以下、本発明のいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、被印字物にインクで印刷を行うインクジェットヘッドを備えたインクジェット装置を例に挙げて説明するが、本発明の液滴吐出装置は、そのような印刷に限定されず、他の技術分野への適用も可能なものとする。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1は、第1の実施形態のインクジェット装置の装置本体の主要部断面図であり、ヘッドカートリッジが搭載されていない状態のインクジェット装置を示している。
図1を参照すると、筐体を形成する装置本体1の内底にベースプレート2が設置され、ベースプレート2上に被印字物搬送部3が搭載されている。被印字物搬送部3には、被印字物4が不図示の吸着手段により搭載される。
装置本体1の内部であって被印字物搬送部3に対向する位置は、ヘッドカートリッジ(図1では図示していないが、図2のヘッドカートリッジ7)を搭載するヘッドカートリッジ搭載部5が設置されている。ヘッドカートリッジ搭載部5には、その搭載されたヘッドカートリッジの位置を規制するヘッドカートリッジガイド部6が設けられている。
図2は、ヘッドカートリッジ搭載部5に搭載可能なヘッドカートリッジ7の主要部断面図である。ヘッドカートリッジ7は、装置本体1のヘッドカートリッジ搭載部5に対して着脱可能に構成されている。ヘッドカートリッジ7の下部には、インク液滴を吐出する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド8が設けられている。ヘッドカートリッジ7を、図1に示したヘッドカートリッジ搭載部5に搭載したとき、ヘッドカートリッジ7の下部のインクジェットヘッド8が、被印字物搬送部3に対向する。
ヘッドカートリッジ7は、インクジェットヘッド8に供給されるインクを収容する液体収容筐体を有する。該液体収容筐体の内部には、該インクを収容する第一の液体収容手段である主インクタンク9と、主インクタンク9と接合された主インクタンクプレート17とが設けられている。主インクタンク9は、可撓性を有する密閉状態(大気と連通しない状態)の容器が用いられていて容積変化する。
主インクタンク9の下部が、インクジェットヘッド8の吐出口10に連通するインク流路に直接接続され、主インクタンク9の上部に主インクタンクプレート17が接合されている。インクジェットヘッド8の吐出口10は、ヘッドカートリッジ7が装置本体1に搭載された際に鉛直方向下向きを向くように配置されている。
装置本体1とヘッドカートリッジ7とは電気的に接続されている。従って、装置本体1から吐出信号をヘッドカートリッジ7に伝達することで、主インクタンク9内のインク11が吐出口10から液滴として吐出される。吐出される液体は、画像記録用の溶剤と色剤よりなる液体(インク)が典型的であるが、配線パターン用の導電性材料を含む液体、産業用及び画像記録用の紫外線(UV)硬化性液体等であってもよい。
主インクタンク9は樹脂等の材料で形成されており、側面に複数の屈曲部30(例えば蛇腹状の部位)を備えている。従って、屈曲部30の屈曲角度が変化することで主インクタンク9は一方向に容積を拡縮するように構成されている。
ヘッドカートリッジ7は、主インクタンク9に連結され主インクタンク9の容積を変更する容積変更手段12(図2の二点鎖線領域内)を備えている。容積変更手段12には、回転動作機構13(図2の破線領域内)と、回転動作機構13に駆動力を与える動力発生機構である、弾性体を渦巻き状に巻いてなるバネ18(バネ機構)と、が設けられている。
バネ18のバネ定数は小さく設定されており、渦巻き状のバネ18の復元力により回転動作機構13を回転させても回転動作機構13に与える回転力の変化が小さい構成となっている。渦巻き状に巻かれているバネ18は、回転動作機構13を図2を矢印A方向から見たときに反時計方向に回転する方向に回転力を与えるように構成されている。ここで、動力発生機構は、弾性体を渦巻き状に巻いてなるバネ18に限定されるわけではなく、圧縮空気を用いた動力発生機構、滑車を介して重りによる動力発生機構等により構成されていてもよい。
回転動作機構13は、雄ねじが形成された雄ねじ部14と、その雄ねじに係合する雌ねじが形成された柱状の雌ねじ部15と、雌ねじ部15の側部に張り出すように設けられ雌ねじ部15と共に回転する回転部16と、を有している。回転部16より下側の、雌ねじ部15の周囲にはフランジ部27が設けられている。
ヘッドカートリッジ7に設けられたフランジガイド部26によりフランジ部27が引っ掛かり、回転動作機構13がヘッドカートリッジ7に対して図2の上方向へ抜けない構成となっている。また、雌ねじ部15の下端には摺動部31が設けられている。摺動部31は、ヘッドカートリッジ7の内部に設けられた壁における摺動面32と摺動しながら回転する。
主インクタンク9は側面の屈曲部30によって一方向(図2の上下方向)に伸縮しやすい形状を有しており、該一方向における主インクタンク9の一端部がヘッドカートリッジ7の筐体内壁に固定されている。該一方向における主インクタンク9の他端部は自由に移動できるが、その他端部の外面に板部材である主インクタンクプレート17が設けられ、雄ねじ部14は、主インクタンクプレート17に連結されている。したがって、雄ねじ部14を図2の下方向への移動させることによってのみ、主インクタンク9の屈曲部30を変形させて主インクタンク9の容積を減少させることができる。
また、動力発生機構であるバネ18は、弾性力を与えられた状態で一端が雌ねじ部15に取付けられ、他端がヘッドカートリッジ7の筐体内壁に取り付けられている。
図2を矢印A方向から見たときの反時計方向に回転部16を回転させると、雄ねじ部14は図2の下方向へ移動する。尚、その時計方向に回転部16を回転させれば雄ねじ部14が下方向に移動するように、雄ねじと雌ねじの配置を逆に構成してもよい。
さらに、ヘッドカートリッジ7は、主インクタンク9の内部のインクに負圧を与える負圧発生手段を備えている。本実施形態の負圧発生手段は、可撓性を有する第二の液体収容手段である補助インクタンク20と、主インクタンク9と補助インクタンク20とを連通させる連通部21と、を有する。
補助インクタンク20は、可撓性を有する樹脂等の材料で形成された密閉状態(大気と連通しない状態)の容器からなり、該容器の側面に複数の屈曲部を備えている。従って、その屈曲部の屈曲角度が変化することで補助インクタンク20の容積は変化する。補助インクタンク20の側面の屈曲部の肉厚は、主インクタンク9の屈曲部30の肉厚より薄く構成されている。このため、補助インクタンク20は主インクタンク9よりも容易に容積変化することができる。
インク11は、主インクタンク9と補助インクタンク20との間を連通部21を介して移動できる。すなわち、主インクタンク9と連通部21と補助インクタンク20とを合わせた部分がインクを収容する部分である。補助インクタンク20の上部には、補助インクタンクプレート24が接合されている。本発明の技術は、インク容量によって限定されないが、主インクタンク9のインク容量が大きいものほど適している。
負圧発生手段は、さらに、弾性体であるインクタンクバネ23を有している。インクタンクバネ23は、一端が補助インクタンクプレート24に、他端がヘッドカートリッジ7内部の壁に、引張力を発生した状態(予張力を与えられた状態)で取り付けられている。インクタンクバネ23は、主インクタンク9と連通部21と補助インクタンク20内のインク11に対して液滴吐出ヘッド8の吐出口10から液滴を吐出するのに適した負圧を発生させている。
ヘッドカートリッジ7は、さらに、負圧発生手段の補助インクタンク20の容積変化に伴って容積変更手段の回転動作機構13の動作を制御する容積変更制御手段を備えている。
容積変更制御手段は、補助インクタンクプレート24に連結された制御部である制御棒19を有している。制御棒19は、ヘッドカートリッジ7の内部の壁に設けられた制御棒ガイド22によって図2の上下方向に摺動するように設定されている。制御棒19はさらに、補助インクタンク20の容積変化に伴って、回転部16に設けられた回転羽根部25に接触可能に設定されている。図2においては、制御棒19は回転羽根部25に接触した状態である。この状態では回転部16は制御棒で回転を止められているため、主インクタンク9の容積は変化しない。そのため、ヘッドカートリッジ7を例えば運搬する際には、大容量の主インクタンク9の容積は変化せず、補助インクタンク20の容量は主インクタンク9より小さいために外部振動の影響を受けにくい。つまり、主インクタンク9が大容量化されていても、本実施態様は吐出口10からインク11が漏れにくい構成となっている。
ヘッドカートリッジ7には、ヘッドカートリッジ7を装置本体1に対して位置を規定するための位置決め部28が設けられている。
図3は、ヘッドカートリッジ7を装置本体1に搭載した状態を示すインクジェット装置の主要部断面図である。装置本体1のヘッドカートリッジ搭載部5にヘッドカートリッジ7が搭載される。このとき、ヘッドカートリッジ7に設けられている位置決め部28をヘッドカートリッジ搭載部5内のヘッドカートリッジガイド部6に当接させることにより、装置本体1に対してヘッドカートリッジ7の位置が規定される。
また図3には、主要部の寸法としてaからfの記号が記載されている。以下にaからfの寸法の一例を示す。
主インクタンク9の内壁の幅aは8.5cm、奥行き8.5cm(不図示)であり、高さbは3.5cmである。主インクタンク9の容量は、約250mL(8.5cm×8.5cm×3.5cm=253mL)であり、この量は一般的なインクジェットプリンタの中では大容量の部類である。雄ねじ部14の外径cは1cmであり、回転羽根部25の、制御棒19と接触する部分の直径dは11cmである。補助インクタンク20の内径eは直径3.5cmである。雌ねじ部15の摺動部31の直径fは2cmである。
主インクタンクプレート17の幅は、主インクタンク9の内壁の幅aと同一であり、8.5cmである。主インクタンクプレート17の奥行きは、主インクタンク9の内壁の奥行き(不図示)と同一であり、8.5cmである。なお、各主要部の寸法については、主インクタンク9の容量に応じて適宜異なる寸法にて各部材を構成することも可能であり、本発明が上述した各数値に限定されるわけではない。
インクタンクバネ23は、図3に示した状態で補助インクタンク20にゲージ圧(対大気圧)として−1kPa(0.1N/cm2)の負圧を発生させている。補助インクタンク20の内径eは直径3.5cmであるので、補助インクタンク20の、補助インクタンクプレート24と接している面の面積は9.6cm2である(π×(3.5cm/2)2=9.6cm2)。そのため、2本設けられているインクタンクバネ23は、1本当たり0.48Nの予張力を発生している(0.1N/cm2×9.6cm2/2本=0.48N)。このとき、制御棒19の、回転羽根部25に対する引っ掛かり量は1mmである。インクタンクバネ23のバネ定数は、0.005N/mmである。
主インクタンクプレート17の幅は8.5cm、奥行きは8.5cmであるため、主インクタンクプレート17の、主インクタンク9と接している面積は72cm2である(8.5cm×8.5cm=72cm2)。
主インクタンク9内の圧力は補助インクタンク20内の圧力と同一であるので、主インクタンク9内の圧力はゲージ圧(対大気圧)として−1kPa(0.1N/cm2)である。そのため、主インクタンク9から主インクタンクプレート17には7.2Nの力が図3の下方向へ作用している(0.1N/cm2×72cm2=7.2N)。雄ねじ部14は主インクタンクプレート17と連結しているので、雄ねじ部14には7.2Nの力が図3の下方向へ作用している。雌ねじ部15のねじ部は、雄ねじ部14のねじ部と摺動しながら回転する。
雌ねじ部15の材質を摺動に適したポリアセタール(POM)とし、雄ねじ部14の材質を鋼とした場合、表面状態によるが一般的にポリアセタール(POM)と鋼の静止摩擦係数は0.2程度である。そのため、雄ねじ部14と雌ねじ部15の静止摩擦力は1.4N(7.2N×0.2(ポリアセタール(POM)と鋼の静止摩擦係数)=1.4N)である。雄ねじ部14の外径cは1cmであるので、雄ねじ部14と雌ねじ部15の静止摩擦力により発生するトルクは、0.7Ncmである(1.4N×1cm/2=0.7N)。
雄ねじ部14と雌ねじ部15の材質、表面状態、表面処理を摺動に適した構成とすることで、雄ねじ部14と雌ねじ部15の間の静止摩擦力を減少させることは可能である。
また、雌ねじ部15の摺動部31は、カートリッジ7に設けられた摺動面32と摺動しながら回転する。雌ねじ部15には雄ねじ部14から7.2Nの力が図3の下方向へ作用している。カートリッジ7に設けられた摺動面32の材質を鋼とすると、摺動部31と摺動面32の静止摩擦力は1.4Nである(7.2N×0.2(ポリアセタール(POM)と鋼の静止摩擦係数)=1.4N)。雌ねじ部15の摺動部31の直径fは2cmであるので、摺動部31と摺動面32の静止摩擦力により発生するトルクは、1.4Ncmである(1.4N×2cm/2=1.4Ncm)。摺動部31と摺動面32の材質、表面状態、表面処理は摺動に適した構成とすることは可能である。
さらに、摺動部31と摺動面32の摺動負荷を減少させ動作安定性を向上させるために、静止摩擦係数及び動摩擦係数の小さなボールベアリング(スラスト玉軸受)を使用してもよい。ボールベアリング(スラスト玉軸受)の一般的な静止摩擦係数は、0.01である。摺動面32にボールベアリング(スラスト玉軸受)を設け、雌ねじ部15をボールベアリング(スラスト玉軸受)にて回動可能に支持する。この場合、ボールベアリング(スラスト玉軸受)における静止摩擦力は0.072Nである(7.2N×0.01(ボールベアリング(スラスト玉軸受)の静止摩擦係数)=0.072N)。ボールベアリング(スラスト玉軸受)のボールによる支持部の半径を1cmとする。この場合、ボールベアリング(スラスト玉軸受)における静止摩擦力により発生するトルクは、0.072Ncmである(0.072N×1cm=0.072Ncm)。
雄ねじ部14と雌ねじ部15の静止摩擦力により発生するトルクと、ボールベアリング(スラスト玉軸受)を使用しない場合の摺動部31と摺動面32の静止摩擦力により発生するトルクの合計トルクは、2.1Ncmである(0.7Ncm+1.4Ncm=2.1Ncm)。
図3を矢印B方向から見たときに雌ねじ部15を反時計方向に回転させる方向に弾性体を渦巻き状に巻いてなるバネ18により、雌ねじ部15に対して2.38Ncmのトルクが与えられている。ここで、バネ18により雌ねじ部15に対して与えられるトルクから前述の静止摩擦力による合計トルク(2.1Ncm)を除くと0.28Ncmとなる(2.38Ncm−2.1Ncm=0.28Ncm)。
他方、雄ねじ部14と雌ねじ部15の静止摩擦力により発生するトルクと、摺動面32にボールベアリング(スラスト玉軸受)を設けた場合の静止摩擦力により発生するトルクの合計トルクは、0.77Ncmである(0.7Ncm+0.072Ncm=0.77Ncm)。
この場合、図3を矢印B方向から見たときに雌ねじ部15を反時計方向に回転させる方向に弾性体を渦巻き状に巻いてなるバネ18により、雌ねじ部15に対して1.05Ncmのトルクが与えられている。ここで、バネ18により雌ねじ部15に対して与えられるトルクから前述の静止摩擦力による合計トルク(0.77Ncm)を除くと0.28Ncmとなる(1.05Ncm−0.77Ncm=0.28Ncm)。
制御棒19は、回転部16に設けられた回転羽根部25により0.05Nの押圧力にて押圧されている(0.28Ncm/(11cm/2)=0.05N)。
次に、ヘッドカートリッジ7の動作を図面を参照しながら説明する。
図4の(a)〜(c)は、装置本体1に搭載したヘッドカートリッジ7の動作を示す主要部断面図である。また、図4の(d)は、図4の(a)を矢印C方向から見た構成の拡大図である。尚、図4(d)では、分かりやすくするために制御棒19の傾き及び制御棒ガイド22と制御棒19の隙間を誇張して図示している。
インクジェットヘッド8から液滴29を吐出することで、主インクタンク9内の負圧が0.1kPa(0.01N/cm2)変動した場合を想定する。この場合、補助インクタンクプレート24には、0.096Nの力が図4(a)における下方向へ作用する(0.01N/cm2×9.6cm2=0.096N)。そのため、制御棒19には0.096Nの力が図4(a)における下方向へ作用する。
回転羽根部25と制御棒ガイド22を、摺動に適したポリアセタール(POM)で作製し、制御棒19を鋼で作製した場合、制御棒19と回転羽根部25の静止摩擦力は、0.01Nである(0.05N×0.2(ポリアセタール(POM)と鋼の静止摩擦係数)=0.01N)。
図4(d)に示したように、制御棒19が回転羽根部25により押圧される部分と制御棒ガイド22の上端部との間の距離(g)と、制御棒ガイド22の上端部と制御棒ガイド22の下端部との間の距離(h)は同一である。
制御棒19が回転羽根部25により0.05Nの押圧力にて押圧された場合、制御棒ガイド22の上端部と制御棒ガイド22の下端部とが制御棒19と接する。制御棒19が回転羽根部25から0.05Nの押圧力にて押圧されているため、制御棒19は反力として回転羽根部25を0.05Nの押圧力(図4(d)に符号アで示す矢印方向の力)にて押圧する。また、制御棒19は、制御棒ガイド22の下端部を0.05Nの押圧力(図4(d)に符号イで示す矢印方向の力)にて押圧する。さらに制御棒19は、制御棒ガイド22の上端部を0.1N押圧力(図4(d)に符号ウで示す方向の力)にて押圧する。
制御棒ガイド22の上端部と制御棒19との間での静止摩擦力は、0.01Nである(0.05N×0.2(ポリアセタール(POM)と鋼の静止摩擦係数)=0.01N)。制御棒ガイド22の下端部と制御棒19との間での静止摩擦力は、0.02Nである(0.1N×0.2(ポリアセタール(POM)と鋼の静止摩擦係数)=0.2N)。
制御棒19と回転羽根部25との間での静止摩擦力0.01Nと、制御棒ガイド22の上端部と制御棒19との間での静止摩擦力0.02Nと、制御棒ガイド22の下端部と制御棒19との間での静止摩擦力0.01Nと、を合計した静止摩擦力は0.04Nである。ここで、摺動部分の摺動負荷を減少させ動作安定性を向上させるために、回転羽根部25と制御棒ガイド22と制御棒19それぞれの材質、表面状態、表面処理は摺動に適した構成とすることが好ましい。
主インクタンク9内の負圧が0.1kPa変動した場合の制御棒19に作用する力は、上述したように下方向へ0.096Nである。制御棒19と回転羽根部25の間、並びに制御棒19と制御棒ガイド22の上端部及び下端部それぞれの間における静止摩擦力の合計は0.04Nであるため、制御棒19は下方向へ移動可能である。ただし、実際には主インクタンク9内の負圧が0.043kPa(0.0043N/cm2)変動した場合、補助インクタンクプレート24には、0.041Nの力が図4(a)における下方向へ作用する(0.0043N/cm2×9.6cm2=0.041N)。その結果、前述の静止摩擦力よりも補助インクタンクプレート24に対して図4(a)における下方向へ作用する力が大きくなるため、制御棒19は下方向へ移動する。
制御棒19が下方向へ移動した状態の図が図4(b)である。主インクタンク9内の負圧が0.043kPa変動した場合には、補助インクタンクプレート24には、0.041Nの力が図4(b)の下方向へ作用する。その結果、インクタンクバネ23は1mm伸び、制御棒19は回転羽根部25から離れる。その結果、インクタンクバネ23が補助インクタンクプレート24を図4(b)の上方向へ引張る力は、0.01N増加する(0.005N/mm×1mm×2本=0.01N)。
インクタンクバネ23が1mm伸びたことで、補助インクタンク20内のインクが、0.96mL減少する。その結果、回転部16と連結された雌ねじ部15は、図4(b)を矢印D方向から見たときに反時計方向に回転する方向に回転する。
雌ねじ部15の1回転での送り量を1mmとすると、主インクタンク9の断面積は72.3cm2(8.5cm×8.5cm=72.3cm2)であるので、雌ねじ部15の回転角度は48°である(0.96cm3(mL)/72.3cm2/0.1cm×360°=48°)。そして、図4(c)に示したように雄ねじ部14は、0.13mm下方向へ移動し(0.96mL/72.3cm2×10=0.13mm)、主インクタンク9の側面の屈曲部30の屈曲角度が変化し容積が0.96mL減少する。(図4(c)では、分かりやすくするために主インクタンク9の変形を誇張して記載している。)
このとき主インクタンク9の0.96mLのインクが、連通部21を通過して補助インクタンク20に移動する。そして、補助インクタンク20の容積が0.96mL増加し、制御棒19が1mm上昇する。
制御棒19が1mm上昇した結果、制御棒19は、回転羽根部25と接触し、図4(c)を矢印E方向から見たときに反時計方向に回転していた回転部16の回転は停止する。
なお、主要部の寸法以外の上述した各数値も、1つの例として記載しており、主インクタンク9の容量に応じて適宜異なる数値にて各部材を構成することは可能である。つまり本発明が上述した各数値に限定されるわけではない。
図5は、装置本体1に搭載したヘッドカートリッジ7の動作を示すフローチャートである。
ステップ1(以下、ステップをS と略す。)にて吐出口10から液滴を吐出する。S2にて、補助インクタンク20の容積が減少する。S3にて、制御棒19が回転羽根部25から離れる。S4にて、回転部16が回転する。S5にて、雄ねじ部14が下降する。S6にて、主インクタンク9の容積が減少する。S7にて、補助インクタンク20の容積が増加する。S8にて、制御棒19が回転羽根部25と接触する。S9にて、回転部16の回転が停止する。以上にてフローは終了する。
このようにして、主インクタンク9の内圧は一定範囲内に制御され、吐出口10のメニスカス状態が安定的に保たれ、吐出口10からの吐出の安定性を確保することができる。
また本態様では、吐出口10からの吐出で補助インクタンク20の容積が減少した際、雌ねじ部15が回転されることによって、主インクタンクプレート17に連結された雄ねじ部14の端部が移動する。その結果、主インクタンク9の一部が変形し、主インクタンク9の容積が減少する。これに伴い、主インクタンク9のインクが連通部21を介して補助インクタンク20に移動して、補助インクタンク20の容積が増加し、元の容積になる。このような比較的簡単な構成で、本発明は主インクタンク9の内圧を一定範囲内に制御できるようになっている。
また、大容量の主インクタンク9は回転動作機構13の雄ねじ部14に連結され、雌ねじ部15の回転動作により雄ねじ部14の先端が主インクタンク9の上部を変形させて、主インクタンク9の容積を変更する構成である。言い換えれば、雌ねじ部15の回転動作が停止している間は主インクタンク9の容積は変化しない構成である。このため、主インクタンク9内のインクはインクジェット装置自体の振動等による外力の影響を受けにくくなっている。その結果、インクジェットヘッドの吐出口10からインクが漏れ出る可能性を低減でき、主インクタンク9の大容量化が容易である。
また、主インクタンク9や補助インクタンク20においてインク11と接する部分に弁やバネは使用されていない。このため、インク11内に微細な異物が混入するおそれの少ないインクジェット装置を提供することができる。
なお、上述したインクジェットヘッド8はヘッドカートリッジ7の下部に設けられているが、ヘッドカートリッジ7とは分離されて、チューブ等を介して主インクタンク9と接続された構成であってもよい。この構成の場合、インクジェットヘッド8内のインクに対してヘッドカートリッジ7より負圧を与えられるようにインクジェットヘッド8を配置することが望ましい。また、ヘッドカートリッジ搭載部5の底部にインクジェットヘッド8を設け、ヘッドカートリッジ7がヘッドカートリッジ搭載部5に搭載された際にインクジェットヘッド8と主インクタンク9とが接続される構成であってもよい。これらの変更は、以下に説明する第2〜第4の実施形態に対しても適用しえる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図6を用いて説明する。第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付けてその説明を省略する。図6は、第2の実施形態のヘッドカートリッジ107を装置本体1に搭載した状態の主要部断面図である。第1の実施形態では、液体収容手段が、樹脂等の可撓性を有する材料で作られており、側面に複数の屈曲部30を備えた主インクタンク9として構成されていた。そして屈曲部30の屈曲角度が変化することで主インクタンク9の容積は変化するものであった。(図2参照)
しかし第2の実施形態では、液体収容手段は、シリンジ部142と、シリンジ部142の内壁面に気密に密着しながら摺動するピストン部141と、を有する。
シリンジ142の注出部はインクジェットヘッド8と連通している。ピストン141がピストンプレート17を介して容積変更手段12の雄ねじ部14と連結されている。雄ねじ部14がピストンプレート17を介してピストン部141をシリンジ部142に対して摺動させることで、シリンジ部142内のインク11を収容する容積を減少させる。ピストン部141は図6における下方向にのみ移動するため、シリンジ部142の内壁面とピストン部141の摺動により粉塵が発生してもインク11内に粉塵等の異物が入りにくい構成となっている。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について図7を用いて説明する。第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付けてその説明を省略する。
図7は、第3の実施形態のヘッドカートリッジ207を装置本体1に搭載した状態の主要部断面図である。第1の実施形態では、回転部16に設けられた回転羽根部25に制御棒19が接触する構成であった(図2参照)。
しかし第3の実施形態では、容積変更制御手段が、回転動作機構213の回転部16の周端に回転羽根部25に代えて設けられた回転部ギア241と、回転部ギア241と連動する増速機構242と、を有している。
増速機構242は、回転部ギア241と噛み合うギア部243と、ギア部243と連結されたギア軸244と、を有している。ギア軸244は、ヘッドカートリッジ207の内部の壁に固定された上部軸受部245と下軸受部246により回動可能に支持されている。ギア軸244は、増速回転部247とも連結されている。増速回転部247の端部には、増速回転羽根部248が設けられている。増速回転羽根部248は、第1の実施形態の回転羽根部25と同じように制御棒19と接触可能とされている。増速回転部247と増速回転羽根部248とが、増速機構242により増速される可動部を成している。
回転部16を図7の矢印F方向から見て反時計方向へ回転させると、回転部ギア241を介してギア部243が矢印F方向から見て時計方向に回転し、ギア軸244、増速回転部247、増速回転羽根部248が矢印F方向から見て時計方向に回転する。
回転部ギア241の直径(ピッチ円直径)よりもギア部243の直径(ピッチ円直径)を小さく構成しているため、回転部ギア241の回転速度よりもギア部243の回転速度は増加する構成である。そして、ギア部243の直径(ピッチ円直径)よりも増速回転羽根部248の直径を大きく、かつ回転部ギア241の直径(ピッチ円直径)よりも増速回転羽根部248の直径を小さく構成している。
このような構成によれば、回転部ギア241の外周端部に制御棒219を接触させる場合(図2に示したように構成する場合)の制御棒19に作用する力よりも、増速回転羽根部248の外周端部に制御棒19を接触させる場合(図7の構成)の制御棒19に作用する力を小さく構成することが可能である。
制御棒19に作用する力を小さくすることで、制御棒19を図7の下方向へ動作させる場合の、増速回転羽根部248と制御棒19の間の静止摩擦力を低減させることが可能となるので、制御棒19の動作の確実性を向上させることができる。
また、制御棒19にリンクを設け、リンクを介して増速回転羽根部248に制御棒19を接触させる構成とすることも可能である。また、図7においては、制御棒19が増速回転羽根部248に引っ掛かる構成となっているが、増速回転部247に凹凸面を設け、制御棒19の端部が、増速回転部247に設けられた凹凸面に接触し、引っ掛かる構成とすることも可能である。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について図8を用いて説明する。第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付けてその説明を省略する。
図8は、第4の実施形態のヘッドカートリッジ307を装置本体1に搭載した状態の主要部断面図である。第1の実施形態では、回転部16に設けられた回転羽根部25に制御棒19が接触する構成であった(図2参照)。また、第3の実施形態では、容積変更制御手段が、回転動作機構13の回転部16の周端に設けられた回転部ギア241と連動する増速機構242を有している構成であった(図7参照)。
しかし第4の実施形態では、容積変更制御手段が、回転動作機構13の回転部16に設けられた回転部プーリー341と、回転部プーリー341とベルト349にて連動するように構成された増速機構342と、を有している。
増速機構342は、プーリー部343と、プーリー部343と連結されたプーリー軸344とを有している。プーリー部343は、ベルト349にて回転部プーリー341と連動する構成である。プーリー軸344は、ヘッドカートリッジ207の内部の壁に固定された上部軸受部345と下軸受部346により回動可能に支持されている。プーリー軸344は、増速回転部347とも連結されている。増速回転部347には、増速回転羽根部348が設けられている。増速回転羽根部348は、第1の実施形態の回転羽根部25と同じように制御棒19と接触可能とされている。増速回転部347と増速回転羽根部348とが、増速機構342により増速される可動部を成している。
回転部16を図8のG方向から見て反時計方向へ回転させると、回転部プーリー341を介してプーリー部343が矢印G方向から見て反時計方向に回転する。その結果、プーリー軸344、増速回転部347、増速回転羽根部348が矢印G方向から見て反時計方向に回転する。
回転部プーリー341の直径(ピッチ円直径)よりもプーリー部343の直径(ピッチ円直径)を小さく構成しているため、回転部プーリー341の回転速度よりもプーリー部343の回転速度は増加する構成である。そして、プーリー部343の直径(ピッチ円直径)よりも増速回転羽根部348の直径を大きく、かつ回転部プーリー341の直径(ピッチ円直径)よりも増速回転羽根部248の直径を小さく構成している。
このような構成によれば、回転部プーリー341の外周端部に制御棒19を接触させる場合の制御棒19に作用する力よりも、増速回転羽根部348の外周端部に制御棒19を接触させる場合の制御棒19に作用する力を小さく構成することが可能である。
制御棒19に作用する力を小さくすることで、制御棒19を図8の下方向へ動作させる場合の、増速回転羽根部348と制御棒319の間の静止摩擦力を低減させることが可能となるので、制御棒319の動作の確実性を向上させることができる。
また、制御棒19にリンクを設け、リンクを介して増速回転羽根部348に制御棒19を接触させる構成とすることも可能である。また、図8においては制御棒19が増速回転羽根部348に引っ掛かる構成となっているが、第3の実施形態と同様に増速回転部347に凹凸面を設け、制御棒19の端部が増速回転部347に設けた凹凸面に接触し、引っ掛かる構成とすることも可能である。