JP6225926B2 - 含油ダストスラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、圧延工程においては、摩擦係数を低減して圧延負荷を軽減したり、圧延機の潤滑性を確保し、損耗等を防止したりするために、種々の圧延潤滑油や作動油、グリース等が使用されている。そのため、この圧延潤滑油などの油分を含む鉄系のスラッジが多量に排出される(以降、このような油分や水分を含むダストやスラッジを、「含油ダストスラッジ」ともいう)。
ところが、前述のように、含油ダストスラッジは、多いものでは20質量%以上の油分を含んでいる。そのため、焼結原料中に含まれる油分が気化し、電気集塵機やバグフィルターに付着する。電気集塵機やバグフィルターに付着した油分は、目詰まりや火災などの事故の原因となる。
例えば、特許文献1には、並流式回転キルン型加熱炉を使用した含油ダストスラッジの処理方法において、加熱炉の炉内で含油ダストスラッジ中の油分が蒸発する地点に、油分を燃焼するのに必要な空気または酸素を富化した空気を強制的に吹き込むとともに、加熱炉の出側の排ガス中酸素濃度を0.1〜5体積%に制御し、さらに含油ダストスラッジの投入口の炉内の内壁面温度を400℃以上とした条件下で油分を燃焼除去し、油分の除去されたスラッジを非酸化条件下で冷却することが開示されている。
また、特許文献2に記載される含油ダストスラッジの処理方法によれば、含油ダストスラッジを小塊状にして分散して燃焼することによって、含油ダストスラッジの燃焼効率を向上し、かつ、LPG等の助燃料の使用量も低減できる。
しかしながら、特許文献1および特許文献2には、含油ダストスラッジの処理において、重油等の燃料の使用量を削減することに関する記載は無い。
その結果、含油ダストスラッジを加熱処理して油分除去する際に、製鉄所内で排出される非含油ダストスラッジなど、金属を含む助剤を添加して加熱処理することによって、含油ダストスラッジからの油分除去が促進され、より低コストで含油ダストスラッジからの油分除去を行えることを見出した。
本発明は、この知見に基づいて成されたものである。
前記含油ダストスラッジと共に、金属を含む助剤を加熱炉に入れ、加熱処理することを特徴とする含油ダストスラッジの処理方法を提供する。
また、前記助剤は、金属を50質量%以上含有するのが好ましい。
また、前記含油ダストスラッジに含まれる金属元素と前記助剤に含まれる金属元素とで、最も含有率が多い金属元素が一致するのが好ましい。
また、前記含油ダストスラッジの含油率が20質量%以下であるのが好ましい。
また、前記加熱炉における加熱処理を300℃以上で行うのが好ましい。
また、前記含油ダストスラッジが、鉄および酸化鉄の少なくとも一方を含むのが好ましい。
さらに、前記助剤が、鉄あるいはさらに酸化鉄を含むのが好ましい。
前記加熱炉に、前記含油ダストスラッジと共に金属を含む助剤を入れ、加熱処理することを特徴とする製鉄原料の製造方法を提供する。
図1に示す装置において、含油ダストスラッジは、供給部12から加熱炉14に供給され、加熱炉12で加熱処理されることによって、油分(あるいはさらに水分等)が除去される。また、供給部12には、含油ダストスラッジに加え、助剤が投入される。従って、含油ダストスラッジは、助剤と共に加熱炉14に供給され、助剤と共に加熱処理される。
中でも、本発明の処理方法によって油分が効率よく除去できる点で、鉄および/または酸化鉄を含む含油ダストスラッジは、好ましく例示される。その中でも、鉄および/または酸化鉄の含有量が多く前記利点がより好適に得られる、後述する助剤との混合を容易に行える等の点で、製銑から圧延までを行う鉄鋼製品の製造における、各種の工程で排出される含油ダストスラッジが、好ましく例示される。
また、本発明の処理方法で処理する含油ダストスラッジは、含油率が20質量%以下であるのが好ましい。この点に関しては、後に詳述する。
助剤に関しては、後に詳述する。
供給部12から加熱炉14への含油ダストスラッジと助剤との混合物の供給も、スクリューコンベア等の公知の方法で行えばよい。
なお、本発明の処理方法において、含油ダストスラッジと助剤との混合は、供給部12で行う以外にも、供給部12に投入する前、加熱炉14内など、各種の段階で行うことができる。また、含油ダストスラッジと助剤との混合は、含油ダストスラッジおよび助剤の性状、混合を行う段階(工程)等に応じて、公知の方法で行えばよい。
一例として、ロータリーキルン、シャフト炉(竪型炉)、多段炉、回転炉、流動炉、バッチ炉等が例示される。
燃焼用空気は、空気や酸素富化空気など、含油ダストスラッジからの油分除去に用いられる公知の燃焼用空気を利用すればよい。燃料も、重油など、加熱炉によって含油ダストスラッジから油分を除去する際に用いられる公知の燃料を利用すればよい。
また、燃焼用空気および燃料の供給量、さらには、含油ダストスラッジの加熱処理時間等は、加熱炉14の種類、加熱炉14の大きさや処理能力、処理する含油ダストスラッジの量等に応じて、適宜、設定すればよい。
加熱炉14での処理温度を300℃以上とすることにより、含油ダストスラッジからの油分除去を効率よく行える点で好ましい。
なお、加熱炉14での処理温度の上限は、通常1200℃程度である。
また、加熱炉14から排出される排気ガスは、脱塵装置16で処理されて、排ガス中に含まれる油分を除去されたダストスラッジが回収される。回収されたダストスラッジは、同様に、製鉄原料としてリサイクルされる。なお、脱塵装置16は、サイクロン、電気集塵機、バグフィルタ等の公知の装置が利用可能である。
後に詳述するが、本発明の含油ダストスラッジの処理方法によれば、効率よく含油ダストスラッジからの油分の除去を行うことができる。従って、本発明の含油ダストスラッジの処理方法を利用する本発明の焼結原料の製造方法によれば、従来は焼結原料等として利用することが困難であった含油ダストスラッジを、油分除去ダストスラッジとして回収して、鉄鋼製品の製造における鉄源、焼結原料、転炉製鋼原料などの製鉄原料としてリサイクルできる。
このような助剤を用いて、含油ダストスラッジからの油分除去を行うことにより、より少ない燃料で含油ダストスラッジからの油分除去を行える。その結果、本発明によれば、含油ダストスラッジ処理の大幅なコスト削減を図ることが可能となる。
例えば、鉄の酸化による発生熱は6〜8MJ/kgであり、一般的なA重油の発熱量の約20%前後にあたる。密度を比較すると、鉄の密度はA重油の約9倍であることから、換算すれば鉄はA重油の約2倍の発熱量を持つこととなる。
すなわち、含油ダストスラッジからの油分除去において、金属を含む助剤を添加した状態で加熱処理することは、加熱に必要なエネルギーを減らすことと同義であると言える。
一例として、金属粉や粒状金属や塊状の金属、金属粉と金属酸化物粉とを含む混合物、金属粉あるいはさらに金属酸化物粉と水分とを含む混合物等が例示される。
具体的には、鉄の含有量が多い、含油ダストスラッジとの混合が容易である等の理由で、製銑から圧延までを行う鉄鋼製品の製造における、各種の工程で排出される非含油ダストスラッジ(非含油ダスト・非含油スラッジ)が、好ましく例示される。
このような非含油ダストスラッジとしては、具体的には、転炉ダスト、高炉ダスト等が例示される。
助剤に水分が多く含まれると、水分の蒸発潜熱によって発熱量が低下してしまう。ここで、一般的に、含油ダストスラッジは、脱水をかけたとしても含水率を20質量%以下に下げることは非常に難しく、達成できてもコストに見合わないことが多い。
この点を考慮すると、助剤の含水率は20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以下であるのが特に好ましい。助剤の含水率を20質量%以下とすることにより、助剤が含有する水分に起因する、含油ダストスラッジの油分除去効率の低下を抑制して、より効率のよい処理が可能になる。
助剤は、金属の含有量が多いほど、金属の酸化による発熱量が多く、より効率よく含油ダストスラッジからの油分除去を行うことが可能になる。
この点を考慮すると、助剤は、金属を50質量%以上含むのが好ましく、金属を75質量%以上含むのがより好ましく、金属を99質量%以上含むのが特に好ましい。助剤が金属を50質量%以上含むことにより、効率のよい含油ダストスラッジの油分除去を行うことができる。
本発明の処理方法において、加熱炉14および排気ガスからは、油分を除去されたダストスラッジと、金属が酸化された助剤とが混合されて状態で排出される。
ここで、前述のように、加熱炉14で処理されたダストスラッジ等は、鉄鋼製品における鉄源や焼結原料など、製鉄原料としてリサイクルされる。従って、処理済のダストスラッジ等に異なる金属元素が含まれていると、処理済のダストスラッジの用途によっては、原料としてリサイクルする際に、各金属元素を分離する処理を行う必要が生じる。
このような分離処理を回避し、あるいは、分離処理を行う際の負担を低減するためには、含油ダストスラッジに含まれる金属元素と、助剤に含まれる金属元素とで、最も含有率が高い金属元素が一致しているのが好ましい。言い換えれば、含油ダストスラッジおよび助剤に含まれる金属や金属酸化物の金属元素において、含油ダストスラッジと助剤とで、含まれる金属元素の主成分が一致しているのが好ましい。
本発明の処理方法において、効率の良い含油ダストスラッジからの油分除去を行うためには、助剤の発熱量が含油ダストスラッジの発熱量が上回っているのが好ましい。
ここで、含油ダストスラッジに含まれる金属元素は、一般的に、酸化状態であることが多い。すなわち、含油ダストスラッジに含まれるのは、一般的に、金属よりも金属酸化物の方が遥かに多い。この点を考慮すると、助剤に含まれる金属の酸化による発熱が、含油ダストスラッジに含まれる金属の酸化による発熱を下回ることは考えにくい。
但し、含油ダストスラッジに含まれる油分が多いと、その発熱量が大きくなることはあり得る。例えば、金属鉄の酸化による発熱量は、前述のように、A重油の20%前後である。従って、含油ダストスラッジ中の油分が大きく見積もってA重油相当とすれば、含油ダストスラッジによる発熱量が、助剤による発熱量を上回る可能性が有る。
すなわち、含油ダストスラッジの含油率が20質量%を超える場合には、助剤を添加することによる処理効率の向上効果が低くなり、あるいは、助剤の添加が不要になる可能性が有る。
合計量が決まっている場合に、必要ない助剤を添加するということは、処理できる含油ダストスラッジの量が減ってしまうということである。従って、不要な助剤の添加は、含油ダストスラッジの処理量の点でも不利になる可能性が高い。
この点からも、含油ダストスラッジの含油率は、助剤を添加する効果が好適に得られる20質量%以下であるのが好ましい。
具体的には、助剤の添加量は、含油ダストスラッジに対して、50〜200質量%が好ましく、75〜150質量%がより好ましく、100質量%前後すなわち含油ダストスラッジと助剤とをほぼ同量にするのが特に好ましい。
助剤の添加量を、含油ダストスラッジに対して50質量%以上とすることにより、助剤の添加効果を好適に得て効率のよい油分除去が可能になる点で好ましい。
助剤の添加量を含油ダストスラッジに対して200質量%以下とすることにより、必要な含油ダストスラッジの処理量を好適に確保できる点で好ましい。
なお、本発明は、以下の実施例に限定されないのは、もちろんである。
この試験装置は、上蓋20aおよび下蓋20bによって上下を閉塞された石英管20と、石英管20の側面を囲むヒータ28とからなる管状電気炉を有する。
上蓋20aには、石英管20内に連通する空気導入管26が設けられる。
また、下蓋20bには脚部32が立設しており、脚部32の上には、載置部34が設けられる。載置部34の上には、試料Sを収容するためのメッシュ状の試料ケース36が載置される。試料ケース36は、1000℃までの耐熱性を有する。さらに、下蓋20bには、石英管20内に連通する排出管42が設けされる。
排出管42の下端は、試料Sから除去された油分Oおよび水分Wを回収するための回収槽46に挿入される。さらに、回収槽46の上面には、排ガスを排出するための排気管48が設けられる。
ヒータ28による加熱によって、試料Sから油分や水分が蒸発し、試料Sから油分が除去される。また、試料Sから蒸発した油分や水分は、空気導入管26から導入された空気によって回収槽46に流入して、冷却され、油分Oや水分Wとして回収される。
製鉄所で排出された、酸化鉄を主成分とする含油ダストスラッジを用意した。また、助剤として、鉄が61質量%含まれる非含油ダストスラッジ(転炉ダスト)を用意した。
含油ダストスラッジ100gと助剤100gとを混合して、200gの試料Sを調製した。この試料Sを、図2に示す試験装置の試料ケース36に収容した。
空気導入管26から200mL(リットル)/minの空気を導入しつつ、ヒータ28を、昇温速度10℃/minで処理温度である400℃まで昇温して、処理温度で3.5時間、保持した。なお、熱電対によって試料Sの温度を測定したところ、試料Sの温度とヒータ28の制御温度とは、ほぼ、一致していた。
処理温度で3.5時間、保持した後、室温まで冷却して、油分を除去した試料Sを試料ケース36から取り出した。
油分を除去した試料Sの未燃焼油分量を、ノルマルヘキサン抽出法によって測定した。未燃焼油分量とは、含油ダストスラッジを加熱することで取り除かれる油の内、高沸点のため蒸発せずに液体として残る油分のことである。
処理温度を600℃とした以外は、実施例1と同様にして、試料Sの油分を除去して、未燃焼油分量を測定した。
[比較例1]
助剤を混合しない含油ダストスラッジ200gを試料Sとして用いた以外は、実施例1と同様にして、試料Sの油分を除去して、未燃焼油分量を測定した。
[比較例2]
助剤を混合しない含油ダストスラッジ200gを試料Sとして用い、さらに、処理温度を600℃とした以外は、実施例1と同様にして、試料Sの油分を除去して、未燃焼油分量を測定した。
なお、実施例は、試料S中の含油ダストスラッジ量が、比較例の半分であるので、図3に示す結果では、実施例の未燃焼油分量を2倍にして計算している。
図3に示すように、処理温度を上げることで、試料Sにおける未燃焼油分量が低減されている。ここで、特筆すべきは、助剤として非含油ダストスラッジを混合した実施例と、含油ダストスラッジのみである比較例との比較であり、400℃および600℃で、共に、非含油ダストスラッジを混合した実施例の方が、試料Sの未燃焼油分量が低減していることがわかる。
以上のように、処理温度によらず、含油ダストスラッジに非含油ダストスラッジを添加することにより、すなわち、含油ダストスラッジに金属を含有する助剤を添加して、加熱処理することにより、油分除去効率が向上していることがわかる。これは、言い換えれば、より低温でも含油ダストスラッジから油分を除去できることを示しており、すなわち、燃料使用料を低減して、含油ダストスラッジからの油分除去を行うための加熱のための燃料コストを下げ、かつ、製鉄原料として好適に利用可能な未燃焼油分の少ない油分除去ダストスラッジを得ることができる。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
14 加熱炉
16 脱塵装置
20 石英管
26 空気導入管
28 ヒータ
32 脚部
34 載置台
36 試料ケース
42 排出管
46 回収槽
48 排気管
Claims (8)
- 金属および金属酸化物の少なくとも一方を含む含油ダストスラッジから油分を除去する含油ダストスラッジの処理方法であって、
前記含油ダストスラッジと共に、金属を含む助剤を加熱炉に入れ、300℃以上で加熱処理することを特徴とする含油ダストスラッジの処理方法。 - 前記助剤は、含水率が20質量%以下である請求項1に記載の含油ダストスラッジの処理方法。
- 前記助剤は、金属を50質量%以上含有する請求項1または2に記載の含油ダストスラッジの処理方法。
- 前記含油ダストスラッジに含まれる金属元素と前記助剤に含まれる金属元素とで、最も含有率が多い金属元素が一致する請求項1〜3のいずれかに記載の含油ダストスラッジの処理方法。
- 前記含油ダストスラッジの含油率が20質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の含油ダストスラッジの処理方法。
- 前記含油ダストスラッジが、鉄および酸化鉄の少なくとも一方を含む請求項1〜5のいずれかに記載の含油ダストスラッジの処理方法。
- 前記助剤が、鉄あるいはさらに酸化鉄を含む請求項1〜6のいずれかに記載の含油ダストスラッジの処理方法。
- 金属および金属酸化物の少なくとも一方を含む含油ダストスラッジを加熱炉によって処理する製鉄原料の製造方法であって、
前記加熱炉に、前記含油ダストスラッジと共に金属を含む助剤を入れ、300℃以上で加熱処理することを特徴とする製鉄原料の製造方法。
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