JP6209834B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、係合クラッチを有する自動変速機と、この自動変速機の変速制御を行う変速制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置に関する発明である。
従来、変速要素として低速段で締結するドグクラッチと高速段で締結する摩擦クラッチを持つ有段の自動変速機を備え、係合クラッチと摩擦クラッチを架け替え変速する自動変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010-202124号公報
ところで、従来の自動変速機の制御装置において、係合クラッチを開放させる変速制御中、つまり低速段から高速段への変速制御中に、ドライバーの要求駆動力が増加すること等によりドグクラッチを締結させる低速段への変速要求が新たに発生することがあった。このとき、新たに生じた変速要求に応えるためには、係合クラッチの動作制御を、開放動作から締結動作へと切り替える必要がある。
しかしながら、新たな変速要求発生時点での係合クラッチの状態によっては、係合クラッチの動作制御を切り替えることで、係合クラッチに無理なトルクが作用してしまうことがあった。また、無理なトルクが作用すると、係合クラッチが摩耗してクラッチ耐久性が低下することがあった。特に、係合クラッチが同期機構を有するシンクロ式の係合クラッチである場合、クラッチハブ側のチャンファとクラッチギア側のチャンファとの相対的な位置関係によって、無理なトルクが作用する場合と作用しない場合がある。そのため、クラッチ耐久性の低下を防止しつつ、新たに生じた変速要求にできる限り応えるための判断基準が必要であった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、変速制御中に係合クラッチの動作制御の切り替えが必要な新たな変速要求があっても、係合クラッチの耐久性低下を防止しつつ、新たな変速要求にできる限り応えることができる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御装置は、車両の駆動系に設けられ、変速要素として係合締結する噛合いクラッチを有する自動変速機と、該自動変速機の変速制御を行う変速制御手段と、を備えている。
そして、前記変速制御手段は、第1の変速要求による前記噛合いクラッチを開放させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを締結させる第2の変速要求があったとき、前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれている場合、前記第1の変速要求による変速制御を継続し、前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれていない場合、前記第1の変速要求による変速制御を中断し、前記第2の変速要求による変速制御を実行する
本願発明では、第1の変速要求による係合クラッチを開放/締結させる変速制御の途中、係合クラッチを締結/開放させる第2の変速要求があったときには、変速制御手段により、第2の変速要求が発生した時点での係合クラッチの伝達トルクに基づいて、第1の変速要求による変速制御を継続するか否かの判断が行われる。すなわち、新たに発生した第2の変速要求に応えるか否かを、係合クラッチの伝達トルクによって決める。
ここで、係合クラッチに作用するトルクは、係合クラッチの伝達トルクの大きさに左右される。このため、係合クラッチの伝達トルクに基づいて、第1の変速要求による変速制御を継続するか否かの判断をすることで、係合クラッチに作用するトルクの状態に応じて、係合クラッチの動作制御の切り替え可否を適切に判断することができる。
この結果、変速制御中に係合クラッチの動作制御の切り替えが必要な新たな変速要求があっても、係合クラッチの耐久性低下を防止しつつ、新たな変速要求にできる限り応えることができる。
実施例1の制御装置が適用された電気自動車(車両の一例)の駆動系構成と制御系構成を示す全体システム構成図である。 実施例1の変速制御系の詳細構成を示す制御ブロック図である。 実施例1の係合クラッチの説明図であり、(a)は要部断面図を示し、(b)〜(d)はその動作を示す(a)において上方から下方を見下ろした図であり、(b)は締結初期の回転同期初期状態を示し、(c)は回転同期途中でチャンファ部接触状態を示し、(d)は回転同期途中でチャンファ部非接触状態を示し、(e)は回転同期終了時を示す。 実施例1の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。 係合クラッチスリーブ位置と係合クラッチ伝達トルクとの関係の一例を示すマップ図である。 実施例1の変速コントローラで用いられる自動変速機のアップシフト線とダウンシフト線の一例を示す変速マップ図である。 実施例1の制御装置において、1→2変速制御中に2→1変速要求があっても1→2変速を継続した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・モータ回転数・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の制御装置において、1→2変速制御中に2→1変速要求があったことで2→1変速を実行した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・モータ回転数・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の制御装置において、2→1変速制御中に1→2変速要求があっても2→1変速を継続した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・アクセル開度・モータ回転数・モータトルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の制御装置において、2→1変速制御中に1→2変速要求があったことで1→2変速を実行した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・アクセル開度・モータ回転数・モータトルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。 実施例2の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。 アクセル開度と係合クラッチ伝達トルクとの関係の一例を示すマップ図である。 本発明の制御装置が適用可能なハイブリッド車(車両の他例)の駆動系構成の一例を示す図である。
以下、本発明の自動変速機の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
(実施例1)
まず、構成を説明する。
実施例1における電気自動車(車両の一例)に搭載された自動変速機の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「変速制御系の詳細構成」、「変速制御処理構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の制御装置が適用された電気自動車の駆動系構成と制御系構成を示す。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
前記電気自動車の駆動系構成としては、図1に示すように、モータジェネレータMGと、自動変速機3と、駆動輪14と、を備えている。
前記モータジェネレータMGは、力行時に駆動モータとして用いられ、回生時にジェネレータとして用いられ、そのモータ軸が自動変速機3の変速機入力軸6に接続される。
前記自動変速機3は、変速比の異なる2つのギア対のいずれかで動力を伝達する常時噛み合い式有段変速機であり、減速比の小さなハイギア段(高速段)と減速比の大きなローギア段(低速段)を有する2段変速としている。この自動変速機3は、ローギア段を実現するロー側変速機構8及びハイギア段を実現するハイ側変速機構9により構成される。ここで、変速機入力軸6及び変速機出力軸7は、それぞれ平行に配置される。
前記ロー側変速機構8は、ロー側伝動経路を選択するためのもので、変速機出力軸7上に配置されている。このロー側変速機構8は、低速段ギア対80(ギア81,ギア82)が、変速機入出力軸6,7間を駆動結合するように、変速機出力軸7に対するギア81の係合締結/開放を行う係合クラッチ83(噛合いクラッチ)により構成する。ここで、低速段ギア対80は、変速機出力軸7上に回転自在に支持したギア81と、該ギア81と噛み合い、変速機入力軸6と共に回転するギア82と、から構成される。
前記ハイ側変速機構9は、ハイ側伝動経路を選択するためのもので、変速機入力軸6上に配置されている。このハイ側変速機構9は、高速段ギア対90(ギア91,ギア92)が、変速機入出力軸6,7間を駆動結合するように、変速機入力軸6に対するギア91の摩擦締結/開放を行う摩擦クラッチ93により構成する。ここで、高速段ギア対は、変速機入力軸6上に回転自在に支持したギア91と、ギア91に噛み合い、変速機出力軸7と共に回転するギア92と、から構成される。
前記変速機出力軸7は、ギア11を固定し、このギア11と、これに噛合するギア12とからなるファイナルドライブギア組を介して、ディファレンシャルギア装置13を変速機出力軸7に駆動結合する。これにより、変速機出力軸7に達したモータジェネレータMGのモータ動力がファイナルドライブギア組(ギア11,12)及びディファレンシャルギア装置13を経て左右の駆動輪14(なお、図1では一方の駆動輪のみを示した)に伝達されるようにする。
前記電気自動車の制御系構成としては、図1に示すように、変速コントローラ21、車速センサ22、アクセル開度センサ23、ブレーキストロークセンサ24、前後Gセンサ25、スライダ位置センサ26、スリーブ位置センサ27等を備えている。これに加え、モータコントローラ28と、ブレーキコントローラ29と、統合コントローラ30と、CAN通信線31と、を備えている。
前記変速コントローラ(変速制御手段)21は、係合クラッチ83が係合締結で摩擦クラッチ93が開放のローギア段が選択されている状態でハイギア段へアップ変速する際、係合クラッチ83の開放と摩擦クラッチ93の摩擦締結による架け替え制御を遂行する。また、係合クラッチ83が開放で摩擦クラッチ93が摩擦締結のハイギア段が選択されている状態でローギア段へダウン変速する際、係合クラッチ83の係合締結と摩擦クラッチ93の開放による架け替え制御を遂行する。すなわち、アップ変速では、噛合いクラッチである係合クラッチ83が開放要素になり、ダウン変速では、噛合いクラッチである係合クラッチ83が締結要素になる。
[変速制御系の詳細構成]
図2は、実施例1の変速制御系の詳細構成を示す。以下、図2に基づき、変速制御系の詳細構成を説明する。
前記電気自動車の制御系のうち変速制御系の構成としては、図2に示すように、係合クラッチ83と、摩擦クラッチ93と、モータジェネレータMGと、液圧ブレーキ15と、変速コントローラ21と、統合コントローラ30と、を備えている。つまり、係合クラッチ83と摩擦クラッチ93は、変速コントローラ21からの指令によりアップ変速/ダウン変速の変速制御を行う構成としている。また、モータジェネレータMGと液圧ブレーキ15は、統合コントローラ30からの指令により回生協調ブレーキ制御を行う構成としている。
前記係合クラッチ83は、シンクロ式の係合締結によるクラッチであり、ギア81に設けたクラッチギア84と、変速機出力軸7に結合したクラッチハブ85と、カップリングスリーブ86と、を有する(図1を参照)。そして、図2に示す電動アクチュエータ41によりカップリングスリーブ86をストローク駆動させることで、係合締結/開放する。なお、電動アクチュエータ41を含めたカップリングスリーブ86が、請求項に記載の「係合クラッチ用アクチュエータ」に相当する。
この係合クラッチ83の係合締結と開放は、カップリングスリーブ86の位置によって決まる。そこで、変速コントローラ21は、スリーブ位置センサ27の値を読み込み、スリーブ位置が締結位置又は開放位置になるように電動アクチュエータ41に電流を与える位置サーボコントローラ51(例えば、PID制御による位置サーボ系)を備えている。
そして、カップリングスリーブ86が、クラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の双方に噛合した図1に示す噛み合い位置にあるとき、ギア81を変速機出力軸7に駆動連結する。一方、カップリングスリーブ86が、図1に示す位置から軸線方向へ変位することでクラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の一方と非噛み合い位置にあるとき、ギア81を変速機出力軸7から切り離す。
さらに、図3に基づいて、係合クラッチ83の同期機構について説明を加える。
前記カップリングスリーブ86は、クラッチハブ85(図1参照)の外周に形成されたスプライン部(図示省略)に噛み合った状態を維持しながら、図3(a)において左右方向である軸方向に移動可能に支持されている。そして、カップリングスリーブ86の軸方向の移動は、電動アクチュエータ41(図2参照)の駆動により成される。
前記クラッチギア84は、外周に、カップリングスリーブ86の内周に形成されたスプライン部86aと噛み合い可能なスプライン部84aが形成されている。さらに、このクラッチギア84には、テーパ状のコーン部84bの外周に、軸方向に移動可能にシンクロナイザリング87が装着されている。
前記シンクロナイザリング87は、外周に、カップリングスリーブ86のスプライン部86aと噛み合い可能なスプライン部87aが形成されている。また、シンクロナイザリング87は、カップリングスリーブ86に設けられたキー88に対して、キー溝87c(図3(b)等参照)による隙間の分だけ、回転方向に相対移動可能に構成されている。
次に、係合クラッチ83において、開放状態から係合締結するときの同期機構による同期動作を説明する。
前記係合クラッチ83では、開放状態から係合締結する場合、カップリングスリーブ86によって、シンクロナイザリング87をクラッチギア84に近接するように軸方向に押圧する。これにより、シンクロナイザリング87とコーン部84bとの間に摩擦力が生じ、この摩擦力によりカップリングスリーブ86とクラッチギア84とが同期回転して締結される。
すなわち、前記カップリングスリーブ86を、電動アクチュエータ41(図2参照)により、図3(a)に示すように、キー88と共に、クラッチギア84に近接する方向へ軸方向に移動させ、シンクロナイザリング87をコーン部84bに接触させる。
シンクロナイザリング87がコーン部84bに接触したとき、両者の間には相対回転が生じているため、シンクロナイザリング87は、図3(b)に示すキー溝87cの隙間分だけ回動する。これにより、シンクロナイザリング87のスプライン部87aのチャンファ部87bと、カップリングスリーブ86のスプライン部86aのチャンファ部86bとが、図3(b)に示すように、軸方向で向き合ったインデックス状態となる。
このインデックス状態からさらにカップリングスリーブ86をクラッチギア84側に移動させると、図3(c)に示すように、両チャンファ部87b,86bが接触する。これにより、シンクロナイザリング87がコーン部84bをさらに押して摩擦トルクが発生し、シンクロナイザリング87及びカップリングスリーブ86と、クラッチギア84と、の同期が行われる。
そして、図3(d)に示すように、カップリングスリーブ86が、シンクロナイザリング87の逆テーパ角87dを越えたら、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との回転同期が成立する。
この回転同期が成立すると、シンクロナイザリング87とコーン部84bとの間の摩擦トルクが消滅し、カップリングスリーブ86がさらに軸方向に移動する。これにより、カップリングスリーブ86のスプライン部86aが、クラッチギア84のスプライン部84aを押し分け、図3(e)に示すように、クラッチギア84のスプライン部84aと噛み合い、係合クラッチ83は係合締結状態となる。
以上のように、ギア81とクラッチハブ85との間に設けられ、カップリングスリーブ86の軸方向の移動に伴って、係合クラッチ83の入力側と出力側との相対移動に伴って生じる摩擦力により入力側と出力側とを同期回転させる。すなわち、クラッチギア84,カップリングスリーブ86、シンクロナイザリング87が同期機構を構成する。
また、係合クラッチ83において、係合締結状態から開放するときには、カップリングスリーブ86を、電動アクチュエータ41(図2参照)により、キー88と共に、クラッチギア84から離間する方向へ軸方向に移動させる。これにより、まず、カップリングスリーブ86のスプライン部86aは、クラッチギア84のスプライン部84aから引き抜かれ、噛み合い状態が解消される(図3(d)参照)。
そして、さらにカップリングスリーブ86が移動すると、スプライン部86aは、シンクロナイザリング87のスプライン部87aからも引き抜かれていくこととなる。そして、カップリングスリーブ86が、シンクロナイザリング87の逆テーパ角部87dを越えたら、シンクロナイザリング87とカップリングスリーブ86との同期状態が解消され、シンクロナイザリング87は、カップリングスリーブ86に対し、図3(b)に示すキー溝87cの隙間分だけ回動する。これにより、シンクロナイザリング87のチャンファ部87bと、カップリングスリーブ86のチャンファ部86bは、図3(c)に示すように接触した状態になる。
そして、さらにカップリングスリーブ86をクラッチギア84から離間する方向に移動させると、図3(b)に示すように、両チャンファ部87b,86bの接触が解消される。これにより、カップリングスリーブ86のスプライン部86aが、シンクロナイザリング87から完全に離れ、係合クラッチ83は開放状態となる。
前記摩擦クラッチ93は、ギア91と共に回転するドリブンプレート94と、変速機入力軸6と共に回転するドライブプレート95と、を有する(図1を参照)。そして、電動アクチュエータ42により両プレート94,95に押付け力を与えるスライダ96を駆動することで摩擦締結/開放する。なお、電動アクチュエータ42を含めたスライダ96が、請求項に記載の「摩擦クラッチ用アクチュエータ」に相当する。
この摩擦クラッチ93の伝達トルクは、スライダ96の位置によって決まり、また、スライダ96はネジ機構となっており、電動アクチュエータ42の入力が0(ゼロ)のとき、位置を保持する機構となっている。変速コントローラ21は、スライダ位置センサ26の値を読み込み、所望の伝達トルク容量が得られるスライダ位置になるように電動アクチュエータ42に電流を与える位置サーボコントローラ52(例えば、PID制御による位置サーボ系)を備えている。
そして、摩擦クラッチ93は、変速機入力軸6と一体に回転し、クラッチ摩擦締結のときギア91を変速機入力軸6に駆動連結し、クラッチ開放のとき、ギア91と変速機入力軸6の駆動連結を切り離す。
前記モータジェネレータMGは、統合コントローラ30から出力される指令を入力するモータコントローラ28によって力行制御又は回生制御される。つまり、モータコントローラ28がモータトルク指令を入力すると、モータジェネレータMGが力行制御される。また、モータコントローラ28が回生トルク指令を入力すると、モータジェネレータMGが回生制御される。
前記液圧ブレーキ15は、ブレーキペダル16→電動ブースタ17→マスタシリンダ18→ブレーキ液圧アクチュエータ19を経由して供給されるブレーキ液により駆動輪14に液圧制動力を与える。この液圧ブレーキ15は、回生協調ブレーキ制御時、ブレーキコントローラ29がブレーキ液圧指令を入力すると、液圧制動力の分担に応じた駆動指令を電動ブースタ17に出力することでブレーキ液圧が制御される。ここで、回生協調ブレーキ制御とは、ブレーキストロークセンサ24からのブレーキストローク量に基づいて算出した要求制動力(あるいは、要求減速G)を、回生制動力と液圧制動力との分担により達成する制御をいう。基本的には、電費性能を高めるため、そのとき可能な最大回生トルクに基づき回生制動力を決め、要求制動力から回生制動力を差し引いた残りを液圧制動力で分担する。
前記変速コントローラ21は、車速センサ22やアクセル開度センサ23やブレーキストロークセンサ24や前後Gセンサ25等からの情報を入力し、例えば図6に示す変速マップを用いて自動変速機3の変速制御(アップ変速、ダウン変速)を実行する。
[変速制御処理構成]
図4は、実施例1の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示す。以下、図4に基づき、変速制御処理構成をあらわす各ステップについて説明する。
ステップS1では、係合クラッチ83が係合締結しているローギア段が選択されている状態で、係合クラッチ83を開放させるハイギア段へのアップ変速要求(第1の変速要求)が発生したか否かを判断する。YES(アップ変速要求あり)の場合はステップS2へ進み、NO(アップ変速要求なし)の場合はステップS7へ進む。
ここで、アップ変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えば車速が上昇すること等によりアップ変速線を横切ったときに発生する。
ステップS2では、ステップS1でのアップ変速要求ありとの判断に続き、アップ変速制御の実行が開始され、ステップS3へ進む。
このアップ変速制御の開始により、係合クラッチ83を締結→開放とし、摩擦クラッチ93を開放→締結へとする架け替え制御が開始される。
ステップS3では、ステップS2でのアップ変速制御の開始との判断に続き、係合クラッチ83を係合締結させるローギア段へのダウン変速要求(第2の変速要求)が発生したか否かを判断する。YES(ダウン変速要求あり)の場合はステップS4へ進み、NO(ダウン変速要求なし)の場合はステップS5へ進む。
ここで、ダウン変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えばドライバーのアクセル踏み込み等によりダウン変速線を横切ったときに発生する。
ステップS4では、ステップS3でのダウン変速要求ありとの判断に続き、ダウン変速要求発生時の係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値よりも小さいか否かを判断する。YES(伝達トルク<所定値)の場合はステップS5へ進み、NO(伝達トルク≧所定値)の場合はステップS6へ進む。
ここで、「所定値」は、係合クラッチ83の開放動作が進んでしまい、締結動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまう値である。具体的には、シンクロナイザリング87からカップリングスリーブ86が引き抜かれ、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との同期が解消したことで、係合クラッチ83の伝達トルクが低減を開始したときの値である。
また、このアップ変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、カップリングスリーブ86のストローク位置に基づいて推定する。すなわち、図5に示すように、変速制御中のカップリングスリーブ86の位置と、係合クラッチ83の伝達トルクとの間には、カップリングスリーブ86の位置が開放位置から締結位置へ近くなるほど、係合クラッチ83の伝達トルクが増大する比例関係を有している。つまり、図5に示すマップを用いて、カップリングスリーブ86の位置から係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。なお、カップリングスリーブ86が係合締結位置まで移動したら、係合クラッチ83の伝達トルクは、変速機入力トルク(=モータ出力トルク)となる。
そして、この実施例1では、カップリングスリーブ86がシンクロナイザリング87の逆テーパ角87dをクラッチハブ85側に越えていたら、係合クラッチ83の伝達トルクが所定値よりも小さいと判断する。
このカップリングスリーブ86のストローク位置は、スリーブ位置センサ27によって検出される。
ステップS5では、ステップS3でのダウン変速要求なしとの判断、又は、ステップS4での伝達トルク<所定値との判断に続き、係合クラッチ83の伝達トルクが所定値よりも小さく、この係合クラッチ83の動作を開放から締結に切り替えると、無理なトルクが係合クラッチ83に作用してしまうとして、ステップS3で出力判断されたダウン変速要求を無視して、ステップS2で開始したアップ変速制御を継続して実行し、このアップ変速制御を終了させてエンドへ進む。
なお、アップ変速制御が終了した時点で、変速マップ上の運転点の位置等からダウン変速要求の発生が判断できれば、直ちにダウン変速制御が実行される。
ステップS6では、ステップS4での伝達トルク≧所定値との判断に続き、係合クラッチ83の伝達トルクが所定値よりも大きく、この係合クラッチ83の動作を開放から締結に切り替えても、無理なトルクが作用しないとして、ステップS2で開始したアップ変速制御を中断し、新たな変速要求であるダウン変速要求に基づくダウン変速制御を実行する。そして、このダウン変速制御を終了させてエンドへ進む。
ステップS7では、ステップS1でのアップ変速要求なしとの判断に続き、係合クラッチ83が開放しているハイギア段が選択されている状態で、係合クラッチ83を係合締結させるローギア段へのダウン変速要求(第1の変速要求)が発生したか否かを判断する。YES(ダウン変速要求あり)の場合はステップS8へ進み、NO(ダウン変速要求なし)の場合は変速要求が発生していないとしてステップS1へ戻る。
ここで、ダウン変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えばドライバーのアクセル踏み込み等によりダウン変速線を横切ったときに発生する。
ステップS8では、ステップS7でのダウン変速要求ありとの判断に続き、ダウン変速制御の実行が開始され、ステップS9へ進む。
このダウン変速制御の開始により、係合クラッチ83を開放→締結とし、摩擦クラッチ93を締結→開放へとする架け替え制御が開始される。
ステップS9では、ステップS8でのダウン変速制御の開始との判断に続き、係合クラッチ83を開放させるハイギア段へのアップ変速要求(第2の変速要求)が発生したか否かを判断する。YES(アップ変速要求あり)の場合はステップS10へ進み、NO(アップ速要求なし)の場合はステップS11へ進む。
ここで、アップ変速要求は、変速コントローラ21において用いる変速マップ(図6)において、車速と要求モータトルクで決まる運転点が、例えば車速が上昇すること等によりアップ変速線を横切ったときに発生する。
ステップS10では、ステップS9でのアップ変速要求ありとの判断に続き、アップ変速要求発生時の係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きいか否かを判断する。YES(伝達トルク>所定値)の場合はステップS11へ進み、NO(伝達トルク≦所定値)の場合はステップS12へ進む。
ここで、「所定値」は、係合クラッチ83の締結動作が進んでしまい、開放動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまう値である。具体的には、シンクロナイザリング87に対してカップリングスリーブ86が近接し、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との回転同期が成立することで、係合クラッチ83の伝達トルクが増大を開始したときの値である。
また、このダウン変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、摩擦クラッチ93の伝達トルクと、変速機入力トルクであるモータジェネレータMGのモータトルクの差から推定する。すなわち、モータトルクは、自動変速機3における総伝達トルクであり、この総伝達トルクを係合クラッチ83と摩擦クラッチ93によって分担して伝達することとなる。そのため、係合クラッチ伝達トルクと摩擦クラッチ伝達トルクの合計がモータトルクになる。これにより、下記式(1)が成立することがわかる。
係合クラッチ伝達トルク=モータトルク−摩擦クラッチ伝達トルク …(1)
そのため、この式(1)から係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。なお、モータトルクは、例えばインバータ内に設けた電流センサによって、モータジェネレータMGに出力された電流値から推定する。また、摩擦クラッチ伝達トルクは、スライダ位置センサ26によって検出される摩擦クラッチ93のスライダ96の位置から推定する。
ステップS11では、ステップS9でのアップ変速要求なしとの判断、又は、ステップS10での伝達トルク>所定値との判断に続き、係合クラッチ83の伝達トルクが所定値よりも大きく、この係合クラッチ83の動作を締結から開放に切り替えると、無理なトルクが係合クラッチ83に作用してしまうとして、ステップS9で出力判断されたアップ変速要求を無視して、ステップS8で開始したダウン変速制御を継続して実行し、このダウン変速制御を終了させてエンドへ進む。
なお、ダウン変速制御が終了した時点で、変速マップ上の運転点の位置等からアップ変速要求の発生が判断できれば、直ちにアップ変速制御が実行される。
ステップS12では、ステップS10での伝達トルク≦所定値との判断に続き、係合クラッチ83の伝達トルクが所定値よりも小さく、この係合クラッチ83の動作を締結から開放に切り替えても、無理なトルクが作用しないとして、ステップS8で開始したダウン変速制御を中断し、新たな変速要求であるアップ変速要求に基づくアップ変速制御を実行する。そして、このアップ変速制御を終了させてエンドへ進む。
次に、作用を説明する。
実施例1の自動変速機の制御装置における作用を、「通常の変速制御作用」、「アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるアップ変速継続作用」、「アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるダウン変速実行作用」、「ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるダウン変速継続作用」、「ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるアップ変速実行作用」に分けて説明する。
[通常の変速制御作用]
変速コントローラ21は、車速センサ22からの車速と、アクセル開度センサ23からのアクセル開度と、ブレーキストロークセンサ24からのブレーキストローク量と、を入力する。そして、これら入力情報と、図6に例示する変速マップに基づいて、以下に述べるように、自動変速機3の変速制御を行う。
図6の変速マップにおいて、太い実線は、車速ごとのモータジェネレータMGの最大モータ駆動トルク値を結んで得られる最大モータ駆動トルク線と、車速ごとのモータジェネレータMGの最大モータ回生トルク値を結んで得られる最大モータ回生トルク線を示し、これらにより囲まれた領域が実用可能領域である。
この実用可能領域内に、自動変速機3の変速機損失及びモータジェネレータMGのモータ損失を考慮して、一点鎖線で示すアップシフト線(Low→High)及び破線で示すダウンシフト線(High→Low)を設定する。なお、アップシフト線(Low→High)は、ダウンシフト線(High→Low)よりも、ヒステリシス分だけ高車速側に設定する。
そして、変速コントローラ21において、アクセルペダルが踏み込まれているドライブ走行時は、アクセル開度から求めた要求モータ駆動トルクと、車速と、により運転点を決定する。一方、ブレーキペダルが踏み込まれている制動時には、ブレーキストローク量から求めた要求モータ回生トルクと、車速と、により運転点を決定する。運転点を決定すると、図6の変速マップ上で、運転点がロー側変速段領域に存在するか、又は、運転点がハイ側変速段領域に存在するかによって、現在の運転状態に好適な目標変速段(ローギア段又はハイギア段)を求める。
次に、求めた目標変速段がローギア段であれば、係合クラッチ83を係合締結状態とし、摩擦クラッチ93を開放状態とするローギア段の選択状態にする。また、求めた目標変速段がハイギア段であれば、摩擦クラッチ93を摩擦締結状態とし、係合クラッチ83を開放状態とするハイギア段の選択状態にする。
さらに、ローギア段の選択状態のとき、実用可能領域内の運転点がアップシフト線(Low→High)を横切ってハイ側変速段領域に入ると、目標変速段をハイギア段に切り替える。
一方、ハイギア段の選択状態である場合、実用可能領域内の運転点がダウンシフト線(High→Low)を横切ってロー側変速段領域に入ると、目標変速段をローギア段に切り替える。
そして、目標変速段の切り替えによりアップ変速要求又はダウン変速要求が出力され、変速要求に基づく変速制御(アップ変速制御又はダウン変速制御)が実行される。
通常変速制御において、自動変速機3をローギア段からハイギア段へ移行させるアップ変速制御は、係合締結状態の係合クラッチ83を開放し、開放状態の摩擦クラッチ93を摩擦締結するという架け替え変速により行われる。一方、自動変速機3をハイギア段からローギア段へ移行させるダウン変速制御は、開放状態の係合クラッチ83を係合締結し、摩擦締結状態の摩擦クラッチ93を開放するという架け替え変速により行われる。
[アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるアップ変速継続]
図7は、実施例1の制御装置において、1→2変速制御中に2→1変速要求があっても1→2変速を継続した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・モータ回転数・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図7に基づいて、アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるアップ変速継続作用を説明する。
図7に示すタイムチャートにおける時刻tにおいて、ローギア段の選択状態での走行中、実用可能領域内の運転点がアップシフト線(Low→High)を横切ってハイ側変速段領域に入ることで、アップ変速要求(第1の変速要求)が出力される。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2へと進み、アップ変速制御の実行が開始され、まず、締結側要素である摩擦クラッチ93のスライダ96が電動アクチュエータ42によって駆動されて、スライダ96のがた詰が行われる。つまり、スライダ96は、開放位置から次第に締結位置へと移動する。
時刻tにおいて、スライダ96のがた詰が終了すると、摩擦クラッチ93の伝達トルクが増加し始めると共に、モータジェネレータMGがトルク制御され、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクを増加する。ここで、開放側要素である係合クラッチ83の伝達トルクは、自動変速機3への入力トルク(モータトルク)と、摩擦クラッチ93の伝達トルクとの差分となるため、徐々に減少する。
そして、摩擦クラッチ93の伝達トルクを増加している途中の時刻tにおいて、係合クラッチ83を開放させる開放指令が出力される。なお、この開放指令は、変速コントローラ21から位置サーボコントローラ51を介して電動アクチュエータ41へと出力される。また、この開放指令は、自動変速機3への入力トルク(モータトルク)と、摩擦クラッチ93の伝達トルクが一致するタイミングに合わせて、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86が開放位置に達する時間(時刻t)から逆算して求められる。
時刻tにおいて、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86が、締結位置から開放位置に向かって移動を開始する。そして、時刻tにおいて、カップリングスリーブ86がシンクロナイザリング87の逆テーパ角87dをクラッチハブ85側に越えたことで、係合クラッチ伝達トルクが予め設定した所定値を下回ったと推定される。これにより、係合クラッチ83の開放動作が進んでしまい、締結動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまうと判断される。
その後、時刻tαにおいて、運転点がダウンシフト線(High→Low)を横切ってダウン側変速段領域に入ることで、ダウン変速要求(第2の変速要求)が出力される。しかしながら、この時刻tαの時点では、すでに係合クラッチ伝達トルクが所定値を下回り、カップリングスリーブ86のストローク駆動が行われており、締結動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまうと判断されている(時刻t)。
このため、図4のフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進み、アップ変速制御が継続される。
すなわち、係合クラッチ83の開放動作は継続し、時刻tにおいて、カップリングスリーブ86のチャンファ部86bと、シンクロナイザリング87のチャンファ部87bとの接触が解消され、係合クラッチ83は完全に開放する。これにより、モータトルクと摩擦クラッチ伝達トルクが一致し、係合クラッチ伝達トルクはゼロになる。そして、モータジェネレータMGの回転数制御が開始される。なお、このとき、摩擦クラッチ93のスライダ96は、摩擦クラッチ93がスリップ締結状態を維持する位置で停止する。
時刻tにおいてモータ回転数がアップ変速後の目標回転数に一致したら、摩擦クラッチ93のスライダ96を締結方向に駆動し、時刻tにおいて摩擦クラッチ93が完全締結さしたらアップ変速制御が終了し、ハイギア段が選択された状態になる。
このように、実施例1の制御装置では、アップ変速要求による係合クラッチ83を開放させる変速制御の途中、この係合クラッチ83を締結させるダウン変速要求があったとき、このダウン変速要求が発生した時点の係合クラッチ伝達トルクが、予め設定した所定値よりも小さい場合には、アップ変速要求によるアップ変速制御を継続する。
そのため、アップ変速制御の途中で、開放動作が進んでいる状態から係合クラッチ83が締結状態になることが防止され、カップリングスリーブ86やシンクロナイザリング87に対して無理なトルクが作用することを防止できる。これにより、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
[アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるダウン変速実行作用]
図8は、実施例1の制御装置において、1→2変速制御中に2→1変速要求があったことで2→1変速を実行した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・モータ回転数・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図8に基づいて、アップ変速中のダウン変速要求発生時におけるダウン変速実行作用を説明する。
図8に示すタイムチャートにおける時刻t11において、ローギア段の選択状態での走行中、実用可能領域内の運転点がアップシフト線(Low→High)を横切ってハイ側変速段領域に入ることで、アップ変速要求(第1の変速要求)が出力される。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS2へと進み、アップシフト制御の実行が開始され、まず、締結側要素である摩擦クラッチ93のスライダ96が電動アクチュエータ42によって駆動されて、スライダ96のがた詰が行われる。つまり、スライダ96は、開放位置から次第に締結位置へと移動する。
時刻t12において、スライダ96のがた詰が終了すると、摩擦クラッチ93の伝達トルクが増加し始めると共に、モータジェネレータMGがトルク制御され、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクを増加する。ここで、開放側要素である係合クラッチ83の伝達トルクは、自動変速機3への入力トルク(モータトルク)と、摩擦クラッチ93の伝達トルクとの差分となるため、徐々に減少する。
そして、摩擦クラッチ93の伝達トルクを増加している途中の時刻t13において、係合クラッチ83を開放させる開放指令が出力される。その後、時刻tβにおいて、運転点がダウンシフト線(High→Low)を横切ってダウン側変速段領域に入ることで、ダウン変速要求(第2の変速要求)が出力される。
ここで、ダウン変速要求が出力された時刻tβ時点では、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86はストローク駆動しておらず、カップリングスリーブ86がシンクロナイザリング87の逆テーパ角87dをクラッチハブ85側に越えることはない。これにより、この時刻tβ時点での係合クラッチ83の伝達トルクは、予め設定した所定値を下回っていないと推定される。
そのため、図4のフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS6へと進む。これにより、アップ変速制御が中断され、ダウン変速制御が実行される。つまり、自動変速機3はローギア段の選択状態へと戻ることとなる。
これにより、ダウン変速要求の出力直後に、係合クラッチ83を締結させる締結指令が出力され、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86は移動することなく、締結位置に留まり、完全締結状態を維持する。
一方、摩擦クラッチ93のスライダ96は、ダウン変速要求が出力された時刻tβから開放位置に向かって移動を開始し、摩擦クラッチ93の伝達トルクは低減し始める。また、モータジェネレータMGはトルク制御され、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクを低減する。なお、係合クラッチ83の伝達トルクは、自動変速機3への入力トルク(モータトルク)と、摩擦クラッチ93の伝達トルクとの差分となるため、徐々に増加する。
そして、時刻t14において、摩擦クラッチ93のスライダ96が開放状態に達したら、摩擦クラッチ伝達トルクはゼロになり、モータトルクと係合クラッチ83の伝達トルクが一致する。これにより、ダウン変速制御が終了し、ローギア段が選択された状態になる。
このように、実施例1の制御装置では、アップ変速要求による係合クラッチ83を開放させる変速制御の途中、この係合クラッチ83を締結させるダウン変速要求があったとき、このダウン変速要求が発生した時点の係合クラッチ伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、アップ変速制御を中止し、ダウン変速要求によるダウン変速制御を実行する。
そのため、アップ変速制御の途中であっても、直ちにダウン変速要求に応えることができ、新たに生じた変速要求を満たすことができる。また、係合クラッチ83の開放動作は行われず、係合締結状態が維持される。これにより、係合クラッチ83に無理なトルクが作用することが防止でき、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
[ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるダウン変速継続作用]
図9は、実施例1の制御装置において、2→1変速制御中に1→2変速要求があっても2→1変速を継続した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・アクセル開度・モータ回転数・モータトルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図9に基づいて、ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるダウン変速継続作用を説明する。
図9に示すタイムチャートにおける時刻t21において、ハイギア段の選択状態での走行中、アクセル開度が増大し、実用可能領域内の運転点がダウンシフト線(High→Low)を横切ってハイ側変速段領域に入ることで、ダウン変速要求(第1の変速要求)が出力される。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS7→ステップS8へと進み、ダウン変速制御の実行が開始され、まず、モータジェネレータMGのトルク制御が行われてモータトルクを増大する。このとき、摩擦クラッチ93が締結しているので、この摩擦クラッチ93の伝達トルクは、モータトルクの増大に伴って増加する。
時刻t22において、モータトルクが所定値に達すると、開放側要素である摩擦クラッチ93のスライダ96が電動アクチュエータ42によって駆動され、スライダ96は、締結位置から次第に開放位置へと移動する。
時刻t23において、摩擦クラッチ93がスリップ締結状態になったら、モータジェネレータMGは回転数制御に切り替えられ、自動変速機3への入力回転数と、自動変速機3の出力回転数が一致するように、回転同期制御が行われる。なお、このとき、摩擦クラッチ93のスライダ96は、摩擦クラッチ93がスリップ締結状態を維持する位置で停止する。
時刻t24において、自動変速機3における入出力差回転数が所定値に達したら、モータジェネレータMGによる回転同期は完了したとして、モータジェネレータMGは再びトルク制御に切り替えられる。また、締結側要素である係合クラッチ83のカップリングスリーブ86が電動アクチュエータ41によって駆動され、カップリングスリーブ86はクラッチギア84側に移動を開始する。これにより、クラッチギア84に設けたコーン部84bと、シンクロナイザリング87との回転同期制御が行われる。
このとき、回転同期初期では、電動アクチュエータ41によるトルク制御が行われ、シンクロナイザリング87とコーン部84bとの間に生じる摩擦力によって、係合クラッチ83の伝達トルクは一時的に上昇する。そして、シンクロナイザリング87のスプライン部87aのチャンファ部87bと、カップリングスリーブ86のスプライン部86aのチャンファ部86bとが、軸方向で向き合ったインデックス状態(図3(b)参照)になったら、電動アクチュエータ41によるストローク制御に切り替わり、係合クラッチ伝達トルクはゼロになる。その後、カップリングスリーブ86とシンクロナイザリング87との回転同期が成立したら、カップリングスリーブ86のスプライン部86aが、クラッチギア84のスプライン部84aを押し分け、クラッチギア84のスプライン部84aと噛み合うこととなる。
時刻t25において、カップリングスリーブ86が締結位置に達すると、カップリングスリーブ86が、クラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の双方に噛合し、係合クラッチ83は係合締結状態となる。
これにより、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクが目標トルクになるように、このモータトルクを低減する。また、摩擦クラッチ93のスライダ96は、開放位置に向かって再びストローク駆動を開始する。これにより、摩擦クラッチ93の伝達トルクは低下する。ここで、締結側要素である係合クラッチ83の伝達トルクは、自動変速機3への入力トルク(モータトルク)と、摩擦クラッチ93の伝達トルクとの差分となるため、徐々に増加する。
時刻t26において、モータトルクから摩擦クラッチ伝達トルクを差し引くことで求めた係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値を上回ったと推定される。これにより、係合クラッチ83の締結動作が進んでしまい、開放動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまうと判断される。
その後、時刻tγにおいて、運転点がアップシフト線(Low→High)を横切ってアップ側変速段領域に入ることで、アップ変速要求(第2の変速要求)が出力される。しかしながら、この時刻tγの時点では、すでに係合クラッチ伝達トルクが所定値を上回り、カップリングスリーブ86のストローク駆動が行われており、締結動作に切り替えると係合クラッチ83に無理なトルクがかかってしまうと判断されている(時刻t26)。
このため、図4のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11へと進み、ダウン変速制御が継続される。
すなわち、係合クラッチ83の締結動作は継続し、時刻t27において、摩擦クラッチ93のスライダ96が開放状態に達したら、摩擦クラッチ伝達トルクはゼロになり、モータトルクと係合クラッチ83の伝達トルクが一致する。これにより、ダウン変速制御が終了し、ローギア段が選択された状態になる。
このように、実施例1の制御装置では、アップ変速要求による係合クラッチ83を開放させる変速制御の途中、この係合クラッチ83を締結させるダウン変速要求があったとき、このダウン変速要求が発生した時点の係合クラッチ伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、ダウン変速要求によるダウン変速制御を継続する。
そのため、ダウン変速制御の途中で、締結動作が進んでいる状態から係合クラッチ83が開放状態になることが防止され、カップリングスリーブ86やシンクロナイザリング87に対して無理なトルクが作用することを防止できる。これにより、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
[ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるアップ変速実行作用]
図10は、実施例1の制御装置において、2→1変速制御中に1→2変速要求があったことで1→2変速を実行した際の自動変速機出力回転数・自動変速機出力トルク・アクセル開度・モータ回転数・モータトルク・摩擦クラッチ伝達トルク・係合クラッチ伝達トルク・係合クラッチスリーブ位置・摩擦クラッチスライダ位置の各特性を示すタイムチャートである。以下、図10に基づいて、ダウン変速中のアップ変速要求発生時におけるアップ変速実行作用を説明する。
図10に示すタイムチャートにおける時刻t31において、ハイギア段の選択状態での走行中、アクセル開度が増大し、実用可能領域内の運転点がダウンシフト線(High→Low)を横切ってハイ側変速段領域に入ることで、ダウン変速要求(第1の変速要求)が出力される。
これにより、図4に示すフローチャートにおいてステップS1→ステップS7→ステップS8へと進み、ダウン変速制御の実行が開始され、まず、モータジェネレータMGのトルク制御が行われてモータトルクを増大する。このとき、摩擦クラッチ93が締結しているので、この摩擦クラッチ93の伝達トルクは、モータトルクの増大に伴って増加する。
時刻t32において、モータトルクが所定値に達すると、開放側要素である摩擦クラッチ93のスライダ96が電動アクチュエータ42によって駆動され、スライダ96は、締結位置から次第に開放位置へと移動する。
時刻t33において、摩擦クラッチ93がスリップ締結状態になったら、モータジェネレータMGは回転数制御に切り替えられ、自動変速機3への入力回転数と、自動変速機3の出力回転数が一致するように、回転同期制御が行われる。なお、このとき、摩擦クラッチ93のスライダ96は、摩擦クラッチ93がスリップ締結状態を維持する位置で停止する。
時刻t34において、自動変速機3における入出力差回転数が所定値に達したら、モータジェネレータMGによる回転同期は完了したとして、モータジェネレータMGは再びトルク制御に切り替えられる。また、締結側要素である係合クラッチ83のカップリングスリーブ86が電動アクチュエータ41によって駆動され、カップリングスリーブ86はクラッチギア84側に移動を開始する。これにより、クラッチギア84に設けたコーン部84bと、シンクロナイザリング87との回転同期制御が行われる。
その後、時刻tδにおいて、運転点がアップシフト線(Low→High)を横切ってアップ側変速段領域に入ることで、アップ変速要求(第2の変速要求)が出力される。
ここで、アップ変速要求が出力された時刻tδ時点では、モータトルクと摩擦クラッチ伝達トルクは一致しており、このモータトルクと摩擦クラッチの差分である係合クラッチ83の伝達トルクはゼロになっていると推定される。これにより、この時刻tδ時点での係合クラッチ83の伝達トルクは、予め設定した所定値を上回ることはないと推定される。
そのため、図4のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS12へと進む。これにより、ダウン変速制御が中断され、アップ変速制御が実行される。つまり、自動変速機3はハイギア段の選択状態へと戻ることとなる。
これにより、アップ変速要求が出力された時刻tδから、自動変速機3への入力トルクであるモータトルクが目標トルクになるように、このモータトルクを低減する。このとき、係合クラッチ83は開放状態であるため、モータトルクの低減に伴って摩擦クラッチ伝達トルクも低減する。
また、カップリングスリーブ86は、クラッチギア84及びクラッチハブ85の外周クラッチ歯の双方に噛合することなく、開放位置へ向かって移動を開始する。一方、摩擦クラッチ93のスライダ96は、締結位置に向かって再びストローク駆動を開始する。
そして、時刻t35において、モータトルクは目標トルクに一致し、摩擦クラッチ93のスライダ96が摩擦締結位置に達すると共に、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86が開放位置に達したら、モータ回転数はダウン変速要求出力前(時刻t31以前)の状態になる。これにより、アップ変速制御が終了し、ハイギア段が選択された状態になる。
このように、実施例1の制御装置では、ダウン変速要求による係合クラッチ83を締結させる変速制御の途中、この係合クラッチ83を開放させるアップ変速要求があったとき、このアップ変速要求が発生した時点の係合クラッチ伝達トルクが、予め設定した所定値よりも小さい場合には、ダウン変速制御を中止し、アップ変速要求によるアップ変速制御を実行する。
そのため、ダウン変速制御の途中であっても、直ちにアップ変速要求に応えることができ、新たに生じた変速要求を満たすことができる。また、係合クラッチ83は締結されず、開放状態が維持される。これにより、係合クラッチ83に無理なトルクが作用することが防止でき、係合クラッチ83の摩耗を低減して、耐久性が損なわれることを防止できる。
このように、実施例1の自動変速機の制御装置では、係合クラッチ83を開放させるアップ変速制御中に、係合クラッチ83を締結させるダウン変速要求があったときには、ダウン変速要求が発生した時点での係合クラッチ伝達トルクに基づいて、アップ変速制御の継続可否を判断している。また、係合クラッチ83を締結させるダウン変速制御中に、係合クラッチ83を開放させるアップ変速要求があったときには、アップ変速要求が発生した時点での係合クラッチ伝達トルクに基づいて、ダウン変速制御の継続可否を判断している。
このため、係合クラッチ伝達トルクによって左右される係合クラッチ83に作用するトルクに基づいて変速制御の継続可否判断を行うことができる。これにより、係合クラッチ83に無理なトルクが作用して、クラッチ耐久性が損なわれることを防止しつつ、新たに生じた変速要求に最大限応えることができる。
さらに、係合クラッチ83を開放させるアップ変速制御中に、係合クラッチ83を締結させるダウン変速要求があったときには、ダウン変速要求発生時点の係合クラッチ伝達トルクが所定値よりも小さい場合に、アップ変速制御を継続する。
また、係合クラッチ83を締結させるダウン変速制御中に、係合クラッチ83を開放させるアップ変速要求があったときには、アップ変速要求発生時点での係合クラッチ伝達トルクが所定値よりも大きい場合に、ダウン変速制御を継続する。
そのため、アップ変速制御中にダウン変速要求が発生した場合であっても、逆に、ダウン変速制御中にアップ変速要求が発生した場合であっても、実行中の変速制御の継続を適切、且つ、容易に判断することができる。
しかも、実施例1の制御装置では、アップ変速制御中の係合クラッチ伝達トルクを、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置から推定している。そのため、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないため、トルク推定精度の向上を図ることができる。
また、ダウン変速制御中の係合クラッチ伝達トルクを、モータトルクと摩擦クラッチ伝達トルクの差分から推定している。そのため、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置が変化していなくても、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 車両の駆動系に設けられ、変速要素として係合クラッチ83を有する自動変速機3と、該自動変速機3の変速制御を行う変速制御手段(変速コントローラ21)と、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、第1の変速要求(アップ変速要求/ダウン変速要求)による前記係合クラッチ83を開放/締結させる変速制御(アップ変速制御/ダウン変速制御)の途中、前記係合クラッチ83を締結/開放させる第2の変速要求(ダウン変速要求/アップ変速要求)があったとき、
前記第2の変速要求(ダウン変速要求/アップ変速要求)が発生した時点での前記係合クラッチ83の伝達トルクに基づいて、前記第1の変速要求(アップ変速要求/ダウン変速要求)による変速制御(アップ変速制御/ダウン変速制御)の継続可否を判断する構成とした。
これにより、変速制御中に係合クラッチ83の動作制御の切り替えが必要な新たな変速要求があっても、クラッチ耐久性の低下を防止しつつ、新たな変速要求にできる限り応えることができる。
(2) 前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、第1の変速要求(アップ変速要求)による前記係合クラッチ83を開放させる変速制御(アップ変速制御)の途中、前記係合クラッチを締結させる第2の変速要求(ダウン変速要求)があったとき、
前記第2の変速要求(ダウン変速要求)が発生した時点での前記係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値よりも小さい場合には、前記第1の変速要求(アップ変速要求)による変速制御(アップ変速制御)を継続する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、すでに実行中のアップ変速制御の継続か否かを適切、且つ、容易に判断することができる。
(3) 前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、第1の変速要求(ダウン変速要求)による前記係合クラッチ83を締結させる変速制御(ダウン変速制御)の途中、前記係合クラッチ83を開放させる第2の変速要求(アップ変速要求)があったとき、
前記第2の変速要求(アップ変速要求)が発生した時点での前記係合クラッチ83の伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、前記第1の変速要求(ダウン変速要求)による変速制御(ダウン変速制御)を継続する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、すでに実行中のダウン変速制御の継続か否かを適切、且つ、容易に判断することができる。
(4) 前記係合クラッチ83は、係合クラッチ用アクチュエータ(カップリングスリーブ86)をストロークさせることによって締結/開放が制御され、
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、前記係合クラッチ83を開放させる変速制御(アップ変速制御)中の前記係合クラッチ83の伝達トルクを、前記係合クラッチ用アクチュエータ(カップリングスリーブ86)のストローク位置から推定する構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないのでトルク推定精度の向上を図ることができる。
(5) 前記車両の駆動系に、駆動源となるモータ(モータジェネレータMG)を備えると共に、前記自動変速機3は、前記係合クラッチ83と、前記係合クラッチ83と架け替え変速される摩擦クラッチ93とを有し、
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、前記係合クラッチ83の伝達トルクを、前記摩擦クラッチ93の伝達トルクと前記モータ(モータジェネレータMG)の出力トルクの差から推定する構成とした。
これにより、(1)〜(3)の効果に加え、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置がわずかしか変化していなくても、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
(実施例2)
実施例2は、係合クラッチ伝達トルクの推定を、実施例1とは異なる構成とした例である。
図11は、実施例2の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図11に基づき、実施例2の自動変速機の制御装置を説明する。なお、実施例1と同等のステップについては、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図11に示すステップS3において、ダウン変速要求ありと判断されると、ステップS204へと進む。このステップS204では、ステップS3でのダウン変速要求ありとの判断に続き、係合クラッチ83の伝達トルクが予め設定した所定値よりも小さいか否かを判断する。YES(伝達トルク<所定値)の場合はステップS5へ進み、NO(伝達トルク≧所定値)の場合はステップS6へ進む。
ここで、アップ変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、アクセル開度の大きさに基づいて推定する。すなわち、図12に示すように、アクセル開度が大きくなるほど、係合クラッチ83の伝達トルクが増大する比例関係を有している。つまり、図12に示すマップを用いて、アクセル開度の大きさから係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。このアクセル開度は、アクセル開度センサ23によって検出される。
このように、アクセル開度に基づいてアップ変速制御中の係合クラッチ伝達トルクを推定することで、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないため、トルク推定精度の向上を図ることができる。
なお、この「アクセル開度」は、要求モータ駆動トルク、つまりドライバー要求駆動力に比例するものであり、ドライバー要求駆動力を示すパラメータである。そのため、アクセル開度に基づいて係合クラッチ伝達トルクを推定するとは、ドライバー要求駆動力に基づいて係合クラッチ伝達トルクを推定することである。
また、図11に示すステップS9において、アップ変速要求ありと判断されると、ステップS210へと進む。このステップS210では、ステップS9でのアップ変速要求ありとの判断に続き、係合クラッチ83の伝達トルクが予め設定した所定値よりも大きいか否かを判断する。YES(伝達トルク>所定値)の場合はステップS11へ進み、NO(伝達トルク≦所定値)の場合はステップS12へ進む。
ここで、ダウン変速制御中の係合クラッチ83の伝達トルクは、摩擦クラッチ93のスライダ96のストローク量に基づいて推定する。すなわち、実施例1で述べたように、係合クラッチ83の伝達トルクは、モータトルクと摩擦クラッチ伝達トルクの差から推定することができる。ここで、摩擦クラッチ93の伝達トルクは、スライダ96の位置によって決まる。そのため、摩擦クラッチ93のスライダ96のストローク量によって、係合クラッチ伝達トルクの大きさが左右されることとなる。そのため、スライダ96のストローク量に基づいて、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
なお、スライダ96のストローク量が同じであっても、そのときのモータトルクが異なると摩擦クラッチ伝達トルクが異なり、係合クラッチ伝達トルクも異なることとなる。つまり、摩擦クラッチ93のスライダストローク量から、係合クラッチ伝達トルクを一義的に推定することはできない。しかしながら、係合クラッチ伝達トルクが発生したことは推定できる。そのため、「所定値」を「ゼロ」に設定することで、このステップS210において、係合クラッチ83の伝達トルクが予め設定した所定値よりも大きいか否かを判断することが可能となる。
そして、このように、アクセル開度に基づいてアップ変速制御中の係合クラッチ伝達トルクを推定することで、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないため、トルク推定精度の向上を図ることができる。
アクセル開度の大きさに基づいて推定する。すなわち、図12に示すように、アクセル開度が大きくなるほど、係合クラッチ83の伝達トルクが増大する比例関係を有している。つまり、図12に示すマップを用いて、アクセル開度の大きさから係合クラッチ83の伝達トルクを一義的に推定することができる。このアクセル開度は、アクセル開度センサ23によって検出される。
このように、摩擦クラッチ93のスライダストローク量に基づいてダウン変速制御中の係合クラッチ伝達トルクを推定することで、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置が変化していなくても、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
次に、効果を説明する。
実施例2の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(6) 前記変速制御手段は、前記係合クラッチを開放させる変速制御中の前記係合クラッチの伝達トルクを、ドライバーの要求駆動力から推定する構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、係合クラッチ伝達トルクを容易に推定することができる上、トルクセンサを用いないのでトルク推定精度の向上を図ることができる。
(7) 前記自動変速機3は、前記係合クラッチ83と、前記係合クラッチ83と架け替え変速される摩擦クラッチ93とを有し、
前記摩擦クラッチ93は、摩擦クラッチ用アクチュエータ(スライダ96)をストロークさせることによって締結/開放が制御され、
前記変速制御手段(変速コントローラ21)は、前記係合クラッチ83の伝達トルクを、前記摩擦クラッチ用アクチュエータ(スライダ96)のストローク量から推定する構成とした。
これにより、(1)〜(3)の効果に加え、係合クラッチ83のカップリングスリーブ86の位置がわずかしか変化していなくても、係合クラッチ伝達トルクを推定することができる。
以上、本発明の自動変速機の制御装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
上記各実施例では、自動変速機として、係合クラッチ83と摩擦クラッチ93を有し、ハイギア段とローギア段の2速変速段による変速機の例を示した。しかし、自動変速機としては、係合クラッチを有する自動変速機であればよく、変速要素として係合クラッチのみを有する変速機であったり、2速変速段以上の変速段を有する変速機であってもよい。
上記各実施例では、本発明の自動変速機の制御装置を、駆動源にモータジェネレータを備えた電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の制御装置は、駆動源にエンジンとモータジェネレータを備えたハイブリッド車両に適用することもできる。例えば、駆動源にエンジンと2つのモータジェネレータを備えたハイブリッド車両としては、図13に示すように、実施例1の駆動系に、エンジン1、発電用モータジェネレータMG1、動力分配装置2を加えたものとしても良い。さらに、本発明の制御装置は、通常のエンジン駆動車や、燃料電池車等の電動車両にも適用することができる。
さらに、実施例1では、アップ変速制御中の係合クラッチ伝達トルクをカップリングスリーブ86の位置に基づいて推定する例を示した。また、実施例2では、アップ変速中の係合クラッチ伝達トルクをアクセル開度に基づいて推定する例を示した。しかしながら、これに限らない。アップ変速中の係合クラッチ伝達トルクは、例えば、モータトルクと摩擦クラッチ伝達トルクとの差から推定してもよいし、摩擦クラッチ93のスライダストローク量から推定してもよい。
また、実施例2において、ドライバー要求駆動力を示すパラメータとしてアクセル開度を用いる例を示したが、これに限らず、例えばアクセル開速度(アクセル開度の変化速度)等のように、要求駆動力に比例する値であれば、他の値を用いてもよい。
MG モータジェネレータ(モータ)
3 自動変速機
6 変速機入力軸
7 変速機出力軸
8 ロー側変速機構
81,82 低速段ギア対
83 係合クラッチ(噛合いクラッチ)
9 ハイ側変速機構
91,92 高速段ギア対
93 摩擦クラッチ
11,12 ファイナルドライブギア組
13 ディファレンシャルギア装置
14 駆動車輪
21 変速コントローラ(変速制御手段)
22 車速センサ
23 アクセル開度センサ
24 ブレーキストロークセンサ
25 前後Gセンサ
26 スライダ位置センサ
27 スリーブ位置センサ
28 モータコントローラ
29 ブレーキコントローラ
30 統合コントローラ

Claims (4)

  1. 車両の駆動系に設けられ、変速要素として係合締結する噛合いクラッチを有する自動変速機と、該自動変速機の変速制御を行う変速制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、第1の変速要求による前記噛合いクラッチを開放させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを締結させる第2の変速要求があったとき、
    前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれている場合、前記第1の変速要求による変速制御を継続し、前記第2の変速要求が発生した時点で前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれていない場合、前記第1の変速要求による変速制御を中断し、前記第2の変速要求による変速制御を実行する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記車両の駆動系に、駆動源となるモータを備えると共に、前記自動変速機は、前記噛合いクラッチと、前記噛合いクラッチと架け替え変速される摩擦クラッチとを有し、
    前記変速制御手段は、前記第2の変速要求による前記噛合いクラッチを締結させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを開放させる前記第1の変速要求があったとき、
    前記第1の変速要求が発生した時点で、前記摩擦クラッチの伝達トルクと前記モータの出力トルクの差から推定した前記噛合いクラッチの伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、前記第2の変速要求による変速制御を継続し、前記第1の変速要求が発生した時点での前記噛合いクラッチの伝達トルクが、前記所定値以下の場合には、前記第2の変速要求による変速制御を中断し、前記第1の変速要求による変速制御を実行する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  3. 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記自動変速機は、前記噛合いクラッチと、前記噛合いクラッチと架け替え変速されると共に摩擦クラッチ用アクチュエータをストロークさせることによって締結/開放が制御される摩擦クラッチとを有し、
    前記変速制御手段は、前記第2の変速要求による前記噛合いクラッチを締結させる変速制御の途中、前記噛合いクラッチを開放させる前記第1の変速要求があったとき、
    前記第1の変速要求が発生した時点で、前記摩擦クラッチ用アクチュエータのストローク量から推定した前記噛合いクラッチの伝達トルクが、予め設定した所定値よりも大きい場合には、前記第2の変速要求による変速制御を継続し、前記第1の変速要求が発生した時点での前記噛合いクラッチの伝達トルクが、前記所定値以下の場合には、前記第2の変速要求による変速制御を中断し、前記第1の変速要求による変速制御を実行する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記噛合いクラッチは、噛合いクラッチ用アクチュエータをストロークさせることによって締結/開放が制御され、
    前記変速制御手段は、前記噛合いクラッチを開放させる変速制御中前記噛合いクラッチの歯が引き抜かれたことを、前記噛合いクラッチ用アクチュエータのストローク位置から推定する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
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