JP4228171B2 - 燃料噴射装置の調整方法および燃料噴射装置の調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射装置(以下、「燃料噴射装置」をインジェクタという)のアジャスティングパイプの送り量を調整するインジェクタの調整方法およびインジェクタの調整装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3に従来のアジャスティングパイプの送り量調整装置を示す。インジェクタ10は、弁部材としてのニードル12が弁座11aから離座することにより噴孔13から試験流体を噴射する。試験流体は、引火等を防止するため燃料とほぼ同一の粘性を有する不燃性の流体を用いる。付勢手段としてのスプリング14は、弁座11aに着座する方向、つまり噴孔13を閉塞する方向にニードル12を付勢している。電気駆動手段としてのコイル16に電流を供給すると、スプリング14の付勢力に抗しニードル12を図3の上方に吸引する磁気吸引力が発生し、ニードル12が弁座11aから離座する。流量計100は、インジェクタ10を流れる流体流量、つまり噴孔13から噴射する流体噴射量を測定する。
【0003】
アジャスティングパイプ15はスプリング14と当接しており、スプリング14の付勢力はアジャスティングパイプ15の送り量により調整される。ここで送り量とは、初期位置からアジャスティングパイプ15が送り込まれた位置までの変位量を表している。アジャスティングパイプ15は圧入によりインジェクタ10のハウジング11内に送られ、送り量が確定するとかしめ等によりハウジング11に固定される。
【0004】
電気送り手段としてのモータ30とともに回転するモータギア31はねじギア32と噛み合っている。ねじギア32は送りねじ33とねじ結合しており、ねじギア32が回転すると、送りねじ33が図3の上方または下方に移動する。送りねじ33が下方に移動すると、アジャスティングパイプ15がハウジング11内に送り込まれ、弁座11aに向けてニードル12を付勢するスプリング14の付勢力が増加する。制御手段としてのパーソナルコンピュータ(以下、「パーソナルコンピュータ」をPCという)40は、流量計100から送出される流量信号を入力して単位時間当たりの流量を演算する。駆動回路41はPC40からの制御信号に基づきモータ30およびコイル16に供給する制御電流を制御する。
【0005】
アジャスティングパイプ15の送り量を大きくするとスプリング14の付勢力が増加する。すると、同じ周波数、同じパルス幅、同じ振幅の制御パルス電流をコイル16に供給する場合、インジェクタ10の一回の開弁時間は長くなり、閉弁時間は短くなるので、インジェクタ10から一回に噴射する噴射量が減少する。したがって、流量計100から送出される流量信号によりPC40で測定する流量も減少する。開弁時間とは、ニードル12が弁座11aを離座してからフルリフトしストッパ17に係止されるまでの時間を表し、閉弁時間とは、ニードル12がストッパ17を離れてから弁座11aに着座するまでの時間を表す。
【0006】
コイル16に供給する制御電流の制御値である周波数、パルス幅、振幅等は所定の固定値に設定される。所定の制御値に固定した制御電流に対し、インジェクタ毎または要求性能毎にインジェクタに要求される一回当たりの噴射量は異なる。一回当たりの噴射量が確定すれば、所定の制御値に固定された制御電流に対し単位時間当たりの流量が確定する。制御値を固定した制御電流をインジェクタ10に供給し、目標の流体流量になるまでアジャスティングパイプ15を送ることにより、アジャスティングパイプ15の送り量を調整する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
アジャスティングパイプ15は一旦送り込むと戻すことができないので、アジャスティングパイプ15の送り込みを開始する初期位置は、各インジェクタの製造ばらつき等を考慮して決定されている。インジェクタ10の噴射量を測定しながらアジャスティングパイプ15の送り量を調整する図3の装置では、初期位置から目標の噴射量に達するまでのアジャスティングパイプ15の送り量が大きく、調整時間が長くなっている。
【0008】
本発明の目的は、目標値の近傍まで予めアジャスティングパイプを送り込み、インジェクタの噴射量を測定しながらアジャスティングパイプの送り量を調整する時間を短縮するインジェクタの調整方法およびインジェクタの調整装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載のインジェクタの調整方法によると、電気駆動手段に供給する電流値が、目標値の近傍で目標値よりも小さい目標近傍値以上で弁部材がリフトするようにアジャスティングパイプの送り量を予め調整する前工程の後、噴射量を測定しながらアジャスティングパイプの送り量を後工程で最終的に調整する。後工程の前に予め目標の送り量に近い位置まで前工程でアジャスティングパイプを送り込んでおくので、後工程でアジャスティングパイプを送り込む量が小さくなり、後工程に要する時間が短くなる。
【0010】
インジェクタの噴射量を測定しながらアジャスティングパイプの送り量を調整する装置(以下、「従来装置」という)に比べ、電気駆動手段に供給する電流値が目標値よりも小さい目標近傍値以上で弁部材がリフトするようにアジャスティングパイプの送り量を調整する装置(以下、「本願装置」という)は、例えば、弁部材の位置を電気信号として出力する公知の位置センサと、位置センサの出力信号を検出し、弁部材がリフトしたかを判定するPC等により、簡単にかつ安価に構成できる。本願装置を使用することにより従来装置の台数を減らすことができるので、アジャスティングパイプの送り量の調整装置全体の設備費を低減できる。
【0011】
インジェクタの電気駆動手段に供給する電流値を基準値から増加していくと、、付勢手段の付勢力に抗して弁部材を吸引する磁気吸引力が増加する。電流値が増加してから磁気吸引力が増加し、増加した磁気吸引力に対し弁部材がリフトするまでに僅かに時間遅れが生じる。本発明の請求項2記載のインジェクタの調整方法または請求項4記載のインジェクタの調整装置によると、電気駆動手段に供給する電流値を基準値から階段状に増加するので、増加した電流値が次に増加するまで同じ電流値を維持する。電流値が維持されている間に弁部材の挙動が安定するので、弁部材がリフトするときの電流値を高精度に検出できる。
【0012】
本発明の請求項3記載のインジェクタの調整装置によると、アジャスティングパイプを送り込む各段階においてアジャスティングパイプが停止している状態で、電気駆動手段に供給する電流値を基準値から増加して電気駆動手段が発生する磁気吸引力を増加させ、リフト検出手段の検出信号により弁部材がリフトしたことを判定し、弁部材がリフトするときに電気駆動手段に供給している電流値が目標値よりも小さい目標近傍値以上であれば電気送り手段への電流供給を停止する。アジャスティングパイプを予め目標位置の近傍まで送り込み、インジェクタの噴射量を測定しながらアジャスティングパイプの送り量を最終的に調整できる。インジェクタの噴射量を測定しながらアジャスティングパイプの送り量を調整する時間が短くなるので、従来装置の台数を低減できる。したがって、前述したように、本願装置を使用することにより従来装置の台数を減らすことができるので、アジャスティングパイプの送り量の調整装置全体の設備費を低減できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図に基づいて説明する。
本発明の一実施例によるインジェクタの調整装置を図1に示す。インジェクタの調整装置は、モータ30、モータギア31、ねじギア32、送りねじ33、PC40、駆動回路41および位置測定器50で構成されている。図1に示す位置測定器50以外の部材または装置は図3において同一符号で示したものと実質的に同一であるから、説明を省略する。ただし、図1に示すPC40の制御プログラムは図3に示すPC40と異なっている。
【0014】
本実施例の調整方法は、コイル16に供給する電流値が目標値以上でニードル12がリフトするようにモータ30に供給する制御電流をPC40により制御し、アジャスティングパイプ15の送り量を調整する。コイル16に供給する電流値が目標値以上でニードル12がフルリフトすると、モータ30への電流供給を停止しアジャスティングパイプ15の送りを停止する。PC40は、リフト検出手段としての位置測定器50が出力する位置信号によりニードル12のリフト量を検出する。アジャスティングパイプ15の送り量の調整方法について図1に基づいて説明する。
【0015】
(1) まず、PC40から駆動回路41に制御信号を送出し、モータ30を回転させることにより、ニードル12が弁座11aに着座する程度の付勢力をスプリング14が発生するように、予め設定された初期位置までアジャスティングパイプ15を圧入する。
【0016】
(2) アジャスティングパイプ15を図2に示すように段階的に送り込み、アジャスティングパイプ15が停止している状態において、コイル16に供給する電流値を図2に示すように基準値から階段状に増加させ、ニードル12を吸引する磁気吸引力を上昇させる。PC40は、位置測定器50が出力する位置信号によりニードル12の位置を検出する。コイル16に供給する電流値が目標値以上になる前に、ニードル12がフルリフトすると、スプリング14の付勢力が不足している、つまりアジャスティングパイプ15の送り量が不足しているとPC40が判断する。そして、コイル16に供給する電流値を基準値まで下げ、モータ30に供給する電流値を制御し、アジャスティングパイプ15を次の段階まで所定量送り込む。
【0017】
アジャスティングパイプ15が送り込まれると、弁座11aに向けてニードル12を付勢するスプリング14の付勢力が増加し、スプリング14の付勢力に抗しニードル12をリフトさせるために必要なコイル16に供給する電流値が増加する。
【0018】
(3) 前記(2) のステップを繰り返し、目標値以上の電流をコイル16に供給しているときにニードル12がフルリフトしたとPC40が検出すると、コイル16およびモータ30への電流供給を停止し、図1に示す装置によるアジャスティングパイプ15の送り量調整を終了する。
(4) 次に、インジェクタ10の燃料噴射量を測定しながら所定電流値で目標噴射量になるように、図3に示す従来装置でアジャスティングパイプ15の送り量を最終的に決定する。
【0019】
以上説明した本発明の実施の形態を示す上記実施例では、インジェクタ10の噴射量を測定しながらアジャスティングパイプ15の送り量を調整する工程の前工程で、目標値以上の電流値でニードル12がフルリフトするまでアジャスティングパイプ15を送り込んでおく。したがって、インジェクタ10の噴射量を測定しながらアジャスティングパイプ15の送り量を調整する後工程において、アジャスティングパイプ15の送り量の調整量が減少し、インジェクタ10の噴射量を測定しながらアジャスティングパイプ15の送り量を調整する時間が減少する。したがって、図1に示す本願装置を用いることにより、図3に示す従来装置の台数を減らしても同じ時間内において従来装置で調整できるインジェクタの数量がほぼ等しくなる。本願装置は従来装置よりも安価であるから、本願装置および従来装置を含むアジャスティングパイプ15の送り量調整装置の設備費を低減できる。
【0020】
コイル16に供給する電流値の上昇に伴いニードル12を吸引する磁気吸引力が上昇し、上昇した磁気吸引力によりニードル12がリフトするまでに僅かに時間遅れがある。上記実施例では、アジャスティングパイプ15を送り込んだ各段階において、コイル16に供給する電流を階段状に増加している。階段状に増加する電流は次の値に上昇する前に一定時間同じ電流値を維持するので、一定値の電流がコイル16に流れている間にニードル12の挙動が安定し、ニードル12がリフトする電流値を高精度に検出できる。
【0021】
上記実施例では、コイル16に供給する電流値が目標値以上でニードル12がフルリフトしたときに、アジャスティングパイプ15の送り量の調整を終了した。本発明では、コイル16に供給する電流値が目標値の近傍で目標値より小さい目標近傍値以上でニードル12がフルリフトすればアジャスティングパイプ15の送り量の調整を終了してもよい。ニードル12がフルリフトしなくても、コイル16に供給する電流値が目標値以上または目標近傍値以上でニードル12が弁座11aから離座したことを検出したときにアジャスティングパイプ15の送り量の調整を終了してもよい。
【0022】
上記実施例では、ニードル12がリフトしたことをニードル12の位置を測定する位置測定器50で検出した。これ以外に、図3に示す流量計100よりも簡単な構成で試験流体または空気がインジェクタ10から噴射されたことを検出する流量計によりニードル12のリフトを検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例によるアジャスティングパイプの送り量調整装置を示す模式的構成図である。
【図2】本実施例によるアジャスティングパイプ位置とコイル電流とニードルリフト量との関係を示す特性図である。
【図3】従来例によるアジャスティングパイプの送り量調整装置を示す模式的構成図である。
【符号の説明】
10 インジェクタ
12 ニードル(弁部材)
13 噴孔
14 スプリング(付勢手段)
15 アジャスティングパイプ
16 コイル(電気駆動手段)
30 モータ(電気送り手段)
40 PC(制御手段)

Claims (4)

  1. 噴孔を開閉する弁部材と、前記弁部材を噴孔閉塞方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗し前記弁部材を吸引する磁気吸引力を発生する電気駆動手段と、前記付勢手段と当接し前記付勢手段の付勢力を調節するアジャスティングパイプとを備える燃料噴射装置の調整方法において、
    前記付勢手段が噴孔閉塞方向に前記弁部材を付勢する付勢力が増加する方向に前記アジャスティングパイプを段階的に送り込み、前記アジャスティングパイプを送り込む各段階において前記アジャスティングパイプが停止している状態で、前記電気駆動手段に供給する電流値を基準値から増加して前記電気駆動手段が発生する磁気吸引力を増加させ、前記付勢手段の付勢力に抗して前記弁部材がリフトするときに前記電気駆動手段に供給している電流値が、目標値の近傍で目標値よりも小さい目標近傍値以上であれば前記アジャスティングパイプの送り込みを終了する前工程と、
    前記前工程で調整した前記アジャスティングパイプの送り量を、前記燃料噴射装置の噴射量を測定しながらさらに調整する後工程と、
    を有することを特徴とする燃料噴射装置の調整方法。
  2. 前記前工程において、前記電気駆動手段に供給する電流値を基準値から階段状に増加することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射装置の調整方法。
  3. 噴孔を開閉する弁部材と、前記弁部材を噴孔閉塞方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗し前記弁部材を吸引する磁気吸引力を発生する電気駆動手段と、前記付勢手段と当接し送り込まれる量により前記付勢手段の付勢力を調節するアジャスティングパイプとを備える燃料噴射装置の調整装置において、
    前記弁部材を噴孔閉塞方向に付勢する前記付勢手段の付勢力が増加する方向に前記アジャスティングパイプを送り込む電気送り手段と、
    前記電気駆動手段および前記電気送り手段に供給する制御電流をそれぞれ制御する制御手段と、
    前記弁部材のリフトを検出するリフト検出手段とを備え、
    前記制御手段は、段階的に前記アジャスティングパイプを送り込むように前記電気送り手段に供給する電流を制御し、前記アジャスティングパイプを送り込む各段階において前記アジャスティングパイプが停止している状態で、前記電気駆動手段に供給する電流値を基準値から増加して前記電気駆動手段が発生する吸引力を増加させ、前記リフト検出手段の検出信号により前記弁部材がリフトしたことを判定し、前記弁部材がリフトするときに前記電気駆動手段に供給している電流値が、目標値の近傍で目標値よりも小さい目標近傍値以上であれば前記電気送り手段への電流供給を停止することを特徴とする燃料噴射装置の調整装置。
  4. 前記制御手段は、前記電気駆動手段に供給する電流値を基準値から階段状に増加することを特徴とする請求項3記載の燃料噴射装置の調整装置。
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