天空光は、太陽から直接到達する光(以下、直接光とも称する)に比べると弱い光である。このため、多くの光を取り込んで屋内の明るさを十分に確保するためには、上記特許文献3に記載された採光装置の反射部材を大型化すると共に、建物の開口部を大きくする必要があるようにも思われる。
しかしながら、建物の開口部を徒に大きくしてしまうと、建物の断熱性や防犯性が低下することに加え、プライバシーを確保することが困難になるという問題も生じる。このため、建物の開口部は可能な限り小さくしなければならない。
そこで、建物の開口部を大きくすることなく多くの天空光を取り込むための一つの方法として、反射部材の反射面を平坦面ではなく凹形状の曲面(反射面の中央部が屋外側に向けて後退するような曲面)とし、反射光を収束させて開口部を通過させることが挙げられる。
しかしながら、この場合には、反射面のうち最も下方側の領域の傾き、すなわち、開口部に最も近い領域の傾きが水平に近づくこととなる。このような領域に上方から天空光が入射すると、当該領域で反射された光が開口部の内壁面(天面)に当たってしまい、屋内に到達しない場合がある。換言すれば、反射面で反射された光の一部が屋内に到達せず、反射面の一部が有効に利用されない場合がある。このような現象は、十分な量の光を屋内に取り込む構成としながらも、屋外側に配置された反射部材を可能な限り小型化するという観点からは好ましいものではない。
反射面の全体を有効に利用するために、反射面をより大きく傾斜させることも考えられる。すなわち、反射面全体の(平均的な)法線方向が水平面に対して成す角度を、より小さくすることも考えられる。しかし、このような構成においては、開口部の下端から反射部材の上端までの高さが大きくなり過ぎてしまうため、屋内側から見た場合における意匠性が低下してしまうという問題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、反射部材の上端の位置が高くなりすぎることを抑制しながらも、十分な量の光を屋内に取り込むことができる採光装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る採光装置は、屋外の光を、建物外壁に形成された開口部を通じて屋内に取り込むための採光装置であって、屋外の光を前記開口部に向けて反射するように、その反射面が水平面に対して傾斜した状態で屋外側に配置されている反射部材を備えており、前記反射部材を側面視した場合において、前記反射面は、鉛直下方に向けて入射した平行光が反射される方向を反射方向と定義したときに、前記開口部に近い下方側の領域における前記反射方向が、前記開口部から遠い上方側の領域における前記反射方向よりも、水平面に対して成す角度において小さくなるように形成されていることを特徴としている。
本発明では、建物外壁に形成された開口部よりも屋外側に配置され、屋外の光を開口部に向けて反射する反射部材を有している。建物外壁に沿って鉛直下方に向かう天空光を反射部材が反射することで、開口部を通じて反射光を屋内に取り込むことができる。
ここで、鉛直下方に向けて反射面の特定領域に入射した平行光が反射される方向を、当該領域における「反射方向」と定義する。反射部材を側面視した場合において、反射部材の反射面は、開口部に近い下方側の領域における上記反射方向が、開口部から遠い上方側の領域における反射方向よりも、水平面に対して成す角度において小さくなるように形成されている。
反射面がこのように形成されているため、鉛直下方に向けて平行光が入射した際には、反射面のうち最も下方側の領域(開口部に近い領域)で反射された光の進行方向が水平に近づくこととなる。その結果、当該領域の上方に存在する開口部の内壁面(天面)に、反射光の一部が当たってしまうことが抑制されるため、反射光の全体を屋内に到達させることが可能となる。
また、反射方向が水平面に対して成す角度を小さくするのは、反射面の全体ではなく下方側の領域だけである。従って、反射部材の上端の位置が高くなりすぎてしまうことはなく、これにより屋内側から見た場合における意匠性が低下してしまうこともない。このように、本発明によれば、反射部材の上端の位置が高くなりすぎることを抑制しながらも、十分な量の光を屋内に取り込むことが可能となる。
また本発明に係る採光装置では、前記反射部材を側面視した場合において、前記反射面は、最も下方側の領域である第一領域と、前記第一領域よりも上方側において前記第一領域に隣接する第二領域と、を有しており、前記第一領域の水平方向に沿った長さは、前記第二領域の水平方向に沿った長さよりも短いことも好ましい。
反射面のうち、反射光が開口部の内壁面(天面)に当たってしまう可能性があるのは、最も下方側の比較的狭い領域だけである。そこで、この好ましい態様では、反射面のうち最も下方側の領域であり、反射方向が水平面に対して成す角度が小さい第一領域を、その上方側に隣接する第二領域よりも狭くしている。具体的には、第一領域の水平方向に沿った長さを、第二領域の水平方向に沿った長さよりも短くしている。反射方向を水平に近づけることにより鉛直方向の寸法が大きくなってしまう第一領域を、必要最低限の範囲とすることができるため、反射部材の上端の位置が高くなりすぎることを更に抑制することができる。
また本発明に係る採光装置では、前記反射部材を側面視した場合において、前記第二領域は、その中央部が屋外側に向けて後退するような凹形状の曲線を成していることも好ましい。
この好ましい態様では、反射部材を側面視した場合における第二領域の形状が、その中央部が屋外側に向けて後退するような凹形状の曲線を成す形状となっている。反射面のうち大部分を占める第二領域をこのような形状とすることにより、ほとんどの反射光は収束しながら建物外壁の開口部を通過し、その後は屋内に向けて広がりながら進む。このため、開口部を大きくすることなく多くの光を屋内に取り込むことができる。
また本発明に係る採光装置では、前記反射部材を側面視した場合において、前記第一領域は、その中央部が屋外側に向けて後退するような凹形状の曲線を成していることも好ましい。
この好ましい態様では、反射部材を側面視した場合における第一領域の形状も、第二領域の場合と同様に、その中央部が屋外側に向けて後退するような凹形状の曲線を成す形状となっている。第一領域もこのような形状とすることにより、全ての反射光は収束しながら建物外壁の開口部を通過し、その後は屋内に向けて広がりながら進む。このため、開口部を大きくすることなく多くの光を屋内に取り込むことができる。
また本発明に係る採光装置では、前記反射面の全体に、鉛直下方に向けて平行光が入射した場合において、前記第一領域において反射された後、屋内に向けて広がりながら進む光を第一反射光とし、前記第二領域において反射された後、屋内に向けて広がりながら進む光を第二反射光としたときに、前記反射面は、前記第一反射光と前記第二反射光とが、屋内においてそれぞれの少なくとも一部が互いに重なるように形成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、第一領域において反射された第一反射光と、第二領域において反射された第二反射光とが、屋内においてそれぞれの少なくとも一部が互いに重なるように、反射面が形成されている。第一反射光とは、鉛直下方に向かう平行光が反射面の全体に入射した場合において、凹形状の第一領域において反射された後、屋内に向けて広がりながら進む光である。また、第二反射光とは、鉛直下方に向かう平行光が反射面の全体に入射した場合において、凹形状の第二領域において反射された後、屋内に向けて広がりながら進む光である。
屋内に取り込まれた二つの反射光(第一反射光、第二反射光)が、互いに重なった状態で広がって行くため、屋内の広い範囲における明るさをより確保することができる。
また本発明に係る採光装置では、前記反射面は、屋内の一部の空間において前記第一反射光と前記第二反射光とが互いに重なり、当該空間の周囲には、前記第一反射光又は前記第二反射光のいずれか一方のみが到達するように形成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、第一領域において反射された第一反射光と、第二領域において反射された第二反射光とが、屋内の一部の空間において互いに重なるように、反射面が形成されている。また、当該空間の周囲には、第一反射光又は前記第二反射光のいずれか一方のみが到達するように、反射面が形成されている。
このような構成により、屋内においては、その空間の一部において第一反射光と第二反射光とが互いに重なった状態となる一方で、当該空間の上下においては、第一反射光又は第二反射光のみが到達した状態となる。
その結果、屋内の空間は、屋外から取り込まれた光の量が多い空間(最も明るい空間)と、その上下であって屋外から取り込まれた光の量が比較的少ない空間と、その更に上下であって屋外から取り込まれた光が直接には到達しない空間(最も暗い空間)とに分かれることとなる。最も明るい空間と最も暗い空間とが隣接せず、空間における光量の分布が連続的となるため、屋内における光量の分布を自然なものとすることができる。
また本発明に係る採光装置では、前記反射面は、その全ての領域における前記反射方向が、水平方向よりも上方に向かう方向となるように形成されていることも好ましい。
この好ましい態様では、反射面は、その全ての領域における反射方向が、水平方向よりも上方に向かう方向となるように形成されている。このような構成により、鉛直下方に向けて反射面に入射した平行光は、開口部の下端よりも上方に向かうように屋内に向けて進む。このため、屋内における生活者の目に反射光が直接入射し、不快感を与えてしまうことを抑制することができる。
本発明によれば、反射部材の上端の位置が高くなりすぎることを抑制しながらも、十分な量の光を屋内に取り込むことができる採光装置を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る採光装置1の構成を説明する。図1は、採光装置1が建物外壁WLに取り付けられた状態を、上方側から見た様子を示す斜視図である。図2は、採光装置1が建物外壁WLに取り付けられた状態を、下方側から見た様子を示す斜視図である。図1及び図2に示したように、採光装置1は、建物外壁WLの開口部に装着された引き違い窓WDの下方且つ屋外側において、建物外壁WLに対して固定されている。
引き違い窓WDは、建物外壁WLと平行にスライド可能な2つのサッシ枠WFと、それぞれのサッシ枠に保持されたガラス板GLを有している。当該ガラス板GLは透明であるため、引き違い窓WDを閉じた状態であっても、屋外から屋内に向けて光が透過できるようになっている。
図1においては、建物外壁WLの法線方向をx方向とし、当該方向に沿ってx軸を設定している。また、x方向を向いた場合における左方向(水平且つ、x方向に対して垂直な方向)をy方向とし、当該方向に沿ってy軸を設定している。更に、鉛直上方に向かう方向をz方向とし、当該方向に沿ってz軸を設定している。以降の図面及び説明においても、x方向、y方向、z方向を上記と同様に定義し、x軸、y軸、z軸を上記と同様に設定する。
採光装置1は、反射部材100と、支持部材201、202とを備えている。反射部材100は、屋外の光を反射し、反射光を引き違い窓WDを通じて屋内に入射させるための部材である。反射部材100は、上面視において略長方形状の板状体であって、建物外壁WLに近い方の端部が下方に位置し、建物外壁WLから遠い方の端部(x方向における端部)が上方に位置するように傾斜した状態で配置されている。反射部材100の上面(屋内側の面)には全体に鏡面加工が施されており、反射面110を形成している。
反射面110は、任意の点における法線がx−z平面に対し平行となるような形状となっている。換言すれば、任意の点における法線のy方向成分が0となるような形状となっている。このため、反射部材100をy方向に沿って見た場合(側面視した場合)には、反射面110は線状となっている。
反射面110は、水平且つ建物外壁WLに対して平行な境界線BLよりも下方側(引き違い窓WDに近い側)の領域である第一反射面111と、境界線BLよりも上方側(引き違い窓WDから遠い側)の領域である第二反射面112とを有している。第一反射面111のx方向に沿った長さは、第二反射面112のx方向に沿った長さよりも短い。
反射部材100のうち境界線BLよりも下方側の部分は、y方向に沿って見た場合に、その中央部が屋外側に向けて後退するように湾曲した形状の曲線となっている。このため、第一反射面111も同様に(凹形状に)湾曲した形状の曲線となっている。
反射部材100のうち境界線BLよりも上方側の部分は、y方向に沿って見た場合に、その中央部が屋外側に向けて後退するように湾曲した形状の曲線となっている。このため、第二反射面112も同様に(凹形状に)湾曲した形状の曲線となっている。
第一反射面111と第二反射面112とは、それぞれが滑らかな曲面となるように形成されているが、境界線BLにおける両者の接続部は滑らかとなっていない。反射面110は、その法線方向が境界線BLにおいて不連続に変化するような形状となっている。
支持部材201、202は、いずれも反射部材100を下方から支持して固定するための部材であって、一端(下端)が建物外壁WLに対して締結固定されており、他端(上端)が反射部材100の下面(反射面110とは反対側の面)に対して締結固定されている。支持部材201は、反射部材のうちx方向を向いた場合における右側端部近傍を下方から支持しており、支持部材202は、反射部材のうちx方向を向いた場合における左側端部近傍を下方から支持している。
反射部材100及び反射面110の具体的な形状について、図3を参照しながら説明する。図3は、100及び反射面110の形状を説明するための図であって、反射部材100をy方向に沿って側方側から見た状態を模式的に示している。図3においては、反射部材100以外の図示を省略している。
既に説明したように、反射面110は第一反射面111と第二反射面112とを有しており、これら二つの領域が境界線BLを挟んで互いに隣接している。図3に示した点Aは、第一反射面111の下端の辺を側方側から見たものである。点Bは、第一反射面111の上端の辺(境界線BLであり、第二反射面112の下端の辺でもある)を側方側から見たものである。点Cは、第二反射面112の上端の辺を側方側から見たものである。
ところで、採光装置1は、窓WDに対する向かいの建物との距離が短い等の理由により、太陽からの光が直接には届きにくい場所に取り付けられている。このため、建物外壁WLの屋外側(x方向側)における光の殆どは、建物外壁WLに沿って鉛直下方(−z方向)に向かうような天空光であるとみなすことができる。また、太陽の位置は時間とともに変化するため、季節や時間帯によっては、太陽からの光が建物外壁WLの屋外側に直接届くような場合も生じ得る。この場合であっても、光は建物外壁WLに沿って鉛直下方に向かう成分を有することとなる。
すなわち、いずれの場合であっても、建物外壁WLの屋外側における光の殆どは、建物外壁WLに沿って鉛直下方に向かう平行光とみてよい。そこで、以下の説明においては、反射面110に入射する光は全て、建物外壁WLに沿って鉛直下方に向かう平行光であるものとする。図3においては、このような平行光のうち反射面110に入射する光の経路を、2本の点線により入射光路IL10及びIL20として描いている。尚、これらの点線で示された入射光路IL10等以外にも、これらと平行な無数の入射光路が存在することは言うまでもない。入射光路IL10は、これら無数の入射光路のうち、第一反射面111に入射する入射光路を代表して示すものである。入射光路IL20は、これら無数の入射光路のうち、第二反射面112に入射する入射光路を代表して示すものである。
第一反射面111は曲面であるから、特定の領域(点ではない)に入射した平行光が反射される方向は一方向に決まらず、実際には無数の方向に反射される。以下の説明では、当該領域で反射された光が平均的に向かう一つの方向を、当該領域における「反射方向」と定義する。
図3に示した直線VL1は、第一反射面111上の各点における法線方向を平均して得られた平均法線方向NL1に対し、垂直な平面(仮想的な平坦面)を示している。本実施形態を示す図3においては、直線VL1は点Aと点Bとを結ぶ直線に一致している。
反射光路RL10は、このような仮想的な平坦面に対し入射光路IL10に沿って光が入射した場合に、当該平坦面により反射される反射光の経路を示している。すなわち、反射光路RL10の方向は、第一反射面111における反射方向に等しい。
図3に示した直線VL2は、第二反射面112上の各点における法線方向を平均して得られた平均法線方向NL2に対し、垂直な平面(仮想的な平坦面)を示している。本実施形態を示す図3においては、直線VL2は点Bと点Cとを結ぶ直線に一致している。
反射光路RL20は、このような仮想的な平坦面に対し入射光路IL20に沿って光が入射した場合に、当該平坦面により反射された反射光の経路を示している。すなわち、反射光路RL20の方向は、第二反射面112における反射方向に等しい。
図3に示したように、第一反射面111における反射方向(反射光路RL10の方向)が水平面HLに対して成す角度θ1は、第二反射面112における反射方向(反射光路RL20の方向)が水平面HLに対して成す角度θ2よりも小さくなっている。このため、第一反射面111で反射された光は、第二反射面112で反射された光よりも、(平均的に)水平に近い角度で屋内に向かって進むこととなる。
反射面110の形状をこのように構成したことの効果について説明する。図7は、本発明との第一比較例に係る採光装置1aにより、屋内に取り込まれる光の経路を模式的に示す図である。採光装置1aは、反射部材100a及び反射面110aの形状においてのみ採光装置1と異なっており、他については同様の構成となっている。図7に示したように、反射面110aは、y方向に沿って見た場合に、その中央部が屋外側に向けて後退するように湾曲した形状の曲線となっている。反射面110と異なり、反射面110aは全体が滑らかな曲面となっており、法線方向が不連続に変化するような境界線は反射面110a上には存在しない。
採光装置1aは、反射面110aが一つの凹形状の曲面となっていることにより、反射面110aのうち最も下方側の領域の傾き、すなわち、引き違い窓WDに最も近い領域の傾きが水平に近づいている。このような領域に上方から天空光が入射すると、当該領域で反射された光が屋内に到達しない場合がある。
図7では、このような現象が生じている例を示している。入射光路IL22に沿って、反射面110aのうち建物外壁WLから遠い方の端部(x方向における端部)に入射した光は、反射光路RL22に沿って進み、ガラス板GLを透過して屋内に到達する。
ところが、入射光路IL11や入射光路IL13に沿って、反射面110aのうち建物外壁WLに近い領域に入射した光は、それぞれ反射光路RL11や反射光路RL13に沿って進み開口部の天面(本実施形態では、ガラス板GLとサッシ枠WFとの境界部WFTである)に当たってしまい、屋内に到達することができない。これは、反射面110aのうち建物外壁WLに近い領域においては、当該領域の反射方向が水平面に対して成す角度が比較的大きい(90度に近い)ことに起因している。
その結果、採光装置1aにおいては、反射面110aで反射された光の一部が屋内に到達せず、反射面110aの一部が有効に利用されていない。このような現象は、十分な量の光を屋内に取り込む構成としながらも、屋外側に配置された反射部材100aを可能な限り小型化するという観点からは好ましいものではない。
そこで、反射面110aの全体を有効に利用するために、反射面110aをより大きく傾斜させることも考えられる。すなわち、反射面110a全体の(平均的な)法線方向が水平面に対して成す角度を、より小さくすることも考えられる。
図8は、本発明との第二比較例に係る採光装置1bにより、屋内に取り込まれる光の経路を模式的に示す図である。採光装置1bは、反射面110bの傾きにおいてのみ採光装置1bと異なっており、他については同様の構成となっている。図8に示したように、採光装置1bは、図7に示した採光装置1aの反射部材100aを、より大きく傾けて配置した構成となっている。
図8に示したように、入射光路IL23に沿って、反射面110bのうち建物外壁WLから遠い方の端部(x方向における端部)に入射した光は、反射光路RL23に沿って進み、ガラス板GLを透過して屋内に到達する。また、入射光路IL11に沿って、反射面110bのうち建物外壁WLに近い方の端部に入射した光も、反射光路RL11に沿って進み、ガラス板GLを透過して屋内に到達する。このように、反射面110bに入射した全ての光が、ガラス板GLを透過して屋内に到達する。
ところが、図7と図8を比較すると明らかなように、反射部材100bの下端から上端までの高さは、反射部材100aの下端から上端までの高さよりも高くなっている。このため、引き違い窓WDは、その下端から上方に向けて広い範囲を反射部材100bによって覆われることとなり、屋内側から見た場合における意匠性が低下してしまう。
また、反射面110aには、入射光路IL11から入射光路IL22までの広い範囲で天空光が入射していたのに対し、反射面110bには、入射光路IL11から入射光路IL23までの狭い範囲でしか天空光が入射していない。このため、反射面110bで反射されて屋内に到達する光の量は少なくなっている。
反射面110aの場合と同程度の量の光を屋内に到達させようとすると、図8の符合100exで示したように、反射面110bの上端を更に上方に向けて伸ばす必要がある。しかし、この場合には、屋内側から見た場合における意匠性が更に低下してしまう。
そこで、この好ましい態様では、反射面110のうち引き違い窓WD側の領域(第一反射面111)の形状を工夫することにより、反射部材100の上端の位置が高くなりすぎることを抑制しながらも、十分な量の光を屋内に取り込むことを可能としている。図4は、採光装置1により屋内に取り込まれる光の経路を模式的に示す図である。尚、煩雑さを避けるために、図4においては支持部材201、202の図示を省略している。また、引き違い窓WDの構造は簡略化して模式的に描いている。後述の図5においても同様である。
反射面110の水平方向に沿った長さは、図7に示した反射面110aの水平方向に沿った長さとほぼ等しくなっている。このため、反射面110には、入射光路IL11から入射光路IL22までの広い範囲で天空光が入射する。図3では、反射面110のうち境界線BLよりも僅かに屋内側の位置に入射する光の経路を、入射光路IL12として描いている。また、入射光路IL12に沿って光が入射した場合の反射光の経路を、反射光路RL12として描いている。
また、反射面110のうち境界線BLよりも僅かにx方向側の位置に入射する光の経路を、入射光路IL21として描いている。また、入射光路IL21に沿って光が入射した場合の反射光の経路を、反射光路RL21として描いている。
図3を参照しながら説明したように、反射面110のうち引き違い窓WD側の領域(第一反射面111)の反射方向は、図7の場合に比べるとより水平に近い方向となっている。このため、第一反射面111において反射された光が向かう方向(反射光路RL11、反射光路RL12)は、図7の場合に比べてより水平に近い方向となっている。その結果、第一反射面111で反射された光は境界部WFTに当たることなく、その全てがガラス板GLを透過して屋内に到達する。
一方、反射面110のうち第二反射面112については、図7に示した反射面110aと同一の配置となっている。入射光路IL11に沿って第二反射面112の上端部(点C)に入射した光は、第二反射面112によって反射された後、図7の場合と同様に反射光路RL22に沿って進み、ガラス板GLを透過して屋内に到達する。入射光路IL21に沿って第二反射面112の下端部(点B)の近傍に入射した光は、第二反射面112によって反射された後、反射光路RL21に沿って進み、ガラス板GLを透過して屋内に到達する。その結果、第二反射面112で反射された光も、その全てがガラス板GLを透過して屋内に到達する。
このように、本実施形態に係る採光装置1によれば、第一反射面111の反射方向が水平面に対して成す角度を小さくすることにより、反射面110に入射して反射された全ての光を屋内に到達させることが可能となっている。また、反射方向が水平面に対して成す角度を小さくするのは、反射面110の全体ではなく下方側の領域(第一反射面111)だけである。従って、反射部材100の上端の位置(点C)が高くなりすぎてしまうことはなく、これにより屋内側から見た場合における意匠性が低下してしまうこともない。このように、採光装置1によれば、反射部材100の上端の位置が高くなりすぎることを抑制しながらも、十分な量の光を屋内に取り込むことが可能となっている。
図7に示したように、反射光が開口部の内壁面(境界部WFT)に当たってしまう可能性があるのは、反射面110aのうち最も下方側の比較的狭い領域だけである。そこで、採光装置1では、反射部材100をy方向から見た場合において、第一反射面111の水平方向(x方向)に沿った長さが、第二反射面112の水平方向(x方向)に沿った長さよりも短くなっている。反射方向を水平に近づけることにより鉛直方向の寸法が大きくなってしまう領域(第一反射面111)を、必要最低限の範囲としているため、反射部材100の上端の位置(点C)が高くなりすぎることを更に抑制することが可能となっている。
図5は、図4と同様に、採光装置1により屋内に取り込まれる光の経路を模式的に示す図である。図5では、屋内における光の進行方向を、図4よりも広い範囲にわたって描いている。
第一反射面111及び第二反射面112は、いずれも、その中央部が屋外側に向けて後退するような凹形状の曲面となっている。このため、それぞれにおいて反射された光は、収束しながら引き違い窓WDを通過した後、屋内に向けて広がりながら進む。
図5において、反射光路RL11は、第一反射面111のうち下端部で反射された光の経路である。反射光路RL12は、第一反射面111のうち上端部の近傍で反射された光の経路である。反射光路RL21は、第二反射面112のうち下端部の近傍で反射された光の経路である。反射光路RL22は、第二反射面112のうち上端部で反射された光の経路である。
図5に示したように、第一反射面111で反射された後に屋内に向けて広がりながら進む光(第一反射光)と、第二反射面112で反射された後に屋内に向けて広がりながら進む光(第二反射光)とが存在している。図5では、第一反射光の範囲を矢印A1で示している。また、第二反射光の範囲を矢印A2で示している。
屋内側の空間は、第一反射光と第二反射光とが互いに重なっている領域AR10と、第二反射光のみが到達している領域AR21、AR22と、第一反射光と第二反射光のいずれも到達しない領域AR31、AR32とに分かれている。領域AR21は、領域AR10に対して上方側に隣接する領域である。領域AR31は、領域AR21に対して上方側に隣接する領域である。領域AR22は、領域AR10に対して下方側に隣接する領域である。領域AR32は、領域AR22に対して下方側に隣接する領域である。
このように、屋内側の空間においては、最も明るい領域(領域AR10)と最も暗い領域(領域AR31、領域AR32)とが隣接せず、空間における光量の分布が連続的となっている。このため、屋内における光量の分布が自然なものとなっている。
また、図5に示したように、反射面110で反射された全ての光は、その進行方向が水平方向よりも上方に向かう方向となっている。反射面110をこのように形成することにより、屋内に到達した反射光は、引き違い窓WDの下端よりも上方に向かって進む。このため、屋内における生活者の目に反射光が直接入射し、不快感を与えてしまうことが抑制される。
反射部材100を形成する方法について、簡単に説明する。反射部材100は、樹脂の押し出し成形により板状の基材を形成し、当該基材の一方の表面全体に一枚のアルミシートを貼り付けることにより形成されている。当該アルミシートの光沢面が、反射面110となっている。
このように、第一反射面111が形成されている部分と、第二反射面112が形成されている部分とが、別体ではなく一体として形成されている。このため、反射部材100全体の強度が保たれている。
また、上記のような方法のほか、金属のプレス成形により基材を形成してもよい。この場合、基材に対して加工強度が付与されるため、反射部材100全体の強度をより向上させることが可能である。
続いて、図6を参照しながら、本発明の別の実施形態に係る採光装置1cについて説明する。図6は、採光装置1cにより屋内に取り込まれる光の経路を模式的に示している。採光装置1cは、反射面110cのうち第一反射面111cの傾きにおいてのみ採光装置1と異なっており、他については採光装置1と同様の構成となっている。図6に示したように、第一反射面111cは、図5に示した採光装置1aの第一反射面111cよりも傾きが緩やかな状態(その平均的な法線方向がより上方に向かうような状態)で配置されている。
第一反射面111c及び第二反射面112cは、いずれも、その中央部が屋外側に向けて後退するような凹形状の曲面となっている。このため、それぞれにおいて反射された光は、収束しながら引き違い窓WDを通過した後、屋内に向けて広がりながら進む。
図6において、反射光路RL11は、第一反射面111cのうち下端部で反射された光の経路である。反射光路RL12は、第一反射面111cのうち上端部の近傍で反射された光の経路である。反射光路RL21は、第二反射面112cのうち下端部の近傍で反射された光の経路である。反射光路RL22は、第二反射面112cのうち上端部で反射された光の経路である。
図6に示したように、第一反射面111cで反射された後に屋内に向けて広がりながら進む光(第一反射光)と、第二反射面112cで反射された後に屋内に向けて広がりながら進む光(第二反射光)とが存在している。図6では、第一反射光の範囲を矢印A1で示している。また、第二反射光の範囲を矢印A2で示している。
屋内側の空間は、第一反射光と第二反射光とが互いに重なっている領域AR10と、第一反射光のみが到達している領域AR21と、第二反射光のみが到達している領域AR22と、第一反射光と第二反射光のいずれも到達しない領域AR31、AR32とに分かれている。領域AR21は、領域AR10に対して上方側に隣接する領域である。領域AR31は、領域AR21に対して上方側に隣接する領域である。領域AR22は、領域AR10に対して下方側に隣接する領域である。領域AR32は、領域AR22に対して下方側に隣接する領域である。
このように、屋内側の空間には、第二反射光のみが到達するような場合に比べて、より広い範囲に光が到達している。すなわち、図6の矢印A2で示された範囲よりも広い範囲(図6の矢印A2で示された範囲に、図6の矢印A1で示された範囲を加えた範囲)に、反射面110cで反射された光が到達している。図6に示したような態様の他、第一反射面111cと第二反射面112cとの形状を調整することにより、図6の矢印A2で示された範囲に加えて更に下方側の範囲を照らすなど、屋内における光の到達範囲を適宜調整することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。