以下に、本発明を実施するための形態について、適宜図面を用いながら説明する。なお、本明細書における前後方向、上下方向、左右方向などの方向は、図1などに示したXが前方向、Yが左方向、Zが上方向と規定される。例えば、通常、ヘッドレスト2を乗物用シート1に装着した際に乗員が着座した際に視界に入るほうが前方で、視界に入らない後頭部側が後方となる。
本実施の形態における乗物用シート1は車両に適用されるものである。乗物用シート1は、主に乗員の大腿部と対向することになる支持面を備えるシートクッション4と、シートクッション4に対して傾動可能であり主に乗員の背中と対向することになる支持面を備えるシートバック3と、シートバック3に接続され主に乗員の頭部PHと対向することになるヘッドレスト2と、を備えている。
ヘッドレスト2はシートバック3に対して接続されて所定の位置で固定されるベース部21と、ベース部21に対して摺動可能に取り付けられる可動部22と、を備えるものである。可動部22は、乗員の頭部PHと接することが可能な当接面229を備えるものである。また、可動部22には係合部223が設けられており、ベース部21には係合部223と係合可能な被係合部212が備えられている。本実施の形態のヘッドレスト2は、前記係合部223と被係合部212を利用して、ベース部21に対して可動部22が相対的に移動することを抑制するロック状態と、当該ロック状態が解除されたアンロック状態とを切り替えることが可能なものである。例えば、ロック状態であると、ベース部21に対して可動部22が移動することが抑制されているため、図2の実線で示す状態が維持される。一方、アンロック状態であると、ベース部21に対して可動部22が相対的に移動することが可能となるため、図2の二点差線で示すように、ベース部21に対して可動部22が上方に移動することが可能となる。
上記説明はベース部21が動かずに可動部22が動く場合を想定して説明しているが、可動部22が移動しない場合を想定すれば、本実施の形態のヘッドレスト2であると、ベース部21が下方に移動可能な構成であると言える。なお、可動部22には骨格を形成するフレーム部221などを覆うようにパッド部材75と表皮76が備えられている(図3〜5参照)。パッド部材75は、乗物用シート1において一般的に使用されている部材である、弾力のある発泡ウレタンを使用している。また、表皮76については可撓性の布材を使用している。
係合部223がベース部21に係合している状態であって、可動部22の移動が規制されている状態における可動部22とベース部21との相対的な位置関係を本明細書では初期状態と称し、初期状態における可動部22の位置を初期位置と称することにする。また、初期状態における係合部223の位置をロック位置と称することにする。
本実施の形態のヘッドレスト2は、ロック位置にある係合部223を後方に移動させることで、ロック状態からアンロック状態とすることが可能なものである。また、本実施の形態のヘッドレスト2は、係合部223を後方に向けて移動させる場合に、弾性力により前方側に移動するように付勢されるものである。したがって、係合部223を後方側に移動させるには、当該弾性力に抗して移動させる必要がある。
本実施の形態のヘッドレスト2には係止機構が設けられており、所定の条件が揃う際に、係合部223をロック位置よりも後方に位置することを維持させることが可能なものである。つまり、係止機構は、所定の条件が揃えば、係合部223にかけられる弾性力に抗して係合部223を所定の位置で固定することが可能なものである。
本実施の形態のヘッドレスト2は、後突時に乗員の頭部PHがヘッドレスト2の可動部22に設けられた当接面229に衝突することにより、係合部223がフレーム部221に対して変位し、係合部223と被係合部212との係合状態が解除されるものである。
本実施の形態のヘッドレスト2であると、係合状態が解除されたヘッドレスト2は、ベース部21に対して可動部22が初期位置から上方に移動可能な構成とされている。図2においては、実線の状態が可動部22が初期位置にある状態である。
以下に、実施例1について詳細に説明する。実施例1における乗物用シート1は、シートバック3に固定されるヘッドレスト2を備えるものである。ヘッドレスト2はシートバック3に固定されるベース部21と、ベース部21に対して摺動することが可能な可動部22を備えている。本実施例のベース部21は、棒状の金属を略U字形状としたヘッドレストステー211と、ヘッドレストステー211に固定される取り付け部材214を備えるものである。
本実施例における可動部22は、前側ケース71と後側ケース72に分けることが可能な樹脂製のケース部70と、ケース部70に被せることが可能な覆い部74とを備えている。覆い部74は弾力性のあるパッド部材75である発泡ウレタンと、パッド部材75の外側に位置する表皮76とを備えている。実施例1におけるケース部70は、ケース部70の骨格を形成するフレーム部221と、フレーム部221に支持された状態で撓むことが可能な撓み部222とで構成されている。
本実施例においては、後側ケース72と結合可能な前側ケース71に撓み部222を設けている。撓み部222は前側ケース71の略中央に設けられており、プレート状の受圧面61に対して受圧面61の左右両側にスリット64を設け、受圧面61の上下両側に脆弱部62を設けることで受圧面61が弾性的に変位可能なように構成されている。言い換えると、スリット64と脆弱部62で区画された部分が受圧面61である。当該受圧面61自身が大きく変形することは無いが、スリット64と脆弱部62が形成されることにより受圧面61が変位することを可能とした構造である(図3〜5参照)。本実施例においては脆弱部62と受圧面61とにより、撓み部222が形成されている。
本実施例における脆弱部62は、変形しやすい形状とするために断面視屈曲形状とするととともに、受圧面61よりも薄い構造としている。なお、脆弱部62の脆弱性を確保する手段は屈曲形状と厚みを併用することに限らず、形状だけで確保することや、厚みだけで確保することも可能である。また、使用する材質をフレーム部221よりも柔らかい材質のものとすることで脆弱性を確保することなども可能である。具体的には柔らかい材質としてエラストマー樹脂を採用することが可能である。
また、フレーム部221には、ヘッドレストステー211に対して摺動可能な摺動部位224を備えている(図6参照)。本実施例における摺動部位224は、後側ケース72の一部に設けられており、ヘッドレストステー211の上下方向に延びる部位に対して摺動可能に構成されている。また、摺動部位224はヘッドレストステー211の外周面に沿うように形成されており、横断面視凹形状の部分にヘッドレストステー211を嵌め込むことが可能な形態である。したがって、摺動部位224はヘッドレストステー211に隣接した状態を維持しながら摺動可能となっている。本実施例における摺動部位224はフレーム部221の一部として形成されるものであるため、十分な剛性を備えたものである。
通常時においては、可動部22がベース部21に対して摺動することが抑制されたロック状態とされている。当該ロック状態は、可動部22に備えた係合部223とベース部21に備えた被係合部212とが係合することにより行われている。特に、係合部223は可動部22に備えた撓み部222に設けられている。撓み部222はフレーム部221に対して弾性変形可能なものであるため、係合部223を変位させた場合に、係合部223に弾性力を与えることが可能となりうるものである。
本実施例においては、ベース部21に備えられた取り付け部材214により被係合部212が構成されている。また、撓み部222に付設され、側面視において略J字形状の部位が係合部223である。つまり、撓み部222に付設された略J字形状の係合部223と、ヘッドレストステー211に固定された取り付け部材214によりロック機構を形成している。本実施例の係合部223は、撓み部222と連結された略直線状の部位が被係合部212の上方に位置するように配置されている。上記ロック機構は、係合部223が前方に向けて移動して被係合部212に係合することにより、アンロック状態からロック状態とすることが可能なものである。逆に係合部223が後方に向けて移動して被係合部212との係合状態が解除されることにより、ロック状態からアンロック状態とすることが可能なものである。また、アンロック状態となった場合においては、主として可動部22が初期位置よりも上方に位置するように移動可能な構成となっている。
係合部223とブラケットとの係合状態が解除されると、ベース部21に対して可動部22が摺動することを規制されることが無くなり、可動部22が摺動可能な状態となる。この状態では、乗員の頭部PHの高さ位置が略そのままでベース部21が下方に移動したり、ベース部21の高さ位置が略そのままで乗員の頭部PHが上方に移動したりすることが可能となる。この場合、相対的には、ベース部21に対して可動部22が上方に移動したと捉えることが可能となる。
本実施例のヘッドレスト2は、係合部223をロック位置より後方に移動させることによりアンロック状態とすることが可能なものである。係合部223がロック位置より後方に移動した状態を維持可能とするために、ヘッドレスト2には係止機構が備えられている。本実施例の係止機構は、係合部223につながるように設けられた係止部225が後側ケース72に引っかかることが可能なように構成されているものである。係止部225が後側ケース72に引っかかった状態で係止することにより、係合部223がロック位置より後方に配置された状態を維持することが可能なものである。係止部225は、先端が下方に向けて屈曲した形状とされている。後側ケース72には、係止部225が引っかかることが可能な係止突部226が備えられている。当該係止突部226に係止部225が引っかかることで、係合部223に係る弾性力に抗して、所定の位置で係合部223を固定することが可能となる構成である。
係合部223をロック位置より後方に移動させた場合、撓み部222に発生する弾性力が係合部223を前方に移動させようとする。当該機能は、可動部22初期位置にある場合に、ロック状態にすることを容易にするという利点がある。しかし、係合部223を前方に戻そうとすることにより、可動部22が初期位置に無い場合であっても、係合部223がベース部21と当接する状態となりやすい。このため、係合部223とベース部21との間に摩擦力が発生するなど、可動部22を初期位置に戻しにくくする要因ともなり得る。
一方、係合部223がロック位置より後方に位置する状態が維持されていると、係合部223とベース部21との間に摩擦力が発生することを抑制することが可能となる。このため、重力や軽い付勢力が加わるだけで、初期状態に戻すことが可能となり得る。初期状態に戻らなかったとしても、初期状態に戻す際に必要な力を軽減することが可能となるため、比較的容易に初期状態に戻すことが可能となり得る。
本実施例における係止部225は、係合部223に金属製の板バネを固定することで形成されている。係止部225は、係合部223の下方に向けて伸びる係止基部225aと、係止基部225aの長手方向に対して交差するように延びるとともに先端が屈曲形成させた係止爪部225bを備えている。係止爪部225bは、係止基部225aに対して弾性的に変形することが可能に構成されている。
ヘッドレストステー211には、金属製の棒状部材216が左右方向に延びるように固定されている。当該棒状部材216には、金属板を屈曲することで成形した取り付け部材214が固定されている。本実施例においては、この取り付け部材214が被係合部212を形成するものである。取り付け部材214は、後方側に突き出した後方突部214aと、上方側に突き出した上方突部214bと、後方突部214aと、上方突部214bとを連結し側面視において略L字形状となる連結部214cを備えている。後方突部214aは、可動部22に備えられた係合部223と係合可能な部位である。上方突部214bは、係止爪部225bと当接可能な部位であり、係止爪部225bの状態を変化させることが可能なように構成されている。
次に、係止爪部225bと、係止突部226が係止される過程と、その状態が解除される過程について説明する。本実施の形態におけるロック状態においては、連結部214cと上方突部214bにより構成される凹み部214dに係止爪部225bの一部が入り込んでいる(図3参照)。係合部223が後方に移動すると係止爪部225bも後方に移動しようとするが、上方突部214bが存在することにより、自由に後方に移動することができない。したがって、係止爪部225bは、係止基部225aに対して弾性的に変形し、係止爪部225bの後端側が上方に移動する(図3、図4参照)。この状態であると、係止爪部225bは、後側ケース72の設けられた係止突部226と係止することは無い。したがって、係合部223が前方に移動すると、再び図3に示したロック状態に復元することが可能となっている。一方、係止爪部225bの後端側が上方に移動した状態から、可動部22が上方に移動するか、ベース部21が下方に移動すると、係止爪部225bと上方突部214bが相対的に移動する。したがって、弾性力がかかった状態である係止爪部225bは、元の状態に復元しようと変位する。その結果、係止爪部225bと係止突部226とは、係止状態となることが可能となる(図5参照)。
係止爪部225bと係止突部226とが係止した状態は、永続的に維持される必要性は無い。ロック状態に復元させることができるようにすることを考えると、所定の時点で、当該状態が解除されることが望ましい。本実施例の場合、例えば可動部22がベース部21に対して上方移動することで係止状態とされるが、その後、可動部22が下方移動することにより当該係止状態が、解除されうる構成である。より具体的には、本実施例の場合、係合部223が前方に移動した際に、係合部223と被係合部212とが係合可能な高さまで係合部223が到達した場合に当該係止状態が解除されうる構成である。
係止爪部225bと係止突部226とが係止した状態は、係止爪部225bが上方突部214bに当接し、係止爪部225bの後端側が上方に移動することで、解除される。係止状態が解除されれば、係合部223にかけられている弾性力により係合部223は前方に移動することとなり、係合部223と被係合部212とが係合したロック状態に復元する。
なお、本実施例のヘッドレスト2においては、弾性部材であるスプリング25を備えている。当該スプリング25は一端がベース部21と接続されており、他端が可動部22と接続されている構成である。より詳しくは、スプリング25の一端はヘッドレストステー211に固定した取り付け部材214に接続される構成である。このスプリング25は、可動部22が初期位置から上方に変位した場合に、可動部22を初期位置に向けて戻そうとする付勢力を発生させるものである。当該スプリング25により発揮される付勢力は、適度に発揮されるものが選択されており、乗員の頭部PHが上方に移動しようとする事象に併せて可動部22が上方に移動することを妨げないものの、乗員の頭部PHが可動部22から離れた場合には、可動部22を初期位置側に戻すこと、ひいては係合部223と被係合部212を係合状態とすること、ができるように付勢するものである。
次に、実施例のヘッドレスト2の可動部22が変位する過程を図を用いて説明する。乗員の頭部PHがヘッドレスト2に接触していないような通常状態においては、図3に示された状態となっている。可動部22に備えられた係合部223はベース部21に固定された取り付け部材214と係合した状態であり、可動部22がベース部21に対して相対的に移動することが規制されたロック状態である。この状態における可動部22の位置が初期位置である。乗物の後突などに起因して、可動部22の当接面229に対して乗員の頭部PHから所定値以上の荷重がかかると、図4に示すように、可動部22の撓み部222は後方にむかって撓むことになる。それに伴い撓み部222の背面側に位置する係合部223は後方にむかって変位することになり、係合部223と取り付け部材214との係合状態は解除されることになるため、可動部22がベース部21に対して相対的に移動することが可能となる。この状態においてシートバック3が後方に向けて倒れこむように移動すると、可動部22に対してベース部21が下方にむけて変位することになる(図5参照)。この際、係止機構が働き、係止部225がフレーム部221に係止されることになる。
可動部22とベース部21の相対移動は際限なくなされるわけではなく、係合部223の上面がヘッドレストステー211に接する状態が、可動部22がベース部21に対して最も上方に位置している状態である。この状態においてはベース部21と可動部22に繋がれているスプリング25が最も延びている状態である。延びたスプリング25は元の状態に復元しようとする力が働くものであり、係合部223が取り付け部材214に衝突する状態となることにより、係止部225がフレーム部221に係止されている状態が解除されるものである。このような動きにより、図3に示したように係合部223とブラケットが係合したロック状態となるものである。
なお、スプリング25による付勢力が無くても、重力により可動部22が下方に変位しようとはする。しかし、スプリング25による付勢力を利用すれば、初期状態に復元することがより効果的に行われうる。
次に、実施例の乗物用シート1の製造方法を説明するが、ヘッドレスト2以外は一般的な乗物用シート1と同様に製造すればよいため、ヘッドレスト2の製造方法を図7を参照しながら簡単に説明する。まず、ヘッドレストステー211に取り付け部材214を固定する。ポリアセタールを用いて形成された後側ケース72は上方から下方に向けて摺動させながらヘッドレストステー211に嵌め込む。後側ケース72と取り付け部材214を連結するように、スプリング25を取り付ける。その後、ポリアセタールを用いて形成された前側ケース71を後側ケース72に重ね合わせて固定する。前側ケース71と後側ケース72で構成されたケース部70に被せるように覆い部74を取り付けることで本実施例に用いられるヘッドレスト2が完成する。
実施例のヘッドレスト2は、シートバック3に固定されるベース部21と、前記ベース部21に対して相対移動可能である可動部22と、を備えるヘッドレスト2が取り付けられた乗物用シート1であって、前記可動部22に設けられた係合部223が前記ベース部21に設けられた被係合部212と係合することにより、可動部22がベース部21に対して相対移動することを抑制可能なロック状態とすることができるとともに、前記ロック状態の解除は、前記可動部22に働く弾性力に抗して前記係合部223を前記ロック状態における位置よりも後方に移動させることにより可能となる、ロック機構が備えられており、前記係合部223を前記ロック状態における位置よりも後方に位置させた状態を維持させることが可能な係止機構を備えている乗物用シート1である。したがって、係合部223がロック状態における位置よりも後方に位置させた状態を維持させることにより、ベース部21と係合部223との間に摩擦力などが発生することが抑制されうる。また、ロック状態が解除されて可動部22とベース部21が相対的に移動した後にも、可動部22をロック状態の位置に戻しやすくすることが可能となり得る。
また、前記係止機構は、可動部22とベース部21との相対的な位置が、ロック状態における可動部22とベース部21との相対的な位置とは異なる状態となることにより、前記係合部223を前記ロック状態における位置よりも後方に位置させた状態を維持させることが可能となる機構である。したがって、ロック状態における可動部22とベース部21との相対的な位置のままでは、係止機構により前記係合部223を前記ロック状態における位置よりも後方に位置させた状態を維持させることはない。したがって、何らかの事情により係合部223が後方に移動することがあっても、ロック状態における可動部22とベース部21との相対的な位置が変更されなければ、再びロック状態とすることが可能となり得るである。
また、前記係止機構は、前記可動部22に設けられた係止部225がベース部21に当接することに起因して、前記係合部223が前記ロック状態における位置よりも後方に位置することを維持させた状態を解除することが可能な機構である。したがって、乗員が意識せずとも、当該解除を行うことが可能となり得る。また、一度ロック状態が解除されても、乗員の手を煩わせずに、ロック状態に復元することが可能となり得る。
また、摺動部位224とは異なる位置に設けられた撓み部222が撓んでフレーム部221に対して相対移動させることによりロック状態を解除可能なため、ヘッドレストステー211と摺動部位224との間に大きな隙間が生じることが回避できるものとなる。そのため、可動部22が移動する際に、がたつきが発生することを抑制することが可能となる。また、摺動部位224とは離間した位置に設けられた撓み部222が撓むことによりロック状態を解除可能なため、可動部22が移動する際に、がたつきが発生することを抑制することが可能となる。摺動部位224の剛性は、撓み部222の剛性よりも高くしているため、撓み部222が撓んでも摺動部位224が撓まない状態とすることが可能となり、スムーズな摺動が妨げられることを抑制可能である。可動部22が初期位置より移動した際にも、初期位置側に向けた付勢力が働くため、可動部22を初期位置に戻すために必要な負担が抑制される。
また、実施例のヘッドレスト2であると上下方向に延びるスリット64を設けた構成であるため、受圧面61を大きくすることが可能であるとともに、撓み量を比較的大きくすることも可能である。更には、一体成形をすることによりケース部70に対してパッド部材75と表皮76とを一体化することが可能であるため、ヘッドレスト2の外形の選択肢を広げることが可能である。また、ヘッドレストステー211の一部により、可動部22が上方へ移動しすぎないようにすることが可能であるため、部品点数の削減を行うことが可能である。
また、可動部22が上方へ移動した際にも、スプリング25により初期位置に復元させようとする力が働くため、係合状態とする手間を削減することが可能となる。また、スプリング25から与えられる付勢力により係合状態とならなかったとしても、ヘッドレスト2の上方側から下方に向けて押し込むように荷重をかけることで係合状態とすることが可能であるため、比較的簡単に係合状態に戻すことが可能である。
また、後側ケース72の左右方向に設けた摺動部位224によりヘッドレストステー211を挟み込むように構成していることから、可動側ヘッドレスト2ががたつくことを抑制することが可能である。また、当該後側ケース72とは別に設けた前側ケース71に撓み部222を設ける構造であることから、剛性を高めたい部分と低めたい部分の使い分けを比較的容易に行うことが可能となる。更には、剛性が高く摺動抵抗が低い樹脂であるポリアセタール樹脂を用いて摺動部位224を構成していることから、摺動部位224とヘッドレスト2をスムーズに摺動させることが可能となる。
実施例2が実施例1と異なる点は、係合部223に設けられた係止部225に関する事項である。実施例1においては、樹脂製の係合部223に金属製の板バネを一体成型させたものであるが、実施例2における係止部225は係合部223と同じ樹脂からなるものである。当該構成とすれば、係止部225を構成する板バネを用意する必要性が無いため、部品点数の削減をすることが可能となる。樹脂部材の場合、常に屈曲させる力が働くと耐久性を高めることは難しいが、初期状態において係止部225を屈曲させないように形成しておけば、係合部223が後方に移動するまでは係止部225に力が働くことが抑制される。したがって、比較的耐久性のある構造とすることが可能となり得る。この際、係止爪部225bの先端に設けている屈曲形状の部位の高さが、係止突部226の高さと略一致するように設定することが望ましい。このようにすれば、係止状態において発生する係止爪部225bに対する負荷を軽減することが可能となる。
以上、二つの実施例を用いて実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態のほか、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、可動部が主に初期位置より上方に移動可能な構成とすることに限らず、初期位置より下方に移動可能な構成とすることも、初期位置から上方及び下方の双方に移動可能な構成とすることも可能である。前者の場合、例えば実施の形態における係合部を構成する略J字形状の部位の向きを上下逆にするとともに初期位置から下方側に移動できるスペースを確保すればよい。後者の場合、例えばベース部に設けられるブラケットに係合部と係合可能な凹凸形状を設けたうえで上下方向に延びるように配置し、係合部の向きをそれに併せて実施例で示した態様よりも90度向きを変えるように構成し、上下に移動できるスペースを確保する構成とすればよい。
また、受圧面の周囲に設けられるスリットは、長手方向が上下方向となることに限らず、左右方向にすることも可能である。より具体的には、脆弱部を受圧面の左右側に配置し、受圧面の上下側にスリットを設ける構成とすることが可能である。なお、スリットの長手方向を斜め方向に設けることも可能であり、その場合に脆弱部の長手方向を斜め方向にすることも可能である。なお、スリットの個数は二つに限らず、一つだけや三つ以上とすることも可能である。また、スリットの形状は直線的な形状で無く曲線的な形状とすることも可能である。
また、後側ケースに摺動部位を備える構成とする必要性は無く、前側ケースに摺動部位を備える構成とすることも可能である。更には、ケース部を前側後側で分割しない構成とすることも可能である。この場合、ケース部を上下に分割する構成などを採用すれば、摺動部位が断面視略C字形状ではなく、断面視略O字形状等の筒形状とすることも可能である。
また、ケース部やフレーム部などを形成する材質は、実施例などに記載した樹脂に限ることは無く、樹脂で形成するものに限ることもない。全体的若しくは部分的に金属を用いたものとすることも可能である。
また、ロック機構は係合部と取り付け部材が係合する形態であることに限る必要性は無く、係合部がヘッドレストステーに係合する形態とすることも可能である。この場合、ヘッドレストステーの上部に位置する略左右方向に延びる部位に対して係合部が係合する形態とすることなども可能である。
また、係止部は、係合部に取り付けられている態様に限ることは無い。例えば、撓み部に対して係止部を設けることも可能である。
また、乗物としては、車両であることに限らず、飛行機やヘリコプターなど空中を飛行する乗物や、船舶や潜水艇など海面や海中などを移動する乗物としてもよい。