JP6216786B2 - 質量スペクトルの再現性向上方法およびこれを用いた定量分析方法 - Google Patents

質量スペクトルの再現性向上方法およびこれを用いた定量分析方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
[技術分野]
本発明は、質量スペクトルの再現性向上方法およびこれを用いた定量分析方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、化学物質の質量スペクトルにおいて、イオン生成反応の温度を互いに同一に調整し、或いはイオン生成反応温度が同じであるスペクトルを選択することにより、前記化学物質の質量スペクトルの再現性を向上させる方法に関する。また、本発明は、一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法、定量分析用検定線(calibration curve)を求める方法、および質量スペクトルを用いた試料定量分析方法に関する。
[背景技術]
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix−assisted laser desorption/ionization、MALDI)方法は、化学物質をイオン化させる方法であって、主に、飛行時間型(time−of−flight、TOF)質量分析管と共に使用され、化学物質の質量分析に活用されている。MALDI−TOF質量分析方法は、分析可能な試料の選択範囲が広く、分析にかかる時間が短いため、様々な固体物質、特に生物の分子構造解析に広く用いられる。
ところが、MALDI質量スペクトルパターンの再現性が非常に悪いため、MALDI質量分析法を試料の定量分析に使用することは難しい。このような点から、MALDI質量分析法の産業的または科学的応用範囲が非常に制限されている。
それにも拘わらず、MALDI質量スペクトルを用いて試料の定量分析を行うために、例えば、内部標準物質を使用しない相対的定量法、内部標準物質を使用する相対的定量法、内部標準物質を使用する絶対的定量法、分析物質の添加による絶対的定量法など、様々なMALDI質量スペクトルを活用した方法が開発された。
内部標準物質を使用しない相対的定量法(またはプロファイル解析法(profile analysis))は、MALDI質量スペクトル内で各成分の相対的な信号強度が一定であるという事実に基づいて、MALDI質量スペクトルを再現性よく分析するために分類アルゴリズム(classification algorithm)を用いるMALDI質量分析法である。ところが、プロファイル解析法は実験の設計および遂行が難しいという欠点がある。
また、内部標準物質を使用する相対的定量法は、一定量の内部標準物質を添加した試片に対するMALDI質量スペクトルにおいて、各試料のピーク高さまたは面積を前記内部標準物質のピーク高さまたは面積に対する相対的な値をもって測定することにより、試料を定量するMALDI質量分析法である。ところが、内部標準物質を使用する相対的定量法によっては試料の絶対的な量を測定することができない。
また、内部標準物質を使用する絶対的定量法は、測定しようとする試料の量を変化させながら一定量の内部標準物質を混ぜた多数個の試片から検定線を求めた後、前記内部標準物質を使用する相対的定量法を用いて未知の試片に対して得た前記試料の相対的な測定値を前記検定線に代入して前記試料の絶対的な量を求めるMALDI質量分析法である。ところが、内部標準物質を使用する絶対的定量法を用いて、多数の成分が含有された試片を分析するには、各成分ごとに検定線を求めなければならないという欠点がある。
また、分析物質の添加による絶対的定量法は、測定しようとする試料を含有したサンプルを2つ以上に分割し、分割されたサンプルに前記試料の量を変化させながら添加した各サンプルに対して得たMALDI質量スペクトルから検定点(calibration points)を求めた後、前記検定点から、本来測定しようとした試料の絶対的な量を求めるMALDI質量分析法である。ところが、分析物質の添加による絶対的定量法を用いて試料を定量分析するには、分析しようとする試料をさらに準備しなければならず、1種の試料を分析するために多数個の試片を準備しなければならないという欠点がある。
今まで公知となった方法をもって、MALDI質量スペクトルを用いて定量分析を行うためには、内部標準物質、特に試料と同一の化合物として、同位元素で置換された物質を使用している。ところが、タンパク質や核酸など分子量の大きい物質だけでなく、ペプチドのように分子量が大きくない物質に対しても、同位元素で置換されたものとそうでないものを質量スペクトルで区分するために、同位元素置換程度を高めると、試料の価格が非常に高くなる。しかも、試料の前処理が簡単でないことも、内部標準物質を使用するMALDI質量分析法によって定量分析する方法の欠点の一つである。
MALDI質量分析の試片は、通常、試料とマトリックスとの混合物であるので、MALDI質量スペクトルには、分析すべき試料イオン(analyte ion、AH)およびその分解生成物と、マトリックスイオン(matrix ion、MH)およびその分解生成物が現れる。よって、MALDIスペクトルのパターンはAHとMHの分解パターン、およびAHとMHの強度比によって決定される。
MALDIによって形成されたイオンは、イオン源の内部(in−source decay、ISD)または外部(post−source decay、PSD)で壊れる可能性がある。ISDは反応速度が速く、早く終結するが、これに対し、PSDは反応速度が遅い。このような分析試料イオンの分解反応速度および収率は反応速度定数およびイオンの内部エネルギーによって決定される。よって、MALDIにおいてレーザーパルスにより生成されるプルーム(plume)の有効温度が分かれば内部のエネルギーが分かるようになり、これを用いて反応速度を求めることができる。
MALDI質量分析において試片にレーザーを照射するときに生成されるイオンと中性分子を含んでいる気体たるプルームの温度を調べるための多くの科学的研究が行われたことがある(J. Phys. Chem.1994, 98, 1904−1909;J. Am. Soc. Mass Spectrom.2007, 18, 607−616;J Phys. Chem.A 2004, 108, 2405−2410)。
ところが、プルームの温度を測定する最も体系的な方法は、本発明者らの研究によって最初に提示された(J. Phys. Chem. B 2009, 113. 2071−2076)。本発明者らは、時間分別光分解スペクトルとPSDスペクトルを反応速度論的に分析することにより、イオンの分解反応速度と有効温度を得ることに成功した。また、こうして得た温度は末期プルーム温度(Tlate)であることを認知した。本発明者らは、こうして得た反応速度関数を用いてISD収率を分析することにより、初期プルーム温度(Tearly)も決定することができた。
本発明者らは、まずMALDIスペクトルから、ペプチドイオンのISD、PSDなどによって作られる分解イオン生成物の強度を測定した。この資料からイオン源の出口におけるペプチドイオンの生存確率(Sin)を計算した。実験条件を考慮して、ペプチドイオンがイオン源の出口で生存することが可能な最高速度定数を求め、ペプチドイオンの分解速度定数からそれに該当する最高の内部エネルギーを決定した。温度を変えながらペプチドイオンの内部エネルギー分布を求め、最高の内部エネルギーより小さい領域の確率がSinと同一になる温度を取ることにより、Tearlyを決定した。
本発明者らが考案した方法によって決定されたイオン含有気体(プルーム)の初期および末期の温度は、先行研究者らが報告した結果と殆ど一致した。しかし、他の研究者らによって考案された方法に比べて方法論的に一層さらに体系的であり、任意性がなくて普遍的適用が可能であるという利点がある(Journal of The American Society for Mass Spectrometry、2011年、vol. 22, pp1070−1078)。この論文の内容をすべて本明細書の内容として引用する。
このような研究により、本発明者らは、MALDI実験条件を変化させると初期プルーム温度(Tearly)が変わるが、様々な実験条件の下で得たスペクトルのうち、Tearlyが同じである質量スペクトルのみを選択して考察すると、各質量スペクトルのパターンが互いに同一であるという驚くべきことを見出した。
また、本発明者らは、MALDIにおいてイオン生成反応の様々な条件を変化させると、イオンが生成される当時の温度(Tearly)が変わるが、様々な実験条件の下で得たスペクトルのうち、イオン生成反応温度が同じである質量スペクトルのみを選択して考察すると、各スペクトルにおける全イオン数(total ion count、TIC)が互いに同一であるとういう驚くべきことを見出すことにより、本発明を着想するに至った。
しかも、本発明者らは、Tearlyが同一の場合、質量スペクトルパターンだけでなく、TIC(total ion count)が同一であるということから、試片に照射されるレーザーパルスのエネルギー強度を調節してTearlyを一定に維持すると、同じTearlyでの質量スペクトルを得ることができるということもさらに見出した。
よって、本発明者らは、Tearlyを測定することが可能な因子、例えば、質量スペクトルに現れたイオンの分解パターンやTICなどを活用して、Tearlyが一定である質量スペクトルを選別し或いは求めることができれば、質量分析器を用いて定量分析が可能であるということを発明するに至った。
さらに、本発明者らは、Tearlyが同じであるスペクトルからプルームのプロトン交換反応の反応商(Q=[M][AH]/([MH][A])を求めると、前記反応商が固体試片における試料の濃度の変化とは関係なく変化せず一定であるということも見出した。
すなわち、本発明者らは、MALDI−TOF質量分析において、初期プルームはほぼ熱的平衡状態にあり、前記反応商(Q)はマトリックス物質と試料物質間のプロトン交換反応の平衡定数(K)に該当するということを確認することができた。よって、MALDI−TOF質量スペクトルにおいて、一定の温度条件で生成された試料とマトリックスのイオン強度の比は固体試片における試料とマトリックスのモル比に正比例し、これにより定量分析が可能であるということに着目した。
本発明者らは、MALDI実験条件を変えながらMLADI質量スペクトルを数回測定し、各スペクトルから、MALDI質量分析試片に含有されたマトリックスイオンまたは試料イオンまたは添加された物質イオンそれぞれの分解パターンを互いに比較し、これらの物質のイオン分解パターンが同じであるスペクトルのみを選別した後、選択されたMALDIスペクトルからマトリックスイオンの信号強度と試料イオンの信号強度との比を測定することにより、マトリックスと試料のイオン化反応の平衡定数を測定する方法を発明するに至った。
しかも、本発明者らは、前記測定したマトリックスと各試料間の平衡定数を活用して一定の温度でマトリックスと各試料間の各濃度比の変化による検定線を求める方法を発明した。
また、本発明者らは、一定量のマトリックスに未知量の試料を混合して製作した試片のMALDI質量スペクトルから測定した試料イオンの信号強度とマトリックスイオンの信号強度との比およびマトリックスの濃度を前記検定線に代入して前記未知量の試料のモル数を算出することにより、試片に含有された試料の量を測定する定量分析方法を発明した。
また、本発明者らは、試片内に試料が高い濃度で存在すると、マトリックスのイオン信号および試片内の他の試片のイオン信号を減少させて精度のよい定量分析を難しくする誤差原因となることを解決するために、マトリックス信号減衰効果が70%を超過する場合に試料を数倍〜数百倍またはそれ以上に希釈することにより、前記マトリックス信号減衰効果を抑制して質量スペクトルを活用した定量分析の正確度を向上させる方法を発明した。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
よって、本発明の第1の目的は、化学物質の質量スペクトルにおいて、イオン生成反応の温度を互いに同一に調整し、或いはイオン生成反応の温度が同じであるスペクトルを選択することにより、前記化学物質の質量スペクトルの再現性を向上させる方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片、または一定量のマトリックスと一定量の試料と第3物質とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記試料イオン、マトリックスイオンまたは第3物質イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)段階で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階とを含むことを特徴とし、前記イオン信号比を、前記試料の濃度を前記マトリックスの濃度で割った値である濃度比で割って、一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片、または一定量のマトリックスと一定量の試料と第3物質とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記試料イオン、マトリックスイオンまたは第3物質イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)段階で選別された質量スペクトルに現れた試料イオンの信号強度をマトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、(iii)前記(ii)段階のイオン信号比を、前記試片の試料濃度をマトリックスの濃度で割った値である濃度比の変化に従って図示して定量分析用検定線を求める方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片、または一定量のマトリックスと一定量の試料と第3物質とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記試料イオン、マトリックスイオンまたは第3物質イオンの分解パターンが互いに同一である質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)段階で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、(iii)前記マトリックスのモル濃度と前記(ii)段階で測定したイオン信号比を下記数式(9)の定量分析用検定線に代入して前記試料のモル濃度を計算する段階とを含んでなる、質量スペクトルを用いた試料定量分析方法を提供することにある。
[A]=(IAH+/IMH+)[M]/K …(9)
[課題を解決するための手段]
本発明の第1の目的は、化学物質の質量スペクトルにおいて、イオン生成反応の温度を互いに同一に調整し、或いはイオン生成反応の温度が同じであるスペクトルを選択することにより、前記化学物質の質量スペクトルの再現性を向上させる方法を提供することによって達成できる。
本発明の化学物質の質量スペクトルの再現性を向上させる方法は、マトリックス、試料または第3物質から選ばれるいずれか一つの化学物質の前記質量スペクトルにおけるイオン化分解パターンが互いに同じである質量スペクトルを選別する段階を含むことができる。
また、本発明の化学物質の質量スペクトルの再現性を向上させる方法は、前記質量スペクトルにおいて、TIC(total ion count)が同じである質量スペクトルを選択する段階を含むことができる。
本発明の第2の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記試料イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階とを含むことを特徴とし、前記イオン信号比を、前記試料の濃度を前記マトリックスの濃度で割った値である濃度比で割って、一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法を提供することによって達成できる。
また、本発明の第2の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i) 前記マトリックスイオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階とを含むことを特徴とし、前記イオン信号比を、前記試料の濃度を前記マトリックスの濃度で割った値である濃度比で割って、一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法を提供することによって達成できる。
また、本発明の第2の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料と第3物質とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記第3物質イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階とを含むことを特徴とし、前記イオン信号比を、前記試料の濃度を前記マトリックスの濃度で割った値である濃度比で割って、一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法を提供することによって達成できる。
本発明の一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法において、前記試片にエネルギーを加える手段が、レーザー、または粒子線、その他の放射線などを含む様々な種類の電磁気波であってもよい。また、前記レーザーは窒素レーザーまたはNd:YAGレーザーであってもよい。また、前記レーザーを試片に照射する際に、前記試片の一地点に多数回照射して多数の試料イオンスペクトルを得ることができる。
本明細書において、「マトリックス(matrix)」とは、レーザーなどのエネルギー源からエネルギーを吸収し、そのエネルギーを分析試料に伝達することにより、分析試料を加熱しイオン化させる物質である。MALDI質量分析で使用されるマトリックスとして、CHCA(α−cyano−4−hydroxycinnamic acid)、DHB(2,5−dihydroxybenzoic acid)、シナピン酸(sinapinic acid(3,5−dimethoxy−4−hydroxycinnamic acid))、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸(4−hydroxy−3−methoxycinnamic acid)、ピコリン酸(picolinic acid)、3−ヒドロキシピコリン酸(3−hydroxy picolinic acid)の他に、様々な物質が知られている。
本発明の方法で試片にエネルギーを加える手段は、一般にレーザー光線であるが、粒子線や放射線などを含む様々な種類の電磁気波が使用できる。
典型的なMALDI質量分析では、マトリックス(M)と微量の分析試料(A)とからなる固体試片にレーザーパルスを照射する。マトリックスは、前記レーザーを吸収して前記分析試料(A)を加熱し、分析試料(A)のイオン化を助ける。MALDI質量スペクトルは、マトリックスと試料からなる混合物に対する質量スペクトルである。
本明細書において、「全イオン数(total ion count、TIC)」とは、質量分析器内の検出器で検出される総粒子数(total number of particles)を意味する。質量分析器の内部でMALDIにより生成されたイオンの一部が分解されて失われるため、MALDIにより生成されるイオンの総数を容易に測定することが難しい。よって、MALDIにより生成されるイオンの総数に相当する値として検出器で検出される総粒子数(total number of particles)を全イオン数(TIC)として定義したものである。
本明細書において、「プルーム(plume)」とは、試片に照射されたレーザーパルスのエネルギーによって前記試片から生成された蒸気である。プルームは、気相マトリックス分子、試料分子、マトリックスイオンおよび試料イオンを含み、これらの物質の中でも気相マトリックス分子がプルームの大部分を形成する。
本明細書において、「反応商(reaction quotient)」とは、
反応において、Q=([C][D])/([A][B])と定義される。化学反応が平衡状態である場合、反応商は平衡定数と同じである。
本明細書において、「検定線(calibration curve)」または「検定式(calibration equation)」とは、ある成分の濃度と前記成分の特定の性質(例えば、電気的性質や発色など)間の関係を予め実験的に求めた曲線である。検定線は、濃度が分からない成分を定量分析するために使用される。
本明細書において、「イオン信号比」とは、試料イオンの信号強度(IAH+)値をマトリックスイオンの信号強度(IMH+)値で割った値(IAH+/IMH+)と定義する。また、本明細書において、「濃度比」とは、試片に含有された試料のモル数を試片に含有されたマトリックスのモル数で割った値([A]/[M])と定義する。
MALDI質量スペクトルに現れるイオンは、プロトン化した分析試料(AH)、プロトン化したマトリックス(MH)、およびイオン源の内部で生成されたこれらの断片化生成物(fragmented products)である。よって、MALDI質量スペクトルのパターンはAHとMHの断片化パターン(fragmentation pattern)および試料とマトリックスイオンの比によって決定される。
本発明者らは、MALDIによって生成される初期プルーム温度(Tearly)を決定する方法を発明して、論文として発表したことがある(Bae, Y. J.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2011, 22, 1070−1078;Yoon, S. H.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2010, 21, 1876−1883)。また、本発明者らは、Tearlyが特定されると、前記3つの要因が共に決定されるという事実を解明した。このような先行論文の内容を全て本明細書に引用する。
さらに、本発明者らは、MALDI質量分析において実験条件を変化させると初期プルーム温度(Tearly)は変わるが、様々な実験条件の下で得たスペクトルのうち、Tearlyが同じである質量スペクトルのみを選別して考察すると、各質量スペクトルのパターンがそれぞれ互いに同じであるということも見出した。このような現象は、分析試料だけでなく、マトリックスと第3物質を含む場合にも同様に現れる。
したがって、実験条件を変えながらMALDI質量スペクトルを数回測定し、各スペクトルから、MALDI質量分析試片に含有されたマトリックスイオンまたは試料イオンまたは添加された第3物質イオンそれぞれの分解パターンを互いに比較して、これらの物質イオンそれぞれの分解パターンが同じである、つまり初期プルーム温度が一定である質量スペクトルのみを選別することにより、MALDI質量スペクトルにおけるイオン分解パターンの再現性を確保した。
また、MALDIにおいてイオン生成反応の様々な条件を変化させると、イオンが生成される当時の温度(Tearly)が変わるが、様々な実験条件の下で得たスペクトルのうち、イオン生成反応温度が同じである質量スペクトルのみを選択して考察すると、各スペクトルにおける全イオン数(TIC)が互いに同じであるということも見出した。このような現象は、分析試料だけでなく、マトリックスと第3物質を含む場合にも同様に現れる。
つまり、MALDIスペクトルは、試料イオン、マトリックスイオン、およびこれらの分解生成物から構成され、特定のTearlyを持つMALDIスペクトルを選択すると、実験条件を問わず、各イオンの相対強度だけではなく絶対強度も同じである、再現性のあるMALDIスペクトルを得ることができる。また、Tearlyが同じであれば、試片に含有されている試料の種類、濃度および個数を問わず、生成されるイオンの総数は同一であるということを見出したのである。
したがって、本発明者らは、MALDIイオン化反応条件を変えながら、MALDI質量スペクトルを数回測定し、各スペクトルにおける全イオン数(TIC)が同じであるMALDI質量スペクトルを選別することにより、MALDI質量スペクトルの再現性を確保した。
すべての実験条件を固定し、試片にレーザーパルスを照射して得たMALDIスペクトルのTearlyは、益々減少する。これは、試料の厚さが薄くなるにつれて、試片を載せた板への熱伝導がさらに効率よく起こるためである(Anal.Chem. 2012, 84, 7107−7111)。このようなTearlyの減少は、MALDIスペクトルの照射対照射(shot-to-shot)の再現性が低下する原因の一つである。
本発明の好適な実施態様によって、TIC、すなわちTearlyが一定であるMALDI スペクトルを得るためには、試料の厚さが薄くなるにつれてTearlyが減少するときにレーザーのパルスエネルギーを増加させることにより、常に一定なTearlyを有するMALDIスペクトルを得るのである。詳しくは、レーザーパルスエネルギーを調節するために、例えば、円形の中性密度フィルター(circular neutral density filter)を使用する。前記円形の中性密度フィルターをステップモーター(step motor)に装着して所望の角度だけ前記フィルターを回転させることにより、レーザーパルスエネルギーを調節する。
前記レーザーパルスエネルギーのフィードバックコントロールは、次のとおり実行することができる。まず、閾値(threshold)エネルギーの2倍に相当するレーザーパルスエネルギーを使用するとき、TICを基準値として設定することができる。レーザーパルスを照射してMALDIスペクトルを得ると、前記スペクトルに該当するTICを求め、この値が基準TICからどれほど外れた値であるかを計算し、前記円形の中性密度フィルターを回転させる方向および角度を決定する。このようなフィードバックコントロールは、レーザーパルスエネルギーが閾値エネルギーの3倍に相当する値を超過すると終了する。各照射地点でこのような過程を繰り返し行い、MALDIスペクトルを得る。
MALDIプルームでは、マトリックスと試料との間に下記反応式(1)のプロトン交換反応が起こる:
MH+A→M+AH …(1)
前記反応式(1)の反応商は、下記数式(2)のとおり定義される。
Q=[M][AH]/([MH][A])=([M]/[A])/([MH]/[AH]…(2)
前記数式(2)において、[M]/[A]値は、試片製作の際に使用したマトリックスと試料の濃度から直ちに求めることができる。
また、前記数式(2)において、[AH]/[MH]は、前記試料由来イオンの濃度を前記マトリックス由来イオンの濃度で割った値であり、本発明のプロトン交換反応の反応商を測定する方法の (ii)段階で求めた、前記試料由来イオンの信号強度を前記マトリックス由来イオンの信号強度で割った値(イオン信号比)、すなわちIAH+/IMH+と同じである。よって、前記数式(2)は、次のとおり表すことができる。
Q=([M]/[A])(IAH+/IMH+) …(3)
つまり、前記数式(3)の[M]/[A]値とIAH+/IMH+値を共に求めることができるので、マトリックスと試料間のプロトン交換反応に対する反応商を求めることができ、この反応は平衡状態にあるので、反応商は平衡定数と同じである。
大部分の生物学的試料(A)に対するMALDIにおいて、試料イオン([A+H])は、マトリックスイオン([M+H])からのプロトン転移によって生成される(反応式(1))。したがって、ペプチドなどの試片内に試料が非常に高濃度で存在すると、マトリックスのイオン信号を減少させ、試片内の他の試料のイオン信号も減少させる。
本明細書において、「マトリックス信号減衰効果(matrix signal suppression effect)」とは、試片内に試料が非常に高い濃度で存在するときにマトリックスイオン信号が減少する現象を意味する。また、本明細書において、「試料信号減衰効果(analyte signal suppression effect)」とは、試片内に試料が非常に高い濃度で存在するときに試片内の他の試料のイオン信号が減少する現象を意味する。
反応商に関する数式(3)によれば、試料イオンの数が増加するにつれてマトリックスイオンの数が減少するが、このような現象を、本明細書では「正常信号減衰(normal signal suppression)」という。また、試料の濃度が非常に大きいとき、すなわちマトリックス信号減衰効果が非常に大きいとき、(IAH+/IMH+)対[A]の曲線が線形性から外れるが、このような現象を本明細書では「非正常信号減衰(anomalous signal suppression)」と指し示す。
MHの一部は、イオン源の内部崩壊を経てMH−H、MH−CO などになる。したがって、MALDIにより生成されたマトリックス由来イオンの総数はこれらの和になる。そして、MALDIにより生成されたマトリックスイオンの数はMALDIスペクトルに現れるMHの数に比例する。よって、本発明では、マトリックス由来イオンの総数の代わりに、MALDIスペクトルに現れるMHの数を使用する。
を純粋なマトリックスのMALDIスペクトルにおけるMHのイオン信号強度と定義し、Iをマトリックス−試料の混合物におけるMHのイオン信号強度と定義すると、前記混合物のマトリックス信号減衰効果(S)は下記数式(4)のとおり定義される:
S=1−I/I …(4)
多くの試料に対する測定の結果、マトリックス信号減衰効果が70%よりさらに大きい場合に線形性からの偏差が発生した。このような事実を試片の定量分析でガイドラインとして使用することができる。すなわち、本発明者らは、試片のMALDIスペクトルを得てマトリックス信号減衰効果を計算した。前記マトリックス信号減衰効果が70%以下であるとき、前記質量スペクトルを試料の定量分析に使用することができる。
マトリックス信号減衰効果が70%よりさらに大きい試片は、下記数式(5)を用いて希釈させることにより、マトリックス信号減衰を減らすことができる。
/c=(S −1−1)/(S −1−1) …(5)
式中、SおよびSはそれぞれ試料1および試料2の濃度がcおよびcであるときのマトリックス信号減衰効果を示す。
したがって、前記試片の試料の量が適正の範囲を超過してマトリックス信号減衰効果が70%を超える場合、前記試片の試料を2倍以上、好ましくは数倍〜数百倍に希釈して使用することができる。
本発明の第3の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記試料イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii) 前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた試料イオンの信号強度をマトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、(iii)前記(ii)段階のイオン信号比を、前記試片の試料濃度をマトリックスの濃度で割った値である濃度比の変化に従って図示し、定量分析用検定線を求める方法を提供することによって達成できる。
また、本発明の第3の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i) 前記マトリックスイオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた試料イオンの信号強度をマトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、(iii)前記 (ii)段階のイオン信号比を、前記試片の試料濃度をマトリックスの濃度で割った値である濃度比の変化に従って図示し、定量分析用検定線を求める方法を提供することによって達成できる。
また、本発明の第3の目的は、一定量のマトリックスと一定量の試料と第3物質とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記第3物質イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた試料イオンの信号強度をマトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階、および(iii)前記(ii)段階で測定したイオン信号比を、前記試片の試料濃度をマトリックスの濃度で割った値である濃度比の変化に従って図示し、定量分析用検定線を求める方法を提供することによって達成できる。
本発明のMALDI定量分析用検定線を求める方法において、前記試片にエネルギーを加える手段は、レーザーだけでなく、任意の粒子線や各種放射線でありうる。また、前記レーザーは窒素レーザーまたはNd:YAGレーザーでありうる。また、前記レーザーを試片に照射する際に、前記試片の一地点に多数回照射して多数個の試料イオンスペクトルを得ることができる。
また、本発明のMALDI定量分析用検定線を求める方法において、前記マトリックスの濃度を一定にしたままで前記試料の濃度を変化させながら前記(i)段階〜前記(iii)段階を多数回繰り返し行って得た前記イオン信号比の変化を前記濃度比の変化に従って図示して線形回帰分析することにより、MALDI定量分析用検定線を求めることができる。
前述したように、試料とマトリックスのイオン信号比が温度(Tearly)によって決定されるという事実は、プロトン交換反応が熱平衡にあることを意味する。前記反応式(1)の反応が熱的平衡状態にあるか否かは、試料の濃度が異なる試片に対して、同じTearlyにおける反応商(reaction quotient、Q)が前記試料の濃度に応じて変わるか否かによって確認することができる。
本発明者らは、試料の濃度が異なる多数の試片にレーザーパルスを繰り返し照射してMALDI質量スペクトルを得た後、特定のTearlyを有するスペクトルのみを選別することにより、Tearlyは同一であるが試片の組成は異なるスペクトルを得た。また、本発明者らは、こうして得たスペクトルに対して、マトリックスと試料に由来するイオンの強度を測定した。
前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値(イオン信号比)と試片のマトリックス濃度と試料の濃度を前記数式(3)に代入して反応商を求めた結果、本発明者らは、Tearlyが同一であれば、試片に含有された試料の濃度が異なっても前記反応商が一定であるということを見出した。このような結果は、前記反応式(1)が熱平衡状態にあるということを意味する。
マトリックスと試料間のプロトン交換反応が平衡状態にあるため、前記数式(2)および(3)の反応商(Q)を平衡定数(K)で代替することができる。この場合、前記数式(2)および(3)は、下記数式(6)となる。
K=[M][AH]/([MH][A])=([AH]/[MH])/([A]/[M]) =(IAH+/IMH+)/([A]/[M]) …(6)
MALDIプルームにおけるイオンの量は、中性分子の量より遥かに少ないため、固体試片における[A]/[M]をMALDIプルームで相応する比率に設定した。前記数式(6)を変形させると、下記数式(7)および(8)の検定線を得る。
[AH]/[MH]=K([A]/[M]) …(7)
すなわち、IAH+/IMH+=K([A]/[M]) …(8)
1つのIAH+/IMH+測定値と1つの[A]/[M]値のみをもっても、前記数式(8)から検定線の傾き、すなわち平衡定数を求めることができる。
また、多数個のIAH +/IMH+測定値と多数個の[A]/[M]値を統計処理、すなわち回帰分析することにより、前記数式(8)の傾きである平衡定数を求めることもできる。この場合、一つのIAH+/IMH+測定値と一つの[A]/[M]値のみを用いるときよりさらに正確な平衡定数を求めることができる。
本発明の一つの実施態様において、IAH+/IMH+(すなわち、[AH]/[MH])を縦軸とし、[A]/[M]を横軸とすると、傾きがKである直線を得ることができ、この直線がMALDI定量分析用検定線(または検定式)である。
前記試片の試料の量が適正の範囲を超過してマトリックス信号減衰効果が70%を超える場合、前記試片の試料を2倍以上、好ましくは数倍〜数百倍に希釈して、定量分析用検定線を求めることに使用することができる。
本発明の第4の目的は、一定量のマトリックスと未知量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記試料イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、(iii)前記マトリックスのモル濃度と前記(ii)段階で測定したイオン信号比を下記数式(9)の定量分析用検定線に代入して前記試料のモル濃度を計算する段階とを含む、質量スペクトルを用いた試料定量分析方法を提供することによって達成できる。
[A]=(IAH+/IMH+)[M]/K …(9)
また、本発明の第4の目的は、一定量のマトリックスと未知量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記マトリックスイオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、(iii)前記マトリックスのモル濃度と前記(ii)段階で測定したイオン信号比を下記数式(9)の定量分析用検定線に代入して前記試料のモル濃度を計算する段階とを含む、質量スペクトルを用いた試料定量分析方法を提供することによって達成できる。
[A]=(IAH+/IMH+)[M]/K …(9)
また、本発明の第4の目的は、一定量のマトリックスおよび第3物質に未知量の試料が混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、(i)前記第3物質イオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、(ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値 (イオン信号比) を測定する段階と、(iii)前記マトリックスのモル濃度と前記(ii)段階で測定したイオン信号比を下記数式(9)の定量分析用検定線に代入して前記試料のモル濃度を計算する段階とを含む、質量スペクトルを用いた試料定量分析方法を提供することによって達成できる。
[A]=(IAH+/IMH+)[M]/K …(9)
本発明のMALDI質量分析法を用いた試料定量分析方法において、前記試片にエネルギーを加える手段がレーザー、または粒子線、その他の放射線などを含む様々な種類の電磁気波でありうる。また、前記レーザーは窒素レーザーまたはNd:YAGレーザーでありうる。しかも、前記レーザーを試片に照射する際に、前記試片の一地点に多数回照射して多数個の試料イオンスペクトルを得ることができる。
前述したように、前記数式(8)によれば、IAH+/IMH+は[A]/[M]に比例するが、これは、MALDI質量スペクトルからIAH+/IMH+を測定することにより、固体試片内の試料の量を測定することができるということを意味する。前記数式(8)を変形させると、下記数式(9)を得る。
[A]=(IAH+/IMH+)[M]/K=(IAH+/IMH+)[M]/Q …(9)
すなわち、MALDI質量分析法を用いた定量分析において、前記数式(9)を、試料の絶対的な量を求めるための検定線(または検定式) として用いることができる。
より詳しくは、本発明のMALDI質量分析法を用いた試料定量分析方法の(iii)段階で得た試料イオンの信号強度とマトリックスイオンの信号強度との比、すなわちIAH+/IMH+値と既に知っているマトリックスの濃度[M]値を、本発明のMALDI定量分析用検定線を求める方法によって求めた検定線(数式(9))を用いて、試料の濃度[A]値を計算することができる。
化学反応に対する平衡状態は、他の化学反応が同時に平衡である場合にも維持されるので、前記数式(9)は、前記マトリックスプルーム内の各成分に対しても成立する。つまり、MALDI−TOF質量スペクトルを利用する本発明の方法によっては、試料または試片が酷く汚染している場合でも特定の試料の定量分析が可能である。したがって、本発明の方法によって、様々な物質が混ぜられている混合物内の様々な成分それぞれに対する定量分析が同時に可能である。
前記試片の試料の量が適正の範囲を超過してマトリックス信号減衰効果が70%を超える場合、前記試片の試料を2倍以上、好ましくは数倍〜数百倍またはそれ以上に希釈して、質量スペクトルを用いた試料定量分析方法に使用することができる。
[発明の効果]
本発明の方法によれば、MALDI質量スペクトルから試料とマトリックスのイオン比を求め、これから定量分析検定線を作成することにより、低コストで正確かつ迅速に極微量の試料をMALDI質量スペクトルを用いて精度よく定量分析することができる。
また、本発明の方法によれば、分析すべき試料が混合物の一成分であるか或いは試料が酷く汚染しているとしても、迅速かつ簡単にMALDI質量スペクトルを用いて精度かつ再現性よく定量分析することができる。
本発明の実施例1のペプチドイオン[Y+H]の初期プルーム温度(Tearly)を求める方法に対する概念図である。 本発明の実施例2において、25nmolのCHCA(α−cyano−4−hydroxycinnamic acid)に3pmolのYRが含有されている固体試片上の一地点に337nmのレーザーパルスを繰り返し照射して得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例2において、25nmolのCHCAに3pmolのYKが含有された固体試片上の一地点に337nmのレーザーパルスを繰り返し照射して得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例2において、25nmolのCHCAに3pmolのアンギオテンシンII(DRVYIHPF)が含有されている固体試片上の一地点に337nmのレーザーパルスを繰り返し照射して得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例3において、試片の厚さによる初期プルーム温度(Tearly)の変化を示すグラフである。 本発明の実施例4の[CHCA+H]のPSDスペクトルである。 本発明の実施例5のYR:CHCA=1:8300の試片から得たMALDIスペクトルの中でも、Tearlyが968K付近のスペクトルである。 本発明の実施例5のYK:CHCA=1:8300の試片から得たMALDIスペクトルの中でも、Tearlyが968K付近のスペクトルである。 本発明の実施例5のアンギオテンシンII(DRVYIHPF):CHCA=1:8300の試片から得たMALDIスペクトルの中でも、Tearlyが968K付近のスペクトルである。 本発明の実施例6で求めたYRとYKのマトリックスとのプロトン交換反応商を示す。 本発明の実施例7で求めたYRとYKに対するMALDI定量分析用検定線である。 本発明の実施例8で9種のペプチド、タモキシフェンおよびマトリックスの混合試片に対して得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例10において、a)31〜40回目の照射、(b)81〜90回目の照射および(c)291〜300回目の照射の範囲にわたって平均して得た、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する試片上の一地点で得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例10において、レーザーパルスエネルギー閾値の(a)2倍、(b)3倍および(c)4倍で得た、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する真空乾燥試片に対してTICを用いて選択されたMALDIスペクトルである。 本発明の実施例10でTICによる選択(900±180ions/pulse)によって得たYKのCHCA−MALDIにおける検定線である。 本発明の実施例11で900ions/pulseに予め設定されたTICを用いて、(a)31〜40回目の照射、(b)81〜90回目の照射、(c)131〜140回目の照射および(d)291〜300回目の照射の範囲にわたって平均して得た、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する試片上の一地点でTIC制御によって得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例11で2500ions/pulseに予め設定されたTICを用いて、(a)31〜40回目の照射および(b)61〜70回目の照射の範囲にわたって平均して得た、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する試片上の一地点でTIC制御によって得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例11で(a)真空乾燥および(b)空気乾燥によって製造された、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する試片、そして(c)100nmolのDHBに20pmolのYを含有する試片に対する写真である(スケールバー=300μm)。 (a)および(b)は本発明の実施例11で25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する空気乾燥試片に対して、TIC制御をしていないままで得たMALDIスペクトルであり、(c)および(d)は同一の試片に対して900ions/pulseの予め設定された値を用いたTIC制御によって得たMALDIスペクトルである。 本発明の実施例12で求めたペプチドDLGEEHFKに対する検定線を示す。マトリックス信号減衰は中空の円で表示されている。
以下、下記の実施例または図面を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、下記の実施例または図面に対する説明は、本発明の具体的な実施態様を特定して説明しようとするものに過ぎず、本発明の権利範囲をこれらに記載されている内容に限定し、或いは制限解釈しようと意図するものではない。

実験
本発明者らが自体製作したMALDI−TOF機器を使用した(Bae, Y. J.;Shin, Y. S.;Moon, J. H.;Kim.M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom. in press;Bae, Y. J.;Yoon, S. H.;Moon, J. H.;Kim, M. S. Bull.Korean Chem. Soc.2010, 31, 92−99;Yoon, S. H.;Moon, J. H.;Choi, K. M.;Kim, M. S. Rapid Commun.Mass Spectrom.2006, 20, 2201−2208)。前記機器の重要な側面の1つは、内部電圧に一次および二次成分があるリフレクトロン (reflectron)を装着しているということである(Oh, J. Y.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2004, 15, 1248−1259;Bae, Y. J.;Yoon, S. H.;Moon, J. H.;Kim, M. S. Bull.Korean Chem. Soc.2010, 31, 92−99)。したがって、プロンプトイオン(prompt ion)とこれらのISDおよびPSD生成物を同時に検出することができる(Bae, Y. J.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2011, 22, 1070−1078)。
特に言及がない限り、窒素レーザー(MNL100、Lasertechnik Berlin、Berlin、Germany)の337nm出力を、焦点距離100mmのレンズで集めてMALDIに使用した。また、Nd:YAGレーザー(SLIII−10、Continuum、Santa Clara、CA、USA)の355nm出力も同じレンズで集めて使用した。
信号対雑音比を改善するために、20回のレーザー照射で得たスペクトルを合わせた。そして、20個の異なる地点で得たスペクトルのうち、照射数が同じものを合わせた。よって、最終スペクトルの各地点は、400回のレーザー照射で得た結果を合わせたものである。各ピークをなすイオンの数を計算する方法は、文献に報告されたところに従う(Bae, Y. J.;Shin, Y. S.;Moon, J. H.;Kim.M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom. in press;Moon, J. H.;Shin, Y. S.;Bae, Y. J.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2012, 23, 162−170)。
337nmを使用したペプチドCHCA−MALDIにおいて、閾値レーザーパルスのエネルギー、すなわち閾値は0.50μJ/pulseであった。レーザービームの様子が改善されたため、この値は、従来の文献に報告された値である0.75μJ/pulse(Bae, Y. J.;Shin, Y. S.;Moon, J. H.;Kim.M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom. in press;Moon, J. H.;Shin, Y. S.;Bae, Y. J.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2012, 23, 162−170)より小さかった。355nmにおける閾値は0.40μJ/pulseであった。
試料として、ペプチドYX(Y=チロシン、X=K(リジン)またはR(アルギニン);Peptron、大田、大韓民国)、アンギオテンシンII(DRVYIHPF;Sigma、St.Louis、MO、USA)およびCHCA(Sigma、St.Louis、MO、USA)を使用した。各ペプチドの貯蔵水溶液を希釈して必要な濃度を作った後、水とアセトニトリルを溶媒として用いて作ったCHCA溶液と混合した。各混合物1μLをターゲットにのせた後、真空乾燥させた。試片は25nmolのCHCAと1または3pmolのペプチドから構成された。

実施例1.Tearlyを求める方法
本発明者らの初期プルーム(early plume)温度を求めるための反応速度論的方法に従う(Bae, Y. J.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2011, vol 22, 1070−1078;Yoon, S. H.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2010, vol 21, 1876−1883)。
まず、ISD、PSD、およびISDのPSDによって作られる生成物の相対強度をMALDI−TOFスペクトルから測定した。この資料からイオン源の出口におけるペプチドイオンの生存確率(Sin)と検出器における生存確率(Spost)を計算した。[Y+ H]の分解の場合、前記イオンの総分解速度定数は、k(E)、時間分別光分解に関する研究(Yoon, S. H.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2009、 20、1522−1529)で既に決定した。反応速度論的分析において50nsをISDの閾値寿命(threshold lifetime)とした。これは、反応速度定数としては1.4×10−1に該当し、内部エネルギーとしては13.157eVに該当する。その次、内部エネルギー分布関数で13.157eVより小さい部分がSinとなるようにすることより、初期プルームの有効温度(Tearly)を決定した。末期プルーム(late plume)の温度も同様の方法で決定したが、この際は5.4×10−1を速度定数の閾値として使用した。使用したレーザーフルエンス(fluence)が文献1での場合より大きかったので、今回決定したTearly値は、本発明者らが従来報告した881K(Bae, Y. J.;Moon, J. H.;Kim, M. S. J. Am. Soc. Mass Spectrom.2011, vol 22, 1070−1078)より多少高かった。
前述した方法では、反応速度論的方法によってペプチドの温度を求めるためにはそれの分解反応速度定数k(E)を知らなければならない。本発明者らの方法を逆に使用することによりk(E)を求めることができることを明らかにしたうえ、[YR+H]の分解反応についてパラメーターE=0.660eVと
を報告し、[YK+H]の分解反応についてはパラメーターE=0.630eVと
を報告した。このパラメーターを用いて各ペプチドイオンのRRKM(Rice−Ramsperger−Kassel−Marcus)の速度関数(k(E))を計算した。その計算結果を用いて、様々な実験条件下でのTearlyを求めることができる。
ペプチドイオン[Y+H]について図1を参照すると、MALDIスペクトルに現れるペプチド関連イオンの強度を測定し、これからイオン源内でのペプチドイオンの生存確率を求める。MALDI測定条件を考慮し、ペプチドイオンが生存することが可能な最高速度定数を求める。その後、温度を変化させながらペプチドイオンの内部エネルギー分布を求め、最高速度定数より小さい領域の確率が生存確率と同一になる温度を取る。

実施例2.照射数(shot number)による全体スペクトルパターンの変化
試片上の一地点(spot)を337nmの窒素レーザーパルスで繰り返し照射しながらデータを収集することにより、1セットのMALDIスペクトルを得た。25nmolのCHCAに3pmolのYRが含有された試片を閾値の6倍のパルスエネルギーで200回照射して得たスペクトルの一部が図2に示されている。図2の各スペクトルは、(a)1回〜20回、(b)41回〜60回、(c)81回〜100回、(d)141回〜160回および(e)181回〜200回の照射数(shot number)にわたってのスペクトルを合わせたものである。ペプチド([YR+H])とマトリックス([CHCA+H])イオンだけでなく、これらのISD生成物、例えば、ペプチドイオンから作られるインモニウムイオンYとマトリックスイオンから作られる[CHCA+H−HO]と[CHCA+H−COだけでなく、マトリックス二量体イオン([2CHCA+H])も前記スペクトルに示されている(PSDピークは*で表示した)。前記スペクトルには、ペプチドイオンの分解生成物であるb、y、およびこれらの分解生成物も示されているが、その強度はインモニウムYよりも非常に小さい。ペプチドイオンのPSD生成物のピークも非常に小さく示されている。小さいけれども明らかに現れるピークの大部分は、マトリックスから作られたものである。図2に示されるイオンの種類は照射数を問わずに同一であるが、照射数が変わるにつれてそれらの相対強度が変わることを確認することができる。驚くべきことに、照射数によるスペクトルパターンの変化様相が再現性あることを観測したとともに、その誤差は10〜20回の照射(shot)に過ぎなかった。
前述のように、MALDIスペクトルの全体パターンを特徴付ける3つの要素は、ペプチドイオンの相対強度、マトリックスイオンの相対強度、並びにペプチドイオンおよびマトリックスイオンの分解パターンである。図2から分かるように、照射(shot)が続けられるにつれて、この3つの要素がいずれも変化した。第一に、ペプチドイオンに対するインモニウムイオンYの相対強度は徐々に減少した(他のISD生成物もやはり減少した)。第二に、マトリックスの質量スペクトルパターンも徐々に変化したが、特に[CHCA+H−COイオンが弱くなった。第三に、ペプチド由来イオンがCHCA由来イオンに比べて相対的にさらに多くなった。
K(図3)とアンギオテンシン(angiotensin)II(図4)に対しても、同様の傾向が観察された。図3には、25nmolのCHCAに3pmolのYKが含有された固体試料上の一地点に337nmのレーザーパルスを繰り返し照射して得たMALDIスペクトルが示されているが、使用されたレーザーパルスのエネルギーは閾値の6倍であり、各スペクトルは(a)1回〜20回、(b)41回〜60回、(c)81回〜100回、(d)141回〜160回、および(e)181回〜200回の照射数にわたってのスペクトルを合わせたものである。インモニウム(Y)イオンが[YK+H]の主なISD生成物であり、[CHCA+H−HO]と[CHCA+H−COが[CHCA+H]のISD生成物である(PSDピークは*で表示した)。図4には、25nmolのCHCAに3pmolのアンギオテンシンII(DRVYIHPF)が含有された固体試料上の一地点に337nmのレーザーパルスを繰り返し照射して得たMALDIスペクトルが示されているが、使用されたレーザーパルスエネルギーは閾値の6倍であり、各スペクトルは(a)1回〜20回、(b)41回〜60回、(c)81回〜100回、(d)141回〜160回、および(e)181回〜200回の照射数にわたってのスペクトルを合わせたものである。インモニウムイオン、P、V、H、Yが[DRVYIHPF+H]の主なISD生成物であり、[CHCA+H−HO]と[CHCA+H−COが[CHCA+H]のISD生成物である(PSDピークは*で表示した)。

実施例3.照射数による有効温度の変化
照射が続けられるにつれて生成物の相対強度が減少するというのは、ペプチドの平均内部エネルギーが減少することを意味する。初期プルームで熱平衡が成り立つと仮定すると、これはTearlyが益々低くなることを意味する。レーザーを照射し続けるときに起こることの一つは、レーザーを照射した地点の厚さが益々薄くなることである。よって、試片が薄くなるにつれてTearlyが益々低くなる。試片が薄くなるほどTearlyが減少することは熱伝導効率が良くなるためであるかを確認するために、組成が同じで(YR:CHCA=1:25000)厚さが異なる(0.9〜2.1μm)試片を準備した。また、厚さ50nmのフルオロカーボン(fluorocarbon)層をコートしたアンカーチッププレート(anchor chip plate)の疎水性部分の上に試片を準備した。レーザーパルスエネルギーは閾値の6倍を使用し、初期20回の照射で得たスペクトルを加えた。各スペクトルで測定したSinからTearlyを計算した。試片の厚さによるTearlyの変化が図5(ステンレス鋼の表面:●、フルオロカーボン層:○)に示されており、これは、試片が薄いほど熱伝導が効率的であることを意味する。フルオロカーボン層上の試片に対して求めたTearlyは、露出した金属板上の試片から得た値よりも高かった。これは、フルオロカーボン層が熱流れに対して不導体として作用していることを意味する。結論的に、ペプチドイオンの分解収率からTearlyを決定することができ、照射が続けられるにつれて温度が下がる。

実施例4.照射数による[CHCA+H]分解パターンの変化
PSDが起こる時間領域(約10μs)は、ISDが起こる時間領域(数十ナノセカンド(nanosecond))よりも遥かに長いので、すなわちPSDの反応速度が遥かに遅いので、低エネルギー反応はISDよりはPSDでさらに有利である。[CHCA+H]のPSDスペクトル(図6)において、[CHCA+H−HO]イオンが最も大きい生成物であり、[CHCA+H−COイオンは[CHCA+H−HO]の10%に過ぎなかった。これは水の損失反応が二酸化炭素の損失反応よりもさらに低エネルギー反応であることを意味する。図2にあるMALDIスペクトルにおいて、照射が続けられるにつれて、[CHCA+H−HO]に比べて、ISDによって生成された[CHCA+H−COイオンが減少した。これは、照射が続けられるにつれてTearlyが低くなるという意味である。すなわち、CHCA質量スペクトルのパターンも温度によって決定される。

実施例5.ペプチドとマトリックスのイオン信号比
R:CHCA(ペプチドとマトリックスの比)が1:8300である試片に対し、4つの条件の下で実験を行った。実験条件を(YRのpmol、CHCAのnmol、閾値を単位とするレーザーパルスエネルギー、レーザー波長)で表示するとき、使用した実験条件は、(a)(3、25、×6、337)(照射数71〜90の範囲)、(b)(3、25、×4、337)(照射数51〜70の範囲)、(c)(4.2、35、×6、337)(照射数101〜120の範囲)、(d)(3、25、×6、355)(照射数31〜50の範囲)であった。各セットからTearlyが968Kであるスペクトルを一つずつ選び出し、4つのスペクトルを図7(a)〜(d)に示した。前記4つのスペクトルは実質的に同じである。他の温度でもこのような類似性が観測された。
また、YK(図8)とアンギオテンシンIII(図9)でもこのような類似性が観測された。図8には、YK:CHCA(ペプチドとマトリックスの比)が1:8300である試片に対して4つの条件、すなわち、(a)(3、25、×6、337)(照射数61〜80の範囲)、(b)(3、25、×4、337)(照射数41〜60の範囲)、(c)(4.2、35、×6、337)(照射数71〜90の範囲)、(d)(3、25、×6、355)(照射数21〜40の範囲)で得たMALDIスペクトルセットのうち、Tearlyが968K付近であるスペクトルが示されている。図9には、アンギオテンシンIIの(DRVYIHPF):CHCA(ペプチドとマトリックスの比)が1:8300である試片に対して4つの条件、すなわち、(a)(3、25、×6、337)(照射数71〜90の範囲)、(b)(3、25、×4、337)(照射数31〜50の範囲)、(c)(4.2、35、×6、337)(照射数81〜100の範囲)、(d)(3、25、×6、355)(照射数21〜40の範囲)で得たMALDIスペクトルセットのうち、Tearlyが968K付近であるスペクトルが示されている。
すなわち、Tearlyが同じスペクトルのみを比較すると、ペプチドのMALDIスペクトルは再現できる。ペプチドとマトリックスの比が異なる試片の場合、Tearlyが同じスペクトルを選択すると、ペプチドイオンとマトリックスイオンの分解パターンはそれぞれ同一に現れた。但し、ペプチドとマトリックスのイオン信号比のみが異なった。

実施例6.プロトン交換反応の平衡
MALDI質量分析法において、マトリックス(M)からペプチド(P)にプロトンが移動する反応、すなわち、MH+P→M+PHが起こる。前記MHはプロトン提供者であって、本実施例の場合には[CHCA+H]、[CHCA+H−HO]、または[CHCA+H−COである。ペプチドとマトリックスのイオン信号比が温度によって決定されるというのは、プロトン交換反応がほぼ熱平衡にあることを意味する。これを確認するために、一つは濃度が異なる試片に対して同じTearlyで反応商(reaction quotient)、Q=([M]/[P])([PH]/[MH])を求め、これが濃度に応じて変わるかを調べた。CHCA25nmolにYRまたはYKが0.3pmol〜20pmol含有された試片にレーザーを繰り返し照射してMALDIスペクトルセットを得た後、各スペクトルに対してTearlyを計算した。そして、定められたTearlyを有するスペクトルのみを選別することにより、Tearlyは同じが試片の組成は異なるスペクトルセットを得た。前記セットにあるスペクトルに対して、マトリックスとペプチドに由来するイオンの強度を測定した。Qを計算するためには、MHが何であるかを知らなければならないが、Qが一定であるかどうかを知ることだけが目的であれば、プロトン提供者になれるどんなイオンの強度を使用しても問題になることはない。なぜならTearlyが決まったら、マトリックスに由来するすべてのイオンの相対強度は決まるからである。マトリックスイオンの分解パターンが濃度に関係ないというのは、[CHCA+H−HO]のような断片イオンが主なプロトン提供者でないことを意味する。もし断片イオンの一つが主なプロトン提供者であれば、ペプチドの量が増加するにつれて[CHCA+H]よりもその断片イオンがより速く減少するからである。したがって、主なプロトン提供者は[CHCA+H]イオンである可能性が高い。プロトンを失っていないマトリックスイオンの一部は分解するだろうという仮定の下に、マトリックスに由来するすべてのイオンの強度の和、すなわちΣ[matrix−derived ion]をQの計算において[MH]とした。同様に、Σ[peptide−derived ion]を[PH]とした。気相中性分子の比、すなわち([M]/[P])の計算のために、固体試片におけるマトリックスとペプチドの比を使用した。図10には950KのTearlyで得たQ値を固体試片に含有されたペプチド(●:YR、○:YK)の量に対する関数で示した。図10より、Q値がペプチド量に関係ないことを明らかに確認することができる。これはプロトン交換反応がほぼ熱平衡にあることを意味する。つまり、図10のQ値は実質的に平衡定数Kに該当する。マトリックスからペプチドへプロトンが移動する反応の平衡定数Kは、YRの場合がYKの場合よりも大きい。これは、アルギニン(R)がリジン(K)よりも強い塩基であるという事実に符合する。

実施例7.検定線
25nmolのCHCAに10fmol〜30pmolのYRまたはYKが含有された試片の一地点にレーザーパルスを照射した。イオン信号が消えるまで、前記地点にレーザーパルスを照射してMALDI質量スペクトルを得た。各スペクトルに対して、ペプチドイオンの断片化パターンを分析してTearlyを決定した。その後、各スペクトルセットから同じTearlyを有するスペクトル、すなわちTearlyが870K〜900Kのスペクトルを選択した。前記マトリックスイオンの断片化パターンがTearlyに応じて変わるので、前記断片化パターンをTearlyの測定手段として使用した。[CHCA+H−HO]/[CHCA+H]の強度比が3〜4.5であるスペクトルを選択した。図11の検定線から分かるように、YR(図11(a)および図11(b))とYK(図11(c)および図11(d))で[AH]/[MH]と[A]/[M] との間に明確に正比例関係が成り立つ。

実施例8.定量分析−検定線の使用
25nmolのCHCAに9種のペプチド(それぞれ0.3pmol)および1.0pmolのタモキシフェン(tamoxifen)を含有している試片を準備した。前記試片のMALDIスペクトルが図12に示されている。図12において、[CHCA+H−HO]/[CHCA+H]が3〜4.5、すなわちTearlyが870K〜900Kに該当するように温度を選択した。前記試料に含有されたペプチドのうちYRおよびYKを、図11の検定線を用いて定量分析した結果が表1に示されている。
図11から分かるように、[AH]/[MH]は[A]/[M]にほぼ正比例する。よって、1つの濃度で得たデータのみでも、正比例関係を用いて未知の試料の量を決定することができる。前記試片の各成分に対するワンポイント検定(one-point calibration)結果が表2に示されている。
表2のタモキシフェンに対する結果から分かるように、MALDIによってイオン化されるすべての試料に対して本発明の方法が適用できる。

実施例 9.スペクトル温度(spectral temperature)の尺度−全イオン数(TIC)
試料として、ペプチドY、YKおよびアンギオテンシンII(angiotensin II(DRVYIHPF))をペプトロン社(大田、韓国)から購入した。マトリックスCHCAおよびDHBをSigma社(St.Louis、MO、USA)から購入した。CHCAまたはDHBの1:1水とアセトニトリル溶液と試料水溶液を混合した。CHCA−MALDIにおいて、0pmol〜250pmolの試料と25nmolのCHCAを含有する溶液1μLをターゲットに載せた後、真空乾燥または空気乾燥させた。YのDHB−MALDI試片を2つの段階で製作した。各段階で、0.5pmol〜320pmolのYおよび50nmolのDHBを含有する溶液1μLをターゲットに載せた後、真空乾燥させた。
MALDIスペクトルのTearlyを測定するために、試料イオンの分解に対する反応速度論的分析が必要なわけではない。マトリックスイオンの分解パターンまたは生成されるイオンの総数もTearlyの尺度(indicator)として用いることができる。ところが、これらの方法では、試料の種類、濃度および個数が変わるとき、Tearlyを容易に計算することが難しい。したがって、実質的な定量分析のために、試料の種類、濃度および個数を問わず、Tearlyを容易かつ迅速に計算することが可能な良いTearlyの尺度が必要である。良いTearlyの尺度としては次の条件が要求される。
第一に、Tearlyの尺度はTearlyに対して敏感な関数でなければならない。第二に、Tearlyの尺度は試料の種類、固体試片内での試料の濃度およびこれらの個数とは関係がないべきである。第三に、Tearlyの尺度はスペクトルから前記特性を迅速かつ容易に計算することができなければならない。
試料イオン分解を用いたTearlyの測定は第2、第3の条件を満たしていない。マトリックスイオン分解パターンを用いる場合でも、マトリックスイオン信号が異なるものによって汚染すると、Tearlyの測定が難しい。MALDIで生成されるイオンの総数をTearlyの尺度として用いると、第1、第2の条件を満たすことができる。
ところが、リフレクトロンの内部で発生するイオンの分解生成物の損失により、MALDIによって生成されるイオンの総数を簡単に測定することが難しいため、本発明者らは、これに準じる値として検出器で検出される総粒子数(total number of particles)を全イオン数(total ion count、TIC)とし、これをTearlyの尺度として用いた。TICが Tearlyの関数であることを確認するために、25nmolのCHCAをマトリックスとして用いた場合、試料の種類、濃度および個数を変化させながら、レーザーパルス当たり生成される総粒子数とTICを表3に示した。
表3に示すように、全イオン数(TIC)は、Tearlyの変化(875K→900K)に非常に敏感であり、試料の種類、濃度および個数を問わずTearlyによって決定される値であるので、前述した3つの条件をすべて満たすTearlyの尺度として使用することができることが分かる。
また、CHCA−MALDIと同様に、DHB−MALDIにおいてレーザーパルスによって生成されたイオンの総数も、Tearlyが同一であれば、固体試片内での試料の種類、濃度および個数を問わず実質的に同じであった。前記同じスペクトルから計算したTICデータが表4に示されており、表4の内容から、DHB−MALDIにおいてもTICが尺度として使用できることが分かる。

実施例10.TIC によって選択されたスペクトルの定量的再現性
まず、反復的なレーザーパルス照射によるスペクトルの変化を考察してみた。25nmolのCHCAに10pmolのYKを添加した試片を真空乾燥させた後、閾値パルスエネルギー(threshold pulse energy)の2倍であるレーザーパルスを用いて、前記試片の一地点(spot)からMALDIスペクトルセットを得た。
前記スペクトルセットから31〜40回目の照射、81〜90回目の照射および291〜300回目の照射範囲で得たスペクトルをそれぞれ平均して得たスペクトルが図13に示されている。初期30個のスペクトルを使用しなかったが、これはアルカリ添加生成イオン(alkali adduct ions)による汚染が激しかったからである。前記照射範囲で得たスペクトルに対して総和を求めたTICは、それぞれ12000(12000)、7300(58000)および110(106000)であった(括弧内の数は、それぞれ31〜40回目の照射、81〜90回目の照射および291〜300回目の照射の間で蓄積されたTICを意味する)。温度選択をしなかったため、レーザー照射が進行するにつれて、スペクトルパターンおよび各イオンの数が変わった。291〜300回目の照射範囲で、[YK +H]は他のものよりさらに目立った。しかし、291〜300回目の照射範囲における絶対数値は31〜40回目の照射および81〜90回目の照射における絶対数値よりも遥かに小さい。実際に、イオン生成は300回目の照射後にほぼ停止した。このような事実が、300回目の照射後にレーザーパルスが照射される地点で試片が枯渇したことを意味するものではない。これはレーザーパルスエネルギーを増加させたときにイオン生成がさらに始まったからである。このような現象が起こる理由は、レーザーパルスが照射される地点が益々薄くなるほど前記地点の温度が益々低くなるから、300回目の照射における融除(ablation)に対する閾値よりさらに低くなったためである。その後、レーザーパルスエネルギーを増加させることにより、温度を前記融除閾値以上に上昇させたとともにイオン生成が再開した。
本発明者らの以前研究によれば、同じTearlyでのスペクトルを選択した場合には、与えられた組成の試片から得たMALDIスペクトルが実験条件を問わず定量的に再現可能である。前記研究では、I([M+H−HO])/I([M+H])の比がTearlyの尺度として使用された。
本発明において、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有した真空乾燥試片に対して類似の測定を行ったとともに、TICが1100±200ions/pulseであるスペクトルを選択した。図14に示すように、こうして得たスペクトルは実質的に同じであった。また、CHCAにアンギオテンシンIIが含有された試片に対しても類似の結果を得た。前記結果によれば、TICはTearlyに対する優れた尺度である。また、地点対地点(spot−to−spot)および試片対試片(sample−to−sample)の再現性を確認した結果、TICを用いたスペクトル獲得温度選択(spectral acquisition−temperature selection)に対する前記戦略が適切であることを発見した。
25nmolのCHCAに0.01pmol〜250pmolのYKを含有する真空乾燥試片に対するMALDIスペクトルを得た後、TICが900±180ions/ pulseであるスペクトルを選択した。前記選択されたスペクトルから[AH]/[MH]対[A]/[M]のデータを計算した。前記計算結果が図15の(a)に示されている。前記検定線(calibration curve)の優れた線形性(linearity)は温度選択のためのTICの有用性を立証する。

実施例11.TIC制御による再現性のあるスペクトルの獲得
MALDIスペクトルにおいて、TICを制御するためにレーザーパルスエネルギーを変化させた。レーザーの後端に設置された円形の可変中性密度フィルター(circular variable neutral density filter)(Model CNDQ−4−100.OM、CVI Melles Griot、Albuquerque、NM、USA)を回転させてレーザーパルスエネルギーを手動で調節した。前記円形の可変中性密度フィルターをステップモーターの上に設置し、データシステムからの命令によって前記フィルターを回転させることにより、前記レーザーパルスエネルギーをシステム的に調整した。
前記レーザーパルスエネルギーを制御するために、ネガティブフィードバック (negative feedback)方式を採用した。照射地点からデータを得始める時点で、前記レーザーパルスエネルギーを閾値の2倍に設定し、10個の単一照射スペクトル(ten single shot spectra)を得てそれらを平均した。こうして得たスペクトルから、TICを計算し、前記計算されたTIC値を予め設定された値と比較して、次のレーザーパルスエネルギーに必要な調整値を計算した。前記計算された調整値を用いて、前記フィルターの回転方向および角度を決定した。前記フィルターの角度調整が終わった後、スペクトルをさらに得た。反復的なレーザー照射によって前記地点で試片が枯渇したとき、スペクトルの獲得を終了した。CHCA−MALDIに対して、前記レーザーパルスエネルギーが閾値の3倍になったときに終了した。
25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する真空乾燥試片に対する実験を繰り返し行った。予め設定された値として900ions/pulseのTICを用いてレーザーパルスエネルギーをフィードバック調整した。31〜40回目の照射、81〜90回目の照射、131〜140回目の照射および241〜250回目の照射範囲で平均したスペクトルが図16に示されている。前記照射範囲における総TICはそれぞれ9000(9000)、8600(53000)、9000(103000)、および8100(188000)であり、括弧内の数は31〜40回目の照射、81〜90回目の照射、131〜140回目の照射および241〜250回目の照射の間で蓄積されたTICを示す。前記レーザーパルスエネルギーが閾値の3倍になった250回目の照射でスペクトルの獲得を終了した。図16に示すように、スペクトルパターンおよびイオン数がいずれも前記地点での測定中に類似に現れた。これは、TIC制御によって再現性のあるスペクトルを成功的に得たことを立証する。
TICを制御していないままで得たスペクトルセット(図13)から、TICが900±180ions/pulseであるスペクトルを選別した。前記選択されたスペクトルに対するTICの和は19000ions/pulseであった。すなわち、TIC制御スペクトルで蓄積されたTICたる188000ions/pulseは、TICによって選別されたスペクトルで蓄積されたTICよりも遥かに大きかった。これは、定量的に再現性のあるMALDIスペクトルを得るためにはTICを制御してスペクトルを得ることがTICによってスペクトルを選別することよりもさらに効率的であることを示唆する。前記方法で窒素レーザーの出力を固定した後、前記フィルターの透過率を変化させることにより、試片でのパルスエネルギーを調節した。
前述した方法を代替することが可能な方法として、レーザーの出力自体を直接調節する方法の適否を調査するために、窒素レーザーの代わりに波長355nmのNd:YAG(SureliteIII−10、Continuum、Santa Clara、CA、USA)レーザーを使用した。前記波長におけるパルスエネルギーの閾値は0.25μJ/pulseであった。2500ions/pulseをTICの基準値として使用した。パルスエネルギー閾値の2倍に相当するレーザー出力を用いてスペクトルを得始めた。10個のスペクトルを得た後、TICを計算して基準値と比較した。TICが基準値を回復するようにするために、パルスエネルギーを調節した。この際、レーザーのQスイッチング(Q−switching)の遅延時間を調節してパルスエネルギーを調節したが、レーザーの出力を変える方法はレーザー別に異なり得る。図17の(a)のスペクトルは、パルスエネルギーを閾値の2倍に固定して得た(31〜40回目の照射)。その後、TIC制御によってレーザー出力を調節した。こうして得た61〜70回目の照射の結果が図17の(b)のスペクトルである。前記2つのスペクトルは非常に類似し、レーザーの出力調節を用いたTIC制御により成功的にスペクトルを再現したことを示す。比較のために、レーザーの出力を閾値の2倍に固定して得た61〜70回目の照射のスペクトルが図17の(c)に示されている。レーザーの出力を固定した後、フィルターを用いて試片でのパルスエネルギーを調節した場合と同様に、レーザーの出力を直接調節した場合にも成功的に再現性のあるスペクトルを得ることができることが分かる。
ペプチド/CHCA溶液を真空乾燥させて得た試片は比較的均質である。真空乾燥した試片に対する写真が図18の(a)に示されている。試片の地点対地点の再現性を確認するために、真空乾燥したペプチド/CHCA試片上の多くの地点からTIC制御によるスペクトルを得た。こうして得たスペクトルはレーザー照射地点を問わずに類似している。TIC制御をしない場合には、同じ地点で得たスペクトルすらも再現性がないため、地点対地点の変化を確認することが無意味である。
与えられた組成の溶液をターゲットに載せた後で乾燥させると、固体試片の初期厚さは溶液の体積および試片の直径に影響を受ける。これは、Tearlyに影響を与えるとともに、MALDIスペクトルにおける試片対試片(sample−to−sample)の非再現性をもたらすであろう。Tearlyを予め設定された値の近くに維持することが主要戦略であるので、前記問題点が容易に克服されるであろう。これを確認するために、図16のスペクトルを得るために使用したものと同一の溶液を用いて試片を製造したが、1.0μLを使用した図16の場合とは異なり2.0μLの溶液を用いた。前記溶液の体積を2倍に増加させた場合、試片の厚さが約40%増加したと測定された。TIC制御のために同一に予め設定された値、すなわち900ions/pulseを用いて前記試片からTIC制御によるスペクトルを得た。前記スペクトルのパターンは図16のスペクトルと類似している。これは、TIC制御によって、試片をターゲットに載せるときに発生した誤差を減らすことができることを意味する。
ペプチド/CHCA溶液を空気乾燥させて製造した試片は均質ではなかった。空気乾燥した試片に対する写真が図18の(b)に示されている。真空乾燥した試片は比較的連続的なフィルムを形成したが(図18の(a))、空気乾燥した試片ではマトリックス微小結晶(matrix crystallites)が島のように存在する(図18の(b))。試片の不均質性によるスペクトルの再現性に対する制限を確認するために、図16のスペクトルを得るために使用したものと同一の溶液を用いて空気乾燥させることにより、25nmolのCHCAに10pmolのYKを含有する試片を製造した。TIC制御をしていないままで前記空気乾燥した試片から得た、各地点に対して平均したMALDIスペクトルは、図19の(a)および(b)に示された2つの典型的なスペクトルに現われているように、顕著な地点対地点の偏差を見せた。このような現象は、部分的には前記空気乾燥した試片のレーザー焦点の微小結晶の数が3〜5個と偏差を示すからであると予想される。
次に、TIC制御によって類似の実験を行った。図19の(c)および(d)に示された2つの典型的なスペクトルに現れているように、TIC制御によって、他の地点から得たMALDIスペクトルが定量的に、すなわちパターンおよび各イオンの絶対的な量がすべて類似になった。また、図19の(c)および(d)において、空気乾燥した試片に対するTIC制御による地点−平均スペクトル(TIC−controlled spot−averaged spectra)が、図16の真空乾燥した試片に対するTIC制御によるスペクトルと比較的類似していることは注目すべきである。詳しくは、前記2つの場合においてTICに対して同一に予め設定された値を使用した場合にも、前記空気乾燥試片から得たスペクトルと関連付けられているTearlyが、前記真空乾燥試片から得たスペクトルと関連付けられているTearlyよりもやや高い傾向がある。例えば、[CHCA+H−CO対[CHCA+H]の比率が前記真空乾燥した試片よりも前記空気乾燥試片でやや少し大きい。このような現象は次のとおり説明できる。二つの異なる試片から同じ個数のイオンを生成するために、前記空気乾燥した試片に対するTearlyは前記真空乾燥した試片に対するTearlyよりややさらに高くなければならないが、これはレーザー照射に晒された試片の面積が空気乾燥試片でさらに小さいためである。著しく異なる形態(morphology)を持つ前記2つの試片から得たスペクトルがTIC制御によって類似になったという事実を注目すべきである。
25nmolのCHCAに0.01pmol〜250pmolのYKを含有する真空乾燥試片に対して、予め設定された値として900ions/pulseのTICを用いるTIC制御によって得たスペクトルを用いて、[AH]/[MH]対[A]/[M]のプロットを求めた。こうして得た検定線も図15の(b)に示されている。図15の(b)に示された検定線は優れた線形性を示す。
また、CHCA−MALDIと同様に、DHB−MALDIでレーザーパルスによって生成されたイオンの総数も、Tearlyが同一であれば、固体試片内での試料の種類、濃度および個数を問わず実質的に同じであった。前記同じスペクトルから計算したTICデータが表4に示されており、表4の内容から、DHB−MALDIにおいてもTICが尺度として使用できるということが分かる。
予め設定された値として1300ions/pulseのTICを用いて、100nmolのDHBに20pmolのYを含有する試片上の一地点に対して繰り返し照射してTIC制御によるMALDIスペクトルセットを求めた。前記試片のレーザー照射地点での測定全体に対してスペクトルのパターンおよびイオン数がいずれもCHCA−MALDIの場合と類似している。また、100nmolのDHBに1.0pmol〜640pmolのYを含有する試片に対する検定線を求めた。図15の(c)に示されている検定線の線形性は、DHB−MALDIを用いる定量分析においてもTIC制御の有用性を示す。

実施例12.マトリックス信号減衰効果
50pmolのDLGEEHFKと、25nmolのCHCAに含まれた6.5pmolのシトクロムCのトリプシン消化液を含有する試片を準備した。実施例11に記載されたTIC制御方法に従って、1回のレーザー照射あたりTICを3000個に設定して質量スペクトルを得た。こうして得た質量スペクトルから求めた、前記試料DLGEEHFKに対する検定線が図20に示されている。前記試片に対するマトリックス信号減衰効果は94%であった。質量スペクトルを用いてDLGEEHFKを定量分析した結果は9.7pmolであり、正確な値は50pmolであった。
前記試片の試料を2.0倍に希釈したとき、マトリックス信号減衰効果は78±7%であった。この値は前記数式(4)から予測された84%とよく一致した。ところが、前記試料に対する定量分析結果は19±4pmolであり、前記試料の正確な値50pmolに比べて定量分析結果が依然として良くなかった。
前記試片の試料を10倍に希釈したとき、マトリックス信号減衰効果は55±4%であった。この値は前記数式(4)から予測された59%とよく一致した。前記試料に対する定量分析結果は51±6pmolであり、前記試料の正確な値50pmolに比べて定量分析結果がよく一致した。

Claims (4)

  1. 一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、
    (i)前記試料イオンまたはマトリックスイオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、
    (ii)前記(i)で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度をマトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階を含むことを特徴とし、
    前記イオン信号比を、前記試料の濃度を前記マトリックスの濃度で割った値である濃度比で割って、一定の温度で前記マトリックスと前記試料間のプロトン交換反応の平衡定数を測定する方法。
  2. 一定量のマトリックスと一定量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、
    (i)前記試料イオンまたはマトリックスイオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、
    (ii)前記(i)段階で選別された質量スペクトルに現れた試料イオンの信号強度をマトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、
    (iii)前記(ii)段階のイオン信号比を、前記試片の試料濃度をマトリックスの濃度で割った値である濃度比の変化に従って図示し、定量分析用検定線を求める方法。
  3. 前記マトリックスの濃度を一定にしたままで前記試料の濃度を変化させながら前記(i)段階〜前記(iii)段階を多数回繰り返し行って得た前記イオン信号比の変化を前記濃度比の変化に従って図示して線形回帰分析することにより、定量分析用検定線を求めることを特徴とする、請求項に記載の定量分析用検定線を求める方法。
  4. 一定量のマトリックスと未知量の試料とが混合された試片にエネルギーを加えて形成されるイオンから得られる多数の質量スペクトルの中で、
    (i)前記試料イオンまたはマトリックスイオンの分解パターンが互いに同じである質量スペクトルのみを選別する段階と、
    (ii)前記(i)段階で選別された質量スペクトルに現れた前記試料イオンの信号強度を前記マトリックスイオンの信号強度で割った値であるイオン信号比を測定する段階と、
    (iii)前記マトリックスのモル濃度と前記(ii)段階で測定したイオン信号比を下記数式(9)の定量分析用検定線に代入して前記試料のモル濃度を計算する段階とを含んでなる、質量スペクトルを用いた試料定量分析方法。
    [A]=(IAH+/IMH+)[M]/K …(9)
    (前記式(9)において、[A]は、試料のモル濃度、I AH+ は、試料イオンの信号強度、I MH+ は、マトリックスイオンの信号強度、[M]は、マトリックスのモル濃度、Kは、平衡定数である)
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