JP6217400B2 - X線計測用機器およびそのスリット板 - Google Patents
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(1)本発明のX線計測用機器は、X線源から導出されて計測対象である試料へ入射した入射X線が該試料内で回折し特定方向に強められて生じた回折X線を通過させる曲線状に開孔した曲線型スリットがX線を遮蔽する遮蔽板に形成されたスリット板を備え、
該入射X線と該曲線型スリットを通過した該回折X線とにより特定される計測領域内にある該試料の結晶構造を計測するために用いられるX線計測用機器であって、
前記スリット板は、前記計測領域内の回折中心となる焦点(F)から延びる基準軸を法線とし、該焦点から該基準軸との交点であるスリット中心(O)までの距離である焦点距離(L)だけ離れて配設されており、
前記曲線型スリットは、該スリット中心を原点とした極座標(r,η)により下式の双曲線正弦関数(Φ)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C)に沿って形成された双曲線関数型スリットであることを特徴とする。
Φ:r=L・sinh(bη)
但し、b:係数
L:焦点距離(FO)
η:基準軸まわりのスリット板の方位角
r:スリット中心からスリット板の方位角に対応した
双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離
Φ1:r1=L1・sinh(bη1)
Φ2:r2=L2・sinh(bη2)
但し、 b :係数
L1、L2:各焦点距離(FO1、FO2)
η1、η2:基準軸まわりの各スリット板の方位角
r1、r2:各スリット中心から、各スリット板の方位角に対応した
各双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離
(1)本発明は、X線計測用機器としてのみならず、上述したスリット板を用いたX線計測方法としても把握できる。このX線計測方法は、例えば、X線源から導出したX線を試料へ照射する照射工程と、試料へ照射したX線が試料内で回折して放出された回折X線を上述した双曲線関数型スリット板を介在させて検出する検出工程と、検出された回折X線に基づいて回折角を解析する解析工程と、を備える。なお、上述したように、回折角の変化量(Δ2θ)を求めることにより、試料中の計測領域に生じている歪み(ε)がわかる。そして、弾性体の場合なら、その歪みから計測領域(回折中心)に作用している応力(σ=εE、E:ヤング率)を、その値のみならず作用位置も含めて、試料を破壊することなく解析することができる。
(1)本明細書でいう見掛スリット幅(dr)は、方位角方向(η方向)ではなく半径方向(r方向/スリット中心から延びる拡径方向)とする。また真スリット幅(dw)は、その見掛スリット幅を回折方向から観たときのスリット幅であり、回折角を2θとするとdw=dr・cos2θとして表される。なお、本明細書では、適宜、見掛スリット幅と真スリット幅の両方を含めて単にスリット幅という。
(1)本発明に係る双曲線関数型スリットは、前述したように、見掛スリット幅(dr)は方位角(η)により変化するが、回折方向からみた真スリット幅(dw)はηが変化しても一定となる。この理由を、以下に図1を用いて説明する。
本発明では、X線源やX線の波長は問わないが、試料内部の応力測定等を行うには、相応の透過性を有するX線が必要となる。このため本発明に係るX線は管球X線でもよいが、放射光X線であると好ましい。
本発明では、回折X線の検出に際して、その方法やそれに用いる装置の種類等を問わないが、例えば、イメージングプレート(IP)、X線CCDカメラ等の積分計数型X線画像検出器、2次元PC(MWPC)、PILATUS検出器などのパルス計数型X線画像検出器などの二次元検出器を用いると好適である。
本発明の場合、X線計測の対象試料は、少なくとも一部に結晶構造を有する限り、多結晶体でも単結晶体でもよく、それらの結晶構造も問わない。また、その試料は、微細結晶からなっても粗大結晶からなってもよく、金属以外であってもよい。
本発明の一実施例であるX線計測用機器Mを図5に示した。X線計測用機器Mは、基準軸となる回転軸3と、回転軸3に固定された第1重合スリット板1と(第1スリット板)、第1重合スリット板1から所定距離だけ離間して固定軸3に固定された第2重合スリット板2(第2スリット板)と、試料Sを載置する可動ステージ4と、回折X線を検出する二次元検出器5と、回転軸3をその軸周りに回転駆動する回転機構(図略)と、回転軸3を試料Sの回折中心(計測領域の中心)まわりに旋回駆動する旋回機構(図略)とからなる。なお、重合スリット板1は、そのスリット中心O1(第1スリット中心)が焦点Fから焦点距離L1(第1焦点距離)だけ離れるように配置され、重合スリット板2は、そのスリット中心O2(第2スリット中心)が焦点Fから焦点距離L2(第2焦点距離/L2>L1)だけ離れるように配置されている。
上述した双曲線関数型スリット(スリット幅:0.5mm)を有する重合スリット板を実際に製作し、2枚の双曲線関数型スリット板間に位相差を設けて、スリット幅を0.2mmに調整した。この重合スリット板へ、上述したX線計測用機器Mを用いて、回折X線xdに相当するX線を実際に照射し、双曲線関数型スリットを通過したX線の透過幅を、方位角(η)の異なる複数点で実測した。この結果を図6に示した。なお、図6には、双曲線関数型スリットとアルキメデス型スリットについて、それらのプロフィルを規定する各関数から解析的に求めたスリット幅の理論値(グラフ)も併せて示した。なお、ここでいうスリット幅は全て真スリット幅である。
S 試料
xi 入射X線
xd 回折X線
1、2 重合スリット板
3 回転軸(基準軸)
4 ステージ
5 二次元検出器
Claims (9)
- X線源から導出されて計測対象である試料へ入射した入射X線が該試料内で回折し特定方向に強められて生じた回折X線を通過させる曲線状に開孔した曲線型スリットがX線を遮蔽する遮蔽板に形成されたスリット板を備え、
該入射X線と該曲線型スリットを通過した該回折X線とにより特定される計測領域内にある該試料の結晶構造を計測するために用いられるX線計測用機器であって、
前記スリット板は、前記計測領域内の回折中心となる焦点(F)から延びる基準軸を法線とし、該焦点から該基準軸との交点であるスリット中心(O)までの距離である焦点距離(L)だけ離れて配設されており、
前記曲線型スリットは、該スリット中心を原点とした極座標(r,η)により下式の双曲線正弦関数(Φ)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C)に沿って形成された双曲線関数型スリットであることを特徴とするX線計測用機器。
Φ:r=L・sinh(bη)
但し、b:係数
L:焦点距離(FO)
η:基準軸まわりのスリット板の方位角
r:スリット中心からスリット板の方位角に対応した
双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離 - 前記スリット板は、前記焦点距離が第1焦点距離(L1)である第1スリット板と、該焦点距離が第2焦点距離(L2>L1)である第2スリット板とからなり、
該第1スリット板は、前記スリット中心にあたる第1スリット中心(O1)を原点とした第1極座標(r1,η1)により下式の双曲線正弦関数(Φ1)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C1)に沿って形成された第1双曲線関数型スリットを有し、
該第2スリット板は、前記スリット中心にあたる第2スリット中心(O2)を原点とした第2極座標(r2,η2)により下式の双曲線正弦関数(Φ2)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C2)に沿って形成された第2双曲線関数型スリットを有し、
該第1双曲線関数型スリットの第1双曲線関数型らせん曲線と該第2双曲線関数型スリットの第2双曲線関数型らせん曲線は、前記焦点から観て相似形となっている請求項1に記載のX線計測用機器。
Φ1:r1=L1・sinh(bη1)
Φ2:r2=L2・sinh(bη2)
但し、 b :係数
L1、L2:各焦点距離(FO1、FO2)
η1、η2:基準軸まわりの各スリット板の方位角
r1、r2:各スリット中心から、各スリット板の方位角に対応した
各双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離 - 前記スリット板は、同系の前記双曲線関数型らせん曲線に基づき形成された双曲線関数型スリットを有する複数のスリット板を重ねて組合わせた重合スリット板からなる請求項1または2に記載のX線計測用機器。
- 前記スリット板は、前記基準軸まわりに回転可能となっている請求項1〜3のいずれかに記載のX線計測用機器。
- 前記スリット板は、1枚の前記遮蔽板上に複数の前記双曲線関数型スリットが形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のX線計測用機器。
- 前記スリット板は、前記焦点まわりに前記基準軸と一体的に旋回可能となっている請求項1〜5のいずれかに記載のX線計測用機器。
- さらに、前記スリット板の後方に配置され、前記回折X線を検出する二次元検出器を備える請求項1〜6のいずれかに記載のX線計測用機器。
- さらに、前記試料を移動させて前記計測領域を変位させる可動ステージを備える請求項1〜7のいずれかに記載のX線計測用機器。
- X線を遮蔽する遮蔽板からなり、
双曲線正弦関数で表現される双曲線関数型らせん曲線に沿って曲線状に開孔した曲線型スリットを有することを特徴とするX線計測用機器に用いられるスリット板。
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