以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
以下の説明において、前方、後方、左方及び右方は、ハンドル23を握りつつ電動補助自転車1のシート24に着座した使用者から見た前方、後方、左方及び右方を意味する。
[実施形態1]
[電動補助自転車の全体構成]
図1は、実施形態1に係る電動補助自転車1の概略構成を示す右側面図である。図2は、実施形態1に係る電動補助自転車1の駆動ユニット40及び従動スプロケット45の概略構成を示す図である。
図1に示すように、電動補助自転車1は、車体フレーム11を有する。車体フレーム11は、前後方向に延びている。車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、ダウンフレーム13、シートフレーム14、一対のチェーンステイ16、及び一対のシートステイ17を有している。ヘッドパイプ12は、電動補助自転車1の前部に配置されている。ヘッドパイプ12には、ダウンフレーム13の前端が接続されている。ダウンフレーム13は、前後方向に延びている。シートフレーム14は、ダウンフレーム13の後端に接続されている。シートフレーム14は、ダウンフレーム13の後端から上方且つ斜め後方に向かって延びている。
図2に示すように、ダウンフレーム13の後端には、ブラケット15が取り付けられている。ブラケット15の後端には、一対のチェーンステイ16が接続されている。一対のチェーンステイ16は、後輪22を左右から挟むように配置されている。図1に示すように、各チェーンステイ16の後端には、それぞれシートステイ17の一方の端部が接続されている。一対のシートステイ17は、後輪22を左右から挟むように配置されている。各シートステイ17の他方の端部は、それぞれ、シートフレーム14の上端に接続されている。
ヘッドパイプ12には、ハンドルステム25が回転自在に挿入されている。ハンドルステム25の上端には、ハンドル23が固定されている。ハンドルステム25の下端には、フロントフォーク26が固定されている。フロントフォーク26の下端には、前輪21が車軸27によって回転可能に支持されている。車軸27には、前輪21の回転速度を検出する前輪回転検出部95が配置されている。
ハンドル23の左右端には、それぞれグリップ73が取り付けられている。ハンドル23の左部には、左ブレーキレバー74が取り付けられ、ハンドル23の右部には、右ブレーキレバー75が取り付けられている。左ブレーキレバー74は、後輪22のブレーキ(図示省略)を操作するためのレバーである。右ブレーキレバー75は、前輪21のブレーキ(図示省略)を操作するためのレバーである。左ブレーキレバー74は、後述する操作部190(図4参照)の操作を行うためのレバーでもある。
円筒状のシートフレーム14には、シートパイプ28が挿入されている。シートパイプ28の上端には、シート24が設けられている。
一対のチェーンステイ16の後端には、後輪22が車軸29によって回転可能に支持されている。後輪22の右方には、車軸29と同軸に従動スプロケット45が設けられている。従動スプロケット45は、一方向クラッチ92(図5参照)を介して後輪22に連結されている。従動スプロケット45には、後輪22の回転速度を検出する後輪回転検出部96が配置されている。
車体フレーム11にはチェーンカバー47が取り付けられている。チェーンカバー47は、メインカバー48、及びサブカバー49を有している。メインカバー48は、前後方向に延びている。メインカバー48は、駆動ユニット40の右前部及びチェーン46を覆っている。サブカバー49は、駆動ユニット40の右後部を覆っている。
シートフレーム14の後方には、バッテリユニット35が配置されている。バッテリユニット35は、駆動ユニット40の電動モータ61に電力を供給する。バッテリユニット35は、図示しないバッテリ及び電池制御部を有する。バッテリは、充放電可能な充電池である。電池制御部は、バッテリの充放電を制御するとともに、バッテリの出力電流及び残容量等を監視する。
図3は、図2の駆動ユニット40をIII−III線で切断した断面図である。図3に示すように、駆動ユニット40は、本体部51、クランク軸41、駆動力発生部60、チェーンテンショナ86、及び制御装置100(図1参照)を有する。
本体部51は、第1ケース52及び第2ケース53を有する。第1ケース52及び第2ケース53は、左右から互いに組み合わされ、複数の締結金具54によって互いに固定されている。本体部51は、締結金具30によって、ブラケット15に取り付けられている。
本体部51の前部には、クランク軸41が左右方向に貫通している。クランク軸41は、本体部51に対して複数の軸受を介して回転可能に支持されている。
クランク軸41の両端には、クランクアーム31、32が取り付けられている。クランクアーム31、32の先端には、それぞれ、ペダル33、34が取り付けられている。使用者がペダル33、34を踏み込むことにより、クランク軸41が回転する。駆動スプロケット42には、従動スプロケット45との間にチェーン46が巻き掛けられている。
クランク軸41には、回転部材56、一方向クラッチ55、及び駆動スプロケット42が、クランク軸41と同軸に配置されている。回転部材56は、クランク軸41の左右方向の中央に配置されている。回転部材56は、略円筒状である。回転部材56の右端は、円筒状の滑り軸受71を介してクランク軸41に支持されている。回転部材56の左端は、クランク軸41に接続されている。回転部材56の左端とクランク軸41は、例えばスプライン構造によって接続されている。これにより、回転部材56は、クランク軸41と一体で回転する。
一方向クラッチ55は、クランク軸41の右部に配置される。一方向クラッチ55は、インナー部材55a及びアウター部材55bを有する。
インナー部材55aは、回転部材56の右方に配置されている。インナー部材55aは、略円筒状であり、クランク軸41に対して回転可能である。インナー部材55aの右端の外周面には、駆動スプロケット42が取り付けられる。
アウター部材55bは、回転部材56の右部と、インナー部材55aの左部とに被さるように配置されている。アウター部材55bは、略円筒状である。アウター部材55bと回転部材56は接続されている。アウター部材55bと回転部材56は、例えばスプライン構造によって接続されている。これにより、アウター部材55b及び回転部材56は、一体で回転する。
アウター部材55bとインナー部材55aは、アウター部材55bからインナー部材55aに、前転方向(図1に示すように電動補助自転車1を右側から見て時計回りの方向をいう。以下、同様とする)の回転力のみを伝達するように接続されている。アウター部材55bとインナー部材55aは、例えばラチェット構造によって接続されている。アウター部材55bからインナー部材55aに、後転方向(図1に示すように電動補助自転車1を右側から見て反時計回りの方向をいう。以下、同様とする)の回転力は伝達されない。
クランク軸41、駆動スプロケット42、一方向クラッチ55、及び回転部材56は、上記のように構成されている。これにより、使用者が電動補助自転車1を前進させるようにペダル33、34を踏み込んでクランク軸41を前転方向に回転させた場合には、使用者のペダル踏力がクランク軸41から回転部材56及びアウター部材55bに伝達される。アウター部材55bの前転方向の回転は、インナー部材55aに伝達される。このため、インナー部材55aに取り付けられた駆動スプロケット42が前転方向に回転する。一方、使用者がクランク軸41を後転方向に回転させた場合、後転方向の回転は、ラチェット構造によりアウター部材55bからインナー部材55aには伝達されない。したがって、インナー部材55a及び駆動スプロケット42は後転方向に回転しない。
駆動ユニット40には、トルク検出部57及びクランク回転検出部58が設けられている。トルク検出部57は、ペダル踏力によってクランク軸41に発生するトルクを検出する。トルク検出部57は、たとえば磁歪式のトルクセンサである。トルク検出部57が磁歪式のトルクセンサの場合、トルク検出部57は、回転部材56の外周面に対向して配置されるコイルを有する。トルク検出部57は、回転部材56の歪みをコイルに生じる電圧の変化として検出することにより、クランク軸41に発生するトルクを検出する。トルク検出部57は、検出したトルクに応じた信号を、制御装置100に出力する。
トルク検出部57は、ペダル踏力を検出可能な構成であれば、磁歪式のトルクセンサに限定されない。また、トルク検出部57は、クランク軸41のトルクを直接検出せず、チェーン46に発生する張力からクランク軸41のトルクを検出する構成であってもよい。
クランク回転検出部58は、クランク軸41の回転を検出する。本実施形態のクランク回転検出部58は、一方向クラッチ55のアウター部材55bの回転からクランク軸41の回転を検出する。クランク回転検出部58は、磁石58a及びエンコーダ58bを有している。磁石58aは略円筒形状であり、アウター部材55bの外周面上に配置されている。エンコーダ58bは、磁石58aの外周面と対向する位置に配置されている。エンコーダ58bは、樹脂製の支持部材58cによって支持されている。アウター部材55bが回転することにより、磁石58aによる磁界が変化し、エンコーダ58bは、磁界の変化を検出する。クランク回転検出部58は、磁界の変化をパルス信号として制御装置100に対して出力する。
本体部51の前後方向の中央には、駆動力発生部60が配置されている。駆動力発生部60は、電動モータ61、出力軸81及びギヤ82を有する。
電動モータ61は、制御装置100から出力される制御信号に基づいて、ペダル踏力による電動補助自転車1の走行をアシストするための補助駆動力を発生する。また、電動モータ61は、制御装置100から出力される制御信号に基づいて、ペダル踏力によらない電動補助自転車1の移動をアシストするための補助駆動力を発生する。
電動モータ61は、ステータ62、ロータ63及び回転軸64を有する。ステータ62は、本体部51の第2ケース53に固定されている。第2ケース53には、電動モータ61の左側を覆うモータカバー65が取付けられている。回転軸64は、転がり軸受66及び67を介して、第2ケース53及びモータカバー65に回転可能に支持されている。回転軸64には、ロータ63が固定されている。回転軸64の外周には、右端から中央に向けて、ギヤ溝64aが形成されている。
電動モータ61には、モータ回転検出部68(図5参照)が設けられている。モータ回転検出部68は、ロータ63の回転を検出する。モータ回転検出部68は、ロータ63の回転を検出するエンコーダを有している。モータ回転検出部68は、検出したロータ63の回転に応じた信号を、制御装置100に出力する。
出力軸81は、回転軸64に対して後方に配置されている。出力軸81は、本体部51の第1ケース52に配置される転がり軸受83と、本体部51の第2ケース53に配置される転がり軸受84によって回転可能に支持されている。
出力軸81には、一方向クラッチ85を介してギヤ82が取り付けられている。ギヤ82は、転がり軸受83と転がり軸受84との間に、出力軸81と同軸に配置されている。ギヤ82は、電動モータ61の回転軸64に形成されたギヤ溝64aと噛み合っている。回転軸64に形成されたギヤ溝64aとギヤ82は減速機80を構成している。本実施形態では、電動モータ61が作動すると回転軸64は前転方向に回転する。このため、ギヤ82は、回転軸64の前転方向の回転によって後転方向に回転する。
一方向クラッチ85は、ギヤ82又は出力軸81に生じた後転方向の回転のみ伝達するように構成されている。このため、電動モータ61が作動してギヤ82が後転方向に回転した場合には、その回転は出力軸81に伝達されて出力軸81は後転方向に回転する。一方、出力軸81に前転方向の回転が生じても、ギヤ82には前転方向の回転は伝達されない。
出力軸81の右端には、補助スプロケット43が接続されている。補助スプロケット43と出力軸81は、例えばスプライン構造によって接続されている。これにより、電動モータ61が作動すると、電動モータ61の回転軸64の回転は、ギヤ82、一方向クラッチ85、及び出力軸81を介して補助スプロケット43に伝達される。つまり、駆動力発生部60で発生した補助駆動力が出力軸81から補助スプロケット43に伝達され、補助スプロケット43が後転方向に回転する。
本体部51の後部には、チェーンテンショナ86が配置されている。チェーンテンショナ86には、テンションスプロケット90が支持ボルト89によって回転可能に取り付けられている。図2に示すように、チェーンテンショナ86は、一端が支持ボルト88によって第1ケース52に対して回転可能に接続されている。チェーンテンショナ86の他端は、引張バネ87を介して第1ケース52に接続されている。テンションスプロケット90には、テンションスプロケット90を後方に押すようにチェーン46が巻き掛けられる。チェーンテンショナ86は、引張バネ87の弾性力によってチェーン46に対して適度な張力を付与する。
図2に示すように、本実施形態の電動補助自転車1において、駆動スプロケット42及び補助スプロケット43は、チェーン46を介して、後輪22に駆動力を伝達する。具体的には、使用者がペダル33、34を踏み込むことにより発生するペダル踏力は、駆動スプロケット42を前転方向に回転させ、チェーン46を介して後輪22を前転方向に回転させる駆動力として伝達される。また、電動モータ61が作動することにより発生する回転力は、補助スプロケット43を後転方向に回転させ、チェーン46を介して後輪22を前転方向に回転させる補助駆動力として伝達される。これにより、使用者がペダル33、34を踏み込んで発生させるペダル踏力を、電動モータ61から出力される駆動力によってアシストする。
また、電動補助自転車1は、例えば使用者が電動補助自転車1に乗車せずに電動補助自転車1を押して移動させる状態においても、所定の条件のもとで電動モータ61を作動させる。電動モータ61の回転力は、チェーン46を介して後輪22を前転方向に回転させる補助駆動力として伝達されて電動補助自転車1の移動をアシストする。
尚、チェーン46の回転は、図5に示すように、従動スプロケット45、変速機構91、一方向クラッチ92を介して、後輪22に伝達される。変速機構91は、変速操作器93によって操作される。変速操作器93は、例えばハンドル23に設けられる。
制御装置100は、電動モータ61の出力を制御して、電動補助自転車1のアシストを制御する。制御装置100は、使用者のペダル踏力に応じて電動モータ61の出力を制御する。また、制御装置100は、使用者のペダル踏力が発生していない状態において、所定の条件のもとで電動モータ61の出力を制御する。制御装置100は、例えば電動モータ61の近傍に配置することができるが、他の位置に配置してもよい。
図4は、ハンドル23に取り付けられた左ブレーキレバー74の拡大平面図である。図4に示すように、ハンドル23の左部には、ブラケット76を介して左ブレーキレバー74が取り付けられている。左ブレーキレバー74は、ブラケット76に対して軸77で支持されている。このため、左ブレーキレバー74は、軸77を中心として位置A1、位置A2又は位置A3に移動可能である。左ブレーキレバー74は、例えば使用者が手で操作して位置A2又は位置A3に移動しても、使用者が手を離すと図示しない弾性部材によって位置A1に戻る。左ブレーキレバー74には、ブレーキワイヤー78が連結されている。左ブレーキレバー74が位置A1にある状態では、後輪22のブレーキは掛けられていない状態である。左ブレーキレバー74が位置A2にある状態では、ブレーキワイヤー78を介して後輪22のブレーキを掛けた状態となる。左ブレーキレバー74を位置A3にすると、アシストを停止する制御が実行される。
ブラケット76の内部において軸77の右方には、操作部190が配置されている。操作部190は、例えば、リミットスイッチである。左ブレーキレバー74が位置A1又はA2にある状態では、左ブレーキレバー74の右端74Aは、操作部190に接触しない。左ブレーキレバー74が位置A3にある状態では、左ブレーキレバー74の右端74Aは、操作部190に接触する。操作部190は、左ブレーキレバー74の右端74Aが接触すると、制御部100に対して、電動モータ61の停止を指示する停止信号を出力する。
[アシスト制御]
図5は、電動補助自転車1において、電動モータ61によるアシストを行う際の信号の授受及び動力の伝達を示すブロック図である。図5では、制御を行う際の信号の授受を破線矢印によって示し、動力の伝達を実線矢印で示す。なお、図5中の符号のうち、図1から図4に示す符号と同一の符号は、電動補助自転車1における同一の構成を示す。
以下では、例えば使用者が電動補助自転車1に乗車せずに電動補助自転車1を押して移動させる状態でのアシスト、つまり、ペダル踏力によらないで電動補助自転車1が移動している状態でのアシストについて説明する。以下、ペダル踏力によらないで電動補助自転車1が移動している状態でのアシストの制御をアシスト制御という場合がある。アシスト制御には、ペダル踏力によらないで電動補助自転車1が移動している状態において、アシストを停止していく場合の制御も含まれる。尚、ペダル踏力によって電動補助自転車1が走行している状態での電動モータ61の出力制御については説明を省略する。
図5に示すように、制御装置100は、ペダル踏力検知部101、変速段検知部107、メモリ108、アシスト制御部104A、及びモータ制御部105を有する。
ペダル踏力検知部101は、トルク検出部57によって検出されたクランク軸41のトルクに基づいて、使用者のペダル踏力を求める。
変速段検知部107は、モータ回転検出部68で検出された電動モータ61の回転速度、及び後輪回転検出部96で検出された後輪22の回転速度に基づいて、現在の変速段を検知する。
メモリ108は、アシスト制御部104Aで実行する各種プログラムや、データを記憶する。
アシスト制御部104Aは、ペダル踏力によらないで電動補助自転車が移動している状態において、アシスト制御を実行する際に要求される電動モータ61の駆動力を算出する。
モータ制御部105は、アシスト制御部104Aによって算出された必要な駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。モータ制御部105は、モータ回転検出部68で検出された電動モータ61の回転速度に応じて、電動モータ61の駆動を制御する。
図6は、実施形態1に係る電動補助自転車のアシスト制御部104Aの概略構成を示す図である。図6に示すように、アシスト制御部104Aは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、車速設定部155、時間計測部157、時間判定部158、時間設定部159、及び操作信号判定部160を有している。
第1状態判定部150は、電動補助自転車1の車両の走行状態が第1状態であるかどうかを判定する。第1状態は、ペダル踏力によらずに、電動モータ61の駆動力によって電動補助自転車1が移動している状態である。つまり、使用者が電動補助自転車1に乗車せずに電動補助自転車1を押して移動させている状態であって、かつ、電動モータ61によってアシストが行われている状態である。
トルク判定部151は、トルク検出部57によって検出されたトルクが所定値以下であるかどうかを判定する。所定値は、使用者がペダル33、34を踏み込んでいないことが判別できる小さい値に設定される。
車速算出部152は、前輪回転検出部95によって検出された前輪21の回転速度から電動補助自転車1の車速を算出する。また、車速算出部152は、モータ回転検出部68で検出された電動モータ61の回転速度、変速段検知部107によって検知された現在の変速段、及び、駆動輪である後輪22の外径等から電動補助自転車1の車速を算出する。以下、前輪回転検出部95の検出結果に基づいて算出した電動補助自転車1の実際の車速を実車速という。また、電動モータ61の回転速度等に基づいて算出した電動補助自転車1の車速を推定車速という。実車速と推定車速は、電動補助自転車1が使用される環境(例えば、坂道の傾斜度)や、使用者が電動補助自転車1を押す推進力等の条件により、一致する場合と、一致しない場合とがある。一致しない場合とは、例えば、使用者が電動補助自転車1を押して移動させる速度が速く、推定速度より実速度のほうが速いような場合である。
車速判定部153は、車速算出部152によって算出された実車速が所定値以下であるかどうかを判定する。所定値は、例えば、電動補助自転車1がペダル踏力によって走行する場合の通常の車速よりも低い車速であって、かつ、使用者が電動補助自転車1に乗車せずに電動補助自転車1を押して移動させる場合の車速、例えば、時速5km/hに設定される。尚、車速判定部153は、車速算出部152によって算出された推定車速が0より大きく、所定値以下であるかどうかを判定してもよい。
モータ回転判定部154は、モータ回転検出部68によって検出された電動モータ61の回転速度が所定値以上であるかどうかを判定する。すなわち、モータ回転判定部154は、電動モータ61が回転してアシスト制御が行われている状態であるかどうかを判定する。
車速設定部155は、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された時点における電動補助自転車1の推定車速を第2車速として設定する。また、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第1時間に達した時の目標車速として、第2車速以下の推定車速である、第1車速を設定する。車速設定部155で第2車速以下の第1車速を設定するのは、アシスト制御において、電動補助自転車1のアシスト力を維持又は減少させるためである。
補助力演算部140は、メモリ108に記憶された各種プログラム及びデータを用いて、電動モータ61の駆動力を算出する。具体的には、車速算出部152によって算出される推定車速が、車速設定部155で設定される推定車速になるように、フィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。
時間計測部157は、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された時点からの時間を計測する。
時間判定部158は、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された時点からの時間が第1時間に達したかどうかを判定する。
時間設定部159は、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された時点から電動モータ61を停止させるまでの時間の長さを第1時間に設定する。電動補助自転車1が使用される環境に合わせて、停止信号が入力された時点から電動モータ61を停止させるまでの時間の長さを第1時間とは異なる長さの時間に設定することもできる。
操作信号判定部160は、操作部190から停止信号が入力されたかどうかを判定する。
[アシスト制御フロー]
図7は、実施形態1に係る電動補助自転車のアシスト制御フローを示す図である。ペダル踏力によらずに電動補助自転車1を移動させる状態において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図7に示すフローに基づいて説明する。
図7に示すようなアシスト制御フローがスタートすると(スタート)、まず、ステップSA1で、トルク検出部57によって検出されたトルクが所定値以下であるかどうかを、トルク判定部151によって判定する。
トルク判定部151によって、トルクが所定値以下であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA2に進む。
ステップSA1でトルクが所定値より大きいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSA12に進んで、電動補助自転車1は第1状態ではない状態(以下、第2状態とする。例えば、電動補助自転車1がペダル踏力によって走行している状態)であると判定し、このフローを終了する(エンド)。
ステップSA2では、車速算出部152によって算出された実車速が所定値(例えば、時速5km/h)以下であるかどうかを車速判定部153によって判定する。実車速は、前輪回転検出部95によって検出された前輪21の回転速度に基づいて算出する。
ステップSA2において、実車速が所定値以下であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA3に進む。
一方、ステップSA2において、実車速が所定値より大きいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSA12に進んで、電動補助自転車1は第1状態ではない第2状態(例えば、電動補助自転車1に使用者が乗車し、かつペダル踏力を生じさせずに走行している状態)であると判定し、このフローを終了する(エンド)。
ステップSA3では、モータ回転検出部68によって検出されたモータ回転が所定値以上であるかどうかをモータ回転判定部154によって判定する。
ステップSA3において、モータ回転が所定値以上であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA4に進んで、第1状態判定部150によって電動補助自転車1は第1状態であると判定される。
ステップSA3において、モータ回転が所定値より小さいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSA12に進んで、電動補助自転車1は第1状態ではない第2状態(例えば、電動モータ61によるアシストが停止している状態)であると判定し、このフローを終了する(エンド)。
ステップSA4で電動補助自転車1が第1状態であると判定された後、ステップSA5では、電動モータ61の停止を指示する停止信号が操作部190から入力されたかどうかを操作信号判定部160によって判定する。
ステップSA5において、操作部190から停止信号が入力されたと判定された場合(YESの場合)には、ステップSA6に進む。
一方、ステップSA5において、操作部190から停止信号が入力されない場合(NOの場合)には、ステップSA1に戻って、電動補助自転車1の車両状態が第1状態であるかどうかの判定を再開する。
ステップSA6では、時間計測部157によって、停止信号が入力された時点からの時間の計測を開始する。
ステップSA7では、停止信号が入力された時点における推定車速が車速設定部155によって第2車速として設定される。
ステップSA8では、目標車速として、第2車速以下の推定車速である第1車速が車速設定部155によって設定される。本実施形態では、第1車速は、第2車速よりも低く設定される。
ステップSA9において、補助力演算部140は、電動補助自転車1の推定車速が第2車速から第1車速に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。
具体的には、補助力演算部140は、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第1時間に達した時に、車速算出部152によって算出される推定車速が第2車速から第1車速に変化するように、フィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSA10では、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第1時間に達したかどうかを時間判定部158によって判定する。
ステップSA10において、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第1時間に達したと時間判定部158が判定した場合(YESの場合)、ステップSA11において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。
一方、停止信号が入力された時点からの時間が第1時間に達していないと時間判定部158が判定した場合(NOの場合)、ステップSA9に戻って、電動モータ61の駆動の制御を続行する。
ステップSA11において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。
図8は、実施形態1に係る電動補助自転車1のアシスト制御における推定車速の変化を示すグラフである。横軸は時刻tを示しており、縦軸は推定車速Vを示している。時刻t1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された時刻t1における推定車速は、第2車速V2として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が所定の第1時間T1に達した時に、電動補助自転車1の推定車速が第2車速V2から第1車速V1に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動補助自転車1の推定速度の変化率である推定加速度は、負の一定値に設定されている。停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が所定の第1時間T1に達する時刻t2において、電動モータ61を停止させる。
[実施形態1の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動モータ61の駆動力によってペダル踏力によらずに電動補助自転車1が移動している状態において、操作部190を操作してアシスト停止指示を行うことにより、アシストを停止する制御が実行される。本実施形態におけるアシスト制御では、電動モータ61が停止するまでの時間として第1時間T1が確保されている。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態の電動補助自転車1におけるアシスト制御では、操作信号が入力された時点から所定の第1時間T1に達するまで、電動補助自転車1の推定車速が第2車速V2から第1車速V1に低下していく。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、操作部190を操作してアシスト停止指示を行った場合に、電動モータ61の停止を単に遅延させるのではなく、推定車速を変化させるアシスト制御を行う。このため、電動補助自転車1が使用される環境の変化、例えば坂の勾配の程度の違いなど、様々な使用環境の変化に対応することができる。
本実施形態では、アシスト制御によって電動モータ61を停止するまでの時間の長さを時間設定部159によって設定することができる。このため、使用環境に応じて、アシスト制御が実行される時間の長さを変更することができる。
第1状態判定部150は、トルク検出部57、モータ回転検出部68の検出結果、及び車速算出部152によって算出される車速に基づいて、第1状態であるかどうかを判定する。第1状態判定部150は、ペダル踏力が所定値以下であり、電動モータ61の回転が所定値以上であり、かつ、実車速が所定値以下である場合に第1状態であると判定する。このため、ペダル踏力によらずに電動補助自転車1を移動させる状態において、アシスト制御を行うことができる。
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Bの概略構成を示すブロック図である。図10は、実施形態2に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態2のアシスト制御フローでは、操作信号が入力された時点からの経過時間が第1時間に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度と、正の実加速度の閾値である第1閾値とを加速度比較部163によって比較する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図10に示すアシスト制御フローにおけるステップSB1〜SB8、及びステップSB16は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA8、及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSB1〜SB8、及びステップSB16の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図9に示すように、アシスト制御部104Bは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、車速設定部155、加速度設定部156、時間計測部157、時間判定部158、時間設定部159、操作信号判定部160、加速度検出部161、加速度閾値設定部162、及び加速度比較部163を有している。
加速度設定部156は、電動補助自転車1の推定車速の変化率である推定加速度を所定の値に設定する。加速度設定部156で設定される推定加速度は、負又は0の所定の値である。推定加速度を負又は0の所定の値に設定することにより、アシスト制御において、電動補助自転車1の推定車速を増加させないようにすることができる。
加速度検出部161は、電動補助自転車1の実車速の変化率である実加速度を検出する。具体的には、車速算出部152によって算出された電動補助自転車1の実車速の変化から電動補助自転車1の実加速度を検出する。
加速度閾値設定部162は、正の実加速度の閾値として、第1閾値を設定する。第1閾値は、例えば、アシスト制御の実行中に電動補助自転車1が下り坂に差し掛かった場合における電動補助自転車1の実加速度の値である。
加速度比較部163は、操作信号が入力された時点からの経過時間が第1時間に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度と、正の実加速度の閾値である第1閾値とを比較する。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図10に示すフローに基づいて説明する。
図10に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSB1〜SB8の各ステップを実行する。ステップSB9において、加速度設定部156は、電動補助自転車1の推定車速の変化率である第1加速度及び第2加速度を設定する。第1加速度は、電動補助自転車の推定車速が第2車速から第1車速に変化する場合の推定加速度である。第2加速度は、第1加速度よりも小さい加速度である。
ステップSB10において、補助力演算部140は、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第1時間に達した時に、電動補助自転車1の推定車速が第2車速から第1車速に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。
具体的には、補助力演算部140は、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第1時間に達した時に、車速算出部152によって算出される推定車速が第2車速から第1車速に第1加速度で変化するように、フィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSB11では、加速度比較部163は、操作信号が入力された時点からの経過時間が第1時間に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度と、正の実加速度の閾値である第1閾値とを比較する。
ステップSB11において、加速度検出部161で検出される実加速度が第1閾値以下であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSB12に進む。ステップSB12では、補助力演算部140は、第1加速度のまま推定速度が変化するように、電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSB13では、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第1時間に達したかどうかを時間判定部158によって判定する。
ステップSB13において、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第1時間に達したと時間判定部158が判定した場合(YESの場合)、ステップSB15において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。一方、停止信号が入力された時点からの時間が第1時間に達していないと時間判定部158が判定した場合(NOの場合)は、ステップSB11に戻る。
一方、ステップSB10からステップSB11に進んだ場合に、加速度検出部161で検出される実加速度が第1閾値より大きいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSB14に進む。ステップSB14では、補助力演算部140は、車速算出部152によって算出される推定車速が第2加速度で変化して、推定車速が0になるまでフィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSB15において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。つまり、ステップSB11で、加速度検出部161によって検出される実加速度が第1閾値より大きいと判定された場合(NOの場合)には、停止信号が入力された時点からの経過時間が第1時間に達する前に電動モータ61が停止する。
図11は、実施形態2に係る電動補助自転車のアシスト制御における推定車速の変化を示すグラフである。横軸は時刻tを示しており、縦軸は推定車速Vを示している。時刻t1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された時刻t1における推定車速は、第2車速V2として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が所定の第1時間T1に達した時に、電動補助自転車1の推定車速が第2車速V2から第1車速V1に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動補助自転車1の推定加速度は、第1加速度に設定されている。時刻t3において、電動補助自転車1の実加速度が第1閾値より大きいと判定されたとすると、電動補助自転車1の推定加速度は、第1加速度より小さい第2加速度に変更される。本実施形態では、電動補助自転車1の推定速度Vは、推定車速Vが0になるまで第2加速度のまま変化する。時刻t4で推定速度Vが0となって電動モータ61が停止する。つまり、停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が第1時間T1に達する前の時刻t4において、アシスト制御は終了する。
[実施形態2の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動補助自転車1が加速して実加速度が第1閾値よりも大きいと判定された場合に、アシスト力を低下させるように電動モータ61の駆動を制御する。電動補助自転車1が加速して実加速度が第1閾値よりも大きくなる場合とは、例えば、下り坂に差し掛かったような場合である。例えば、下り坂に差し掛かって電動補助自転車1の実加速度が増大した場合に、アシスト力を低下させる。これにより、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、加速度検出部161で検出される実加速度が、第1閾値より大きい場合、操作信号が入力された時点からの経過時間が第1時間T1に達する前に電動モータ61を停止させる。加速度検出部161で検出される実加速度が大きい場合に、アシスト力を短時間で低下させることにより、電動補助自転車の実加速度が増大することを抑制できる。このため、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
[実施形態3]
図12は、実施形態3に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Cの概略構成を示すブロック図である。図13は、実施形態3に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態3のアシスト制御フローでは、駆動力設定部164は、第1駆動力及び第2駆動力を設定する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図13に示すアシスト制御フローにおけるステップSC1〜SC6及びステップSC12は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA6及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSC1〜SC6、及びステップSC12の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図12に示すように、アシスト制御部104Cは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、駆動力設定部164、時間計測部157、時間判定部158、時間設定部159、及び操作信号判定部160を有している。
駆動力設定部164は、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された時点における電動モータ61の駆動力を第2駆動力として設定する。また、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第2時間に達した時の目標駆動力として、第2駆動力以下の第1駆動力を設定する。駆動力設定部164で第2駆動力以下の第1駆動力を設定するのは、アシスト制御において、電動補助自転車1のアシスト力を維持又は減少させるためである。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図13に示すフローに基づいて説明する。
図13に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSC1〜SC6の各ステップを実行する。ステップSC7において、停止信号が入力された時点における電動モータ61の駆動力を駆動力設定部164によって第2駆動力として設定する。ステップSC8では、操作部190からの停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第2時間に達した時の目標駆動力として、第2駆動力以下の第1駆動力を駆動力設定部164によって設定する。本実施形態では、第1駆動力は、第2駆動力車速よりも低く設定される。
ステップSC9において、補助力演算部140は、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第2時間に達した時に、電動モータ61による駆動力が第2駆動力から第1駆動力に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSC10では、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第2時間に達したかどうかを時間判定部158によって判定する。
ステップSC10において、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第2時間に達したと時間判定部158が判定した場合(YESの場合)、ステップSC11において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。一方、停止信号が入力された時点からの時間が第2時間に達していないと時間判定部158が判定した場合(NOの場合)、ステップSC9に戻って、電動モータ61の駆動の制御を続行する。
ステップSC11において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。
図14は、実施形態3に係る電動補助自転車1のアシスト制御における駆動力の変化を示すグラフである。横軸は時刻tを示しており、縦軸は電動モータ61による駆動力Dを示している。時刻t1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された時刻t1における電動モータ61による駆動力は、第2駆動力D2として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が所定の第2時間T2に達した時に、電動モータ61による駆動力が第2駆動力D2から第1駆動力D1に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動モータ61の駆動力の変化率は、負の一定値に設定されている。停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が所定の第2時間T2に達する時刻t2において、電動モータ61を停止させる。
[実施形態3の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動モータ61の駆動力によってペダル踏力によらずに電動補助自転車1が移動している状態において、操作部190を操作してアシスト停止指示を行うことにより、アシストを停止する制御が実行される。本実施形態におけるアシスト制御では、電動モータ61が停止するまでの時間として第2時間T2が確保されている。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態の電動補助自転車1におけるアシスト制御では、操作信号が入力された時点から所定の第2時間T2に達するまで、電動モータ61の駆動力が第2駆動力D2から第1駆動力D1に低下していく。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、操作部190を操作してアシスト停止指示を行った場合に、電動モータ61の停止を単に遅延させるのではなく、電動モータ61の駆動力を変化させるようにアシスト制御を行っている。このため、電動補助自転車1が使用される環境の変化、例えば坂の勾配の程度の違いなど、様々な使用環境の変化に対応することができる。
[実施形態4]
図15は、実施形態4に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Dの概略構成を示すブロック図である。図16は、実施形態4に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態4のアシスト制御フローでは、操作信号が入力された時点からの経過時間が第2時間に達するまでの間において、加速度比較部163によって、加速度検出部161で検出される実加速度を、正の実加速度の閾値である第2閾値、及び、負の実加速度の閾値である第3閾値と比較する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図16に示すアシスト制御フローにおけるステップSD1〜SD6、及びステップSD16は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA6、及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSD1〜SD6、及びステップSD16の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図15に示すように、アシスト制御部104Dは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、駆動力設定部164、駆動力変化率設定部165、時間計測部157、時間判定部158、時間設定部159、操作信号判定部160、加速度検出部161、加速度閾値設定部162、及び加速度比較部163を有している。
駆動力変化率設定部165は、電動モータ61の駆動力の変化率である駆動力変化率を所定の値に設定する。駆動力変化率設定部165で設定される駆動力変化率は、負又は0の所定の値である。駆動力変化率を負又は0の所定の値に設定することにより、アシスト制御において、電動補助自転車1のアシスト力を増加させないようにすることができる。
加速度検出部161は、電動補助自転車1の実車速の変化率である実加速度を検出する。具体的には、車速算出部152によって算出された電動補助自転車1の実車速の変化から電動補助自転車1の実加速度を検出する。
加速度閾値設定部162は、正の実加速度の閾値である第2閾値、及び、負の実加速度の閾値である第3閾値を設定する。第2閾値は、例えば、アシスト制御の実行中に電動補助自転車1が下り坂に差し掛かった場合における電動補助自転車1の実加速度の値である。第3閾値は、例えば、アシスト制御の実行中にブレーキを掛けた場合における電動補助自転車1の実加速度の値である。
加速度比較部163は、操作信号が入力された時点からの経過時間が第2時間に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度を、正の実加速度の閾値である第2閾値、及び、負の実加速度の閾値である第3閾値と比較する。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図16に示すフローに基づいて説明する。
図16に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSD1〜SD6の各ステップを実行する。ステップSD7において、停止信号が入力された時点における電動モータ61の駆動力を駆動力設定部164によって第2駆動力として設定する。ステップSD8では、操作部190からの停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第2時間に達した時の目標駆動力として、第1駆動力を駆動力設定部164によって設定する。第1駆動力は、第2駆動力より低い駆動力である。
ステップSD9において、駆動力変化率設定部165は、電動モータ61の駆動力の変化率として第1変化率及び第2変化率を設定する。第1変化率は、電動モータ61の駆動力が第2駆動力から第1駆動力に変化する場合の駆動力の変化率である。第1変化率は、負の値である。第2変化率は、第1変化率よりも更に小さい変化率である。第2変化率も、負の値である。
ステップSD10において、補助力演算部140は、停止信号が入力された時点からの経過時間が所定の第2時間に達した時に、電動モータ61による駆動力が第2駆動力から第1駆動力に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSD11では、加速度比較部163は、操作信号が入力された時点からの経過時間が第2時間に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度を、正の実加速度の閾値である第2閾値、及び、負の実加速度の閾値である第3閾値と比較する。
ステップSD11において、加速度検出部161で検出される実加速度が、第2閾値以下、かつ、第3閾値以上の場合(YESの場合)には、ステップSD12に進む。ステップSD12では、補助力演算部140は、第1変化率のまま、電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSD13では、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第2時間に達したかどうかを時間判定部158によって判定する。
ステップSD13において、停止信号が入力された時点からの時間が所定の第2時間に達したと時間判定部158が判定した場合(YESの場合)、ステップSD15において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。一方、停止信号が入力された時点からの時間が第1時間に達していないと時間判定部158が判定した場合(NOの場合)は、ステップSD11に戻る。
一方、ステップSD10からステップSD11に進んだ場合に、加速度検出部161で検出される実加速度が第2閾値より大きい場合、又は、第3閾値より小さい場合(NOの場合)には、ステップSD14に進む。ステップSD14では、補助力演算部140は、電動モータ61による駆動力が第2変化率で変化して0になるまで、電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSD15において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。つまり、ステップSD11で、加速度検出部161によって検出される実加速度が第2閾値より大きい場合、又は、第3閾値より小さい場合(NOの場合)には、停止信号が入力された時点からの経過時間が第2時間に達する前に電動モータ61が停止する。
図17は、実施形態4に係る電動補助自転車1のアシスト制御における駆動力の変化を示すグラフである。横軸は時刻tを示しており、縦軸は電動モータ61による駆動力Dを示している。時刻t1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された時刻t1における電動モータ61による駆動力は、第2駆動力D2として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が所定の第2時間T2に達した時に、電動モータ61による駆動力が第2駆動力D2から第1駆動力D1に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動モータ61の駆動力の変化率は、負の一定値である第1変化率に設定されている。時刻t3において、電動補助自転車1の加速度が第2閾値より大きい、又は、第3閾値より小さいと判定されたとすると、電動モータ61による駆動力の変化率は、第1変化率より小さい第2変化率に変更される。本実施形態では、電動モータ61による駆動力Dは、駆動力Dが0になるまで第2変化率のまま変化する。時刻t4で電動モータ61による駆動力Dが0となって電動モータ61が停止する。つまり、停止信号が入力された時刻t1からの経過時間が第2時間T2に達する前の時刻t4において、アシスト制御は終了する。
[実施形態4の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動補助自転車1の実加速度が正の実加速度の閾値である第2閾値より大きい場合、又は、負の実加速度の閾値である第3閾値より小さい場合、アシスト力を低下させるように電動モータ61の駆動を制御する。電動補助自転車1の実加速度が第2閾値より大きい場合とは、例えば、下り坂に差し掛かったような場合である。また、電動補助自転車1の実加速度が第3閾値より小さい場合とは、例えば、ブレーキを掛けて電動補助自転車1が減速するような場合である。例えば、下り坂に差し掛かって実加速度が増大した場合や、ブレーキを掛けて実加速度が減少した場合に、アシスト力を低下させる。これにより、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、加速度検出部161で検出される実加速度が、正の実加速度の閾値である第2閾値より大きい場合、又は、負の実加速度の閾値である第3閾値より小さい場合、操作信号が入力された時点からの経過時間が第2時間T2に達する前に電動モータ61を停止させる。加速度検出部161で検出される実加速度が第2閾値より大きい場合、又は、第3閾値より小さい場合に、アシスト力を短時間で低下させることにより、電動補助自転車の実加速度が増大することを抑制できる。このため、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
[実施形態5]
図18は、実施形態5に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Eの概略構成を示すブロック図である。図19は、実施形態5に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態5のアシスト制御フローでは、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達したかどうかを走行距離判定部167が判定する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図19に示すアシスト制御フローにおけるステップSE1〜SE5、及びステップSE12は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA5、及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSE1〜SE5、及びステップSE12の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図18に示すように、アシスト制御部104Eは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、車速設定部155、走行距離計測部166、走行距離判定部167、走行距離設定部168、及び操作信号判定部160を有している。
車速設定部155は、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された地点における電動補助自転車1の推定車速を第4車速として設定する。また、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達した時の目標車速として、第4車速以下の推定車速である第3車速を設定する。車速設定部155で第4車速以下の第3車速を設定するのは、アシスト制御において、電動補助自転車1のアシスト力を維持又は減少させるためである。
走行距離計測部166は、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された地点からの走行距離を計測する。
走行距離判定部167は、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達したかどうかを判定する。
走行距離設定部168は、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された地点から電動モータ61を停止させるまでの走行距離の長さを第1距離に設定する。電動補助自転車1が使用される環境に合わせて、停止信号が入力された地点から電動モータ61を停止させるまでの走行距離の長さを第1距離とは異なる長さの距離に設定することもできる。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図19に示すフローに基づいて説明する。
図19に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSE1〜SE5の各ステップを実行する。ステップSE6では、走行距離計測部166によって、停止信号が入力された地点からの走行距離の計測を開始する。
ステップSE7では、停止信号が入力された地点における推定車速が車速設定部155によって第4車速として設定される。
ステップSE8では、目標車速として、第4車速以下の推定車速である第3車速が車速設定部155によって設定される。本実施形態では、第3車速は、第4車速よりも低く設定される。
ステップSE9において、補助力演算部140は、電動補助自転車1の推定車速が第4車速から第3車速に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。
具体的には、補助力演算部140は、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達した時に、車速算出部152によって算出される推定車速が第4車速から第3車速に変化するように、フィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSE10では、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達したかどうかを走行距離判定部167によって判定する。
ステップSE10において、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達したと走行距離判定部167が判定した場合(YESの場合)、ステップSE11において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。
一方、停止信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達していないと走行距離判定部167が判定した場合(NOの場合)、ステップSE9に戻って、電動モータ61の駆動の制御を続行する。
ステップSE11において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。
図20は、実施形態5に係る電動補助自転車1のアシスト制御における推定車速の変化を示すグラフである。横軸は位置Pを示しており、縦軸は推定車速Vを示している。位置P1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された位置P1における推定車速は、第4車速V4として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第1距離L1に達した時に、電動補助自転車1の推定車速が第4車速V4から第3車速V3に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動補助自転車1の加速度は、負の一定値に設定されている。停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第1距離L1に達する位置P2において、電動モータ61を停止させる。
[実施形態5の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動モータ61の駆動力によってペダル踏力によらずに電動補助自転車1が移動している状態において、操作部190を操作してアシスト停止指示を行うことにより、アシストを停止する制御が実行される。本実施形態におけるアシスト制御では、電動モータ61が停止するまでの走行距離として第1距離L1が確保されている。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態の電動補助自転車1におけるアシスト制御では、操作信号が入力された地点から所定の第1距離L1に達するまで、電動補助自転車1の推定車速が第4車速V4から第3車速V3に低下していく。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、操作部190を操作してアシスト停止指示を行った場合に、電動モータ61の停止を単に遅延させるのではなく、推定車速を変化させるようにアシスト制御を行っている。このため、電動補助自転車1が使用される環境の変化、例えば坂の勾配の程度の違いなど、様々な使用環境の変化に対応することができる。
本実施形態では、アシスト制御によって電動モータ61を停止するまでの走行距離の長さを距離設定部によって設定することができる。このため、使用環境に応じて、アシスト制御が実行される走行距離の長さを変更することができる。
[実施形態6]
図21は、実施形態6に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Fの概略構成を示すブロック図である。図22は、実施形態6に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態6のアシスト制御フローでは、操作信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達するまでの間において、加速度比較部163によって、加速度検出部161で検出される実加速度と、正の実加速度の閾値である第4閾値とを比較する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図22に示すアシスト制御フローにおけるステップSF1〜SF5、及びステップSF16は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA5、及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSF1〜SF5、及びステップSF16の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図21に示すように、アシスト制御部104Bは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、車速設定部155、加速度設定部156、走行距離計測部166、走行距離判定部167、走行距離設定部168、操作信号判定部160、加速度検出部161、加速度閾値設定部162、及び加速度比較部163を有している。
加速度閾値設定部162は、正の実加速度の閾値として、第4閾値を設定する。第4閾値は、例えば、アシスト制御の実行中に電動補助自転車1が下り坂に差し掛かった場合における電動補助自転車1の実加速度の値である。
加速度比較部163は、操作信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度と、正の実加速度の閾値である第4閾値とを比較する。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図22に示すフローに基づいて説明する。
図22に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSF1〜SF5の各ステップを実行する。ステップSF6では、走行距離計測部166によって、停止信号が入力された地点からの走行距離の計測を開始する。
ステップSF7では、停止信号が入力された地点における推定車速が車速設定部155によって第4車速として設定される。
ステップSF8では、目標車速として、第4車速より低い推定車速である第3車速が車速設定部155によって設定される。
ステップSF9において、加速度設定部156は、電動補助自転車1の推定車速の変化率である第3加速度及び第4加速度を設定する。第3加速度は、電動補助自転車の推定車速が第4車速から第3車速に変化する場合の推定加速度である。第4加速度は、第3加速度よりも小さい加速度である。
ステップSF10において、補助力演算部140は、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達した時に、電動補助自転車1の推定車速が第4車速から第3車速に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。
具体的には、補助力演算部140は、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達した時に、車速算出部152によって算出される推定車速が第4車速から第3車速に第3加速度で変化するように、フィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSF11では、加速度比較部163は、操作信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度と、正の実加速度の閾値である第4閾値とを比較する。
ステップSF11において、加速度検出部161で検出される実加速度が第4閾値以下であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSF12に進む。ステップSF12では、補助力演算部140は、第3加速度のまま推定速度が変化するように、電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSF13では、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達したかどうかを走行距離判定部167によって判定する。
ステップSF13において、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第1距離に達したと走行距離判定部167が判定した場合(YESの場合)、ステップSF15において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。一方、停止信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達していないと走行距離判定部167が判定した場合(NOの場合)は、ステップSF11に戻る。
一方、ステップSF10からステップSF11に進んだ場合に、加速度検出部161で検出される実加速度が第4閾値より大きいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSF14に進む。ステップSF14では、補助力演算部140は、車速算出部152によって算出される推定車速が第4加速度で変化して、推定車速が0になるまでフィードバック制御を用いて電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSF15において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。つまり、ステップSF11で、加速度検出部161によって検出される実加速度が第4閾値より大きいと判定された場合(NOの場合)には、停止信号が入力された地点からの走行距離が第1距離に達する前に電動モータ61が停止する。
図23は、実施形態6に係る電動補助自転車1のアシスト制御における推定車速の変化を示すグラフである。横軸は位置Pを示しており、縦軸は推定車速Vを示している。位置P1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された位置P1における推定車速は、第4車速V4として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第1距離L1に達した時に、電動補助自転車1の推定車速が第4車速V4から第3車速V3に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動補助自転車1の推定加速度は、第3加速度に設定されている。位置P3において、電動補助自転車1の実加速度が第4閾値より大きいと判定されたとすると、電動補助自転車1の推定加速度は、第3加速度より小さい第4加速度に変更される。本実施形態では、電動補助自転車1の推定速度Vは、推定車速Vが0になるまで第4加速度のまま変化する。位置P4で推定速度Vが0となって電動モータ61が停止する。つまり、停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第1距離L1に達する前の位置P4において、アシスト制御は終了する。
[実施形態6の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動補助自転車1が加速して実加速度が第4閾値よりも大きいと判定された場合に、アシスト力を低下させるように電動モータ61の駆動を制御する。電動補助自転車1が加速して実加速度が第4閾値よりも大きくなる場合とは、例えば、下り坂に差し掛かったような場合である。例えば、下り坂に差し掛かって電動補助自転車1の実加速度が増大した場合に、アシスト力を低下させる。これにより、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、加速度検出部161で検出される実加速度が、第4閾値より大きい場合、操作信号が入力された地点からの走行距離が第1距離L1に達する前に電動モータ61を停止させる。加速度検出部161で検出される実加速度が大きい場合に、アシスト力を短時間で低下させることにより、電動補助自転車の実加速度が増大することを抑制できる。このため、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
[実施形態7]
図24は、実施形態7に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Gの概略構成を示すブロック図である。図25は、実施形態7に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態7のアシスト制御フローでは、駆動力設定部164は、第3駆動力及び第4駆動力を設定する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図25に示すアシスト制御フローにおけるステップSG1〜SG5及びステップSG12は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA5及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSG1〜SG5、及びステップSG12の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図24に示すように、アシスト制御部104Gは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、駆動力設定部164、走行距離計測部166、走行距離判定部167、走行距離設定部168、及び操作信号判定部160を有している。
駆動力設定部164は、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力された場合に、停止信号が入力された地点における電動モータ61の駆動力を第4駆動力として設定する。また、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達した時の目標駆動力として、第4駆動力より低い第3駆動力を設定する。駆動力設定部164で第4駆動力より低い第3駆動力を設定するのは、アシスト制御において、電動補助自転車1のアシスト力を減少させるためである。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図25に示すフローに基づいて説明する。
図25に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSG1〜SG5の各ステップを実行する。ステップSG6では、走行距離計測部166によって、停止信号が入力された地点からの走行距離の計測を開始する。
ステップSG7において、停止信号が入力された地点における電動モータ61の駆動力を駆動力設定部164によって第4駆動力として設定する。ステップSG8では、操作部190からの停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達した時の目標駆動力として、第4駆動力以下の第3駆動力を駆動力設定部164によって設定する。本実施形態では、第3駆動力は、第4駆動力車速よりも低く設定される。
ステップSG9において、補助力演算部140は、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達した時に、電動モータ61による駆動力が第4駆動力から第3駆動力に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSG10では、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達したかどうかを走行距離判定部167によって判定する。
ステップSG10において、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達したと走行距離判定部167が判定した場合(YESの場合)、ステップSG11において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。一方、停止信号が入力された地点からの距離が第2距離に達していないと走行距離判定部167が判定した場合(NOの場合)、ステップSG9に戻って、電動モータ61の駆動の制御を続行する。
ステップSG11において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。
図26は、実施形態7に係る電動補助自転車1のアシスト制御における駆動力の変化を示すグラフである。横軸は位置Pを示しており、縦軸は電動モータ61による駆動力Dを示している。位置P1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された位置P1における電動モータ61による駆動力は、第4駆動力D4として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第2距離L2に達した時に、電動モータ61による駆動力が第4駆動力D4から第3駆動力D3に変化するように電動モータ61の駆動が制御される。電動モータ61の駆動力の変化率は、負の一定値に設定されている。停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第2距離L2に達する位置P2において、電動モータ61を停止させる。
[実施形態7の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動モータ61の駆動力によってペダル踏力によらずに電動補助自転車1が移動している状態において、操作部190を操作してアシスト停止指示を行うことにより、アシストを停止する制御が実行される。本実施形態におけるアシスト制御では、電動モータ61が停止するまでの走行距離として第2距離が確保されている。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態の電動補助自転車1におけるアシスト制御では、操作信号が入力された地点から所定の第2距離L2に達するまで、電動モータ61の駆動力が第4駆動力D4から第3駆動力D3に低下していく。このため、アシスト力の急変化が生じにくく、使用者が電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、操作部190を操作してアシスト停止指示を行った場合に、電動モータ61の停止を単に遅延させるのではなく、電動モータ61の駆動力を変化させるようにアシスト制御を行っている。このため、電動補助自転車1が使用される環境の変化、例えば坂の勾配の程度の違いなど、様々な使用環境の変化に対応することができる。
[実施形態8]
図27は、実施形態8に係る電動補助自転車1のアシスト制御部104Hの概略構成を示すブロック図である。図28は、実施形態8に係る電動補助自転車1のアシスト制御フローを示す図である。実施形態8のアシスト制御フローでは、操作信号が入力された地点からの走行距離が第2距離に達するまでの間において、加速度比較部163によって、加速度検出部161で検出される実加速度を、正の実加速度の閾値である第5閾値、及び、負の実加速度の閾値である第6閾値と比較する点で、実施形態1のアシスト制御フローとは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
図28に示すアシスト制御フローにおけるステップSH1〜SH5、及びステップSH16は、実施形態1の図7に示すアシスト制御フローのステップSA1〜SA6、及びステップSA12とそれぞれ同じである。よって、ステップSH1〜SH5、及びステップSH16の各ステップに関する詳しい説明は省略する。
図27に示すように、アシスト制御部104Hは、補助力演算部140、第1状態判定部150、トルク判定部151、車速算出部152、車速判定部153、モータ回転判定部154、駆動力設定部164、駆動力変化率設定部165、走行距離計測部166、走行距離判定部167、走行距離設定部168、操作信号判定部160、加速度検出部161、加速度閾値設定部162、及び加速度比較部163を有している。
駆動力変化率設定部165は、電動モータ61の駆動力の変化率である駆動力変化率を所定の値に設定する。駆動力変化率設定部165で設定される駆動力変化率は、負又は0の所定の値である。駆動力変化率を負又は0の所定の値に設定することにより、アシスト制御において、電動補助自転車1のアシスト力を増加させないようにすることができる。
加速度検出部161は、電動補助自転車1の実車速の変化率である実加速度を検出する。具体的には、車速算出部152によって算出された電動補助自転車1の実車速の変化から電動補助自転車1の実加速度を検出する。
加速度閾値設定部162は、正の実加速度の閾値である第5閾値、及び、負の実加速度の閾値である第6閾値を設定する。第5閾値は、例えば、アシスト制御の実行中に電動補助自転車1が下り坂に差し掛かった場合における電動補助自転車1の実加速度の値である。第6閾値は、例えば、アシスト制御の実行中にブレーキを掛けた場合における電動補助自転車1の実加速度の値である。
加速度比較部163は、操作信号が入力された地点からの走行距離が第2距離に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度を、正の実加速度の閾値である第5閾値、及び、負の実加速度の閾値である第6閾値と比較する。
[アシスト制御フロー]
次に、上述のような構成を有する電動補助自転車1において、電動補助自転車1の移動をアシストするアシスト制御について、図28に示すフローに基づいて説明する。
図28に示すようなアシスト制御フローがスタートし(スタート)、ステップSH1〜SH5の各ステップを実行する。ステップSH6では、走行距離計測部166によって、停止信号が入力された地点からの走行距離の計測を開始する。
ステップSH7では、停止信号が入力された地点における電動モータ61の駆動力を駆動力設定部164によって第4駆動力として設定する。ステップSH8では、操作部190からの停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達した時の目標駆動力として、第3駆動力を駆動力設定部164によって設定する。第3駆動力は、第4駆動力より低い駆動力である。
ステップSH9において、駆動力変化率設定部165は、電動モータ61の駆動力の変化率として第3変化率及び第4変化率を設定する。第3変化率は、電動モータ61の駆動力が第4駆動力から第3駆動力に変化する場合の駆動力の変化率である。第3変化率は、負の値である。第4変化率は、第3変化率よりも更に小さい変化率である。第4変化率も、負の値である。
ステップSH10において、補助力演算部140は、停止信号が入力された地点からの走行距離が所定の第2距離に達した時に、電動モータ61による駆動力が第4駆動力から第3駆動力に変化するように電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSH11では、加速度比較部163は、操作信号が入力された地点からの走行距離が第2距離に達するまでの間において、加速度検出部161で検出される実加速度を、正の実加速度の閾値である第5閾値、及び、負の実加速度の閾値である第6閾値と比較する。
ステップSH11において、加速度検出部161で検出される実加速度が、第5閾値以下、かつ、第6閾値以上の場合(YESの場合)には、ステップSH12に進む。ステップSH12では、補助力演算部140は、第3変化率のまま、電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSH13では、停止信号が入力された地点からの距離が所定の第2距離に達したかどうかを走行距離判定部167によって判定する。
ステップSH13において、停止信号が入力された地点からの距離が所定の第2距離に達したと走行距離判定部167が判定した場合(YESの場合)、ステップSH15において、モータ制御部105は、補助力演算部140で算出された駆動力に従って、電動モータ61を停止させる。一方、停止信号が入力された地点からの距離が第1距離に達していないと走行距離判定部167が判定した場合(NOの場合)は、ステップSH11に戻る。
一方、ステップSH10からステップSH11に進んだ場合に、加速度検出部161で検出される実加速度が第5閾値より大きい場合、又は、第6閾値より小さい場合(NOの場合)には、ステップSH14に進む。ステップSH14では、補助力演算部140は、電動モータ61による駆動力が第4変化率で変化して0になるまで、電動モータ61の駆動力を算出する。モータ制御部105は、補助力演算部140によって算出された駆動力を電動モータ61が出力するように、電動モータ61の駆動を制御する。
ステップSH15において電動モータ61を停止させることで、アシスト制御は終了する(エンド)。つまり、ステップSH11で、加速度検出部161によって検出される実加速度が第5閾値より大きい場合、又は、第6閾値より小さい場合(NOの場合)には、停止信号が入力された地点からの走行距離が第2距離に達する前に電動モータ61が停止する。
図29は、実施形態8に係る電動補助自転車1のアシスト制御における駆動力の変化を示すグラフである。横軸は位置Pを示しており、縦軸は電動モータ61による駆動力Dを示している。位置P1において、第1状態判定部150によって電動補助自転車1が第1状態であると判定され、操作部190から停止信号が入力されたとする。停止信号が入力された位置P1における電動モータ61による駆動力は、第4駆動力D4として設定される。本実施形態におけるアシスト制御では、停止信号が入力された位置P1からの走行距離が所定の第2距離L2に達した時に、電動モータ61による駆動力が第4駆動力D4から第3駆動力D3に変化するように電動モータ61の駆動力が制御される。駆動力の変化率は、負の一定値である第3変化率に設定されている。位置P3において、電動補助自転車1の加速度が第5閾値より大きい、又は、第6閾値より小さいと判定されたとすると、電動モータ61による駆動力の変化率は、第3変化率より小さい第4変化率に変更される。本実施形態では、電動モータ61による駆動力Dは、駆動力Dが0になるまで第4変化率のまま変化する。位置P4で電動モータ61による駆動力Dが0となって電動モータ61が停止する。つまり、停止信号が入力された位置P1からの走行距離が第2距離L2に達する前の位置P4において、アシスト制御は終了する。
[実施形態8の効果]
本実施形態の電動補助自転車1では、電動補助自転車1の実加速度が正の実加速度の閾値である第5閾値より大きい場合、又は、負の実加速度の閾値である第6閾値より小さい場合、アシスト力を低下させるように電動モータ61の駆動を制御する。電動補助自転車1の実加速度が第5閾値より大きい場合とは、例えば、下り坂に差し掛かったような場合である。また、電動補助自転車1の実加速度が第6閾値より小さい場合とは、例えば、ブレーキを掛けて電動補助自転車1が減速するような場合である。例えば、下り坂に差し掛かって実加速度が増大した場合や、ブレーキを掛けて実加速度が減少した場合に、アシスト力を低下させる。これにより、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
本実施形態では、加速度検出部161で検出される実加速度が、正の実加速度の閾値である第5閾値より大きい場合、又は、負の実加速度の閾値である第6閾値より小さい場合、操作信号が入力された地点からの走行距離が第2距離L2に達する前に電動モータ61を停止させる。加速度検出部161で検出される実加速度が第5閾値より大きい場合、又は、第6閾値より小さい場合に、アシスト力を短時間で低下させることにより、電動補助自転車の実加速度が増大することを抑制できる。このため、使用者は電動補助自転車1を安定して支えることができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
実施形態1の図8、及び実施形態5の図20では、推定速度の変化率である推定加速度は負の一定値になっているが、これに限定されない。推定速度を段階的に変化させてもよい。また、推定加速度が一定でなく、負又は0の範囲で変化してもよい。
実施形態3の図14、及び実施形態7の図26では、電動モータ61の駆動力の変化率は負の一定値になっているが、これに限定されない。駆動力を段階的に変化させてもよい。また、電動モータ61の駆動力の変化率が一定でなく、負又は0の範囲で変化してもよい。
本実施形態では、第1状態判定部150は、トルク判定部151、車速判定部153、及びモータ回転判定部154の検出結果に基づいて、ペダル踏力が所定値以下であり、実車速が所定値以下であり、かつ、電動モータ61の回転が所定値以上である場合に第1状態であると判定したが、これに限定されない。例えば、第1状態判定部は、乗車している使用者を検出せず、かつ実車速が生じている場合に第1状態であると判定してもよい。この場合、使用者が電動補助自転車1に乗車せずに電動補助自転車1を移動させている状態において、アシスト制御を行うことができる。
使用者が乗車しているかどうかを検出する手段として、例えば、シート圧力検出部及びシート圧力判定部を用いることができる。シート圧力検出部は、シートの着座面に加わる圧力を検出する。シート圧力判定部は、シート圧力検出部で検出される圧力が所定値以下であるかどうかを判定する。第1状態判定部は、シート圧力判定部によってシートの着座面に加わる圧力が所定値以下である場合に第1状態であると判定する。この場合、使用者がシートに着座していない状態において、アシスト制御を行うことができる。
また、第1状態であるかどうかを判定する別の手段として、クランク回転検出部58、前輪回転検出部95、及びモータ回転検出部68を用いることができる。第1状態判定部150は、クランク回転検出部58、前輪回転検出部95、及びモータ回転検出部68の検出結果に基づいて、クランク軸41の回転数が所定値以下であり、実車速が所定値以下であり、かつ、電動モータ61の回転が所定値以上である場合に第1状態であると判定する。この場合、クランク軸41の回転数を低くして電動補助自転車1を移動させる状態において、アシスト制御を行うことができる。