JP6223272B2 - 水銀含有排水の処理方法及びシステム - Google Patents

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Description

本発明は水銀含有排水の処理方法及びシステムに関し,とくに有機物が含まれる水銀含有排水を処理する方法及びシステムに関する。
常温で液体の金属という性質を有する水銀(無機化合物,有機化合物を含む)は,産業上の様々な用途に利用されているが,人の健康被害を引き起こす原因になることから環境中への排出を抑制・防止することが求められる。多くの産業において水銀を使用しないプロセスへの転換が図られているが,現在でも発展途上国等では例えば苛性ソーダ・塩素の製造,塩化ビニルの製造等の化学工業プロセスで水銀が使用されており,そのような製造プロセスの水銀含有排水は環境へ放流する前に処理することが必要となる。
また,医薬品は製剤上及び安全対策上の代替品がない等の場合に限り現在でも水銀化合物を保存剤として配合することが認められており,とくにワクチン等の保存剤は現在も有機水銀化合物(例えばエチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)が主流であることから,医薬品製造排水,病院排水等(以下,これらをまとめて医薬品排水という)も水銀の処理を必要とする。更に,家庭系ゴミに混入した乾電池,電球,体温計等からの漏出水銀を含むごみ焼却施設等からの排水,及びそのような焼却施設等からの排ガスを洗浄した洗煙排水も水銀含有排水として処理する必要がある。
従来から水銀含有排水を処理する方法として,排水中に水銀捕集剤(例えば硫黄物イオンS2−,重金属捕集剤等)を添加し,水銀を難溶物(例えば難溶性の塩)として凝集沈殿させる方法が開発されている(凝集沈殿法。特許文献1,非特許文献1参照)。図2は,従来の凝集沈殿法の処理フローを示す。図示例の処理フローは,水銀含有排水Dを貯める原水槽1と,その原水槽1から取り入れた排水Dに水銀捕集剤及びpH調整剤(例えばHSO,NaOH等)を添加して水銀を難溶性の水銀塩(例えば硫化物塩)とする反応槽21と,反応槽21の出力排水に凝集剤(例えば鉄塩,アルミニウム塩)を添加して水銀塩をフロック状に凝集させる凝集槽22と,凝集槽22の出力排水を投入して凝集したフロックを汚泥(スラッジ)として沈殿・除去する沈殿槽23とを有する。
図2の処理フローにおいて,沈殿槽23の上澄み水Wは,pH調整槽24及び中間水槽25を介して,例えば下水道等の環境中へ放流する。沈殿槽23で分離した汚泥Sは水銀廃棄物として最終処分施設へ送り,例えば600〜800℃の焙焼処理(融点以下の温度で加熱して揮発性成分を除去する処理)又は燃焼処理により汚泥中の水銀を気化させて回収し,回収した水銀(金属水銀)を管理・保管し,残りの残渣を最終処分場に埋立て処分する。
図2の処理フローの凝集沈殿プロセス(反応槽21と凝集槽22と沈殿槽23)において,排水D中の水銀を微量まで処理するためには,水銀捕集剤,凝集剤等の薬剤を少し過剰に添加する必要がある。排水Dの流量及び含有水銀濃度は絶えず変動しているので,予想される流量及び最高水銀濃度に合わせて凝集沈殿プロセスにおける薬剤の添加量を決定する。
また,図2の処理フローは,中間水槽25の下流側に,沈殿槽23の上澄み水中の残留水銀を吸着除去するキレート樹脂塔33と,その出力排水を中和する中和槽34とを設けている。凝集沈殿プロセスのみでは上澄み水Wの水銀濃度を要求レベル(例えば0.0005mg/リットル)以下に低下させることが難しい場合もあるが,凝集沈殿プロセス後の上澄み水をキレート樹脂塔33に通すことにより,放流水Wの要求レベルの水質を確保することができる。キレート樹脂塔33の前段に,上澄み水中の残留水銀を吸着除去する活性炭塔を設置する場合もある。
なお,凝集沈殿プロセスの上澄み水W中には水銀以外のSS成分,COD成分等も残存しており,その上澄み液Wをキレート樹脂塔33へ直接送ると目詰まりを生じるおそれがあるため,図示例のようにキレート樹脂塔33を設ける場合は,その前段にろ過器31を設けることが望ましい。また,図2の処理フローは無機水銀含有排水Dに対する場合を示しているが,有機水銀含有排水Dに対しても,凝集沈殿プロセスの前段に例えば排水D中の有機水銀化合物を塩素等により酸化分解して完全に無機水銀(塩化物等)とするプロセスを追加することにより,無機水銀の場合と同様に処理することが可能である。
特開昭52−011650号公報 特開平11−347548号公報
公害防止の技術と法規編集委員会「五訂・公害防止の技術と法規[水質編]」社団法人産業環境管理協会,2001年6月12日第7版発行,pp.253−258
図2の凝集沈殿法によれば,水銀含有排水D中の水銀を汚泥Sに濃縮して最終処分施設へ送り,残りを要求レベルの水質の上澄み水Wとして放流することができる。しかし,凝集沈殿法は,排水D中の水銀だけでなく他の成分(SS成分,COD成分,及び凝集剤その他の投入薬剤等)も薬剤により凝集して汚泥となるので,排水D中の水銀濃度に対して発生する汚泥量が増える問題点がある。汚泥量の増加は,最終処分が必要な水銀廃棄物の増加を意味するので処分コストが嵩む原因となり,最終処分施設において水銀を回収・管理する上でも好ましくない。
汚泥量の増加を避けるため,図2に示すように汚泥の搬送路に脱水装置36を設けて汚泥Sを脱水することも考えられる。しかし,その場合は脱水ろ液中に水銀が移行するので,脱水ろ液を原水槽1に戻して再処理するために薬剤を更に添加する必要がある。また,脱水ろ液の塩濃度等が凝集性に影響を及ぼすため,添加する薬剤を増量しなければならなくなり,それに応じて汚泥量(水銀廃棄物量)が更に増える悪循環を生じる懸念もある。水銀廃棄物の増加を避けるためには,脱水処理や薬剤の再添加等を必要としない水銀含有排水Dの処理技術を開発する必要がある。
そこで本発明の目的は,水銀廃棄物の発生量を増やすことなく水銀含有排水を濃縮することができる方法及びシステムを提供することにある。
本発明者は,水銀含有排水D中に含まれる水銀を蒸留によって濃縮する方法に着目した。水銀の沸点(又は水銀の蒸気圧)は,化合物の種類によって相違するものの,一般に水の沸点よりも高い(又は水の蒸気圧より小さい)ので,蒸留によって排水Dを蒸留水Wと残留液Wとに分離すれば,残留液Wに水銀を濃縮することができる。また,蒸留法によれば,水銀凝集剤・凝集剤等の薬剤を添加する必要がないので,水銀の濃縮に際して凝集沈殿法のような汚泥の発生を抑えることが期待できる。しかし,本発明者の予備的実験によれば,水銀含有排水Dを蒸留釜に投入して大気圧下で水の沸点(100℃)に加熱蒸留すると,排水D中のSS成分,COD成分等に含まれる有機物が変性して蒸留釜の内壁に沈着・付着し,細菌・カビ等の温床となりうる問題が経験された。
水銀含有排水D中に含まれる有機物量は排出源に応じて様々であるが,例えば医薬品排水には比較的多く含まれていることがあり,そのような有機物が変性して蒸留釜に沈着・付着すると細菌等が繁殖して腐敗臭の原因になると共に,蒸留釜の熱交換能力の低下を招くので,蒸留釜の運転を中断して剥離・除去する必要が生じる。しかし,沈着・付着した有機物の剥離には手間がかかると共に洗浄剤その他の薬剤を用いる必要があり,沈着・付着物には水銀も随伴しているので,結果として従来の水銀汚泥と同様に最終処分が必要な水銀廃棄物(剥離した沈着物)が増えてしまう。水銀廃棄物を増やさずに水銀含有排水を処理するためには,有機物(主にタンパク質)の変性による沈着・付着を抑えることが重要である。本発明は,この着想に基づく研究開発の結果,完成に至ったものである。
図1の実施例を参照するに,本発明による水銀含有排水の処理方法は,有機物が含まれる水銀含有排水Dを蒸留釜10に投入して水の沸点がその有機物の変性する温度以下となる低圧下で蒸留し,蒸留時に生じる蒸留水Wを放流し,蒸留後の残留液Sに水銀を濃縮してなるものである。
また,図1のブロック図を参照するに,本発明による水銀含有排水の処理システムは,有機物が含まれる水銀含有排水Dを貯める原水槽1,排水Dを投入して水の沸点が前記有機物の変性する温度以下となる低圧下で蒸留する蒸留釜10,及び蒸留釜10で生じる蒸留水Wを放流する放流路17を備え,蒸留釜10の残留液Sに水銀を濃縮してなるものである。
好ましくは,図1に点線で示すように,蒸留水Wの放流路17に,蒸留水W中の残留水銀を除去する吸着装置30を設ける。望ましくは,低圧蒸留の圧力を,水の沸点が65度以下となる圧力とする。
本発明による水銀含有排水の処理方法及びシステムは,有機物が含まれる水銀含有排水Dを水の沸点がその有機物の変性する温度以下となる低圧下で蒸留し,その蒸留時に生じる蒸留水Wを放流し,蒸留後の残留液Sに水銀を濃縮するので,排水D中の有機物の変性による沈着・付着を防止することができ,水銀廃棄物の発生量を増やすことなく水銀含有排水を濃縮することができる。
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
は,本発明による水銀含有排水の処理システムの一実施例の説明図である。 は,従来の水銀含有排水の処理方法の一例の説明図である。
図1は,ワクチンを含む医薬品排水Dの処理システムに本発明を適用した実施例を示す。上述したようにワクチンには微生物の殺菌又は増殖抑制等を目的として有機水銀化合物(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム,商品名チメロサール)を添加することがあり,ワクチンを含む医薬品排水は水銀含有排水Dとして処理する必要がある。図示例の処理システムは,チメロサールの蒸気圧が25℃において5.1×10−10Paであるのに対し,水の蒸気圧は3.1×10Paであり,両者の蒸気圧差(≒1×1013Pa)が極めて大きいことを利用して,蒸留により水銀含有排水Dを水Wと残留液Wとに分離し,残留液Wに水銀を濃縮する。ただし,本発明が適用可能な水銀含有排水は医療品排水に限られるわけではない。
図示例の処理システムは,水銀含有排水Dを蓄える原水槽1と,その排水Dを取り入れて蒸留する蒸留釜10と,蒸留釜10で生じる蒸留水Wを放流する放流路17とを有する。原水槽1の排水Dを,計量タンク2経由で重量を計量しながら所定量ずつバッチ式で蒸留釜10に投入し,蒸留釜10において排水Dを所定時間加熱することにより水分を蒸発させる。図示例の蒸留釜10は二重構造となっており,その内側に排水Dを所定時間滞留させ,その外側に熱媒(例えば蒸気)を通して内側との熱交換(間接加熱)により排水Dを水の沸点温度に加熱する。蒸留釜10で発生した水蒸気を放流路17に設けた凝縮器(コンデンサ)14へ導入して液化し,液化した蒸留水Wを回収水タンク15経由で一般下水道等へ放流する。
蒸留釜10において水銀含有排水Dを水の沸点まで加熱することにより,蒸留水Wと残留液Wとに分離する。ただし,医薬品排水Dには有機物が含まれており,大気圧下で水の沸点(100℃)に加熱すると排水D中の有機物が変性して蒸留釜の内壁に沈着・付着してしまう。図示例の処理システムは,有機物の沈着・付着を避けるため,蒸留釜10に真空ポンプ12を接続し,蒸留釜10の内側を有機物の変性する温度以下で水が沸騰する圧力P0に減圧したうえで水銀含有排水Dを蒸留している。蒸留釜10の内側の圧力に応じて水の沸点(すなわち,水の蒸気圧及び水銀の蒸気圧)は一意的に定まる。
有機物中のタンパク質や核酸は高温になると変性(熱変性)する。タンパク質等の一次構造は加熱してもほとんど変化しないが,二次以上の高次構造は加熱により崩れやすく,高次構造が崩れると表面積が大きくなって水和により安定化し,内部の疎水部分が相互に引き付け合って沈着・付着物を形成する。一般に有機物の熱変性は,有機物中に含まれるタンパク質等の種類に応じて異なるが,60〜65℃程度において始まって有機物が流動性を消失し,70℃程度において沈着・付着が起こると考えられる。また,短時間では有機物の沈着・付着が起こらない温度であっても,時間の経過により有機物の沈着・付着が起こり得る。従って,水銀含有排水Dを蒸留釜10に滞留させる時間(例えば30〜60分)に応じて,真空ポンプ12により蒸留釜10の内側を水の沸点が65℃以下(例えば64℃)となるような圧力P0に減圧しながら,排水Dを加熱して蒸留水Wと残留液Sとに分離することにより,有機物の沈着・付着を防ぐことができる。
望ましくは,真空ポンプ12によって蒸留釜10の内側の圧力を,水の沸点が有機物の変性する温度以下で,且つ,含有水銀の蒸発を十分小さく抑えることができる温度となるような圧力P0とする。水の沸点では,水銀含有排水D中の水銀も蒸発して蒸留水W中に混入しうる。チメロサールのように水との蒸気圧差が十分大きい水銀化合物は,有機物の変性が始まる60〜65℃程度まで加熱してもあまり蒸発せず,蒸留水W中に混入する水銀量を要求レベル以下に抑えることができるが,排水Dが比較的蒸発しやすい水銀を含んでいる場合は,蒸留水W中への水銀の混入を避けるため,蒸留釜10の内側を水の沸点が60℃未満となる低圧にまで下げることが有効である。例えば46℃程度で水が沸騰する程度の低圧下で水銀含有排水Dを蒸留することにより,有機物の沈着・付着防止と,蒸発しやすい水銀の分離性向上との両者を同時に実現できる状態を作り出すことが可能である。このような蒸留温度となるような圧力P0は,水銀含有排水D(その中に含まれる有機部)の種類に応じて,予め実験的に定めることができる。
水銀含有排水Dを所定時間加熱して水Wと分離された残留液Sは,蒸留処理終了後に大気開放した蒸留釜10の排出口から濃縮液タンク19に流出させる。上述したように水の沸点が有機物の変性する温度以下となる低圧P0下で蒸留することにより,ゼリー状の部分が多少含まれる場合もあるが,残留液Sを流動性のある状態で蒸留釜10から容易に排出することができる。すなわち,排水D中の水銀を流動性のある残留液Wに濃縮することができる。
例えば水銀含有量(T−Hg)が5mg/リットルの排水D=100m/日を処理する場合,凝集沈殿法では1,000mg/リットル程度の凝集剤(PAC)を添加することにより約100.58kg/日の絶乾汚泥が発生する((2)式参照)。通常,凝集沈殿法の汚泥濃度は10,000mg/リットル程度(換言すると含水率が99.0%)であるから,換算すると約10.1m/日の汚泥量になる。これに対して図示例の方法で排水Dの水銀濃度を10倍程度(減容化率=1/10)に濃縮した残留液Sの量は約10.0m/日((3)式参照)であり,最終処分が必要な水銀廃棄物(残留液S)の発生量を凝集沈殿法の場合に比して少量に抑えることができる。
水銀塩(HgS)の発生重量
=(Hg量)×(HgSの分子量)/(Hgの分子量)
=(100m/日×5mg/リットル)×(232.65)/(200.59)
≒580.0g/日 ……………………………………………………………(1)
凝集沈殿法の(脱水前)汚泥発生重量
=((1)式の水銀塩の発生重量)+(凝集剤の添加重量)
=(580g/日)+(100m/日×1,000mg/リットル)
=(0.58kg/日)+(100kg/日)
≒100.58kg/日 ………………………………………………………(2)
本発明の残量液量(10倍濃縮)
=(水銀含有排水量)/(減容化率)
=(100m/日)/(1/10)
≒10.0m/日 ……………………………………………………………(3)
[実験例1]
図1に示す処理システムを試設計し,本発明の効果を確認する試験を行った。試験では,チメロサール含有量(T−Hg)=4.8mg/リットルの医薬品排水Dを原水とし,計量タンク2で原水の重量(=56.05kg)を計測したうえで蒸留釜10に投入した。また,真空ポンプ12で蒸留釜10の内側を水の沸点が64℃となるような真空圧P0(≒−82.2kPa)に減圧しながら排水Dを蒸留し,蒸留釜10の蒸留水Wを回収水計量タンク15に一時的に受けて一定時間間隔(約2分間隔)で重量を計測し,計測した蒸留水Wの重量と計量タンク2で計測した水銀含有排水Dの投入重量とから,蒸留釜10の内側の水銀濃縮倍率(減容化率)を算出した。表1は,排水Dが所定減容化率(1/10)となるまで真空ポンプ12の運転点を38分間継続したときの計量タンク15による蒸留水(回収水)Wの継続的な計測結果を示す。
計量タンク12に回収した蒸留水Wの水質を分析したところ,表2に示すように,蒸留水Wの水銀濃度は要求レベル(0.0005mg/リットル)未満で検出できなかった。また,蒸留処理の終了後,蒸留釜10の排出口を開放したところ,内部から水銀の濃縮された残留液S(重量=5.5kg)を流動性のある状態で排出することができ,蒸留釜10の内部に有機物の沈着・付着が発生していないことを確認することができた。これらの実験結果から,本発明の方法により,有機物が含まれる排水D中の水銀を残留液Sに濃縮し,残りを要求レベルの水質の蒸留水Wとして分離できることを確認することができた。
なお,表2の実験結果から,本発明の処理方法で回収される蒸留水Wには,SS成分,COD成分等がほとんど含まれていないことが分かる。従来の凝集沈殿法の上澄み水W中にはSS成分,COD成分等も残存しており,上澄み液Wがキレート樹脂塔33等を通る際にそれらが目詰まりを生じさせることがあった。本発明の処理方法で回収された蒸留水Wは,必ずしもキレート樹脂塔33等に通す必要はないが,SS成分,COD成分等がほとんど含まれていないので,キレート樹脂塔33等に通した場合にも目詰まりを生じさせるおそれが小さい。
好ましくは,蒸留釜10における真空圧P0の蒸留時間を,残留液Sの流動性が維持できる範囲内において,残留液Sの所要減容化率(例えば1/20〜1/50)が得られる大きさとする。本発明では,残留液Sの減容化率(水銀濃度)を,蒸留時間によって適宜に調整することが可能である。例えば,上述した水銀含有排水D(T−Hg=5mg/リットル,100m/日)を処理する場合に,水銀倍率を50倍程度(減容化率=1/50)に濃縮すると残留液Sの量は約2.0m/日となる((5)式参照)。従来の凝集沈殿法では脱水処理した場合でも約10.1m/日の汚泥が発生するので((4)式参照),残留液Sの水銀濃度(減容化率)を排水Dの20〜50倍(1/20〜1/50)程度に高くすることにより,水銀廃棄物(残留液S)の量を凝集沈殿法で発生する脱水汚泥量より小さく抑え,最終処分が必要な残留液Sの減容化を図ることができる。
凝集沈殿法の(脱水後)汚泥発生量
=((2)式の汚泥の発生重量)/(汚泥の比重)
=(100.58kg/日)/(10,000mg/リットル)
≒10.1m/日 ……………………………………………………………(4)
本発明の残量液量(50倍濃縮)
=(水銀含有排水量)/(減容率)
=(100m/日)/(1/50)
≒2.0m/日 ………………………………………………………………(5)
望ましくは,図1に示すように,蒸留釜W10の真空圧P0及び蒸留時を制御する制御装置18を設け,計量タンク2及び計量タンク15の計測値を制御装置18に入力し,制御装置18において残留液Sの所要減容化率が得られるように水銀含有排水Dの蒸留時間を制御する。例えば,上述した有機物の変性する温度以下で水が沸騰する圧力P0と所定減容化率(例えば1/20〜1/50)を制御装置18に記憶しておき,計量タンク2,15の計測値に基づき所定減容率となるまで蒸留釜10の内側を圧力P0とする真空ポンプ12の運転を継続する。
こうして,本発明の目的である「汚泥量を増やすことなく水銀含有排水を濃縮することができる方法及びシステム」の提供が達成できる。
図1に点線で示すように,本発明の処理システムの蒸留水Wの放流路17に,蒸留水W中の残留水銀を除去する吸着装置30を設けることも有効である。上述したチメロサールのように水との蒸気圧差が十分大きい水銀化合物は,水の沸点が64℃程度になる低圧下で蒸留した場合でも蒸留水W中に混入するおそれは小さいが,万が一若干の水銀化合物が蒸留水W中に移行した場合でも,放流路17に吸着装置30を設けて蒸留水W中の残留水銀を除去することにより,水銀化合物の環境中への不所望な漏出を防止することができる。
また,例えば金属水銀の蒸気圧は25℃において2.7×10−Paであり,水との蒸気圧差は約1×10Pa程度である。このように水との蒸気圧差の小さい水銀を含む排水Dを本発明で処理する場合は,上述したように水の沸点が60℃未満となる低圧に下げたとしても,蒸留水W中に水銀が混入するおそれがある。放流路17に吸着装置30を設けた図1の実施例によれば,このような水銀含有排水Dについても,水銀化合物の環境中への不所望な漏出を防止しつつ本発明の方法で処理することが可能である。
図示例の吸着装置30は,キレート樹脂塔33と,その前段に配置した活性炭塔32とを有する。上述したように,本発明の処理方法によれば,キレート樹脂塔33及び活性炭塔32に目詰まりを生じさせるSS成分,COD成分等はほとんど蒸留槽10内の残留液S側に留まり,蒸留水W側には移行しないので,従来の凝集沈殿法の上澄み水Wを処理する場合に必要であったキレート樹脂塔33及び活性炭槽32の前段のろ過器31を省略することが可能である。
1…原水槽 2…計量タンク
3…ポンプ
10…蒸留釜 12…真空ポンプ
14…凝縮器(コンデンサ) 15…回収水計量タンク
16…回収水タンク 17…放流路
18…制御装置 19…濃縮液タンク
20…凝集沈殿プロセス 21…反応槽
22…凝集槽 23…沈殿槽
24…pH調整槽 25…中間水槽
26,28…ポンプ
30…吸着装置 31…ろ過器
32…活性炭槽 33…キレート樹脂塔
34…中和槽 36…脱水装置
D…水銀含有排水 W…放流水
S…残留液(汚泥)

Claims (8)

  1. 有機物が含まれる水銀含有排水を蒸留釜に投入して水の沸点が当該有機物の変性する温度以下となる低圧下で蒸留し,蒸留時に生じる蒸留水を放流し,蒸留後の残留液に水銀を濃縮してなる水銀含有排水の処理方法。
  2. 請求項1の処理方法において,前記蒸留水を放流前に吸着装置に通して残留水銀を除去してなる水銀含有排水の処理方法。
  3. 請求項1又は2の処理方法において,前記低圧蒸留の圧力を,水の沸点が65度以下となる圧力としてなる水銀含有排水の処理方法。
  4. 請求項1から3の何れかの処理方法において,前記有機物が含まれる水銀含有排水を,有機水銀化合物が含まれる医薬品製造排水又は病院排水としてなる水銀含有排水の処理方法。
  5. 有機物が含まれる水銀含有排水を貯める原水槽,前記排水を投入して水の沸点が前記有機物の変性する温度以下となる低圧下で蒸留する蒸留釜,及び前記蒸留釜で生じる蒸留水を放流する放流路を備え,前記蒸留釜の残留液に水銀を濃縮してなる水銀含有排水の処理システム。
  6. 請求項5の処理システムにおいて,前記蒸留水の放流路に,前記蒸留水中の残留水銀を除去する吸着装置を設けてなる水銀含有排水の処理システム。
  7. 請求項5又は6の処理システムにおいて,前記低圧蒸留の圧力を,水の沸点が65度以下となる圧力としてなる水銀含有排水の処理システム。
  8. 請求項5から7の何れかの処理システムにおいて,前記有機物が含まれる水銀含有排水を,有機水銀化合物が含まれる医薬品製造排水又は病院排水としてなる水銀含有排水の処理システム。
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