以下、本発明に係るガスセンサについて好適な実施形態(第1及び第2実施形態)を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るガスセンサ10は、検出対象ガスとして水素ガスの濃度を検出する機能を有する、所謂水素センサ10である(よって以下、水素センサ10と称する)。なお、本発明に係るガスセンサは、水素センサ10に限定されるものではなく、天然ガスセンサ、石油ガスセンサ、一酸化炭素ガスセンサ、アルコールガスセンサ、メタンガスセンサ、プロパンガスセンサ等のガスを検出可能な種々のセンサを適用し得る。
図1A及び図1Bに示すように、水素センサ10は、燃料電池車両12内の複数箇所に設けられる。複数の水素センサ10は、燃料電池車両12内のガス漏れを監視するガス監視システム13を構成している。燃料電池車両12は、一対の前輪WF及び一対の後輪WRを有する4輪自動車である。この他にも燃料電池車両12は、基台フレーム14、フロントフード22、フロントウインド24、ルーフ26、リヤゲート28、床板30、荷室板32及びダッシュパネル34等を備える。なお、水素センサ10(ガスセンサ)が設けられる機器は、4輪自動車に限定されるものではなく、ガスを使用する又はガスが発生する種々の車両に適用可能である。或いは、水素センサ10は、燃料電池車両12に水素を供給する水素ステーションや水素を運搬する運輸機等に設けられてもよい。
燃料電池車両12の基台フレーム14上には、直接的或いは構造体を介して、燃料電池システム15、バッテリ19(高圧バッテリ)、駆動モータ16等が搭載される。
燃料電池システム15は、駆動モータ16を駆動させる電力供給源として構成され、燃料電池スタック18、水素タンク20a、20b、エアポンプ(図示せず)等を有する。燃料電池スタック18は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜をカソード電極とアノード電極とで挟持した電解質膜・電極構造体(MEA)を備える。そして、燃料電池スタック18は、水素と酸素の電気化学反応に基づき電力を生成してバッテリ19に供給する。
水素タンク20a、20bは、燃料電池スタック18に一方の反応ガスである水素を供給する。水素タンク20a、20bは、車両前寄りに設けられる燃料電池スタック18に対し、例えば、車両後寄りの荷室下の荷室板32と基台フレーム14との間に配置される。水素タンク20aと水素タンク20bは、車両の前後方向に並べて配置される。燃料電池スタック18と水素タンク20a、20bは、床板30の下を通る配管21(水素流路)によって接続されている。
エアポンプは、燃料電池スタック18に他方の反応ガスである酸素含有ガスを供給する。エアポンプは、例えば、フロントフード22下のフロント機関室38内に配置される。
バッテリ19は、燃料電池スタック18の電力を蓄積する二次電池であり、燃料電池車両12の電力系統に電力を供給する電源として機能する。このバッテリ19は、例えば、後席下の荷室板32と基台フレーム14との間に配置される。一方、駆動モータ16は、燃料電池車両12の走行駆動源であり、燃料電池スタック18からの電力エネルギやバッテリ19に蓄積された電力エネルギにより回転し、前輪WF(又は後輪WR、或いは全ての車輪)を回転させる。
また、燃料電池車両12は、車両全体を管理制御する車両ECU36(車両制御ECU)を有する。車両ECU36は、例えば、燃料電池スタック18、エアポンプ、駆動モータ16等と共にフロント機関室38内に収容される。車両ECU36は、演算処理部、記憶部、入出力部を有するコンピュータであり、演算処理部が記憶部に記憶されたプログラムを読み出し実行することで、車両を管理制御する各種の機能実現部(機能実現手段)を構成する。
この車両ECU36は、図2に示すように、複数の機能実現部のうちガス監視システム13におけるガス漏れ判別制御部40も構築しており水素ガスの状態に応じて種々の処理を行う。具体的には、ガス漏れ判別制御部40(車両ECU36)は、水素センサ10が検出した検出信号に基づき水素の状態(水素ガスの漏れ等)を判別する。そして、水素ガスの漏れを判別した場合には、車両の搭乗者に報知する、車両を停止する又は水素の流動を停止する等の処理を行う。
すなわち、本実施形態に係るガス監視システム13は、水素センサ10と、車両ハーネス42と、車両ECU36とを含む。水素センサ10は、例えば、検出素子80a(図4B参照)付近の水素を燃焼させることで水素濃度を検出する接触燃焼式のセンサとして構成される。なお、水素センサ10による水素の検出方式は、接触燃焼式に限定されず、例えば、半導体式(熱線型を含む)、熱伝導式、赤外線式等、種々の方式を採ることができ、水素センサ10の構造も検出方式に応じて適宜構成し得る。
水素センサ10は、燃料電池車両12内の複数箇所(図1A及び図1B中では4箇所)に取り付けられる。第1水素センサ10Aは、例えば、燃料電池スタック18の上部のフロントフード22下の位置P1に取り付けられる。この第1水素センサ10Aは、主に燃料電池スタック18のガス漏れを検知対象としている。第2及び第3水素センサ10B、10Cは、例えば水素タンク20a、20bの遮断弁近傍の上部であって、荷室板32下の位置P2、P3に取り付けられる。これら第2及び第3水素センサ10B、10Cは、主に水素タンク20a、20bのガス漏れを検知対象としている。第4水素センサ10Dは、例えば車室のルーフ26中央下の位置P4に取り付けられる。この第4水素センサ10Dは、主に燃料電池スタック18と水素タンク20a、20bをつなぐ配管21のガス漏れを検知対象としている。
水素センサ10は、車内の各位置P1〜P4における取付対象部(各位置P1〜P4によって部材が異なるものの、以下まとめて被取付部材44という)に取り付けられる(図4B及び図4Cも参照)。各々の被取付部材44には、下方向に開口する凹部46が形成され、水素センサ10は、検出素子80aを下方向に向けて凹部46内に取り付けられる。水素ガスは、空気より軽いため、漏れが発生すると、漏れ箇所の上方に移動する。よって、水素ガスが凹部46内に停留することになり、水素センサ10は水素ガスの漏れを良好に検出することができる。
図2に示すように、ガス監視システム13は、車両ECU36と、第1〜第4水素センサ10A〜10Dを1本の車両ハーネス42に接続することで、車両ECU36と第1〜第4水素センサ10A〜10D間を通信可能としている。この場合、第1〜第3水素センサ10A〜10Cは、車両ハーネス42の途中位置に接続され、第4水素センサ10Dは、車両ハーネス42の一端に接続される。車両ECU36は、車両ハーネス42の他端に接続されており、車両ハーネス42の一方の端部(第4水素センサ10Dと反対側の端部)に接続される終端抵抗を備える。
車両ハーネス42は、CAN規格に対応した車載通信ネットワークのデータ転送用信号線を構成している。この車両ハーネス42は、CANバス(通信バス)としての幹線48と、該幹線48の所定位置に接続されて、車両ECU36、第1〜第4水素センサ10A〜10D等に延びる枝線50とを含む。図示は省略すするが、枝線50は、幹線48上の他の箇所にも設けられており、他の車載機器(ECUやセンサ等)を接続している。なお、車載通信ネットワークは、CAN規格に限らず、LINやFlexRay等の規格を併用又は代替して構成してもよい。
図3に示すように、車両ハーネス42(幹線48及び枝線50)は、電源線52と、GND線54と、CAN−H線56と、CAN−L線58とを含む。これら4線からなる枝線50の端部には、車両ECU36及び水素センサ10(第1〜第4水素センサ10A〜10D)に接続可能な図示しない雌型コネクタが設けられている。一方、車両ECU36及び水素センサ10は、雌型コネクタに対応する図示しない雄型コネクタを有する。この雄型コネクタには、電源端子62、GND端子64、CAN−H端子66、CAN−L端子68が設けられている。コネクタ同士が接続されると、電源線52と電源端子62が導通し、GND線54とGND端子64が導通し、CAN−H線56とCAN−H端子66が導通し、CAN−L線58とCAN−L端子68が導通する。
水素センサ10は、その内部構造として水素検出回路70、制御部72、電圧発生回路74、抵抗機能部76を有する。水素検出回路70は、例えば、ブリッジ回路として構成される。具体的には、検出素子80a、第1抵抗80bが直列接続された第1直列部80と、第2抵抗82a、第3抵抗82bが直列接続された第2直列部82と、を2つの接続点C1、C2にて並列接続した構造となっている。これら2つの接続点C1、C2には電圧発生回路74が接続されている。
検出素子80aは、水素に対して活性な触媒抵抗体であり、例えばコイルと、コイルを被覆し酸化触媒が担持された担体と(共に図示せず)により構成される。コイルは、白金等の温度抵抗係数の大きい材料で形成される。担体は、アルミナ等の多孔質体であり、酸化触媒として水素を酸化させる貴金属が担持されている。これにより検出素子80aの抵抗値は、水素が酸化触媒に接触して燃焼することに基づいて変化する。この検出素子80aに対し、第1〜第3抵抗80b、82a、82bは固定値となっている。
また、水素検出回路70は、検出素子80aと第1抵抗80bの間に接続点C3を有し、第2抵抗82aと第3抵抗82bの間に接続点C4を有する。これら接続点C3、C4は、制御部72に接続されている。
制御部72は、演算処理部、記憶部及び入出力部を有するコンピュータに構成され、接続点C3、C4に接続される他、4端子(電源端子62、GND端子64、CAN−H端子66、CAN−L端子68)に接続されている。制御部72は、水素検出回路70の出力(電位)に基づき、水素の濃度を算出する。すなわち、固定値である第1〜第3抵抗80b、82a、82bに対し、検出素子80aは、水素の燃焼具合に応じて抵抗値が変化するため、接続点C3、C4の電位差が水素検出回路70の出力として制御部72に入力される。制御部72は、水素検出回路70から入力された電位差を適宜補正して水素濃度を算出する。
また、制御部72は、水素濃度に応じた検出信号を生成して、所定のタイミング毎(又は車両ECU36の指示に基づくタイミング毎)に該検出信号をCAN−H端子66及びCAN−L端子68に出力する。これにより水素濃度の検出信号は、水素センサ10から車両ハーネス42を介して車両ECU36に送信される。
一方、電圧発生回路74は、上述したとおり接続点C1、C2に接続されると共に、電源端子62及びGND端子64に接続されている。この電圧発生回路74は、DC−DCコンバータ等を内部に備え、水素検出回路70に所定の電圧を印加する。
そして、水素センサ10のCAN−H端子66とCAN−L端子68には、制御部72の他に抵抗機能部76が並列接続されている。抵抗機能部76は、水素センサ10が車両ハーネス42の端部に設けられる場合に車両ハーネス42の終端抵抗を提供し、水素センサ10が車両ハーネス42の途中に設けられる場合に、終端抵抗を機能させない構成となっている。つまり、本ガス監視システム13では、第1〜第4水素センサ10A〜10Dを全て単一仕様により製造するが、第1〜第3水素センサ10A〜10Cは終端抵抗を機能させず、第4水素センサ10Dのみ終端抵抗を機能させる構成となっている。
抵抗機能部76は、抵抗部84とスイッチ部86を直列接続して構成される。抵抗部84は、車両ハーネス42に対応した抵抗値を有する。本実施形態では、CAN−H線56とCAN−L線58がツイストペアケーブルを構成しており、抵抗値が100〜120Ωに設定されている。なお、抵抗部84は、車両ハーネス42に応じて抵抗値を変えることが可能な可変抵抗器であってもよい。特に、抵抗値が50〜120Ωの範囲で可変すれば、水素センサ10を同軸ケーブルの終端抵抗(抵抗値50Ω、75Ω)として機能させることもできる。
一方、スイッチ部86は、CAN−H端子66及びCAN−L端子68に対する抵抗部84の接続を切り替える切替機構を構成している。特に本実施形態に係るスイッチ部86は、機械的構造によって抵抗部84の接続切替を行う。以下、図4A〜図4Cを参照して、スイッチ部86について水素センサ10の構造と共に具体的に説明する。
水素センサ10は、平面視で所定寸法の幅及び奥行を有し、且つ幅及び奥行よりも小さな厚みを有する略直方形状のケース88を備える。ケース88の一対の側面88a、88bには、アーム部90がそれぞれ設けられている。このケース88の形状は、水素センサ10が取り付けられる車両側の被取付部材44の凹部46に対応している。
一対のアーム部90は、側面88a、88bの長手方向中央部から側方に所定量突出している。各アーム部90は、水素センサ10を被取付部材44に取り付けるための部位であり、ネジ孔92(取付用締結部)を備える。ネジ孔92は、アーム部90の上下面を貫通するように形成され、取付ボルト94が挿入される。この取付ボルト94は、被取付部材44を貫通して貫通部分がナット95に螺合されることで水素センサ10を被取付部材44に取り付ける。なお、水素センサ10のケース88は、被取付部材44に取付可能であればよく、特にアーム部90を備えなくてもよい。
ケース88の内部には、上述した水素検出回路70の一部、制御部72、電圧発生回路74、抵抗部84等が設けられている。水素検出回路70の検出素子80a(他部)は、ケース88の下面88c(被取付部材44の凹部46の被取付面46aを臨む取付面88dと反対側)に露出されている。またケース88の下面88cには、検出素子80aを保護し、且つ水素濃度の検出環境を安定化するためのハウジング96が設けられている。ハウジング96は、検出素子80aを内側に収容する検出室98を構成すると共に、検出室98に連通する開口98aを中央部に有する。これにより検出室98には水素ガスが溜まり易くなり、水素センサ10は水素ガスの漏れを良好に検出することができる。
一方、ケース88の上面(取付面88d)には、スイッチ用孔部100が形成され、このスイッチ用孔部100にはスイッチ部86の突起102(変位部)が変位可能に設けられる。スイッチ用孔部100及び突起102は、一対のネジ孔92を結ぶ仮想直線L上に設けられており、水素センサ10が取付ボルト94により固定されると、その取付力を良好に受けることができる。
突起102は、スイッチ用孔部100の開口付近で内側に突出する環状突部100aに係合するフランジ部104を有する。突起102は、スイッチ用孔部100にバネ106と共に収容される。バネ106は、一端が突起102のフランジ部104に接触し、他端がスイッチ用孔部100の底面100bに接触することで、突起102を底面100bから押し出すように付勢する。突起102は、フランジ部104を基点に上下に所定長さ突出形成されている。水素センサ10の通常状態(バネ106が突起102を押し出し、環状突部100aにフランジ部104が接触した状態)では、突起102の上部がケース88の取付面88dから所定高さ突出する。
スイッチ用孔部100の底面100bには、2つのスイッチ接点86a、86b(図3参照)が設けられており、突起102下部の底面100bに対向する対向面には、スイッチ接点86a、86bを導通させる導通部102aが設けられている。従って、突起102は、バネ106に抗して下方向に変位して導通部102aが2つのスイッチ接点86a、86bを導通させると、抵抗部84(図3参照)を機能させる。
すなわち、スイッチ部86(切替機構)は、被取付部材44の形状に応じた突起102の位置に基づき、オン/オフが切り替えられる。例えば、第4水素センサ10Dを取り付ける凹部46の被取付面46aは、図4Bに示すように平坦状に形成され、突起102の上面から突出した部分を押圧する。従って、突起102が下方向に変位し、突起102の導通部102aをスイッチ用孔部100の底面100bに接触させる。これにより、水素センサ10のスイッチ部86はオン状態となり、抵抗部84を終端抵抗として機能させる。
また例えば、第1〜第3水素センサ10A〜10Cを取り付ける凹部46の被取付面46aは、図4Cに示すように、突起102に対応する位置に窪み部47が設けられており、突起102は窪み部47に進入する。このため、突起102の導通部102aは、スイッチ用孔部100の底面100bとの離間状態が維持される。これにより、水素センサ10のスイッチ部86はオフ状態となり、抵抗部84を機能させることがない。
なお、スイッチ部86の構成は特に限定されるものではなく、種々の変形例及び応用例をとり得る。例えば、図5Aに示す第1変形例に係るスイッチ部110は、ケース88の取付面88dのスイッチ用孔部100内に押しボタン112を備え、押しボタン112の接触及び非接触によりスイッチ部110のオン/オフを切り替える構成となっている。この場合、被取付部材44の被取付面46aが平坦状(図5A中の2点鎖線参照)に形成されていると、押しボタン112と非接触になり、スイッチ部110は抵抗部84を機能させることがない。逆に、被取付部材44の被取付面46aに所定高さの凸部114が形成されていると、凸部114が押しボタン112に接触して、スイッチ部110が抵抗部84を機能させる。これにより、車両側は、終端抵抗が必要となる被取付面46aに凸部114を設け、他の被取付面46aは通常の形状(平坦状)に形成すればよいことになる。
また、図5Bに示す第2変形例に係るスイッチ部120は、ケース88の取付面88dに対しスライドすることでオン/オフを切替可能なスライダ122を備える。すなわち、このスイッチ部120は、水素センサ10を被取付部材44に取り付ける作業者がスライダ122を操作することで、抵抗部84を機能させるか否かを設定する構成となっている。なお、スライダ122の上面は、取付面88dと面一に形成されており、水素センサ10の取付状態でスライダ122が被取付面46aに覆われる。これにより水素センサ10は、被取付部材44に取り付けた後のスイッチ部120の切替を防止することができる。
本実施形態に係る水素センサ10は、基本的には、以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
燃料電池車両12に取り付けられる第1〜第4水素センサ10A〜10Dは、図3に示す内部構造を有した単一仕様に製造される。単一仕様で製造された水素センサ10は、図2に示すガス監視システム13の構築のために車体の所定箇所(被取付部材44)に取り付けられる。この場合、図4Cに示すように、第1〜第3水素センサ10A〜10Cが取り付けられる被取付部材44の凹部46には窪み部47が設けられている。そのため、第1〜第3水素センサ10A〜10Cは、被取付部材44の取付状態で、突起102が押圧されずスイッチ部86をオフとする。よって、抵抗部84を機能させることがなく、水素センサ10を通常通り使用することができる。
一方、図4Bに示すように、第4水素センサ10Dが取り付けられる被取付部材44の被取付面46aは平坦状に形成されているため、第4水素センサ10Dの取付状態で、被取付面46aが突起102を押圧する。これにより、突起102は、取付面88dと相対的に下方向に変位し、導通部102aが2つのスイッチ接点86a、86bに接触して導通することで、抵抗部84を終端抵抗として機能させる。その結果、第4水素センサ10Dは終端抵抗を兼用することになるので、ガス監視システム13は部品点数が減り、組立作業を容易に実施させることができる。
燃料電池車両12は、ガス監視システム13が搭載されることで、車両内の所定箇所の水素濃度を検出して水素ガスの漏れを判別する。ガス監視システム13のガス漏れ判別制御部40(車両ECU36)は、車両ハーネス42を介して第1〜第4水素センサ10A〜10Dの検出信号を受信する。この際、第4水素センサ10Dの抵抗部84は車両ハーネス42の終端抵抗として機能することで、データ転送時に生じるノイズ(反射)を抑える。従って、車両ECU36に検出信号を良好に送ることができ、ガス漏れ判別制御部40は、検出信号に基づきガス漏れを精度よく判別することができる。
以上のように、本実施形態に係る水素センサ10は、抵抗部84及びスイッチ部86を有することで、必要に応じて抵抗部84を機能させるか否かを切り替えて使用することができる。すなわち、水素センサ10が車両ハーネス42の端部に設けられる場合には、抵抗部84を機能させ、水素センサ10が車両ハーネス42の途中に設けられる場合には、抵抗部84を機能させないようにする。これにより、燃料電池車両12に取り付けられる複数の水素センサ10を単一仕様として製造することが可能となる。その結果、製造コストの低廉化を図ることができ、また水素センサ10を取り付ける際の誤組の抑止につながるため、組立作業を容易化することができる。
また、水素センサ10は、スイッチ部86の突起102の変位に基づき抵抗部84の機能が切り替えられる。すなわち、水素センサ10が取り付けられる被取付部材44側の形状を予め設定しておくことにより、抵抗部84の機能を簡単に切り替えることができる。このため、人為的に生じる誤組をより確実に防止することができる。さらに、水素センサ10は、一対のネジ孔92を結ぶ仮想直線L上に突起102を配置しているので、水素センサ10の取付による取付力が強く働き、突起102の変位状態を強固に維持することができる。
なお、本実施形態に係る水素センサ10は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例及び応用例をとり得る。例えば、水素センサ10の内部構造は、上述した水素検出回路70、制御部72、電圧発生回路74、抵抗機能部76の他にも、様々な構成を適用可能である。一例として、水素センサ10は、ケース88の下面88cを加熱して検出素子80aの周囲の温度を安定化させ、水素濃度の検出精度を向上させるヒータ部を備えてもよい。
第2実施形態に係る水素センサ200は、図6に示すように、抵抗機能部202の構成が第1実施形態に係る抵抗機能部76と異なっている。具体的には、抵抗機能部202は、抵抗部84と、リレースイッチ204と、取付スイッチ部206とを有する。これらの構成のうち、抵抗部84は、第1実施形態と同一に構成され、例えば100〜120Ωの抵抗値を有する。
リレースイッチ204は、CAN−H端子66とCAN−L端子68間の導通状態を電気的に切り替える切替機構の一部を構成している。リレースイッチ204と抵抗部84は直列接続されており、抵抗部84は、リレースイッチ204のオン/オフ動作に基づき、機能又は非機能が切り替えられる。
このリレースイッチ204は、コイル208と、コイル208の磁気に基づき動作可能な可動片210とを有する。コイル208は、一端が電源端子62に接続され、他端が取付スイッチ部206に接続されることで、取付スイッチ部206の状態に応じて励磁状態又は非励磁状態が切り替えられる。そして、コイル208の励磁状態では、可動片210を動作させて2つのスイッチ接点212a、212bに接触させ導通させる一方、コイル208の非励磁状態では、スイッチ接点212a、212bを開放させる。
取付スイッチ部206は、リレースイッチ204のコイル208の接地を切り替える切替機構の他部を構成している。特に第2実施形態に係る水素センサ200は、図7に示すように、被取付部材44との取付構造を利用した構成となっている。具体的には、被取付部材44は、燃料電池車両12の車体に連なることで、12Vの電圧E+のGNDとして構成されている。
水素センサ200の2つのネジ孔214a、214bのうち、一方のネジ孔214aは被取付部材44に導通可能な可電締結部となっており、他方のネジ孔214bは水素センサ200を被取付部材44に単純に取り付けるための取付用締結部となっている。具体的に、ネジ孔214aには、導電性を有するカラー216が挿入されている。カラー216は、取付ボルト220のネジ部に接触する貫通孔216aを有する円筒状を呈している。このカラー216は、配線218を介してケース88内のリレースイッチ204(コイル208の一端部)に電気的に接続されている。
これに対し、取付ボルト220は、導電性を有する導電部材220aと、絶縁性を有する絶縁部材220bとを同形状に形成することで、電気的性質が異なる2種類の連結器具に構成されている。つまり、作業者が導電部材220aを選択した場合には、水素センサ200の取付状態で被取付部材44と導電部材220aが導通し、さらにカラー216を介してリレースイッチ204のコイル208が導通する。その一方で、作業者が絶縁部材220bを選択した場合には、水素センサ200の取付状態で被取付部材44と絶縁部材220bとの間で非導通状態となるので、リレースイッチ204のコイル208も非導通状態となる。従って、作業者は、導電部材220aと絶縁部材220bを選択的に変えることで、取付スイッチ部206のオン/オフを切り替えることができる。
以上のように、第2実施形態に係る水素センサ200も、図6に示す内部構造を有した単一仕様に製造することができる。よって、第1実施形態に係る水素センサ10と同様の効果を得ることができる。具体的には、第1〜第3水素センサ200A〜200C(図2参照)を被取付部材44に取り付ける場合には絶縁部材220bを用いる。これにより、第1〜第3水素センサ200A〜200Cの抵抗部84を機能させることがなく、水素センサ200を通常通り使用することができる。また、第4水素センサ200Dを被取付部材44に取り付ける場合には導電部材220aを用いる。これにより、第4水素センサ200Dの抵抗部84が終端抵抗として機能するので、ガス監視システム13の部品点数が減り、組み付け作業を容易に行うことができる。
すなわち、第2実施形態に係る水素センサ200は、ネジ孔214aと被取付部材44を連結する取付ボルト220を導電部材220aと絶縁部材220bに変えることにより、抵抗部84の機能を簡便に切り替えることができる。また、リレースイッチ204による抵抗部84の切替は、他の機械的なスイッチに比べてスイッチ自体の抵抗値の増加を殆ど勘案しなくてもよいので、車両ハーネス42に対する抵抗部84の設計を簡単に行うことができる。
なお、水素センサ200は、一対の取付ボルト220により被取付部材44に取り付けられる構成となっている。このため、終端抵抗として機能させる水素センサ200(第4水素センサ200D)は、一対の取付ボルト220を両方とも導電部材220aにより取り付けることが好ましい。これにより、作業者が絶縁部材220bを導電部材220aと取り違えて水素センサ200を取り付けてしまうことを回避することができる。勿論、水素センサ200は、1つのネジ孔214a(可電締結部)及び1本の取付ボルト220(導電部材220a)により被取付部材44に取り付ける構造であってもよい。
図8Aに示す第3変形例に係る水素センサ230は、取付スイッチ部206(可電締結部)であるネジ孔214aを、水素センサ230を取り付けるネジ孔214b(取付用締結部)と異なる位置に設けている。なお、この水素センサ230の抵抗機能部202は、第2実施形態に係る水素センサ200と同一の機能を有している。
すなわち、抵抗部84を機能させない場合には、一対のネジ孔214b及び一対の取付ボルト220により被取付部材44に水素センサ230を取り付ける。逆に、抵抗部84を機能させる場合には、一対のネジ孔214b及び一対の取付ボルト220による取り付けに加えて、ネジ孔214aに取付ボルト220(導電部材220a)を挿入して被取付部材44との導通状態を構築すればよい。
このように、ネジ孔214aの位置が一対のネジ孔214bの位置と異なることで、ネジ孔214aに対する取付ボルト220の有無を視認すれば、抵抗部84の機能又は非機能を判別することができる。よって水素センサ230の誤組を一層確実に防止することができる。またこの場合、取付ボルト220を1種類(導電部材220a)使用すればよいため、製造コストの増加を抑制することができる。なお、水素センサ230の取付スイッチ部206は、被取付部材44と導通可能であればよく、ネジ孔214aと取付ボルト220の取付構造以外の構造(例えば、螺旋形状を有しない孔部と導電ピンによる電気的接続)を採用してもよい。
図8Bに示す第4変形例に係る水素センサ240は、ケース88の所定位置に抵抗部84の機能又は非機能を表示するインジケータ242(表示機構)を有する。なお、水素センサ240の他の構成は、上述した水素センサ10、200、230と基本的に同様である。インジケータ242としては、電気的導通に伴い発光するLEDを適用することができる。また例えば、第2実施形態に係る抵抗機能部202が設けられている場合、インジケータ242は、リレースイッチ204と取付スイッチ部206の間に配線すればよい。
このように、水素センサ240は、インジケータ242を有することで、作業者に抵抗部84の状態を判別させることができるため、誤組をさらに確実に防止することができる。しかも、抵抗部84を機能させたにもかかわらずインジケータ242が点灯しない場合には、水素センサ240の不良(例えば、抵抗部84の配線不良)と判断することができるため、水素センサ240を直ぐに取り替えることができる。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。