以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態において対応する構成要素には、同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。また、実施形態の説明において、明示している構成の組み合わせだけでなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、実施形態及び変形例同士を組み合わせることも可能である。
(第1実施形態)
図1及び図2に示す本実施形態の燃料噴射弁1は、主にディーゼル燃料の内燃機関に用いられる燃料噴射弁に多く採用されている直噴型の燃料噴射弁であり、本体ボディ6、高圧燃料通路7、圧力制御室4、及びECU8などからなる。燃料噴射弁1には、図示しないコモンレールから高圧に蓄圧された燃料が供給される。そして、燃料噴射弁1は、供給された燃料を内燃機関の気筒内に噴射する。以下、図1及び図2を用いて燃料噴射弁の構成と動作を説明する。
なお、以下の実施形態において、特に言及のない場合には、「先端側」とは内燃機関の気筒側を指し、「基端側」とは前記先端側の反対側を指す。
本体ボディ6は、円筒形状に形成されている。筒内には、圧力制御室4、高圧燃料室72、燃料を外部から導入する高圧燃料入口71、及び燃料を高圧燃料室72または噴孔側高圧燃料室73に伝える通路である高圧燃料通路7が設けられている。また、本体ボディ6の円筒内には、円柱状のコマンドピストン52、円柱状のプレッシャピン5、円柱状のノズルニードル21などが設けられている。
また、本体ボディ6のプレッシャピン5の先端側の外周付近には、円筒状に形成されたチップパッキン3が挿入されており、さらに、チップパッキン3の先端側の本体ボディ6には、ノズル2が形成されている。
ノズル2は、円筒状のノズルボディ23と、ノズルニードル21とを備えている。さらに、ノズルボディ23には、内周面においてテーパ状に形成されているシート部24と、先端側に形成された噴孔22とを有している。また、ノズル2は、ノズルニードル21とノズルボディ23の間に燃料が流入する空間である噴孔側高圧燃料室73が形成されている。
ノズルニードル21は、ノズルボディ23の筒内の軸方向に移動可能に設けられており、テーパ状のシート部24に着座、及び離座することによって、高圧燃料通路7から供給された燃料が噴孔22へ流入する量を調整する。噴孔22は、シート部24とノズルボディ23の外周面側、及びノズルボディ23の筒内面に開口しており、ノズル2の筒内と外部とを連通するように形成されている。そして、ノズルニードル21によって調量された燃料が、噴孔22から図示しない内燃機関の気筒内へ噴射する。
プレッシャピン5の外周には、弾性部材からなるピストンスプリング51が設けられている。ピストンスプリング51は、チップパッキン3とコマンドピストン52との間に挟まれて、コマンドピストン52に付勢力を印加している。プレッシャピン5は、コマンドピストン52が高圧燃料から受けた圧力により軸方向へ移動する力を、ノズルニードル21に伝達するとともに、ピストンスプリング51の軸心を保持する。
ノズルニードル21、プレッシャピン5、コマンドピストン52は、先端側から順にノズルニードル21、プレッシャピン5、コマンドピストン52という位置関係にて設けられている。すなわち、プレッシャピン5の先端側は、ノズルニードル21の基端側と当接しており、プレッシャピン5の基端側がコマンドピストン52の先端側に当接するように設けられている。
また、チップパッキン3の筒内径は、ノズルニードル21の外径よりも小さく形成されており、ノズルニードル21が通過できないように形成されている。加えて、チップパッキン3の筒内部には、プレッシャピン5が続いて挿入されている。すなわち、プレッシャピン5の外径は、チップパッキン3の筒内径よりも小さく形成されており、ノズルニードル21の外径はチップパッキン3の筒内径よりも大きく形成されている。したがって、ノズルニードル21は、チップパッキン3を通過することができず、チップパッキン3は、ノズルニードル21の基端側への移動を規制することになる。したがって、チップパッキン3は本発明の規制部材に相当する。
チップパッキン3のノズルニードル21と当接する箇所には、圧電センサ31が設けられている。圧電センサ31は、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接することにより、圧力に応じて変化する電圧を生成する。かかる電圧の変化に対して所定の電圧を越えた際に、圧電センサ31は、ECU8に検出信号を伝達する。したがって、圧電センサ31が本発明のフルリフト検出手段に相当する。
コマンドピストン52の基端側には、高圧燃料室72が設けられている。高圧燃料室72では、高圧燃料入口71から高圧の燃料が流入し、高圧燃料室72に形成されているアウトオリフィス43の開閉によって内部の圧力が制御される。また、アウトオリフィス43は、圧力制御室4に開口している。すなわち、アウトオリフィス43は、高圧燃料室72と圧力制御室4とを連通させている。
圧力制御室4には、アクチュエータとして、駆動電流が流れることにより磁束を生じさせるソレノイド42と、該磁束により駆動力を受けて移動するアーマチャ41とが設けられており、アーマチャ41は、ソレノイドにより生じた磁束により吸引される円盤状の部材と、アウトオリフィス43を封止する棒状の部材から構成されている。
また、アーマチャ41の基端側には、スプリング44とリーク燃料路45が設けられている。アーマチャ41は、該スプリング44により、常時先端側に付勢されている。
さらに、駆動電流がソレノイド42に通電されていない場合には、スプリング44の付勢力によりアーマチャ41はアウトオリフィス43を封止する一方で、ECU8からソレノイド42に対して駆動電流が通電されると、ソレノイド42のスプリング44の付勢力を超える引力により、アーマチャ41はソレノイド42側に引き寄せられる。これにより、アーマチャ41はアウトオリフィス43を開口する。そして、アウトオリフィス43が開口することにより、高圧燃料室72と圧力制御室4とが連通され、高圧燃料入口71より高圧燃料室72に流入した燃料がアウトオリフィス43を介して圧力制御室4に流入する。流入した高圧燃料は、リーク燃料路45より燃料噴射弁1の外部に排出される。かかるリーク燃料路45から外部に排出される燃料の量を本発明ではリーク燃料量と定義する。
ECU8は、要求されている燃料噴射量に対して、噴射期間を算出し、該噴射期間に対応してソレノイド42に通電するように指令する駆動通電信号を生成し、図示しないスイッチング回路に伝達する。すなわち、ECU8には、燃料噴射量とアクチュエータに通電される時間である駆動電流通電時間との関係を予め定めた相関関係が記憶されており、ECU8は、該相関関係から、必要な燃料噴射量に対しての駆動電流通電時間を算出し、ソレノイド42に駆動電流を流す時間の間、スイッチング回路をオンにする駆動通電信号を生成する。一方で、ECU8は、記憶されている相関関係を、燃料噴射弁が使用されることによる経時劣化などに対して、駆動通電信号の伝達を開始して所定の時間が経過した後に適宜補正を実施する。したがって、ECU8が、本発明の制御手段、記憶手段、及び補正手段に相当する。
次に、図1乃至図3を用いて燃料噴射弁1の動作を説明する。図1は、圧力制御室4のソレノイド42に通電されておらず、ノズルニードル21が噴孔22を遮閉している状態であり、燃料噴射弁1が閉弁している状態を示している。
燃料は、燃料噴射弁1の外部から燃料噴射弁1の高圧燃料通路7入口へ導入されると、燃料は高圧燃料入口71から高圧燃料室72に流入するとともに、高圧燃料通路7を介して噴孔側高圧燃料室73に導入される。高圧燃料室72に流入した燃料は、アーマチャ41がアウトオリフィス43を封止しているため、アウトオリフィス43から流出せず、高圧に印加された燃料は、高圧燃料室72の面を形成しているコマンドピストン52の端面を先端側に向けて押圧する。また一方で、燃料は、高圧燃料入口71から高圧燃料通路7を介して噴孔側高圧燃料室73にも流入する。このとき、燃料は、噴孔側高圧燃料室73内において、ノズルニードル21の先端側の端面を基端側に向けて押圧する。ここで、ノズルニードル21が燃料から圧力を受ける径方向の断面は、高圧燃料室72においてコマンドピストン52が燃料から受ける圧力を受ける径方向の断面よりも小さいため、ノズルニードル21、プレッシャピン5、及びコマンドピストン52は、基端側へ向けて押圧する力よりも先端側へ押圧される力のほうが大きく、ノズルニードル21は、ノズルボディ23に着座し、噴孔22を遮閉している状態となる。
このようなノズルニードル21が噴孔22を遮閉している状態において、圧力制御室4のソレノイド42に駆動電流が通電されると、ソレノイド42は、アーマチャ41を吸引する。これにより、アーマチャ41は、基端側に移動することになり、アーマチャ41により封止されていたアウトオリフィス43は開口する。そして、アウトオリフィス43が開口したことにより、高圧燃料室72の燃料流路が形成され、高圧燃料室72の燃料は、アウトオリフィス43を通じてリーク燃料路45から外部に排出される。この結果、高圧燃料室72の圧力は低下し、コマンドピストン52を押圧する力も低下することになる。
一方で、ノズルニードル21には、噴孔側高圧燃料室73において、燃料より基端側への力を受けているため、高圧燃料室72内の圧力によりコマンドピストン52を先端側に押圧する力よりも、噴孔側高圧燃料室73内の圧力によりノズルニードル21が基端側へ押圧する力が大きくなり、ノズルニードル21は、軸方向反対側へ移動を開始する。これにより、図2に示されるように噴孔22が開口し、燃料の噴射が開始される。
そして、ノズルニードル21、プレッシャピン5、及びコマンドピストン52が共に基端側へ移動する際、図3に示されるように、ノズルニードル21は、ノズルニードル21の外径よりも小さく形成されている筒内径を有したチップパッキン3によって、その移動を規制される。すなわち、ノズルニードル21は一定量移動した後、基端側の端面がチップパッキン3に当接することにより移動を止める。また、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接する箇所には圧電センサ31が設けられており、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接した際には、ECU8に検出信号を伝達する。ノズルニードル21の移動がチップパッキン3の規制により停止したことにより、ノズルニードル21の先端側の端面とノズルボディ23のシート部24との隙間が一定となり、一定量の燃料量が噴孔22に流入することになる。なお、本発明では、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接するまで移動し、ノズルニードル21の基端側への移動が規制されている状態をフルリフト状態としている。
ここで、ソレノイド42への駆動電流の通電時間は、燃料噴射弁1に電気的に接続されているECU8に記憶されている、燃料噴射量と駆動電流通電時間との相関関係により決定される。具体的には、ECU8がアクセル開度信号、エンジン回転数信号などの運転状態信号を受けて要求された燃料噴射量を算出する。該要求された燃料噴射量を噴射するのに必要な駆動電流通電時間は、ECU8が予め記憶されている燃料噴射量と駆動電流通電時間との相関関係を参照することによって決定される。ここで、相関関係は、二つの関係を表した線で表されており、該線は、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接する前後においてその傾きが変化する。すなわち、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接する前後において、相関関係が変化する折曲点が出現することになる。その折曲点をチップパッキン3に設けられた圧電センサ31により検出し、かかる特性が変化する折曲点の補正と、相関全体の補正を行なう。そして、ECU8は、該駆動電流通電時間の間、図示しないスイッチング回路などを制御することによって、ソレノイド42に駆動電流を通電する。したがって、駆動電流通電時間が、本発明における噴射期間パラメータに相当する。
なお、噴射期間パラメータは、噴射期間を算出する際に使用するパラメータであればよく、連続時間である駆動電流通電時間以外にも、例えば燃料を噴射する期間を指令する指令噴射パルス期間などでも良い。
次に、図4、及び図5を用いて、燃料噴射量と駆動電流通電時間との相関関係の予め定められた基準相関関係を補正する手順について説明する。基準相関関係とは、予め実験などにより燃料噴射弁の設計値などに基づき定められてECU8に記憶されている相関関係であり、本手順では、基準相関関係を、燃料噴射弁毎に異なる固有の特性を反映させた相関とするべく、工場出荷前などの燃料噴射量を計測できる環境において、個体毎に補正された補正後基準相関関係としてECU8に記憶する。以下は、その補正を行なう手順である。
まず、図5の手順を実施する準備段階として、図4に示されるように、燃料噴射弁1を、燃料噴射量を測定する測定器100に設置する。測定器は、燃料噴射弁1が配置された面との反対側の面がピストンのように摺動可能な可動プレート101と、可動プレート101が設置された面以外の面により周囲を囲むように測定室103を形成した筐体部102と、燃料を外部に排出する弁体部104などからなる。
燃料噴射弁1が測定器100に設置された後に、ECU8は図5に示される手順を実施する。
手順が開始されると、まずステップS101に進み、測定器100及び燃料噴射弁1を暖機する工程と、燃料噴射弁1の内部に混入した空気を排出する工程が実施される。具体的には、まず、一定時間燃料噴射弁1を加温することにより、燃料噴射弁1が実際の内燃機関において使用される際の温度環境条件と同一の条件となるように暖機を行なう。そして、燃料噴射弁1から燃料を噴射し、高圧燃料通路7、及び高圧燃料室72、噴孔側高圧燃料室73内などの燃料が流入する箇所に混入している空気を噴孔22とリーク燃料路45より外部に排出するエア抜きを行なう。
なお、本実施形態においては、燃料噴射弁1を加温しているが、別途実際の内燃機関を模した機構を用意し、燃料噴射弁1を一定回数噴射し、燃焼させることにより燃焼温度を燃料噴射弁1に伝播させ、燃料噴射弁1が使用される温度環境と同一の温度環境になるように温度を上昇させても良い。
ステップS101にて、暖機とエア抜きが完了すると、ステップS102に進み、燃料噴射弁1からの燃料漏れが発生しているか否かを判定する。具体的には、燃料を実際に噴射した際に、リーク燃料量を計測し、該リーク燃料量が上限下限の所定の閾値から外れていないかを確認する。所定の閾値から外れていない場合には、ステップS103に進む。
ステップS103では、燃料噴射弁1から噴射される燃料噴射量を計測する。具体的には、まずECU8に記憶されている相関関係を読み出し、該相関特性を参照して、予め定められた検出点に対応する駆動電流通電時間を読み出す。そして、読み出した駆動電流通電時間に基づき、燃料噴射弁1が燃料を噴射する。
燃料噴射弁1は、測定器100の筐体部102内に形成されている測定室103に突出しているため、噴射された噴霧110は、測定室103内の体積を増加させる。これにより、可動プレート101が噴霧110により増加した体積分だけ移動することになり、かかる移動した量を測定することにより、燃料噴射量を算出することができる。
ステップS103にて燃料噴射量を計測した後、ステップS104に移り、ステップS103にて噴射した燃料噴射量が、異常でないかを確認する噴射量ガード判定を実施する。具体的には、ステップS103にて噴射した燃料噴射量が予め定められた所定の噴射量の範囲内に収まっているかを判定する。所定の範囲から外れている場合、燃料噴射弁1が指令された駆動電流通電時間に対して過度噴射、または噴射不足と判断する。ステップS103にて噴射した噴射量が予め定められた所定の噴射量の範囲内に収まっている場合には、ステップS105の、燃料噴射量と駆動電流通電時間との相関関係の線上の検出点の補正量を算出する工程へと進む。
一方で、ステップS102にて、リーク燃料量が上限下限の所定の閾値から外れている場合、またはステップS104にて燃料噴射量が予め定められた噴射量の範囲から外れている場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、燃料噴射弁1が異常であると判断され、燃料噴射弁1は分解されて再調整される。
次にステップS105における補正量の算出方法について図6をもとに説明する。相関関係の線上では、指令された駆動電流通電時間に対応する燃料噴射量である基準要求噴射量と実際に噴射される実燃料噴射量とが同一であることが望ましいが、上述したように燃料噴射弁1のそれぞれが有している機械誤差により、実際には基準要求噴射量と異なった実燃料噴射量が測定される。ここで、補正前の相関関係の線を、補正前基準相関線ALmと呼ぶ。
まず、ステップS103の燃料噴射量の測定と同様に、補正前基準相関線ALm上にて予め定められた基準検出点P0における駆動電流通電時間TQ0に基づいた指令が燃料噴射弁1に伝達され、駆動電流通電時間TQ0に基づき燃料の噴射が実施される。そして、駆動電流通電時間TQ0における、実際の実燃料噴射量Q1を計測する。これにより、基準検出点P0に基づいて指令された駆動電流通電時間TQ0から求められる基準要求噴射量Q0と、実際の実燃料噴射量Q1が求められる。図6に示すグラフは、実燃料噴射量Q1が、基準要求噴射量Q0よりも小さい値が測定された場合を示している。
次に、基準検出点P0における駆動電流通電時間TQ0と、実燃料噴射量Q1とから求められる実検出点P1を算出する。そして、実検出点P1を補正するための補正量Taを算出する。該補正量Taは、基準要求噴射量Q0を噴射するために、どれだけの駆動電流通電時間だけTQ0から加減算すればよいかを示す補正量である。
補正量Taを算出するに際しては、まず、基準検出点P0上の補正前基準相関線ALmの傾きαを読み出す。そして、実検出点P1を通過するように傾きαの仮基準相関線ALb0を算出する。その後、仮基準相関線ALb0上において、基準要求噴射量Q0に対応する仮基準検出点P2を求める。これにより、仮基準相関線ALb0において、基準要求噴射量Q0を噴射するために必要な駆動電流通電時間TQ1が求められる。
そして、求めた仮基準相関線ALb0上において基準要求噴射量Q0に対応する駆動電流通電時間TQ1と、補正前基準相関線ALm上において基準要求噴射量Q0に対応する駆動電流通電時間TQ0との差分を補正量Taとして記憶する。これを複数設けられた各検出点Tpxにおいて実施し、各検出点Tpxの補正量が算出されるとともに、補正量に基づいた補正後検出点Tpbxが算出される。したがって、ECU8、及びステップS105が、補正量算出手段、検出点補正手段に相当する。
ステップS105にて、各補正量が算出されると、ステップSAに進む。図7に示されるステップSAからステップSBの間の手順では、ステップS105にて算出された補正量と、圧電センサ31から出力される検出信号により、基準相関関係線ALmの補正を行なう。以下、図7乃至9を用いて、補正前基準相関線ALmの補正について説明する。
まず、図5のステップSAから図7のステップSAに移り、図7のステップS110に進むと、圧電センサ31の検出信号を取得する。該圧電センサ31は、所定の閾値を越えると1を出力し、閾値を越えていない場合には0と出力する検出信号である。該検出信号の値が0である場合、ノズルニードル21が、未だチップパッキン3に当接していないと判断し、ステップS111に進む。ステップS111では、検出点Tpxの駆動電流通電時間TQxが、補正前基準相関線ALmの有する補正前折曲点Tptの駆動電流通電時間TQtの値よりも駆動電流通電時間が小さい範囲において最も大きい値の駆動電流通電時間TQnの値か否かを判断する。ここで、該駆動電流通電時間TQnの値を有した補正前基準相関線ALm上の検出点Tpxを第1定点Tpnとする。ステップS111において、検出点Tpxの駆動電流通電時間TQxが第1定点Tpnの駆動電流通電時間であるTQnであると判断された場合には、ステップS113に進み、補正X1を実施する。
ステップS113の補正X1では、図8に示されるように、第1定点Tpnにて算出されている補正量を一定のまま、近似線を作成する。具体的には、第1定点Tpnに補正量を加えた点として新たに定めた第1補正後定点Tpbnから、補正前折曲点Tptの駆動電流通電時間TQtと第1定点Tpnの駆動電流通電時間TQnとの間における補正前基準相関線ALmの傾きβと同一の傾きの直線を作成する。これにより、第1補正後定点Tpbnよりも駆動電流通電時間が大きい範囲に傾きβで直線補完された近似線が作成される。
一方で、ステップS111において、否と判断された場合には、ステップS114に進み、補正Y1を実施する。ステップS114では、ECU8に記憶されている第1定点Tpnよりも小さい範囲の小定点Tpn−1を読み出し、近似線を算出する。具体的には、小定点Tpn−1の補正量を算出し、補正量を加算した補正後小定点Tpbn−1を求めて、該補正後小定点Tpbn−1と、補正前基準相関関係上の燃料噴射量が0である点とを直線近似する。
また、ステップS110において、圧電センサ31の値が0でない場合には、ノズルニードル21がチップパッキン3に当接したと判断し、ステップS112に進む。ステップS112では、補正前基準相関線ALmが有する検出点Tpxの駆動電流通電時間TQxの値が、補正前基準相関線ALmの有する補正前折曲点Tptの駆動電流通電時間TQtの値よりも駆動電流通電時間が大きい範囲において最も小さい値の駆動電流通電時間TQn+1の値であるか否かを判断する。ここで、駆動電流通電時間TQn+1の値を有した補正前基準相関線ALm上の検出点Tpxを第2定点Tpn+1とする。ステップS112において、検出点Tpxが第2定点Tpn+1であると判断された場合には、ステップS115に進み、補正X2を実施する。
ステップS115の補正X2では、図8に示されるように、第2定点Tpn+1にて算出されている補正量を一定のまま、近似線を作成する。具体的には、第2定点Tpn+1に補正量を加えた点として新たに定めた第2補正後定点Tpbn+1から、補正前折曲点Tptの駆動電流通電時間の値よりも大きい範囲における補正前基準相関線ALmの傾きと同一の傾きγの直線を作成する。これにより、第2補正後定点Tpbn+1よりも駆動電流通電時間が小さい範囲に傾きγで直線補完された近似線が作成される。
一方で、ステップS112において、否と判断された場合には、ステップS116に進み、補正Y2を実施する。ステップS116では、ECU8に記憶されている第2定点Tpn+1よりも大きい範囲の大定点Tpn+2を読み出し、その大定点Tpn+2における補正量に基づいて近似線を作成する。ステップS116においては、第2定点Tpn+1よりも駆動電流通電時間の値が大きい範囲の検出点は、ノズルニードル21が移動しないことにより噴射量が一定であり、一次線形関数に近似可能であるため、大定点Tpn+2を補正した補正後大定点Tpbn+2と、第2定点Tpbn+1とを通る直線を算出する。なお、2点を通る直線ではなく、第2定点Tpbn+1よりも大きい範囲の各検出点Tpxの補正量の平均値を算出して該平均の補正量を一定の補正量として線形近似線を作成することも可能である。
ステップS113〜ステップS116の何れかが完了すると、次にステップS117に進み、ステップS113〜ステップS116にて行なわれた近似線を作成する工程の全てが完了しているか否かを判断する。いずれかのステップの近似線が作成されていない場合、再びステップS110に戻り、圧電センサ31の出力を参照して作成されていない近似線の作成を続ける。
ステップS117において、全ての近似線が作成されている場合、ステップS118に進み、全ての近似線を補完することにより、図8に示されるように補正前基準相関線ALmが補正された補正後基準相関線ALbが算出される。具体的には、まず第1定点Tpnから求められた近似線と、第2定点Tpn+1から求められた近似線との交点を求め、かかる交点を、新たに近似折曲点Tpbtとして記憶する。これにより、第1補正後定点Tpbnよりも小さい範囲の近似線、第1補正後定点Tpbnから近似折曲点Tpbtまでの近似線、近似折曲点Tpbtから第2補正後定点Tpbn+1までの近似線、及び第2補正後定点Tpbn+1よりも大きい範囲の近似線とが結ばれて、補正後基準相関線ALbが作成される。そして、近似折曲点Tpbtの駆動電流通電時間TQbtの値と、圧電センサ31によって検出信号が出力された際の駆動電流通電時間TQbtnの値との補正量を算出してステップS119に進む。なお、圧電センサ31によって検出信号が出力された際の駆動電流通電時間TQbtnと近似折曲点Tpbtの駆動電流通電時間TQbtとの補正量の算出は、第2補正後定点Tpbn+1を通る直線上の傾きを基準に算出される。すなわち、図6を援用して説明すれば、近似折曲点Tpbtの補正量を算出する際の傾きは、図6において傾きαに相当する傾きを、第2補正後定点Tpbn+1を通る直線の傾きとしたもので算出しているということである。
さらにステップS119では、作成された補正後基準相関線ALbに基づいて、線全体の補正を行なう。具体的には、近似折曲点Tpbtの補正量を加算して、補正後折曲点Tpbtnを新たに算出する。そして、補正後折曲点Tpbtnを通過する直線となるように、第1補正後定点Tpbnからの直線と、第2補正後定点Tpbn+1からの直線との傾きを補正する。これにより、線の全体補正が完了し、補正後基準相関線ALbmが新たに作成される。
なお、補正X1、補正X2、補正Y1、及び補正Y2において、予め定められた検出点Tpxに補正量を加算して求めた補正後検出点Tpbxは、全体補正を実施する際に、値が変化しないように固定されて補正後基準相関線ALbmを作成している。すなわち、補正後基準相関線ALbmは、必ず補正後検出点Tpbxを通る。また、本実施形態では、予め定められた検出点Tpxは4つであり、補正前折曲点Tptを加えて5つの点により、基準相関関係を補正している。
図7に示すステップS119が完了すると、ステップSBに進み、図5のステップSBからステップS107に進む。
ステップS107では、補正後基準相関線ALbm上における補正後検出点Tpbxの駆動電流通電時間の値を、予め定められた検出点Tpxの駆動電流通電時間の値として記憶する。すなわち、例えば駆動電流通電時間の値が500μsである検出点Tpxを補正した補正後検出点Tpbxの駆動電流通電時間の値が495μsである場合、基準相関上の500μsに相当する値が495μsであるとして、ECUは495μsを500μsとして擬制記憶する。これにより、外部の制御機器などから駆動電流通電時間の値が500μsとして入力されても、ECU8は、500μsを495μsとして記憶しているため、ソレノイド42に実際に通電される駆動電流通電時間は495μsとなる。これにより、予め定められた検出点Tpxの持つ駆動電流通電時間の値により、補正後の燃料噴射量が噴射されることになるので、ECU8に入力される駆動電流通電時間を変化させずに燃料噴射弁1の固体差に基づいた燃料噴射量だけが変化することになり、後の補正と制御が容易となる。
ステップS107が完了すると、ステップS108に進み、補正後の燃料噴射量の合否判定として、補正後の基準相関関係に基づいて燃料噴射量が噴射されているか否かを判断する。具体的には、補正後基準相関線ALbmを読み出し、予め定められた検出点Tpxの持つ駆動電流通電時間の値を入力する。ステップS108において、予め定められた検出点Tpxの値を入力することにより、ECU8は、その検出点Tpxを補正している補正後検出点Tpbxの値に置き換えて、駆動電流通電時間を入力する。すなわち、補正後の燃料噴射量が算出されるように記憶されているので、補正前の基準相関線ALmにおける入力と出力とが変化しないように設定されている。したがって、予め定められた補正前の検出点Tpxの持つ駆動電流通電時間の値を入力し、その値に対して補正前基準相関線ALmの燃料噴射量と実際に噴射される燃料噴射量、すなわち補正後基準相関に基づく燃料噴射量とが同一か否かを判断する。
補正前の基準相関に基づく燃料噴射量と、補正後の基準相関に基づく燃料噴射量とが同一でない場合には、ステップS109に進み、ステップS105と同様に補正量を再算出すると共に、ステップSAに進み、基準相関関係の補正を再度行う。一方で、同一である場合には、本手順を終了する。
なお、本実施形態におけるステップS101〜S109、及びS110〜S119までの手順は、燃料噴射弁1に設けられたECU8により実行されているが、測定器に設けられた別のECUなどにより全体の手順を実行することもできるし、別体のECUが一部の手順を実行することもできる。
次に、図10、図11を用いて、燃料噴射量が測定できない環境、すなわち、燃料噴射弁1が、実際の内燃機関に搭載された後の基準相関関係の補正について説明する。本手順は、燃料噴射量が測定できる環境における上記ステップS101からステップS119までの手順が完了してから後に実施しており、本手順における基準相関関係は、ステップS101からステップS119の手順において補正された補正後基準相関線ALbmが記憶されている基準相関関係である。
本手順において、まずステップS201では、補正を実施する条件を参照する。具体的には、ECU8は、予め決められた周期毎に本手順を実施する際の開始信号が出力されているかを、確認する。本実施形態においては、開始信号は、前回の本手順が実施されてからの経過時間に基づいて出力される。なお、開始信号は、外部機器からECUに本手順を実施させる信号を入力することにより出力させても良いし、一定距離走行毎にECU8が出力するものであってもよい。S201の条件が成立している場合には、S202に進む。
ステップS202では、図11に示されるように、圧電センサ31からの検出信号SPにおける立ち上がりSp1の際の駆動電流通電時間の値TPTQ1と、相関線上の折曲点Tp0の駆動電流通電時間の値TPTQ0を取得する。そして、取得した後に、ステップS203に進む。
ステップS203では、取得されたTPTQ1と、TPTQ0が同一か否かを判断する。TPTQ1がTPTQ0と同じ値である場合、ステップS201に戻り、次回の本補正の手順の実施条件が成立するまで、本手順の実施を停止する。S203において、TPTQ1がTPTQ0と同じ値でない場合、ステップS204に進み、折曲点TP0の補正を実施する。
ステップS204では、第2補正後定点Tpbn+1の傾き上のTPTQ1の値に対応する燃料噴射量を求め、かかる燃料噴射量の値とTPTQ1の値とを有した折曲点TP1を定める。そして、第1補正後定点Tpbnと折曲点TP1とを直線で結ぶ。その後に、折曲点TP1と第2補正後定点Tpbn+1とを同様に直線で結ぶ。これにより、新たな相関線が求められる。
新たな相関関係が求められた後、ステップS205に進み、ECU8は、求められた相関線を、第2補正後基準相関線ALbm2として、補正後基準相関線ALbmと置き換えて記憶する。以上により、燃料噴射量が測定できない環境における基準相関の補正が完了する。
なお、本手順における基準相関関係は、ステップS101からステップS119の手順において補正された補正後基準相関線ALbmが記憶されている基準相関であるが、本手順はステップS101からステップS119までの手順を実施せずに本手順を実施することも可能である。この場合には、基準相関関係は、予めECU8に記憶されている補正前基準相関線ALmに基づく基準相関関係となる。例示すれば、本実施形態においては折曲点の前後の検出点Tpxを第1補正後定点Tpbnと第2補正後定点Tpbn+1を用いて基準相関を算出しているが、ステップS101からステップS119までの手順を実施せずに本手順を実施する場合には、折曲点の前後の検出点Tpxは、第1定点Tpnと第2定点Tpn+1を用いて基準相関を算出することになる。
次に、本実施形態の効果について述べる。本実施形態では、燃料噴射弁1のノズルニードル21が当接するチップパッキン3に、フルリフト検出手段として圧電センサ31が設けられている。さらに、ECU8には燃料噴射量と噴射期間パラメータとしての駆動電流通電時間との相関関係が記憶されており、該相関関係を圧電センサ31の検出信号により補正している。これにより、ECU8は、圧電センサ31からの検出信号からノズルニードル21がチップパッキン3に当接したフルリフト状態であることを検出することができ、ECU8に記憶されている相関関係の補正をより正確に行なうことができる。すなわち、燃料噴射量が測定できる環境、及び燃料噴射量が測定できない環境の両方の場合において、フルリフト状態になった際の駆動電流通電時間を実際に求め、求められた駆動電流通電時間に基づいて相関関係を補正できる。したがって、相関関係上の、フルリフト状態の前後において相関関係の傾きが変わる近傍において、実際の燃料噴射量と噴射期間に即した精度の高いとなり、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、ノズルニードル21がチップパッキン3と当接した際に圧電センサ31によって取得される検出信号SPにより、折曲点TP1の駆動電流通電時間の値を精度よく算出することができる。これにより、燃料噴射量が測定できない環境においても、基準相関関係の折曲点TP0を補正することができ、相関関係の折曲点近傍の算出精度が向上する。これにより、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、ECU8に、予め定められた基準相関関係ALmが記憶されており、該基準相関関係ALmには、複数の検出点Tpxが予め定められている。そして、燃料噴射量が実際に計測できる環境において、複数の各検出点Tpxにおける駆動電流通電時間に基づいて、実燃料噴射量を測定し、かかる実燃料噴射量から検出点Tpxを補正後検出点Tpbxに補正し、該補正後検出点Tpbxに基づいて補正前基準相関線ALmを補正している。さらに、ECU8は、補正した補正後基準相関線ALbを新たに基準相関関係として、記憶している。これによれば、基準となる検出点Tpxが予め定められていることから、補正前基準相関線ALm上の補正を実施する基準の点が明確となり、近似線を効果的に作成することができる。さらには、補正後基準相関線ALbを算出し、基準相関関係としてECU8に記憶させているため、燃料噴射弁の噴射特性の各個体差を反映している燃料噴射量を算出することができる。
これにより、個々の燃料噴射弁に応じた相関関係により燃料噴射量を算出することができ、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
またさらに、本実施形態の基準相関には、ノズルニードル21がフルリフト状態となった際に基準相関関係上に現われる補正前折曲点Tptが予め記憶されており、該補正前折曲点Tptよりも駆動電流通電時間が大きい範囲か小さい範囲かに応じて、補正方法を変更している。これにより、フルリフト状態の前とフルリフト状態の後との特性を分けて基準相関関係を補正することができ、相関関係の折曲点前後の算出精度が向上する。故に、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
加えて、本実施形態では、補正前折曲点Tptにおける駆動電流通電時間TQtの値よりも、駆動電流通電時間が小さい検出点Tpxの範囲においては、補正前折曲点Tptにおける駆動電流通電時間の値よりも小さい検出点Tpxの中で、駆動電流通電時間の値が最も大きい値である第1定点Tpnにおいて算出された補正量を一定とし、該一定の補正量を用いて、第1定点Tpnを補正した後の点である第1補正後定点Tpbnから駆動電流通電時間が大きい範囲において線形近似特性を算出する。そして、補正前折曲点Tptにおける駆動電流通電時間TQtの値よりも駆動電流通電時間が大きい検出点Tpxの範囲においては、補正前折曲点Tptにおける駆動電流通電時間よりも大きい検出点の中で、駆動電流通電時間の値が最も小さいである第2定点Tpn+1において算出された補正量を一定とし、該一定の補正量を用いて、第2補正後定点Tpbn+1から駆動電流通電時間の値が小さい範囲において、線形近似特性を算出する。そして、該第1補正後定点Tpbnと第2補正後定点Tpbn+1における線形近似特性に基づいて、近似折曲点Tpbtを算出している。
これにより、折曲点を挟む近傍の検出点Tpxである、第1定点Tpn、及び第2定点Tpn+1における補正量を用いて近似線を作成することができ、第1定点Tpnを補正した第1補正後定点Tpbnと第2補正後定点Tpbn+1からの線形近似により求めた近似線により、近似折曲点Tpbtを算出することができる。これにより、相関関係の傾きが変化する点を求めることができ、精度の高い相関関係とすることができる。したがって、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
さらに加えて、本実施形態では、ECU8が、近似折曲点Tpbtを検出信号に基づいて補正後折曲点Tpbtnに補正している。すなわち、フルリフト状態になった際の駆動電流通電時間に基づいて、近似により求めた折曲点を補正することができる。これにより、よりフルリフト状態になる前後の近似線が正確になり、基準相関関係の精度が向上する。故に、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
また、さらに加えて、本実施形態では、噴射期間パラメータとして、ソレノイド42に電流を通電する時間である駆動電流通電時間を用いており、基準相関は、燃料噴射量と駆動電流通電時間との相関となっている。駆動電流通電時間は、ソレノイド42に通電を開始してから後の時間であるため、測定が容易であり、噴射期間パラメータに駆動電流通電時間を用いることで、検出信号がECU8に出力されたその時点の時間を算出することができる。
また、本実施形態では、フルリフト検出手段として圧電センサ31を用いており、圧電センサ31はチップパッキン3の当接面に設けられている。そして、該圧電センサ31の圧力変化に応じて出力される電圧に基づいてノズルニードル21がチップパッキン3に当接したことを検出している。圧電センサ31を用いることで、圧力変化に応じた所定の閾値を任意に定めることができ、当接したことを検出する精度を向上させることができる。
(第2実施形態)
以下、図12、及び図13を用いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態におけるステップS110からステップS119までの手順が異なっている。第2実施形態では、燃料噴射量を測定できる環境において、折曲点を算出する際に圧電センサ31より検出された検出信号SPに基づき、該検出信号SPを取得した際の駆動電流通電時間から実燃料噴射量を測定している。
まず、第2実施形態においても、第1実施形態のステップS101〜ステップS105を実施してステップSAに進む。図12に示されるように、ステップSAからステップS310に進み、圧電センサ31の検出信号SPが0か否かを判断する。
ステップS310にて、検出信号SPが0であると判断されると、ステップS312に進み、検出点Tpxの駆動電流通電時間TQxが第1定点Tpnの駆動電流通電時間TQnか否かを判断する。ここで、検出点Tpxの駆動電流通電時間TQxが第1定点Tpnの駆動電流通電時間TQnではないと判断されると、第1実施形態と同様に、補正Y1を実施する。
ステップS312において、検出点Tpxの駆動電流通電時間TQxが第1定点Tpnの駆動電流通電時間TQnであると判断されると、再度ステップS310に進み、圧電センサ31の出力SPの値を参照する。
ステップS310において、SPが0でないと判断されると、ステップS311に進む。ステップS311では、圧電センサ31の出力SPが1になった際の出力である出力SP1の駆動電流通電時間TQsを記憶する。
ステップS311において駆動電流通電時間TQsを記憶した後に、ステップS314に進み、SPが1になった際の駆動電流通電時間TQsを燃料噴射弁1に指令し、実際の燃料噴射量を測定する。なお、燃料噴射量の測定は、第1実施形態のステップS103にて用いた方法を採用することができる。
測定が完了すると、ステップS315に進み、かかる駆動電流通電時間TQsと、駆動電流通電時間TQsを指令した際の実燃料噴射量とから、実折曲点Tptsを算出する。これにより、実際のノズルニードル21がチップパッキン3に当接した時点の駆動電流通電時間と燃料噴射量との点が相関関係上に実折曲点Tptsとして求められる。
ステップS315が完了すると、次にステップS316に進み、ステップS105にて算出された各検出点Tpxの補正量と、実折曲点Tptsとに基づいて、基準相関関係を補正した補正後基準相関線ALb2を算出する。具体的には、図13に示されるように、ステップS105において算出された補正量を加算することにより、各検出点Tpxを補正した補正後検出点Tpbxを算出し、かかる補正後検出点Tpbxのうち、第1補正後定点Tpbnと実折曲点Tptsを繋いで直線β1を作成するとともに、第2補正後定点Tpbn+1と実折曲点Tptsを繋いで直線γ1を作成する。そして、ステップS213にて補正Y1により求められた近似線と、第1補正後定点Tpbn、第2補正後定点Tpbn+1、及びステップS315で求められた実折曲点を直線で結んだ直線β1、及び直線γ1とを繋げて、補正後基準相関線ALb2として作成する。
ステップS216が完了すると、ステップSBに進み、第1実施形態と同様に、図5のステップS107に進む。そして、第1実施形態と同様の手順を引き続き実施する。
第2実施形態においては、燃料噴射量を測定できる環境において、圧電センサ31の出力が1となった際の実燃料噴射量を測定し、かかる実燃料噴射量から実折曲点Tptsを算出している。そして、かかる実折曲点Tptsと補正後検出点とから補正後基準相関関係ALb2を作成している。これによれば、実際の折曲点を近似することなく直接求めることができるので、該実折曲点Tptsから求めた近似線により、フルリフト状態近傍の相関関係が実際の燃料噴射量と噴射期間に即した精度の高い相関関係となり、かかる相関関係から算出する燃料噴射弁の燃料噴射量の精度を向上させることができる。
(その他の実施形態)
以上、本発明のそれぞれの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することができる。
変形例1として、フルリフト検出手段は、当接したことにより抵抗が変化することを検出する回路であっても良い。すなわち、該回路の抵抗が変化したことにより電流値が変化したか否かを判断することにより当接したことを検出する抵抗型センサなどであっても良い。
また、変形例2として、第1実施形態では燃料噴射量が測定できる環境にて行なう近似線の算出において、第2補正後定点Tpbn+1を通る直線γと、圧電センサ31によって検出信号が出力された際の駆動電流通電時間TQbtnとから近似折曲点Tpbtを算出していたが、第1補正後定点Tpbnを通る直線βと、圧電センサ31によって検出信号が出力された際の駆動電流通電時間TQbtnと、から近似折曲点Tpbt算出しても良い。
また、変形例3として、第1実施形態、及び第2実施形態では、燃料噴射量が測定できない環境にて行なう基準相関線の補正において、第2補正後定点Tpbn+1を通る直線と、圧電センサ31によって検出信号が出力された際の駆動電流通電時間TPTQ1とから補正後折曲点Tpbtnを算出していたが、第1補正後定点Tpbnを通る直線と、圧電センサ31によって検出信号が出力された際の駆動電流通電時間TPTQ1とから補正後折曲点Tpbtnを算出しても良い。