以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の第1実施形態に係る積層型冷却器10は、電気自動車に搭載される電力変換装置PCUの一部をなすものであって、当該電力変換装置PCUが備える複数の半導体モジュールSMを冷却するための冷却器である。冷却対象である半導体モジュールSMは、電力変換装置PCUの電力変換回路を構成する電子部品のうち、スイッチング素子やダイオードのような一部の電子部品が薄板状のパッケージ内に収められてモジュール化されたものであり、電力変換装置PCUに複数備えられている。
図1に示されるように、積層型冷却器10は、複数の冷却管20と、供給管30と、排出管40と、板バネ50とを備えている。複数の冷却管20は、互いに隙間GPを空けて一方向に沿って並ぶように配置されており、それぞれの隙間GPに一枚の半導体モジュールSMを挟み込んでいる。つまり、複数の冷却管20と半導体モジュールSMとが一方向に沿って交互に並べられ積層されている。
電気自動車に搭載されているラジエータ(不図示)と積層型冷却器10との間では冷却水が循環しており、それぞれの冷却管20の内部には、当該冷却水が通る流路FC(図1では不図示)が形成されている。冷却管20の内部を流れる冷却水と半導体モジュールSMとの間で熱交換が行われて、半導体モジュールSMが冷却される。
尚、図1においては、冷却管20と半導体モジュールSMとが積層されている方向であって、供給管30側から板バネ50側に向かう方向をx方向としてx軸を設定している。また、x方向に対して垂直な方向であって、排出管40側から供給管30側に向かう方向をy方向としてy軸を設定している。更に、x方向及びy方向のいずれに対しても垂直な方向であって、紙面手前側に向かう方向をz方向としてz軸を設定している。以降の図面においても、同様にしてx軸、y軸、z軸を設定している。
電力変換装置PCUは計12枚の半導体モジュールSMを備えており、それぞれの半導体モジュールSMの形状は互いに同一となっている。半導体モジュールSMは、パッケージ部SMaと、電極端子SMbと、制御端子SMc(図1では不図示)とを有している。パッケージ部SMaは、スイッチング素子等の電子部品を内部に収納する部分であって、矩形の薄板形状をなしている。それぞれの半導体モジュールSMは、パッケージ部SMaの主面の法線がx軸に沿うように配置されており、x軸に沿って見た場合において互いに全体が重なるように配置されている。
電極端子SMbは、電力変換装置PCUが取り扱う電力を入出力するための端子であり、パッケージ部SMaからz方向に向かって延びるように形成されている。それぞれの半導体モジュールSMは3本の電極端子SMbを有している。
制御端子SMcは、パッケージ部SMa内のスイッチング素子に対する制御信号を入出力するための端子であり、パッケージ部SMaから−z方向に向かって延びるように形成されている。図5に示されるように、それぞれの半導体モジュールSMは10本の制御端子SMcを有している。制御端子SMcは、電力変換装置PCUが備える制御基板(不図示)に接続される。
積層型冷却器10は計13個の冷却管20を備えている。それぞれの冷却管20は、x軸に沿って見た場合において互いに全体が重なるように配置されている。これら複数の冷却管20のうち、最もx方向側の端部に配置されているもの(以下、「端部冷却管120」とも表記する)以外のものは、全て同一の構造となっている。このため、まず端部冷却管120以外の冷却管20の構造について説明する。
図1及び図2に示されるように、冷却管20は、x方向側に配置された第1プレート21と、−x方向側に配置された第2プレート22と、によってその外郭が形成された管である。第1プレート21は、x軸に沿って見た場合における外縁部の近傍を除いた大部分が、平板状の平板部21aとなっている。平板部21aは、その表面がx軸に対して垂直となるように配置されており、x方向側に隣り合う半導体モジュールSMのパッケージ部SMaのうち−x方向側の主面の略全体に当接している。
第2プレート22は、x軸に沿って見た場合における外縁部の近傍を除いた大部分が、平板状の平板部22aとなっている。平板部22aは、その表面がx軸に対して垂直となるように配置されており、−x方向側に隣り合う半導体モジュールSMのパッケージ部SMaのうちx方向側の主面の略全体に当接している。
第1プレート21の平板部21aと、第2プレート22の平板部22aとは、x方向に沿って互いに離間しており、両者の間に形成された空間が冷却水の流路FCとなっている。第1プレート21と第2プレート22とは、流路FCを通る冷却水が外部に漏えいしないよう、x軸に沿って見た場合における外縁部の全周において互いにろう接されている。
第1プレート21のうちy方向側の端部近傍には、平板部21aからx方向側に向かって延びる円筒状の外側突出管部21bが形成されている。外側突出管部21bの先端部分(x方向側の端部)は、他の部分に比べて拡径している。外側突出管部21bの内部空間は流路FCに通じている。
第2プレート22のうちy方向側の端部近傍には、平板部22aから−x方向側に向かって延びる円筒状の内側突出管部22bが形成されている。内側突出管部22bの先端部分(−x方向側の端部)は、他の部分に比べて縮径している。内側突出管部22bの先端部における外径は、外側突出管部21bの先端部における内径よりも小さい。内側突出管部22bの内部空間は流路FCに通じている。
尚、第1プレート21は、y方向に沿った一方側の形状と他方側の形状とが互いに対称となっており、−y方向側の端部近傍にも外側突出管部21bが形成されている。同様に、第2プレート22は、y方向に沿った一方側の形状と他方側の形状とが互いに対称となっており、−y方向側の端部近傍にも内側突出管部22bが形成されている。
図2に示されるように、外側突出管部21bの内側には、x方向側に配置された他の冷却管20の内側突出管部22bが挿入されている。外側突出管部21bの内周面と内側突出管部22bの外周面とは互いに当接しており、当該当接部分において両者がろう接されている。このような構成により、全ての冷却管20が互いに接合されて一体となっている。また、それぞれの冷却管20の内部に形成された流路FCの全てが、内側突出管部22b及び外側突出管部21bによって互いに連通されている。
第1プレート21と第2プレート22との間、すなわち冷却管20の内部には、平板である第3プレート23が配置されている。第3プレート23は、x軸に沿って見た場合における外形が第1プレート21及び第2プレート22の外形と略同一の平坦な金属板であり、その表面がx軸に対して垂直となるように配置されている。第3プレート23は、その外縁部において第1プレート21及び第2プレート22にろう接されている。
第3プレート23のうち、内側突出管部22b及び外側突出管部21bに対向する部分には、円形の貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aは、第3プレート23のうちy方向側の端部近傍及び−y方向側の端部近傍の両方に形成されている。流路FCは第3プレート23によって二つに分かれるように仕切られているのであるが、これら二つの流路は貫通孔23aを介して連通されている。
流路FCのうち、x軸に沿って見た場合においてパッケージ部SMaと重なる部分には、インナフィン25が配置されている。インナフィン25は波型に形成された金属板であり、第3プレート23と平板部21aとの間、及び第3プレート23と平板部22aとの間にそれぞれ配置されている。インナフィン25により、第1プレート21及び第2プレート22と、流路FCを流れる冷却水との間における伝熱が促進される。
続いて、図3を参照しながら、x方向側の端部に配置された冷却管20である端部冷却管120の構造について説明する。端部冷却管120は、第1プレート21の形状において他の冷却管20と異なっており、その他の構成、すなわち第2プレート22や第3プレート23の形状等については他の冷却管20と同一である。このため、以下では端部冷却管120の第1プレート21のことを第1プレート121と表記し、第1プレート121の形状についてのみ説明を行う。
第1プレート121は、端部冷却管120のうちx方向側の外郭を形成する部品である。つまり、端部冷却管120のうち他の冷却管120とは向き合わない側に配置された部品である。第1プレート121は、x軸に沿って見た場合における外縁部(第2プレート22にろう接されている部分)の近傍を除いた大部分が、平板状の平板部121aとなっている。平板部121aは、その主面の法線がx軸に沿うように配置されている。
他の端部冷却管120と同様に、第1プレート121の平板部121aと、第2プレート22の平板部22aとは、x方向に沿って互いに離間しており、両者の間に形成された空間が冷却水の流路FCとなっている。第1プレート121と第2プレート22とは、流路FCを通る冷却水が外部に漏えいしないよう、x軸に沿って見た場合における外縁部の全周において互いにろう接されている。
端部冷却管120の内部において、平板部121aと第3プレート23との距離は、他の冷却管20の内部における平板部21aと第3プレート23との距離に等しい。端部冷却管120の内部に形成された流路FCの形状は、他の冷却管20内部に形成された流路FCの形状と略等しくなっている。
一方、平板部121aの厚さ(x軸に沿った寸法)は、他の冷却管20の平板部21aの厚さよりも厚くなっており、端部冷却管120の構成はこの点において他の冷却管20の構成と異なっている。平板部121aが厚くなっていることにより、端部冷却管120の剛性、特にx方向側の部分の剛性は、他の冷却管20の剛性よりも高くなっている。
また、他の冷却管20の第1プレート21と異なり、第1プレート121には外側突出管部21bが形成されていない。平板部121aは、その全体が、凹凸や貫通孔等の形成されていない平坦な板となっている。この点においても、端部冷却管120の構成は他の冷却管20の構成と異なっている。
図1に戻って説明を続ける。供給管30は、それぞれの冷却管20の流路FCにラジエータからの冷却水を供給するための配管である。供給管30は、−x方向側の端部に配置された冷却管20のうち、y方向側の内側突出管部22bに接続されている。
排出管40は、それぞれの冷却管20の流路FCから冷却水を排出し、ラジエータに戻すための配管である。排出管40は、−x方向側の端部に配置された冷却管20のうち、−y方向側の内側突出管部22bに接続されている。
電力変換装置PCUの動作中においては、ラジエータからの冷却水が供給管30の内部をx方向側に向かって流れて、内側突出管部22b及び外側突出管部21bの内部を通ってそれぞれの冷却管20の流路FCに供給される。冷却水は、それぞれの流路FCを−y方向側に向かって流れながら半導体モジュールSMからの熱を奪う。その後、冷却水は内側突出管部22b及び外側突出管部21bの内部を通って排出管40に到達し、排出管40の内部を−x方向側に向かって流れてラジエータに戻る。
板バネ50は、z軸に沿って見た場合の形状が略円弧状となるように形成された金属板であり、端部冷却管120のx方向側に配置されている。図4に示されるように、板バネ50は、中央部が−x方向側に向かって突出するような大きな円弧状に形成された主部51と、主部51のy方向側端部に繋がる部分であって、中央部がx方向側に向かって突出するような小さな円弧状に形成された第1副部52と、主部51の−y方向側端部に繋がる部分であって、中央部がx方向側に向かって突出するような小さな円弧状に形成された第2副部53とを有している。
板バネ50は、端部冷却管120に対して−x方向に圧縮力を加えることにより、全ての冷却管20と半導体モジュールSMとを密着させた状態、すなわち、全ての半導体モジュールSMが均等に冷却される状態を維持するためのものである。
電力変換装置PCUが収納されるケース60には、その底面65に3つの固定ブロック61、62、63が固定されている(図1及び図6を参照)。固定ブロック61は、供給管30と排出管40との間となる位置においてケースの底面65に固定されている。固定ブロック61のうちx方向側の面61aは、その法線がx軸に沿った平坦な面となっている。この面61aが、最も−x方向側の端部に配置された冷却管20の平板部22aに当接している。
固定ブロック62は、端部冷却管120よりもx方向側となる位置においてケースの底面65に固定されている。固定ブロック62のうち−x方向側の面62aは、その法線がx軸に沿った平坦な面となっている。
固定ブロック63は、固定ブロック62と同一形状のブロックであって、固定ブロック62よりも−y方向側となる位置に配置されている。固定ブロック63は、端部冷却管120よりもx方向側となる位置においてケースの底面65に固定されている。固定ブロック63のうち−x方向側の面63aは、その法線がx軸に沿った平坦な面となっている。面62aと面63aとは、それぞれのx方向における位置が同一となっている。換言すれば、面62aと面63aとが同一の平面上に配置されている。
固定ブロック63、64と端部冷却管120との間には、スペーサ70が配置されている。スペーサ70は、板バネ50の変形量(すなわち圧縮力)が適切な大きさとなるように、板バネ50と固定ブロック63、64との間に介挿されている板材である。スペーサ7のうちx方向側の面71は、その法線がx軸に沿った平坦な面となっている。この面71が、固定ブロック62の面62a及び固定ブロック63の面63aの両方に当接している。
固定ブロック62の面62aは、その中央部がx方向側に後退しており、凹部62bが形成されている。また、スペーサ70のうち凹部62bと対向する部分には、x方向側に突出する凸部72が形成されている。スペーサ70の面71と固定ブロック62の面62aが当接している状態においては、凸部72が凹部62bの内部に収容されている。同様に、固定ブロック63の面63aは、その中央部がx方向側に後退しており、凹部63bが形成されている。また、スペーサ70のうち凹部63bと対向する部分には、x方向側に突出する凸部73が形成されている。スペーサ70の面71と固定ブロック63の面63aが当接している状態においては、凸部73が凹部63bの内部に収容されている。このような構成により、スペーサ70の位置がy方向にずれてしまうことが抑制されている。
スペーサ70のうち−x方向側の面74は、その法線がx軸に沿った平坦な面となっている。スペーサ70の面74と端部冷却管120とは互いに離間しており、板バネ50はこれらの間に配置されている。
板バネ50は、主部51の曲率半径が(外力を受けていない時よりも)大きくなるように弾性変形させられた状態で、スペーサ70と端部冷却管120との間に配置されている。第1副部52及び第2副部53はスペーサ70の面74に当接している。また、主部51は、端部冷却管120の第1プレート121に当接している。具体的には、第1プレート121のうちy方向に沿った中央となる位置であり、且つz方向に沿った中央となる位置において、主部51が第1プレート121に当接している。
上記のように板バネ50が配置された結果、板バネ50の復元力により、端部冷却管120には−x方向側に圧縮力が加えられている。当該圧縮力によって、全ての冷却管20と半導体モジュールSMとが密着している状態、すなわち、全ての半導体モジュールSMが均等に冷却される状態が維持されている。
板バネ50による圧縮力は、第1プレート121の全体(全面)に対して加えられるのではなく、第1プレート121と主部51との当接部分において局所的に加えられる。その結果、第1プレート121のうち当接部分には高い圧力が加えられている。しかしながら、第1プレート121は他の冷却管20の第1プレート21に比べて肉厚となっているため、当該圧力が加えられていても変形してしまうことはない。第1プレート121の形状が維持されることにより、第1プレート121を介して伝達される圧縮力は、一部に偏って加えられてしまうことはなく、全ての冷却管20及び半導体モジュールSMに対して均等に加えられる。その結果、冷却管20と半導体モジュールSMとの密着が積層型冷却器10の全体において確実に確保される。
このように、本実施形態においては、肉厚となっている第1プレート121が、板バネ50からの圧縮力を直接受けるための部材、すなわち受圧プレートとして機能する。また、当該受圧プレート(第1プレート121)は、端部冷却管120を構成する部品であるから、端部冷却管120と一体に形成されているということもできる。
本実施形態では、このような構成により、電力変換装置PCUを組み立てる際において、受圧プレートを適切な位置に位置決めし配置するための工程、すなわち、受圧プレートと端部冷却管120との相対的な位置関係が適切となるように調整するための工程を設ける必要がない。また、受圧プレートを端部冷却管120とは別の部品として用意しておく必要がないため、部品点数が増加してしまうこともない。
第1プレート121のx方向側の面のうちy方向に沿った中央部分であり、且つz方向に沿った中央部分には、円形の凹部121bが形成されている(図5を参照)。また、板バネ50の主部51のうちy方向に沿った中央部分であり、且つz方向に沿った中央部分には、−x方向側に向けて突出する円柱形上の凸部54が形成されている(図4を参照)。板バネ50による圧縮力が第1プレート121に加えられている状態においては、凸部54が凹部121bの内部に収容されている。また、板バネ50の主部51のうち、凹部121bの周囲の部分が、第1プレート121に当接している。
このような構成により、板バネ50と端部冷却管120との当接位置が、y方向に沿ってずれてしまうことはなく、z方向に沿ってずれてしまうこともない。つまり、凹部121bは本発明の「位置ずれ記載部」として機能するものである。その結果、板バネ50からの圧縮力は、常に端部冷却管120の中央部対して加えられることになる。このため、圧縮力が偏って加えられてしまうことが抑制され、積層型冷却器10の全体において冷却管20と半導体モジュールSMとの密着状態が確実に確保される。
電力変換装置PCUの組み立て工程の一部について簡単に説明する。既に説明したように、積層型冷却器10は複数の冷却管20が互いにろう接されて一体となった構成となっている。このろう接が完了した直後の状態においては、冷却管20同士の隙間GPは半導体モジュールSMの厚さよりも大きくなっている。
冷却管20同士がろう接されて一体となった後、それぞれの隙間GPに半導体モジュールSMが挿入されて、全体がx方向に沿って仮圧縮される。仮圧縮により、それぞれの冷却管20の第1プレート21及び第2プレート22が僅かに変形して、それぞれの隙間GPが小さくなる。その結果、それぞれの冷却管20と半導体モジュールSMとが互いに密着した状態(半導体モジュールSMが冷却管20の間に保持された状態)となる。
仮圧縮は、積層型冷却器10をケース60の内部に配置した状態で行われる。具体的には、積層型冷却器10をケース60の底面65上に設置して、最も−x方向側の端部に配置された冷却管20の平板部22aを固定ブロック61の面61aに当接させた状態で行われる。
上記のような状態とされた後、圧縮治具90により端部冷却管120がx方向に向けて加圧される(図6を参照)。圧縮治具90は、主面91が端部冷却管120と対向するように配置されたプレートであり、不図示の圧縮機構によりx軸に沿って移動可能となっている。圧縮機構の駆動力(圧縮力)が、圧縮治具90を介して端部冷却管120に加えられる。
ところで、それぞれの冷却管20と半導体モジュールSMとを確実に密着させるためには、仮圧縮において全ての冷却管20を均等に変形させる必要がある。しかしながら、端部冷却管120のうち圧縮治具90が当接している部分が局所的に変形してしまうと、圧縮力が他の冷却管20に均等には加えられなくなり、例えば一部の冷却管20が変形せず、当該冷却管20と半導体モジュールSMとの密着が不十分となってしまう可能性がある。
このため、従来のように端部冷却管の全体が(他の冷却管20と同様に)薄肉の金属板で形成されている場合には、端部冷却管が圧縮治具との当接部分において局所的に変形しないよう、端部冷却管のうちx方向側の面全体に対して圧縮治具を当接させる必要があった。このため、圧縮治具が大型化してしまっていた。
これに対し、本実施形態においては、端部冷却管120の第1プレート121が肉厚となっている。つまり、圧縮治具90が当接する部品である第1プレート121の剛性が高くなっている。このため、圧縮治具90を小型化し、端部冷却管120の全体ではなく一部のみに圧縮治具90を当接させることとしても、端部冷却管120の局所的な変形が生じにくくなっている。
そこで、本実施形態においては、圧縮治具90に二つの切欠き92、93が形成されており、これにより圧縮治具90が小型化、軽量化されている。切欠き92は、−z方向側の端部からz方向側に向かって圧縮治具90の一部を切欠くことにより、x軸に沿って見た場合において固定ブロック62と圧縮治具90とが重ならないように形成されている。切欠き93は、−z方向側の端部からz方向側に向かって圧縮治具90の一部(切欠き92よりも−y方向側の部分)を切欠くことにより、x軸に沿って見た場合において固定ブロック63と圧縮治具90とが重ならないように形成されている。
圧縮治具90には上記のような切欠き92、93が形成されているため、固定ブロック62、63と端部冷却管120との隙間が圧縮治具90の厚さよりも狭い場合であっても、圧縮治具90による仮圧縮を行うことが可能となっている。つまり、圧縮治具90と固定ブロック62、63とを干渉させることなく、圧縮治具90を上方側(z方向側)から挿入し、端部冷却管120に当接させて仮圧縮を行うことが可能となっている。
図6に示されるような圧縮治具90の形状はあくまで一例であって、固定ブロックの形状や配置、端部冷却管120の周囲に配置されたその他の構成部材の形状等に応じて、これらとの干渉を避けるように圧縮治具90の形状は適宜変更すればよい。本実施形態においては、端部冷却管120の第1プレート121が肉厚となっており、その全面に圧縮治具90を当接させる必要がないため、圧縮治具90の形状の自由度が高くなっている。
仮圧縮が完了すると、圧縮治具90がケース60の外部に移動される。続いて、図1に示されるようにスペーサ70が配置され、スペーサ70と端部冷却管120との間に板バネ50が配置される。このとき、凸部54が凹部121bの内部に収容されるように位置合わせされる結果、板バネ50が適切な位置に配置される。
続いて、本発明の第2実施形態に係る積層型冷却器10Aについて、図7を参照しながら説明する。積層型冷却器10Aは、板バネ50の代わりに8つのコイルばね51Aが配置されている点、及び端部冷却管120Aの形状において積層型冷却器10と異なっているが、他の構成については積層型冷却器10と同一である。
8つのコイルばね51Aは、いずれもx方向に沿って圧縮された状態で、スペーサ70と端部冷却管120Aとの間に配置されている。端部冷却管120Aには、これらコイルばね51Aの復元力によって−x方向側に圧縮力が加えられている。当該圧縮力によって、全ての冷却管20と半導体モジュールSMとが密着している状態、すなわち、全ての半導体モジュールSMが均等に冷却される状態が維持されている。
端部冷却管120Aは、第1プレート121Aに凹部121bが形成されていない点、及び第1プレート121Aに凹部121Abが形成されている点において端部冷却管120と異なっているが、他の構成については端部冷却管120である。
凹部121Abは、第1プレート121Aのx方向側の面に形成された窪みであって、x方向に沿って見た場合の外形が8つのコイルばね51A全体の外形よりも僅かに大きくなるように形成されている。コイルばね51Aのうち−x方向側の端部近傍は、凹部121Abの内部に収納されている。コイルばね51Aは、凹部121Abの底面に当接している。
このような構成により、コイルばね51Aと端部冷却管120Aとの当接位置がy方向に沿ってずれてしまうことはなく、z方向に沿ってずれてしまうこともない。その結果、圧縮力が端部冷却管120A偏って加えられてしまうことが抑制されるため、冷却管20と半導体モジュールSMとの密着状態が確実に確保される。
本実施形態においては、端部冷却管120Aに圧縮力を加えるための部材(加圧部材)として、板バネ50の代わりに8つのコイルばね51Aが用いられている。本発明の加圧部材としてはこのような例に限定される必要はなく、例えば、コイルばね51Aの代わりに皿バネが用いられてもよい。
続いて、本発明の第3実施形態に係る積層型冷却器10Bについて、図8を参照しながら説明する。積層型冷却器10Bは、端部冷却管120Bの形状において積層型冷却器10と異なっているが、他の構成については積層型冷却器10と同一である。
端部冷却管120Bは、第1実施形態の端部冷却管120と同程度の厚さ(x軸に沿った寸法)を有する扁平形状の管となっている。x方向に沿って見た場合においては、端部冷却管120Bの外形と端部冷却管120の外形とは略同一である。
端部冷却管120Bのうちy方向側の端部近傍、及び−y方向側の端部近傍には、−x方向側に向かって延びる円筒状の内側突出管部23Bbが形成されている。これら2つの内側突出管部22Bbの形状及び機能は、他の冷却管20に形成された内側突出管部22bの形状及び機能と同一である。
端部冷却管120Bの内部には流路FCBが形成されている。流路FCBは、他の冷却管20に形成された流路FCと同一形状の空間である。第1実施形態における端部冷却管120の場合と同様に、冷却水はy方向側の内側突出管部23Bbを通って流路FCBに流入する。冷却水は、流路FCBを−y方向に向かって流れた後、−y方向側の内側突出管部23Bbを通って流路FCBから流出する。
流路FCBは、端部冷却管120Bのうちx方向における中央となる位置に形成されている。その結果、端部冷却管120Bは、板バネ50に当接する部分(x方向側の部分:符号121B)のみが肉厚となっているのではなく、半導体モジュールに当接する部分(−x方向側の部分:符号122B)も肉厚となっている。このように、本発明の実施の態様としては、端部冷却管の一部のみではなく全体を肉厚の板によって構成し、端部冷却管の剛性を高くするような態様であってもよい。
続いて、本発明の第4実施形態に係る積層型冷却器10Cについて、図9を参照しながら説明する。積層型冷却器10Cは、端部冷却管120Cの形状、及び端部冷却管120Cに補強プレート200Cが接合されている点において積層型冷却器10と異なっているが、他の構成については積層型冷却器10と同一である。
本実施形態においては、端部冷却管120Cの形状が他の冷却管20の形状と同一となっている。つまり、第1プレート121Cは肉厚となっておらず、他の冷却管20の第1プレート21と同じ厚さの金属板により形成されている。
補強プレート200Cは、x方向に沿って見た場合の外形が冷却管20の外形と略等しい金属板である。補強プレート200Cには、y方向に沿った中央部から端部冷却管120Cに向かって突出する当接部210Cが形成されている。
当接部210Cの形状は、導体モジュールSMのパッケージ部SMaの形状と略等しい。当接部210Cのうち−x方向側の面211Cは、その法線方向がx軸に沿う平坦な面となっている。また、面211Cの全体が第1プレート121Cに当接しており、当該当接部分の全体において補強プレート200Cと第1プレート121Cとがろう接されている。その結果、端部冷却管120Cと補強プレート200Cとが一体となっている。
補強プレートのうちx方向側の面201Cは、その法線方向がx軸に沿う平坦な面となっている。板バネ50の主部51は、面201Cの中央部分に当接しており、当該部分に圧縮力を加えている。
本実施形態においては、肉厚となっている補強プレート200Cが、板バネ50からの圧縮力を直接受けるための部材、すなわち受圧プレートとして機能する。また、当該受圧プレート(補強プレート200C)と端部冷却管120Cとは一体となっている。その結果、板バネ50に直接当接されている部分の剛性が(他の冷却管20の剛性よりも)高くなっているため、第1実施形態で説明した効果と同一の効果を奏する。
補強プレート200Cのうち当接部210Cよりもy方向側の部分には、端部冷却管120Cに向かって突出する内側突出管部220Cが形成されている。また、補強プレート200Cのうち当接部210Cよりも−y方向側の部分には、端部冷却管120Cに向かって突出する内側突出管部230Cが形成されている。
これら内側突出管部220C及び内側突出管部230Cの形状及び機能は、冷却管20に形成された内側突出管部22bの形状及び機能と同一である。すなわち、内側突出管部220C及び内側突出管部230Cは、いずれも円柱形状であり、その中心軸がx軸に沿うように配置されている。内側突出管部220Cの中心軸は、供給管30の中心軸と一致している。内側突出管部230Cの中心軸は、排出管40の中心軸と一致している。内側突出管部220Cの先端部近傍は、端部冷却管120Cから突出する外側突出管部21Cbに挿入されている。外側突出管部21Cbの内周面と内側突出管部220Cの外周面とは互いに当接しており、当該当接部分において両者がろう接されている。
また、内側突出管部230Cの先端部近傍は、端部冷却管120Cから突出する外側突出管部21Cbに挿入されている。外側突出管部21Cbの内周面と内側突出管部230Cの外周面とは互いに当接しており、当該当接部分において両者がろう接されている。
補強プレート200Cのうちy方向側の部分には、補強プレート200Cをx軸に沿って貫く貫通孔250Cが形成されている。貫通孔250Cは、x方向に沿って見た場合の形状が円形をなす孔であり、その中心軸は内側突出管部220Cの中心軸と一致している。貫通孔250Cの内部空間は、内側突出管部220C及び外側突出管部21Cbを介して端部冷却管120Cの流路FCに通じている。
貫通孔250Cには、円筒形状の配管であるメンテナンス用配管300Cが挿入されている。メンテナンス用配管300Cは、その中心軸がx軸に沿うように配置されており、−x方向側の一端が貫通孔250C内に挿入されている。メンテナンス用配管300Cの外径は、貫通孔250Cの内径に略等しい。メンテナンス用配管300Cの外周面のうち、x方向側の端部近傍の部分は、その全体が貫通孔250Cの内面に当接している。メンテナンス用配管300Cは貫通孔250Cに圧入されており、両者の間が水密に保たれている。メンテナンス用配管300Cの内部空間は、貫通孔250Cの内部空間及び端部冷却管120Cの流路FCに通じている。
メンテナンス用配管300Cのうちx方向側の部分には、不図示のバルブが接続される。通常時においては、冷却水がメンテナンス用配管300Cを通じて外部に漏出しないよう、上記バルブは常に閉じられた状態となっている。つまり、メンテナンス用配管300Cの内部は冷却水が循環する流路とはなっていない。メンテナンス用配管300Cは、流路FCの内部に空気が溜まった際において、当該空気を外部に排出するための配管である。また、積層型冷却器10Cとラジエータとの間を循環する冷却水の交換を、メンテナンス用配管300Cを介して行うことも可能となっている。
一般に、メンテナンス用配管300Cのような空気を外部に排出するための配管は、冷却水が循環する流路のうち最も高い場所(空気がたまりやすい場所)に接続される必要がある。従って、積層型冷却器がそのような場所に設置された場合には、本実施形態のようにメンテナンス用配管を積層型冷却器に接続する必要がある。
しかしながら、従来のような積層型の冷却器は、全ての冷却管が薄肉の金属板で形成されていたため、メンテナンス用配管を積層型冷却器に接続することができなかった。その理由は、メンテナンス用配管が冷却管に接続された構成とすると、メンテナンス用配管を介して冷却管に外力が加えられてしまい、これにより冷却管が変形してしまう可能性があったからである。
これに対し、本実施形態では、肉厚の補強プレート200Cが端部冷却管120Cと一体となっているため、積層型冷却器10Cにメンテナンス用配管300Cを接続することが可能となっている。つまり、メンテナンス用配管300Cと端部冷却管120Cとの接続部分が、補強プレート200Cによって補強されているから、メンテナンス用配管300Cを介して外力が加えられても端部冷却管120Cが変形してしまうことはない。
このように、本実施形態においては、積層型冷却器10Cにメンテナンス用配管300Cを接続することが可能となったことにより、冷却水が循環する流路のうち最も高い場所に積層型冷却器10Cを配置することが可能となっている。つまり、電気自動車の内部における積層型冷却器10Cの配置の自由度が高くなっている。
尚、このようなメンテナンス用配管300Cは、補強プレート200Cを有する場合に限られず、例えば第1実施形態として説明した積層型冷却器10の端部冷却管120に対しても接続することが可能である。
この場合、図10に示されるように、端部冷却管120の第1プレート121に貫通孔125を形成し、当該貫通孔にメンテナンス用配管300Cの端部を挿入した状態で、端部冷却管120とメンテナンス用配管300Cとをろう接すればよい。このような構成であっても、上記の第4実施形態と同一の効果を奏することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。