JP6209834B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、新たな変速要求発生時点での係合クラッチの状態によっては、係合クラッチの動作制御を切り替えることで、係合クラッチに無理なトルクが作用してしまうことがあった。また、無理なトルクが作用すると、係合クラッチが摩耗してクラッチ耐久性が低下することがあった。特に、係合クラッチが同期機構を有するシンクロ式の係合クラッチである場合、クラッチハブ側のチャンファとクラッチギア側のチャンファとの相対的な位置関係によって、無理なトルクが作用する場合と作用しない場合がある。そのため、クラッチ耐久性の低下を防止しつつ、新たに生じた変速要求にできる限り応えるための判断基準が必要であった。
そして、前記変速制御手段は、第1の変速要求による前記噛合いクラッチを開放させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを締結させる第2の変速要求があったとき、前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれている場合、前記第1の変速要求による変速制御を継続し、前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれていない場合、前記第1の変速要求による変速制御を中断し、前記第2の変速要求による変速制御を実行する。
ここで、係合クラッチに作用するトルクは、係合クラッチの伝達トルクの大きさに左右される。このため、係合クラッチの伝達トルクに基づいて、第1の変速要求による変速制御を継続するか否かの判断をすることで、係合クラッチに作用するトルクの状態に応じて、係合クラッチの動作制御の切り替え可否を適切に判断することができる。
この結果、変速制御中に係合クラッチの動作制御の切り替えが必要な新たな変速要求があっても、係合クラッチの耐久性低下を防止しつつ、新たな変速要求にできる限り応えることができる。
まず、構成を説明する。
実施例1における電気自動車(車両の一例)に搭載された自動変速機の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「変速制御系の詳細構成」、「変速制御処理構成」に分けて説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された電気自動車の駆動系構成と制御系構成を示す。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
図2は、実施例1の変速制御系の詳細構成を示す。以下、図2に基づき、変速制御系の詳細構成を説明する。
この係合クラッチ83の係合締結と開放は、カップリングスリーブ86の位置によって決まる。そこで、変速コントローラ21は、スリーブ位置センサ27の値を読み込み、スリーブ位置が締結位置又は開放位置になるように電動アクチュエータ41に電流を与える位置サーボコントローラ51(例えば、PID制御による位置サーボ系)を備えている。
そして、カップリングスリーブ86が、クラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の双方に噛合した図1に示す噛み合い位置にあるとき、ギア81を変速機出力軸7に駆動連結する。一方、カップリングスリーブ86が、図1に示す位置から軸線方向へ変位することでクラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の一方と非噛み合い位置にあるとき、ギア81を変速機出力軸7から切り離す。
前記カップリングスリーブ86は、クラッチハブ85(図1参照)の外周に形成されたスプライン部(図示省略)に噛み合った状態を維持しながら、図3(a)において左右方向である軸方向に移動可能に支持されている。そして、カップリングスリーブ86の軸方向の移動は、電動アクチュエータ41(図2参照)の駆動により成される。
前記係合クラッチ83では、開放状態から係合締結する場合、カップリングスリーブ86によって、シンクロナイザリング87をクラッチギア84に近接するように軸方向に押圧する。これにより、シンクロナイザリング87とコーン部84bとの間に摩擦力が生じ、この摩擦力によりカップリングスリーブ86とクラッチギア84とが同期回転して締結される。
すなわち、前記カップリングスリーブ86を、電動アクチュエータ41(図2参照)により、図3(a)に示すように、キー88と共に、クラッチギア84に近接する方向へ軸方向に移動させ、シンクロナイザリング87をコーン部84bに接触させる。
この回転同期が成立すると、シンクロナイザリング87とコーン部84bとの間の摩擦トルクが消滅し、カップリングスリーブ86がさらに軸方向に移動する。これにより、カップリングスリーブ86のスプライン部86aが、クラッチギア84のスプライン部84aを押し分け、図3(e)に示すように、クラッチギア84のスプライン部84aと噛み合い、係合クラッチ83は係合締結状態となる。
この摩擦クラッチ93の伝達トルクは、スライダ96の位置によって決まり、また、スライダ96はネジ機構となっており、電動アクチュエータ42の入力が0(ゼロ)のとき、位置を保持する機構となっている。変速コントローラ21は、スライダ位置センサ26の値を読み込み、所望の伝達トルク容量が得られるスライダ位置になるように電動アクチュエータ42に電流を与える位置サーボコントローラ52(例えば、PID制御による位置サーボ系)を備えている。
そして、摩擦クラッチ93は、変速機入力軸6と一体に回転し、クラッチ摩擦締結のときギア91を変速機入力軸6に駆動連結し、クラッチ開放のとき、ギア91と変速機入力軸6の駆動連結を切り離す。
図4は、実施例1の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示す。以下、図4に基づき、変速制御処理構成をあらわす各ステップについて説明する。
ここで、アップ変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えば車速が上昇すること等によりアップ変速線を横切ったときに発生する。
このアップ変速制御の開始により、係合クラッチ83を締結→開放とし、摩擦クラッチ93を開放→締結へとする架け替え制御が開始される。
ここで、ダウン変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えばドライバーのアクセル踏み込み等によりダウン変速線を横切ったときに発生する。
ここで、「所定値」は、係合クラッチ83の開放動作が進んでしまい、締結動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまう値である。具体的には、シンクロナイザリング87からカップリングスリーブ86が引き抜かれ、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との同期が解消したことで、係合クラッチ83の伝達トルクが低減を開始したときの値である。
また、このアップ変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、カップリングスリーブ86のストローク位置に基づいて推定する。すなわち、図5に示すように、変速制御中のカップリングスリーブ86の位置と、係合クラッチ83の伝達トルクとの間には、カップリングスリーブ86の位置が開放位置から締結位置へ近くなるほど、係合クラッチ83の伝達トルクが増大する比例関係を有している。つまり、図5に示すマップを用いて、カップリングスリーブ86の位置から係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。なお、カップリングスリーブ86が係合締結位置まで移動したら、係合クラッチ83の伝達トルクは、変速機入力トルク(=モータ出力トルク)となる。
そして、この実施例1では、カップリングスリーブ86がシンクロナイザリング87の逆テーパ角87dをクラッチハブ85側に越えていたら、係合クラッチ83の伝達トルクが所定値よりも小さいと判断する。
このカップリングスリーブ86のストローク位置は、スリーブ位置センサ27によって検出される。
なお、アップ変速制御が終了した時点で、変速マップ上の運転点の位置等からダウン変速要求の発生が判断できれば、直ちにダウン変速制御が実行される。
ここで、ダウン変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えばドライバーのアクセル踏み込み等によりダウン変速線を横切ったときに発生する。
このダウン変速制御の開始により、係合クラッチ83を開放→締結とし、摩擦クラッチ93を締結→開放へとする架け替え制御が開始される。
ここで、アップ変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えば車速が上昇すること等によりアップ変速線を横切ったときに発生する。
ここで、「所定値」は、係合クラッチ83の締結動作が進んでしまい、開放動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまう値である。具体的には、シンクロナイザリング87に対してカップリングスリーブ86が近接し、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との回転同期が成立することで、係合クラッチ83の伝達トルクが増大を開始したときの値である。
また、このダウン変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、摩擦クラッチ93の伝達トルクと、変速機入力トルクであるモータジェネレータMGのモータトルクの差から推定する。すなわち、モータトルクは、自動変速機3における総伝達トルクであり、この総伝達トルクを係合クラッチ83と摩擦クラッチ93によって分担して伝達することとなる。そのため、係合クラッチ伝達トルクと摩擦クラッチ伝達トルクの合計がモータトルクになる。これにより、下記式(1)が成立することがわかる。
係合クラッチ伝達トルク=モータトルク−摩擦クラッチ伝達トルク …(1)
そのため、この式(1)から係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。なお、モータトルクは、例えばインバータ内に設けた電流センサによって、モータジェネレータMGに出力された電流値から推定する。また、摩擦クラッチ伝達トルクは、スライダ位置センサ26によって検出される摩擦クラッチ93のスライダ96の位置から推定する。
なお、ダウン変速制御が終了した時点で、変速マップ上の運転点の位置等からアップ変速要求の発生が判断できれば、直ちにアップ変速制御が実行される。
実施例1の自動変速機の制御装置における作用を、「通常の変速制御作用」、「アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるアップ変速継続作用」、「アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるダウン変速実行作用」、「ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるダウン変速継続作用」、「ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるアップ変速実行作用」に分けて説明する。
変速コントローラ21は、車速センサ22からの車速と、アクセル開度センサ23からのアクセル開度と、ブレーキストロークセンサ24からのブレーキストローク量と、を入力する。そして、これら入力情報と、図6に例示する変速マップに基づいて、以下に述べるように、自動変速機3の変速制御を行う。
一方、ハイギア段の選択状態である場合、実用可能領域内の運転点がダウンシフト線(High→Low)を横切ってロー側変速段領域に入ると、目標変速段をローギア段に切り替える。
そして、目標変速段の切り替えによりアップ変速要求又はダウン変速要求が出力され、変速要求に基づく変速制御(アップ変速制御又はダウン変速制御)が実行される。
図7は、実施例1の制御装置において、1→2変速制御中に2→1変速要求があっても1→2変速を継続した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・モータ回転数・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図7に基づいて、アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるアップ変速継続作用を説明する。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2へと進み、アップ変速制御の実行が開始され、まず、締結側要素である摩擦クラッチ93のスライダ96が電動アクチュエータ42によって駆動されて、スライダ96のがた詰が行われる。つまり、スライダ96は、開放位置から次第に締結位置へと移動する。
このため、図4のフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進み、アップ変速制御が継続される。
そのため、アップ変速制御の途中で、開放動作が進んでいる状態から係合クラッチ83が締結状態になることが防止され、カップリングスリーブ86やシンクロナイザリング87に対して無理なトルクが作用することを防止できる。これにより、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
図8は、実施例1の制御装置において、1→2変速制御中に2→1変速要求があったことで2→1変速を実行した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・モータ回転数・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図8に基づいて、アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるダウン変速実行作用を説明する。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2へと進み、アップシフト制御の実行が開始され、まず、締結側要素である摩擦クラッチ93のスライダ96が電動アクチュエータ42によって駆動されて、スライダ96のがた詰が行われる。つまり、スライダ96は、開放位置から次第に締結位置へと移動する。
そのため、図4のフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS6へと進む。これにより、アップ変速制御が中断され、ダウン変速制御が実行される。つまり、自動変速機3はローギア段の選択状態へと戻ることとなる。
これにより、ダウン変速要求の出力直後に、係合クラッチ83を締結させる締結指令が出力され、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86は移動することなく、締結位置に留まり、完全締結状態を維持する。
そのため、アップ変速制御の途中であっても、直ちにダウン変速要求に応えることができ、新たに生じた変速要求を満たすことができる。また、係合クラッチ83の開放動作は行われず、係合締結状態が維持される。これにより、係合クラッチ83に無理なトルクが作用することが防止でき、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
図9は、実施例1の制御装置において、2→1変速制御中に1→2変速要求があっても2→1変速を継続した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・アクセル開度・モータ回転数・モータトルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図9に基づいて、ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるダウン変速継続作用を説明する。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS7→ステップS8へと進み、ダウン変速制御の実行が開始され、まず、モータジェネレータMGのトルク制御が行われてモータトルクを増大する。このとき、摩擦クラッチ93が締結しているので、この摩擦クラッチ93の伝達トルクは、モータトルクの増大に伴って増加する。
このとき、回転同期初期では、電動アクチュエータ41によるトルク制御が行われ、シンクロナイザリング87とコーン部84bとの間に生じる摩擦力によって、係合クラッチ83の伝達トルクは一時的に上昇する。そして、シンクロナイザリング87のスプライン部87aのチャンファ部87bと、カップリングスリーブ86のスプライン部86aのチャンファ部86bとが、軸方向で向き合ったインデックス状態(図3(b)参照)になったら、電動アクチュエータ41によるストローク制御に切り替わり、係合クラッチ伝達トルクはゼロになる。その後、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との回転同期が成立したら、カップリングスリーブ86のスプライン部86aが、クラッチギア84のスプライン部84aを押し分け、クラッチギア84のスプライン部84aと噛み合うこととなる。
これにより、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクが目標トルクになるように、このモータトルクを低減する。また、摩擦クラッチ93のスライダ96は、開放位置に向かって再びストローク駆動を開始する。これにより、摩擦クラッチ93の伝達トルクは低下する。ここで、締結側要素である係合クラッチ83の伝達トルクは、自動変速機3への入力トルク(モータトルク)と、摩擦クラッチ93の伝達トルクとの差分となるため、徐々に増加する。
このため、図4のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11へと進み、ダウン変速制御が継続される。
そのため、ダウン変速制御の途中で、締結動作が進んでいる状態から係合クラッチ83が開放状態になることが防止され、カップリングスリーブ86やシンクロナイザリング87に対して無理なトルクが作用することを防止できる。これにより、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
図10は、実施例1の制御装置において、2→1変速制御中に1→2変速要求があったことで1→2変速を実行した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・アクセル開度・モータ回転数・モータトルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図10に基づいて、ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるアップ変速実行作用を説明する。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS7→ステップS8へと進み、ダウン変速制御の実行が開始され、まず、モータジェネレータMGのトルク制御が行われてモータトルクを増大する。このとき、摩擦クラッチ93が締結しているので、この摩擦クラッチ93の伝達トルクは、モータトルクの増大に伴って増加する。
そのため、図4のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS12へと進む。これにより、ダウン変速制御が中断され、アップ変速制御が実行される。つまり、自動変速機3はハイギア段の選択状態へと戻ることとなる。
これにより、アップ変速要求が出力された時刻tδから、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクが目標トルクになるように、このモータトルクを低減する。このとき、係合クラッチ83は開放状態であるため、モータトルクの低減に伴って摩擦クラッチ伝達トルクも低減する。
また、カップリングスリーブ86は、クラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の双方に噛合することなく、開放位置へ向かって移動を開始する。一方、摩擦クラッチ93のスライダ96は、締結位置に向かって再びストローク駆動を開始する。
そのため、ダウン変速制御の途中であっても、直ちにアップ変速要求に応えることができ、新たに生じた変速要求を満たすことができる。また、係合クラッチ83は締結されず、開放状態が維持される。これにより、係合クラッチ83に無理なトルクが作用することが防止でき、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
また、係合クラッチ83を締結させるダウン変速制御中に、係合クラッチ83を開放させるアップ変速要求があったときには、アップ変速要求発生時点での係合クラッチ伝達トルクが所定値よりも大きい場合に、ダウン変速制御を継続する。
実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、第1の変速要求(アップ変速要求/ダウン変速要求)による前記係合クラッチ83を開放/締結させる変速制御(アップ変速制御/ダウン変速制御)の途中、前記係合クラッチ83を締結/開放させる第2の変速要求(ダウン変速要求/アップ変速要求)があったとき、
前記第2の変速要求(ダウン変速要求/アップ変速要求)が発生した時点での前記係合クラッチ83の伝達トルクに基づいて、前記第1の変速要求(アップ変速要求/ダウン変速要求)による変速制御(アップ変速制御/ダウン変速制御)の継続可否を判断する構成とした。
これにより、変速制御中に係合クラッチ83の動作制御の切り替えが必要な新たな変速要求があっても、クラッチ耐久性の低下を防止しつつ、新たな変速要求にできる限り応えることができる。
前記第2の変速要求(ダウン変速要求)が発生した時点での前記係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値よりも小さい場合には、前記第1の変速要求(アップ変速要求)による変速制御(アップ変速制御)を継続する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、すでに実行中のアップ変速制御の継続か否かを適切、且つ、容易に判断することができる。
前記第2の変速要求(アップ変速要求)が発生した時点での前記係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、前記第1の変速要求(ダウン変速要求)による変速制御(ダウン変速制御)を継続する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、すでに実行中のダウン変速制御の継続か否かを適切、且つ、容易に判断することができる。
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、前記係合クラッチ83を開放させる変速制御(アップ変速制御)中の前記係合クラッチ83の伝達トルクを、前記係合クラッチ用アクチュエータ(カップリングスリーブ86)のストローク位置から推定する構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないのでトルク推定精度の向上を図ることができる。
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、前記係合クラッチ83の伝達トルクを、前記摩擦クラッチ93の伝達トルクと前記モータ(モータジェネレータMG)の出力トルクの差から推定する構成とした。
これにより、(1)〜(3)の効果に加え、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置がわずかしか変化していなくても、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
実施例2は、係合クラッチ伝達トルクの推定を、実施例1とは異なる構成とした例である。
ここで、アップ変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、アクセル開度の大きさに基づいて推定する。すなわち、図12に示すように、アクセル開度が大きくなるほど、係合クラッチ83の伝達トルクが増大する比例関係を有している。つまり、図12に示すマップを用いて、アクセル開度の大きさから係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。このアクセル開度は、アクセル開度センサ23によって検出される。
なお、この「アクセル開度」は、要求モータ駆動トルク、つまりドライバー要求駆動力に比例するものであり、ドライバー要求駆動力を示すパラメータである。そのため、アクセル開度に基づいて係合クラッチ伝達トルクを推定するとは、ドライバー要求駆動力に基づいて係合クラッチ伝達トルクを推定することである。
ここで、ダウン変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、摩擦クラッチ93のスライダ96のストローク量に基づいて推定する。すなわち、実施例1で述べたように、係合クラッチ83の伝達トルクは、モータトルクと摩擦クラッチ伝達トルクの差から推定することができる。ここで、摩擦クラッチ93の伝達トルクは、スライダ96の位置によって決まる。そのため、摩擦クラッチ93のスライダ96のストローク量によって、係合クラッチ伝達トルクの大きさが左右されることとなる。そのため、スライダ96のストローク量に基づいて、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
アクセル開度の大きさに基づいて推定する。すなわち、図12に示すように、アクセル開度が大きくなるほど、係合クラッチ83の伝達トルクが増大する比例関係を有している。つまり、図12に示すマップを用いて、アクセル開度の大きさから係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。このアクセル開度は、アクセル開度センサ23によって検出される。
実施例2の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないのでトルク推定精度の向上を図ることができる。
前記摩擦クラッチ93は、摩擦クラッチ用アクチュエータ(スライダ96)をストロークさせることによって締結/開放が制御され、
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、前記係合クラッチ83の伝達トルクを、前記摩擦クラッチ用アクチュエータ(スライダ96)のストローク量から推定する構成とした。
これにより、(1)〜(3)の効果に加え、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置がわずかしか変化していなくても、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
3 自動変速機
6 変速機入力軸
7 変速機出力軸
8 ロー側変速機構
81,82 低速段ギア対
83 係合クラッチ(噛合いクラッチ)
9 ハイ側変速機構
91,92 高速段ギア対
93 摩擦クラッチ
11,12 ファイナルドライブギア組
13 ディファレンシャルギア装置
14 駆動車輪
21 変速コントローラ(変速制御手段)
22 車速センサ
23 アクセル開度センサ
24 ブレーキストロークセンサ
25 前後Gセンサ
26 スライダ位置センサ
27 スリーブ位置センサ
28 モータコントローラ
29 ブレーキコントローラ
30 統合コントローラ
Claims (4)
- 車両の駆動系に設けられ、変速要素として係合締結する噛合いクラッチを有する自動変速機と、該自動変速機の変速制御を行う変速制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記変速制御手段は、第1の変速要求による前記噛合いクラッチを開放させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを締結させる第2の変速要求があったとき、
前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれている場合、前記第1の変速要求による変速制御を継続し、前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれていない場合、前記第1の変速要求による変速制御を中断し、前記第2の変速要求による変速制御を実行する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
前記車両の駆動系に、駆動源となるモータを備えると共に、前記自動変速機は、前記噛合いクラッチと、前記噛合いクラッチと架け替え変速される摩擦クラッチとを有し、
前記変速制御手段は、前記第2の変速要求による前記噛合いクラッチを締結させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを開放させる前記第1の変速要求があったとき、
前記第1の変速要求が発生した時点で、前記摩擦クラッチの伝達トルクと前記モータの出力トルクの差から推定した前記噛合いクラッチの伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、前記第2の変速要求による変速制御を継続し、前記第1の変速要求が発生した時点での前記噛合いクラッチの伝達トルクが、前記所定値以下の場合には、前記第2の変速要求による変速制御を中断し、前記第1の変速要求による変速制御を実行する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
前記自動変速機は、前記噛合いクラッチと、前記噛合いクラッチと架け替え変速されると共に摩擦クラッチ用アクチュエータをストロークさせることによって締結/開放が制御される摩擦クラッチとを有し、
前記変速制御手段は、前記第2の変速要求による前記噛合いクラッチを締結させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを開放させる前記第1の変速要求があったとき、
前記第1の変速要求が発生した時点で、前記摩擦クラッチ用アクチュエータのストローク量から推定した前記噛合いクラッチの伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、前記第2の変速要求による変速制御を継続し、前記第1の変速要求が発生した時点での前記噛合いクラッチの伝達トルクが、前記所定値以下の場合には、前記第2の変速要求による変速制御を中断し、前記第1の変速要求による変速制御を実行する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された自動変速機の制御装置において、
前記噛合いクラッチは、噛合いクラッチ用アクチュエータをストロークさせることによって締結/開放が制御され、
前記変速制御手段は、前記噛合いクラッチを開放させる変速制御中に前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれたことを、前記噛合いクラッチ用アクチュエータのストローク位置から推定する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
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