JP6217400B2 - X線計測用機器およびそのスリット板 - Google Patents

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Description

本発明は、放射光等から得られる高透過性のX線を用いて各種部材に作用する応力や歪みを計測する場合等に利用できるX線計測用機器と、それに用いることができるスリット板に関する。
波長が既知なX線を試料に照射して、得られたX線の回折パターンからブラッグの法則 (Bragg)に基づいて、試料の結晶構造を解析することがよくなされている。このような解析は、試料の同定や結晶構造の特定に非常に有効である。但し、このようなX線解析は、通常、計測用に準備した試料の表面近傍を解析しているに過ぎない。
これに対して最近では、各種部材の内部に生じている応力や歪みを、放射光等から導出されたX線を用いて非破壊状態で計測することが研究されている。このような高透過性のX線を用いると、表面のみならずその内部でも回折X線が生じる。このため、得られたX線の回折パターンが、計測対象である部材内部のどの領域(計測領域)から生じているかを特定する必要がある。また、応力等を計測する部材が比較的大きな結晶粒(粗大結晶粒)からなる場合、X線の回折パターンがスポット状となるため、いわゆる0次元検出器では効率的な検出が困難である。
そこで、X線により計測される領域(適宜、「計測領域」という。)を特定しつつ、粗大結晶粒からなる部材等であっても効率的な計測を可能とするために、二次元スリットと二次元検出器を組み合わせた種々のX線計測方法が提案なされており、下記の特許文献等に関連した記載がある。
特開2012−168075号公報
H. F. Poulsen, J. Synchrotron Radiation, 4, 147-154, 1997. S. F. Nielsen, "Synchrotron radiation and deformation studies," Riso National Laboratory, 2000. S. F. Nielsen, et al., J. Synchrotron Radiation, 7(2), 103-109, 2000. X. Fu, et al., Scripta Materiallia, 49(11), 1093-1096, 2003. R. V. Martins and V. Honkimaki, Textures and Microstructures, 35(3/4), 145-152, 2003. R. V. Martins and V. Honkimaki, Materials Science Forum, 490/491, 424-429, 2005. R. V. Martins, "Residual Stress Analysis by Monochromatic High-Energy X-rays," Neutrons and Synchrotron Radiation in Engineering Materials Science: From Fundamentals to Material and Component Characterization, Wiley, 2008. 鈴木賢治, 他, 保全学, 11(2), 99-106, 2012. 菖蒲 敬久 , 鈴木賢治,第45回X線材料強度に関するシンポジウム, 6-11, 2011.
非特許文献1〜4では、同心円状のスリット(適宜、「コニカル型スリット」という。)を有するスリット板を用いてX線計測を行っている。この場合、予め定められた回折角の回折X線のみを検出することになるため、単色X線を用いた角度分散型測定ではなく、白色X線を用いたエネルギー分散型測定が必要となる。また、スリットの半径が一定で回折角が固定されているため、測定対象が特定の結晶構造を有する試料(例えば、面心立方構造のアルミニウム合金部材)に限定される。
非特許文献5〜7では、アルキメデス型らせん状のスリット(適宜、「アルキメデス型スリット」という。)を有するスリット板(適宜、「アルキメデス型スリット板」という。)を用いてX線計測を行っている。この場合、様々な回折角の回折X線を検出することができるため、単色X線を用いた角度分散型測定も可能となる。但し、アルキメデス型スリットの場合、詳細は後述するが、スリット幅はスリット板上で一定となるものの、回折中心から観た方向(回折方向)では一定とならず、回折角によって計測領域が変化するため、空間分解能を高めることができない。
特許文献1および非特許文献8、9では、大小2枚の相似形状をしたアルキメデス型スリット板を離間配置すると共に回転させてX線計測を行っている。この場合、相似の中心位置(回折中心、焦点)を通過した回折X線の全てを二次元検出器で計測できる。これにより、計測する回折角の正確度を向上させつつ効率的な計測が可能となる。もっとも、アルキメデス型スリット板を用いているため、前述した理由により、空間分解能を高めることはできない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、回折角が変化しても計測領域(測定領域)が安定しており、X線を用いた試料内部の計測を高精度で効率よく行うことができるX線計測用機器と、それに用いるスリット板を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、従来とは異なる新たなプロフィルのスリット形状を着想し、この着想を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《X線計測用機器》
(1)本発明のX線計測用機器は、X線源から導出されて計測対象である試料へ入射した入射X線が該試料内で回折し特定方向に強められて生じた回折X線を通過させる曲線状に開孔した曲線型スリットがX線を遮蔽する遮蔽板に形成されたスリット板を備え、
該入射X線と該曲線型スリットを通過した該回折X線とにより特定される計測領域内にある該試料の結晶構造を計測するために用いられるX線計測用機器であって、
前記スリット板は、前記計測領域内の回折中心となる焦点(F)から延びる基準軸を法線とし、該焦点から該基準軸との交点であるスリット中心(O)までの距離である焦点距離(L)だけ離れて配設されており、
前記曲線型スリットは、該スリット中心を原点とした極座標(r,η)により下式の双曲線正弦関数(Φ)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C)に沿って形成された双曲線関数型スリットであることを特徴とする。
Φ:r=L・sinh(bη)
但し、b:係数
L:焦点距離(FO)
η:基準軸まわりのスリット板の方位角
r:スリット中心からスリット板の方位角に対応した
双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離
(2)本発明のX線計測用機器によれば、計測対象である試料の材質(結晶の種類、結晶粒の大小等)等に依らず、その試料の任意の領域に存在する結晶構造(結晶格子間隔)を、高い空間分解能、位置分解能、時間分解能、検出分解能(応力分解能、歪み分解能等)で計測可能となる。この結果、例えば、試料となる種々の部材の任意の場所に生じる歪みや応力等を、その部材を非破壊状態のままで、高精度に的確に解析することが可能となり得る。このような優れた効果が得られるのは、本発明に係るスリット板に依る貢献が大きいため、そのスリット板について先ずは詳述する。
(3)本発明のX線計測用機器では、試料に照射された入射X線が試料内で回折して生じた回折X線が、双曲線関数型らせん曲線に沿って形成されたスリット(適宜、「双曲線関数型スリット」という。)を有する遮蔽板からなるスリット板(適宜、「双曲線関数型スリット板」という。)を介在させて検出されることになる。
ここでスリットの開孔幅(単に「スリット幅」という。)は、スリットのプロフィルやそれを観る方向により異なる。本発明に係る双曲線関数型スリットで、スリット板上の方位角(η)によりスリット幅が変化している(dr/dηが一定ではない)。具体的にいうと、スリット板上で観た拡径方向(半径方向)のスリット幅(適宜「見掛スリット幅(dr)」という。)は、b>0とすると、ηの増加と共に増加している(dr/dη>0)。
しかし、本発明に係る双曲線関数型スリットの場合、詳細は後述するが、試料中の回折中心となる焦点(F)から観た方向(適宜、「回折方向」)のスリット幅(適宜「真スリット幅(dw)」という。)は、方位角(η)が変化しても一定となる(図1参照)。このため、本発明に係る双曲線関数型スリットを通過した回折X線は、その大きさが回折角の低角域から高角域まで一定となる。これにより、その真スリット幅により規定された回折X線の大きさ(ビーム径、ビーム幅等)と予め規定された入射X線の大きさとにより定まる試料中の計測領域の体積(適宜、「ゲージ体積」という。)も一定となる。従って、本発明のX線計測用機器を用いれば、回折角の高低に係わらず、ゲージ体積が一定となり、試料中の特定領域を安定的に計測でき、安定した高空間分解能を得ることができる。
ちなみに、極座標(r、η)上でr=aη(a:実係数)で表されるアルキメデス型らせん曲線に沿って形成されたアルキメデス型スリットの場合、見掛スリット幅(dr)が一定となっているに過ぎず、真スリット幅(dw)は一定となっていない。従って、従来のようにアルキメデス型スリットを用いると、前述したように回折角によってゲージ体積が変化し、安定した空間分解能は得られない。
ところで、スリットを区画する両端線は、同一遮蔽板上に描かれた所定の位相差(Δη)を有する二つの双曲線関数型らせん曲線により規定されていると、その位相差を変更することにより、スリット幅の調整ができる。スリット幅は試料に応じて適宜選択すれば良いが、スリット幅を狭めることにより、あらゆる回折角に対して、より高い空間分解能を実現できる。
もっとも、試料毎にスリット幅の異なるスリット板をその都度用意することは効率的ではない。本発明の場合、同系の前記双曲線関数型らせん曲線に基づき形成された双曲線関数型スリットを有する同系のスリット板を複数組み合わせることにより、スリット幅を任意に調整できるため、高空間分解能なX線計測を効率的に行うことが可能となる。ここで、「同系」とは、スリット中心周りに回転させることにより相互に重なり合うという意味である。例えば、同形状の双曲線関数型スリットを有する2枚のスリット板を所望の位相差で重ね合わせる(または積層する)ことにより、回折X線の通過するスリット幅を任意に調整できるようになる。このように同系のスリット板を複数重ねて組合わせたものを、適宜、重合スリット板という。なお、重ね合わせる枚数は問わないが、通常、2枚で十分にスリット幅の調整が可能である。
(4)本発明に係る双曲線関数型スリットは、スリット中心側から外周側に至る範囲内でらせん状に延在しているため、低角から高角に至る広い範囲の様々な回折角を有する回折X線の検出が可能となる。これにより、白色X線を用いたエネルギー分散型測定に限らず、単色X線を用いた角度分散型測定を行うことができる。また検出できる回折X線の回折角が固定的ではないため、特定の結晶構造からなる試料に計測対象が限られることもない。このため、材質の異なる複数種の試料の他、複数種の結晶が混在した組織からなる試料等も計測できる。
さらに、らせん状のスリットを有するスリット板が、基準軸(スリット中心)まわりに回転可能であると、そのスリットが掃く領域(円板状または中空円板状の領域)を通過する回折X線を全て検出することが可能となる。従って、粗大結晶粒等からなる試料でも短時間で効率的にX線計測することが可能となり、大幅な時間分解能の向上を図れる。さらに、1枚の遮蔽板上に複数の双曲線関数型スリットが形成されていると、さらなる時間分解能の向上が図れる。また、スリット板の回転数を増加させることにより時間分解能の向上を図れるが、多数のスリットや長いスリットが形成されたスリット板は低剛性で変形量が増すため、回折角の検出精度(正確度)が低下するおそれがある。そこでスリット板は、短いスリット(分割スリット)を断続的に複数配置して、剛性を確保したものであると好ましい。
(5)回折角はスリットを通過後も僅かながら拡がるため、スリット板が1枚のみであると、回折角の正確度が低下し得る。そこで本発明に係るスリット板は、前記焦点距離が第1焦点距離(L1)である第1スリット板と、該焦点距離が第2焦点距離(L2>L1)である第2スリット板とからなり、該第1スリット板は、前記スリット中心にあたる第1スリット中心(O1)を原点とした第1極座標(r1,η1)により下式の双曲線正弦関数(Φ1)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C1)に沿って形成された第1双曲線関数型スリットを有し、該第2スリット板は、前記スリット中心にあたる第2スリット中心(O2)を原点とした第2極座標(r2,η2)により下式の双曲線正弦関数(Φ2)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C2)に沿って形成された第2双曲線関数型スリットを有し、該第1双曲線関数型スリットの第1双曲線関数型らせん曲線と該第2双曲線関数型スリットの第2双曲線関数型らせん曲線は、前記焦点から観て相似形となっていると好適である。
Φ1:r1=L1・sinh(bη1)
Φ2:r2=L2・sinh(bη2)
但し、 b :係数
L1、L2:各焦点距離(FO1、FO2)
η1、η2:基準軸まわりの各スリット板の方位角
r1、r2:各スリット中心から、各スリット板の方位角に対応した
各双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離
これにより、計測領域内にあり、2枚のスリット板(重合スリット板を含む)により形成される相似の中心位置(頂点)から放出される回折X線のみを、より正確に検出できる。また、並列させるスリット板の間隔(距離)を調整することにより、検出する回折X線の角度の正確度をさらに高めることができ、ひいては回折角やそれに基づく歪み等の計測精度の向上を図れる。なお、試料と検出器の間に配設する相似なスリット板の枚数をさらに増加させることも可能であるが、通常、2枚で十分である。
(6)ブラッグの条件(nλ=2d・sinθ、n:正整数、λ:X線の波長、d:結晶の格子面間隔、2θ:回折角(θ:視斜角))から、結晶格子の歪みは、回折角の変化量(Δ2θ)を介して求めることができる(ε=Δd/d=−Δ(2θ)/2tanθ)。そして、回折角が大きいほど、回折角の変化量も大きくなり、ひいては結晶格子の歪みをより高精度に検出できるようになる(Δ2θ=−2ε・tanθ)。このような検出分解能(応力分解能等)を高めるために、高角な回折X線を検出できるほど好ましい。スリット板を大きくすることにより高角な回折X線の検出も可能となるが、スリット板の剛性や装置サイズ等の観点からスリット板の拡大には限度がある。そこで、本発明に係るスリット板は、焦点(回折中心)まわりに基準軸と一体的に旋回可能となっていると好ましい。これにより、過大なスリット板や装置の大型化を回避しつつ、高い検出分解能を得ることが可能となる。なお、スリット板が複数あるときは、それらも一体的に旋回すると共に、検出器もその旋回に従動すると好ましい。
(7)本発明のX線計測用機器は、さらに、試料を移動させて計測領域を変位させる可動ステージを備えると好適である。これにより、試料内で計測領域を逐次、正確に移動させることが容易となり、高い位置分解能で、所望する位置に生じる歪みや応力等の計測やそれらの分布等の解析が可能となる。
また本発明のX線計測用機器は、スリット板がらせん状の双曲線関数型スリットを有するため、あらゆる回折角に対応でき、さらに、スリット板が回転することにより、そのスリットの掃く面積を通過する全ての回折X線の検出が可能となる。そこで本発明のX線計測用機器は、そのような回折X線を効率よく確実に検出するためには、スリット板の後方に二次元検出器が配置されていると好適である。
《X線計測方法およびスリット板》
(1)本発明は、X線計測用機器としてのみならず、上述したスリット板を用いたX線計測方法としても把握できる。このX線計測方法は、例えば、X線源から導出したX線を試料へ照射する照射工程と、試料へ照射したX線が試料内で回折して放出された回折X線を上述した双曲線関数型スリット板を介在させて検出する検出工程と、検出された回折X線に基づいて回折角を解析する解析工程と、を備える。なお、上述したように、回折角の変化量(Δ2θ)を求めることにより、試料中の計測領域に生じている歪み(ε)がわかる。そして、弾性体の場合なら、その歪みから計測領域(回折中心)に作用している応力(σ=εE、E:ヤング率)を、その値のみならず作用位置も含めて、試料を破壊することなく解析することができる。
(2)さらに本発明は、X線を遮蔽する遮蔽板からなり、双曲線正弦関数で表現される双曲線関数型らせん曲線に沿って曲線状に開孔した曲線型スリットを有することを特徴とするX線計測用機器またはX線計測方法に用いられるスリット板としても把握できる。
《その他》
(1)本明細書でいう見掛スリット幅(dr)は、方位角方向(η方向)ではなく半径方向(r方向/スリット中心から延びる拡径方向)とする。また真スリット幅(dw)は、その見掛スリット幅を回折方向から観たときのスリット幅であり、回折角を2θとするとdw=dr・cos2θとして表される。なお、本明細書では、適宜、見掛スリット幅と真スリット幅の両方を含めて単にスリット幅という。
本発明に係るスリットは、基準軸方向の断面形状を問わない。通常、スリット板に用いられる遮蔽板は薄く、その加工性を考慮して、スリットは、遮蔽板の表面に直交する方向へ貫通した開孔となっていることが多い。但し、開孔の断面形状は、遮蔽板の表面から斜交した形状(例えば、回折方向に沿った形状)でもよい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
スリット幅と回折角の関係を示す説明図である。 双曲線関数型スリット板の一例を示す平面図である。 同形状の双曲線関数型スリット板2枚を重ね合わせた重合スリット板のスリット周辺を示す部分拡大断面図である。 その2枚の双曲線関数型スリット板の間に位相差を設けることにより、スリット幅が狭くなる様子を示す重合スリット板の平面図である。 4本の双曲線関数型スリットを配置したスリット板を示す平面図である。 小分割した双曲線関数型スリットを配置したスリット板を示す平面図である。 X線計測用機器の一例を模式的に示す斜視図である。 方位角とスリット幅の関係を示すグラフである。
本明細書で説明する内容は、本発明のX線計測用機器のみならず、それを用いたX線計測方法やそれらに用いられるスリット板にも該当し得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《双曲線関数型スリット》
(1)本発明に係る双曲線関数型スリットは、前述したように、見掛スリット幅(dr)は方位角(η)により変化するが、回折方向からみた真スリット幅(dw)はηが変化しても一定となる。この理由を、以下に図1を用いて説明する。
双曲線関数型スリットのベースとなる双曲線関数型らせん曲線(Φ:r=L・sinh(bη))の両辺を微分すると、dr=bLcosh(bη)・dηとなる。dwは、回折X線の光軸に垂直なスリット幅であるから、dw=dr・cos2θと表される。ここで、cos2θ=L/(L+r1/2 =1/{1+(r/L)1/2 、1+(r/L)=1+sinh(bη)=cosh(bη)であり、cosh(bη)>0であるから、結局、cos2θ=1/cosh(bη)となる。よって、dw=bL・dη、つまりdw/dη=bL(一定)となり、dwはηが変化しても一定となる。
ちなみにアルキメデス型スリットの場合、r=aη(a:正実数)であるから、dr/dη=a(一定)により見掛スリット幅がηに依らずに一定となるに過ぎず、真スリット幅はdw/dη=aL/{L+(aη)1/2 により、方位角と共に変化する。
(2)本発明に係る双曲線関数型スリットが、スリット中心(O)の周りに2本(位相差:π(180°))形成された円盤状の遮蔽板からなるスリット板の一例を図2に示した。また、このような同形状のスリット板2枚を重ね合わせた重合スリット板を図3Aおよび図3Bに示した。図3Aは、そのスリット周辺を拡大した部分拡大断面図であり、図3Bは、その重合スリット板の平面図である。図3Aおよび図3Bからわかるように、重合スリット板を構成する各スリット板の位相をずらすこと(つまり位相差を設けること)により、スリット板単独の場合よりもスリット幅を、任意に狭くすることができる。
(3)1枚あたり4本の同形状の双曲線関数型スリット(スリット間の位相差:π/2)を配置したスリット板の一例を図4Aに示した。このように双曲線関数型スリットの本数が増加するほど、X線計測に要する時間を短縮でき、時間分解能の向上を図れる。図4Aに示す双曲線関数型スリット板なら、1/4回転で環状の全領域を掃くことができる。つまり、その1/4回転に要する時間で、その領域に放出された回折X線の全部を検出できることになる。従って、スリットの本数n、スリット板の回転数をNrとすると、時間分解能はn・Nr(Hz)となる。
但し、長いスリットの本数が増加するほど、スリット板の剛性は低下し、ひいては検出される回折角の正確度の低下を招来する。そこで、図4Bに示すように、小分割した複数のスリットを配置したスリット板を用いると好ましい。
なお、スリットを設ける遮蔽板は、その材質、形状、厚みを問わないが、通常はタングステン等の緻密な結晶からなる材質が用いられる。また、スリット板を回転させる場合、回転バランスの観点から、その形状は円板状が好ましい。さらにスリット板は、遮蔽性、剛性、加工性等を考慮して、例えば、板厚を0.5〜2mmとするとよい。また、スリット幅(見掛スリット幅)も問わないが、例えば、0.1〜1mmとするとよい。なお、このようなスリットは、遮蔽板に描いた双曲線関数型らせん曲線に沿って、レーザー加工、放電加工、切削加工等を行うことにより形成され得る。
《X線》
本発明では、X線源やX線の波長は問わないが、試料内部の応力測定等を行うには、相応の透過性を有するX線が必要となる。このため本発明に係るX線は管球X線でもよいが、放射光X線であると好ましい。
《二次元検出器》
本発明では、回折X線の検出に際して、その方法やそれに用いる装置の種類等を問わないが、例えば、イメージングプレート(IP)、X線CCDカメラ等の積分計数型X線画像検出器、2次元PC(MWPC)、PILATUS検出器などのパルス計数型X線画像検出器などの二次元検出器を用いると好適である。
《試料》
本発明の場合、X線計測の対象試料は、少なくとも一部に結晶構造を有する限り、多結晶体でも単結晶体でもよく、それらの結晶構造も問わない。また、その試料は、微細結晶からなっても粗大結晶からなってもよく、金属以外であってもよい。
《X線計測用機器》
本発明の一実施例であるX線計測用機器Mを図5に示した。X線計測用機器Mは、基準軸となる回転軸3と、回転軸3に固定された第1重合スリット板1と(第1スリット板)、第1重合スリット板1から所定距離だけ離間して固定軸3に固定された第2重合スリット板2(第2スリット板)と、試料Sを載置する可動ステージ4と、回折X線を検出する二次元検出器5と、回転軸3をその軸周りに回転駆動する回転機構(図略)と、回転軸3を試料Sの回折中心(計測領域の中心)まわりに旋回駆動する旋回機構(図略)とからなる。なお、重合スリット板1は、そのスリット中心O1(第1スリット中心)が焦点Fから焦点距離L1(第1焦点距離)だけ離れるように配置され、重合スリット板2は、そのスリット中心O2(第2スリット中心)が焦点Fから焦点距離L2(第2焦点距離/L2>L1)だけ離れるように配置されている。
重合スリット板1、2は、図3A、図3Bに示したように、それぞれ、同形状な2枚の双曲線関数型スリット板を重ねて組み合わせたものである。それら組み合わせた各スリット板間の位相差を調整することにより、所望の合成されたスリット幅になる。なお、組み合わせる2枚のスリット板は、ネジ等によって所定の位相差で固定できるようになっている。また、本実施例のX線計測用機器Mの場合、スリット板の枚数は合計で4枚であるが、それ以上とすることも可能である。
可動ステージ4は、載置している試料Sを6方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向およびこれら3軸回りの回転方向)に高精度に移動させることができる。これにより、試料S内の計測位置(計測領域)の調整、特に計測領域内の回折中心(焦点)の位置合わせが容易となっている。なお、回転軸3上にある重合スリット板1、2の相似の中心位置(頂点)が、計測領域内の回折中心である焦点Fとなる。
ところで、放射線源等のX線源から導出されて入射スリット9を通過した入射X線xiは、試料S内で回折して回折X線xdを生じる。この回折X線xdの一部が重合スリット板1の双曲線関数型スリット11、12を通過し、さらに重合スリット板2の双曲線関数型スリット21、22を通過して、二次元検出器5に至る。この際、重合スリット板1、2は回転しているため、試料Sの計測領域で生じた回折X線xdの内、双曲線関数型スリット11、12、21、22で掃かれる領域内を通過した全ての回折X線xdが二次元検出器5で検出され、特定の回折パターンTが得られる。但し、その検出範囲は、重合スリット板1、2またはその各スリットの大きさ(正確には)に依存する。従って、そのままでは、回折角が低角な回折X線xdしか検出できない。
そこで、回転軸3、重合スリット板1、2および二次元検出器5を一体的に、焦点Fまわり旋回させる。これにより、回折X線xdの通過するスリット幅(真スリット幅)を変更することなく、ひいては試料S内の計測領域をほぼ一定としつつ、回折角が高角な回折X線xdも検出できるようになる。これにより回折角の変化量(Δ2θ)の検出が容易となり、試料S内の微小な歪み(ε)や応力(σ)も高精度に計測可能となる。
《実験例》
上述した双曲線関数型スリット(スリット幅:0.5mm)を有する重合スリット板を実際に製作し、2枚の双曲線関数型スリット板間に位相差を設けて、スリット幅を0.2mmに調整した。この重合スリット板へ、上述したX線計測用機器Mを用いて、回折X線xdに相当するX線を実際に照射し、双曲線関数型スリットを通過したX線の透過幅を、方位角(η)の異なる複数点で実測した。この結果を図6に示した。なお、図6には、双曲線関数型スリットとアルキメデス型スリットについて、それらのプロフィルを規定する各関数から解析的に求めたスリット幅の理論値(グラフ)も併せて示した。なお、ここでいうスリット幅は全て真スリット幅である。
図6から明らかなように、本発明に係る重合スリット板の場合、双曲線関数型スリット板の位相差を調整することにより、理論通り、方位角が異なっても実際にスリット幅が一定となることが確認された。つまり、本発明に係る重合スリット板を用いれば、回折方向のスリット幅を所定範囲内で任意に調整できると共に、一旦設定されたスリット幅は方位角に依らず一定に保持されることが明らかとなった。なお、図6からも明らかなように、従来のアルキメデス型スリットの場合、スリット幅は方位角に関して単調減少しており一定とはならない。
M X線計測用機器
S 試料
xi 入射X線
xd 回折X線
1、2 重合スリット板
3 回転軸(基準軸)
4 ステージ
5 二次元検出器

Claims (9)

  1. X線源から導出されて計測対象である試料へ入射した入射X線が該試料内で回折し特定方向に強められて生じた回折X線を通過させる曲線状に開孔した曲線型スリットがX線を遮蔽する遮蔽板に形成されたスリット板を備え、
    該入射X線と該曲線型スリットを通過した該回折X線とにより特定される計測領域内にある該試料の結晶構造を計測するために用いられるX線計測用機器であって、
    前記スリット板は、前記計測領域内の回折中心となる焦点(F)から延びる基準軸を法線とし、該焦点から該基準軸との交点であるスリット中心(O)までの距離である焦点距離(L)だけ離れて配設されており、
    前記曲線型スリットは、該スリット中心を原点とした極座標(r,η)により下式の双曲線正弦関数(Φ)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C)に沿って形成された双曲線関数型スリットであることを特徴とするX線計測用機器。
    Φ:r=L・sinh(bη)
    但し、b:係数
    L:焦点距離(FO)
    η:基準軸まわりのスリット板の方位角
    r:スリット中心からスリット板の方位角に対応した
    双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離
  2. 前記スリット板は、前記焦点距離が第1焦点距離(L1)である第1スリット板と、該焦点距離が第2焦点距離(L2>L1)である第2スリット板とからなり、
    該第1スリット板は、前記スリット中心にあたる第1スリット中心(O1)を原点とした第1極座標(r1,η1)により下式の双曲線正弦関数(Φ1)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C1)に沿って形成された第1双曲線関数型スリットを有し、
    該第2スリット板は、前記スリット中心にあたる第2スリット中心(O2)を原点とした第2極座標(r2,η2)により下式の双曲線正弦関数(Φ2)で表現される双曲線関数型らせん曲線(C2)に沿って形成された第2双曲線関数型スリットを有し、
    該第1双曲線関数型スリットの第1双曲線関数型らせん曲線と該第2双曲線関数型スリットの第2双曲線関数型らせん曲線は、前記焦点から観て相似形となっている請求項1に記載のX線計測用機器。
    Φ1:r1=L1・sinh(bη1)
    Φ2:r2=L2・sinh(bη2)
    但し、 b :係数
    L1、L2:各焦点距離(FO1、FO2)
    η1、η2:基準軸まわりの各スリット板の方位角
    r1、r2:各スリット中心から、各スリット板の方位角に対応した
    各双曲線関数型らせん曲線上の点までの距離
  3. 前記スリット板は、同系の前記双曲線関数型らせん曲線に基づき形成された双曲線関数型スリットを有する複数のスリット板を重ねて組合わせた重合スリット板からなる請求項1または2に記載のX線計測用機器。
  4. 前記スリット板は、前記基準軸まわりに回転可能となっている請求項1〜3のいずれかに記載のX線計測用機器。
  5. 前記スリット板は、1枚の前記遮蔽板上に複数の前記双曲線関数型スリットが形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のX線計測用機器。
  6. 前記スリット板は、前記焦点まわりに前記基準軸と一体的に旋回可能となっている請求項1〜5のいずれかに記載のX線計測用機器。
  7. さらに、前記スリット板の後方に配置され、前記回折X線を検出する二次元検出器を備える請求項1〜6のいずれかに記載のX線計測用機器。
  8. さらに、前記試料を移動させて前記計測領域を変位させる可動ステージを備える請求項1〜7のいずれかに記載のX線計測用機器。
  9. X線を遮蔽する遮蔽板からなり、
    双曲線正弦関数で表現される双曲線関数型らせん曲線に沿って曲線状に開孔した曲線型スリットを有することを特徴とするX線計測用機器に用いられるスリット板。
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