図1は、本発明の一の実施の形態に係るゲート交換方法が実施されるダム9の平面図である。図2は、ダム9を下流側から見た背面図である。図3は、ダム9を図1中のA−Aの位置にて切断した拡大断面図である。図3では、断面よりも手前または奥の構造も併せて描いている。
図1ないし図3に示すように、ダム9は、コンクリート等にて形成されたダム堤体91と、ダム堤体91の上流側に位置する貯水池6とを備える。ダム堤体91は、堤体本体92と、複数のコンクリートピア93(以下、単に「ピア93」という。)と、複数のクレストゲート94と、天端部98とを備える。複数のピア93は、堤体本体92の頂部近傍において、上流側から下流側を見た場合の左右方向に配列される。各ピア93は、堤体本体92の頂部近傍から下流側へと拡がる厚板状の部材である。
図3に示すように、ピア93の下流側の面である下流端面931は、第1傾斜面932と、中間水平面933と、第2傾斜面934とを備える。第1傾斜面932は、ピア93の上端部から下方に向かうに従って下流側へと拡がる。中間水平面933は、第1傾斜面932の下端から略水平に下流側へと拡がる。第2傾斜面934は、中間水平面933の下流側端部から下方に向かうに従って下流側へと拡がる。換言すれば、各ピア93の下流端面931には段差部が設けられる。複数のピア93の中間水平面933は、互いにおよそ同じ高さに位置する。
図1ないし図3に示すように、複数のピア93の間には複数のクレストゲート94が設けられる。各クレストゲート94は、左右方向にて隣接する2つのピア93の間において、所定の設置位置に配置されている。天端部98は、複数のピア93の上方において、堤体本体92の左右方向の略全長に亘って延びる。換言すれば、天端部98は、複数のピア93の上端部を連結する構造物である。天端部98は、複数のピア93の上端部(上流側の端部でもある。)により支持される。天端部98は、複数のクレストゲート94を開閉するための開閉機構981等を収容する建屋982を備える。複数のクレストゲート94は、天端部98の略鉛直下方に位置する。
図3に示すように、各クレストゲート94は、扉体95と、脚部96と、回転軸97とを備えるラジアルゲートである。扉体95は、貯水池6の水位が比較的高い場合に、左右両側のピア93の間において貯水池6の水に接する。扉体95の下端部が堤体本体92に接することにより、貯水池6の水がピア93間から流出することを防止する。脚部96は、扉体95から下流側に延びる。脚部96の下流側の端部は回転軸97に接続される。回転軸97は、左右両側のピア93に取り付けられる。扉体95は、上述の開閉機構981により、脚部96と共に回転軸97を中心として回転する。扉体95が、図3に示す状態から図中の時計回りに回転することにより、扉体95の下端部が堤体本体92から離間してクレストゲート94が開放される。これにより、扉体95と堤体本体92との間から、貯水池6の水が下流側へと放出可能となる。
扉体95は、スキンプレート951と、第1横主桁952と、第2横主桁953と、複数のトラス材954とを備える。スキンプレート951は、上流側に向かって凸となる円弧部である。スキンプレート951の上流側の面は、回転軸97を中心軸とする略円筒面の一部である。第1横主桁952および第2横主桁953はそれぞれ、スキンプレート951のおよそ全幅に亘って左右方向に延びる強度部材である。第1横主桁952は、スキンプレート951の下流側の面に固定される。第2横主桁953は、第1横主桁952の上方にて、スキンプレート951の下流側の面に固定される。複数のトラス材954は、第1横主桁952と第2横主桁953との間に設けられる。第1横主桁952および第2横主桁953は、脚部96に接続される。
次に、本実施の形態に係るゲート交換方法の流れについて、図4ないし図23を参照しつつ説明する。図4は、ゲート交換方法の流れを示す図である。図5は、ダム9の平面図である。図6および図8は、ダム9を下流側から見た背面図である。図7は、ダム9を図5中のB−Bの位置にて切断した拡大断面図である。図9、図10、図12、図14、図22および図23は、ダム9を図8中のC−Cの位置にて切断した拡大断面図である。図7、図9、図10、図12、図14、図22および図23では、断面よりも手前または奥の構造も併せて描いている。図11、図13および図15は、ゲート交換方法の流れの一部を示す図である。図16ないし図21は、組み立て途上の扉体95を上流側から見た正面図である。
当該ゲート交換方法では、まず、図5ないし図7に示すように、複数のピア93のそれぞれの下流端面931にレール支持部11が設置される。レール支持部11は、例えば、各ピア93の中間水平面933上に設けられる。続いて、複数のレール支持部11上に、左右方向に略直線状に延びるレール12が設置される(ステップS11)。図5では、レール12を太実線にて描く(図6および図8においても同様)。レール12は、複数のピア93の下流端面931において複数のピア93に沿って略水平に延びる。レール12は、ダム9の右岸(図5中の左側の岸)から左岸に向かって、ダム堤体91の左右方向の略全長に亘って延びる。
図7に示すように、各ピア93の中間水平面933は、クレストゲート94の回転軸97よりも上方に位置する。したがって、レール支持部11およびレール12も、各クレストゲート94の回転軸97よりも上方に位置する。換言すれば、レール支持部11およびレール12は、複数のクレストゲート94が開放される際の開口最上端(すなわち、扉体95の下端)よりも上方に配置される。
次に、図6に示すように、自走式ジブクレーン13(以下、単に「ジブクレーン13」ともいう。)および搬送台車14が、レール12上に移動可能に設置され、搬送台車14がジブクレーン13に接続される(ステップS12)。図6では、ジブクレーン13は、ダム9の右岸に配置され、搬送台車14は、ジブクレーン13の左岸側に配置される。
ジブクレーン13は、アーム131(「ジブ」ともいう。)と、クレーン駆動部132と、ベース部133とを備える。ベース部133は、レール12に接する複数の車輪を備える。ジブクレーン13は、クレーン駆動部132によりベース部133の複数の車輪が駆動されることにより、レール12上を自力走行(すなわち、自走)することができる。アーム131は略水平に旋回可能であり、アーム131の傾斜角も変更可能である。搬送台車14も、レール12に接する複数の車輪を備える。搬送台車14は、駆動部を有していないため自力走行はしない。搬送台車14は、ジブクレーン13の移動に伴ってレール12上を移動する。なお、搬送台車14にも駆動部が設けられ、搬送台車14がジブクレーン13から独立してレール12上を自力走行してもよい。搬送台車14上には、ゲート交換工事に利用される機材等が積載される。
搬送台車14がジブクレーン13に接続されると、予備ゲートを構成する複数の予備ゲート分割部材、および、既設のクレストゲート94を撤去するための作業足場、ゲート受架台および補助レール等が、搬送台車14に積載される。続いて、ジブクレーン13が自走することにより、ジブクレーン13および搬送台車14が、レール12に沿って左岸に向かって移動する。ジブクレーン13および搬送台車14は、図8に示すように、交換される予定の既設のクレストゲート(以下、「被交換ゲート94a」という。)近傍に配置される(ステップS13)。例えば、ジブクレーン13は、被交換ゲート94aに左右方向にて隣接する他のクレストゲート94の下流側に位置し、搬送台車14は、被交換ゲート94aの下流側に位置する。
ジブクレーン13が被交換ゲート94a近傍に配置されると、ジブクレーン13により、搬送台車14上の予備ゲート分割部材81が吊り上げられ、図9に示すように、天端部98の建屋982を越えて、天端部98の上流側へと運ばれる。予備ゲート分割部材81は、略平板状の部材であり、被交換ゲート94aの左右両側のピア93の上流側に設けられた予備ゲート挿入溝935に上側から挿入される。複数の予備ゲート分割部材81が、予備ゲート挿入溝935に挿入されて上下方向に配列されることにより、図10に示すように、被交換ゲート94aの上流側に予備ゲート82が設置される(ステップS14)。これにより、被交換ゲート94aの周囲の空間が、貯水池6から隔離される。被交換ゲート94aと予備ゲート82との間に水が存在する場合、被交換ゲート94aが開放されて当該水が排出されることにより、被交換ゲート94aの周囲の空間がドライな空間となる。
予備ゲート82が設置されると、隣接する2つのピア93の間において、ジブクレーン13を利用して、被交換ゲート94aの下方に補助レール71が設けられる(ステップS15)。補助レール71の設置時には、被交換ゲート94aが回転し、扉体95が堤体本体92から上方に離間した位置に配置される。補助レール71は、堤体本体92上に設置され、被交換ゲート94aの扉体95が設置される位置(後述する新規ゲート94bの扉体95が設置される予定の位置でもある。)から下流側へと延びる。補助レール71上には、ゲート受架台72がジブクレーン13を利用して設置される(ステップS16)。ゲート受架台72は、上流側から下流側へと延びる補助レール71に沿って上流側へと移動され、二点鎖線にて示すように、被交換ゲート94aを支持する。また、補助レール71の周囲には、図示省略の作業足場が設けられる。
補助レール71等が設けられると、ジブクレーン13を利用して被交換ゲート94aの撤去が行われる(ステップS17)。図11は、ステップS17の詳細な流れを示す図である。ステップS17では、まず、被交換ゲート94aの脚部96および回転軸97が、ジブクレーン13により吊り上げられて撤去される(ステップS171)。脚部96は、ジブクレーン13にて吊り上げ可能な大きさおよび重量の部材となるように切断された後に撤去される。撤去された脚部96は、搬送台車14(図8参照)上に積載される。
脚部96が撤去されると、扉体95がゲート受架台72と共に、天端部98の下方の扉体設置位置から下流側へと補助レール71に沿って移動される(ステップS172)。これにより、図12に示すように、扉体95は天端部98よりも下流側に位置するため、ジブクレーン13による扉体95に対する作業が可能となる。扉体95は、ジブクレーン13にて吊り上げ可能な大きさおよび重量の複数の部材に分割された後、ジブクレーン13により順次吊り上げられて撤去される(ステップS173)。撤去された扉体95は、搬送台車14上に積載される。
ステップS17における被交換ゲート94aの撤去が終了すると、ジブクレーン13が自走することにより、ジブクレーン13および搬送台車14が、レール12に沿ってダム9の右岸へと移動する。これにより、撤去された被交換ゲート94aが、設置位置近傍から搬出される(ステップS18)。そして、図6に示すダム9の右岸において、分割された被交換ゲート94aが搬送台車14上から下ろされる。
続いて、上記設置位置に設置される予定の新たなクレストゲート(以下、「新規ゲート」という。)が、ジブクレーン13により吊り上げられて搬送台車14に積載される。具体的には、組み立てられることにより新規ゲートになる予定の複数の中間部材が、搬送台車14に積載される。そして、ジブクレーン13が自走することにより、ジブクレーン13および搬送台車14が、レール12に沿って左岸に向かって移動し、当該複数の中間部材が設置位置近傍へと搬送されて準備される(ステップS19)。ジブクレーン13および搬送台車14は、例えば、予備ゲート分割部材81の搬送時と同様に、図8に示す位置に位置する。
新規ゲートは、被交換ゲート94aと略同様の構造を有するラジアルゲートである。具体的には、新規ゲートも、図3に示すクレストゲート94と同様に、扉体95と、脚部96と、回転軸97とを備える。扉体95は、スキンプレート951と、第1横主桁952と、第2横主桁953と、複数のトラス材954とを備える。新規ゲートの上記複数の中間部材は、スキンプレート951を分割した複数の分割部材(以下、「プレート分割部材」という。)を含む。複数のプレート分割部材は、スキンプレート951を、スキンプレート951の上下方向の全長に亘って延びる分割線(以下、「縦分割線」という。)にて左右方向に分割したものである。好ましくは、スキンプレート951は、縦分割線のみにて分割される。プレート分割部材等の詳細については後述する。上記複数の中間部材は、また、第1横主桁952、第2横主桁953、および、複数のトラス材954を、それぞれ分割されていない状態で含む。
新規ゲートが設置位置近傍へと搬送されると、ジブクレーン13を利用して新規ゲートが設置位置に設置される(ステップS20)。図13は、ステップS20の詳細な流れを示す図である。ステップS20では、まず、図14に示すように、補助レール71の下流側の位置(すなわち、天端部98下方の扉体設置位置よりも下流側の位置)に配置されたゲート受架台72上において、新規ゲートになる予定の上記複数の中間部材が、ジブクレーン13を利用して組み立てられる。これにより、新規ゲート94bの扉体95が形成される(ステップS201)。
図15は、ステップS201の詳細な流れを示す図である。ステップS201では、まず、図16に示すように、上下方向に垂直な左右方向(扉体95の横方向でもある。)に延びる第1横主桁952が、ジブクレーン13(図14参照)により吊り上げられてゲート受架台72により支持される(ステップS311)。以下のステップS312〜S319における作業も、ステップS311と同様に、ジブクレーン13が利用される。
続いて、上下方向(扉体95の縦方向でもある。)に略直線状に延びる中央治具73が、ゲート受架台72および第1横主桁952に溶接等により取り付けられる(ステップS312)。中央治具73は、第1横主桁952の左右方向の中央部において、第1横主桁952と交差する。また、上下方向に略直線状に延びる側方治具74が、ゲート受架台72および第1横主桁952に溶接等により取り付けられる(ステップS313)。側方治具74は、第1横主桁952の左右方向の一方側(すなわち、図16中の左側)の部位において、第1横主桁952と交差する。図16に示す例では、側方治具74は、中央治具73よりも図中の左側において第1横主桁952の左端部近傍の部位と交差する。なお、中央治具73の取り付け(ステップS312)と側方治具74の取り付け(ステップS313)とは、どちらが先に行われてもよく、並行して行われてもよい。
中央治具73および側方治具74の取り付けが終了すると、トラス材954がジブクレーン13により吊り上げられ、図17に示すように、中央治具73と側方治具74との間において、第1横主桁952上に配置される。トラス材954の下端部は、溶接等により第1横主桁952上に固定される(ステップS314)。トラス材954の固定が終了すると、左右方向に延びる第2横主桁953がジブクレーン13により吊り上げられ、第1横主桁952および上記トラス材954の上方において、中央治具73、側方治具74およびトラス材954により支持される。図17に示す例では、中央治具73の上端部が、第2横主桁953の左右方向の中央部と交差し、側方治具74の上端部が、第2横主桁953の左端部近傍の部位と交差する。そして、第1横主桁952上に固定されたトラス材954の上端部が、第2横主桁953の下部に溶接等により固定される(ステップS315)。
第2横主桁953と上記トラス材954との固定が終了すると、他のトラス材954がジブクレーン13により吊り上げられ、図18に示すように、中央治具73よりも左右方向の他方側(すなわち、図18中の右側)において、第1横主桁952と第2横主桁953との間に配置される。当該他のトラス材954の下端部は、第1横主桁952上に溶接等により固定される。また、当該他のトラス材954の上端部は、第2横主桁953の下部に溶接等により固定される(ステップS316)。これにより、ゲート受架台72上において、第1横主桁952、トラス材954および第2横主桁953が安定して支持される。
次に、スキンプレート951を上述の縦分割線にて分割した複数のプレート分割部材のうち、図19に示すように、第1のプレート分割部材955aがジブクレーン13により吊り上げられ、第1横主桁952および第2横主桁953の左右方向の上記他方側の端部に配置される。スキンプレート951は、左右方向に並ぶ3本の縦分割線にて、4つのプレート分割部材に分割されている。第1のプレート分割部材955aの上流側には、転倒防止治具75が設けられる。第1のプレート分割部材955aは、溶接等により、第1横主桁952および第2横主桁953の右側の端部近傍に固定される(ステップS317)。
第1のプレート分割部材955aの固定が終了すると、側方治具74が、第1横主桁952、第2横主桁953およびゲート受架台72から取り外されて撤去される。そして、図20に示すように、第2のプレート分割部材955bがジブクレーン13により吊り上げられ、第1横主桁952および第2横主桁953の左右方向の上記一方側の端部(すなわち、第1のプレート分割部材955aの配置位置とは反対側の端部)に配置される。第2のプレート分割部材955bの上流側にも、転倒防止治具75が設けられる。第2のプレート分割部材955bは、溶接等により、第1横主桁952および第2横主桁953の左側の端部近傍に固定される(ステップS318)。
第2のプレート分割部材955bの固定が終了すると、中央治具73が、第1横主桁952、第2横主桁953およびゲート受架台72から取り外されて撤去される。そして、図21に示すように、第3のプレート分割部材955cおよび第4のプレート分割部材955dが、ジブクレーン13により第1横主桁952および第2横主桁953の左右方向の中央部に順次配置され、第1横主桁952および第2横主桁953の中央部に溶接等により固定される(ステップS319)。
このように、ステップS311〜S319により、4つのプレート分割部材955a〜955dは、左右方向に配列されるとともに第1横主桁952および第2横主桁953に固定される。その後、左右方向にて隣接する各2つのプレート分割部材において、左右方向にて対向する側方エッジ同士が溶接により固定される。換言すれば、複数のプレート分割部材955a〜955dが、上述の複数の縦分割線956に沿って溶接される(ステップS320)。これにより、スキンプレート951が形成され、新規ゲート94bの扉体95の組み立てが終了する。ステップS311〜S320における扉体95の組み立て(すなわち、上記複数の中間部材の組み立て)は、補助レール71上の下流側の位置において行われる。
図13に示すステップS201における扉体95の組み立てが終了すると、扉体95(すなわち、組み立てられた新規ゲート94bの一部)が、ゲート受架台72と共に、補助レール71の下流側の位置から上流側へと補助レール71に沿って移動される。これにより、図22に示すように、扉体95が、天端部98の下方の扉体設置位置に設置される(ステップS202)。扉体95が扉体設置位置に設置されると、ジブクレーン13を利用して、図23に示すように、脚部96および回転軸97が扉体95に接続される(ステップS203)。これにより、新規ゲート94bの設置位置への設置が完了する。
新規ゲート94bの設置が終了すると、必要に応じて、新規ゲート94bを開閉するための開閉機構981等が、新たなものに交換される。開閉機構981等の交換は、ジブクレーン13を利用して行われる。また、ジブクレーン13を利用して、作業足場、ゲート受架台72および補助レール71等が、新規ゲート94bの設置位置近傍から撤去され、搬送台車14に積載される(ステップS21)。さらに、予備ゲート82の複数の予備ゲート分割部材81が、ジブクレーン13を利用して撤去され、搬送台車14に積載される(ステップS22)。そして、ジブクレーン13が自走することにより、図6に示すようにジブクレーン13および搬送台車14が、レール12に沿ってダム9の右岸へと移動する。これにより、撤去された作業足場、ゲート受架台72および補助レール71等が、設置位置近傍から搬出され、ダム9の右岸において搬送台車14上から下ろされる。ステップS11〜S22が複数のクレストゲート94に対して順次行われることより、複数のクレストゲート94の交換が実施される。
以上に説明したように、上述のゲート交換方法では、複数のピア93の下流端面931にレール12が設置され、ジブクレーン13をレール12に沿って移動させる(すなわち、自走させる)ことにより、ジブクレーン13が被交換ゲート94a近傍に配置される。そして、被交換ゲート94aがジブクレーン13を利用して撤去された後、新規ゲート94bがジブクレーン13を利用して設置位置に設置される。これにより、クレストゲート94の交換工事を安全かつ効率良く行うことができる。
具体的には、上述のゲート交換方法によれば、ケーブルクレーンにより交換工事を行う場合に比べて、吊り上げ荷重を大きくすることができる。このため、クレストゲート94の分割数を少なくすることができる。これにより、被交換ゲート94aの撤去、および、新規ゲート94bの設置に要する作業工数を低減し、クレストゲート94の交換工事の効率を向上することができる。また、ケーブルクレーンによる交換工事では、クレーンに吊り下げられた中間部材等を、ピア間の設置位置近傍までケーブルに対して略垂直に引き込む作業が必要になるため、安全性の向上に限界がある。一方、ジブクレーン13を利用する上記ゲート交換方法では、新規ゲート94bの中間部材等を設置位置近傍までジブクレーン13により移動することができるため、上述の引き込み作業が発生せず、安全性を向上することができる。
さらに、ケーブルクレーンによる交換工事では、ダム9近傍の地形等によりケーブルの設置が制限される可能性があるのに対し、ジブクレーン13を利用する上記ゲート交換方法では、レール12が複数のピア93の下流端面931に設置されるため、ダム9近傍の地形等により制限を受ける可能性が低い。
ジブクレーン13を利用する上記ゲート交換方法によれば、クレストゲート94の扉体設置位置の下流側に設けられる作業領域に、ジブクレーン13が下流側からアクセスすることができる。このため、ダムの天端部越しにアームを延ばして作業領域にアクセスする必要があるクレーン台船による交換工事に比べて、クレーンによる作業可能領域を大きくすることができ、その結果、クレストゲート94の交換工事の効率を向上することができる。また、ジブクレーン13を利用するゲート交換方法では、クレーン台船による交換工事に比べて、クレーンのアームを短くすることができるため、クレーンの大型化を抑制することができるとともにクレーンの吊り上げ荷重を大きくすることができる。さらに、クレーン台船による交換工事とは異なり、新規ゲート94bの中間部材等を水上輸送する必要がないため、部材の搬送時間を短縮することができ、その結果、クレストゲート94の交換工事の効率をより一層向上することができる。
ジブクレーン13を利用する上記ゲート交換方法では、クレーン台船による交換工事とは異なり、貯水池6の水位変動による影響をほとんど受けることなく、クレストゲート94の交換を行うことができる。また、レール12が、複数のクレストゲート94が開放される際の開口最上端よりも上方に配置されるため、レール12が設置された状態であっても、クレストゲート94からの放水が可能である。したがって、貯水池6の水位変動や放水等による工事の遅れを抑制することができ、クレストゲート94の交換工事の効率をさらに向上することができる。
上述のゲート交換方法では、ステップS13においてジブクレーン13が被交換ゲート94a近傍に配置されるよりも前に、搬送台車14がジブクレーン13に接続される(ステップS12)。また、ステップS20において新規ゲート94bが設置されるよりも前に、新規ゲート94bとなる予定の中間部材(例えば、上述のプレート分割部材955a〜955d)が搬送台車14に積載され、ジブクレーン13により搬送台車14が移動されることにより、当該中間部材がクレストゲート94の設置位置近傍へと搬送される(ステップS19)。このように、上述のゲート交換方法では、比較的大きい部材等を上記設置位置近傍から容易に搬出し、当該設置位置近傍へと容易に搬送することができるため、クレストゲート94の分割数を少なくすることができる。これにより、被交換ゲート94aの撤去、および、新規ゲート94bの設置に要する作業工数を低減し、クレストゲート94の交換工事の効率を向上することができる。
上述のゲート交換方法では、ステップS20において新規ゲート94bが設置されるよりも前に、クレストゲート94の扉体設置位置から下流側へと延びる補助レール71が設けられる(ステップS15)。また、ステップS20では、補助レール71上の下流側の位置において新規ゲート94bになる予定の中間部材が組み立てられて扉体95が形成され、当該扉体95が補助レール71に沿って上流側へと移動して扉体設置位置に設置される。これにより、新規ゲート94bの組み立てを、扉体設置位置よりも下流側の比較的広い作業領域にて行うことができる。このため、組み立て前の新規ゲート94bの分割数(すなわち、中間部材の数)を少なくすることができ、その結果、クレストゲート94の交換工事の効率を向上することができる。また、補助レール71が設けられることにより、組み立てられた扉体95を扉体設置位置へと容易に移動することができる。
さらに、新規ゲート94bの扉体95の組み立てが扉体設置位置よりも下流側、すなわち、天端部98の鉛直下方よりも下流側にて行うことができるため、扉体95の組み立てにおけるジブクレーン13の利用度を高くすることができる。これにより、新規ゲート94bの分割数をさらに少なくすることができる。このような新規ゲート94bの分割数の更なる低減とジブクレーン13の利用度増大により、クレストゲート94の交換工事の効率をより一層向上することができる。
上述のゲート交換方法では、新規ゲート94bとなる予定の中間部材が、円弧部であるスキンプレート951を上述の縦分割線956にて分割した複数のプレート分割部材955a〜955dを含む。このように、スキンプレート951を縦分割線956にて分割することにより、複数のプレート分割部材955a〜955dの溶接が容易となるため、所定の曲率を有する所望形状のスキンプレート951を容易に形成することができる。その結果、扉体95の組み立てを容易かつ高精度に行うことができる。また、扉体95の組み立てにおいて、それぞれ分割されていない第1横主桁952および第2横主桁953を、スキンプレート951に固定することができるため、扉体95の強度を容易に確保することができる。
上述のように、扉体95の組み立てでは、まず、複数のプレート分割部材955a〜955dと、第1横主桁952と、第2横主桁953と、複数のトラス材954とが準備される(ステップS19)。続いて、第1横主桁952がゲート受架台72により支持され、中央治具73および側方治具74が第1横主桁952に取り付けられる(ステップS311〜S313)。次に、トラス材954が第1横主桁952上に固定され、第2横主桁953がトラス材954の上端部に固定された後、他のトラス材954が第1横主桁952および第2横主桁953に固定される(ステップS314〜316)。そして、第1のプレート分割部材955aが第1横主桁952および第2横主桁953に固定され、側方治具74が取り外された後、第2のプレート分割部材955bが第1横主桁952および第2横主桁953に固定される(ステップS317,S318)。その後、中央治具73を取り外し、第3のプレート分割部材955cおよび第4のプレート分割部材955dが第1横主桁952および第2横主桁953に固定され、複数のプレート分割部材955a〜955dが複数の縦分割線956に沿って溶接される(ステップS319,S320)。
当該組立方法により扉体95が組み立てられることにより、所定の曲率を有する所望形状のスキンプレート951を、より一層容易に形成することができる。その結果、扉体95の組み立てをさらに容易かつ高精度に行うことができる。また、それぞれ分割されていない第1横主桁952および第2横主桁953を、容易にスキンプレート951に固定することができる。
上述の説明では、スキンプレート951は4つのプレート分割部材955a〜955dに分割されるが、スキンプレート951の分割数は4には限定されない。例えば、スキンプレート951は3つまたは5つ以上に分割されてもよい。この場合、上述のステップS319において、両端の2つのプレート分割部材955a,955b以外の残りのプレート分割部材が、第1横主桁952および第2横主桁953に固定される。
また、スキンプレート951は2つのプレート分割部材955a,955bに分割されてもよい。この場合、上述のステップS19では、第1のプレート分割部材955a、第2のプレート分割部材955b、第1横主桁952、第2横主桁953および複数のトラス材954を含む複数の中間部材が準備される。また、ステップS201では、ステップS311〜S320に代えて、図24に示すステップS411〜S418が実施される。図24に示すように、扉体95が組み立てられる際には、まず、ステップS311と同様に、第1横主桁952がゲート受架台72により支持される(ステップS411)。
続いて、上下方向に略直線状に延びる1本または複数の側方治具74が、ゲート受架台72および第1横主桁952に溶接等により取り付けられる(ステップS412)。側方治具74は、第1横主桁952の左右方向の一方側の部位(例えば、左側)にて第1横主桁952と交差する。側方治具74の取り付けが終了すると、第1横主桁952の左右方向の当該一方側において、第1横主桁952上にトラス材954の下端部が溶接等にて固定される(ステップS413)。そして、第1横主桁952および当該トラス材954の上方において、第2横主桁953が側方治具74にて支持され、トラス材954の上端部が溶接等にて第2横主桁953に固定される(ステップS414)。
第2横主桁953の固定が終了すると、第1横主桁952の左右方向の他方側(例えば、右側)において、第1横主桁952と第2横主桁953との間に他のトラス材954が配置される。当該他のトラス材954の下端部は、第1横主桁952上に溶接等により固定される。また、当該他のトラス材954の上端部は、第2横主桁953の下部に溶接等により固定される(ステップS415)。これにより、ゲート受架台72上において、第1横主桁952、トラス材954および第2横主桁953が安定して支持される。
次に、第1のプレート分割部材955aが左右方向の上記他方側に配置され、溶接等により、第1横主桁952および第2横主桁953の右半分の部位に固定される(ステップS416)。続いて、側方治具74が、第1横主桁952、第2横主桁953およびゲート受架台72から取り外されて撤去される。そして、第2のプレート分割部材955bが左右方向の上記一方側に配置され、溶接等により、第1横主桁952および第2横主桁953の左半分の部位に固定される(ステップS417)。その後、左右方向にて隣接する第1のプレート分割部材955aと第2のプレート分割部材955bとが縦分割線956に沿って溶接される(ステップS418)。これにより、スキンプレート951が形成され、新規ゲート94bの扉体95の組み立てが終了する。
ステップS411〜S418における扉体95の組み立て(すなわち、複数の中間部材の組み立て)も、上述のステップS311〜S320と同様に、補助レール71上の下流側の位置において行われる。組み立てられた扉体95は、上記と同様に、補助レール71に沿って上流側へと移動されて扉体設置位置へと設置される。
当該組立方法により扉体95が組み立てられる場合であっても、上記と同様に、所定の曲率を有する所望形状のスキンプレート951を容易に形成することができる。その結果、扉体95の組み立てを容易かつ高精度に行うことができる。また、それぞれ分割されていない第1横主桁952および第2横主桁953を、容易にスキンプレート951に固定することができる。
上述のゲート交換方法については、様々な変更が可能である。
例えば、上述のゲート交換方法は、ピア93の下流端面931に中間水平面933が設けられていない場合、すなわち、下流端面931全体が下方に向かうに従って下流側へと拡がる傾斜面である場合であっても適用することができる。この場合、例えば、各ピア93の下流端面931の適切な位置に、レール支持部11を設けるための加工が施される。
上述のステップS13における作業足場等の搬送では、搬送する部材の数や大きさに合わせて、ジブクレーン13が往復移動を繰り返して搬送を行ってもよい。ステップS18における被交換ゲート94aの搬出、および、ステップS19における新規ゲート94bの搬送においても同様である。
上記説明では、被交換ゲート94aと新規ゲート94bとは略同様の構造を有するが、新規ゲート94bは、被交換ゲート94aとは異なる構造を有するラジアルゲートであってもよい。
撤去された被交換ゲート94aの搬出や新規ゲート94bとなる予定の中間部材の搬送が、搬送台車14を使用することなく他の方法により行われる場合、搬送台車14が省略されてジブクレーン13のみがレール12上に設置されてもよい。
扉体設置位置に位置する被交換ゲート94aの扉体95に対してジブクレーン13での作業を行うことができる場合、あるいは、扉体設置位置における新規ゲート94bの扉体95の組み立てにジブクレーン13を利用することができる場合等、補助レール71は設けられなくてもよい。
ダムのラジアルゲートを交換する際に、被交換ゲート94aが設置される設置位置近傍において、被交換ゲート94aの撤去後に新規ゲート94bを組み立てるゲート組立方法として、上述のステップS15,S16,S19,S201(S311〜S320またはS411〜S418),S202が、自走式ジブクレーン13を利用することなく実施されてもよい。また、補助レール71も設けられることなく、上述のステップS19,S201(S311〜S320またはS411〜S418)が、上記ゲート組立方法として実施されてもよい。
上述の縦分割線956にてスキンプレート951を分割するゲート組立方法は、クレストゲート以外のラジアルゲートの交換の際に利用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。