以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る情報提供装置の構成を示すブロック図である。
本情報提供装置10は、車両に搭載されるナビゲーション装置として構成されており、処理装置100と、記憶装置102と、無線装置104と、有線通信インタフェース(INF、Interface)106と、ディスプレイ108と、操作入力装置110と、マイクロフォン112と、スピーカ114と、を有している。
無線装置104は、道路に設定されたビーコンからの電波(ビーコン電波)を受信したり、電話網やインターネット回線等の無線公衆回線との通信や、車両内にあるスマートフォン等の携帯端末との間での短距離無線通信を行う。
有線通信インタフェース106は、CAN(Controller Area Network)等の通信規格に従う車載ネットワーク116を介して、車両制御を行う各種の電子制御装置(ECU、Electronic Control Unit)(不図示)との通信を行ったり、USB(登録商標)等のバスを介して携帯端末等の外部機器(不図示)との通信を行う。
ディスプレイ108は、地図情報や、イベント等の地域情報など、車両の走行や目的地設定等に関連する種々の情報を表示する表示装置であり、例えば液晶表示装置(LCD、Liquid Crystal Display)により構成することができる。
操作入力装置110は、ディスプレイ108上に出力された表示等に対して乗員がデータ入力等の入力操作を行うため装置であり、例えば、ディスプレイ108の表示画面上に設けられたタッチパネルとすることができる。
マイクロフォン112及びスピーカ114は、自車両の乗員との間で音声を用いてインタラクティブに(双方向に)情報を交換するための装置であり、マイクロフォン112は乗員の音声を検知して処理装置100に入力し、処理装置100はスピーカ114を介して乗員に対し音声メッセージを出力する。
記憶装置102は、地図データ120や、処理装置100における処理に必要な作業用データ等を記憶する。記憶装置102は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、ハードディスク装置などの補助記憶装置、あるいはこれらの組み合わせとすることができる。また、記憶装置102には、地図データ等を記録したDVD(Digital Versatile Disk)やCD(Compact Disk)等の記憶媒体からデータを読み出すデータ読み取り装置を含めることもできる。
処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)やデータの一時記憶のためのRAM等を含む記憶装置と、を有するコンピュータであり、挙動判定ユニット130及び発話速度判定ユニット132から成る余裕度判定ユニット134と、発話長判定ユニット136と、地域情報取得ユニット138と、情報提供ユニット140と、を有している。
処理装置100が備える上記各ユニットは、コンピュータである処理装置100がプログラムを実行することにより実現される仮想マシンであり、機能実現手段である。ただし、他の実施形態として、上記各ユニットを、それぞれ個別のハードウェアとして構成することもできる。なお、コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。
余裕度判定ユニット134は、挙動判定ユニット130により判定される運転者の挙動の速さの程度(より具体的には、所定の挙動に費やされる時間の長さの程度)と、発話速度判定ユニット132により判定される運転者の発話の速度の程度から、当該運転者が感じているであろう時間的余裕度の大きさを判定する。この時間的な余裕度は、例えば「少ない」、「普通」、「多い」の3段階で表すものとすることができる。
挙動判定ユニット130は、自車両に関して運転者が行う所定の挙動について、当該運転者が当該所定の挙動に費やした時間の長さの判定(挙動時間判定)を行う。一般に、運転者が特定の挙動に費やす時間(すなわち、当該挙動の速度)には、当該運転者が知覚する時間的余裕度が反映され、時間的余裕度を少ないと感じているときは短く(速く)なり、多いと感じているときは長く(遅く)なる。
例えば、挙動判定ユニット130は、運転者がドアを開けて乗車し、エンジンをスタートし、操作入力装置110の音声認識スイッチ(例えば、図2の操作ボタン202e)をオンするまでの、一連の挙動にかかった時間を計測し、当該計測した時間が所定の条件を満たすか否かに応じて、挙動時間判定の結果を「短い」又は「長い」に設定する。
なお、音声認識スイッチの操作を行うことなく情報提供装置10の電源投入により当該情報提供装置10の音声認識機能が自動的にオンになるものとしてもよい。この場合には、例えば、情報提供装置10の電源が投入されたことに応じて、処理装置100が、「行き先はどこですか?」等の運転者の発話を促すメッセージをスピーカ114から出力するものとし、挙動判定ユニット130は、車両ドアを開けてから当該メッセージに応答して運転者が発話するまでの、一連の挙動にかかった時間を計測するものとすることができる。
より具体的には、挙動判定ユニット130は、例えば、運転席ドアが開けられた後、運転者が乗車して当該運転席ドアが閉められるまでの時間T1と、運転席ドアが閉められた後、イグニションスイッチがオンされるまでの時間T2と、イグニションスイッチがオンされた後、上記音声認識スイッチがオンされるまでの時間T3と、を計測する。そして、当該計測した時間T1、T2、T3を、それぞれ対応する所定の基準時間Tth1、Tth2、Tth3と比較し、時間T1、T2、T3のうち少なくとも2つの時間が、対応する所定の基準時間未満であれば挙動時間を「短い」と判定し、それ以外の場合は挙動時間が「長い」ものと判定する。これにより、挙動判定ユニット130は、運転者が知覚する時間的余裕度の一つの現れである運転者の挙動時間を判定し、当該判定(挙動時間判定)の結果を出力する。
また、挙動判定ユニット130は、上記のように車両の走行を開始するまでの挙動に限らず、運転者が車両の走行を開始した後も、他の所定の挙動に費やした時間を計測して挙動時間判定を行うことができる。例えば、挙動判定ユニット130は、右左折時やレーン変更時において運転者が方向指示器をオンにしてからステアリングを操作するまでの時間T4や、トランスミッションを「R」(リバース、後退)に設定してから実際に後退を開始するまでの時間T5や、トランスミッションを「D」(ドライブ、前進)に設定してから実際に発進するまでの時間T6を計測する。そして、これらの各時間を計測する毎に、各時間T4、T5、又はT6と、それぞれ対応する所定の基準時間Tth4、Tth5、又はTth6とを比較し、T4〜T5がTth4〜Tth6未満である場合にそれぞれ挙動時間が「短い」と判定し、それ以外の場合は挙動が「長い」と判定することができる。
これにより、挙動判定ユニット130は、車両発進後の走行途中や、運転者が乗車した後の実際の発進操作の際においても、運転者の挙動時間を適宜判定して、その挙動時間判定の結果を出力することができる。その結果、余裕度判定ユニット134は、運転者が知覚する時間的余裕度が経時的に変化した場合にも、これら挙動時間判定の出力等に基づき、その時々の当該時間的余裕度の大小を判定することができる。
なお、運転席ドアが開閉されたか否かの情報、イグニションスイッチがオンされたか否かの情報、方向指示器がオンされたか否かの情報、ステアリング操作角度の情報、後退又は前進が行われたか否かの情報等、運転者が行う車両操作に関する情報は、運転席ドアに設けられたドアセンサ(不図示)等、対応するセンサからの出力に基づいて適切なECUが生成し、有線通信インタフェース106を介して挙動判定ユニット130により取得されるものとすることができる。また、音声認識スイッチが押されたか否かの情報は、挙動判定ユニット130が、操作入力装置110における操作入力を監視することにより取得するものとすることができる。
また、上記時間T1〜T6にそれぞれ対応する所定の基準時間Tth1〜6は、それぞれ対応する挙動において一般的な運転者が費やす時間の平均値として、予め記憶装置102に記憶させておくことができる。あるいは、車外に置かれたサーバが、各車両において各種の挙動に費やされた時間の情報を収集して統計処理し、一般的な運転者が各種の挙動に費やす平均時間を算出するものとし、挙動判定ユニット130は、無線装置104を介して当該サーバから対応する挙動の平均時間を取得して、上記所定の基準時間Tth1〜6として用いるものとしてもよい。
発話速度判定ユニット132(図1)は、マイクロフォン112を介して入力された運転者の発話の速度の判定(発話速度判定)を行い、当該発話速度判定の結果を出力する。一般に、運転者の発話の速度は、当該運転者が知覚する時間的余裕度が反映され、時間的余裕度を少ないと感じているときには速くなり(すなわち、早口になり)、時間的余裕度を多いと感じているときは遅くなる。
より具体的には、発話速度判定ユニット132は、マイクロフォン112を介して検知した運転者の発話の速度を算出し、当該算出した発話速度を所定の基準速度と比較する。そして、運転者の発話速度が当該所定の基準速度より大きいときは発話速度判定の結果を「速い」に設定し、当該所定の基準速度以下であるときは発話速度判定の結果を「遅い」に設定する。
ここで、上記発話速度は、例えば、発話に含まれる母音の数を音節数とみなし、当該発話に含まれる単位時間当たりの母音の数(すなわち、発話に含まれる母音の数を当該発話に要した時間で除して得た値)として算出することができる(例えば、特開平07−295588号公報参照)。また、あるいは、発話速度として、1母音当たりの発話時間(すなわち、発話に要した時間を当該発話に含まれる母音の数で除して得た値)を用いることもできる。
また、上記所定の基準速度としては、一般的な運転者の発話速度の平均値を用いることができる。例えば、発話速度判定ユニット132は、予め記憶装置102に記憶された上記平均値を参照して、自車両運転手の発話速度を判定するものとすることができる。
なお、上記所定の基準速度として、一般的な運転者ではなく、自車両を扱う運転者個人についての発話速度の平均値を用いるものとすることもできる。例えば、発話速度判定ユニット132は、挙動判定ユニット130における挙動時間判定の結果が「長い」であるときの当該運転者の発話速度を検知して記憶装置102に記憶するものとし、当該記憶した発話速度に基づいて上記所定の基準速度を決定するものとしてもよい。挙動時間が長く、時間的余裕のある状態にあると考えられる運転者の発話は、当該運転者本来の発話速度により行われると考えられるからである。
これにより、運転者個人の発話の性向(早口な人、遅い口調の人など)に応じて、上記所定の基準速度を設定することができるので、時間的余裕度についての判定精度をより高めることができる。なお、上記記憶した発話速度に基づいて設定される上記所定の基準速度としては、例えば、当該記憶した発話速度の平均値に所定の余裕度(例えば標準偏差の整数倍(1〜3倍))を減算した値を用いることができる。なお、上記に代えて、挙動判定ユニット130における挙動時間判定の結果が「短い」であるときの当該運転者の発話速度を検知して記憶装置102に記憶するものとし、当該記憶した発話速度に基づいて上記所定の基準速度を決定するものとすることもできる。
発話速度判定ユニット132は、例えば、車両発進時に運転者がマイクロフォン112を介して目的地を設定する際に、運転者の発話を検知することができる。
また、発話速度判定ユニット132は、車両発進後の走行途中においても、例えば右左折等の特定の挙動が行われたときに、運転者に対し何らかの質問メッセージをスピーカ114から出力することによって運転者の発話を促し、当該質問メッセージに応じて運転者が行った発話に基づいて発話速度を判定することができる。これにより、余裕度判定ユニット134は、車両発進後の走行途中においても、発話速度判定ユニット132が行った発話速度判定の結果を適宜取得して、運転者が知覚する時間的余裕度を判定することができる。
余裕度判定ユニット134(図1)は、上述した挙動判定ユニット130における挙動時間判定の結果と、発話速度判定ユニット132における発話速度判定の結果とに基づき、当該運転者が知覚する時間的余裕度についての判定(余裕度判定)を行う。より具体的には、余裕度判定ユニット134は、挙動判定ユニット130が挙動時間を「短い」と判定し、かつ、発話速度判定ユニット132が発話速度を「速い」と判定した場合には、運転者の知覚する時間的余裕度を「少ない」と判定する。一方、挙動判定ユニット130が挙動時間を「長い」と判定し、かつ、発話速度判定ユニット132が発話速度を「遅い」と判定した場合には、余裕度判定ユニット134は当該運転者が知覚する時間的余裕度を「多い」と判定し、上記以外の場合には当該時間的余裕度を「普通」と判定する。
発話長判定ユニット136(図1)は、運転者の発話の長さに関する判定(発話長判定)を行い、当該発話長判定の結果を出力する。より具体的には、発話長判定ユニット136は、マイクロフォン112を介して入力された、運転者の一回の発話の長さ、例えば当該発話に含まれる単語の数を検知し、当該検知した単語の数が所定の閾値以上であれば発話長を「長い」と判定し、閾値未満であれば「短い」と判定する。なお、発話に含まれる単語数は、形態素解析等の既知の文章構造解析手法を用いて算出することができる。
地域情報取得ユニット138(図1)は、無線装置104を介して、インターネットやビーコン信号等から渋滞情報やイベント情報等の地域情報を収集し、当該収集した地域情報を記憶装置102に記憶する。当該地域情報を収集する範囲は、例えば、本情報提供装置10がナビゲーション装置として通常備える経路探索機能により探索した走行経路を中心とする所定距離の範囲内、又は自車両から所定距離の範囲内とすることができる。また、インターネットからの情報収集の方法としては、例えば、予め定めた情報提供サイトやSNS(Social Networking Service)からのテキスト情報に対するキーワード検索その他のテキストマイニング(text mining)の手法を用いることができる。
あるいは、他の構成として、車外のサーバが上記のような情報探索手法により地域情報を収集するものとし、地域情報取得ユニット138は、無線装置104を介して当該サーバから地域情報を取得するものとすることもできる。
情報提供ユニット140(図1)は、地域情報取得ユニット138が取得した情報及び又は地図データ120に含まれる情報等を取捨選択して、当該情報をディスプレイ108等により運転者に提供する。その際、情報提供ユニット140は、余裕度判定ユニット134から出力される余裕度判定の結果と発話長判定ユニット136から出力される発話長判定の結果とに応じて、運転者に提供する情報の種類、内容、量などを変更する。
例えば、情報提供ユニット140は、余裕度判定ユニット134が出力した余裕度判定の結果が「普通」であった場合には、運転者の発話内容に対応した情報を、通常の内容及び量で提示する。より具体的には、例えば運転者発話により指定された目的地に対応する情報として、所定の基準にしたがって探索した当該目的地までの所定数の推奨経路を表示する。
一方、余裕度判定の結果が「少ない」であった場合には、情報提供ユニット140は、例えば、目的地までの経路探索時に最短経路のみを提示する等、運転者への提示情報を限定すると共に、自動的に経路案内表示を開始して、エンジン始動から経路案内開始までの時間を最小化する。また、道路状況に応じて走行経路の変更を早めに行えるよう、通常よりも遠方の道路情報を運転者に提供する等、運転者の運転行動をサポートするための情報をより早期に提供して情報の充実を図る。
また一方、余裕度判定の結果が「多い」である場合には、情報提供ユニット140は、運転者の発話内容に対応する情報に加えて当該情報に関連する情報も運転者に提示し、提示情報の充実を図る。例えば、情報提供ユニット140は、運転者の発話内容に対応する情報として当該運転者が指示する目的地までの所定数の推奨経路を表示するほか、当該情報に関連する情報として、当該表示した推奨経路に加えることのできるお勧め経由地の情報を表示する。これにより、運転者は、より多くの選択肢からより最適な判断を行えることとなり、運転者の満足度が向上する。
次に、情報提供装置10の具体的な動作の例について説明する。以下に示す動作例は、ナビゲーション装置である情報提供装置10が行う目的地設定時、経路案内時、及び経路再探索時の各動作についての、それぞれ余裕度判定の結果が「普通」、「速い」、及び「遅い」である場合の動作例である。
〔目的地設定時〕
まず、目的地設定時の動作における例を説明する。
ナビゲーション装置である情報提供装置10は、運転者の発話に基づいて、当該発話により指定された地名の位置に目的地を設定する。その際、例えば「東京に行く」のように、発話により指定された地名が具体的な位置を特定するのが困難なほどに広域の地名である場合がある。以下は、このような場合の、情報提供ユニット140の動作の例である。
<余裕度判定結果が「普通」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「普通」である場合、情報提供ユニット140は、「東京のどこに行きますか?」等の、目的地を絞り込むための音声メッセージをスピーカ114に流し、運転者との対話によって、又は操作入力装置110を介した運転者の操作によって、より具体的な目的地を設定する。
図2は、余裕度判定結果が「普通」である場合の、目的地設定時の表示画面の例である。図示の例では、ディスプレイ108の表示画面200上の図示左側に、「HOME」、「MENU」等の文字が付された操作ボタン202a〜eが図示縦方向に並んでおり、その右側の画面領域204には、「目的地を指定してください。」というテキスト206と共に、目的地として指定された「東京」を中心とする周辺地図が表示されている。これにより、運転者は、当該表示された地図に基づいて具体的な目的地を視覚的に探索することが可能となる。
これに対し、運転者は、例えば「詳細」の文字が付された操作ボタン202cを用いて地図を更に拡大等することにより具体的な目的地を定め、当該定めた目的地の地名を発話することにより、又は画面領域204上における当該定めた目的地の位置に触れることにより、当該目的地を指定することができる。なお、図示地図上に表示した「墨田区」等の地名は一例であり、当該地図上には、地名に限らず、主要な施設名や道路名その他の目的地特定に役立つ表示を行うことができる。
<余裕度判定結果が「少ない」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「少ない」であった場合、すなわち、運転者が知覚する時間的余裕度が少ないと判定された場合には、情報提供ユニット140は、上述した当該判定結果が「普通」であった場合と同様に、「東京のどこに行きますか?」等の、目的とする位置を絞り込むための音声メッセージをスピーカ114に流し、運転者との対話によって、より具体的な目的地を設定するものとすることができる。この場合にも、図2に示すような画面をディスプレイ108に表示して、運転者に対し具体的な目的地の設定を支援することができる。
なお、余裕度判定の結果が「少ない」である場合には、図2に示すようなディスプレイ108上の地図に表示する地名等は、当該判定結果が「普通」である場合に比べて少なくすることもできる。例えば、記憶装置102の地図データ120内において、予め、地図上の地名や施設名等の名称毎に、一般ユーザが行き先指定として用いた頻度を表すランクを付しておき、余裕度判定結果が「少ない」の場合には、ランクの高い(一般ユーザが行き先指定として用いる頻度の高い)名称のみを、ディスプレイ108上の地図に表示するものとしてもよい。
<余裕度判定結果が「多い」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「多い」であった場合、すなわち、運転者が知覚する時間的余裕度が多いと判定された場合には、情報提供ユニット140は、発話長判定ユニット136における発話長の判定結果を参照し、当該発話長の判定結果が「長い」であるときは、地域情報取得ユニット138が取得した地域情報の中から、上記発話により指定された広域地名が表す広域エリアにおけるイベント情報や観光地情報等を抽出し、当該抽出した情報に基づいて広域エリア内にあるお勧め目的地のリストを作成して、ディスプレイ108上に表示する。
一般に、運転者が特定の目的地を持たず漠然とした興味地域のみを意識している場合には、当該運転者の発話は、「東京にでも行ってみるかなあ」のように発話長が長くなる傾向がある。情報提供ユニット140は、発話長判定ユニット136の判定結果を参照することにより、そのような運転者の漠然とした思考の表出があったことを捉えて、運転者の興味地域と考えられる上記広域エリアにおけるお勧め目的地のリストを生成し、運転者に提供するのである。
そして、情報提供ユニット140は、当該作成したリストをディスプレイ108に表示すると共に、「東京方面のお勧め経由地をリストしました。東京のどこに行きますか?」等の、目的地を絞り込むための音声メッセージをスピーカ114に流し、運転者との対話に加えて、ディスプレイ108上に表示したお勧め目的地に対する運転者の選択操作によっても、目的地の設定を行うことができるように動作する。
図3は、余裕度判定結果が「多い」である場合の、目的地設定時の表示画面の例である。図3に示す画面では、図2に示す画面と同様の表示に加えて、「東京方面のお勧め目的地です。」というテキスト208と、「1.**区 **橋 花火大会」等のお勧めスポットが記載されたお勧め目的地リスト210が表示されている。当該ディスプレイ108上の表示に対し、運転者は、例えば所望のお勧めスポットのテキストに触れることにより、当該お勧めスポットを目的地として選択することができる。
〔経路案内時〕
次に、経路案内時の動作の例について説明する。
ナビゲーション装置である情報提供装置10は、上述のようにして目的地の設定が行われた後、当該設定された目的地への経路探索を行うと共に、当該探索した経路をディスプレイ108上に提示して、当該提示したいずれかの経路についての案内を開始する。以下は、このような経路探索動作を含む経路案内時における、情報提供ユニット140の動作の例である。
<余裕度判定結果が「普通」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「普通」である場合、情報提供ユニット140は、現在位置から目的地までの、例えば5種類の推奨経路を所定の基準に従って探索し、当該探索した推奨経路をディスプレイ108に提示する。ここで、上記5種類の推奨経路は、例えば、最短距離ルート、最短時間ルート、一般道優先ルート、燃費優先ルート、及び料金優先ルートとすることができる。そして、情報提供ユニット140は、運転者に対しディスプレイ108上に提示した推奨経路のいずれかを選択するよう促すメッセージをスピーカ114から出力し、運転者がいずれかの推奨経路を選択したことに応じて、当該選択された推奨経路の案内を開始する。なお、この推奨経路の選択は、運転者が操作入力装置110を操作するか、又はマイクロフォン112に向かって所望の推奨経路の名称等を発話することにより、行うことができる。
図4は、余裕度判定結果が「普通」である場合の、経路探索後の表示画面の例である。図示の例では、画面領域204に、現在地から目的地までの5つの経路が太い実線、点線、二点鎖線、一点鎖線、及び波線で示されており、「ルートを指定してください。」と記載されたテキスト300と、凡例302が表示されている。これに対し、運転者は、例えば凡例302に表示された所望のルートの名称表示に触れることにより、又は当該名称を発話することにより、当該名称に対応するルートを選択することができる。
<余裕度判定結果が「少ない」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「少ない」である場合、情報提供ユニット140は、現在位置から目的地までの、時間優先の経路、すなわち目的地到達までの時間が最短となる経路のみを探索し、運転者の指示を待つことなく当該経路についての案内を自動的に開始する。これにより、運転者は、複数の推奨経路から一の経路を選択することなく、情報提供装置10が行う経路案内に沿って、最短時間で目的地に到達することができる。
図5は、余裕度判定結果が「少ない」である場合の、経路探索後の表示画面の例である。図示の例では、画面領域204に表示された地図上に現在地から目的地までの最短時間ルートが太い実線で表示され、「最短時間ルートで案内を開始します。」というテキスト304により、運転者に対し当該ルートでの経路案内を開始する旨が通知されている。
また、図5における画面領域204に表示された地図上には、余裕度判定結果が「普通」である場合の画面例である図4に比べ、地名表示の数が制限されている。時間的余裕度を少ないと感じている運転者にとり、ディスプレイ108上の地図に広域にわたって細かく地名が表示されていることは却って煩わしい場合が多いためである。図示の例では、上記設定されたルートがどのような場所を通過するルートとなっているかが運転者にとり直感的に判りやすいものとなるように、当該ルートに沿って主要な地名が示されている。なお、当該「主要な地名」は、予め地図データ120において主要な都市名として定めておくことができる。また、上記「主要な地名」は、都市名に限らず、予め定めた主要な観光地名や施設名等とすることもできる。
<余裕度判定結果が「多い」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「多い」であった場合、すなわち、運転者が知覚する時間的余裕度が多いと判定された場合には、情報提供ユニット140は、上述した5つの推奨経路に加えて、これらの推奨経路におけるお勧めの経由地の情報をディスプレイ108上に、例えばリスト表示する。これらのお勧め経由地のリストは、情報提供ユニット140が、地域情報取得ユニット138が取得したイベント情報や観光地情報等に基づいて生成することができる。
そして、情報提供ユニット140は、運転者に対し「お勧め経由地又は経路を選択してください」との音声メッセージをスピーカ114から出力し、運転者がお勧め経由地を選択したときは、当該選択された経由地を経由するように、ディスプレイ108上に表示した推奨経路を修正し、一方、運転者が推奨経路の一つを選択したときは、当該選択された推奨経路の案内を開始する。
図6は、余裕度判定結果が「多い」である場合の、経路探索後の表示画面の例である。図4に示す画像と同様の画像の上に、「お勧め経由地情報」というタイトルが記載されたテキスト306と、「1.**市 **パーク オープン記念」等のお勧め経由地が記載されたお勧め経由地リスト308が表示されている。運転者は、リスト308の中から所望のお勧め経由地のテキストに触れることにより当該経由地を選択することができる。
これにより、処理装置100は、当該選択された経由地を通過するように、推奨経路(例えば5経路)を再探索し、当該再探索した各経路を凡例302と共に画面領域204の地図上に表示する。これに対し、運転者は、凡例302の所望のルート名の表示を触れるか、又は当該ルート名を発話することにより当該ルートを選択することができる。
なお、お勧め経由地への経由を望まない場合には、運転者はリスト308からお勧め経由地を選択する必要はない。この場合には、運転者は、凡例302のルート名表示に触れることにより又はルート名を発話することにより、画面領域204上に現在表示されている推奨ルートのいずれかを選択することができる。
〔経路再探索〕
次に、経路再探索時の動作における例を説明する。
ナビゲーション装置である情報提供装置10は、経路案内中に、例えば、案内中の経路に沿って自車両前方の道路に渋滞発生等の道路状況の変化が生じたときは、運転者の指示に応じて経路の再探索を行う。以下は、このような場合の、情報提供ユニット140の動作の例である。
<余裕度判定結果が「普通」又は「多い」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「普通」又は「多い」である場合、情報提供ユニット140は、現在案内中の経路に沿う自車両前方の道路において自車両から第1の所定の距離範囲内に渋滞発生等の道路状況の変化が生じると、当該道路状況の変化が発生した旨の通知をディスプレイ108に表示すると共に、経路の再探索の要否を問うメッセージを、ディスプレイ108に表示し及び又はスピーカ114から出力する。そして、発話により又は操作入力装置110への操作により運転者から再探索の指示が入力されたときは、当該道路状況の変化に応じて、例えば当該状況が変化した道路部分を避けるべく、目的地までの推奨経路を再探索して表示する。なお、渋滞発生等の道路状況の変化に関する情報は、地域情報取得ユニット138を介してビーコン電波等から取得することができる。
<余裕度判定結果が「少ない」である場合>
余裕度判定ユニット134における余裕度判定の結果が「少ない」である場合、情報提供ユニット140は、上記第1の所定の距離範囲に代えて、第1の所定の距離範囲より広い第2の所定の距離範囲を用いて、上記と同様の再探索動作を行う。すなわち、情報提供ユニット140は、現在案内中の経路に沿う自車両前方の道路において自車両から第2の所定の距離範囲内に渋滞発生等の道路状況の変化が生じると、当該道路状況変化の通知をディスプレイ108に表示すると共に、経路の再探索の要否を問うメッセージを出力する。そして、運転者から再探索の指示が入力されたときは、目的地までの推奨経路を再探索して表示する。これにより運転者は、余裕度判定結果が「普通」又は「多い」である場合よりも早期に渋滞等の発生を認知し、迅速に経路変更を行うことができる。
また、上記のような経路の再探索に加えて、情報提供ユニット140により、「休憩しますか?」等の音声メッセージを出力するようにしてもよい。運転者が時間的余裕度を少ないと感じている場合には、適切なタイミングで休憩が行われない場合が多いことから、上記のような休憩を促すメッセージは、安全確保のために有用である。またこのような運転者への質問メッセージは、運転者の発話を促すこととなるので、余裕度判定ユニット134は、当該質問メッセージに応答する運転者の発話について発話速度判定に基づいて、運転者が知覚する時間的余裕度が、現在も「少ない」状態のままであるのか、あるいは「普通」や「多い」の状態に移行したか、を判定することができるようになる。なお、当該判定の結果は、次の経路再探索時の動作に反映される。
次に、情報提供装置10の動作手順について説明する。情報提供装置10の制御装置100は、余裕度判定ユニット134による(イ)余裕度推定処理と、情報提供ユニット140による(ロ)情報提供処理と、を行う。以下、(イ)余裕度推定処理の手順、及び(ロ)情報提供処理の手順を、順に説明する。
(イ)余裕度推定処理
余裕度推定処理は、挙動判定ユニット130による(イ−1)挙動判定処理と、発話速度判定ユニット132及び発話長判定ユニット136による(イ−2)発話判定処理と、これらの処理により得られる挙動時間判定結果及び発話速度判定結果に基づいて余裕度判定ユニット134が行う(イ−3)余裕度判定処理と、により構成される。以下、(イ−1)〜(イ−3)の処理の手順を、順に説明する。
(イ−1)挙動判定処理
まず、挙動判定処理の手順について、図7に示すフロー図に従って説明する。本処理は、情報提供装置10の電源が投入されたときに開始し、情報提供装置10の電源が断になったときに終了する。
処理を開始すると、挙動判定ユニット130は、所定の挙動が開始された否かを判断する(S101)。ここで、所定の挙動とは、例えば上述したように、運転席ドアが開けられたこと、方向指示器がオンされたこと、トランスミッションが「R」に設定されたこと、等とすることができる。そして、挙動判定ユニット130は、所定の挙動が開始されていないときは(S101、No)、ステップS101に戻って所定の挙動が開始されるまで待機する。
一方、所定の挙動が開始されたときは(S101、Yes)、当該開始された挙動又は当該挙動を最初とする一連の挙動の時間計測を開始する(S102)。ここで、「開始された挙動の時間計測」とは、例えば上述したように、方向指示器がオンされてからステアリングが操作されるまでの時間T4の計測、トランスミッションを「R」に設定してから実際に後退を開始するまでの時間T6の計測、あるいはトランスミッションを「D」に設定してから実際に発進するまでの時間T7の計測をいう。また、「当該挙動を最初とする一連の挙動の時間計測」とは、例えば上述したように、運転席ドアが開けられたことを最初の挙動とする一連の挙動の時間の計測、すなわち、運転席ドアが開けられてから閉められるまでの時間T1、運転席ドアが閉められてからイグニションスイッチがオンされるまでの時間T2、及びイグニションスイッチがオンされてから音声認識スイッチがオンされるまでの時間T3、の各時間の計測をいう。
次に、挙動判定ユニット130は、ステップS102において開始された所定の挙動又は当該挙動を最初とする一連の挙動が終了したか否かを判断し(S103)、終了していないときは(S103、No)、ステップS103に戻って終了するのを待機し、終了したときは(S103、Yes)、時間計測を終了する(S104)。
次に、挙動判定ユニット130は、ステップS102において開始された所定の挙動又は当該挙動を最初とする一連の挙動の挙動時間(挙動に費やされた時間)が所定の条件を満たすか否かを判断する(S105)。ここで、所定の条件とは、例えば上述したように、上記計測した時間T1、T2、T3をそれぞれ対応する所定の基準時間Tth1、Tth2、Tth3と比較したときに、時間T1、T2、T3のうち少なくとも2つの時間が、対応する所定の基準時間未満であることをいう。あるいは、上記所定の条件とは、例えば上述したように、上記計測した時間T4が所定の基準時間Th4未満であること、時間T5が所定の基準時間Th5未満であること、又は時間T6が所定の基準時間Th6未満であること、等をいう。
そして、挙動判定ユニット130は、挙動時間が所定の条件を満たしているときは(S105、Yes)、挙動時間についての判定(挙動時間判定)の結果を「短い」に設定し(S106)、当該設定した挙動時間判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S108)、ステップS101に戻って処理を繰り返す。なお、現在時刻は、例えば処理装置100が備えるタイマ(不図示)により取得するものとすることができる。
また、ステップS105において、挙動時間が所定の条件を満たしていないときは(S105、No)、挙動時間判定の結果を「長い」に設定し(S107)、当該設定した挙動時間判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S108)、ステップS101に戻って処理を繰り返す。これにより、挙動判定ユニット130による挙動時間判定の結果が、その挙動が行われた時刻と共に、記憶装置102に記憶される。
(イ−2)発話判定処理
次に、発話判定処理の手順について、図8に示すフロー図に従って説明する。本処理は、情報提供装置10の電源が投入されたときに開始し、情報提供装置10の電源が断になったときに終了する。
処理を開始すると、発話速度判定ユニット132は、マイクロフォン112により運転者の発話を検知したか否かを判断し(S201)、発話を検知していないときは(S201、No)、ステップS201を繰り返して、発話を検知するまで待機する。
一方、発話を検知したときは(S201,Yes)、発話速度判定ユニット132は、当該検知した発話の速度を算出する(S202)。上述したように、この発話速度は、当該発話に含まれる単位時間当たりの母音の数として算出することができる。
次に、発話速度判定ユニット132は、上記算出した発話速度が所定の基準速度より大きいか否かを判断する(S203)。上述したように、当該所定の基準速度は、一般的な運転者の発話速度の平均値として、予め記憶装置102に記憶させておくことができる。また、あるいは、挙動判定ユニット130における挙動時間判定の結果が「長い」又は「短い」であるときの当該運転者の発話速度を発話速度判定ユニット132が検知して記憶装置102に記憶するものとし、当該記憶した発話速度に基づいて上記所定の基準速度を決定するものとしてもよい(例えば、当該記憶した発話速度の平均値に所定の余裕度を減算又は加算して得た値を基準速度とすることができる)。
そして、上記算出した発話速度が所定の基準速度より大きいときは(S203、Yes)、発話速度についての判定(発話速度判定)の結果を「速い」に設定し(S204)、当該設定した発話速度判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S205)、ステップS201に戻って処理を繰り返す。
一方、ステップS203において上記算出した発話速度が所定の基準速度以下であるときは(S203、No)、発話速度判定の結果を「遅い」に設定し(S206)、当該設定した発話速度判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶する(S207)。
続いて、発話長判定ユニット136は、ステップS201で検知された発話の発話長を算出する(S208)。上述したように、この発話長は、当該発話に含まれる単語の数として算出することができる。そして、発話長判定ユニット136は、上記算出した発話長(すなわち、単語数)が所定の閾値以上であるか否かを判断し(S209)、所定の閾値以上であるときは(S209、Yes)、発話長に関する判定(発話長判定)の結果を「長い」に設定し(S210)、当該発話長判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S211)、ステップS201に戻って処理を繰り返す。
一方、ステップS209において発話長が所定の閾値未満であるときは(S209、No)、発話長判定の結果を「短い」に設定し(S212)、当該発話長判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S211)、ステップS201に戻って処理を繰り返す。
以上の処理により、発話判定として、発話速度判定の結果と発話長判定の結果(発話速度判定が「遅い」場合のみ)とが、当該発話の時刻と共に、記憶装置102に記憶される。
(イ−3)余裕度判定処理
次に、余裕度判定処理の手順について、図9に示すフロー図に従って説明する。本処理は、情報提供装置10の電源が投入された後、挙動判定処理又は発話判定処理が実行される毎に、余裕度判定ユニット134により実行される。例えば、余裕度判定ユニット134は、挙動判定ユニット130及び発話速度判定ユニット132がそれぞれ挙動時間判定の結果及び発話速度判定の結果を記憶装置102に記憶した際に、当該記憶動作を通知する信号を挙動判定ユニット130及び発話速度判定ユニット132から受け取ることにより、挙動判定処理及び発話判定処理の実行を認識して、余裕度判定処理の実行を開始することができる。
処理を開始すると、余裕度判定ユニット134は、まず、記憶装置102に記憶されている挙動時間判定の結果とその時刻(図7のステップS108において記憶されたもの)、及び発話速度判定の結果とその時刻(図8のステップS205又はS207において記憶されたもの)を参照し(S301)、挙動時間判定の時刻と発話速度判定の時刻との差が、所定の時間範囲内であるか否かを判断する(S302)。ここで、上記所定の時間範囲は、例えば10分とすることができる。
そして、余裕度判定ユニット134は、上記時刻の差が所定の時間範囲以内でないときは(S302、No)、処理を終了する。一方、ステップS302において挙動時間判定の時刻と発話速度判定の時刻との差が所定の時間範囲以内であるときは(S302、Yes)、上記参照した挙動時間判定の結果が「短い」であるか否かを判断する(S303)。そして、挙動時間判定の結果が「短い」であるときは(S303、Yes)、発話速度判定の結果が「速い」であるか否かを判断し(S304)、「速い」であれば(S304、Yes)、余裕度判定の結果を「少ない」に設定すると共に(S305)、当該余裕度判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S306)、処理を終了する。
一方、ステップS304において発話速度判定の結果が「速い」でないときは(すなわち、「遅い」であるときは)(S304、No)、余裕度判定の結果を「普通」に設定すると共に(S307)、当該余裕度判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S306)、処理を終了する。
また一方、ステップS303において挙動時間判定の結果が「短い」でないときは(すなわち、「長い」であるときは)(S303、No)、発話速度判定の結果が「速い」であるか否かを判断する(S308)。そして、発話速度判定の結果が「速い」でないときは(S308、No)、余裕度判定の結果を「多い」に設定すると共に(S309)、当該余裕度判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S306)、処理を終了する。
一方、ステップS308において発話速度判定の結果が「速い」であるときは(S308、Yes)、ステップS307に処理を移し、余裕度判定の結果を「普通」に設定すると共に(S307)、当該余裕度判定の結果と、現在時刻とを、記憶装置102に記憶した後(S306)、処理を終了する。
上記の処理により、挙動時間判定の結果が「短い」であって発話速度判定の結果が「速い」である場合に余裕度判定の結果は「少ない」に設定され、挙動時間判定の結果が「長い」であって発話速度判定の結果が「遅い」である場合に余裕度判定の結果は「多い」に設定され、その他の場合には余裕度判定の結果は「普通」に設定されることとなる。
(ロ)情報提供処理
次に、情報提供処理の手順について説明する。情報提供ユニット140は、情報提供処理として、例えば、(ロ−1)目的地設定処理と、(ロ−2)経路案内処理と、(ロ−3)再探索処理と、を行う。以下、(ロ−1)〜(ロ−3)の処理の手順を、順に説明する。なお、情報提供処理において用いられる地域情報(渋滞情報やイベント情報など)は、本処理とは独立に、地域情報取得ユニット138が、例えば所定の時間間隔で、インターネットやビーコン信号等から収集して記憶装置102に記憶するものとする。
(ロ−1)目的地設定処理
まず、目的地設定処理の手順について、図10に示すフロー図に従って説明する。本処理は、例えば、情報提供装置10の電源が投入され操作入力装置110に設けられた音声認識スイッチ(図2の操作ボタン202e)が押された後、マイクロフォン112を介して運転者からの目的地を指示する発話が検知されたときに開始する。例えば、処理装置100は、運転者からの発話に地名が含まれており、かつ、目的地が未だ設定されていない場合に、運転者からの発話が目的地を指示するものと判断して、情報提供ユニット140に目的地設定処理を開始させることができる。
なお、運転者からの発話に地名が含まれているか否かの判断は、既知の音声認識技術を用いて行うことができる。また、目的地が設定されているか否かは、例えば、記憶装置102に目的地が記憶されているか否か(後述する図10のステップS402又はS409において記憶される)により判断することができる。
処理を開始すると、まず、情報提供ユニット140は、運転者の発話により指定された地名が、例えば「東京」などのように広域を示すものであるか否かを判断し(S401)、広域でないときは(S401、No)、当該発話により指定された地名が示す位置を目的地として設定して記憶装置102に記憶した後(S402)、経路案内処理(S410)に処理を移す。なお、
一方、発話により指定された地名が広域を示すものであるときは(S401、Yes)、情報提供ユニット140は、記憶装置102に余裕度判定結果が記憶されているか否かを判断し(S403)、記憶されていないときは(S403、No)、スピーカ114及びマイクロフォン112を介した運転者との対話や、操作入力装置110に対する運転者からの操作入力等により、目的地とすべき地域を絞り込み、当該絞り込んだ地域を目的地として設定して記憶装置102に記憶した後(S409)、経路案内処理(S410)に処理を移す。
一方、ステップS403において記憶装置102に余裕度判定結果が記憶されているときは(S403、Yes)、当該余裕度判定結果が現在時刻から所定の時間範囲内に得られたものであるか否かを判断する(S404)。この判断は、記憶装置102に余裕度判定結果と共に記憶されている時刻(図9のステップS306)を参照し、当該時刻を現在時刻と比較することにより行うことができる。また、上記所定の時間範囲は、例えば10分とすることができる。
そして、記憶装置102に記憶されている余裕度判定結果が、現在時刻から所定の時間範囲内のものであるときは(S404,Yes)、当該余裕度判定結果が「少ない」であるか否かを判断し(S405)、「少ない」でないときは(S405、No)、当該余裕度判定結果が「多い」であるか否かを判断する(S406)。
そして、当該余裕度判定結果が「多い」であるときは(S406、Yes)、記憶装置102が記憶する発話長判定結果を参照し、当該参照した発話長判定結果が「長い」か否かを判断する(S407)。そして、発話長判定結果が「長い」であるときは(S407,Yes)、地域情報取得ユニット138がインターネット等から取得して記憶装置102に記憶させた地域情報に基づき、お勧め目的地のリストを作成してディスプレイ108に表示する(S408)。
続いて、情報提供ユニット140は、スピーカ114及びマイクロフォン112を介した運転者との対話や、操作入力装置110に対する運転者からの操作入力等により、目的地とすべき地域を絞り込み、当該絞り込んだ地域を目的地として設定した後(S409)、経路案内処理(S410)に処理を移す。
この場合、上記運転者からの操作入力により目的地を絞り込む方法として、ディスプレイ108上に上記お勧め目的地のリストから運転者が一のお勧め目的地を選択(例えば操作入力装置110による)したことに応じて、当該選択されたお勧め目的地を実際の目的地として設定する方法も用いることができる。
一方、ステップS404において余裕度判定結果が現在時刻から所定の時間範囲以内に得られたものでない場合(S404、No)や、ステップS405において余裕度判定結果が「少ない」である場合(S405、Yes)、ステップS406において余裕度判定結果が「多い」でない場合(すなわち、「普通」である場合)(S406、No)、又はステップS407において発話長判定結果が「長い」でない場合(S407、No)は、ステップS409に処理を移して、運転者との対話や、操作入力装置110に対する運転者からの操作入力等により、目的地とすべき地域を絞り込み、当該絞り込んだ地域を目的地として設定した後(S409)、経路案内処理(S410)に処理を移す。
(ロ−2)経路案内処理
次に、経路案内処理の手順について、図11に示すフロー図に従って説明する。本処理は、例えば、目的地設定処理(図10)のステップS410又は後述する再探索処理(図12)のステップS609において、本処理に処理が移されたときに開始する。
処理を開始すると、まず、情報提供ユニット140は、記憶装置102に余裕度判定結果が記憶されているか否かを判断し(S501)、記憶されているときは(S501、Yes)、当該余裕度判定結果が現在時刻から所定の時間範囲内に得られたものであるか否かを判断する(S502)。この判断は、記憶装置102に余裕度判定結果と共に記憶されている時刻(図9のステップS306)を参照し、当該時刻を現在時刻と比較することにより行うことができる。また、上記所定の時間範囲は、例えば10分とすることができる。
そして、記憶装置102に記憶されている余裕度判定結果が、現在時刻から所定の時間範囲内のものであるときは(S502,Yes)、当該余裕度判定結果が「少ない」であるか否かを判断し(S503)、「少ない」であるときは(S503、Yes)、最短時間ルートのみを探索した後(S504)、当該探索した最短時間ルートにより即座に経路案内を開始する(S512)。
一方、ステップS503において余裕度判定結果が「少ない」でないときは(S503、No)、当該余裕度判定結果が「多い」であるか否かを判断し(S505)、「多い」でないときは(すなわち、「普通」であるときは)(S505、Yes)、通常通り所定の基準にしたがって5種類の推奨ルート(5ルート)を探索してディスプレイ108上に表示する(S506)。ここで、5種類の推奨ルートとしては、上述したように、例えば最短距離ルート、最短時間ルート、一般道優先ルート、燃費優先ルート、及び料金優先ルートとすることができる。そして、上記表示された5種類の推奨ルートの一つが運転者により選択されたか否かを判断し(S507)、選択されていないときは(S507、No)、ステップS507を繰り返して選択されるまで待機する。一方、5種類の推奨ルートの一つが運転者により選択されたときは(S507,Yes)、選択されたルートにより経路案内を開始する(S512)。
一方、ステップS505において余裕度判定結果が「多い」であるときは、ステップS506と同様の5種類の推奨ルートを探索してディスプレイ108上に表示すると共に(S508)、お勧め経由地のリストを生成して、当該生成したリストをディスプレイ108上に表示する(S509)。このお勧め経由地のリストは、上述したように、情報提供ユニット140が、地域情報取得ユニット138が取得したイベント情報や観光地情報等に基づいて生成することができる。
続いて、情報提供ユニット140は、ディスプレイ108上に表示されたお勧め経由地のうちから一のお勧め経由地が選択されたか否かを判断する(S510)。このお勧め経由地の選択は、運転者が例えば操作入力装置110を用いて行うことができる。
そして、情報提供ユニット140は、お勧め経由地が選択されたときは(S510、Yes)、ステップS508に戻って、当該選択された経由地を経由するように、所定の基準に従って5種類の推奨ルートを再探索してディスプレイ108に表示し、ステップS509及びS510の処理を繰り返す。
一方、お勧め経由地が選択されないときは(S510、No)、ディスプレイ108上に表示された5種類の推奨ルートの一つが選択されたか否かを判断する(S511)。そして、推奨ルートの一つが選択されないときは(S511、No)、ステップS510に戻って処理を繰り返し、一方、推奨ルートの一つが選択されたときは(S511、Yes)、選択されたルートにより案内を開始する(S512)。
一方、ステップS501において記憶装置102に余裕度判定結果が記憶されていないとき(S501、No)、又はステップS502において記憶装置102に記憶されている余裕度判定結果が現在時刻から所定の時間範囲内に得られたものでないときは(S502、No)、ステップS506に処理を移して、通常通り所定の基準に従って5種類の推奨ルート(5ルート)を探索し、一の推奨ルートが運転者により選択されたことに応じて(S507、Yes)、当該選択されたルートにより経路案内を開始する(S512)。
なお、ステップS512における経路案内の処理は、目的地に到着したとき、又は情報提供装置10の電源が断になったときに終了する。
(ロ−3)再探索処理
次に、再探索処理の手順について、図12に示すフロー図に従って説明する。本処理は、経路案内処理(図11)のステップS512で実行される経路案内の処理の開始と共に開始し、当該経路案内の処理と並行に所定の時間間隔で実行され、当該経路案内の終了と共に終了する。
処理を開始すると、まず、情報提供ユニット140は、記憶装置102に余裕度判定結果が記憶されているか否かを判断し(S601)、記憶されているときは(S601、Yes)、当該余裕度判定結果が現在時刻から所定の時間範囲内に得られたものであるか否かを判断する(S602)。この判断は、記憶装置102に余裕度判定結果と共に記憶されている時刻(図9のステップS306)を参照し、当該時刻を現在時刻と比較することにより行うことができる。また、上記所定の時間範囲は、例えば10分とすることができる。
そして、記憶装置102に記憶されている余裕度判定結果が、現在時刻から所定の時間範囲内のものであるときは(S602,Yes)、当該余裕度判定結果が「少ない」であるか否かを判断し(S603)、「少ない」でないときは(S603,No)、現在案内中の経路に沿って自車両前方の第1の距離範囲内において道路状況が変化しているか否かを判断する(S604)。ここで道路状況の変化とは、例えば、渋滞の発生や、通行止め等の規制の発生をいう。情報提供ユニット140は、これらの道路状況変化に関する情報を、地域情報取得ユニット138がビーコン信号等から取得した地域情報に基づいて取得することができる。
一方、ステップS601において記憶装置102に余裕度判定結果が記憶されていないとき(S601,No)、及びステップS602において記憶装置102に記憶されている余裕度判定結果が現在時刻から所定の時間範囲内に得られたものでないときは(S602、No)、そのままステップS604に処理を移して、第1の距離範囲内において道路状況が変化しているか否かを判断する
そして、情報提供ユニット140は、第1の距離範囲内において道路状況に変化があるときは(S604、Yes)、道路状況に変化があったことを通知するメッセージと、目的地までの経路の再探索の要否を問い合わせるメッセージとを、ディスプレイ108に表示し、及び又は当該メッセージの読み上げ音声をスピーカ114から発出する(S606)。
一方、ステップS603において余裕度判定結果が「少ない」であるときは(S603、Yes)、現在案内中の経路に沿って自車両前方の、第1の距離範囲より広い第2の距離範囲内において道路状況が変化しているか否かを判断する(S605)。そして、第2の距離範囲内において道路状況に変化があるときは(S605、Yes)、ステップS606に処理を移して、道路状況に変化があったことを通知するメッセージと、目的地までの経路の再探索の要否を問い合わせるメッセージとを、ディスプレイ108及び又はスピーカ114に出力する。
続いて、情報提供ユニット140は、ステップS606において出力されたメッセージに対して、運転者から再探索の指示が入力されたか否かを判断する(S607)。運転者は、例えば操作入力装置110を介して、上記再探索の指示を入力することができる。
そして、情報提供ユニット104は、再探索の指示が入力されたときは(S607、Yes)、現在の経路案内の処理を終了し(S608)、図8の経路案内処理を新たに開始して、上記状況の変化のあった道路を回避するための一つ以上の新たな経路を探索して、当該新たな経路の一つについての経路案内の処理を行う(S609)。なお、ステップS609により経路案内処理を新たに開始した場合には、当該経路案内処理に処理を移した時点で、本再探索処理は終了する。また、当該新たに開始された経路案内処理のステップS512において経路案内の処理が開始された時点で、本再探索処理が新たに開始される。
一方、ステップS604において第1の距離範囲内で道路状況が変化していないとき(S604、No)、及びステップS605において第2の距離範囲内で道路状況が変化していないときは(S605、No)、そのまま処理を終了する。この場合、現在実行中の経路案内の処理は続行されるので、本再探索処理は、当該経路案内の実行が完了するまで、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
以上説明したように、本実施形態に係る情報提供装置10は、“運転者が特定の挙動に費やした時間”と“運転者の発話の速度”の二つの基準に基づいて、当該運転者が知覚する時間的余裕度の大小を判定する。そして、本情報提供装置10は、当該余裕度の判定結果に応じて、ディスプレイ108等により運転者に提示する情報の内容や量を変更する。これにより、本情報提供装置10は、運転者が知覚する時間的余裕度を精度よく判定し、当該判定した時間的余裕度に応じて、当該運転者に提供する情報を制限し又は充実させることができる。
また、本情報提供装置10では、運転者の発話の長さにも基づいて、運転者に提供する情報の内容や量を変化させるため、当該運転者に対しより適切な情報提供動作を行うことができる。
なお、上述した実施形態においては、情報提供装置10は一つの装置として構成されているが、これに限らず、例えば、処理装置100及び無線装置104をスマートフォン等の多機能携帯電話により構成するものとしてもよい。この場合には、処理装置100は、当該多機能携帯電話が通常備える有線通信インタフェースを介して車載の通信インタフェースと接続され、当該通信インタフェースを介して車載ネットワーク116や、ディスプレイ108、操作入力装置110、マイクロフォン112、及びスピーカ114と接続されるものとすることができる。また、地図データ120はサーバに保存しておくものとし、上記多機能携帯電話で構成された処理装置100が、無線装置104を介して、当該サーバに保存された地図データ120を参照するものとすることができる。