(第1実施形態)
図1に、第1実施形態の電気的構成図を示す。図示されるように、モータジェネレータ10は、3相の同期機である。モータジェネレータ10には、インバータINVを介して直流電圧源(高電圧バッテリ12)が接続されている。高電圧バッテリ12は、端子電圧がたとえば100V以上となる2次電池である。高電圧バッテリ12の正極電位及び負極電位の中央値が車体電位となる設定とするなどして、高電圧バッテリ12の負極電位は、車体電位とは相違するように設定されている。この設定は、たとえば高電圧バッテリ12の電圧を分圧する複数のコンデンサの接続点を車体に接続することで実現することができる。
インバータINVは、高電位側のスイッチング素子S¥p(¥=u,v,w)及び低電位側のスイッチング素子S¥nの直列接続体を3組備え、これら各直列接続体を構成する高電位側のスイッチング素子S¥p及び低電位側のスイッチング素子S¥nの接続点がモータジェネレータ10の各端子に接続されている。そして、スイッチング素子S¥#(¥=u,v,w:#=p,n)のそれぞれには、ダイオードD¥#のそれぞれが逆並列に接続されている。
また、上記各スイッチング素子S¥#の開閉制御端子(ゲート)には、ドライブユニットDUが接続されている。ドライブユニットDUは、スイッチング素子S¥#のゲートの電圧を制御する機能が搭載された駆動回路20を備えている。また、上側アームのスイッチング素子S¥pのドライブユニットDUとU相下側アームのスイッチング素子S¥nのドライブユニットDUとは、スイッチング素子S¥#のオン・オフの操作指令を受信する受信ユニット30を備えている。
上記モータジェネレータ10を流れる電流は電流センサ14によって検出される。そして、電流センサ14の検出値等、モータジェネレータ10の制御量(トルク等)を制御する上で必要な検出値は、マイクロプロセッサユニット50に入力される。マイクロプロセッサユニット50は、メモリに格納されたプログラムを中央処理装置によって実行するソフトウェア手段である。
マイクロプロセッサユニット50では、電流センサ14の検出値等に基づき、モータジェネレータ10を流れる電流を、モータジェネレータ10のトルクを指令トルクとするうえで要求される指令電流に制御する。ここでは、たとえば特開2008−228419号公報等に記載されるモデル予測制御(MPC:ModelPredictive Control)が用いられる。すなわち、インバータINVのスイッチングモードを仮設定した場合についてのそれぞれの電流を予測し、予測される電流と指令電流との差が最も小さくなるスイッチングモードを採用する。ここで、スイッチングモードは、インバータINVの6つのスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)のそれぞれがオンであるかオフであるかによって定まるものであり、8つのスイッチングモードが存在する。それらのうち、スイッチングモード1〜6は、インバータINVの出力電圧を図に示す有効電圧ベクトルV1〜V6とするものである。
マイクロプロセッサユニット50では、スイッチングモードが決定されると、これに応じたスイッチング素子S¥#の指令信号g¥#を送信ユニット40に出力する。ここで、指令信号g¥#は、基本的にはスイッチングモードを表現するものであるが、スイッチングモードの切り替わり時には、上側アームの指令信号g¥pと下側アームの指令信号g¥nとの双方をオフ指令とすることで、デッドタイムDTを表現する。ここで、デッドタイムDTは、スイッチングモードの切り替えに際して上側アームの指令信号g¥pと下側アームの指令信号g¥nとの双方がオンとなることがないように、スイッチング素子S¥#のスイッチング状態の切り替わり速度に基づき設定されるものである。
送信ユニット40では、マイクロプロセッサユニット50から出力されたパラレル信号である指令信号g¥#をデジタルベースバンド符号にて固定長のフレームに符号化し、符号化されたフレームに応じたシリアル信号をトランスTの1次側コイルW1に出力する。これにより、トランスTの2次側コイルW2un,W2vn,W2wn,W2up,W2vp,W2wpに共通のシリアル信号が出力される。
ここで、2次側コイルW2un,W2vn,W2wnのそれぞれは、U,V,W相下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,SwnのそれぞれのドライブユニットDUに搭載された受信ユニット30に接続されている。また、2次側コイルW2up,W2vp,W2wpのそれぞれは、U,V,W相の上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,SwpのそれぞれのドライブユニットDUに搭載された受信ユニット30に接続されている。
以下、送信ユニット40、トランスT及び受信ユニット30を備える伝送装置の構成について、図2に基づきさらに説明する。図2では、便宜上、U相の上側アームのスイッチング素子SupのドライブユニットDUに信号及び電力を伝送する経路を、他の経路を代表して示している。
マイクロプロセッサユニット50から出力された指令信号g¥#は、送信ユニット40内のエンコーダ41によってシリアル伝送のための伝送符号により、固定長のフレームに符号化される。ここでは、フレームへの符号化の手法として、マンチェスタ符号を用いるとともに、伝送対象となる指令信号g¥#を表すビット列に同期信号を付与する。図3に、マンチェスタ符号によって符号化されたフレームを示す。図示されるように、マンチェスタ符号は、1ビットに対応する期間(単位期間T0)の中央で論理が反転するものであり、特に論理「0」と論理「1」とで、中央での反転極性が相違するものである。本実施形態では、同期信号(図中、Sync)を4ビットの信号とし、これに続いて各1ビットで指令信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnのそれぞれを順次表現する。これにより、指令信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnの6ビットを表す1フレームが、10ビットとなる。
本実施形態では、同期信号を「0111」とする。これは、上側アームの指令信号g¥pと下側アームの指令信号g¥nとの双方がオンとなることがないために、指令信号g¥#を表現する6ビットのデータが、オン指令に対応する論理値「1」が3連続するデータを含み得ないことに鑑みた設定である。これにより、指令信号g¥#を表現するデータと同期信号とを識別することができる。ちなみに、同期信号の先頭データを「0」としたのは、指令信号g¥#と確実に識別するためである。
先の図2に示したエンコーダ41の出力信号は、シフトレジスタ42に入力される。シフトレジスタ42は、クロック信号CLKに同期して符号化されたフレームをシリアル信号として1次側コイルW1に出力する。詳しくは、1次側コイルW1には、フルブリッジ回路が接続されており、シフトレジスタ42の出力信号は、フルブリッジ回路の各スイッチング素子を駆動するドライバに入力される。フルブリッジ回路とドライバによってシリアル変換回路43が構成されている。シリアル変換回路43により、1次側コイルW1には、エンコーダ41によって符号化されたフレームに応じたシリアル信号(入力側電圧信号)が印加される。
1次側コイルW1に信号が印加されると、2次側コイルW2upには、1次側コイルW1と2次側コイルW2upとの巻数比に応じた倍率で変動するシリアル信号が誘起される。2次側コイルW2upに接続された受信ユニット30は、電源回路60とデコードユニット70とを備える。
電源回路60は、2次側コイルW2upに誘起された電圧に応じて流れる電流を整流する整流回路62と、整流回路62から出力される電流を平滑化するフィルタ回路64と、フィルタ回路64の出力電圧を降圧する降圧コンバータ66とを備える。ここで、フィルタ回路64の出力電圧は、降圧コンバータ66に入力されるのに加えて、駆動回路20に入力される。駆動回路20は、デコードユニット70の出力する指令信号gupに応じてスイッチング素子Supを駆動する駆動IC100と、過電流保護回路102とを備える。ここで、過電流保護回路102は、スイッチング素子Supを流れる電流を監視し、この電流が閾値電流以上となることで、駆動IC100にスイッチング素子Supを強制的にオフ操作する指令を出力するものである。スイッチング素子Supを流れる電流が閾値以上であるか否かの判断は、スイッチング素子Supの入力端子(コレクタ)及び出力端子(エミッタ)間を流れる電流と相関を有する微小電流を出力するセンス端子Stの出力電流が閾値以上であるか否かの判断処理となる。
なお、上記降圧コンバータ66は、スイッチング素子Supの駆動用の電圧と、駆動IC100や、過電流保護回路102、デコードユニット70の電源電圧との相違に鑑み、電源電圧を生成するためのものであり、たとえば「20V」の入力電圧を5V程度に降圧する。
一方、デコードユニット70は、2次側コイルW2upの電圧の変動量を縮小変換するデータスライサ72を備えている。データスライサ72は、2次側コイルW2uの電圧を、論理回路の動作電圧範囲に変換するための変換手段である。データスライサ72の出力電圧は、デコーダ74に入力される。デコーダ74は、XOR回路74aと、ワンショットパルス回路74bと、復号された信号を出力するDフリップフロップ74cとを備えている。
ここで、XOR回路74aは、データスライサ72の出力電圧とDフリップフロップ74cの出力電圧との排他的論理和信号を出力する。ワンショットパルス回路74bは、ワンショットパルスの出力期間でないことを条件に、XOR回路74aの出力電圧の立ち上がりに同期して、予め定められた長さのパルス幅を有するパルス信号を出力する。ここで、パルス幅は、「3・T0/4」に設定される。これは、クロック信号CLKを容易に生成するための一設定である。そして、Dフリップフロップ74cでは、データ端子の出力信号を、ワンショットパルス信号の立ち下がりエッジのタイミングで、そのタイミングにおけるデータスライサ72の出力信号に更新する。
図4に、デコーダ74の処理を示す。詳しくは、図4(a)に、デコーダ74の入力信号の推移を示し、図4(b)に、ワンショットパルス回路74bの出力信号の推移を示し、図4(c)に、復号された信号(Dフリップフロップ74cの出力信号)の推移を示し、図4(d)に、デコーダ74の入力信号から生成されるクロック信号CLK(XOR回路74aの出力信号)の推移を示す。
先の図2に示すように、復号された信号は、シフトレジスタ76に入力される。シフトレジスタ76では、XOR回路74aの出力信号の立ち上がりエッジをクロック信号CLKとして用いて、Dフリップフロップ74cの出力信号を順次格納する。ここで、本実施形態では、シフトレジスタ76の記憶容量を14ビットとする。これは、1フレーム分のデータと次の1フレームの同期信号とを格納可能とするための設定である。
同期信号識別回路78では、シフトレジスタ76の先頭の4ビットのデータが同期信号であるか否かを判断し、同期信号識別回路80では、シフトレジスタ76の最後の4ビットのデータが同期信号であるか否かを判断する。一方、AND回路82では、同期信号識別回路78,80の双方が同期信号を検出することで、指令信号出力回路84にイネーブル信号を出力する。指令信号出力回路84では、イネーブル信号に同期して、シフトレジスタ76の先頭から5ビット目の信号を指令信号gupとして、駆動IC100に出力する。
なお、スイッチング素子Sun,Svp,Svn,Swp,SwnのそれぞれのドライブユニットDU内の指令信号出力回路84では、シフトレジスタ76の先頭から6番目〜10番目の信号を指令信号gun,gvp,gvn,gwp,gwnとしてそれぞれ出力する。
本実施形態における送信ユニット40と複数の受信ユニット30とは同一の経路であるトランスTを介して接続されている。スイッチングモードの切り替え時において、送信ユニットから複数の受信ユニット30に対し、トランスTを介して共通のフレームがシリアル信号(送信信号)として出力される。そして、そのシリアル信号に応じて各受信ユニット30がそれぞれスイッチング素子S¥#の切り替え動作を行う。ここで、切り替え前後のスイッチングモードにより、複数のスイッチング素子S¥#が同時に切り替わることが考えられる。複数のスイッチング素子S¥#のオン・オフ状態が同時に切り替わると、サージ電流が重畳的に発生するなど問題となる。
上記の問題に鑑みて、本実施形態のエンコーダ41は、複数のスイッチング素子S¥#が同時に切り替わることを抑制する。つまり、同一のフレーム生成周期において、複数のスイッチング素子S¥#のオン・オフ状態が切り替わるような指令信号g¥#がエンコーダ41に対して入力された場合に、オン・オフ状態が切り替わるように指示されたスイッチング素子S¥#のうちいずれか1つのスイッチング素子のオン・オフ状態を順次切り替えるように信号を変換する。
また、上記のようにデッドタイムDTを設けることで、上アーム側のスイッチング素子S¥pと下アーム側のスイッチング素子S¥nとが同時にオン状態となることを抑制している。しかしながら、マイクロプロセッサユニット50の誤動作や信号経路に発生したノイズなどによって、上アーム側のスイッチング素子S¥pと下アーム側のスイッチング素子S¥nとが共にオン状態となるおそれがある。
本実施形態のエンコーダ41は、同一相の指令信号g¥#が変化する場合に、立ち下がり変化を立ち上がり変化に優先してフレームを生成することで、上アーム側のスイッチング素子S¥pと下アーム側のスイッチング素子S¥nとが共にオン状態になることを抑制する。
本実施形態のエンコーダ41の機能ブロック図を図5に示す。エンコーダ41は、変化点判定回路44、指令値更新回路45、優先回路46(優先順序設定手段)により構成されている。パラレル信号である全指令信号g¥#を符号化してフレームを生成する機能は、指令値更新回路45により実現されている。
変化点判定回路44は、指令信号g¥#が入力され、指令信号g¥#の少なくともいずれかが変化したか否かを判定する回路である。変化点判定回路44は、指令信号g¥#の少なくともいずれかが変化したことを指令値更新回路45に通知する。
指令値更新回路45は、変化点判定回路44により指令信号g¥#の少なくともいずれかが変化したと判定された場合に、すべての指令信号g¥#に基づいてシフトレジスタ42に書き込まれている内容を更新する。指令値更新回路45は、すべての指令信号g¥#を表すビット列に同期信号を付与した上でマンチェスタ符号により符号化し、シフトレジスタ42に書き込みを行う。
ここで、指令値更新回路45は、2以上の指令信号g¥#が同一のフレーム生成周期において重複して変化した場合に、2以上の指令信号g¥#の変化のうち1つの変化を反映してフレームを生成する。そして、その生成したフレームがシフトレジスタ42からシリアル変換回路43に読み出されるごとに、指令信号g¥#の残りの変化のうち1つの変化を反映してフレームを生成する。この際、優先順序が高い指令信号g¥#から先に変化を反映してフレームを生成する。この優先順序は、優先回路46により設定される。
優先回路46は、各指令信号g¥#に対し優先順序をそれぞれ設定する。本実施形態における優先回路46は、2以上の指令信号g¥#が同一のフレーム生成周期において変化した場合に、その変化した2以上の指令信号g¥#について、指令値更新回路45により優先されてフレームに反映された指令信号g¥#に関する優先順序を低下させ、優先されずにフレームに反映された指令信号g¥#に関する優先順序を上昇させる。
具体的には、各相についてそれぞれカウンタを設ける。カウンタの値は1〜3に設定されており、カウンタの値が3となっている相に対応する指令信号g¥#の優先順序が最も高く設定され、カウンタの値が1となっている相に対応する指令信号g¥#の優先順序が最も低く設定される。
優先回路46は、2以上の指令信号g¥#が変化した場合、指令値更新回路45によりそのすべての変化が反映されてシフトレジスタ42に書き込みが行われ、シフトレジスタ42からシリアル変換回路43に送信されたことを条件として、カウンタを更新する。具体的には、最も優先して送信された相に対応するカウンタの値を1減少させる。また、他の相に対応するカウンタの値を1増加させる。そして、それらのカウンタの値に基づいて、各指令信号g¥#についての優先順序の設定を変更する。
また、優先回路46は、指令信号g¥#のうち、同じ相の上アーム側の指令信号g¥pと下アーム側の指令信号g¥nとが共に変化した場合に、その2つの指令信号g¥p,g¥nについて、立ち下がり信号を優先させるように、立ち下がり信号の優先順序を高く、立ち上がり信号の優先順序を低く設定する。
図6に送信ユニット40の動作を示す2以上の指令信号g¥#タイミングチャートを示す。なお、図中では、U,V,W相の上アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpの指令信号gup,gvp,gwpをUP指令信号、VP指令信号、WP指令信号と表し、U,V,W相の下アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnの指令信号gun,gvn,gwnをUN指令信号、VN指令信号、WN指令信号と表している。
時刻T1において、指令信号gup,gvn,gwnがそれぞれロー状態からハイ状態に、指令信号gun,gvp,gwpがそれぞれハイ状態からロー状態に変化する。
時刻T1における各相のカウンタの値は、時刻T1以前の指令信号g¥#に基づいて、U相が3、V相が2、W相が1と設定されている。このカウンタの値に基づいて、優先回路46によりU相の優先順序が最も高く設定され、W相の優先順序が最も低く設定される。また、同相の信号について立ち下がり信号が優先されるため、各指令信号g¥#は、優先順序が高い方から順にgun,gup,gvp,gvn,gwp,gwnとなる。
時刻T1の後、優先順序が高い指令信号g¥#から順番に変化が反映されたフレームが生成され、シフトレジスタ42に書き込まれる。そして、シフトレジスタ42に書き込まれたフレームに応じたシリアル信号が送信ユニット40から複数の受信ユニット30に対して共通に出力される。そして、そのフレームに基づいて各スイッチング素子S¥#のオン・オフが制御されることで、クロック信号CLKの1周期において、1のスイッチング素子S¥#のみのオン・オフ状態が変化する。この際、優先順序が高く設定されている指令信号g¥#の伝送遅延時間が短くなり、優先順序が低く設定されている指令信号g¥#の伝送遅延時間が長くなる。具体的には、指令信号gunの伝送遅延時間に比べて、指令信号gwnの伝送遅延時間は、フレーム生成周期の5周期分長くなる。
時刻T2において、複数の指令信号g¥#の変化がすべてシフトレジスタ42のデータに反映されて、送信ユニット40から出力される。このとき、最も優先して送信された相であるU相のカウンタが1減少し、優先的に送信されなかった相であるV相及びW相のカウンタが1増加する。これにより、各相のカウンタの値は、U相が2、V相が3、W相が2となる。
時刻T3において、指令信号gvn,gwnがハイ状態からロー状態に変化する。カウンタの値に基づいて、V相の指令信号gvnがW相の指令信号gwnより優先順序が高く設定され、指令信号gvn,gwnの順に変化が反映されて送信ユニット40から出力される。
時刻T4において、指令信号gvn,gwnの変化がすべてシフトレジスタ42のデータに反映されて送信ユニット40から出力される。このとき、最も優先して送信された相であるV相のカウンタが1減少し、優先的に送信されなかった相であるW相のカウンタが1増加する。これにより、各相のカウンタの値は、U相が2、V相が2、W相が3となる。
以下、本実施形態における効果を述べる。
すべての指令信号g¥#を符号化して1のフレームとし、そのフレームを表すシリアル信号を複数の駆動回路20に対してそれぞれ共通に出力する構成とした。ここで、エンコーダ41は、2以上の指令信号g¥#が変化することで2以上のスイッチング素子S¥#の開閉を変化させる場合に、フレームを表すシリアル信号を出力するごとに、その変化のうち1の指令信号g¥#の変化を所定の順序で反映しフレームを生成する。このようにして生成されたフレームがデコードユニット70によって復号化されると、その復号化された信号はデコードユニット70が新たなフレームを受信するごとに1の指令信号g¥#の変化が反映されたものとなる。つまり、2以上の指令信号g¥#が変化し2以上のスイッチング素子S¥#のオン・オフ状態が変化する場合に、それぞれのスイッチング素子S¥#のオン・オフ状態の変化の間隔がフレーム生成周期と等しくなる。これにより、2以上のスイッチング素子S¥#のオン・オフ状態が同時に変化することを抑制する。
エンコーダ41は、2以上のスイッチング素子S¥#の開閉を変化させる変化要求が重複して生じた場合に、すべての指令信号g¥#のそれぞれに設定された優先順序に基づいて、フレームの生成ごとに各指令信号g¥#の変化をフレームに反映する。ここで、優先回路46は、すべての指令信号g¥#のいずれかが変化したこと、又は、フレームが生成されたことなどの所定条件に基づいて、優先順序を変更する構成とした。このように優先順序を変更することで、指令信号g¥#ごとの遅延の偏りを抑制することができる。特に本実施形態のような三相交流式のモータジェネレータ10の場合、指令信号g¥#ごとの遅延の偏りを抑制することで、トルクの変動を抑制することができる。
2以上のスイッチング素子の開閉を変化させる変化要求が重複して生じた場合に、その重複する変化要求をすべてフレームに反映したことを条件として、優先順序の変更を行うこととした。これにより、次に重複する変化要求が生じた場合に、現在の優先順序と異なる優先順序に基づいて指令信号g¥#がフレームに反映されるため、指令信号g¥#ごとの遅延の偏りを好適に抑制することが可能になる。
具体的には、優先順序の設定について、エンコーダ41により指令信号g¥#の変化のうちすべての変化が反映されて符号化されたことを条件として、最も優先されて変化が反映された指令信号g¥#(相)の優先順序を低く設定することとした。これにより、今回優先された指令信号g¥#が次回は優先されず、今回優先されなかった指令信号g¥#が次回は優先されることになる。つまり、各指令信号g¥#の遅延の実績に応じて優先順序が設定されることになり、各指令信号g¥#の遅延を補償することができる。
上アーム側及び下アーム側のスイッチング素子S¥p,S¥nのオン・オフ状態を変更する指令信号g¥#が同時に変化した場合に、立ち下がり変化が生じた指令信号g¥#の優先順序を、立ち上がり変化が生じた指令信号g¥#の優先順序より高く設定する構成とした。このように優先順序を設定することで、ノイズやマイクロプロセッサユニット50の誤動作などに起因してデッドタイムDTが設定されなかった場合であっても、上アーム側及び下アーム側のスイッチング素子S¥p,S¥nが共にオフ状態となる期間を設けることが可能になる。
(第2実施形態)
第2実施形態における電気的構成は、第1実施形態における電気的構成と同一であり、優先回路46の動作のみが異なるものである。以下、第2実施形態における優先回路46の動作を説明する。
本実施形態における優先回路46は、優先して送信する相を予め定めた所定の順序で変更する。具体的には、初期状態として、優先順序を高い順からU相、V相、W相と設定する。そして、複数相が同一のフレーム生成周期において変化した場合に、その優先順序に基づいてフレームの生成が行われると、優先順序を高い順からV相、W相、U相と変更する。次に複数相が同一のフレーム生成周期において変化した場合に、その優先順序に基づいてフレームの生成が行われると、優先順序を高い順からW相、U相、V相と設定する。同様に、次に複数相が同一のフレーム生成周期において変化した場合に、その優先順序に基づいてフレームの生成が行われると、優先順序を高い順からU相、V相、W相と変更する。つまり、優先回路46は、指令信号g¥#やフレームに関わらず、現在最優先にしている相に関する優先順序を最も低く設定する。
また、優先回路46は、2以上の指令信号g¥#が同一のフレーム生成周期において変化した場合、指令値更新回路45によりそのすべての変化が反映されてシフトレジスタ42に書き込みが行われ、シフトレジスタ42からシリアル変換回路43に送信されたことを条件として、優先順序を設定する。
また、優先回路46は、第1実施形態と同様に、指令信号g¥#のうち、同じ相の上アーム側の指令信号g¥pと下アーム側の指令信号g¥nとが共に変化した場合に、立ち下がり信号の優先順序を高く、立ち上がり信号の優先順序を低く設定する。
本実施形態におけるエンコーダ41の動作を示すタイミングチャートを図7に示す。
時刻T11において、指令信号gup,gvp,gwpがハイ状態からロー状態、指令信号gun,gvn,gwnがロー状態からハイ状態に変化する。時刻T11において、U相、V相、W相の順番に優先順序が高く設定されているため、各指令信号g¥#は、優先順序が高い方からgup,gun,gvn,gvp,gwn,gwpとなる。時刻T11の後、優先順序が高い指令信号g¥#から順番に変化がシフトレジスタ42に反映されて送信ユニット40から出力される。
時刻T12において、指令信号g¥#のすべての変化が反映されて送信ユニット40から送信信号が出力されると、優先順序が高い方からV相、W相、U相と設定される。
時刻T13において、指令信号gun,gvnがハイ状態からロー状態に変化する。V相の優先順序がU相の優先順序より高いため、優先順序の高い指令信号gvnの変化がシフトレジスタ42に反映された後に、優先順序の低い指令信号gunの変化がシフトレジスタ42に反映される。時刻T14において、指令信号gunの変化がシフトレジスタ42に反映される前に、指令信号gup,gvpがロー状態からハイ状態に変化する。
時刻T15において、指令信号gup,gvpの変化がシフトレジスタ42に反映されるため、優先順序が再設定され、優先順序が高い方からW相、U相、V相と設定される。時刻T16において、優先順序の高い指令信号gupの変化がシフトレジスタ42に反映された後に、優先順序の低い指令信号gvpの変化がシフトレジスタ42に反映される。
本実施形態における制御を行うことで、簡易な処理により各指令信号g¥#の遅延の偏りを抑制することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態における電気的構成は、第1,2実施形態における電気的構成と同一であり、優先回路46の動作のみが異なるものである。以下、第3実施形態における優先回路46の動作を説明する。
優先回路46は、同一のフレーム生成周期において2以上の指令信号g¥#が変化した場合、及び、指令信号g¥#の変化をフレームに反映し終わっていないときに指令信号g¥#が変化した場合に、その変化の順序を優先順序として設定する。つまり、先に変化した指令信号g¥#の優先順序を高く設定し、遅れて変化した指令信号g¥#の優先順序を低く設定する。
また、優先回路46は、第1実施形態と同様に、指令信号g¥#のうち、同じ相の上アーム側の指令信号g¥pと下アーム側の指令信号g¥nとが共に変化した場合に、立ち下がり信号の優先順序を高く、立ち上がり信号の優先順序を低く設定する。
本実施形態におけるエンコーダ41の動作を表すタイミングチャートを図8に示す。
時刻T21において、指令信号gupがハイ状態からロー状態に、指令信号gunがロー状態からハイ状態に変化する。この場合、同じ相の上アーム側及び下アーム側の指令信号g¥p,g¥nが共に変化しているため、立ち下がり変化が生じている指令信号gupの優先順序を指令信号gunの優先順序より高く設定する。そして、指令信号gupの変化をシフトレジスタ42に反映させる。
時刻T22において、指令信号gunの変化がシフトレジスタ42に反映されるより前に、指令信号gwpがハイ状態からロー状態に、指令信号gwnがロー状態からハイ状態に変化する。この場合、同じ相の上アーム側及び下アーム側の指令信号g¥p,g¥nが共に変化しているため、立ち下がり変化が生じている指令信号gwpの優先順序を指令信号gwnの優先順序より高く設定する。
時刻T23において、優先順序に基づいて、指令信号gunの変化がシフトレジスタ42に反映される。時刻T24において、優先順序に基づいて、指令信号gwpの変化がシフトレジスタ42に反映される。時刻T25において、指令信号gwnの変化がシフトレジスタ42に反映されるより前に、指令信号gvpがハイ状態からロー状態に、指令信号gvnがロー状態からハイ状態に変化する。この場合、同じ相の上アーム側及び下アーム側の指令信号g¥p,g¥nが共に変化しているため、立ち下がり変化が生じている指令信号gvpの優先順序を指令信号gvnの優先順序より高く設定する。
指令信号g¥#の変化の順序に基づいて、指令信号g¥#の優先順序を設定することで、実際に変化した指令信号g¥#の順序に応じて、各スイッチング素子S¥#に供給される指令信号g¥#を変化させることができる。また、この構成では、シフトレジスタ42の更新周期より早いタイミングで、指令信号g¥#が変化した場合であっても、その変化を反映して各指令信号g¥#の伝送を行うことが可能になる。
(他の実施形態)
・上記実施形態における技術は、上記実施形態における三相交流式のインバータINVに限られるものではなく、複数のスイッチング素子を備える電力変換装置に対して適用可能である。例えば、AC/DCコンバータに用いられるものであってもよい。また、DC/DCコンバータに用いられるものであってもよい。
・上記実施形態では、指令信号g¥#の変化又はフレームの生成などの所定の条件が成立した場合に、優先順序を変更する構成としたが、これを変更し、優先順序を固定するものであってもよい。
・上記実施形態では、マイクロプロセッサユニット50がデッドタイムDTを設ける構成としたが、これを省略してもよい。この場合であっても、同一のフレーム生成周期において複数の指令信号g¥#が変化した場合に、フレームの生成ごとに1の指令信号g¥#の変化をフレームに反映させる構成とし、かつ、同一相の指令信号g¥#の変化において立ち下がり変化を優先してフレームに反映する構成とすれば、同一相のスイッチング素子S¥p,S¥nが共にオン状態となることを抑制することができる。
・同一のフレーム生成周期において、2以上のスイッチング素子S¥#の状態が切り替わるような指令信号g¥#がエンコーダ41に入力された場合に、エンコーダ41は、状態が切り替わるように指示されたスイッチング素子S¥#のうちいずれか1の状態を順次切り替えるようにフレームを生成する構成としたが、これを変更してもよい。複数のスイッチング素子S¥#の状態が切り替わるような指令信号g¥#がエンコーダ41に対して入力された場合に、エンコーダ41は、状態が切り替わるように指示されたスイッチング素子S¥#のうち予め定めた所定個数のスイッチング素子の状態を順次切り替えるようにフレームを生成する構成としてもよい。例えば、同一のフレーム生成周期において、3以上のスイッチング素子S¥#の状態が切り替わるような指令信号g¥#がエンコーダ41に対して入力された場合に、エンコーダ41は優先順序に従って、状態が切り替わるように指示されたスイッチング素子S¥#のうち2のスイッチング素子の状態を順次切り替えるようにフレームを生成する構成としてもよい。このように同時に状態が変化するスイッチング素子S¥#の個数を制限することで、重畳的に生じるサージ電流や、出力電力の波形歪みなどの問題が生じることを抑制できる。