以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(形状測定装置の一例について)
本発明の実施形態に係るマーキング装置について詳細に説明するに先立ち、本発明の実施形態に係るマーキング装置が適用可能な形状測定装置の一例について、具体的に説明する。
本発明の実施形態に係るマーキング装置は、上記特許文献1に開示された装置が備える倣いローラの近傍や、上記特許文献2に開示された装置が備えるセンサの近傍など、公知の形状測定装置において、鋼管の側面に沿って移動しながら鋼管の形状を測定する測定機構の近傍に設けられることで、その機能を発現するものである。そのため、本発明の実施形態に係るマーキング装置が実装される形状測定装置は、特に限定されるものではない。
しかしながら、以下で詳述する形状測定装置10に対して本発明の実施形態に係るマーキング装置を実装することによって、鋼管の形状を精密に測定しつつ、形状プロファイルの原点を正確にマーキングすることが可能となる。
<形状測定装置の概要について>
以下で詳述する形状測定装置は、被測定材である管の中心軸方向に移動可能な基台と、上記基台に上下動可能に保持される装置本体と、上記装置本体に回転可能に保持され、該回転角度の検出器を有する回転体と、上記回転体に径方向に移動可能に保持され、外面側アーム及び内面側アームを支持するアーム支持体と、上記アーム支持体の位置を検出するアーム位置検出器と、径方向に移動可能な外面ローラを付勢して上記管の外面に倣わせ、上記外面側アームに配設される外面倣い機構と、上記外面ローラの位置を検出する外面ローラ位置検出器と、径方向に移動可能な内面ローラを上記管の内面のうちで上記外面ローラの反対側の位置に付勢して倣わせ、上記内面側アームに配設される内面倣い機構と、上記内面ローラの位置を検出する内面ローラ位置検出器と、上記基台の移動、上記装置本体の上下動、上記回転体の回転及び上記アーム支持体の移動を制御する制御手段と、上記回転体を回転させた状態で所定の角度ごとに上記外面ローラ位置検出器及び上記アーム位置検出器で検出した値から外半径を算出するとともに、上記内面ローラ位置検出器及び上記アーム位置検出器で検出した値から内半径を算出し、算出した外半径及び内半径並びに上記回転体の角度からなるプロフィールデータを出力する自動測定手段と、を備える管端部の形状測定装置として機能するものである。
また、上記外面倣い機構は、上記管の外面に上記外面ローラを付勢するためのコイルばねを有し、上記内面倣い機構が、上記管の内面に上記内面ローラを付勢するためのコイルばねを有していてもよい。
また、上記形状測定装置は、更に、上記外面ローラ位置検出器、上記内面ローラ位置検出器及び上記アーム位置検出器を校正するために用いられる校正用管と、上記校正用管を保持する校正用管保持手段と、上記校正用管保持手段に保持された校正用管を測定可能な位置に配置するために上記校正用管保持手段を移動させる校正用移動手段と、上記校正用管を所定の角度ごとに外半径及び内半径を測定した測定データと、別の測定装置によって上記校正用管を所定の角度ごとに外半径及び内半径を測定して得た校正用データとの差異を所定の角度ごとに求めて差異データを作成する差異データ作成手段と、被測定材を測定することによって出力される上記プロフィールデータに上記差異データを加算する校正手段と、を備えてもよい。
また、上記形状測定装置は、更に、上記プロフィールデータから、下記(a)〜(d)の項目のうちで1以上の項目を演算するプロフィール演算手段を備えてもよい。
(a)角度及び外半径からその中心を求め、求めた中心に対する角度及び外半径で構成される外径芯外半径プロフィール
(b)角度及び外半径からその中心を求め、求めた中心に対する角度及び内半径で構成される外径芯内半径プロフィール
(c)角度及び内半径からその中心を求め、求めた中心に対する角度及び外半径で構成される内径芯外半径プロフィール
(d)角度及び内半径からその中心を求め、求めた中心に対する角度及び内半径で構成される内径芯内半径プロフィール
また、上記形状測定装置は、更に、測定精度を確認するために用いられる精度確認用管と、上記精度確認用管を測定することによって出力される上記プロフィールデータに上記差異データを加算して出力するチェックデータ作成手段と、を備えてもよい。
また、上記形状測定装置を用いて管端部の形状を測定する方法としては、上記装置本体を上下動させて上記回転体の回転軸を被測定材である管の中心軸の高さと略一致させるステップと、上記アーム支持体を径方向に移動させ、上記管の外面が上記外面ローラの径方向に移動可能な範囲に位置し、かつ、上記管の内面が上記内面ローラの径方向に移動可能な範囲に位置した状態とするステップと、上記基台を上記管の中心軸方向に移動させ、上記外面ローラを上記管の外面に接触させるとともに、上記内面ローラを上記管の外面に接触させるステップと、上記自動測定手段によってプロフィールデータを得るステップと、を、これらの順に行う形状測定方法が挙げられる。
ここで、上記アーム支持体を径方向に移動させて管の外面が外面ローラの移動可能な範囲に位置し、かつ、管の内面が内面ローラの径方向に移動可能な範囲に位置した状態とする際に、上記管の内径に応じて上記アーム支持体の移動を調整し、上記内面側アームが上記管と干渉するのを防止するようにしてもよい。
<形状測定装置の詳細な構成について>
図1は、本発明に係るマーキング装置を好適に実装可能な形状測定装置の構成例を示す模式図である。図1では、管端部の形状測定装置(以下、単に「形状測定装置」ともいう。)10と、中心軸90aを水平にした状態で搬送される管90と、管90を中心軸方向に搬送する搬送装置の複数のローラ91と、が図示されている。
図1に示す形状測定装置10は、ベッド20、基台30、装置本体40、回転体41、アーム支持体50、外面側アーム51、内面側アーム52、校正用管81、校正用管保持台82及び保持台ベッド83を備える。基台30は、走行台車部31と外枠部32とで構成される。走行台車部31は、車輪及びその回転を駆動する駆動装置(図示せず、例えばモーター等)を有する。基台30は、駆動装置により車輪が回転し、ベッド20に配設されたレール(図示せず)の案内に従って走行台車部31が走行することにより、管90の中心軸方向に移動可能である。
外枠部32は、装置本体40を保持し、保持される装置本体40は、外枠部32に配設されたガイドレール(図示せず)の案内により、上下動が可能である。また、装置本体40の上下動を駆動するため、駆動装置(図示せず、例えば油圧シリンダ等)が外枠部32に設けられる。装置本体40は、回転体41を回転可能に保持し、回転体41の回転を駆動する駆動装置(図示せず、例えばモーター等)を有する。また、回転体41は、回転軸周りの角度を検出する角度検出器(図示せず)を有する。
回転体41は、アーム支持体50を保持し、保持されるアーム支持体50は、回転体41に配設されたガイドレール(図示せず)の案内により、回転体の回転軸41aとの距離が変更可能(すなわち、径方向に移動可能)である。また、アーム支持体50には、アーム支持体50の径方向の位置を検出するアーム位置検出器(図示せず)が設けられる。このようなアーム支持体50は、外面側アーム51及び内面側アーム52を支持し、外面側アーム51には外面倣い機構が配設され、内面側アーム52には内面倣い機構が配設される。この外面倣い機構及び内面倣い機構の構成例について、以下で図2を参照しながら説明する。ここで、以下の説明において「径方向」は、別に記載がない限り、回転体の回転軸41aを中心とする径方向を意味する。
図2は、形状測定装置10が備える外面倣い機構及び内面倣い機構の構成例を示す模式図である。図2では、アーム支持体50、外面側アーム51、内面側アーム52、外面倣い機構60及び内面倣い機構70が図示されており、想像線により被測定材である管の断面形状が図示されている。外面側アーム51は、一端をアーム支持体50により支持され、他端側に外面倣い機構60が配設される。また、内面側アーム52は、一端をアーム支持体50により支持され、他端側に内面倣い機構70が配設される。
図2に示す外面倣い機構60は、外面ローラ61、フレーム62、2本のガイドレール63、コイルばね64及びばねケース65を備える。外面側アーム51には、2本のガイドレール63が配設され、この2本のガイドレール63の案内によって、フレーム62が径方向に移動可能である。このフレーム62は、外面ローラ61を回転可能に保持する。フレーム62の移動可能範囲(すなわち、外面ローラ61の移動可能範囲)は、2本のガイドレール63の長さLによって制限される。
一方、外面側アーム51には、板状の保持部51aが設けられており、この保持部51aには、外面にねじが形成された調整用棒51bが固定されている。この調整用棒51bは、ばねケース65に設けられた貫通孔に挿入され、調整用ナット66が取り付けられている。このようなばねケース65は、調整用棒51bの案内によって径方向に移動可能であるが、かかるばねケース65の移動は、調整用ナットによって制限される。
ばねケース65には、コイルばね64の一端が固定され、このコイルばね64の他端は、フレーム62に設けられた板状の受け部62aに固定される。このように設けられたコイルばね64が伸びようとすることにより、一端でばねケース65が調整用ナット66に押し付けられ、他端でフレーム62が付勢される。フレーム62の付勢に伴って外面ローラ61が付勢されて、管90の外面に押し当てられる。このように外面ローラ61が付勢されて管90の外面に押し当てられることにより、外面ローラ61は、管90の外面に倣って径方向に移動する。
図2に示す外面倣い機構60は、調整用ナット66を回すことにより、調整用ナット66が径方向に移動する。ばねケース65はコイルばね64により調整用ナット66に押し付けられているので、調整用ナット66の移動に伴ってばねケース65も径方向に移動する。調整用ナット66を回してばねケース65を外面ローラ61に近づくように移動させると、かかる移動に伴いコイルばね64が縮むことから、コイルばねが外面ローラを付勢する力(押付力)を増加させることができる。一方、ばねケース65を外面ローラ61から遠ざかるように移動させると、かかる移動に伴いコイルばね64が伸びることから、コイルばねが外面ローラを付勢する力(押付力)を減少させることができる。このように、図2に示す外面倣い機構60は、外面ローラを付勢する力(押付力)を調整する手段を有する。
内面倣い機構70は、外面倣い機構60と同様な構成であり、詳細な説明は省略するが、コイルばね64により内面ローラ71が付勢され、測定時には内面ローラ71が管の内面に押し当てられて、管の内面に倣って径方向に移動する。また、内面倣い機構70は、内面ローラを付勢する力(押付力)を調整する手段を有する。
外面側アーム51には、外面ローラ61の位置を検出する外面ローラ位置検出器(図示せず)が配設されている。また、内面側アーム52には、内面ローラ71の位置を検出する内面ローラ位置検出器(図示せず)が配設されている。
図1に示す形状測定装置10は、図示しないが、公知の制御手段を備え、かかる制御手段は、基台30の移動、装置本体40の上下動、回転体41の回転及びアーム支持体50の移動を、それぞれの駆動装置に信号を出力することにより制御する。
また、図1に示す形状測定装置10は、図示しないが、自動測定手段を備え、かかる自動測定手段は、回転体41を回転させた状態で所定の角度ごとに、外面ローラ位置検出器及びアーム位置検出器で検出した値から回転体の中心軸41aから管の外面までの距離(外半径)を算出するとともに、内面ローラ位置検出器及びアーム位置検出器で検出した値から回転体の中心軸41aから管の内面までの距離(内半径)を算出する。自動測定手段は、算出した外半径及び内半径並びに回転体41の角度からなるプロフィールデータを出力する。
このような構成例を採用可能な形状測定装置10は、制御手段及び自動測定手段を備えることから、管端部の形状を自動で測定することができる。また、かかる形状測定装置は、外面倣い機構60が外面ローラ61を有するとともに内面倣い機構70が内面ローラ71を有し、いわゆる、管にローラを倣わせる接触式である。このような接触式の形状測定装置で測定精度を確保するためには、測定時に、外面ローラ61及び内面ローラ71の押し付けによる管の変形を最小限に留めることが重要となる。
このため、かかる形状測定装置10は、外面ローラ61を管の外面に倣わせる一方で、内面ローラ71を管の内面のうちで外面ローラ61の反対側の位置で倣わせる。すなわち、外面ローラ61及び内面ローラ71は、管の同じ箇所を外面側及び内面側から挟み込むように配置される。これにより、管は、外面ローラから受ける力と内面ローラから受ける力とを同じ箇所に受け、両者の力は方向が相反することから、管の変形が低減できる。
ここで、外面ローラ61を管の外面に倣わせる機構として、外面側アーム51で外面ローラ61を回転可能に保持し、外面側アーム51を付勢することにより外面ローラ61を管の外面に倣わせる機構も考えられる。同様に、内面ローラ71を管の内面に倣わせる機構として、内面側アーム52で内面ローラ71を回転可能に保持し、内面側アーム52を付勢することにより内面ローラ71を管の内面に倣わせる機構も考えられる。
しかしながら、管の同じ箇所に外面ローラ61及び内面ローラ71を配置するため、これらローラを保持する外面側アーム51及び内面側アーム52は、回転体41の回転軸方向における長さがある程度必要となり、その重量が増加する。このため、測定時に管が外面ローラ61を介して外面側アーム51の重量による荷重を受けるとともに、内面ローラ71を介して内面側アーム52の重量による荷重を受け受ける。その結果、管が変形して形状測定精度が悪化する。
これに対し、上記形状測定装置10は、外面側アーム51に外面ローラ61を有する外面倣い機構60を配設するとともに、内面側アーム52に内面ローラ71を有する内面倣い機構70を配設する。これにより、管は、外面ローラ61を介して外面側アーム51の重量による荷重を受けることがないとともに、内面ローラ71を介して内面側アーム52の重量による荷重を受けることもない。その結果、荷重による管の変形を大幅に低減した状態で、外面ローラ61を管の外面に倣わすことができるとともに内面ローラ71を管の内面に倣わすことができ、管端部の形状測定精度を向上できる。
より具体的には、図2に示す外面倣い機構60では、フレーム62及び外面ローラ61の重量のみが管に荷重される。また、図2に示す内面倣い機構70では、フレーム62及び内面ローラ71の重量のみが管に荷重される。外面倣い機構60は外面側アーム51の一端側に配設されるとともに内面倣い機構70は内面側アーム52の一端側に配設されるので、フレーム62は、回転体41の回転軸方向における長さが外面側アーム51及び内面側アーム52に比べて著しく短く、顕著に軽量化が可能となる。このため、外面ローラ61及び内面ローラ71を介して管への荷重を低減することが可能となることで、測定時の荷重による管の変形を大幅に低減でき、管端部の形状測定精度を向上できる。
外面倣い機構及び内面倣い機構において、ローラやフレームといった重量により管端部の表面に荷重を発生させる部材の合計重量、並びに、外面ローラ及び内面ローラを付勢する力(押付力)は、被測定材である管の剛性や要求される測定精度に応じて適宜設定できる。
例えば、外径168.3〜426.0mm、内径150.0〜411.0mm、肉厚5.0〜50.0mmの鋼管の場合、測定時の管端部の変形を一定値以下に抑えるためには、管端部に加わる荷重F(kgf)を一定値以下に制限する必要がある。その荷重F(kgf)は、梁の曲げ応力の公式から求めることができる。ここで、外面倣い機構において管端部の表面に荷重を発生させる部材の合計重量をf1(kgf)とし、外面ローラの押付力をf2(kgf)とする。これら重量f1及び押付力f2によって管端部に加わる荷重は、図2に示す状態で最大となるので、重量f1及び押付力f2は、下記(1)式を満たす必要がある。
f1+f2≦F ・・・(1)
また、図2に示す状態から回転体を180°回転させた状態で外面ローラを管の外面に倣わすためには、f2>f1を満たす必要がある。これらから、重量f1は、少ない程好ましい。
一方、内面倣い機構において管端部の表面に荷重を発生させる部材の合計重量をf3(kgf)とし、内面ローラの押付力をf4(kgf)とする。これら重量f3及び押付力f4によって管端部に加わる荷重は、図2に示す状態から回転体を180°回転させた状態で最大となるので、重量f3及び押付力f4は、下記(2)式を満たす必要がある。
f3+f4≦F ・・・(2)
また、図2に示す状態で内面ローラを管の外面に倣わすためには、f4>f3を満たす必要がある。これらから、重量f3は、少ない程好ましい。
上記形状測定装置10は、管にローラを倣わせる接触式であることから、管端部の外面又は内面に水滴が付着している場合でも、精度よく測定を行うことができる。また、かかる形状測定装置10は、上下動可能な装置本体40により回転可能な回転体41が保持されることから、回転体の回転軸41aを、被測定材の管の中心軸90aと略一致するように調整すれば、段取り替えを行うことなく、様々な外径を有する管の端部の形状を測定できる。
上記形状測定装置10は、外面ローラ又は内面ローラを付勢するための手段として、ゴムといった弾性体やエアシリンダー、コイルばね等を採用することもできるが、図2に示すように、外面倣い機構が、管の外面に外面ローラを付勢するためのコイルばねを有し、内面倣い機構が、管の内面に内面ローラを付勢するためのコイルばねを有するのが好ましい。コイルばねは、広く流通しており容易に入手可能であるとともに、図2に示すように、付勢する力(押付力)を調整する手段を安価に実現できる。
上記形状測定装置10は、被測定材である管の内径によっては、内面側アーム52や内面倣い機構70と管の内面が干渉する可能性がある。測定可能な管の内径は、管内に挿入される部材の径方向の長さ、例えば図2に示す内面倣い機構70では、内面ローラ71の先端から調整用棒52bまでの径方向の距離D、により決定される。この距離Dは、内面ローラの移動可能範囲の影響を受け、内面ローラの移動可能範囲が長くなるほど、距離Dも大きくなる傾向を有する。
このため、上記形状測定装置10は、図2に示すように、内面倣い機構70の内面ローラ71の移動可能範囲より、外面倣い機構60の外面ローラ61の移動可能範囲を大きくするのが好ましい。すなわち、内面倣い機構70の内面ローラ71の移動可能範囲を小さくすることにより、距離Dを小さくして測定可能な管の内径の範囲を確保できる。また、内面倣い機構70の内面ローラ71の移動可能範囲を小さくするのに伴い、外面倣い機構60の外面ローラ61の移動可能範囲を大きくすれば、測定可能な管の肉厚の範囲が狭くなるのを回避できる。
続いて、図1に示す管端部の形状測定装置に設けられた校正機能について説明する。
図1に示す管端部の形状測定装置は、外面ローラ位置検出器、内面ローラ位置検出器及びアーム位置検出器を校正するために用いられる校正用管81と、校正用管81を保持する校正用管保持台82(校正用管保持手段)と、校正用管81を測定可能な位置に配置するために校正用管保持台82を移動可能に保持する保持台ベッド83と、を備える。
図1に示す保持台ベッド83には、校正用管保持台82の移動を案内するガイドレール(図示せず)と、校正用管保持台82の移動を駆動する駆動装置(図示せず、例えば油圧シリンダ等)と、が配設される。このような構成の保持台ベッド83は、校正用管保持台82を、前後方向(図1の紙面に垂直な方向)に移動可能に保持する。
搬送装置のローラ91により搬送された管端部の形状を測定する際、校正用管保持台82(校正用管保持手段)は、制御手段の信号により装置本体40等より後側の退避位置に移動する。校正を行う際には、制御手段の信号により前側に移動し、前後方向の位置が回転体の回転軸41aと一致するように配置され、すなわち、外面ローラ61及び内面ローラ71によって校正用管81の形状が測定可能な位置に配置される。
また、図1に示す形状測定装置10に設けられた校正機能は、差異データ作成手段(図示せず)及び校正手段(図示せず)を備える。この差異データ作成手段は、校正用管81を所定の角度ごとに外半径及び内半径を測定したデータと、別の測定装置によって校正用管を所定の角度ごとに外半径及び内半径を測定して得た校正用データと、の差異を所定の角度ごとに求めて、差異データを作成する。校正手段は、被測定材を測定した際に自動測定手段で出力されるプロフィールデータに、差異データを加算する。
より具体的には、差異データ作成手段が、形状測定装置10による校正用管の測定データの外半径及び内半径と、別の測定装置(例えば、高精度3次元測定装置)によって校正用管を測定した校正用データの外半径及び内半径と、の差を求める。この差を求める処理では、校正用管(回転体)の特定の角度における測定データの外半径及び内半径と、それと同じ角度の校正用データの外半径及び内半径と、の差を、所定の角度ごとに求める。これにより、外半径の差異、内半径の差異及び角度からなる差異データを作成する。
また、校正手段が、形状測定装置10によって被測定材(実際の測定対象材の管)を測定する際、自動測定手段で出力されるプロフィールデータに差異データを加算する。すなわち、プロフィールデータの外半径に、その外半径と角度が同じ値である差異データの外半径の差異を加算するとともに、プロフィールデータの内半径に、その内半径と角度が同じ値である差異データの内半径の差異を加算する。
このような差異データ作成手段及び校正手段を備えることにより、形状測定装置10は、校正が可能となり、測定精度を更に向上できる。校正用管を形状測定装置10及び別の形状測定装置で測定して差異データ作成手段により差異データを作成(更新)する作業を、例えば、メンテナンス後や定期的に行えば、優れた測定精度を効率的に維持できる。
また、形状測定装置10は、校正用管81と、校正用管保持台82(校正用管保持手段)と、校正用管81を測定可能な位置に配置するために校正用管保持手段を移動させる手段と、を備える。これにより、校正のために校正用管81を測定する作業を省力化して行うことが可能となる。
校正用管81は、取り扱いが容易であることから、例えば、長さが250〜400mm程度の短管とするのが好ましい。また、校正用管81を校正用管保持台82で保持する場合には、校正用管81を所望の角度にして保持する必要がある。一方、測定精度を向上させるため、通常、寸法の異なる複数の校正用管を準備する。従って、校正用管81を校正用管保持台82で保持する場合には、校正用管81を効率よく所望の角度にして保持できることが望まれる。
このため、校正用管81に周方向の位置合わせの基準となる切り欠きを配設するとともに、校正用管保持台82に切り欠きに対応する突起部を設けるのが好ましい。これにより、校正用管保持台82の突起が校正用管81の切り欠きに位置するようにすれば、校正用管81を所望の角度にして保持でき、校正用管81を校正用管保持台82で保持する際に角度を調整する作業を効率良く行うことができる。
形状測定装置10では、通常、その精度を維持するために、所定の期間ごとに同じ被測定材について形状を測定するとともに別の測定装置で形状を測定し、それらの測定結果を比較することにより、形状測定装置10の経時変化を確認する作業を行う必要がある。精度確認を容易に行うため、形状測定装置10は、測定精度を確認するために用いられる精度確認用管(図示せず)と、精度確認用管を測定することによって出力されるプロフィールデータに差異データを加算して出力するチェックデータ作成手段(図示せず)と、を備えるのが好ましい。チェックデータ作成手段によって出力されたプロフィールデータを、別の測定装置(例えば、高精度3次元測定装置)によって精度確認用管を測定した結果と比較すれば、形状測定装置10の精度確認を容易に行うことが可能となる。
このような精度確認作業で、上述の校正用管保持台82(校正用管保持手段)を用いて校正用管に代えて精度確認用管を保持すれば、校正用管保持手段を移動させる手段によって測定可能な位置に精度確認用管を配置できる。これにより、精度確認作業を省力化して行うことが可能となる。精度確認用管は、上述の校正用管81を利用してもよい。また、精度確認用管は、校正用管81と同様の理由により、短管とするのが好ましい。
形状測定装置10は、プロフィールデータ(自動測定手段によって出力されたプロフィールデータ、又は、校正手段によって差異データが加算されたプロフィールデータ)から、上記(a)〜(d)の項目のうちで1以上の項目を演算するプロフィール演算手段を備えるのが好ましい。これにより、測定時の管の中心軸90aと回転体の回転軸41aとのずれを容易に除いて、管端部の外面形状及び内面形状を示すプロフィールデータを評価することができる。プロフィール演算手段によって上記(a)の外径芯外半径プロフィール及び外径芯内半径プロフィールを求める処理を、以下で図3を用いて説明する。
図3は、プロフィール演算手段によって外径芯外半径プロフィール及び外径芯内半径プロフィールを求める処理を示す図であり、図3(a)は、管の形状を表す測定点から中心を求めた状態を示し、図3(b)は、求めた中心を原点に移動させた状態を示し、図3(c)は、測定点の間を補間した状態を示す。
測定データには、管の外面形状を表す測定点P1と、管の内面形状を表す測定点P2と、が含まれており、これらの測定点は、回転体の角度(θ)及び回転体の中心軸からの距離(r)で構成される。従って、図3(a)に示すように、外面形状を表す測定点P1の角度(θ)及び中心軸からの距離(r)を用いて近似円を求め、この近似円の中心C1の座標を算出する。近似円は、最小2乗法やハフ(Hough)変換による円抽出等のような公知の方法により求めることができる。
続いて、図3(b)に示すように、座標変換を行うことによって、求めた外面形状の中心C1を原点に位置させる。この状態で、外面形状を表す測定点において、隣り合う測定点P1と測定点P1との間を、例えば、直線補間、スプライン補間、ベジエ補間、クロソイド補間等の公知の方法により補間する。内面形状を表す測定点においても、同様に、隣り合う測定点P2と測定点P2との間を補間する。図3(c)は、測定点の間をベジエ補間することにより得た外面形状を表わす曲線S1と、内面形状を表わす曲線S2と、を示す。
最後に、座標系の原点(すなわち、求めた外面形状の中心C1)から外面形状を表わす曲線S1までの距離を、所定の角度ごとに演算する。演算した外面形状の中心C1から外面形状を表わす曲線S1までの距離は、求めた外面形状の中心C1に対する外半径であるから、かかる処理により、角度及び外半径で構成される外径芯外半径プロフィールが得られる。また、座標系の原点(すなわち、求めた外面形状の中心C1)から内面形状を表わす曲線S2までの距離を、所定の角度ごとに演算する。演算した外面形状の中心C1から内面形状を表わす曲線S2までの距離は、求めた外面形状の中心C1に対する内半径であるから、かかる処理により、角度及び内半径で構成される外径芯内半径プロフィールが得られる。
内径芯外半径プロフィール及び内径芯内半径プロフィールについても、詳細な説明は省略するが、上記に説明した手順で中心を求める際に、外面形状の測定点に代えて内面形状の測定点を用いれば、同様にして算出可能である。
かかる形状測定装置10は、回転体41の回転角度を検出する検出器として、例えば、ロータリーエンコーダを用いることができる。また、アーム位置検出器として、例えば、リニアエンコーダやレーザー変位計、マグネスケールを用いることができる。外面ローラ位置検出器及び内面ローラ位置検出器として、例えば、リニアエンコーダやレーザー変位計、マグネスケールを用いることができる。
また、上記制御手段、差異データ作成手段、校正手段、チェックデータ作成手段及びプロフィール演算手段等といった、各種演算を伴う手段として、形状測定装置10に実装された汎用的な電気部材や電気回路を用いることも可能であるし、形状測定装置10に実装された各機能に特化したハードウェアを用いることも可能である。また、上記各機能を、形状測定装置10に実装されたCPU等の演算処理ユニットが全て行ってもよいし、形状測定装置10に接続された制御コンピュータ、各種サーバ、パーソナルコンピュータ等が実施してもよい。
図4は、形状測定装置10が備える演算処理ユニットのハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
演算処理ユニットは、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理ユニットは、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、又はリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理ユニット内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理ユニットの操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。更に、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。形状測定装置10のユーザは、この入力装置909を操作することにより、形状測定装置10に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプ等の表示装置や、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理ユニットが行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理ユニットが行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理ユニットの記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理ユニットに内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を演算処理ユニットに直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理ユニットは、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、社内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理ユニットの機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
<形状測定方法について>
次に、上述の形状測定装置10を用いる形状測定方法について、図5を参照しながら詳細に説明する。
図5は、かかる形状測定方法を説明する図であり、図5(a)は、測定開始時の状態を示し、図5(b)は、回転体の回転軸を管の中心軸の高さと略一致させた状態を示し、図5(c)は、外面ローラ及び内面ローラで接触可能な範囲に管が位置した状態を示し、図5(d)は、外面ローラ及び内面ローラに管を接触させた状態を示す。図5には、測定位置に配置された管90と、形状測定装置10と、が図示されている。図5に示す形状測定装置10は、図1に示す形状測定装置10であるが、校正用管81、校正用管保持台82及び保持台ベッド83の図示を省略した。
図5(a)に示すような測定開始時の状態から、装置本体40を上下動(図5(b)の実線矢印参照)させ、図5(b)に示すように回転体の回転軸41aを被測定材である管の中心軸90aの高さと略一致させる。ここで、略一致とは、回転体の回転軸41aの高さが管の中心軸90aに対して完全に一致する必要がなく、ある程度の位置ずれが許容されることを意味する。この位置ずれの許容量は、外面ローラ61及び内面ローラ71が径方向に移動可能な範囲によって自ずと定まる。
続いて、図5(c)に実線矢印で示すように、アーム支持体50を径方向に移動させ、管の外面が外面ローラ61の径方向に移動可能な範囲に位置し、かつ、管の内面が内面ローラ71の径方向に移動可能な範囲に位置した状態とする。
図5(d)に実線矢印で示すように、基台30を管の中心軸方向に移動させ、外面ローラ61を管90の外面に接触させるとともに、内面ローラ71を管90の内面に接触させる。この状態で、自動測定手段によって回転体41を回転させつつ外面ローラ位置検出器及び内面ローラ位置検出器でローラの位置を検出すれば、外半径、内半径及び角度からなるプロフィールデータを得ることができる。
ここで、被測定材である管の内径によっては、内面側アームや内面倣い機構と管の内面が干渉する可能性がある。この干渉を防止するための手段として、外面側アームと内面側アームとの間に配置される管を内面側アームよりに配置し、管内に挿入される部材の径方向の長さを短くする(具体的には、図2に示す内面倣い機構70で内面ローラ71の先端から調整用棒52bまでの径方向の距離Dを短くする)方式がある。
このため、かかる形状測定方法は、図5(c)に示すように、アーム支持体を径方向に移動させて管の外面が外面ローラの移動可能な範囲に位置し、かつ、管の内面が内面ローラの径方向に移動可能な範囲に位置した状態とする際に、管の内径に応じてアーム支持体の移動を調整し、内面側アーム及び内面倣い機構が管と干渉するのを防止するのが好ましい。例えば、干渉が生じうる内径である管の場合、アーム支持体を径方向に移動させて管の外面が外面ローラの移動可能な範囲に位置し、かつ、内面ローラ71が、その移動可能範囲の中央位置となる状態にアーム支持体を移動させればよい。内面ローラ71を、その移動可能範囲の中央位置に調整するのは、前述の距離Dを短くして干渉を防止しつつ、測定時に内面ローラがストロークエンドに到達するのを防止するためである。
かかる形状測定方法は、更に、自動測定手段によって得たプロフィールデータに、事前に差異データ作成手段によって作成された差異データを加算するのが好ましい。これにより、測定精度を更に向上できる。
以上説明した測定手順は、オペレーターの入力に応じて行ってもよく、形状測定装置10に上記の手順を順に実行する手段を設けることにより、自動で行ってもよい。
<検証試験とその結果について>
以上説明したような形状測定装置10及び形状測定方法による効果を検証するため、以下の試験を行った。
本試験では、図1及び図2に示す形状測定装置10を用い、図5に示す手順により継目無鋼管の端部の外半径及び内半径を1°ごとに測定した。これによって出力されたプロフィールデータに差異データを加算した後、加算したプロフィールデータを用いてプロフィール演算手段により外径芯外半径プロフィール及び外径芯内半径プロフィールを得た。その際、外面倣い機構60による外面ローラの押付力は1.5〜2.0kgfになるように調整し、内面倣い機構70による内面ローラの押付力は0.8〜1.2kgfになるように調整した。
差異データの作成は、上述の継目無鋼管の測定前に行い、差異データ作成手段を用いつつ、以下の手順によって行った。
(1)直径300mmの校正用管の端部について、形状測定装置10によって外半径及び内半径を1°ごとに測定し、測定データを得た。
(2)かかる校正用管の端部について、3次元形状測定装置(東京精密社製、PRISMO Navigator、型式9/15/7)によって外半径及び内半径を1°ごとに測定し、校正用データを得た。
(3)得られた測定データと校正用データとの差を1°ごとに求め、差異データを得た。
比較のため、3次元形状測定装置(東京精密社製、PRISMO Navigator、型式9/15/7)を用い、継目無鋼管の端部の外半径及び内半径を1°ごとに測定した。測定したデータから、外径芯外半径プロフィール及び外径芯内半径プロフィールを得た。
本試験では、形状測定装置10及び3次元形状測定装置により得られた外半径を用い、以下の手順によって外径の標準偏差σを求めた。
(a)形状測定装置10により得られた外半径r1(i)(ただし、iは0〜359の整数であり、r1(i)は角度i°の外半径を示す。)を用い、下記(3)式により外径d1(j)(ただし、jは0〜179の整数であり、d1(j)は角度j°の外径を示す。)を算出した。
d1(j)=r1(j)+r1(j+180) ・・・(3)
(b)3次元形状測定機により得られた外半径r2(i)(ただし、iは0〜359の整数であり、r2(i)は角度i°の外半径を示す。)を用い、下記(4)式により外径d2(j)(ただし、jは0〜179の整数であり、d2(j)は角度j°の外径を示す。)を算出した。
d2(j)=r2(j)+r2(j+180) ・・・(4)
(c)下記(5)式により算出される差Δ(j)(ただし、jは0〜179の整数)について、標準偏差σを求めた。
Δ(j)=d1(j)−d2(j) ・・・(5)
上記(a)〜(c)に示す外径の標準偏差σの計算手順と同様の計算手順によって、形状測定装置10及び3次元形状測定装置により得られた内半径を用いて、内径の標準偏差σを求めた。
以下の表1に、被測定材である継目無鋼管の外径、内径及び長さ並びに測定結果から求めた外径及び内径の標準偏差σをそれぞれ示す。
表1より、いずれの寸法の継目無鋼管の測定結果でも、3次元形状測定機と形状測定装置10との標準偏差σ(ばらつき)が小さい。従って、形状測定装置10により、管端部の形状を精度よく測定できることが確認できた。
このように、形状測定装置10及び形状測定方法は、管端部の形状を自動で測定することができるとともに、測定精度を向上できる。このような形状測定装置10及び形状測定方法を継目無鋼管の製造における管端部の形状測定に適用すれば、継目無鋼管の品質及び製造効率の向上に大きく寄与することができる。
以上、図1〜図5を参照しながら、本発明の実施形態に係るマーキング装置を好適に実装可能な形状測定装置10及び形状測定方法について、詳細に説明した。
(第1の実施形態)
以下では、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置及びマーキング方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
上記のように、本実施形態に係るマーキング装置は、様々な公知の形状測定装置に対して実装しうるものであるが、以下では、先だって詳細に説明した形状測定装置10に対して本実施形態に係るマーキング装置を実装した場合を例に挙げて、詳細な説明を行うものとする。
<マーキング装置の構成について>
まず、図6A〜図7を参照しながら、本実施形態に係るマーキング装置100の構成について、詳細に説明する。図6A及び図6Bは、本実施形態に係るマーキング装置100の構成の一例を模式的に示した説明図である。図7は、本実施形態に係るマーキング装置100によって管に付されるマーキングを模式的に示した説明図である。
なお、以下の説明においては、便宜上、図中に示した座標軸を参照しつつ、説明を行うものとする。図中に示した座標系では、z軸方向が、被測定材である管の軸方向に対応している。
まず、図6A及び図6Bに着目する。図6Aは、本実施形態に係るマーキング装置100を図中のy軸正方向側から見た側面図であり、図6Bは、本実施形態に係るマーキング装置100を図中のx軸正方向側から見た上面図である。
本実施形態に係るマーキング装置100は、被測定材である管の形状を、かかる管の外周を周方向に移動する測定ユニットを利用して測定する形状測定装置に設けられるものであり、管の形状の測定原点を表すマーキングを、管の外表面に施す装置である。図6A及び図6Bに示した例では、マーキング装置100が設けられる形状測定装置の一例として、図1〜図5を参照しながら説明した形状測定装置10を取り上げている。そのため、図6A及び図6Bでは、形状測定装置10において測定ユニットとして機能する外面側アーム51の先端部に、マーキング装置100が設けられている。
本実施形態に係るマーキング装置100は、図6Aに示したように、ペンホルダー101と、連結治具103と、付勢機構105と、を少なくとも有する。
ペンホルダー101は、測定原点を表すマーキングを管90の外表面に記載するマーカーペン101aを保持する部材であり、このマーカーペン101aを着脱自在に保持する部材である。また、ペンホルダー101は、未図示のガイドレールに沿ってマーカーペン101aを案内することで、マーカーペン101aを、管の径方向(すなわち、図中のx軸方向)に沿って移動させることができる。これにより、ペンホルダー101は、マーカーペン101aを、管90の外表面に当接させたり、管90の外表面から離隔させたりすることが可能となる。
ペンホルダー101の形状は、図6Aに示した形状に特に限定されるものではなく、マーカーペン101aを着脱自在に保持可能な形状であれば、任意の形状であってもよい。また、ペンホルダー101の素材についても特に限定されるものではなく、管90の外表面に対して垂直な方向(例えば、図中のx軸方向)を維持しつつマーカーペン101aを保持可能であり、測定ユニットの一例である外面側アーム51の移動に追随可能な強度を有するものであれば、例えば公知の樹脂材、金属材等といった任意の素材を用いることが可能である。
連結治具103は、ペンホルダー101を保持するとともに、ペンホルダー101を測定ユニットの一部(図6Aでは、外面側アーム51の先端部)に連結させる部材である。連結治具103の測定ユニット(図6Aでは、外面側アーム51)への連結方法については、特に限定されるものではなく、例えば、各種のねじを用いて連結治具103を測定ユニットに対してねじ止めする、連結治具103と測定ユニットとの間で互いに対応する凹部及び凸部を形成しておき両者を係合させる、等といった公知の方法を採用すればよい。同様に、ペンホルダー101の保持方法についても特に限定されるものではなく、公知の方法を採用すればよい。
また、連結治具103には、連結治具103に連結されるペンホルダー101や付勢機構105を一体としてx軸方向に上下動させることが可能な、公知の駆動機構(図示せず)が設けられていても良い。かかる駆動機構を設けることで、例えば、形状測定装置10が管90の形状プロフィールを測定している際には、ペンホルダー101及び付勢機構105をx軸正方向側へと移動させて退避させることで、マーキング装置100自体が形状測定装置10における測定処理を妨げてしまう可能性を、より確実に排除できる。
連結治具103の形状は、図6Aに示した形状に特に限定されるものではなく、ペンホルダー101と形状測定装置の測定ユニットとを強固に連結できる形状であれば、任意の形状であってもよい。また、連結治具103の素材についても特に限定されるものではなく、測定ユニットの移動に追随するペンホルダー101を強固に保持可能な強度を有するものであれば、例えば公知の樹脂材、金属材等といった任意の素材を用いることが可能である。
付勢機構105は、少なくともペンホルダー101に連結されており、マーカーペン101aを管90の外表面に対して付勢して倣わせるための機構である。この付勢機構105は、図6Aに示したように、少なくともコイルばね105aを有しており、コイルばね105aの弾性力によりマーカーペン101aを管90の外表面に押し付ける。すなわち、コイルばね105aの一端を、付勢機構105の任意の部位に連結しておき、コイルばね105aの他端を、ペンホルダー101におけるマーカーペン101aの駆動機構(図示せず)に連結しておく。その上で、コイルばね105aに対して、公知の押圧機構(図示せず。例えば、調整用のナット、圧電素子、油圧シリンダ等)を利用して押付力を印加することで、マーカーペン101aを管90の外表面に対して押し付ける。一般的なマーカーペンでは、ある物体にペン先が接触している状態でペン軸方向に力を加えると、ペン先がマーカーペンの内部に押し込まれ、軸の内部に装填されたインクがペン先へと補給されるという機構を有している。そこで、このような押し付け動作を1回〜複数回実施することで、マーカーペン101aのペン先からインクが出てこないという状況を回避することが可能となる。
付勢機構105の形状は、図6Aに示した形状に特に限定されるものではなく、コイルばね105aを保持し、かつ、マーカーペン101aに対してコイルばね105aの弾性力を印加可能な形状であれば、任意の形状であってもよい。また、付勢機構105の素材についても特に限定されるものではなく、コイルばね105aに印加される押圧力や、コイルばね105aに生じる弾性力によって変形を生じない程度の強度を有するものであれば、例えば公知の樹脂材、金属材等といった任意の素材を用いることが可能である。
また、マーキング装置100では、マーカーペン101aよりも測定ユニット側に配設されたペンホルダー101、連結治具103又は付勢機構105の少なくとも何れかに、管90の外表面を倣って移動することでマーカーペン101aの軸方向(図6A中のz軸方向)に沿った移動を案内するガイドローラ111が設けられていてもよい。かかるガイドローラ111を設けることで、管90の外表面上で、マーカーペン101aをよりスムーズに移動させることが可能となり、より確実にマーキングを施すことが可能となる。
ここで、形状測定装置10を含む一般的な形状測定装置では、被測定材である管の形状プロフィールの測定に際して、測定原点を通り管の軸方向に平行な軸(以下、原点軸ともいう。)が、管の軸方向に平行な測定ユニットの中心軸と同軸となるように、測定ユニットが配設されている。そのため、本実施形態に係るマーキング装置100では、例えば図6Bに模式的に示したように、少なくともペンホルダー101は、管の軸方向に平行なマーカーペン101aの中心軸が、測定ユニットにおける原点軸と同軸となるように設けられる。このように少なくともペンホルダー101を配設することで、測定ユニットの軸方向(z軸方向)の移動に追随させてマーカーペン101aを移動させることで、例えば図7に模式的に示したように、被測定材である管90の外表面の原点軸上に、測定原点を表すマーキングを施すことが可能となる。
ここで、図6Bに示したように、マーカーペン101aの中心軸のみならず、ペンホルダー101、連結治具103及び付勢機構105の中心軸も原点軸と同軸となるように、マーキング装置100の管90の軸方向に平行な中心軸を規定することが好ましい。これにより、ペンホルダー101、連結治具103及び付勢機構105がマーカーペン101aと一体化して原点軸に沿って移動することとなり、マーカーペン101aの原点軸に沿った移動がより安定化して、より精度良くマーキングを施すことが可能となる。
なお、図6A及び図6Bでは、測定ユニット側から順に、連結治具103、付勢機構105及びペンホルダー101が連結されている場合について図示しているが、これら3つの部材の連結順序については、図示した例に限定されるものではない。例えば、測定ユニット側から順に、連結治具103、ペンホルダー101及び付勢機構105のような連結順序を採用してもよい。
また、図6A及び図6Bに示したようなマーキング装置100は、例えば、CPU、ROM、RAM等を有する公知の制御機構(図示せず)を備えており、この制御機構は、例えば、ペンホルダー101、連結治具103、付勢機構105等の移動を含め、マーキング装置100の動作を統括的に制御している。この制御機構は、ペンホルダー101、連結治具103、付勢機構105等に設けられた駆動機構や押圧機構に制御信号を出力することで、制御を行う。かかる制御装置は、マーキング装置100に実装された演算処理ユニットであってもよいし、マーキング装置100に接続された各種サーバやコンピュータ等の演算処理ユニットであってもよい。更に、かかる演算処理ユニットとして、マーキング装置100が装着される形状測定装置に設けられた演算処理ユニットを利用し、形状測定装置の演算処理ユニットにマーキング装置100の制御機能を実装してもよい。かかる演算処理ユニットは、図4と同様のハードウェア構成を有し、同様の効果を奏するものであるため、以下では詳細な説明を省略する。
[マーキング装置の検証]
本発明者らは、以上のようなマーキング装置100について、実際の鋼管を被測定材とし、市販の油性マーカーペンを利用して各種の検証を行った。以下、その詳細について説明する。
上記検証では、φ406.4mm×t22.2mmの鋼管約400本を被測定材として利用し、マーキングの印字位置の確認、マーキングの印字幅とペン押し付け回数の検証、マーカーペンの移動速度とマーキングの擦れ具合の検証、マーカーペンの耐久性の検証、を目的として、以下のようなテストを行った。なお、以下のテストでは、図6A及び図6Bに示した構造を有するマーキング装置100を図1等に示した形状測定装置10に取り付けて、各種の検証を行っている。
○マーキングの印字位置の確認
まず、マーキングの印字位置を変化させて、付勢機構105によるマーカーペン101aの押し付け回数2回、マーカーペンの移動速度15mm/秒の条件で、マーキング試験を行った。試験条件及び試験結果は、以下の表2の通りである。なお、下記の表2において、マーキングの開始位置及び終了位置を、測定対象とした鋼管の管端部からの距離として表すこととした。この際、図7に模式的に示したように、鋼管の奥側に位置する点P1から管端部側に位置する点P2までマーキングを印字することとした。
上記表から明らかなように、条件1におけるマーキングの長さ(図7における長さLM)は290mmであり、条件2におけるマーキングの長さLMは200mmであり、条件3におけるマーキングの長さLMは50mmである。
試験の結果、条件1では、開始位置から終了位置までマーキングを施すことはできたが、マーキングの終了位置(管端部から10mmの位置)において、インクの液だまりが発生してしまい、均一なマーキングを施すことができなかった。従って、上記表2において、判定結果は「×」とした。また、条件2及び条件3においては、開始位置から終了位置にわたって均一なマーキングを施すことが出来たため、上記表2において、判定結果を「◎」とした。
条件1において、上記のような液だまりが発生した理由としては、マーキング装置100の移動の結果、終了位置においてガイドローラ111が管端部から脱輪してしまい、マーカーペン101aのペン先により多くの力が作用したためであることが判明した。また、条件2及び条件3においては、ガイドローラ111が管端部から脱輪することなく、マーキング装置100の移動が完了したため、液だまりが発生せず、均一なマーキングを施すことができたことが明らかとなった。この検証結果から、マーキングの管端部側の端部は、ガイドローラ111が管端部から脱輪しない位置(例えば、条件2のように管端部から50mm程度の位置)に設定することが好ましいことが明らかとなった。
○マーキングの印字幅とペン押し付け回数の検証
次に、マーカーペン101aの押し付け回数を変化させ、マーキングの開始位置を300mm、終了位置を50mmとして、マーカーペンの移動速度15mm/秒の条件でマーキングを施す試験を行った。この試験において、施されたマーキングのライン幅(例えば図7におけるy軸方向の幅)を測定して、検討を行った。試験条件及び試験結果は、以下の表3の通りである。
上記表3から明らかなように、押し付け回数が多いほど、開始位置にインクの液だれが発生し、ライン自体は擦れることなく引けるものの、ライン幅が不均一になることが明らかとなった。そのため、条件1及び条件2の判定結果を「△」とした。一方、押し付け回数が1回である条件3では、開始位置及び終了位置でのライン幅がほぼ同じ値となっており、均一なマーキングが施せたことが明らかとなった。そのため、条件3の判定結果を「◎」とした。この結果から、マーカーペン101aの押し付け回数は1回で十分であり、必要に応じて更に押し付け回数を増加させればよいことが明らかとなった。
○マーカーペンの移動速度とマーキングの擦れ具合の検証
次に、マーカーペンの移動速度を3通りに設定して、押し付け回数2回、開始位置300mm、終了位置50mmの条件で、マーキングの擦れ具合を検証した。試験条件及び試験結果は、以下の表4の通りである。
移動速度が10〜20mm/秒の範囲では、擦れの存在しない均一なマーキングを施すことが可能であった。そこで、上記表4に示したように、条件1〜条件3のそれぞれについて、判定結果を「◎」とした。この結果から、マーカーペン101aの移動速度を20mm/秒程度という高速にした場合であっても、適切なマーキングを施すことができるため、移動速度を20mm/秒程度として、マーキングのサイクルタイムを短縮することが可能となることが明らかとなった。また、移動速度が10mm/秒と低速であっても良好なマーキングが施されているため、移動速度の下限値は特に限定されず、移動速度が小さい場合であっても良好なマーキングが施されるものと推察される。
○マーカーペンの耐久性の検証
次に、市販の3種類のマーカーペンを利用し、押し付け回数2回、開始位置300mm、終了位置50mm、マーカーペンの移動速度15mm/秒に設定して、マーカーペンの耐久性を検証した。マーカーペンの耐久性の検証は、マーキングに擦れが生じた段階で交換時期が到来したとみなし、擦れが生じる直前までに処理した鋼管の本数をカウントすることとした。なお、この検証に際して、マーカーペンの不使用時には、ペン先にキャップを取り付け、ペン先の乾燥を防止するようにした。得られた結果は、以下の表5の通りである。
上記表5から明らかなように、事前に使用するマーカーペンを予め検証しておくことで、180本以上の鋼管を処理することが可能であることが明らかとなった。
以上、図6A〜図7を参照しながら、本実施形態に係るマーキング装置100について、詳細に説明した。
<マーキング方法について>
続いて、図8を参照しながら、本実施形態に係るマーキング装置100を利用したマーキング方法の流れの一例について、簡単に説明する。図8は、本実施形態に係るマーキング方法の流れの一例を示した流れ図である。
なお、以下の説明に先立ち、例えば図6A及び図6Bに示したようなマーキング装置100が、形状測定装置の測定ユニット(例えば、形状測定装置10の外面側アーム51)に対して、マーカーペン101aの中心軸が原点軸と同軸となるように取り付けられているものとする。
かかるマーキング方法では、まず、未図示の制御機構及び駆動機構を介して、ペンホルダー101に保持されたマーカーペン101aを、原点軸上の所定位置まで移動させる(ステップS101)。その後、未図示の制御機構及び駆動機構を介して、マーカーペン101a(より詳細には、マーカーペン101aのペン先)を、管90の外表面に当接させる(ステップS103)。
ここで、必要に応じて、未図示の制御機構及び押圧機構を介して、付勢機構105を駆動させて、マーカーペン101aを管の外表面に対して1回又は複数回押し付けるようにしてもよい(ステップS105)。これにより、より確実にマーカーペン101aのペン先に対してマーキングに用いるインクが供給されることとなる。
続いて、形状測定装置の演算処理ユニット等を介して形状測定装置を移動させることで、マーカーペン101aを測定ユニットに追随させて移動させる(ステップS107)。これにより、管90の外表面に対してマーキングが記載されていくこととなる。
所定の位置までマーカーペン101aが移動すると、未図示の制御機構及び駆動機構を介して、マーカーペン101aを管90の外表面から離隔させる(ステップS109)。
その後、監視員が、マーキングの施された管を直接目視したり、所定の位置に設けられたカメラ等の撮像装置により得られた撮像画像を表示装置の表示画面上で確認したりすることで、マーキングが確実に引けているかを確認する(ステップS111)。マーキングが適切に施されている場合には、マーキング処理は終了することとなる。一方、擦れが生じている等の理由で適切なマーキングが施されていない場合には、ステップS101に戻って処理を再実行する。これにより、確実に管90の外表面に対してマーキングが施されることとなる。
なお、マーキングが確実に引けているか否かの確認は、上記のように監視員が確認を行ってもよいが、マーキング装置100の演算処理ユニット等に対して、公知の画像処理機能を実装し、カメラ等の撮像装置により得られた撮像画像を公知の画像処理技術により画像判定することで、自動的に判定するようにしてもよい。
以上、図8を参照しながら、本実施形態に係るマーキング方法の流れの一例について、簡単に説明した。
続いて、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係るマーキング装置及びマーキング方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係るマーキング装置及びマーキング方法の一具体例を示したものにすぎず、本発明に係るマーキング装置及びマーキング方法が、下記に示した例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下に示す実施例1では、図1等に示した形状測定装置10に対して、図6A及び図6Bに示したマーキング装置100を取り付けて、マーキング精度に関する検証を行った。以下、行った検証について、図9〜図11を参照しながら詳細に説明する。図9〜図10Bは、実施例1について説明するための説明図である。図11は、実施例1の結果を示したグラフ図である。
本実施例では、直径φが約300mmの鋼管を利用し、かかる鋼管の外表面の一部を切り欠くことで、図9に示したような平坦面を有する切り欠き部を形成した。ここで、切り欠き部の幅Wは、約16mmとした。また、切り欠き部の中央には中心線を記載した。このような鋼管をテストピースとして、マーキング精度を検証した。
形状測定装置10の校正用管保持台82に、上記のテストピースを、切り欠き部中心線が原点軸と同軸となるように固定した。その後、ペン先の太さが約2mmの市販のマーカーペンを利用し、押し付け回数1回、開始位置300mm、終了位置50mm、マーカーペンの移動速度15mm/秒に設定して、マーキングを施した。
マーキングを施したテストピースを目視にて確認したところ、記載されたマーキングは、切り欠き中央線上に位置しており、原点軸に対して正確に記載されていることがわかった。
続いて、テストピースを校正用管保持台82に取り付けたまま、形状測定装置10を用いて形状プロフィールの測定を行い、切り欠き中央線が測定原点となっているか否かを検証した。
図10A及び図10Bは、テストピースの外径の中心を通る鉛直軸と、切り欠き部の幅方向(図9のWの方向)の各位置とテストピースの外径の中心とを結ぶ軸と、のなす角に着目し、形状プロフィールの測定結果をプロットした図を模式的に示したものである。
図10Aに示したように、切り欠き中央線が測定原点と一致している場合には、角度0度の位置で、外径の測定結果が最小値となるとともに、角度0度を中心として、左右がほぼ対称な形となるはずである。この際、角度の絶対値が等しい位置(すなわち、±1度、±2度・・・)での外径の測定結果の差分は、用いた管の管径を考慮すると、±0.05mm以内となるはずである。
一方、図10Bに示したように、切り欠き中央線が測定原点と一致していない場合には、外径の測定結果の最小値は0度の位置とはならず、また、測定結果のプロット状況も、角度0度を中心とした左右対称な形とはならない。また、図10Bに模式的に示したように、角度の絶対値が等しい位置での外径の測定結果の差分は、0.05mm超過となるはずである。
図11は、上記テストピースの形状プロフィールの測定結果をプロットしたものである。図11を参照すると、測定結果のプロット状況は、角度0度を中心とした左右対称な形となっており、外径の測定結果の最小値は、角度0度の位置となっている。また、角度の絶対値の等しい位置での外径の測定結果の差分はゼロであり、±1度の位置での外径は299.86mmであり、±2度の位置での外径は299.91mmであった。かかる結果から、本発明の実施形態に係るマーキング装置100を用いて記載されたマーキングは、極めて高精度であることが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。