JP6218375B2 - 人工土壌粒子、及び人工土壌培地 - Google Patents

人工土壌粒子、及び人工土壌培地 Download PDF

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Description

本発明は、フィラーが複数集合してなる人工土壌粒子、及び当該人工土壌粒子を使用した人工土壌培地に関する。
近年、生育条件がコントロールされた環境下で野菜等の植物を栽培する植物工場が増加している。従来の植物工場は、レタス等の葉物野菜の水耕栽培が中心であったが、最近では水耕栽培には向かない根菜類についても植物工場での栽培を試みる動きがある。根菜類を植物工場で栽培するためには、土壌としての基本性能に優れ、品質が高く、且つ取り扱いが容易な人工土壌を開発する必要がある。
これまでに開発された人工土壌として、有機物、無機物及び土壌のうち少なくとも1種類の構造成分、並びに石こう等の固形物を水溶性ウレタンポリマーの硬化物によって部分的に結合した多孔性人工土壌体があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の多孔性人工土壌体は、固形物を部分的に結合させて人工土壌体内に水を保持可能な空孔を形成することにより、保水性を向上させたものである。
また、粉状のゼオライトを水溶性高分子からなる結合材で結合して団粒化した団粒構造ゼオライトがあった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の団粒構造ゼオライトは、ゼオライトを団粒構造化して団粒体内に水を保持可能な孔隙を形成することにより、保水性を高めたものである。
特開平5−244820号公報 特開2000−336356号公報
人工土壌粒子の開発に当たっては、天然土壌と同等の植物育成力を達成しながら、その能力を維持するために高い強度を有し、且つ作業性が良好となるものが望まれる。この点、特許文献1の人工土壌は、水溶性ウレタンポリマーの硬化物による固形物の結合形態が部分的であることから、十分な強度を有しているとはいえない。このため、植栽等の作業中に人工土壌粒子の構造が破壊され、保水性が低下する虞がある。また、人工土壌粒子が破壊されると、作業の支障となる微粉が発生する上、人工土壌粒子どうしの凝集力が弱まるため、作業性が低下する虞がある。
特許文献2の団粒構造ゼオライトは、水の存在下で粉末のゼオライトと結合材とを混合して乾燥させただけのものであるため、ゼオライトの粒子間の結合力が十分でない虞がある。この団粒構造ゼオライトを用いて植栽等の作業を行うと、外的な圧力等により団粒構造が破壊され、土壌の基本性能が低下したり、作業性が低下する虞がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、外的な圧力等を受けても土壌としての基本性能を維持することができ、且つ作業性の良好な人工土壌粒子を提供することを目的とする。また、そのような人工土壌粒子を使用した人工土壌培地を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌粒子の特徴構成は、
細孔を有するフィラーが複数集合してなるコア部と、
前記コア部を補強するように被覆する通水性補強膜と、
を備えたことにある。
本構成の人工土壌粒子は、細孔を有するフィラーが複数集合してコア部を構成していることから、フィラーの間に水分を吸収させるとともに、フィラーの細孔に植物に必要な養分を取り込ませることが可能となり、土壌としての基本性能が備わったものとなる。人工土壌粒子の基本性能を維持するためには、その構造を安定させることが求められるが、本構成の人工土壌粒子は、コア部が通水性補強膜で被覆されているため、コア部と外部環境との通水性が一定以上に確保されながら、コア部が通水性補強膜によって補強されることで人工土壌粒子の構造が安定なものとなる。このため、例えば、植栽等の作業時において外的な圧力が加わった場合でも、人工土壌粒子の構造は破壊され難い。また、人工土壌粒子の破壊に由来する微粉等が発生しないため、植栽等における作業性も低下しない。
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記細孔はサブnmオーダー乃至サブμmオーダーのサイズを有し、前記フィラーの間にサブμmオーダー乃至サブmmオーダーの連通孔が形成されていることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、フィラーの細孔の孔径がサブnmオーダー乃至サブμmオーダーであるため、当該細孔に植物の品質を向上させるために必要な養分を効果的に取り込むことができる。また、集合したフィラーの間に形成される連通孔の孔径がサブμmオーダー乃至サブmmオーダーであるため、当該連通孔に植物の生育に不可欠な水分を効果的に吸収することができる。
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記連通孔が外部から水分及び養分をとりこむとともに、前記細孔が前記連通孔から前記養分を受け取り可能なように、前記細孔が前記連通孔の周囲に分散配置されていることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、細孔と連通孔との位置関係について、連通孔が外部から水分及び養分を取り込むとともに、細孔が連通孔から養分を受け取り可能なように、細孔が連通孔の周囲に分散配置されているため、主に細孔に保肥性を担わせ、連通孔に保水性を担わせることができる。このように、本構成の人工土壌粒子は、一つの粒子内において、細孔と連通孔との間に特定の関係を持たせており、細孔と連通孔とで異なる機能を分担させているため、土壌としての基本性能をバランスよく発揮し得る(すなわち、保水性と保肥性とのバランスに優れた)、高品質で機能的な人工土壌粒子を実現することができる。
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記連通孔の全容積が前記細孔の全容積より大きくなるように、前記フィラーは三次元ネットワーク状に結合されていることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、連通孔の全容積が細孔の全容積より大きくなるように、フィラーを三次元ネットワーク状に結合しているため、人工土壌粒子を軽量化することができる。
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記通水性補強膜は、多孔質構造を備えていることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、コア部を被覆する通水性補強膜が多孔質構造を備えているため、コア部と外部環境との通水性が高まり、さらに外気が通水性補強膜の多孔質構造を通過することができるので、良好な通気性も得ることができる。
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記通水性補強膜は、その内側面が前記コア部の外表部より内部側に侵入した状態で設けられることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、コア部の外表部を被覆する通水性補強膜は、その内側面がコア部の外表部より内部側に侵入した状態にされているため、コア部の外表部付近は通水性補強膜の存在により密な構造となり、フィラーどうしの結合力が高まる。その結果、外的な圧力に耐え得る高強度の人工土壌粒子が得られる。
本構成の人工土壌粒子において、
前記細孔にイオン交換能を付与してあることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、細孔にイオン交換能を付与してあるため、外部環境から基部に取り込んだ水分に含まれる養分を細孔に吸着することができる。これにより、長期の使用にも耐え得る保肥性を高めた人工土壌粒子を実現することができる。
本発明に係る人工土壌粒子において、
0.2〜10mmの粒径を有することが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、粒径を0.2〜10mmとすることで、特に根菜類の栽培に適した取り扱いの容易な人工土壌とすることができる。
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌培地の特徴構成は、
前記何れか一つに記載の人工土壌粒子を使用したことにある。
本構成の人工土壌培地によれば、本発明の人工土壌粒子を使用しているため、土壌としての基本性能を維持しながら、強度に優れた人工土壌培地を実現することができる。また、このような人工土壌培地は、栽培対象の植物に対して水分や養分を適切に供給できるので、メンテナンスに手間が掛からず、取り扱いが容易なものとなる。
図1は、本発明の人工土壌粒子及び人工土壌培地を概念的に示した説明図である。 図2は、本発明の人工土壌粒子のコア部の細孔及び連通孔を概念的に示した説明図である。
以下、本発明に係る人工土壌粒子、及び人工土壌培地に関する実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
<人工土壌粒子及び人工土壌培地>
図1は、本発明の人工土壌粒子10及び人工土壌培地100を概念的に示した説明図である。図1(a)は、人工土壌粒子10を使用した人工土壌培地100を示す。図1(b)は、一つの人工土壌粒子10の断面を示す。人工土壌培地100は、人工土壌粒子10により構成されており、隣接する人工土壌粒子10の間に一定の隙間11を有している。この隙間11は、空気及び水が通過することができるため、植物に必要な水分を保持しながら余分な水分を排出することができる。人工土壌培地100が湿潤状態となった場合、隙間11から余分な水分を排出し、人工土壌培地100が乾燥状態となった場合には、隙間11の毛細管現象により、周囲に存在する水分を吸い上げることができる。このように、人工土壌培地100は、隣接する人工土壌粒子10の間に形成される隙間11によって、優れた通気性及び排水性を実現している。また、隙間11は、植物の根が成長するための空間を提供するため、植物の根が張り易く、ひいては植物の成長を促すことができる。上述のように、人工土壌培地100としての機能(通気性及び排水性)を維持するためには、人工土壌粒子10の土壌としての基本性能以外に、その構造を安定させることが必要となる。そこで、本発明の人工土壌粒子10は、その構造を安定化させるための工夫がなされている。以下、人工土壌培地100を構成する人工土壌粒子10について詳細に説明する。
図1(b)は、多孔質天然鉱物であるゼオライト様のフィラー1を使用して形成した人工土壌粒子10の断面を例示している。人工土壌粒子10のコア部2は、細孔3を有する複数のフィラー1が集合して粒状に構成されたものであり、複数のフィラー1の間に連通孔4が形成されている。人工土壌粒子10のコア部2については、後で詳細に説明する。
人工土壌粒子10の内部に形成されている連通孔4は、人工土壌粒子10の外部環境と接続しており、人工土壌粒子10の内部と外部環境との間の通水性を確保し、水分及び養分を取り込むとともに、連通孔4からフィラー1の細孔3に養分を受け渡している。ここで、「外部環境」とは、人工土壌粒子10の外側の環境を意図する。図1に示す複数の人工土壌粒子10が集合した状態の人工土壌培地100においては、複数の人工土壌粒子10の間に形成される隙間11が外部環境に相当する。外部環境には植物の育成に必要な水分が存在し得る。
人工土壌粒子10中の複数のフィラー1は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、例えば、一粒子内でバインダーやゲル化剤等による網目構造5を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していれば、複数のフィラー1が集合して粒状の人工土壌粒子10のコア部2を構成したものと考えることができる。人工土壌粒子10のコア部2は、図1(b)に示すように、細孔3を有する複数のフィラー1を網目構造5で結合することにより、フィラー1の間に連通孔4を形成した多孔質構造となっている。なお、図1(b)では、紙面の都合上、細孔3と連通孔4との位置関係を二次元的に示しているが、実際の人工土壌粒子10では三次元的にフィラー1が結合した構造となっている。
連通孔4は、複数のフィラー1で取り囲むように構成されており、このフィラー1どうしが網目構造5で結合されて、連通孔4の構造が維持されている。連通孔4は、外部環境から与えられた水を保持する能力があり、連通孔4のサイズを変えることにより、人工土壌粒子10の保水性を調整することができる。連通孔4のサイズは、網目構造5のサイズを変更することで調整可能であるが、網目構造5のサイズを大きくすると、隣接するフィラー1の間、及び網目構造5とフィラー1との間に隙間等が生じ、人工土壌粒子10全体としての強度が弱まることがある。この場合、植栽等の作業時において人工土壌培地100に外力が加わると、人工土壌粒子10のコア部2の構造が破壊され、土壌としての基本性能が維持できなくなることがある。また、長期にわたって人工土壌培地100を使用する場合、植物の産生する根酸(クエン酸等)、養分として添加するリン酸、常在微生物、紫外線等により、バインダーやゲル化剤が劣化して、人工土壌粒子全体としての強度が低下し、土壌としての基本性能が維持できなくなることがある。さらに、人工土壌粒子10の内部にカリウム、リン酸、窒素等の養分を坦持させる場合、これら成分と化学反応を起こし易い、又は結合し易いバインダーやゲル化剤を使用している場合には、バインダーやゲル化剤が分解され易くなるため、人工土壌粒子全体としての強度が低下し、土壌としての基本性能が維持できなくなることがある。これら人工土壌粒子10のコア部2の構造の破壊や劣化に起因して、作業の支障となる微粉が発生する上、人工土壌粒子10どうしの凝集力が弱まるため、作業性が低下する虞がある。そこで、本発明の人工土壌粒子10は、コア部2を通水性補強膜6で被覆して補強している。通水性補強膜6は、コア部2と外部環境との通水性を一定以上に確保しつつ、人工土壌粒子10の構造を安定化させるものである。通水性補強膜6は、全ての人工土壌粒子10に形成しても構わないが、特定の種類の人工土壌粒子にだけ形成することも可能である。本実施形態では、通水性補強膜6は、図1(b)に示すように、コア部2の外表部全体に設けられている。これにより、人工土壌粒子10のコア部2は外表部から内部側に向けて締め固められて補強され、その結果、人工土壌粒子10の強度が向上して安定化する。なお、通水性補強膜6は、コア部2を補強できるものであればコア部2の外表部の一部を被覆するものであっても構わない。
通水性補強膜6は、水分子が通過可能な微細孔を有する膜であるが、水分が一方側から浸透して他方側に移動可能な浸透性膜とすることもできる。通水性補強膜6は、材質や膜厚を変更することによって、人工土壌粒子10の保水性を調整することが可能となる。通水性補強膜6の材質は、水に不溶性で酸化され難いものが好ましく、例えば、樹脂材料が挙げられる。そのような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル等の酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタン等のウレタン系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂材料に代えて、アクリルアミド等の高分子ゲル化剤、アルギン酸塩やカラギーナン等の天然多糖類系ゲル化剤、天然ゴムやシリコーンゴム等のゴム系コーティング剤等を使用することも可能である。さらに、樹脂架橋剤を使用することもできる。そのような樹脂架橋剤としては、例えば、イソシアネート、ビニルスルホン化合物、アジリジン、ジヒドラジド、メチル化アミン、ジグリシジルエーテル、カルボジイミド、ホルムアルデヒド、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。このような材質からなる通水性補強膜6は、外部環境からの水分の取り込み、及び外部環境への水分の放出を調整することが可能となるため、通水性補強膜6を備えた人工土壌粒子10は、人工土壌等の水分の移動を伴う用途において、優れた適応性を示すことができる。
人工土壌粒子10は、連通孔4が外部から水分及び養分を取り込むとともに、細孔3が連通孔4から養分を受け取り可能なように、細孔3が連通孔4の周囲に分散配置されていることが好ましい。このような独特の構造を形成することで、連通孔4の水分に含まれる養分を連通孔4から細孔3へとスムーズに移動させることができる。また、人工土壌粒子10は、連通孔4の全容積が細孔3の全容積より大きくなるように、フィラー1が三次元ネットワーク状に結合されていることが好ましい。これは、連通孔4の保水性を十分に確保するとともに、連通孔4から保肥性を有する細孔3への養分の移動がスムーズに行われるようにするためである。また、連通孔4の全容積が細孔3の全容積より大きくなれば、人工土壌粒子10が軽量となるため、嵩密度が小さくなり、人工土壌培地100としての取り扱いも容易となる。
ここで、上記独特の構造を有する人工土壌粒子10は、外部から圧力が掛かると、特に外表部付近に存在するフィラー1がダメージを受け易い。そこで、コア部2に通水性補強膜6を被覆して人工土壌粒子10を形成するに際し、通水性補強膜6の内側面がコア部2の外表部から若干内部側に侵入した状態になるまで通水性補強膜6の厚みを形成し、コア部2を補強することが好ましい。このように通水性補強膜6を形成すると、コア部2の外表部付近は通水性補強膜6の存在により密な構造となり、フィラー1どうしの結合力が高まる。その結果、フィラー1を三次元ネットワーク状に結合させたコア部2の構造が安定化し、外的な圧力に耐え得る高強度の人工土壌粒子10が得られる。なお、通水性補強膜6の膜厚は、1〜200μmに設定され、好ましくは10〜100μmに設定され、より好ましくは20〜60μmに設定される。
人工土壌粒子10は、コア部2と外部環境との十分な通気性を確保するため、コア部2を被覆する通水性補強膜6が多孔質構造を備えていることが好ましい。例えば、図1(b)に示すように、通水性補強膜6にはコア部2と外部環境とを連通させる開口部7が形成される。開口部7は通水性補強膜6が本来有する微細孔よりも大きなサイズを有している。この開口部7により、人工土壌粒子10は十分な通気性を備え、さらに、開口部7が当然に水分も通過可能であることから、結果としてコア部2と外部環境との通水性も向上する。なお、本実施形態では通水性補強膜6を多孔質構造とし、通水性補強膜6に直接開口部7を形成しているが、天然鉱物、合成高分子発泡材等の多孔質フィラーや繊維等を通水性補強膜6に混合し、多孔質フィラーや繊維等を介して開口部7が形成された構成とすることも可能である。通水性補強膜6に形成される開口部7の径は、サブμmオーダー乃至サブmmオーダーであり、例えば、1〜100μm、好ましくは10〜50μmに設定される。
<通水性補強膜の形成方法>
通水性補強膜6は、例えば、以下の工程により形成することができる。先ず、粒状化したコア部2を容器に移し、コア部2の体積(占有容積)の半分程度の水を加え、コア部2の細孔3及び連通孔4に水を浸み込ませる。次に、水を浸み込ませたコア部2を、希釈したポリエチレンエマルジョン溶液に入れ、常温で1時間撹拌し、コア部2の表面にポリエチレンを均一に付着させる。ポリエチレンエマルジョン溶液には、顔料、香料、殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、殺虫剤等の添加物を混合しておくことも可能である。その後、100℃でポリエチレンを溶融させ、コア部2の外表部付近のフィラー1にポリエチレンを融着させて通水性補強膜6を形成する。これにより、コア部2は外表部がポリエチレンの通水性補強膜6で被覆された高強度の人工土壌粒子10が完成する。通水性補強膜6は、ポリエチレンが溶融する際にポリエチレンエマルジョンに含まれていた溶媒が蒸発し、多孔質構造が形成される。多孔質構造は、コア部2と外部環境とを連通する開口部7として機能する。この方法では、エマルジョン溶液中のポリエチレンの濃度を調整したり、撹拌時間を調整することにより、コア部2の外表部に付着するポリエチレンの量を変更することができる。これにより、人工土壌粒子10の構造に応じて、通水性膜補強膜6による適切な補強を行いつつ、開口部7の大きさを調整することができる。作製された人工土壌粒子10は、必要に応じて、乾燥及び分級が行われ、粒径が調整され、所望の人工土壌粒子10が得られる。
人工土壌粒子10の連通孔4の全容積を細孔3の全容積より大きくなるように、フィラー1を三次元ネットワーク状に結合させる場合は、特にコア部2の構造が脆弱となり易い。そこで、コア部2を補強するためには、上述の通水性補強膜6の形成方法において、コア部2に浸み込ませる水の量を減らし(例えば、コア部2の体積の1/3程度の量とする)、且つ水を浸み込ませたコア部2に添加するポリエチレンエマルジョンの量を増やす(例えば、コア部2の体積の1/2程度の量とする)ことが有効となる。この場合、通水性補強膜6は、コア部2の外表部から若干内部側に浸透した状態にまで厚みが形成されることになる。その結果、コア部2の外表部付近は通水性補強膜6の存在により密な構造となり、フィラー1どうしの結合力が高まって、外的な圧力に耐え得る高強度の人工土壌粒子10を形成することができる。
<人工土壌粒子の強度>
通水性補強膜6によって補強された人工土壌粒子10の強度は、繰り返し圧縮荷重の付加による容積変化率で評価することができる。容積変化率は、以下の方法で求めることができる。土壌評価用の試料円筒(内径:約5cm、高さ:約5cm、容積:100mL)にサンプルとして人工土壌100mLを充填し、試料円筒よりも径が僅かに小さい円筒状の錘(重量:5kg)をゆっくりとサンプルの上に載置する。その状態で60秒間放置し、錘を取り除く。これらの操作を10回繰り返す(繰り返し圧縮荷重25KPa)。繰り返し圧縮荷重の付与が完了したら、サンプルをそのまま60秒間放置し、メスシリンダー等を用いてサンプルの容積Vを測定し、容積変化率ΔVを以下の式[1]から求める。
ΔV(%) = (100−V)/100 × 100 ・・・ [1]
本発明の人工土壌粒子10は、繰り返し圧縮荷重25KPaの付加後の容積変化率が20%以下になるように設計され、好ましい容積変化率は15%以下である。容積変化率が20%を超えると、プランター等に人工土壌を充填したり、苗を移植する際に、人工土壌粒子10が粉砕され易くなり、人工土壌粒子10の構造(フィラー1の細孔3が複数のフィラー1間の連通孔4の周囲に分散配置され、さらに、フィラー1が三次元ネットワーク状に結合した構造)が失われることになる。その結果、土壌としての基本性能が維持できなくなったり、作業性も低下する。また、人工土壌粒子10の構造が失われると、人工土壌の締め固めが起こり易くなるため、根菜類の栽培に悪影響を及ぼし得る。本発明の人工土壌粒子10は、上記の通水性補強膜6の形成方法を用いて上記容積変化率の範囲に容易に調整することができる。
<人工土壌粒子のコア部の構造>
本発明の人工土壌粒子10は、上述のように、連通孔4が外部から水分及び養分を取り込むとともに、細孔3が連通孔4から養分を受け取り可能なように、細孔3が連通孔4の周囲に分散配置された独特の構造を有するコア部2を備えている。このコア部2の独特の構造について説明する。図2は、人工土壌粒子10のコア部2の細孔3及び連通孔4を概念的に示した説明図である。図2(a)は、フィラー1として、多孔質天然鉱物であるゼオライト1aを使用した人工土壌粒子10のコア部2を例示したものである。図2(b)は、フィラー1として、層状天然鉱物であるハイドロタルサイト1bを使用した人工土壌粒子10のコア部2を例示したものである。なお、図2は、人工土壌粒子10の細孔3と連通孔4との関係をわかり易く示すために、網目構造5及び通水性補強膜6を省略している。また、図2中に示す記号x、y及びzは、細孔3、連通孔4及び人工土壌粒子10のサイズを夫々表しているが、図面上でのx、y及びzの大きさは実際のサイズ関係を反映したものではない。
人工土壌粒子10のコア部2を構成するフィラー1は、表面から内部にかけて多数の細孔3を有する。細孔3は、種々の形態を含む。例えば、フィラー1が、図2(a)に示すゼオライト1aの場合、当該ゼオライト1aの結晶構造中に存在する空隙3aが細孔3であり、図2(b)に示すハイドロタルサイト1bの場合、当該ハイドロタルサイト1bの層構造中に存在する層間3bが細孔3である。つまり、本発明において「細孔」とは、フィラー1の構造中に存在する空隙部、層間部、空間部等を意図し、これらは「孔状」の形態に限定されるものではない。
フィラー1の細孔3のサイズ(図2に示す空隙3a又は層間3bのサイズxの平均値)は、サブnmオーダー乃至サブμmオーダーとなる。例えば、フィラー1が、図2(a)に示すゼオライト1aの場合、当該ゼオライト1aの結晶構造中に存在する空隙3aのサイズ(径)は、0.3〜1.3nm程度である。フィラー1が、図2(b)に示すハイドロタルサイト1bの場合、当該ハイドロタルサイト1bの層構造中に存在する層間3bのサイズ(距離)は、0.3〜3.0nm程度である。この他に、フィラー1として、有機多孔質材料を使用することもでき、その場合の細孔3の径xは、0.1〜0.8μm程度となる。フィラー1の細孔3のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定される。
連通孔4のサイズ(図2に示す隣接するフィラー1間の距離yの平均値)は、フィラー1やバインダーの種類、組成、造粒条件により変化し得るが、サブμmオーダー乃至サブmmオーダーとなる。例えば、フィラー1を図2(a)に示すゼオライト1a、又は図2(b)に示すハイドロタルサイト1bを使用し、ゲル化剤として高分子系のゲル化剤を使用した場合、連通孔4のサイズは、0.1〜20μmである。連通孔4のサイズは、測定対象の状態に応じて、ガス吸着法、水銀圧入法、小角X線散乱法、画像処理法等を用いて、又はこれらの方法を組み合わせて、最適な方法により測定される。例えば、以下の測定法により、連通孔4のサイズを測定することができる。先ず、測定対象の人工土壌粒子10をスケールとともに顕微鏡で観察し、その顕微鏡画像を画像処理ソフト(二次元画像解析処理ソフトウェア「WinROOF」、三谷商事株式会社製)を使用して取得する。画像から100個の人工土壌粒子10を選択し、連通孔4の輪郭をトレースする。トレースした図形の周長から、相当円の直径を算出する。夫々の連通孔4から求めた相当円の直径(100個)の平均を平均サイズ(単位:ピクセル)とする。そして、平均サイズを顕微鏡画像中のスケールと比較し、単位長さ(μmオーダー乃至mmオーダー)に変換して、連通孔4のサイズを算出する。
人工土壌粒子10の粒径(図2に示す人工土壌粒子10のサイズzの平均値)は、0.2〜10mmであり、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜5mmである。人工土壌粒子10の粒径の調整は、例えば、篩による分級で行うことができる。人工土壌粒子10の粒径が0.2mm未満の場合、人工土壌粒子10間の間隙が小さくなって排水性が低下することにより、栽培する植物が根から酸素を吸収し難くなる虞がある。一方、人工土壌粒子10の粒径が10mmを超えると、人工土壌粒子10間の間隙が大きくなって排水性が過剰になることにより、植物が水分を吸収し難くなったり、人工土壌粒子10が疎になって植物が横倒れする虞がある。人工土壌粒子10の粒径は、例えば、連通孔4と同じ方法である光学顕微鏡観察及び画像処理法を用いて測定され、例えば、前述の画像処理を用いた測定法により、人工土壌粒子10の粒径を測定することができる。
人工土壌粒子10を設計するに際し、連通孔4の保水性をさらに高めることも可能である。連通孔4の保水性を向上させる一つの方法として、人工土壌粒子10の連通孔4に保水性材料を導入することが挙げられる。保水性材料は、例えば、連通孔4の全体に保水性材料を充填したり、連通孔4の表面を保水性材料の膜でコーティングしたりすることで導入可能である。このとき、連通孔4の少なくとも一部に保水性材料が存在していればよい。保水性材料の導入は、例えば、保水性のある高分子材料を溶媒に溶解して高分子溶液を調製し、当該高分子溶液を人工土壌粒子10に含浸させることによって行われる。あるいは、人工土壌粒子10を粒状化する際、原材料に保水性のある繊維を混合しておいても構わない。この場合、保水性材料である繊維は、人工土壌粒子10の連通孔3だけでなく、人工土壌粒子10の全体に導入することも可能である。そして、繊維が導入された人工土壌粒子10は、保水性が向上することは当然であるが、人工土壌粒子10の強度や耐久性も向上する。従って、保水性材料として導入される繊維は、補強材としても機能する。人工土壌粒子10に導入可能な繊維としては、例えば、ビニロン、ウレタン、ナイロン、アセテート等の合成繊維や、綿、羊毛、レーヨン等の天然繊維が挙げられる。これらの繊維のうち、ビニロン及び綿が好ましい。さらに、繊維の形態としては、短繊維であることが好ましい。保水性材料を導入した人工土壌粒子10は、保水力が大きく向上するため、例えば、乾燥状態の外部環境で使用した場合でも長期間水を与えなくとも植物の枯れや育成不良を防止することができる。さらに、保水性材料の導入により、人工土壌粒子10の強度及び耐久性も向上するため、長期に亘って保水性を維持する相乗効果も期待できる。
フィラー1は、人工土壌粒子10が十分な保肥力を有するように、細孔2にイオン交換能が付与された材料を使用することが好ましい。この場合、イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換能が付与された材料、陰イオン交換能が付与された材料、又は両者の混合物を使用することができる。また、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の細孔2に上記のイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これをフィラー1として使用することも可能である。陽イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換性鉱物、腐植、及び陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換能が付与された材料として、陰イオン交換性鉱物、又は陰イオン交換樹脂が挙げられる。
陽イオン交換性鉱物は、例えば、ゼオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系鉱物、雲母系鉱物、バーミキュライトが挙げられる。陽イオン交換樹脂は、例えば、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ゼオライト、又はベントナイトが好ましい。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂における陽イオン交換容量は、10〜700meq/100gに設定され、好ましくは20〜700meq/100gに設定され、より好ましくは30〜700meq/100gに設定される。陽イオン交換容量が10meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陽イオン交換容量が700meq/100gを超えるように保肥力を過剰にしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
陰イオン交換性鉱物は、例えば、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーライト、シェーグレン石、緑青等の主骨格として複水酸化物を有する天然層状複水酸化物、合成ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様物質、アロフェン、イモゴライト、カオリン等の粘土鉱物が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ハイドロタルサイトが好ましい。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂における陰イオン交換容量は、5〜500meq/100gに設定され、好ましくは20〜500meq/100gに設定され、より好ましくは30〜500meq/100gに設定される。陰イオン交換容量が5meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陰イオン交換容量が500meq/100gを超えるように保肥力を過剰にしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
<コア部の粒状化方法>
フィラー1が図2(a)に示すゼオライト1aや、図2(b)に示すハイドロタルサイト1bのような無機天然鉱物である場合、複数のフィラー1を集合して人工土壌粒子10のコア部2を構成するために、バインダーを用いて複数のフィラー1が粒状化される。例えば、バインダーとしてゲル化剤を用いた場合、図1(b)に示すように、コア部2は、フィラー1が網目構造5により三次元ネットワーク状に結合され、隣接するフィラー1の間に連通孔4が形成される。コア部2の粒状化方法としては、先ず、フィラー1とゲル化剤とを混合した混合溶液を調製し、この混合溶液を、ゲル化を引き起こすための架橋剤又は開始剤を含む溶液に滴下してゲル化物を生成させる。生成したゲル化物を溶液から回収し、洗浄した後、十分乾燥させてコア部2を作製する。また、フィラー1にバインダーや溶媒等を加えて混合し、混合物を造粒機に導入し、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により行うことも可能である。
上述のゲル化剤を用いた粒状化方法において、人工土壌粒子10の連通孔4の全容積を細孔3の全容積より大きくするためには、以下の手順を実施する。先ず、フィラー1とゲル化剤とを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に空気を含ませた後、ゲル化を引き起こすための架橋剤又は開始剤を含む溶液に滴下して空気を含んだゲル化物を生成させる。生成したゲル化物を溶液から回収し、洗浄した後、十分乾燥させてコア部2を作製する。このとき、ゲル化物に含まれていた水分が蒸発し、ゲル化物の空気を含んでいた部分及びゲル化物の水分が蒸発した部分に空隙(連通孔4)が形成し、連通孔4の全容量を大きくしたコア部2が形成される。このゲル化物に含ませる空気の量を調整することにより、連通孔4の全容積が細孔3の全容積より大きいコア部2を形成することができる。
バインダーは、コア部2を粒状化できるものであればよく、ゲル化剤がバインダーとして使用される場合、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩等の天然高分子系のゲル化剤や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の合成高分子系のゲル化剤等が挙げられ、合成樹脂がバインダーとして使用される場合、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。また、無機系材料のバインダーとして、例えば、水ガラス等のケイ酸系材料、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系材料、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系材料、セメント等の水硬性材料を用いることも可能である。上記バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。
ここで、一例として、コア部2の形成に利用する天然高分子系のゲル化剤であるアルギン酸塩と多価金属イオン(架橋剤)とのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不溶であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こりゲル化する。ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にフィラー1を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にフィラー1が分散した混合液を形成する。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸ゲル中にフィラー1が分散した粒状物としてのコア部2が得られる。
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、フィラー1を添加した混合液の攪拌や、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化が起きる2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的でない。
本発明の補強材で補強された人工土壌粒子について、補強後の強度を評価する試験を実施した。試験結果を実施例として以下に説明する。
<人工土壌粒子の作製>
(1)粒状物の作製
下記の表1に記載される配合(重量%)に従って、フィラーとしての陽イオン交換性鉱物であるゼオライト、陰イオン交換性鉱物であるハイドロタルサイトをアルギン酸ナトリウム0.5%水溶液に添加し、ミキサー(SM−L57:三洋電機(株)製)を用いて3分間撹拌し、混合液を作製した。得られた混合液を、多価金属イオン水溶液である5%塩化カルシウム水溶液に滴下してゲル化物を生成した。生成したゲル化物を溶液から回収し、洗浄した後、55℃の乾燥機中で24時間乾燥させて粒状物を作製した。なお、比較例1では、通水性補強膜を形成していない上記粒状物をそのまま人工土壌粒子として使用した。
(2)粒状物の補強(実施例1〜7)
表1に記載される配合(重量%)に従って、粒状物の外表部に通水性補強膜を形成した。
実施例1:粒状物を樹脂材料であるポリオレフィンエマルジョン(住友精化株式会社製 セポルジョン(登録商標)G)の原液に常温で3分間含浸させた後、100℃で24時間乾燥させてポリオレフィンで被覆した人工土壌粒子を作製した。
実施例2:粒状物を樹脂材料である酢酸ビニルエマルジョン(コニシ株式会社製 CH18)の50%水溶液に常温で3分間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させて酢酸ビニルで被覆した人工土壌粒子を作製した。
実施例3:粒状物を樹脂材料であるエチレン酢酸ビニルエマルジョン(河口株式会社製 布用手芸ボンド)の50%水溶液に常温で3分間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてエチレン酢酸ビニルで被覆した人工土壌粒子を作製した。
実施例4:粒状物を樹脂材料であるウレタン樹脂エマルジョン(ハマナカ株式会社製 布・フェルト用クラフトボンド)の50%水溶液に常温で3分間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてウレタン樹脂で被覆した人工土壌粒子を作製した。
実施例5:粒状物を樹脂材料であるビニルウレタン樹脂(アイカ工業株式会社製 AUH−1)の20%キシレン希釈液に常温で3分間含浸させた後、80℃で24時間乾燥させてビニルウレタン樹脂で被覆した人工土壌粒子を作製した。
実施例6:粒状物を樹脂架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテル(和光純薬工業株式会社製)の原液に80℃で1時間含浸させ、エチレングリコールジグリシジルエーテルを架橋させて人工土壌粒子を作製した。
実施例7:粒状物を樹脂架橋剤であるカルボジイミド(日清紡ケミカル株式会社製 カルボジライト(登録商標))の原液に常温で1時間含浸させ、カルボジイミドを架橋させて人工土壌粒子を作製した。
Figure 0006218375
<試験内容>
上記作製した各人工土壌粒子(実施例1〜7、比較例1)を、10%クエン酸溶液及び5%リン酸溶液に夫々含浸した。各人工土壌粒子の崩壊の有無を目視で観察し、各人工土壌粒子のクエン酸及びリン酸に対する耐性について評価した。12時間経過後も人工土壌粒子に崩壊が認められないものを○、1〜12時間以内で崩壊した人工土壌粒子を△、1時間以内で崩壊した人工土壌粒子を×とした。結果を表2に示す。
Figure 0006218375
表2の結果から、実施例1〜7の人工土壌粒子は、比較例1の人工土壌粒子と比較して、根酸の構成成分であるクエン酸、及び養分として使用されるリン酸に対して高い耐性を示した。本発明に係る人工土壌粒子は、土壌代替品として長期間の使用にも耐え得ることが確認された。
本発明の人工土壌粒子、及び人工土壌培地は、植物工場等で使用される人工土壌に利用可能であるが、その他の用途として、施設園芸用土壌、緑化用土壌、成型土壌、土壌改良剤、インテリア用土壌等にも利用可能である。
1 フィラー
2 コア部
3 細孔
4 連通孔
6 通水性補強膜
10 人工土壌粒子
100 人工土壌培地

Claims (8)

  1. 細孔を有するフィラーが複数集合してなるコア部と、
    前記コア部を補強するように被覆する通水性補強膜と、
    を備え
    前記細孔に陽イオン及び陰イオン交換能が付与されている人工土壌粒子。
  2. 前記細孔はサブnmオーダー乃至サブμmオーダーのサイズを有し、前記フィラーの間にサブμmオーダー乃至サブmmオーダーの連通孔が形成されている請求項1に記載の人工土壌粒子。
  3. 前記連通孔が外部から水分及び養分をとりこむとともに、前記細孔が前記連通孔から前記養分を受け取り可能なように、前記細孔が前記連通孔の周囲に分散配置されている請求項2に記載の人工土壌粒子。
  4. 前記連通孔の全容積が前記細孔の全容積より大きくなるように、前記フィラーは三次元ネットワーク状に結合されている請求項2又は3に記載の人工土壌粒子。
  5. 前記通水性補強膜は、多孔質構造を備えている請求項1〜4の何れか一項に記載の人工土壌粒子。
  6. 前記通水性補強膜は、その内側面が前記コア部の外表部より内部側に侵入した状態で設けられる請求項1〜5の何れか一項に記載の人工土壌粒子。
  7. 0.2〜10mmの粒径を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の人工土壌粒子。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の人工土壌粒子を使用した人工土壌培地。
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