以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
まず、図1を参照して、鉄道車両の高さ調整システムに設けられる高さ調整装置100の概要について説明する。高さ調整システムは、後述するように鉄道車両の運転条件に応じて車体1の高さ及び傾斜を制御する。
鉄道車両の車体1と台車2の間には、空気ばね3が設けられる。高さ調整装置100は、空気ばね3に圧縮空気を給排するレベリングバルブ10を備え、車体1を一定の高さに維持する機能と、車体1を傾斜させる機能と、を有する。
レベリングバルブ10は、車体1に取り付けられる。レベリングバルブ10のレバー4は、連結棒5を介して台車2に連結される。車体1の荷重変化により空気ばね3が伸縮して車体1の高さが変化すると、連結棒5を介してレバー4が回動し、レベリングバルブ10が以下のように作動する。
車体1が台車2に対して所定の高さ(中立位置)にある場合には、レバー4が中立位置にあり、レベリングバルブ10が閉弁する。これにより、空気ばね3に連通する空気ばね通路6は、コンプレッサ(供給源)7に連通する供給源通路9及び排気通路8に対して閉鎖され、空気ばね3が一定の高さに保たれる。
車体1の荷重が増加して空気ばね3が縮んだ場合には、レバー4が中立位置から上方に押し上げられて図1の矢印A方向へ回動し、それに伴って供給源通路9が開通する。これにより、コンプレッサ7からの圧縮空気が供給源通路9及び空気ばね通路6を通じて空気ばね3へ供給される。空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻ってレベリングバルブ10が閉弁し、圧縮空気の供給が遮断される。
一方、車体1の荷重が減少して空気ばね3が伸びた場合には、レバー4が中立位置から下方に引き下げられて図1の矢印B方向へ回動し、それに伴って排気通路8が開通する。これにより、空気ばね3の圧縮空気は空気ばね通路6及び排気通路8から大気へ排出される。空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻ってレベリングバルブ10が閉弁し、空気の排出が遮断される。
このように、レベリングバルブ10が車体1と台車2の間に生じた相対変位を自動的に調節することにより、車体1の高さが一定に維持される。
また、高さ調整装置100は、レベリングバルブ10にコントローラ99によって駆動されるアクチュエータ90を備える。レベリングバルブ10がアクチュエータ90の作動によりレバー4の変位によらず空気ばね3に圧縮空気を給排することにより、車体1の高さが任意に変えられる。
次に、主に図2を参照して、レベリングバルブ10について説明する。
レベリングバルブ10は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて変位する作動アーム55及び作動ピストン(作動体)20と、作動ピストン20の移動によって弾性変形することでバルブ体30を軸方向に付勢する作動スプリング25、26(付勢部材)と、バルブ体30の軸方向への移動に抵抗を与えるダンパ60と、作動ピストン20の変位を検出する変位検知器95と、バルブ体30を軸方向に駆動するアクチュエータ90と、これらを収装するケーシング18と、を備える。
ケーシング18は、車体1に固定される。ケーシング18には、バルブハウジング40がケーシング19を介して取り付けられる。ケーシング18には、作動ピストン20及びバルブ体30がそれぞれの中心線Oが延びる軸方向に移動するように収装される。バルブハウジング40には、円柱状のバルブ体30を収装するバルブ収容孔40Aが形成される。
作動アーム55は、ケーシング18に回動自在に支持される作動シャフト50を有し、バルブ体30の中心線Oに直交する中心軸Sを中心として揺動する。作動シャフト50のケーシング18から外側に突出する先端部には、レバー4が連結される(図1参照)。作動アーム55のケーシング18内に収装される揺動部にはピン56が設けられる。ピン56は、作動ピストン20に形成された溝20Cに係合し、作動アーム55の回動を作動ピストン20の軸方向への移動に変換する。
台車2に対して車体1が下降すると、図2において作動アーム55が時計回り方向に回動し、作動ピストン20が右側に移動する。一方、台車2に対して車体1が上昇すると、図2において作動アーム55が反時計回り方向に回動し、作動ピストン20が左側に移動する。
作動スプリング25、26は、金属材によってコイル状に形成され、作動ピストン20とリテーナ27、28の間に圧縮して介装される。作動スプリング25、26は、作動ピストン20を挟持するように設けられ、作動ピストン20の移動を作動スプリング25、26を介してバルブ体30に伝達する。
作動ピストン20は、バルブ体30が挿通する孔20Aと、作動スプリング25、26に係合する一対の環状凹部20Bと、を有する。作動ピストン20の外周は、ケーシング18の収容孔18Aに摺動自在に支持される。
なお、上述した構成に限らず、作動ピストン20がバルブ体30に摺動自在に支持され、作動ピストン20の外周とケーシング18の収容孔18Aの間に間隙が設けられる構成としてもよい。
リテーナ27は、バルブ体30が挿入される孔27A、孔27Aが開口する円盤状のフランジ部27Bと、作動スプリング25に係合する環状凹部27Cと、環状凹部27Cが形成される円筒状のスプリング収容筒部27Dと、を有する。リテーナ28は、リテーナ27と同一形状をしており、リテーナ27と共通の部品として設けられる。リテーナ27、28の外周は、ケーシング18の収容孔18Aに摺動自在に支持される。
バルブハウジング40のリテーナ28に向いた端部には縮径部40Eが形成され、縮径部40Eとケーシング18の内周との間に環状間隙が画成される。リテーナ28が図2中右側に移動する際には、リテーナ28のスプリング収容筒部28Dが環状間隙に入り込むようになっている。こうしてリテーナ28が移動するスペースがケーシング18とバルブハウジング40の間に環状間隙として設けられることにより、レベリングバルブ10の大型化が避けられる。
円柱状のバルブ体30の中程には、段部30Aが形成される。リテーナ28は、段部30Aに当接してバルブ体30に取り付けられる。バルブ体30の一端には、連結ロッド22が結合される。リテーナ27は、連結ロッド22の端面に当接してバルブ体30に取り付けられる。レベリングバルブ10の組み立て時に、バルブ体30にリテーナ28、作動スプリング26、作動ピストン20、作動スプリング25、及びリテーナ27が組み付けられた後に、バルブ体30に連結ロッド22が結合される。これにより、リテーナ27、28を介して一対の作動スプリング25、26が作動ピストン20を挟持するように組み付けられる。
作動スプリング25は、作動ピストン20とリテーナ27との間に圧縮して介装され、バルブ体30を軸方向において図2中右側に付勢する。作動スプリング26は、作動ピストン20とリテーナ28との間に圧縮して介装され、バルブ体30を軸方向において図2中左側に付勢する。作動ピストン20が軸方向に移動すると、作動スプリング25、26の付勢力がリテーナ27、28を介してバルブ体30に与えられることで、バルブ体30が軸方向に移動する。つまり、作動スプリング25、26は、作動ピストン20の移動をバルブ体30に伝達する付勢部材として設けられる。
なお、上記付勢部材は、金属製の作動スプリング25、26に限らず、ゴム材等からなる弾性体であってもよい。
次に、変位検知器95の構成について説明する。
変位検知器95は、ケーシング18に介装されるセンサ部97と、センサ部97に対して軸方向に移動するセンサロッド96と、を備える。
センサロッド96は、リテーナ27の孔を挿通し、その一端が作動ピストン20に連結され、作動ピストン20と一緒に軸方向に移動する。
センサ部97は、センサロッド96の変位に応じて電気抵抗が変化する検知回路(図示省略)を備え、センサロッド96の変位に応じた信号を出力する。
台車2に対する車体1の高さが変化する動きに連動して作動ピストン20が変位すると、変位検知器95はセンサロッド96を介して作動ピストン20の変位に応じた信号をコントローラ99に出力する。これにより、コントローラ99は変位検知器95の出力信号を基に車体1の高さを検知する。
なお、変位検知器95は、上述した構成に限らず、レーザ光を用いて作動ピストン20の変位を検出するものであってもよい。
次に、ダンパ60の構成について説明する。
ダンパ60は、連結ロッド22を介してバルブ体30に連結されるダンパピストン61を備える。ダンパピストン61は、バルブ体30と共に中心線Oが延びる軸方向に移動する。連結ロッド22の一端はバルブ体30の基端部に結合され、連結ロッド22の他端はフランジ部22Aを介してダンパピストン61の一端に結合される。フランジ部22Aには複数の孔22Bが形成され、ダンパピストン61の移動に伴って油室17の作動油が孔22Bを通じて流れるようになっている。
ケーシング18には油室17と排気室12を仕切る隔壁18Fが形成される。隔壁18Fには連結ロッド22が摺動自在に挿入される孔18Eが形成される。孔18Eにはシールリング16が介装される。シールリング16によって連結ロッド22に対する摺接部が密封されることにより、油室17内の作動油が収容孔18A内に洩れないようになっている。
ダンパピストン61は、ケーシング18内に形成された油室17の作動油中に浸漬して配置される。ケーシング18にはシリンダ部18Bが形成され、ダンパピストン61はシリンダ部18Bに摺動自在に挿入される。ケーシング18にはシリンダ部18Bの一端に連通する開口部18Cが形成され、開口部18Cは隔壁体71にて閉塞される。
ダンパピストン61の両端部には、円筒状のダンパピストン部63A、63Bが形成される。シリンダ部18B内には、ダンパピストン部63A、63Bによって第1ダンパ室64A、第2ダンパ室64Bが画成される。
ダンパピストン61には、第1ダンパ室64A及び第2ダンパ室64Bの内部と油室17とを連通する連通路65A、65Bが形成される。第1ダンパ室64A及び第2ダンパ室64Bのそれぞれの内部には、通過する作動油の流れに抵抗を付与するオリフィス69A、69Bが形成されたノンリターンバルブ66A、66Bと、ダンパピストン部63A、63Bの内周面に支持されたリング状のばね受け部材67A、67Bと、ノンリターンバルブ66A、66Bとばね受け部材67A、67Bとの間に圧縮して配置され連通路65A、65Bを閉じる方向にノンリターンバルブ66A、66Bを付勢するスプリング68A、68Bとが設けられる。
ケーシング18には、ダンパピストン61の移動に応じて油室17と第1ダンパ室64A、第2ダンパ室64Bとを連通する逃がし通路70A、70Bが形成される。逃がし通路70A、70Bは、バルブ体30が後述する中立位置付近にある場合には、ダンパピストン61のダンパピストン部63A、63Bによって閉じられる。
バルブ体30が中立位置から図2中右側に移動するのに伴って、連結ロッド22を介してダンパピストン61も同方向に移動する。このときに、収縮する第2ダンパ室64Bの作動油がノンリターンバルブ66Bのオリフィス69Bを通じて油室17へ流入し、オリフィス69Bを流れる作動油に流路抵抗が発生する。一方、第1ダンパ室64Aは拡張して内部が負圧となるため、ノンリターンバルブ66Aがスプリング68Aの付勢力に抗して開き、油室17の作動油が連通路65Aを通じて第1ダンパ室64A内に補給される。このようにしてダンパピストン61は図2中右側に移動する際には抵抗が生じる。
続いて、バルブ体30が図2中左側に向かって中立位置に戻るのに伴って、連結ロッド22を介してダンパピストン61も図2中左側に移動する。このとき、収縮する第1ダンパ室64A内の作動油は逃がし通路70Aを通じて油室17へ排出されるため、ダンパピストン61は抵抗なく移動する。
また、ダンパ60は、バルブ体30が中立位置から図2中左側に向かって移動した後に中立位置に戻るときにも、同様に作動する。このように、ダンパ60は、バルブ体30が中立位置から軸方向に移動する際にはバルブ体30の移動にオリフィス69A、69Bによる抵抗を付与する一方、バルブ体30が中立位置に戻る際にはバルブ体30の移動にオリフィス69A、オリフィス69Bによる抵抗を付与しない。
ダンパ60は、バルブ体30の移動に与える抵抗を変えられるダンパ抵抗可変機構80を備える。
ダンパ抵抗可変機構80は、ケーシング18に形成されるバイパス通路81、82と、バイパス通路81、82の間に介装されるバイパスバルブ83と、を備える。バイパス通路81、82は、オリフィス69A、オリフィス69Bを迂回して第1ダンパ室64A、第2ダンパ室64Bに連通する。
バイパスバルブ83は、コントローラ99(図1参照)からの駆動電流により開閉作動する電磁弁であり、第1ダンパ室64Aと第2ダンパ室64Bを連通する流路面積が変えられる。バイパスバルブ83が開弁することにより、ダンパピストン61の移動に伴って作動油が第1ダンパ室64Aと第2ダンパ室64Bの間でバイパス通路81、82を通じて流れる。
コントローラ99からの駆動電流によりバイパスバルブ83は全閉位置と全開位置に切換えられる。バイパスバルブ83が全閉位置にある状態では、ダンパ60が作動する。一方、バイパスバルブ83が全開位置にある状態では、ダンパ60の作動が解除される。
また、バイパスバルブ83は、その開度が制御される比例電磁弁を用いてもよい。この場合に、コントローラ99が車両の運転状態に応じてバイパスバルブ83の開度を制御することにより、ダンパピストン61の移動に与えられるオリフィス69A、オリフィス69Bの抵抗が変えられる。
次に、アクチュエータ90の構成について説明する。
ケーシング18には、アクチュエータ90がケーシング79を介して取り付けられる。アクチュエータ90はソレノイド(図示省略)の電磁力により軸方向に移動するアクチュエータロッド91を備える。
アクチュエータロッド91は、ダンパピストン61及びバルブ体30と同一軸方向に延びるように中心線O上に配置される。アクチュエータロッド91はフランジ部91Aを介してダンパピストン61の一端に結合される。フランジ部91Aには複数の孔91Bが形成され、ダンパピストン61の移動に伴って油室17の作動油が孔91Bを通じて流れるようになっている。
ケーシング18内に油室17を画成する隔壁体71にはアクチュエータロッド91が摺動自在に挿入される孔71Aが形成される。孔71Aにはシールリング78が介装され、シールリング78によってアクチュエータロッド91に対する摺接部が密封され、油室17内の作動油がアクチュエータ90側に洩れないようになっている。
アクチュエータ90はコントローラ99からの駆動電流によりアクチュエータロッド91を軸方向に移動し、アクチュエータロッド91がダンパピストン61及び連結ロッド22を介してバルブ体30を軸方向に移動する。
なお、アクチュエータ90は、上述した構成に限らず、油圧、空気圧等の流体圧によって作動するものであってもよい。
次に、レベリングバルブ10の弁構造について説明する。
バルブハウジング40には、バルブ収容孔40Aの一端が開口する排気室12が画成される。排気室12は、排気通路8を通じて大気に開放された排気側に連通される。排気室12には、作動ピストン20及び作動スプリング25、26等が収装される。
バルブハウジング40には、バルブ収容孔40Aの他端が開口する供給室11がプラグ49によって画成される。供給室11は、供給源通路9を通じてコンプレッサ7に連通される。
供給室11には、弁体44を支持するガイド体46と、弁体45を支持するガイド体47と、ガイド体46、47の間に圧縮して介装される戻しスプリング(弁体付勢部材)48と、が収装される。ガイド体46、47にはそれぞれの両側を連通する流路(図示省略)が形成される。これにより、ガイド体46、47が軸方向に移動する際に、バルブ収容孔40A内の空気が流路を通じて移動するようになっている。
バルブハウジング40には、供給室11に対するバルブ収容孔40Aの開口部に弁座40Dが形成される。弁体44は、ガイド体46を介して戻しスプリング48の付勢力を受けて弁座40Dに当接し、バルブ収容孔40Aの開口部を供給室11に対して閉鎖する。
プラグ49には、供給室11に対する開口部に弁座49Aが形成される。弁体45は、ガイド体47を介して戻しスプリング48の付勢力を受けて弁座49Aに当接し、供給源通路9に連通したプラグ49の開口部を供給室11に対して閉鎖する。
弁体44、45は、ゴム等の弾性材によって円盤状に形成される。弁体44、45は、戻しスプリング48の付勢力により弁座40D、弁座49Aに押し付けられる部位が弾性変形し、弁座40D、弁座49Aに対する当接部を密封する。
ケーシング18には空気ばね通路6が接続される通孔13が形成され、通孔13はバルブ体30の外周に臨んでバルブ収容孔40Aの内側に開口する。バルブ収容孔40Aは、通孔13及び空気ばね通路6を通じて空気ばね3に連通される。
バルブ体30には、軸方向に延びる中空部30Bが形成される。中空部30Bの一端は、バルブ体30の弁体45に向いた先端30Eに開口する。中空部30Bの他端は、バルブ体30の径方向に形成した排気孔30Cを通じて排気室12に常時連通する。
バルブ体30には、弁体45に向いた先端部の外周に大径部30Dが形成される。バルブ収容孔40Aには、大径部30Dとの間に環状隙間14を画成する縮径部40Bが形成される(図3A参照)。環状隙間14の流路長は、バルブ体30が中立位置から軸方向に移動する移動量に応じて変わる。環状隙間14は、空気ばね3に給排される圧縮空気に流路抵抗を与える絞り部を構成し、これを流れる空気流に対してその流路長に応じた流路抵抗を与える。
なお、絞り部は、上述した構成に限らず、バルブ体30の外周に形成された溝と、バルブ収容孔40Aの縮径部40Bと、の間に画成される絞り流路であってもよい。
バルブ収容孔40Aには、縮径部40Bから空気ばね通路6の開口部に至る区間において拡径部40Cが形成される。拡径部40Cは、バルブ体30の外周に対して環状の間隙を画成し、これを流通する空気流に対して格別の抵抗を与えない程度に十分な断面積を有する。
バルブ収容孔40Aには、拡径部40Cより排気室12側にシールリング15が介装される。シールリング15は、バルブ体30に対する摺接部を密封し、空気ばね通路6からの圧縮空気が排気室12へと洩れないようになっている。
レベリングバルブ10では、作動アーム55の中心線Nとバルブ体30の中心軸Oとが直角をなす位置が、バルブ体30の中立位置に設定される。バルブ体30は、中立位置においてその先端30Eが閉鎖位置の弁体44に当接する。なお、バルブ体30の中立位置は、中心線Nと中心軸Oとが直角をなす位置に限らず、任意に設定される。
弁座40D、弁体44、戻しスプリング48、バルブ体30は、空気ばね通路6を供給室11(圧縮空気の供給側)と排気室12(圧縮空気の排出側)に対して選択的に連通させる三方弁を構成する。
次に、主に図3A〜3Eを参照して、レベリングバルブ10が開閉する動作について説明する。
図2、3Aに示すように、バルブ体30が中立位置にある場合には、弁体44が弁座40Dに着座してバルブ収容孔40Aの開口部を閉鎖するとともに、バルブ体30の先端30Eが弁体44に当接している。この状態では、空気ばね通路6は供給室11及び排気室12に対して閉鎖され、空気ばね3に対する圧縮空気の給排は行われない。これにより、空気ばね3は、一定の高さに保たれ、車体1をあらかじめ設定された支持位置に保持する。なお、この車体1の支持位置が車体1の中立位置に相当する。
車体1が中立位置からわずかに上昇した場合には、作動ピストン20が図2の左側へ移動し、作動スプリング25、26の付勢力によってバルブ体30が中立位置から図2の左側へ移動する。このバルブ体30の移動に対してダンパ60が抵抗を与えることにより、バルブ体30の移動速度が低く抑えられ、作動ピストン20の移動に対するバルブ体30の移動に時間遅れが生じる。このときに、作動スプリング25、26が伸縮することで作動ピストン20とバルブ体30の相対変位が吸収される。
図3Bに示すように、バルブ体30がダンパ60の抵抗を受けつつ作動スプリング25、26の付勢力が釣り合う位置に移動した状態では、バルブ体30の先端30Eが弁体44から離れ、空気ばね通路6と排気室12とが環状隙間14を介して連通する。このときに、弁体44が弁座40Dに当接しているため、空気ばね通路6は供給室11に対して閉鎖される。この状態では、空気ばね3の圧縮空気が、図3B中矢印で示すように、空気ばね通路6、環状隙間14、バルブ体30と弁体44の隙間、バルブ体30の中空部30B、排気孔30C、及び排気通路8を通じて大気に排出される。このときに、環状隙間14がこれを通過する空気流に対して流路抵抗を与えることにより、微少流量の圧縮空気が空気ばね3から排出され、車体1はゆっくりと下降して中立位置に戻る。
これに対して、車体1が中立位置から大幅に上昇した場合には、図3Cに示すように、バルブ体30は図の左側へ大きく移動する。これに伴って、バルブ体30の大径部30Dは縮径部40Bから図3Cの左側へと抜け出し、環状隙間14は存在しなくなる。この状態では、空気ばね3から排出される圧縮空気が、図3C中矢印で示すように、環状隙間14の流路抵抗を受けずに、バルブ収容孔40Aとバルブ体30の間を通って流出するので、大量の圧縮空気が空気ばね3から排出され、車体1は速やかに下降する。このときに、バルブ体30は、ダンパ60の抵抗をほとんど受けずに中立位置に向かって移動する。
上記バルブ体30が中立位置に向かって移動するのに伴い、大径部30Dが縮径部40Bに入って環状隙間14を形成すると、車体1は環状隙間14の流路抵抗によりゆっくりと下降して中立位置に戻る。車体1が中立位置に戻ると同時に、バルブ体30は先端30Eを弁体44に当接する。以後、空気ばね通路6は排気通路8に対して閉鎖され、空気ばね3からの圧縮空気の排出が終了される。
一方、車体1が中立位置からわずかに下降した場合には、作動ピストン20が図2の右側へ移動し、作動スプリング25、26の付勢力によってバルブ体30が中立位置から図2の右側へ移動する。このバルブ体30の移動に対してダンパ60が抵抗を与えることにより、バルブ体30の移動速度が低く抑えられ、作動ピストン20の移動に対するバルブ体30の移動に時間遅れが生じる。このときに、作動スプリング25、26が伸縮することで作動ピストン20とバルブ体30の相対変位が吸収される。
図3Dに示すように、バルブ体30がダンパ60の抵抗を受けつつ作動スプリング25、26の付勢力が釣り合う位置に移動した状態では、バルブ体30に押される弁体44がバルブ収容孔40Aの弁座40Dからリフトするとともに、弁体45がその前後差圧により弁座49Aからリフトし、供給室11と空気ばね通路6が環状隙間14を介して連通する。このときに、バルブ体30の先端30Eが弁体44に当接しているため、空気ばね通路6は排気室12に対して閉鎖される。この状態では、コンプレッサ7からの圧縮空気が、図3D中矢印で示すように、供給源通路9、供給室11、環状隙間14、及び空気ばね通路6を通じて空気ばね3に流入し、空気ばね3は伸長する。このときに、環状隙間14がこれを通過する圧縮空気に対して流路抵抗を与えることにより、微少流量の圧縮空気が空気ばね3に供給され、車体1はゆっくりと上昇して中立位置に戻る。
これに対して、車体1が中立位置から大幅に下降した場合には、図3Eに示すように、バルブ体30は図の右側へ大きく移動する。これに伴って、バルブ体30の大径部30Dは弁体44を押しつつバルブ収容孔40Aの外側へ抜け出し、環状隙間14は存在しなくなる。この状態で供給室11から空気ばね3へと流入する圧縮空気は、図3E中矢印で示すように、環状隙間14の流路抵抗を受けずに流入する。これにより、大量の圧縮空気が空気ばね3に供給され、車体1は速やかに上昇する。このときに、バルブ体30はダンパ60の抵抗をほとんど受けずに中立位置に向かって移動する。
上記バルブ体30が中立位置に向かって移動するのに伴い、大径部30Dが縮径部40Bに入って環状隙間14を形成すると、車体1は環状隙間14の流路抵抗によりゆっくりと上昇して中立位置に戻る。車体1が中立位置に戻ると同時に、弁体44は弁座40Dに当接し、弁体45は弁座49Aに当接する。以後、空気ばね通路6は供給源通路9に対して閉鎖され、空気ばね3に対する圧縮空気の供給が終了される。車体1は荷重条件に新たな変動が生じるまで、中立位置に保持される。
図4は、レベリングバルブ10の流量特性を示し、横軸にバルブ体30の移動距離がとられ、縦軸に空気ばね通路6を通じて空気ばね3に給排される圧縮空気の流量がとられている。この流量は、バルブ体30の移動距離が中立位置から一定範囲にある領域では環状隙間14の絞り流路長さが短くなるのに応じて緩やかに増加し、バルブ体30の移動距離が中立位置から一定範囲を超えて環状隙間14が存在しなくなるのに伴って急増する。
以上のように、レベリングバルブ10が車体1の高さを一定の高さに保つように空気ばね3に給排される空気量を調整する。この調整時には、アクチュエータ90が作動せず、作動ピストン20に追従するバルブ体30の移動を妨げない。これにより、車体1の高さに応じてレベリングバルブ10が開閉作動し、空気ばね3に給排される空気量が的確に調整される。
一方、高さ調整システムにおいて、運転条件に応じて車体1の高さ及び傾斜を調整する際には、レベリングバルブ10が空気ばね3に給排される空気量を調整する流量調整弁として用いられる。この場合に、レベリングバルブ10は、アクチュエータ90が作動してバルブ体30を移動することにより、車体1の高さに連動することなく開閉作動し、空気ばね3に圧縮空気を給排する。
高さ調整システムの作動時において、コントローラ99は、高さ調整システムのコントローラ(図示省略)から車体1の高さの指令値信号を受け、変位検知器95から検知信号に基づいて車体1の高さを目標とする指令値に近づけるようにアクチュエータ90の作動をフィードバック制御する。
次に、アクチュエータ90の作動によってレベリングバルブ10が開閉する動作について説明する。
アクチュエータ90の通電が停止された状態で、バルブ体30が中立位置にある場合には、弁体44が弁座40Dに着座してバルブ収容孔40Aの開口部を閉鎖するとともに、バルブ体30の先端30Eが弁体44に当接している。この状態では、空気ばね通路6は供給室11及び排気室12に対して閉鎖され、空気ばね3に対する圧縮空気の給排は行われない。
空気ばね3に圧縮空気を供給する場合には、アクチュエータ90が通電され、ダンパピストン61及びバルブ体30はアクチュエータ90の推力によって中立位置から図2の右側へ移動する。これにより、コンプレッサ7からの圧縮空気が空気ばね3に供給され、空気ばね3が伸長し、車体1が中立位置より上昇する。このときに、作動ピストン20は中立位置にあるが、作動スプリング25、26が伸縮作動することで、作動ピストン20とバルブ体30との相対変位が許容される。
車体1が上昇するのに伴って、レバー4が中立位置から下方に引き下げられて図1の矢印B方向へ回動し、作動アーム55を介して作動ピストン20が中立位置から図2の左側へ移動する。このときに、作動スプリング25、26が伸縮作動することで、作動ピストン20とバルブ体30との相対変位が許容される。
続いてアクチュエータ90の通電が停止されると、作動スプリング25、26の付勢力によりバルブ体30が図2の右側から左側へ移動する。これにより、空気ばね3の圧縮空気が排出され、空気ばね3が収縮し、車体1が下降して中立位置に戻される。
一方、空気ばね3の圧縮空気を排出する場合には、アクチュエータ90が通電され、ダンパピストン61及びバルブ体30はアクチュエータ90の推力によって中立位置から図2の左側へ移動する。これにより、空気ばね3の圧縮空気が排出され、空気ばね3が収縮し、車体1が中立位置より下降する。
続いてアクチュエータ90の通電が停止されると、作動スプリング25、26の付勢力によりバルブ体30が図2の左側から右側へ移動する。これにより、空気ばね3に圧縮空気が供給され、空気ばね3が膨張し、車体1が上昇して中立位置に戻される。
こうして、アクチュエータ90の駆動力によってバルブ体30が軸方向に移動するときに、作動スプリング25、26が伸縮することで作動ピストン20とバルブ体30の相対変位が許容される。レベリングバルブ10では、アクチュエータ90の作動時に、作動スプリング25、26が弾性変形することにより、作動ピストン20の変位によらずに空気ばね3に給排される空気量が調整される。アクチュエータ90の作動停止時に、作動スプリング25、26の付勢力によって作動ピストン20が変位することにより、空気ばね3に給排される空気量が調整され、車体1が中立位置に戻される。
コントローラ99は、アクチュエータ90を作動させるときに、バイパスバルブ83を開弁してダンパ60の抵抗を小さくする。これにより、アクチュエータ90が作動してバルブ体30を駆動する際に、ダンパ60の抵抗が小さく抑えられ、アクチュエータ90の駆動力によって移動するバルブ体30の応答性を高められる。
高さ調整システムでは、例えば車両の旋回走行時等に車体1の左右に設けられる空気ばね3の高さを相異させることによって車体1のローリング方向に傾斜させる制御が行われる。この場合には、カーブを走行する車両の走行速度に応じて車体1がカーブの内側に倒されることにより、車体1に働く重力と遠心力が釣り合うことで、走行安定性を高められる。
また、高さ調整システムでは、車両の加減速時等に車体1の前後に設けられる空気ばね3の高さを調整することによって車体1のピッチング方向について姿勢を維持する制御が行われる。この場合には、車両の加速時に車体1の後方に設けられる空気ばね3の圧力を前方に設けられる空気ばね3の圧力より高めることにより、車体1に働く慣性力によって車体1が後方に傾く姿勢変化を抑えられる。また、車両の減速時に車体1の前方に設けられる空気ばね3の圧力を車体1の後方に設けられる空気ばね3の圧力より高めることにより、車体1に働く慣性力によって車体1が前方に傾く姿勢変化を抑えられる。
また、高さ調整システムでは、駅における車両の停止時に、駅のホームの高さに合わせて車体1の高さを調整する制御が行われる。駅のホームと車両の床の高さが異なる場合には、車体1の高さを上げることで、駅のホームと車両の床の間の段差を無くすことができる。
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
〔1〕レベリングバルブ10は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて変位する作動ピストン20(作動体)と、作動ピストン20の変位によって軸方向に移動して空気ばね3に対する圧縮空気の供給と排出を切換えるバルブ体30と、バルブ体30を軸方向に駆動するアクチュエータ90と、を備える構成とした。
上記構成に基づき、台車2に対する車体1の高さが変化する動きに連動して作動ピストン20が変位することにより、バルブ体30が軸方向に移動する。バルブ体30が移動することで、空気ばね3に給排される空気量が調整され、車体1の高さが一定の高さが保たれる。
一方、アクチュエータ90がバルブ体30を軸方向に駆動することにより、バルブ体30が作動ピストン20の変位に連動することなく軸方向に移動する。アクチュエータ90によってバルブ体30が移動することで、空気ばね3に給排される空気量が調整され、車体1の高さが任意に変更される。
このように高さ調整装置100は、車体1の高さを一定の高さに保つシステムと、車体1の高さを任意に変更可能なシステムと、の両方を共通の給排系統を用いた簡便な構造で実現することができる。したがって、高さ調整システムを設けるにあたっては、レベリングバルブ10が設けられる回路とは別系統の回路を設けて圧縮空気を空気ばね3に給排する必要がなく、構造の簡素化が図れる。
〔2〕レベリングバルブ10は、バルブ体30が軸方向に移動する動きに抵抗を与えるダンパ60を備える。
上記構成に基づき、ダンパ60がバルブ体30の軸方向への移動に対して抵抗を与えるため、バルブ体30の移動速度が低く抑えられる。こうして、作動ピストン20の移動に対するバルブ体30の移動に時間遅れが生じるため、車体1の高さが変化してから空気ばね3に給排されるまでにある程度の時間がかかる。これにより、例えば車両に乗客が乗り降りして車体1の高さが短い周期で変動する荷重条件では、空気ばね3に対する圧縮空気の供給と排出とが繰り返し行われる現象の発生が抑えられる。その結果、高さ調整装置100における空気消費量が低減され、高さ調整装置100によって消費されるエネルギを減らすことができる。
これに対して、車体1の高さが長い周期で変動する荷重条件では、バルブ体30がダンパ60の抵抗を受けつつ移動し、車体1の高さが変化するのに応じて空気ばね3に圧縮空気が給排され、車体1が中立位置へと円滑に戻される。
〔3〕レベリングバルブ10は、ダンパ60に与えられる抵抗力を変更可能なダンパ抵抗可変機構80を備える構成とした。
上記構成に基づき、アクチュエータ90の作動時にダンパ抵抗可変機構80がダンパ60の抵抗を小さくすることにより、アクチュエータ90の作動によってバルブ体30が軸方向に移動する応答性を高められる。
〔4〕レベリングバルブ10は、台車2に対する車体1の相対変位に応じてバルブ体30の軸方向に移動する作動ピストン20(作動体)を備える。高さ調整装置100は、作動ピストン20の軸方向の移動を車体1の高さとして検出する変位検知器95と、変位検知器95の出力信号に基づいてアクチュエータ90の作動を制御するコントローラ99と、をさらに備える構成とした。
上記構成に基づき、変位検知器95は作動ピストン20の変位に応じて車体1の高さを検出する。コントローラ99は変位検知器95の出力信号に基づいてアクチュエータ90の作動を制御することにより、車体1の高さを指令値に近づけることができる。
変位検知器95が作動ピストン20と共にレベリングバルブ10に収容されることにより、レベリングバルブ10の外部にレバー4の回動角度を検出するレゾルバ等の変位検知器を設ける必要がなく、システムの簡素化が図れる。
〔5〕レベリングバルブ10は、作動ピストン20(作動体)の変位によってバルブ体30に付勢力を与える作動スプリング25、26(付勢部材)をさらに備える構成とした。
上記構成に基づき、台車2に対して車体1の高さが変化するのに連動して作動ピストン20が移動すると、作動スプリング25、26が弾性変形する。アクチュエータ90の作動停止時に、作動スプリング25、26の付勢力によってバルブ体30が移動することで、空気ばね3に対する圧縮空気の供給または排出が行われ、車体1が中立位置へと円滑に戻される。
アクチュエータ90の作動時に、アクチュエータ90によってバルブ体30が軸方向へ移動するときに、作動スプリング25、26が伸縮することで作動ピストン20とバルブ体30の相対変位が許容される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、バルブハウジング40内に画成されるスペース(供給室11)に供給源通路9が連通され、ケーシング18内に画成されるスペース(排気室12)に排気通路8が連通される。これに限らず、バルブハウジング40内に画成されるスペースに排気通路8が連通され、ケーシング18内に画成されるスペースに供給源通路9が連通される構成としてもよい。
また、上記実施形態では、作動ピストン20及び作動スプリング25、26がバルブ体30に取り付けられる。これに限らず、作動ピストン及び作動スプリングがダンパ60のダンパピストン61に取り付けられる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、アクチュエータ90及びダンパピストン61はバルブ体30と同軸上で連結される。これに限らず、アクチュエータ90またはダンパピストン61はリンク機構等を介してバルブ体30に連結され、バルブ体30と同軸上に設けられない構成としてもよい。
また、台車2に対する車体1の相対変位に応じて変位する作動体は、レベリングバルブ10の外部に設けられるレバー4または連結棒5であってもよい。その場合に、作動体の変位によって弾性変形する付勢部材は、レバー4と作動アーム55の間、またはレバー4と連結棒5の間に設けられる構成としてもよい。また、連結棒5、レバー4、作動シャフト50自体が弾性変形して付勢部材の機能を果たすようにしてもよい。
また、バルブ体30は、バルブ収容孔40Aとの間に環状隙間14を画成するスプール状のもの限らず、環状の弁座に対して軸方向に変位するポペット状のものであってもよい。