JP6209934B2 - 光重合性インクジェットインク、インクカートリッジ、及び画像乃至硬化物の形成方法 - Google Patents
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Description
しかし、従来の光重合性インクジェットインクによる硬化物は、固いがもろい特性を示す場合が多かった。
また、硬化物の硬度を上げ、耐擦過性等の耐久性、成型加工性、又は艶の制御といった意匠性を付与するために、インクジェットインク中に炭酸カルシウム、硫酸バリウム、球状シリカ、中空シリカ等の体質顔料、樹脂ビーズ等のフィラー、樹脂成分を添加することが提案されている(特許文献2参照)。
前記第1のモノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記第2のモノマーが、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル))メチル(メタ)アクリレート、及び(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記第1のモノマーの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、50質量%以上であり、
前記第2のモノマーの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、30質量%以上であり、
前記シリカの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、5質量%〜10質量%である。
本発明の光重合性インクジェットインクは、重合性化合物及びシリカを少なくとも含有し、光重合開始剤及び顔料を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記重合性化合物は、第1のモノマーと、第2のモノマーとを含み、更に必要に応じてその他のモノマーを含む。
前記第1のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化物の硬度及び剛性の点から、イソボロニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかが好ましい。
前記第1のモノマーとしては、該モノマーの単独重合体のガラス転移温度(Tg)が90℃以上であるものが好ましい。
ここで、図4は、数種の単独重合体のガラス転移温度(Tg)が異なる重合性化合物Xと、テトラヒドロフルフリルメタクリレートとを50質量%ずつ処方し、光重合開始剤を加え、作製したインクジェットインクを用い、インクジェット吐出して作製したベタ状の硬化物を硬化させたときの硬化物の鉛筆硬度と、重合性化合物Xの単独重合体のガラス転移温度(Tg)との関係を示したものである。
図4の結果から、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が90℃以上である重合性化合物を用いることが有効であることがわかる。
前記第1のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、第1のモノマーのホモポリマーの硬化物のガラス転移温度を意味し、ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)法によって測定することができる。
前記第1のモノマーの含有量は、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、50質量%以上であり、50質量%〜70質量%が好ましく、50質量%〜60質量%がより好ましい。前記含有量を、50質量%以上とすることで、硬化させた硬化物の強度及び剛性を持たせることができ、鉛筆硬度が向上するという利点がある。
前記第2のモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル))メチルアクリレート(CHDOL−10、大阪有機化学工業株式会社製)、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)アクリレート(MEDOL−10、大阪有機化学工業株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、基材に対する硬化物の密着性の点から、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種が好ましい。
前記第2のモノマーは、基材を溶解可能なモノマーであり、基材との密着性を良好にすることができる。
前記第2のモノマーが、基材を溶解可能であることは、基材の表面にスポイトを用いて第2のモノマーを一滴垂らして1分間放置し、目視で基材が溶解したか否かを観察して判定することができる。
前記第2のモノマーの含有量は、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、30質量%以上であり、30質量%〜50質量%が好ましく、40質量%〜50質量%がより好ましい。
前記含有量を30質量%以上とすることで、充分に基材を溶解することができ、基材に対する硬化物の密着性を確保することができる。
なお、水酸基を持つモノマーは使用しないことが好ましいが、もし使用する場合は、前記水酸基を有するモノマーの含有量は、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、15質量%以下が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が更に好ましい。
前記含有量を、15質量%以下とすることで、タック性を発現しにくいという利点がある。
前記シリカは、硬化物の硬度を更に上げ、耐擦過性等の耐久性を持たせるために、添加される。
前記シリカの平均一次粒径は、30nm〜100nmが好ましい。前記平均一次粒径が、30nm未満であると、重合性化合物への分散性に劣ることがあり、100nmを超えると、インクジェット用ノズルの目詰まりや沈降の恐れがあり、硬化物が白濁し透明性が悪くなることがある。
前記シリカの平均一次粒径は、例えば、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用い、モノマーに分散したシリカ分散体を、アセトンを用い100倍に希釈することにより測定することができる。
前記シリカは、表面処理をされていないものが、重合性化合物への分散安定性の点で好ましい。表面処理は主に疎水性を付与する目的で行われており、表面処理していないものは比較的親水性を示す。複数種の疎水性の表面処理を施されたシリカと表面処理をされていないシリカとのを評価した結果、表面未処理のシリカの方が比較的モノマーへの分散安定性がよかった。
前記シリカの含有量は、少なすぎると硬化物の硬度が上がらず、多すぎるとインクの粘度が高くなりすぎてインクジェット用インクとして不適切である。ここで、図5は、硬化物の鉛筆硬度と、シリカ含有量との関係を示すグラフである。
前記シリカの含有量は、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、5質量%〜10質量%である。この範囲内において、インクジェットインクとしての適正粘度範囲において、硬化物の硬度向上が認められる。
前記シリカは、インクに用いる前記重合性化合物に分散してから配合することが好ましい。例えば、分散媒としてイソボロニルアクリレート:76質量%、シリカとして日本アエロジル社製、AEROSIL OX50:20質量%、分散剤としてLubrizol社製、SOLSPERSE32000:4質量%、としてロッキングミルにて4時間分散したものを用いることができる。前記分散媒は、上記に限るものではなく、インクに用いるモノマーの中から選択することができる。
前記光重合開始剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、及びビニルエーテル化合物は、カチオン重合性も有することが知られているが、前記光カチオン重合開始剤は一般に高価であるだけでなく、光を照射しない状態においてもわずかに強酸を発生させるため、インクジェットプリンタ内のインク供給経路において耐酸性を持たせるなどの特別な配慮が必要となる。そのため、インクジェットプリンタを構成する部材の選定に制約が生じる。これに対して、本発明の光重合性インクジェットインクでは、安価で強酸を発生しない光重合開始剤を使用することができるので、インクジェットインクを安価に製造することができ、インクジェットプリンタの部材選定も容易となる。もちろん、電子線やα、β、γ線、X線など非常に高エネルギーな光源を使用する場合においては、重合開始剤を使用せずとも重合反応を進めることができるが、これは従前より一般的に公知のことであり、本発明では特に詳細に説明しない。
前記重合促進剤としてアミン化合物を前記光重合開始剤と併用することもできる。
前記アミン化合物としては、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸−2−ジメチルアミノエチル、p−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルなどが挙げられる。
前記その他の成分としては、例えば、着色剤、重合禁止剤、界面活性剤、光増感剤、極性基含有高分子顔料分散剤などが挙げられる。
前記着色剤としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。なお、インクの物理特性などを考慮して必要に応じて種々の無機顔料や有機顔料が使用できる。
前記重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシ−1−ナフトール、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ジ−t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、p−ベンゾキノン、ジ−t−ブチルジフェニルアミン、9,10−ジ−n−ブトキシシアントラセン、4,4’−〔1,10−ジオキソ−1,10−デカンジイルビス(オキシ)〕ビス〔2,2,6,6−テトラメチル〕−1−ピペリジニルオキシなどが挙げられる。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級脂肪酸系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
前記希釈溶剤としては、沸点が160℃〜190℃の範囲にあるものが好ましい。前記沸点が、190℃を超えると、硬化性を阻害してしまうことがあり、160℃未満であると、乾燥してしまい、例えば、インクジェットのノズル内でインクが固まってしまうことがある。
前記希釈溶剤としては、例えば、エーテル、ケトン、芳香族、キシレン、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、モノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、乳酸エチル、シクロヘキサンメチルエチルケトン、トルエン、エチルエトキシプロピオネート、ポリメタアクリレート又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記25℃及び60℃粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計、VISCOMETER TV−22により、恒温循環水の温度を25℃及び60℃に設定して測定した。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM−150IIIを用いた。25℃という温度は一般的な室温環境を想定したものであって、60℃という温度は、例えば、リコープリンティングシステムズ社製GEN4など、加温可能な市販のインクジェット吐出ヘッドの仕様を想定したものである。
前記静的表面張力は、静的表面張力計(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z型)を使用し、25℃で測定した。前記静的表面張力は、例えば、リコープリンティングシステムズ社製GEN4など、市販のインクジェット吐出ヘッドの仕様を想定したものである。
前記平均一次粒径は、例えば、電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM−2010)を用いて測定することができる。
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記光重合性インクジェットインクと、容器とを含み、更に必要に応じて、インク袋などのその他の部材を含む。これにより、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好適である。
図1に示すように、インク注入口242からインクをインク袋241内に充填し、該インク袋中に残った空気を排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給する。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成する。そして、図2に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容し、インクカートリッジ200として各種画像乃至硬化物の形成装置(インクジェット記録装置)に着脱可能に装着して用いる。
本発明の画像乃至硬化物の形成方法は、インク吐出工程と、硬化工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の画像乃至硬化物の形成装置は、インク吐出手段と、硬化手段と、を少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記インク吐出工程は、光重合性インクジェットインクをインクジェット記録方式により基材の表面に吐出させる工程であり、インク吐出手段により実施される。
前記インク吐出手段としては、例えば、連続噴射型、オンデマンド型などが挙げられる。前記オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式又は静電方式、などが挙げられる。
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、紙、プラスチック、金属、セラミック、ガラス又はこれらの複合材料などが挙げられる。
これらの中でも、本発明の光重合性インクジェットインクは光照射により直ちに硬化するので、非浸透性の基材が好ましく、その中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、その他のポリエステル、ポリアミド、ビニル系の材料、又はこれらを複合した材料からなるプラスチックフィルムやプラスチック成型物がより好ましい。
前記基材としてポリカーボネートを用いる時には、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが、ポリカーボネートの溶解性が高いので好ましい。
前記基材としてアクリルを用いる時には、加えて更に、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが、アクリルの溶解性が高いので好ましい。
前記硬化工程は、前記基材の表面に吐出された光重合性インクジェットインクに活性エネルギー線を照射して硬化させる工程であり、硬化手段により行われる。
前記硬化手段としては、例えば、紫外線照射装置、などが挙げられる。
前記その他の工程及びその他の手段としては、例えば、搬送工程及び搬送手段、制御工程及び制御手段などが挙げられる。
図3は、印刷ユニット3[各色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の印刷ユニット3a、3b、3c、3dからなる]のそれぞれにより、被印刷基材供給ロール1から供給された被印刷基材2(図3の左から右へ搬送)に吐出された各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の印刷毎に、紫外線光源(硬化用光源)4a、4b、4c、4dから光照射(UV光)して硬化し、カラー印刷物を形成する例を示している。印刷ユニット3a、3b、3c、3dは、インク吐出部分においてはインクが液状化するように加温する機構を設けたものであり、基材保持部分(図3中基材の上側又は下側の部分)においては、必要に応じて接触又は非接触で基材を室温程度に冷却する機構を設けたものである。先に印刷する色の印刷面積が小さく搬送速度も遅い場合には、後から印刷する色に対しても自然放冷により基材は室温程度に保たれるが、先に印刷する色の印刷面積が大きかったり搬送速度が速かったりする場合には、基材温度が上昇してしまうため、必要に応じて、基材を室温程度に保持するための冷却機構を設けることが好ましい。
被印刷基材2としては、紙、フィルム、金属、又はこれらの複合材料等が用いられる。また、図3ではロール状の被印刷基材2を示しているが、シート状であってもよい。更に、片面印刷だけでなく両面印刷してもよい。
なお、図3中の5は加工ユニット、6は印刷物巻き取りロールである。
−光重合性インクジェットインクの調製−
表1〜表4に示す組成を常法により混合して、実施例1〜15及び比較例1〜6の光重合性インクジェットインクを作製した。
(A)成分のモノマーのガラス転移温度(Tg)はモノマーのホモポリマーの硬化物のガラス転移温度を指し、ここで、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)法によって、以下のようにして測定した。
硬化物の作製:安田精機製作所製No.6のバーコーターを用いて、基材上に塗工した。
硬化物の図柄:全面にベタ印字、厚みは約10μmであった。
基材:ポリカーボネートフィルム(PC)(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン100FE2000マスキング、厚み100μm)
硬化:フュージョンシステムズジャパン社製UV照射機LH6により、前記基材上に前記試験機によりインクジェット吐出して作製したベタ状の硬化物に対して、UV−A領域(波長350nm〜400nm)に相当する波長域において、段階的に照射する積算光量を変え、指触による官能評価にて手指に付着物のない状態となったことで硬化と判断し、硬化した状態で、ガラス転移温度の測定を行った。各ポリマーの硬化に必要な積算光量は、700mJ/cm2〜6,000mJ/cm2程度であった。
DSC装置としては、Seiko Instruments DSC120Uを用い、測定温度は30℃〜300℃、昇温速度は1分間に2.5℃とした。
基材の表面にスポイトを用いて、第2のモノマーを1滴垂らして1分間放置した後、繊維くずの出にくいワイパー(例えば、旭化成繊維株式会社製、ベンコットM−3II)を用いて第2のモノマーを拭き取り、目視と指触とで基材が溶解したか否かを判定した。
なお、溶解した基材は、第2のモノマーが接触していた部分に曇りが見られたり、指触で凹凸を感じられ、他の接触していなかった部分と比較して表面性が変化している。
なお、表1〜表4に示す、(B)のモノマーは、比較例6の1,3−ブチレングリコールジメタクリレートを除いて用いた基材を溶解可能であった。
フュージョンシステムズジャパン社製UV照射機LH6により、下記基材上に下記試験機によりインクジェット吐出して作製したベタ状の硬化物に対して、UV−A領域(波長350nm〜400nm)に相当する波長域において1,000mJ/cm2、500mJ/cm2、200mJ/cm2、100mJ/cm2、50mJ/cm2、20mJ/cm2、10mJ/cm2と段階的に照射する積算光量を変え、指触による官能評価にて手指に付着物のない状態となったことで硬化と判断し、硬化した状態で、以下の評価を行った。各例の硬化に必要な積算光量は、700mJ/cm2〜4,000mJ/cm2程度であった。
硬化物の作製:GEN4ヘッド(リコープリンティングシステムズ社製)搭載吐出試験機
硬化物の図柄:全面にベタ印字、厚み約20μm
基材:ポリカーボネートフィルム(PC)(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン100FE2000マスキング、厚み100μm)、アクリルフィルム(PMMA)(三菱レイヨン株式会社製、アクリプレンHBA002P、厚み125μm)。
バルク(ベタ状)硬化物の触感であり、下記3段階で評価した。
3:指触によりベタツキを感じない状態
2:指触により多少ベタツキを感じるが指触の跡が残らない状態
1:指触により痕跡が残る状態
基材との密着性であり、JIS K5400 碁盤目試験(旧規格)に準じて測定した。密着性が100とは、以下の密着性試験において、100個の碁盤目部分のうち、剥がれが一箇所もない状態、密着性が70とは剥がれていない部分が70箇所の状態である。
<<装置>>
・切込み工具:エヌティー株式会社製カッターナイフA−300
・ガイド及び等間隔スペーサー:コーテック株式会社製、碁盤目試験ガイド、CCJ−1(切込み間隔1mm)
・軟らかいはけ
・透明感圧付着テープ(以下、「テープ」と呼ぶ。):ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18
・ルーペ:東海産業株式会社製、Peakポケットマイクロスコープ25倍
平らな表面上に試験板を置き、前記切込み工具と等間隔スペーサーを用いて1mm間隔でカットした。各方向での切込み数は11個とする。すべての切込みは、基材の表面まで貫通していなければならない。
格子パターンが形成できるように、2回目の切込みは、90°で最初の切込みに重ね、11個の平行な切込みを行い、碁盤目部分が100個形成されるようにした。
試験板を軟らかいはけで格子パターンの双方の対角線に沿って、前後に数回ブラッシングした。
一定の速度でテープを取り出して、約75mmの長さの小片にカットした。テープの中心を、各カットの一組に平行な方向で格子の上に置き、格子の部分にかかった箇所と最低50mmを超える長さで、指でテープを平らになるようにした。塗膜に正しく接触させるために、指先でしっかりとテープをこすった。テープを通して見られる塗膜の色は、接触全体がきちんとしているかどうかを示す有効な目安である。テープを付着させてから1〜2分間後に、テープを引き剥がした。塗膜面に直角になるようテープの端をつかみ、瞬間的に引き剥がした。
ルーペを用いて、試験板と剥がしたテープとを観察し、剥がれが生じていない部分の数を数えた。
硬度:鉛筆硬度(延伸前)JIS K5600−5−4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じて測定した。
規定した寸法、形状及び硬度の鉛筆の芯を塗膜面で押しつけて動かした結果生じる傷跡又はその他の欠陥に対する塗膜の抵抗性を評価するものである。鉛筆の芯によって生じる塗膜面の欠陥には、いくつかの種類がある。その欠陥は次のとおり定義する。
(a)塑性変形:塗膜に永久くぼみを生じるが、凝集破壊はない。
(b)凝集破壊:表面に塗膜材質がとれた引っかき傷又は破壊が、肉眼で認められる。
(c)上記の組み合わせ:最終段階では、すべての欠陥が同時に生じることがある。
試験をする製品又は塗装系品を、表面の均質な平板に均一な膜厚に塗布した。乾燥/反応硬化の後に、水平な塗膜面に次第に硬度を増して鉛筆を押しつけることによって鉛筆硬度を測定した。試験の間、鉛筆は塗面に対して角度45°、荷重750gで押すように取り付けた。塗膜に上記(a)、(b)、及び(c)に記載したような欠陥によって圧痕が生じるまで鉛筆の硬さを順次増す。
COTEC株式会社製ひっかき鉛筆硬度 TQC WWテスター(荷重750g専用)
鉛筆:次の硬度の木製製図用鉛筆セット(三菱UNI株式会社製)
6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H
鉛筆けずり器:鉛筆の円筒状の芯をそのままに残して木部だけをけずり取る、特殊なけずり器とする。
研磨紙:3M−P1000
鉛筆けずり器を用い、鉛筆の芯が傷のない滑らかな円柱状になるよう注意して木部を除き、芯を5mm〜6mm露出させた。
鉛筆を垂直に保ち、90°の角度を保持しながら芯を研磨紙上にあてて前後に動かして、芯の先端を平らにした。芯の角の部分に破片や欠けがなく、平滑で円形の断面が得られるまで続けた。この操作は、鉛筆を使用するたびに繰り返す。
塗板を、平らで堅固な水平面に置く。鉛筆を取り付け、鉛筆の先端が塗膜に接するときに試験装置が水平になるような位置で止め具を締めた。
鉛筆の先端が塗膜上に載った後、直ちに装置を操作者から0.5mm/s〜1mm/sの速度で離れるよう、少なくとも7mmの距離を押した。
肉眼で塗膜を検査し、上記(a)、(b)、及び(c)に定義した圧痕の種別を肉眼で調べた。この時、塗膜面の鉛筆芯の粉を、柔らかな布又は脱脂綿と不活性溶剤を用いてふき取ると、破壊の評価が容易になる。この操作を行うときには、試験部位の硬度に影響のないように注意する。
傷跡が生じないときは、重ならないように、試験部位が、少なくとも長さ3mmの傷跡が生じるまで、硬度スケールを上げて試験を繰り返した。
傷跡が生じたときは、傷跡が生じなくなるまで硬度スケールを下げて試験を繰り返した。上記(a)、(b)、及び(c)に定義する欠陥について、その種類を判定した。
傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を、鉛筆硬度とした。
試験は2回行い、2回の結果が一単位以上異なるときは放棄し、試験をやり直した。
180℃破断伸び(引張り試験)であり、引張り試験機(オートグラフ AGS−5kNX、株式会社島津製作所製)を用い、引張り速度:20mm/min、温度180℃、サンプル:JIS K6251 ダンベル状(6号)の条件で測定し、(引張り試験後の長さ)/(引張り試験前の長さ)の比で延伸性を表した。
東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計、VISCOMETER TV−22により、恒温循環水の温度を25℃及び60℃に設定して測定した。単位はmPa・s、温度調整:VISCOMATE VM−150IIIを用いた。
静的表面張力計(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z型)を使用し、25℃で測定した。
−(A)群のモノマー−
A1:アダマンチルメタアクリレート(Tg=250℃)
A2:アダマンチルアクリレート(Tg=153℃)
A3:イソボロニルアクリレート(Tg=97℃)
A4:ヒドロキシエチルアクリルアミド(Tg=98℃)
A5:ジシクロペンテニルアクリレート(Tg=120℃)
A6:ジシクロペンテニルメタアクリレート(Tg=175℃)
A7:ジシクロペンタニルアクリレート(Tg=120℃)
A8:ジシクロペンタニルメタアクリレート(Tg=175℃)
A9:ジエチレングリコールジアクリレート(Tg=100℃)
A10:ジエチレングリコールジメタアクリレート(Tg=145℃)
B1:アクリロイルモルホリン
B2:シクロヘキシルメタクリレート(Tg=66℃)
B3:テトラヒドロフルフリルメタクリレート(Tg=60℃)
B4:シクロヘキシルアクリレート
B5:ベンジルアクリレート
B6:(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)アクリレート(MEDOL−10、大阪有機化学工業株式会社製)
B7:テトラヒドロフルフリルアクリレート
B8:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
B9:(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル))メチルアクリレート(CHDOL−10、大阪有機化学工業株式会社製)
B10:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
C1:日本アエロジル社製親水性フュームドシリカ、AEROSIL 50(平均一次粒径30nm、表面処理なし)
C2:日本アエロジル社製親水性フュームドシリカ、AEROSIL OX50(平均一次粒径40nm、表面処理なし)
C3:信越化学工業株式会社製、X−24−9600A(平均一次粒径100nm、表面処理あり)
C4:日本アエロジル社製親水性フュームドシリカ、AEROSIL 200(平均一次粒径12nm、表面処理なし)
C5:コアフロント株式会社製シリカ粒子sicastar(平均一次粒子径200nm、表面処理なし)
C6:日本アエロジル社製疎水性フュームドシリカ、AEROSIL RX50(平均一次粒径40nm、表面処理あり)
D1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
D2:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン
D3:オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン
三菱化学株式会社製カーボンブラック#10に対して日本ルーブリゾール社製高分子分散剤S32000を3:1の質量比で含む状態として配合量を示した。
実施例5は、基材としてPMMAを用いた。硬化物の、基材への密着性、タック性が良好、硬度も延伸性も充分であり、粘度、静的表面張力も、インクジェットでの吐出に適した範囲であった。
実施例6は、A群のモノマーの1種が水酸基を含むモノマーである。その結果、密着性、延伸性、硬度は良好だが、タック性を発現してしまう。これは、ヒドロキシエチルアクリルアミドのもつ水酸基に起因していると考えられる。
実施例13は、平均一次粒径が12nmのシリカを用いた。その結果、インクの流動性がやや劣り、粘度が高い状態であった。吐出はできる程度の粘度であったが、吐出時にはメンテナンス頻度がやや高い状態であった。硬化物の特性では遜色なかった。
実施例14は、平均一次粒径が200nmのシリカを用いた。このインクを用いてインクジェット吐出させたところ、ノズル詰まりの頻度が、通常よりやや高くなり、メンテナンス頻度がやや高い状態であった。硬化物の特性では遜色なかった。
実施例15、表面を疎水化したシリカを用いた。その結果、インクの流動性が比較的良くない状態であった。インクがやや白濁した状態であり、クリアインクの硬化物はやや白濁していた。その他カラーインクの硬化物では問題ない程度の白濁であった。硬化物の特性では遜色なかった。
比較例2は、B群のモノマーの含有量を22質量%とした。その結果、硬化性もタック性も良く、硬度も延伸性も充分だが、基材を溶解する性質を持つB群のモノマーが少ないため密着性が劣る結果となった。
比較例3は、A群のモノマーの含有量を25質量%とした。その結果、密着性、延伸性は良好だが、硬度が不足であった。
比較例4は、シリカの含有量を2質量%とした。その結果、硬化物の密着性、延伸性、タック性は良好だが、硬度が低めであった。
比較例5は、シリカの含有量を15質量%とした。その結果、硬化物の密着性、延伸性、タック性、硬度は良好だが、インクの粘度が高く、インクジェットでの塗出が困難であった。
比較例6は、B群のモノマーとして、基材を溶解できない本発明の第2モノマーでないものを用いた。その結果、基材への密着性が著しく劣る硬化物であった。
<1> 第1のモノマー及び第2のモノマーを含む重合性化合物と、シリカとを少なくとも含有する光重合性インクジェットインクであって、
前記第1のモノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記第2のモノマーが、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル))メチル(メタ)アクリレート、及び(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記第1のモノマーの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、50質量%以上であり、
前記第2のモノマーの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、30質量%以上であり、
前記シリカの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、5質量%〜10質量%であることを特徴とする光重合性インクジェットインクである。
<2> シリカの平均一次粒径が、30nm〜100nmであり、かつ表面処理が未処理である前記<1>に記載の光重合性インクジェットインクである。
<3> 第1のモノマーが、イソボロニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクである。
<4> 第2のモノマーが、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクである。
<5> 着色剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクである。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
<7> 光重合性インクジェットインクをインクジェット記録方式により基材の表面に吐出させるインク吐出工程と、
前記基材の表面に吐出された光重合性インクジェットインクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を少なくとも含み、
前記光重合性インクジェットインクが、前記<1>から<5>のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクであることを特徴とする画像乃至硬化物の形成方法である。
<8> 前記<7>に記載の画像乃至硬化物の形成方法により形成されることを特徴とする画像乃至硬化物である。
<9> 光重合性インクジェットインクをインクジェット記録方式により基材の表面に吐出させるインク吐出手段と、
前記基材の表面に吐出された光重合性インクジェットインクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を少なくとも有し、
前記光重合性インクジェットインクが、前記<1>から<5>のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクであることを特徴とする画像乃至硬化物の形成装置である。
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
Claims (7)
- 第1のモノマー及び第2のモノマーを含む重合性化合物と、シリカとを少なくとも含有する光重合性インクジェットインクであって、
前記第1のモノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記第2のモノマーが、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル))メチル(メタ)アクリレート、及び(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記第1のモノマーの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、50質量%以上であり、
前記第2のモノマーの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、30質量%以上であり、
前記シリカの含有量が、前記重合性化合物及び前記シリカの全量に対して、5質量%〜10質量%であることを特徴とする光重合性インクジェットインク。 - シリカの平均一次粒径が、30nm〜100nmであり、かつ表面処理が未処理である請求項1に記載の光重合性インクジェットインク。
- 第1のモノマーが、イソボロニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の光重合性インクジェットインク。
- 第2のモノマーが、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の光重合性インクジェットインク。
- 着色剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載の光重合性インクジェットインク。
- 請求項1から5のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
- 光重合性インクジェットインクをインクジェット記録方式により基材の表面に吐出させるインク吐出工程と、
前記基材の表面に吐出された光重合性インクジェットインクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を少なくとも含み、
前記光重合性インクジェットインクが、請求項1から5のいずれかに記載の光重合性インクジェットインクであることを特徴とする画像乃至硬化物の形成方法。
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