に示すように、自車両と接近車両との相対位置に応じて、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させる。また、本実施形態において、制御機能は、図4(C)のD1に示すように、設定車間距離が「短距離」に設定されている場合には、自車両と先行車両との車間距離が最も短いため、自車両を車幅方向に移動させる際の最大の移動量が最も小さいX11となるように、自車両の走行を制御する。また、制御機能は、図4(C)のD2に示すように、設定車間距離が「中距離」に設定されている場合には、自車両と先行車両との車間距離が中程度のため、自車両を車幅方向に移動させる際の最大の移動量が2番目に大きいX12となるように、自車両の走行を制御する。さらに、制御機能は、図4(C)のD3に示すように、設定車間距離が「長距離」に設定されている場合には、自車両と先行車両との車間距離が最も長いため、自車両を車幅方向に移動させる際の最大の移動量が最も大きいX13となるように、自車両の走行を制御する。
また、本実施形態において、制御装置10は、図4に示すように、設定車間距離が短いほど、自車両の走行位置を変化させる際の転回角または転回角速度が小さくなるように制御を行う。すなわち、制御装置10は、図4(C)のD1に示すように、設定車間距離が「短距離」に設定されている場合には、自車両と先行車両との車間距離が最も短いため、自車両を車幅方向に移動させる際の転回角または転回角速度を最も小さくする。これにより、図4(C)のD1に示すように、設定車間距離が「短距離」に設定されている場合には、他の設定車間距離と比べて、自車両の車幅方向への移動速度を最も遅くすることができる(図4(C)のD1に示す移動量の傾きを最も小さくすることができる。)。同様に、制御装置10は、図4(C)のD2に示すように、設定車間距離が「中距離」に設定されている場合には、自車両と先行車両との車間距離が中程度のため、自車両を車幅方向に移動させる際の転回角または転回角速度を2番目に小さくする。さらに、制御装置10は、図4(C)のD3に示すように、設定車間距離が「長距離」に設定されている場合には、自車両と先行車両との車間距離が最も長いため、自車両を車幅方向に移動させる際の転回角または転回角速度を最も大きくする。これにより、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両をゆっくりと車幅方向に移動させることができる。
最後に、本実施形態の制御装置10の提示機能について説明する。提示機能は、算出された、対象情報に応じた情報、対象領域Rの位置に応じた情報、目標経路の位置に応じた情報、及び目標経路上を自車両に走行させる指令情報に応じる情報を出力装置110に送出し、上述した態様で外部に出力させる。
続いて、本実施形態に係る走行制御処理を、図5および図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、図5に基づいて、走行制御の全体の手順について説明する。
ステップS101において、制御装置10は、少なくとも自車両V1の位置を含む自車情報を取得する。自車情報は、自車両V1の車速・加速度を含んでもよい。ステップS102において、制御装置10は、自車両V1が回避すべき回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報は、回避対象の速度・加速度を含んでもよい。
また、ステップS102において、制御装置10は、自車両の走行車線を走行し、かつ、自車両の前方を走行する先行車両の位置および相対速度を含む情報も取得する。たとえば、制御装置10は、カメラ51により撮像された撮像画像や、レーダー装置52による検知結果から、先行車両の位置および相対速度を含む情報を取得することができる。
ステップS103において、制御装置10は、回避対象の検出結果を検出装置50から取得する。回避対象の検出結果は、回避対象の位置の情報を含む。ステップS104において、制御装置10は、回避対象の位置に応じて対象領域Rを設定する。
ステップS105において、制御装置10は、対象領域Rを回避する目標経路RTを算出する。目標経路RTは、自車両V1が走行する一又は複数の目標座標を含む。各目標座標は、目標横位置(目標X座標)と目標縦位置(目標Y座標)とを含む。算出された一又は複数の目標座標と自車両V1の現在位置とを結ぶことにより、目標経路RTを求める。なお、ステップS105に示す目標座標の算出方法については後述する。
ステップS106において、制御装置10は、ステップS105で算出された目標座標の目標横位置を取得する。また、ステップS107において、制御装置10は、自車両V1の現在の横位置とステップS106で取得した目標横位置との比較結果に基づいて、横位置に関するフィードバックゲインを算出する。
そして、ステップS108において、制御装置10は、自車両V1の実際の横位置と、現在位置に対応する目標横位置と、ステップS107のフィードバックゲインとに基づいて、自車両V1を目標横位置上に移動させるために必要な自車両V1の転回角や転回角速度等に関する目標制御値を算出する。そして、ステップS112において、制御装置10は、算出した目標制御値を車載装置200に出力する。これにより、自車両V1は、目標横位置により定義される目標経路RT上を走行できる。なお、ステップS105において複数の目標座標が算出された場合には、目標横位置を取得する度にステップS106〜S112の処理を繰り返し、取得した目標横位置のそれぞれについての目標制御値を車載装置200に出力する。
ステップS109において、制御装置10は、ステップS105で算出された一又は複数の目標座標についての目標縦位置を取得する。また、ステップS110において、制御装置10は、自車両V1の現在の縦位置、現在位置における車速及び加減速と、現在の縦位置に対応する目標縦位置、その目標縦位置における車速及び加減速との比較結果に基づいて、縦位置に関するフィードバックゲインを算出する。そして、ステップS111において、制御装置10は、目標縦位置に応じた車速および加減速度と、ステップS110で算出された縦位置のフィードバックゲインとに基づいて、縦位置に関する目標制御値が算出される。ステップS109〜S112の処理は、先述したステップS106〜S108,S112と同様に、目標縦位置を取得する度に繰り返し、取得した目標縦位置のそれぞれについての目標制御値を車載装置200に出力する。
ここで、縦方向の目標制御値とは、目標縦位置に応じた加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値である。たとえば、エンジン自動車にあっては、制御機能は、現在および目標とするそれぞれの加減速度および車速の算出値に基づいて、目標吸入空気量(スロットルバルブの目標開度)と目標燃料噴射量を算出し、これを駆動装置80へ送出する。なお、制御機能は、加減速度および車速を算出し、これらを車両コントローラ70へ送出し、車両コントローラ70において、これら加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値をそれぞれ算出してもよい。
そして、ステップS112に進み、制御装置10は、ステップS111で算出された縦方向の目標制御値を、車載装置200に出力する。車両コントローラ70は、転回制御及び駆動制御を実行し、自車両に目標横位置及び目標縦位置によって定義される目標経路RT上を走行させる。
ステップS113において、制御装置10は、出力装置110に情報を提示させる。出力装置110に提示させる情報は、ステップS104において算出された対象領域の位置・速度であってもよいし、ステップS105において算出された目標経路の形状であってもよいし、ステップS112において車載装置200へ出力された目標制御値であってもよい。
ステップS114において、ドライバがステアリング操作等をしたか否か、ドライバの操作介入の有無を判断する。ドライバの操作が検出されなければ、ステップS101へ戻り、新たな対象領域の設定、目標経路の算出及び走行制御を繰り返す。他方、ドライバが操作をした場合には、ステップS115に進み、走行制御を中断する。次のステップS116において、走行制御を中断した旨の情報を提示する。
続いて、図6に示すフローチャートに基づいて、第1実施形態におけるステップS105の目標座標算出処理について説明する。
まず、ステップS201では、制御装置10の目標経路設定機能により、目標縦位置の算出が行われる。たとえば、目標経路設定機能は、自車両V1の走行方向の前方側に、一定の距離間隔で目標縦位置を設定する。
ステップS202では、目標経路設定機能により、ステップS103で取得した回避対象の検出結果に基づいて、回避対象が検出されたか否かの判断が行われる。回避対象が検出された場合には、ステップS203に進み、一方、回避対象が検出されない場合には、ステップS207に進む。
なお、ステップS207では、回避対象が検出されないと判断されているため、制御機能により、自車両V1が走行車線の中央位置を直進するように、ステップS201で算出された各目標縦位置に対応する各目標横位置が算出される。
一方、ステップS202で、回避対象が検出されたと判断された場合には、ステップS203に進む。ステップS203では、目標経路設定機能により、回避対象の側方を通過するための目標横位置が、ステップS201で設定した目標縦位置ごとに設定される。
ステップS204では、目標経路設定機能により、ステップS103で取得した先行車両の検出結果に基づいて、先行車両が検出されたか否かの判断が行われる。先行車両が検出された場合には、ステップS205に進み、一方、先行車両が検出されない場合には、ステップS105の目標座標算出処理を終了する。
ステップS205では、目標経路設定機能により、自車両と先行車両との設定車間距離の取得が行われる。たとえば、目標経路設定機能は、運転者が入力装置124を介して設定車間距離を入力した場合に、入力された設定車間距離を入力装置124から取得する。
ステップS206では、目標経路設定機能により、ステップS205で取得された設定車間距離に基づいて、ステップS203で算出した目標横位置の補正が行われる。具体的には、目標経路設定機能は、下記式(1)に基づいて、設定車間距離を加味した目標横位置を算出し、ステップS203で算出した各目標横位置を、下記式(1)に基づいて算出した各目標横位置に変更する。
目標横位置=Yset+f(ΔY) ・・・(1)
なお、上記式(1)において、Ysetは、自車両が走行する車線の中央位置を表しており、f(ΔY)は、所定の傾きを表す関数である。具体的には、f(ΔY)は、各目標横位置の自車両の進行方向における位置に応じた値となり、図4(C)に示すように、目標横位置の位置が自車両の進行方向の手前側から奥側となるにつれ、0からΔYまで増加した後、ΔYのまま推移し、そして、ΔYから0へと変化する値となる。また、ΔYは、設定車間距離が「短距離」、「中距離」、「長距離」の順に大きな値となる。このように、上記式(1)に基づいて各目標横位置を算出することで、図4(C)のD1〜D3に示す車幅方向の移動量に対応する各目標横位置を算出することができる。
これにより、本実施形態では、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、回避対象である接近車両の側方を通過する際の車幅方向への移動量が小さくなるように、目標経路RTを補正することができる。その結果、先行車両が存在する場合には、自車両V1と先行車両V4との車間距離が短いほど、接近車両の側方を通過する際の車幅方向への移動量が小さくなるように、自車両の走行が制御されることとなる。
以上のように、第1実施形態によれば、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両が接近車両の側方を通過する際に自車両を車幅方向に移動させる移動量を小さくする。ここで、自車両の走行位置が左右に頻繁に変位してしまうと、先行車両の運転者に、自車両の挙動に対して違和感を与えてしまい、自車両V1の挙動に対して余計な注意を払わせてしまう場合がある。特に、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、その傾向は強くなる。これに対して、本実施形態では、第1実施形態によれば、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両が接近車両の側方を通過する際に自車両を車幅方向に移動させる移動量を小さくすることで、先行車両の運転者が、自車両の挙動に対して違和感を覚えてしまうことを有効に防止することができる。また、自車両と先行車両とが比較的接近している場合に、先行車両の運転者が、自車両により煽られていると感じてしまうことを有効に防止することができる。
《第2実施形態》
第2実施形態では、図1に示す走行制御システム1において、以下に説明するように、走行制御システム1が動作すること以外は、第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態に係る走行制御システム1について説明する。
図7は、第2実施形態における、自車両と先行車両との車間距離と、自車両の車幅方向への移動量との関係を説明するための図である。第2実施形態において、制御装置10は、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両が接近車両の側方を通過するために、自車両を接近車両とは反対方向の車幅方向に移動させるタイミングを早くする。具体的には、制御装置10は、第1実施形態と同様に、自車両と接近車両との進行方向における距離が所定距離以下となった場合に、自車両を接近車両とは反対側に移動させる走行制御処理をオンに設定するが、第2実施形態においては、走行制御処理をオンに設定するための上記所定距離を、自車両と先行車両との車間距離に応じて異ならせる。
より具体的には、制御装置10は、自車両と先行車両との車間距離が「長距離」に設定されている場合には、走行制御処理をオンに設定するための上記所定距離を最も長いST1に設定する。これにより、図7(A)に示すように、時刻t21において、自車両と接近車両との進行方向における車間距離がST1以下になると、図7(B)に示すように、走行制御処理がオンに設定される。これにより、制御装置10は、図7(C)のD3に示すように、時刻t21において、接近車両の側方を通過するために、自車両の車幅方向への移動を開始する。
また、制御装置10は、自車両と先行車両との車間距離が「中距離」に設定されている場合には、走行制御処理をオンに設定するための上記所定距離を2番目に長いST2に設定する。これにより、図7(A)に示すように、時刻t21よりも遅い時刻t22において、自車両と接近車両との進行方向における車間距離がST2以下となり、図7(B)に示すように、走行制御処理がオンに設定される。これにより、制御装置10は、図7(C)のD2に示すように、時刻t22において、接近車両の側方を通過するために、自車両の車幅方向への移動を開始する。
さらに、制御装置10は、自車両と先行車両との車間距離が「短距離」に設定されている場合には、走行制御処理をオンに設定するための上記所定距離を最も短いST3に設定する。これにより、図7(A)に示すように、時刻t21および時刻t22よりも遅いt23において、自車両と接近車両との進行方向における車間距離がST3以下となり、図7(B)に示すように、走行制御処理がオンに設定される。これにより、制御装置10は、図7(C)のD1に示すように、時刻t23において、接近車両の側方を通過するために、自車両の車幅方向への移動を開始する。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、制御装置10は、図7(C)に示すように、設定車間距離が短いほど、自車両の走行位置を変化させる際の転回角または転回角速度が小さくなるように制御を行う。
続いて、図8に示すフローチャートに基づいて、第2実施形態におけるステップS105の目標座標算出処理について説明する。
まず、ステップS301〜S305,S308では、第1実施形態のステップS201〜S205,S207と同様に、目標縦位置が設定され(ステップS301)、回避対象が検出された場合に(ステップS302=Yes)、回避対象の側方を通過するための目標横位置が設定される(ステップS303)。また、回避対象が検出されない場合には(ステップS302=No)、自車両が走行車線の中央位置を直進するように、目標横位置が算出される(ステップS308)。一方、回避対象が検出された場合において(ステップS302=Yes)、先行車両が検出された場合には(ステップS305=Yes)、自車両と先行車両との設定車間距離が取得される(ステップS308)。なお、ステップS301では、目標縦位置の設定とともに、対象領域Rの境界の位置に基づいて、自車両V1が車幅方向への転回を開始する転回開始位置の設定も行われる。
ステップS306では、目標経路設定機能により、ステップS305で取得された設定車間距離に基づいて、転回開始位置の補正が行われる。具体的には、目標経路設定機能は、下記式(2)に示すように、転回開始位置を補正する。
転回開始位置=Xset−ΔX ・・・(2)
なお、上記式(2)において、XsetはステップS301で設定された転回開始位置を表し、ΔXは、転回開始位置の補正値であり、設定車間距離が「短距離」、「中距離」、「長距離」の順に大きくなる。これにより、図7(C)に示すように、設定車間距離が長いほど、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させるタイミングが早くなるように、転回開始位置を自車両のより手前側の位置に補正することができる。
そして、ステップS307では、第1実施形態のステップS206と同様に、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、回避対象である接近車両の側方を通過する際の自車両の車幅方向への移動量が小さくなるように、目標横位置が補正される。
以上のように、第2実施形態においては、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させるタイミングを早くする。ここで、高速道路などの自車両が高速で走行可能な道路では、一般道路と比べて、自車両と先行車両との車間距離は長くなる傾向にある。そして、高速道路などの高速走行可能な道路において、自車両の走行位置を左右に頻繁に変更してしまうと、先行車両の運転者に、自車両が先行車両を煽っているとより強く感じさせてしまう傾向にある。そこで、第2実施形態では、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させるタイミングを早くすることで、先行車両の運転者に、自車両が車幅方向にゆったりと移動しているように感じさせることができる。これにより、自車両が高速道路などの高速走行可能な道路を走行している場合でも、先行車両の運転者に、自車両が先行車両を煽っていると感じさせてしまうことを軽減することが可能となる。
なお、上述した第2実施形態の構成に加えて、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両が接近車両の側方を通過した後に、自車両を走行車線の中央位置まで戻すタイミングを遅くする構成とすることができる。すなわち、第2実施形態では、図7(C)に示すように、自車両が接近車両の側方を通過した後に、自車両を走行車線の中央位置まで戻す制御を行っているが、この場合に、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両を走行車線の中央位置側に移動させるタイミングを遅くする構成とすることができる。たとえば、制御装置10は、自車両と接近車両との距離が所定距離以上となった場合に、自車両を走行車線の中央位置まで戻す制御を行う場合には、自車両と先行車両との車間距離が長いほど上記所定距離を長く設定する。これにより、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両を走行車線の中央位置側に移動させるタイミングを遅くすることができる。これにより、自車両が高速道路を走行している場面など、自車両と先行車両との車間距離が長くなる場合には、自車両がよりゆったりと車幅方向に移動することとなるため、先行車両の運転者に、自車両が先行車両を煽っていると感じさせることを軽減することができる。なお、自車両を走行車線の中央位置側に移動させる際の所定距離(第2距離)は、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させる際の所定距離(第1距離)と同じ距離であってもよいし、あるいは、第1距離よりも長い距離であってもよい。
《第3実施形態》
第3実施形態では、図1に示す走行制御システム1において、以下に説明するように、走行制御システム1が動作すること以外は、第1実施形態と同様である。以下に、第3実施形態に係る走行制御システム1について説明する。
図9は、第3実施形態における、自車両と先行車両との車間距離の特定方法を説明するための図である。第3実施形態において、制御装置10は、自車両と先行車両との実際の車間距離を計測し、計測した実車間距離に基づいて、自車両を接近車両とは反対側に移動させる際の移動量を決定する。なお、実車間距離の算出は、公知の方法を用いることができる。
具体的には、第3実施形態において、制御装置10は、図9に示すように、計測した実車間距離が短距離範囲内である場合には、自車両と先行車両との車間距離は「短距離」であると判断し、図4(C)のD1に示すように、自車両を接近車両とは反対側に移動させる際の最大の移動量をX11に設定する。
また、制御装置10は、図9に示すように、計測した実車間距離が中距離範囲内である場合には、自車両と先行車両との車間距離は「中距離」であると判断し、図4(C)のD2に示すように、自車両を接近車両とは反対側に移動させる際の最大の移動量をX12に設定する。なお、図9に図示していないが、長距離範囲も予め設定されており、計測した実車間距離が長距離範囲内である場合には、自車両と先行車両との車間距離は「長距離」であると判断し、図4(C)のD3に示すように、自車両を接近車両とは反対側に移動させる際の最大の移動量をX13に設定する。
また、第3実施形態においては、図9に示すように、中距離範囲と短距離範囲との一部を重複させることで、中距離範囲および短距離範囲にヒステリシスを設けている。これにより、自車両と先行車両との実車間距離が中距離範囲と短距離範囲とを行き来してしまうことで、自車両の車幅方向への移動量が繰り返し変動し、自車両の挙動が不安定になってしまうことを有効に防止することができる。なお、図9には図示していないが、中距離範囲および長距離範囲も一部において重複しており、中距離範囲および長距離範囲にもヒステリシスが設けられている。
続いて、図10に示すフローチャートに基づいて、第3実施形態におけるステップS105の目標座標算出処理について説明する。
まず、ステップS401〜S404,S408では、第1実施形態のステップS201〜S204,S207と同様に、目標縦位置が設定され(ステップS401)、回避対象が検出された場合に(ステップS402=Yes)、回避対象の側方を通過するための目標横位置が設定される(ステップS403)。また、回避対象が検出されない場合には(ステップS402=No)、自車両が走行車線の中央位置を直進するように、目標横位置が算出される(ステップS408)。そして、回避対象が検出された場合において(ステップS402=Yes)、先行車両が検出された場合には(ステップS404=Yes)、ステップS405に進む。
ステップS405では、目標経路設定機能により、ステップS102で取得された先行車両に関する情報に基づいて、自車両と先行車両との実車間距離の算出が行われる。そして、ステップS406では、目標経路設定機能により、図9に示すように、ステップS405で算出された実車間距離に基づいて、対応する車間距離範囲が取得される。たとえば、目標経路設定機能は、自車両と先行車両との実車間距離が、図9に示す短距離範囲内である場合には、自車両と先行車両との実車間距離に対応する車間距離範囲を「短距離範囲」として取得する。
ステップS407では、目標経路設定機能により、ステップS406で取得された車間距離範囲に基づいて、目標横位置を補正する。具体的には、目標経路設定機能は、ステップS406で取得された車間距離範囲に対応する車間距離が短いほど、回避対象である接近車両の側方を通過する際の自車両の車幅方向への移動量が小さくなるように、目標横位置を補正する。たとえば、目標経路設定機能は、ステップS406で取得された車間距離範囲が「短距離範囲」である場合には、対応する車間距離が最も短いため、接近車両の側方を通過する際の自車両の車幅方向への移動量が最も小さくなるように、目標横位置を補正する。
以上のように、第3実施形態においては、自車両と先行車両との実車間距離を算出し、実車間距離に基づいて、接近車両の側方を通過する際の自車両の車幅方向への移動量を設定する。これにより、第1実施形態の効果に加えて、運転者が設定車間距離を設定していない場合でも、自車両と先行車両との実車間距離に応じて、自車両の走行を適切に制御することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る走行制御装置の一態様として、車載装置200ともに走行制御システム1を構成する走行制御装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述した実施形態では、自車両と先行車両との車間距離を、「短距離」、「中距離」、「長距離」のいずれかで特定する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、車間距離を、2あるいは4つ以上に分類する構成としてもよい。また、実際の車間距離の値から目標横位置あるいは転回開始位置の補正値を算出する関数を用いることで、実際の車間距離の値に応じて、目標横位置あるいは転回開始位置を補正する構成としてもよい。
さらに、上述した第2実施形態では、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させるタイミングを早くする構成としたが、この構成に代えて、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させるタイミングを早くする構成としてもよい。また、第2実施形態では、自車両と先行車両との車間距離が長いほど、自車両を走行車線の中央位置まで戻すタイミングを遅くする構成を例示したが、この構成に代えて、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両を走行車線の中央位置まで戻すタイミングを遅くする構成としてもよい。これにより、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両がゆったりと車幅方向に移動するため、自車両と先行車両とが接近している場合に、自車両の挙動に対する、先行車両の運転者の違和感を軽減することができる。
また、制御装置10が、自車両と接近車両との距離が所定距離未満となった場合に、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させる制御を行う場合に、自車両と先行車両との車間距離が短いほど上記所定距離を長く設定することで、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両を接近車両とは反対側の車幅方向に移動させるタイミングを早くすることができる。さらに、制御装置10が、自車両と接近車両との距離が所定距離以上となった場合に、自車両を走行車線の中央位置まで戻す制御を行う場合には、自車両と先行車両との車間距離が短いほど上記所定距離を長く設定することで、自車両と先行車両との車間距離が短いほど、自車両を走行車線の中央位置側に移動させるタイミングを遅くすることができる。
本明細書では、対象情報取得手段と、制御手段とを備える走行制御装置の一例として、対象情報取得機能と、制御機能とを実行する制御装置10を備える走行制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。また、本明細書では、出力手段をさらに備える走行制御装置の一例として、出力装置30,110をさらに備える走行制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。