JP6222815B2 - 焼結部材 - Google Patents
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Description
本実施形態の焼結部材は、エンジンのEGR、又はターボチャージャーの摺動部品として使用することができる。
EGRバルブ1のハウジング2は、鋳鉄製である。このハウジング2の嵌合面2Aに軸受3が嵌着して取り付けられている。軸受3の案内面3Aは、先端に弁体7が設けられたシャフト9を摺動自在に案内する。
また、シャフト9は、段差9aが形成されており、当該段差9aがスプリングホルダ6に係止している。このスプリングホルダ6には、鍔部6aが設けられ当該鍔部6aと、ハウジング2のスプリング受け部2aの間には、予圧が加えられたスプリング8が設けられている。即ち、スプリング8は、上端においてスプリングホルダ6の鍔部6aと当接し、下端においてハウジング2のスプリング受け部2aに当接している。スプリング8によりシャフト9は、スプリングホルダ6を介し上方に押圧され、これにより、シャフト9の先端に設けられた弁体7は、弁座部10を上方に押し当て、開口4を気密に防ぐことができる。
また、焼き付きは、摺動により発生した微小な摩耗粉が、摺動部材同士(即ち、本実施形態の焼結部材からなる軸受3と、当該軸受3と摺動するシャフト9)の摺動面間において、移着、成長、離脱を繰り返すにしたがい、粗大化していくことで焼き付きに進展すると考えられている。
<空孔率>
本実施形態の焼結部材は、「1−密度比」(密度比=実際の密度/理論密度)で定義される空孔率を0.05以上0.35以下とすることが好ましい。
一般的に焼結体のような気孔を含む材料は、同組成の溶製材料よりも熱膨張係数が低い。これは焼結体中の気孔が熱膨張係数を低下させているためである。したがって、空孔率を制御することで熱膨張係数の制御が可能である。
本実施形態の焼結部材は、空孔率を0.05以上としたことで、その表面には、空孔が形成されている。摺動によって発生した摩耗粉は、移着、成長による粗大化の過程において、この空孔に落下するため、焼き付きが起こりにくくなる。
本実施形態の焼結部材において、基材となるステンレス合金は、オーステナイト系、マルテンサイト系及びフェライト系のうちの何れであっても良い。
また、ステンレス合金として、Crの含有量が、16質量%以上であることが好ましい。Crの含有量を16質量%以上とすることで耐酸化性が向上する。本実施形態の焼結部材は、高温領域に長時間晒されるためその表面に酸化が発生しやすい。特にCr量の低い材料では耐酸化性に劣るため、基材表面、及び内部酸化による脆化により高温摩耗が促進される。
また、Crの含有量が多すぎるとσ相等の金属間化合物が析出しやすくなる。それに伴い延性、じん性等の機械的強度が劣化する。したがって、Crの上限は、35質量%が好ましい。
焼結部材の基材であるステンレス合金中に、当該ステンレス合金と異なる熱膨張係数であるセラミックス(酸化物)を分散させることで、焼結部材の熱膨張係数を調整することができる。セラミックスの熱膨張係数は、基材(ステンレス合金)に対して差が大きい程、焼結部材の熱膨張係数への影響が大きくなる。適切な熱膨張係数のセラミックスを選択すること、あるいは異なる複数のセラミックスを組み合わせすることにより熱膨張係数の制御を行うことができる。
セラミックスの試験力0.98Nにおけるヌープ硬さが250に満たない場合は、焼結部材のみならず、相手材の摩耗量も多くなる。これは、セラミックスが柔らかいために、焼結部材が摩耗し、これにより発生した金属粒子を含む摩耗粉が相手材を攻撃し相手材の摩耗量が大きくなるためであると考えられる。
なお、本明細書において、ヌープ硬さ(HK0.1)が250以上のセラミックスを硬質セラミックスと呼び、ヌープ硬さ(HK0.1)が250未満のセラミックスを軟質セラミックスと呼ぶ。
ステンレス合金の融点は1400〜1510℃であり、融点の75%程度から焼結が進行することを考慮すると、セラミックス同士の焼結が進行するためには、セラミックスの融点が1950℃以下であることが好ましい。
また、セラミックスが完全に溶融し流出してしまうことを防ぐために1200℃以上であることが好ましい。
この場合、硬質セラミックスの含有量と軟質セラミックスの含有量の和が10体積%以上60体積%以下であり、前記硬質セラミックスの含有量が10体積%以上60体積%以下であり、前記硬質セラミックスの含有量に対する前記軟質セラミックスの含有量が40%未満であることが好ましい。即ち、硬質セラミックスの含有量をX体積%、軟質セラミックスの含有量をY体積%として、以下の条件(1)〜条件(3)を満たすことが望ましい。条件(1)〜条件(3)を満たす範囲内において、軟質セラミックスを添加することで、焼結部材の摩耗特性及び焼き付き特性を低下させることなく、被削性を向上させることができる。
条件(2): 10≦X≦60
条件(3): Y<0.4X
本実施形態の焼結部材は、基材粉末としてステンレス鋼粉を使用することができる。ステンレス鋼粉として、100メッシュ以下の微粉を使用することが好ましい。
また、基材粉末は、合金化したステンレス鋼からなる粉末を使用する以外に、異なる金属粒を混合し、焼結することにより合金化する粉末を使用することもできる。
セラミックス粉の粒径は、35メッシュ以下1000メッシュ以上であることが好ましい。セラミックス粉の粒径を上記範囲とすることで、焼結部材の耐摩耗性を高めることができる。
次に、このような混合粉体を金型に格納し、5000kg/cm2〜9000kg/cm2の圧力を加えて、1000℃〜1500℃で、水素窒素混合雰囲気等において焼結し、さらにサイジングを行うことで、所定の形状に形成することができる。
原料粉末として、粒度が100メッシュ以下のステンレス合金粉末、100メッシュ以下1000メッシュ以上のセラミックス粉末を用意した。これらの原料粉末を配合し、V型混合機にて30分間混合した後、所定の圧力でプレス成形して圧粉体を作製した。この圧粉体を、水素窒素混合雰囲気で、1000〜1400℃範囲内の所定の温度で焼結し、続いてサイジングを行った。
以上の工程により、外径:18mm×内径:8mm×高さ:8mmの寸法を有する種々の組成の軸受の試料を作製した。
ロータリアクチュエータ(SMC製:CDRB2BW40−90DT79L、搖動角:70°)を用い往復摺動試験を行い、摩耗量の評価を行った。往復摺動試験は、JIS規格のSUS316製の軸を用いて、クリアランスを約0.1mmとし、軸に3MPaを負荷し、軸を毎分75往復の速度でラジアル方向に400000往復させることにより行った。また、温度を100℃、600℃に制御し、それぞれ試験を行った。
この往復摺動試験を別サンプルを用いて3回行い、それぞれの試験終了後の、軸受と軸の最大摩耗深さの平均値を摩耗量とした。軸受及び軸の摩耗評価の判定は以下の基準に従って行った。なお、焼き付きが起こった場合は、その時点で試験を中止した。
○:摩耗量が75μm以下。
△:摩耗量が75μmを超え150μm未満。
×:摩耗量が150μm以上。
−:3回の試験ですべて焼き付きが起こった。
上記摩耗試験と同様の試験を、別サンプルを用いて30回行い、焼き付きが発生したサンプルの個数を調べた。焼き付き評価の判定は以下の基準に従って行った。
○:焼き付きが起こったサンプルがない。
△:焼き付きが起こったサンプルがあり2個以下。
×:焼き付きが起こったサンプルが3個以上。
試料を900℃に加熱して大気中で500時間保持した後に冷却し、加熱前後における重量の増加により耐酸化性を評価した。耐酸化性評価の判定は以下の基準に従って行った。
◎:加熱前後における重量の増加が50g/m2以下。
○:加熱前後における重量の増加が50g/m2を超え200g/m2以下。
△:加熱前後における重量の増加が200g/m2を超え400g/m2以下。
×:加熱前後における重量の増加が400g/m2を超える。
焼結部材の基材となる合金は、表1に示す記号A〜Jのものを用いた。なお、表1において、各構成元素の含有量は質量%として示す。
また、焼結部材に分散させるセラミックスの種類、含有量、焼結後の空孔率を様々変えたサンプルを上記の作製手順に従い焼結部材を作製し、これらのサンプルに対し上記の各試験を行った結果を表2、表3に示す。
なお、セラミックスのヌープ硬さは、試験力0.98N(0.1kgf)として、JIS Z 2251(ヌープ硬さ試験−試験方法)に準拠して測定した。
また、空孔率は、アルキメデス法により焼結部材の実際の密度を測定し、この実際の密度と基材及びセラミックスの密度及び配合量から導き出される理論密度から算出した。
表2、表3に示すサンプルNo.1〜No.46において、表2に示すサンプルは本発明の適用範囲である実施例であり、表3に示すサンプルは適用範囲外である比較例である。
また、サンプルNo.35〜No.37は、セラミックスとしてムライトを用い、含有量をそれぞれ、5体積%、9体積%、65体積%としたサンプルである。含有量が9体積%以下である、サンプルNo.35、36に関しては焼き付き特性が大幅に劣化している。また、含有量が65体積%のサンプルNo.37は、100℃、600℃の何れにおいても軸の摩耗が顕著となっている。
このように、サンプルNo.13〜No.20並びにサンプルNo.35〜No.37の結果から、セラミックスの含有量は、10体積%〜60体積%が好ましく、15体積%〜45体積%がより好ましい範囲であることがわかる。
また、サンプルNo.45は、空孔率が0.38と空孔率の好ましい範囲(0.05〜0.35)の上限を上回っている。また、このサンプルは、耐酸化性に劣り、それにより摩耗が進行している。これは、高い空孔率に起因し表面積が大きくなり、基材であるステンレス合金中のCrが表面酸化によりCr酸化物として大量に消費され、Cr欠乏がおこるためであると考えられる。
これらのサンプルに対し、実施例であるサンプルNo.1〜No.34のサンプルは、空孔率が0.06〜0.3の範囲であり空孔率の好ましい範囲(0.05〜0.35)に入っており、優位性が確認された。
これらを比較すると、ヌープ硬さ(HK0.1)が、それぞれ200、50、20であるセラミックス(CaF2、h−BN、タルク)を含有したサンプルNo.38〜No.40のサンプルは、100℃、600℃の何れにおいても軸、及び軸受の摩耗が顕著となっている。
これに対して、サンプルNo.1〜No.7、No.9、No.17では、摩耗が抑制されている。また、これらの中でも、フォルステライト、ステアタイト、シリカ、正長石、灰長石、ムライト、コージライトをそれぞれ含有するサンプルNo.2〜No.6、No.9、No.17の特性が、特に優れていることがわかる。
サンプルNo.32、No.33は、硬質セラミックスであるコージライト又はムライトの含有量(ともに20体積%)に対する軟質セラミックスであるCaF2の含有量が、40%未満となっている(サンプルNo.32が15%、サンプルNo.33が38%)。また、これらのサンプルは、総含有量が60体積%以下となっている。
これに対して、サンプルNo.34は、硬質セラミックスの含有量に対する軟質セラミックスの含有量が50%となっており、40%未満となっていない。これによって、摺動試験の結果が、サンプルNo.32、No.33に対して思わしくない結果となったと考えられる。
また、サンプルNo.46は、硬質セラミックスの含有量に対する軟質セラミックスの含有量が40%未満となっているものの、総含有量が60体積%を超えている(70体積%)。このサンプルは、表中には記載されていないが、基材であるステンレス合金の含有量が少ないため、製造工程において、亀裂が発生するなどの不良が起こりやすく製造が困難であるため好ましくない。
これらのうち、サンプルNo.41、No.42は、基材中にCrの含有量が少なく(1質量%、9質量%)ステンレス合金ではない。したがって、耐酸化性に劣り、特に600℃における摩耗が顕著となっている。
これに対し、サンプルNo.24〜No.31は、基材としてCrが12質量%以上含まれるステンレス合金を使用しており、耐酸化性が高く摩耗を抑制することができている。これらの中でも、特にサンプルNo.24〜No.28は、基材として表1に示すC〜Gのステンレス合金を使用しており、これらの合金にはCrが16質量%以上含まれているため、耐酸化性に優れ、これにより、600℃においても、優れた耐摩耗性を示している。
また、ステンレス合金としてオーステナイト系、マルテンサイト系及びフェライト系の何れであっても、特性に顕著な差は見られなかった。
上述した焼結部材の作製と同様の手順を経て、表4に示すサンプルNo.I〜No.Vの焼結部材を作製した。これらのサンプルは、セラミックスの含有量を様々変えることによって、焼結部材の熱膨張係数を制御することができることを示すものである。
Claims (7)
- ステンレス合金中にセラミックスが分散された焼結部材であって、
空孔率が0.05以上0.35以下であり、
前記セラミックスの含有量が10体積%以上60体積%以下であることを特徴とする焼結部材。 - 請求項1に記載の焼結部材であって、
前記セラミックスが、ヌープ硬さ(HK0.1)250以上とする硬質セラミックスであることを特徴とする焼結部材。 - 請求項1に記載の焼結部材であって、
前記セラミックスが、ヌープ硬さ(HK0.1)250以上とする硬質セラミックスと、ヌープ硬さ(HK0.1)250未満とする軟質セラミックスとの混合物であり、
前記硬質セラミックスの含有量が、10体積%以上60体積%以下であり、
前記硬質セラミックスの含有量に対する前記軟質セラミックスの含有量が40%未満であることを特徴とする焼結部材。 - 請求項2又は3に記載の焼結部材であって、
前記硬質セラミックスの融点が、1950℃以下であることを特徴とする焼結部材。 - 請求項4に記載の焼結部材であって、
前記硬質セラミックスが、アルミニウム珪素複合酸化物、アルミニウム珪素マグネシウム複合酸化物、マグネシウム珪素複合酸化物、カリウムアルミニウム珪素複合酸化物、カルシウムアルミニウム珪素複合酸化物、及び珪素酸化物のうち何れか1種、又は2種以上の組み合わせからなることを特徴とする焼結部材。 - 請求項1〜5の何れか一項に記載の焼結部材であって、
前記ステンレス合金が、Crを16質量%以上含有することを特徴とする焼結部材。 - 請求項1〜6の何れか一項に記載の焼結部材であって、
エンジンのEGRの摺動部品、又はエンジンのターボチャージャーの摺動部品として用いられることを特徴とする焼結部材。
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