以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
(基本構成の説明)
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両1の構成を示すブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド車両1は、エンジン10と、燃料供給装置15と、第1MG(Motor Generator)20と、第2MG30と、動力分割機構40と、リダクション機構58と、駆動輪62と、パワーコントロールユニット(PCU)60と、バッテリ(蓄電装置)70と、制御装置100とを備える。
このハイブリッド車両1は、シリーズ・パラレル型のハイブリッド車両であり、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方を駆動源として走行可能に構成される。
エンジン10と第1MG20と第2MG30とは、動力分割機構40を介して相互に連結されている。動力分割機構40に連結される第2MG30の回転軸16には、リダクション機構58が接続される。回転軸16は、リダクション機構58を介して、駆動輪62と連結されるとともに、動力分割機構40を介して、エンジン10のクランクシャフトに連結される。
動力分割機構40は、エンジン10の駆動力を、第1MG20と回転軸16とに分割することができる。第1MG20は、動力分割機構40を介してエンジン10のクランクシャフトを回転させることにより、エンジン10を始動するスタータとして機能することができる。動力分割機構40は、たとえば遊星歯車機構によって構成される。この場合において、遊星歯車機構のサンギヤSGには、第1MG20の回転軸が連結され、キャリアCAにはエンジン10のクランクシャフトが連結され、リングギヤRGには第2MG30の回転軸16およびリダクション機構58を経由して駆動輪62が連結される。
第1MG20および第2MG30は、いずれも発電機としても電動機としても作動し得る周知の同期発電電動機である。すなわち、第1MG20は、動力分割機構40を経由して伝達されたエンジン10の出力を用いてバッテリ70の充電電力を生成する「発電機構」を構成することができる。また、第2MG30がバッテリ70からの電力によって「電動機」として動作することによって車両駆動力を発生するための機構が実現できる。第1MG20および第2MG30は、PCU60に接続され、PCU60は、バッテリ70に接続される。
制御装置100は、パワーマネジメント用電子制御ユニット(Electronic Control Unit;以下、PM−ECUという)140と、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)141と、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)142と、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)143とを含む。
PM−ECU140は、エンジンECU141と、モータECU142と、バッテリECU143とに、図示しない通信ポートを介して接続されている。PM−ECU140は、エンジンECU141と、モータECU142と、バッテリECU143と各種制御信号やデータのやり取りを行なう。
モータECU142は、PCU60に接続され、第1MG20および第2MG30の駆動を制御する。バッテリECU143は、バッテリ70の充放電電流の積算値に基づいて、残容量(以下、SOC(State of charge)という)を演算する。
エンジンECU141は、エンジン10および燃料供給装置15に接続されている。エンジンECU141は、エンジン10の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するとともに、入力した信号に応じて燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を行なう。また、エンジンECU141は、燃料供給装置15を制御して燃料をエンジン10に供給する。
以上の構成を有するハイブリッド車両1において、エンジン10および燃料供給装置15の構成および制御についてより詳細に説明する。
図2は、燃料供給に関するエンジン10および燃料供給装置15の構成を示した図である。本実施の形態は、本発明が適用される車両を、内燃機関として筒内噴射とポート噴射とを併用するデュアル噴射タイプの内燃機関、例えば直列4シリンダのガソリンエンジンを採用するハイブリッド車両としている。
図2を参照して、エンジン10は、吸気マニホールド36と、吸気ポート21と、シリンダブロックに設けられた4つのシリンダ11とを含む。
吸入空気AIRは、シリンダ11中の図示しないピストンが下降するときに、吸気口管から吸気マニホールド36および吸気ポート21を通って各シリンダ11に流入する。
燃料供給装置15は、低圧燃料供給機構50と、高圧燃料供給機構80とを含む。低圧燃料供給機構50は、燃料圧送部51と、低圧燃料配管52と、低圧デリバリーパイプ53と、低圧燃圧センサ53aと、ポート噴射弁54とを含む。低圧デリバリーパイプ53は、ポート噴射弁54から噴射するための燃料を貯留する「貯留部」である。
高圧燃料供給機構80は、高圧ポンプ81と、チェック弁82aと、高圧燃料配管82と、高圧デリバリーパイプ83と、高圧燃圧センサ83aと、筒内噴射弁84とを含む。高圧デリバリーパイプ83は、筒内噴射弁84から噴射するための燃料を貯留する「高圧貯留部」である。
筒内噴射弁84は、噴孔部84aを各シリンダ11の燃焼室内に露出する筒内噴射用インジェクタである。筒内噴射弁84が開弁動作するとき、高圧デリバリーパイプ83内の加圧された燃料が筒内噴射弁84の噴孔部84aから燃焼室16内に噴射される。
エンジンECU141は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力インターフェース回路、出力インターフェース回路などを含んで構成される。エンジンECU141は、図1のPM−ECUからエンジン起動/停止指令を受けて、エンジン10および燃料供給装置15を制御する。
エンジンECU141は、アクセル開度や吸入空気量やエンジン回転数などに基づいて燃焼毎に必要な燃料噴射量を算出する。また、エンジンECU141は、算出した燃料噴射量に基づいて、ポート噴射弁54および筒内噴射弁84への噴射指令信号などを適時に出力する。
エンジンECU141は、エンジン10の始動時に、ポート噴射弁54による燃料噴射を最初に実施させる。そして、ECU140は、高圧燃圧センサ83aにより検出される高圧デリバリーパイプ83内の燃料圧力が予め設定された圧力値を超えたとき、筒内噴射弁84への噴射指令信号の出力を開始する。
さらに、エンジンECU141は、例えば筒内噴射弁84からの筒内噴射を基本としながら、エンジン10の始動暖機時や低回転高負荷時などのように筒内噴射では混合気形成が不十分となる特定の運転状態下では、ポート噴射を併用する。または、エンジンECU141は、例えば筒内噴射弁84からの筒内噴射を基本としながら、ポート噴射が有効な高回転高負荷時などにポート噴射弁54からのポート噴射を実行する。
本実施の形態では、燃料供給装置15は、低圧燃料供給機構50の圧力が可変に制御可能である点が特徴的である。以下、燃料供給装置15の低圧燃料供給機構50についてより詳細に説明する。
燃料圧送部51は、燃料タンク511と、フィードポンプ512と、サクションフィルタ513と、燃料フィルタ514と、リリーフ弁515と、これらを連結する燃料管516とを含む。
燃料タンク511は、エンジン10で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する。サクションフィルタ513は、異物の吸入を阻止する。燃料フィルタ514は、吐出燃料中の異物を除去する。
リリーフ弁515は、フィードポンプ512から吐出される燃料の圧力が上限圧力に達すると開弁し、燃料の圧力が上限圧力に満たない間は閉弁状態を維持する。
低圧燃料配管52は、燃料圧送部51から低圧デリバリーパイプ53までを連結する。ただし、低圧燃料配管52は、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される1つの部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
低圧デリバリーパイプ53は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、低圧燃料配管52に接続される。低圧デリバリーパイプ53には、ポート噴射弁54が連結される。低圧デリバリーパイプ53には、内部の燃料圧力を検出する低圧燃圧センサ53aが装着されている。
ポート噴射弁54は、噴孔部54aを各シリンダ11に対応する吸気ポート21内に露出するポート噴射用インジェクタである。ポート噴射弁54が開弁動作するとき、低圧デリバリーパイプ53内の加圧された燃料が、ポート噴射弁54の噴孔部54aから吸気ポート21内に噴射される。
フィードポンプ512は、エンジンECU141から発信される指令信号に基づいて、駆動および停止される。
フィードポンプ512は、燃料タンク511内から燃料を汲み上げ、汲み上げた燃料を、例えば1[MPa:メガパスカル]未満の一定可変範囲内の圧力に加圧して吐出することが可能である。さらに、フィードポンプ512は、エンジンECU141の制御により、単位時間当りの吐出量[m3/sec]や吐出圧[kPa:キロパスカル]を変化させることが可能である。
このようにフィードポンプ512を制御することは、以下の点で好ましい。まず、低圧デリバリーパイプ53は、エンジンが高温となると内部の燃料が気化するのを防ぐため、気化しない程度に圧力をかけておく必要がある。しかし圧力を高くしすぎるとポンプの負荷が大きくエネルギロスが大きい。燃料の気化を防止するための圧力は温度によって変化するので必要な圧力を低圧デリバリーパイプ53にかけることでエネルギロスを少なくすることができる。また、フィードポンプ512を適切に制御することによって、エンジンが消費した量に相当する分の燃料を送出するようにすれば、無駄に加圧するエネルギを節約することができる。したがって、一旦余分に加圧してからプレッシャレギュレータで圧力を一定にする構成よりも燃費を向上させる点で有利である。
(エンジン異常時の退避走行)
このような構成のエンジン10および燃料供給装置15において、デリバリーパイプ(低圧デリバリーパイプ53または高圧デリバリーパイプ83)内に空気が滞留する(いわゆるエア噛み)、あるいは、フィードポンプ512から吐出される燃料の圧力に応じて開閉するリリーフ弁515や噴射弁(ポート噴射弁54または筒内噴射弁84)に異物が噛み込むなどの異常が生じた場合を考える。このような場合には、エンジン10の燃料噴射制御を適切に実行することが困難となる虞がある。なお、このような燃料系におけるエアや異物の噛み込みは、たとえば、車両工場またはディーラなどにおいて、燃料供給装置15に対する作業が行なわれた後に起こり得る。
燃料系の異常は、たとえば、一対(複数)のバンクを持つV型レシプロエンジンにおいて、一対のバンク間にデリバリーパイプが一体化して設けられる構成において発生することがある。デリバリーパイプは、一方のバンク側のパイプに燃料導入口および燃圧センサが設けられており、当該燃料導入口から他方のバンク側のパイプに向けて燃料が導入されるように構成されている。そのため、燃料導入口からエアが混入すると、燃料とともにエアが他方のバンク側のパイプに送られて滞留することで、他方のバング側でエア噛みが生じる場合がある。このような場合には、燃圧センサの周囲には燃料が存在するため、燃圧センサの検出値には異常が現れないものの、他方のバンクでは噴射弁を開弁させても燃料が適当に噴射されないという状況が起こり得る。
このように燃圧センサから離れた位置でエア噛みが生じている場合には、燃圧センサの検出値からは故障を検出することが困難であるため、燃焼に必要な燃料噴射量が供給されず、結果的にエンジンの出力低下を招いてしまう可能性がある。
図3は、燃料系にエア噛みが生じた場合のエンジン10の出力(エンジン回転数およびエンジントルク)、燃圧および空燃比の変化の一例を示した波形図である。なお、燃圧について、実線は低圧デリバリーパイプ53の目標圧(目標燃圧)P0を示し、破線は低圧燃圧センサ53aの検出値(実燃圧)P1を示している。
図3を参照して、時刻t1よりも前において、エンジンECU141はエンジン10を停止させている。このとき、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧P0は0[kPa]に設定される。なお、時刻t1よりも前は、目標燃圧P0は0[kPa]に設定されるが、エンジン10が停止するとポート噴射弁54からの噴射が発生せず、低圧デリバリーパイプ53の燃圧を下げることができないので、実燃圧P1は目標燃圧P0には追従しない。さらに、低圧デリバリーパイプ53において密閉状態となった燃料がエンジン10からの熱によって膨張することにより、燃圧が上昇する場合もある。
時刻t1においてPM−ECU140からエンジン起動指令が出力されると、それに応じてエンジンECU141は、エンジン10の運転を開始するとともに、目標燃圧P0を以下の順で変化させる。
まず、時刻t1〜t2において、目標燃圧P0をPH(たとえば、644[kPa])に設定する。続いて、時刻t2以降において、目標燃圧P0よりも低いPL(たとえば、400[kPa])に設定する。PHは、以下に述べるように、低圧燃圧センサ53aのスタック検出のために、通常使用する燃圧PLよりも高く設定された診断用の燃圧を示す。
エンジンECU141は、図3の波形のように、エンジン始動後、通常時よりも高圧に燃圧を昇圧させてから燃圧を降圧させたときに、低圧燃圧センサ53aの検出値のスタック検出を行なう。スタック検出は、低圧燃圧センサ53aの検出値が固定値となっていないことを確認する故障検出であり、低圧燃圧センサ53aの検出値が変化することを確認するためには、少なくとも低圧燃圧センサ53aの検出値を2点の圧力で確認する必要がある。したがって、エンジンECU141は、目標燃圧P0をPHに設定したときの検出値Aと、目標燃圧P0をPLに設定したときの検出値Bとを用いて、スタック故障発生の有無を診断する。具体的には、検出値AがPH近傍の値を示し、かつ、検出値BがPL近傍の値を示していれば、低圧燃圧センサ53aが正常であると判断する。一方、検出値AおよびBが同じ値を示していれば、低圧燃圧センサ53aにスタック故障が発生していると判断する。
なお、PHは、上述した燃圧センサのスタック検出を行なうための診断用の燃圧に相当する以外に、エンジン10の高温再始動時に設定される目標燃圧に相当する。燃料を高圧とするのは、エンジンが高温になることで内部の燃料が気化することを防ぐためである。
ここで、時刻t2よりも後の時刻t3において、デリバリーパイプにエア噛みが生じた場合を想定する。このような場合には、燃焼に必要な燃料噴射量を確保できなくなるため、気筒内の空燃比A/Fは、図中に点線で示されるように、理論空燃比(14.7程度)よりも大きくなる(リーンとなる)。エンジンECU141は、通常、空燃比A/Fを目標空燃比に近付けるように燃料噴射量を増減する空燃比フィードバック制御を実行する。したがって、図3に示されるように、空燃比A/Fが理論空燃比よりもリーンとなった場合には、エンジンECU141は燃料噴射量を増量させる。しかしながら、デリバリーパイプ内に滞留するエアによって燃料噴射量の増量が妨げられるため、時刻t3以降、空燃比A/Fはリーン化する。その結果、図中に点線で示されるように、燃焼不良によってエンジン10の出力トルクTeが低下してしまう。
このような状態における退避走行としては、一般的に、エンジン10および第1MG20を停止させ、バッテリ70からの電力のみを用いて第2MG30を駆動するEV走行モードが採用される。EV走行モードでは、PCU60によってバッテリ70の電圧を昇圧して第2MG30を駆動することができるため、運転者の要求トルクを実現しながら走行することが可能である。しかしながら、エンジン10および第1MG20を用いた発電動作が行なえないため、ハイブリッド車両1の走行可能距離はバッテリ70に蓄えられた電力によって制限される。
そこで、本実施の形態では、燃料供給装置15において燃料噴射制御を適切に実行できないような異常が発生した場合には、通常使用時の燃圧よりも高圧となるように燃圧を昇圧させる。燃料の圧力を高めることで滞留しているエアや異物を押し出す応力が生じるため、これらを除去することが可能となる。
図4は、本実施の形態に係るハイブリッド車両1により実現される、燃料系にエア噛みが生じた場合のエンジン10の出力、燃圧および空燃比の変化の一例を示した波形図である。図4においても、図3と同様の時刻t3において、低圧デリバリーパイプ53にエア噛みが生じた場合を想定している。
図4を参照して、時刻t3以降、空燃比A/Fはリーン化するため、燃焼不良によりエンジン10の出力トルクTeが低下している。エンジンECU141は、後述する方法によって、エンジン10の出力トルクTeが低下したことを検出すると、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧P0を、通常時の目標燃圧よりも高いPH(たとえば、644[kPa])に変更する。
これにより、低圧燃圧センサ53aの検出値(実燃圧)P1は目標燃圧P0に追従するように上昇する。昇圧された燃料によってデリバリーパイプ内のエアが除去された場合には、空燃比フィードバック制御が適切に実行されて燃料噴射量が増量される。したがって、リーン化されていた空燃比A/Fは、時刻t4以降、目標空燃比(たとえば理論空燃比)に近付いていく。この結果、燃焼不良が解消されるため、エンジン10の出力トルクTeは目標トルクに向かって大きくなる。
以上のように、目標燃圧を高めることによってエンジン10の出力トルクTeの低下が抑制されるため、ハイブリッド車両1は、退避走行として、エンジン10の運転を伴なうHV走行モードを採用することが可能となる。この結果、退避走行にEV走行モードを採用する場合と比較して、ハイブリッド車両1の走行可能距離を延ばすことができる。また、エンジン10および第2MG30とを協調させて走行駆動力を高めることができるため、退避走行時の走行性能を向上させることができる。
なお、目標燃圧を高めることによってもエンジン10の出力トルクTeの低下が解消されない場合には、エンジンECU141は、エアまたは異物の除去が困難であるか、もしくは、エア噛み以外の故障が生じていると判断する。この場合、退避走行としてEV走行モードを採用する。
図5は、本実施の形態において実行される目標燃圧の設定処理を説明するためのフローチャートである。図5に示すフローチャートは、一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとに、メインルーチンから呼び出されて実行される。
図5を参照して、エンジンECU141は、ステップS01により、エンジン10が運転中であるか否かを判定する。エンジン10が運転中でない場合(S01のNO判定時)には、処理がステップS07に進められる。その結果、図4の時刻t1よりも前において、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧が0[kPa]に設定される。
一方、ステップS01において、エンジン10が運転中である場合(S01のYES判定時)には、エンジンECU141は、エンジン10の出力トルクTeが低下しているかどうかを判定する。これにより、エンジンECU141は、燃料系にエア噛み、または異物の噛み込みが発生しているかどうかを判断する。
本実施の形態に係るハイブリッド車両1では、エンジン10、第1MG20および第2MG30は動力分割機構40を介して相互に連結されているため、エンジン10、第1MG20および第2MG30の各回転数は、図6に示すように、共線図において直線で結ばれる関係となる。そこで、エンジンECU141は、この関係を用いることにより、第1MG20のトルク指令Tm1*に基づいて、エンジン10の出力トルクTeが低下しているかどうかを判定する。
図5の縦線Y1は、サンギヤSGの回転数、すなわち第1MG20(MG1)の回転数Nm1を示す。縦線Y2は、キャリアCAの回転数、すなわちエンジン10の回転数Neを示す。縦線Y3は、リングギヤRGの回転数、すなわち第2MG30(MG2)の回転数Nm2を示す。なお、縦線Y1〜Y3の間隔は、動力分割機構40のギヤ比ρに応じて定められている。
エンジン作動を伴なう走行は、実線で示した共線図に従う。リングギヤRG上の2つの太線矢印は、第1MG20の出力トルクTm1に従うエンジン直達トルク(−Tm1/ρ)と、第2MG30の出力トルクTm2とを示す。エンジン直達トルクは、第1MG20でエンジン10からの反力を受け持ちながら、エンジン10の目標回転数Ne*および目標トルクTe*で動作させたときに、リングギヤRGに出力されるトルクに相当する。
エンジン10には、ハイブリッド車両1の走行に必要なパワー(走行パワーPr*)と、バッテリ70の充放電要求パワーPchgとの和で示される出力パワー(以下、エンジン要求パワーPeとも称す)が要求される(Pe=Pr*−Pchg)。エンジン要求パワーPeが所定の閾値よりも高い場合には、エンジン2の運転を伴なうHV走行が選択される。
なお、走行パワーPr*は、ハイブリッド車両1の走行に必要な走行駆動力(トルク)と、駆動軸の回転数との積に基づいて算出することができる。たとえば、走行駆動力(トルク)は、運転者によるアクセルペダルの操作量と、車速とに基づいて算出することができる。充放電要求パワーPchgは、バッテリ70のSOC制御のための、バッテリ70の充放電電力を示す。充放電要求パワーPchgは、バッテリ70の放電を促す場合にはPchg>0に設定され、バッテリ70の充電を促す場合にはPchg<0に設定されるものとする。
エンジン要求パワーPeと、エンジン10を効率良く動作させるエンジン回転数およびエンジントルクとの関係を示す動作線(たとえば、燃費最適動作線)とに基づいて、エンジン10の目標動作点(目標回転数Ne*および目標トルクTe*)が設定される。エンジン10の目標回転数Ne*および第2MGの回転数Nm2が決まると、動力分割機構40の回転要素における力学的な関係を表す式(1)に従って、第1MG20の目標回転数Nm1*が一義的に決まる。
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ−Nm2/ρ …(1)
そして、第1MG20の回転数Nm1を目標回転数Nm1*とするために第1MG20が出力すべきトルクを示すトルク指令Tm1*が、式(2)に従って算出される。
Tm1*=−ρ・Pe/((1+ρ)・Ne*)+k1・(Nm1*−Nm1)+k2・∫(Nm1*−Nm1)dt …(2)
上記式(2)は、第1MG20の回転数Nm1を目標回転数Nm1*に一致させるため、すなわち、エンジン10の回転数Neを目標回転数Ne*に一致させるための回転数フィードバック制御の関係式である。上記式(2)において、右辺第1項はフィードフォワード項であり、右辺第2項はフィードバックの比例項であり、右辺第3項はフィードバックの積分項である。
右辺第1項は、エンジン10から出力され、サンギヤSGに作用するトルクを受け止めるためのトルクである。右辺第2項のk1(>0)は比例項のゲインであり、右辺第3項のk2(>0)は積分項のゲインである。
エンジン2の作動を伴なうHV走行時には、第1MG20のトルク指令Tm1*は、負のトルク(図中下向き矢印のトルクであって、エンジン10の回転数Neを押さえ込む方向のトルク)となる。エンジン10に対して第1MG20が負トルク(Tm1<0)を出力することによって、発電が行なわれる。
再び図4に戻って、エンジンECU141は、ステップS02において、エンジン要求パワーPeからエンジン10の目標回転数Ne*が設定されると、第1MG20の目標回転数Nm1*を算出する。そして、第1MG20の目標回転数Nm1*および回転数Nm1に基づいて、上記の回転数フィードバック制御の関係式である式(2)を用いて、第1MG20のトルク指令Tm1*を算出する。
次に、エンジンECU141は、ステップS03により、同一のエンジン要求パワーPeに対して過去に算出された第1MG20のトルク指令Tm1*_pastを取得する。この過去のトルク指令Tm1*_pastは、制御装置100のメモリ領域に記憶されている制御内容の履歴から読み出すことで取得可能である。
なお、ステップS03においては、複数のデータを統計処理することによって、過去のトルク指令Tm1*を取得するようにしてもよい。たとえば、エンジンECU141は、同一のエンジン要求パワーPeが設定された過去の制御周期を複数抽出し、その抽出した複数の制御周期のそれぞれに対応して設定された複数のトルク指令Tm1*_pastの平均値を算出する。複数のデータの統計処理には、平均値を算出する処理の他、複数のトルク指令Tm1*_patの中央値を算出する処理や、複数のトルク指令Tm1*_pastの最頻値を算出する処理などを行ってもよい。
次に、エンジンECU141は、ステップS04により、ステップS02で算出された、現在の制御周期におけるトルク指令Tm1*と、ステップS03で取得された、同一のエンジン要求パワーPeに対する過去のトルク指令Tm1*_pastとを比較する。
上述のように、第1MG20のトルク指令Tm1*は、エンジン10の回転数Neを目標回転数Ne*に一致させるための回転数フィードバック制御に基づいて設定される。そのため、エンジン10の目標トルクTe*に対して出力トルクTeが低下することによってエンジン10の回転数Neが低下した場合には、目標回転数Ne*に対する回転数Neの偏差が大きくなるため、上記式(2)の右辺第2および第3項のフィードバック項が大きくり、結果的に、トルク指令Tm1*の絶対値|Tm1*|が小さくなる。すなわち、エンジン10の出力トルクTeが低下することによってトルク指令Tm1*も低下する。
したがって、エンジンECU141は、現在のトルク指令Tm1*と、同一のエンジン要求パワーPeに対する過去のトルク指令Tm1*_pastとを比較することで、実質的に、現在のエンジントルクTeと、同一のエンジン要求パワーPeに対応する過去のエンジントルクTeとを比較する。これにより、エンジン10の出力トルクTeが低下しているかどうかを判定する。たとえば、Tm1*とTm1*_pastとの差分(=Tm1*−Tm1*_past)が所定の閾値α以上である場合(S04のYES判定時)には、エンジンECU141は、エンジン10の出力トルクTeが低下していると判定する。所定の閾値αは、たとえば、トルク指令Tm1*の大きさの20%程度に設定される。
エンジン10の出力トルクTeが低下していると判定された場合(S04のYES判定時)には、エンジンECU141は、燃料系にエア噛み等の故障が生じていると判断する。したがって、ステップS05に進み、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を、通常使用する燃圧よりも高く設定されたPH(たとえば、644[kPa])に設定する。これにより、昇圧された燃料によって燃料系に滞留するエアまたは異物が除去されると、燃焼に必要な燃焼噴射量を確保できるため、エンジン10の出力トルクの低下が解消される。したがって、ハイブリッド車両1は、HV走行モードによる退避走行が実行可能となる。
一方、Tm1*とTm1*_pastとの差分が所定の閾値αよりも小さい場合(S04のNO判定時)には、エンジンECU141は、燃料系にエア噛み等の故障が生じていないと判断する。したがって、エンジンECU141は、ステップS06により、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を、通常使用する燃圧PL(たとえば、400[kPa])に設定する。
なお、ステップS05による燃料の昇圧によってエアまたは異物が除去されることでエンジン10の出力トルクTeが増加した結果、Tm1*とTm1*_pastとの差分が所定の閾値αよりも小さくなると(S04のNO判定時)、ステップS06によって目標燃圧はPHからPLに変更される。
これに対して、ステップS05による燃料の昇圧によっても、Tm1*とTm1*_pastとの差分が所定の閾値α以上となる状態が所定時間以上継続している場合には、エンジンECU141はエンジン10を停止させる。したがって、EV走行モードによる退避走行が実行される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、エンジンの出力トルクが、同一のエンジン要求パワーPeに対する過去のエンジントルクに対して所定の閾値以上低下している場合には、エンジンの出力トルクが過去のエンジントルクに対して閾値以上低下していない場合よりも、低圧デリバリーパイプ53の目標燃圧を高く設定する。これにより、昇圧された燃料によって燃料系からエアや異物を除去できるため、燃料噴射量を確保できずに気筒内の空燃比がリーン化することを防止することができる。この結果、エンジンの出力トルクの低下が抑制されるため、退避走行として、エンジンの作動を伴なうHV走行モードを採用することが可能となる。よって、退避走行におけるハイブリッド車両の走行性能を向上させることができる。
なお、図1で示したハイブリッド車両1は、シリーズ・パラレル型のハイブリッド車両であり、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方を駆動源として走行可能に構成されるものであったが、他の方式のハイブリッド車両であっても本発明を適用可能である。
また、図2では、筒内噴射弁とポート噴射弁とを有するエンジンを例示したが、本発明は、筒内噴射弁が無くポート噴射弁のみを有するエンジンに適用することも可能である。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。