上述した形状可変クローラ型移動体は、アーム駆動源の駆動により可動アームを能動的に回動させるものであり、路面の状況に合わせてクローラの形状を適切に変化させるためには、操作者が遠隔操作などによってアーム駆動源を適切に駆動させなければならない。このため、操作者の操作負担が増えることになり、操作者の熟練も必要となる。また、アーム駆動源を備えるため、重量増や機構の複雑化、設置スペースの確保などの問題が生じ、ひいては形状可変クローラ型移動体の大型化にも繋がってしまう。
そのような問題を解消するため、アーム駆動源を備えずに、本体に対して可動アームを回動自在に取り付けておき、路面の状況に応じて路面から受ける上向きの力を利用して、可動アームを受動的に回動させることが考えられる。可動アームを受動的に回動させる場合、路面から受ける力によって可動アームが必要以上に回動しないことと、路面から受ける力が小さくなれば可動アームが元の状態(初期状態)に戻ることとを実現できるよう、クローラベルトから可動アームに適切な張力が掛かることが必要となる。
ここで、受動的に可動アームを回動させる形式のクローラの模式図を図9に示す。図9では、可動アームの回転中心をO,アーム先端側の車輪の軸中心をF,アーム基端側の車輪の軸中心をS,車両後方側の車輪の軸中心をBとし、可動アームの回転中心Oが軸中心S上にある形式(図9(a))と、回転中心Oが軸中心F−S間にある形式(図9(b))とを例示する。図9(a)の形式では、計算によると可動アームの回動角度の増加に伴ってクローラベルトの張力が低下するため、可動アームを回動させる場合に、適切な張力を可動アームに掛け続けることが困難となる。このため、可動アームが必要以上に回動したり、可動アームが初期状態に戻らなくなるおそれがある。これに対して、図9(b)の形式では、計算によると可動アームの回動角度の増加に伴ってクローラベルトの張力が増加するため、可動アームを回動させる場合に、適切な張力を可動アームに掛け続けることができる。このため、可動アームが必要以上に回動するのを抑制して、可動アームを初期状態に戻すことも可能となる。
ただし、図9(b)の形式では、可動アームは、増加していくクローラベルトの張力に打ち勝って回動する必要があるから、クローラベルトの張力の大きさによっては可動アームがスムーズに回動できない場合がある。その場合、可動アームの作動範囲を十分に確保することができず、クローラが路面の段差などを乗り越せなくなるおそれがある。一方で、初期状態でクローラベルトを撓ませて張力を小さくしておくことにより、可動アームが回動してもクローラベルトの張力が過大になるのを防止することも考えられる。しかし、そのようにすると、可動アームの回動角度が小さい状態では可動アームの回動を拘束する力がほとんど生じない場合がある。その場合、路面の段差などを乗り越える際の衝撃により、可動アームが必要以上に回動して、可動アームが初期状態に戻れなくなる特異形態(図9(b)中点線で図示)となるおそれがある。また、クローラベルトの張力を調整するための機構を設けることも考えられるが、アーム駆動源を備える場合と同様に、重量増や機構の複雑化、設置スペースの確保などの問題が生じてしまう。
本発明の形状可変クローラ型移動体は、簡易な構成でクローラベルトの適切な張力を確保しつつクローラの形状変化をよりスムーズに行うことを主目的とする。
本発明の形状可変クローラ型移動体は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の形状可変クローラ型移動体は、
路面状況に応じて形状変化が可能なクローラが本体の左右両側に取り付けられる形状可変クローラ型移動体であって、
動力源からの動力により回転駆動する第1駆動輪と、
回転軸を中心として先後端が揺動するよう前記本体に対して回動自在に構成される可動アームと、
前記可動アームの先端側に取り付けられる第2駆動輪と、
前記第1駆動輪と前記第2駆動輪とに掛け渡されるクローラベルトと、
前記可動アームの後端側に前記クローラベルトと摺動可能に取り付けられる板バネと、
を備え、
前記板バネは、前記可動アームの回動により前記クローラベルトに押し付けられると、該押し付けによる前記クローラベルトからの反力を受けて弾性変形するようバネ定数が定められる
ことを要旨とする。
この本発明の形状可変クローラ型移動体では、可動アームの後端側にクローラベルトと摺動可能に取り付けられる板バネは、可動アームの回動によりクローラベルトに押し付けられると、クローラベルトからの反力を受けて弾性変形するようバネ定数が定められる。これにより、可動アームはクローラベルトの張力による拘束を受けながら回動するから、可動アームが必要以上に回動するのを防止することができる。また、可動アームの回動量が大きくなってクローラベルトが大きく伸びるようなときには、伸びの増加に伴って増加するクローラベルトの張力(反力)によって板バネの弾性変形も大きくなるから、結果的にクローラベルトが大きく伸びるのを抑制してクローラベルトの張力が過大となるのを防止することができる。したがって、クローラベルトの張力を調整するための特別な機構を設けなくても、クローラベルトの張力を略一定に保つことができる。この結果、簡易な構成でクローラベルトの適切な張力を確保しつつクローラの形状変化をよりスムーズに行うことができる。
また、本発明の形状可変クローラ型移動体において、前記板バネは、円弧状に形成される部分を有し、該円弧状に形成される部分で前記クローラベルトと摺動するものとすることもできる。こうすれば、板バネの摺動性を向上させることができるから、可動アームに板バネを取り付けた場合でも、クローラベルトの回転をスムーズなものとすることができる。
また、この態様の本発明の形状可変クローラ型移動体において、前記板バネは、前記円弧状に形成される部分と平板状に形成される部分とにより断面がU字状に形成され、前記平板状に形成される部分で前記可動アームに取り付けられるものとすることもできる。こうすれば、板バネを比較的容易に可動アームに取り付けることができる。また、板バネ表面にクローラベルトが接触した際に、クローラベルトが板バネに引っ掛かるのを防止することができるから、クローラベルトの回転をさらにスムーズなものとすることができる。
また、本発明の形状可変クローラ型移動体において、前記可動アームの後端側に前記板バネと隙間をもって取り付けられ、前記隙間がなくなるまで前記板バネが弾性変形すると、該板バネを介して前記クローラベルトを押圧可能な押圧部材を備えるものとすることもできる。こうすれば、隙間がなくなるまで板バネが弾性変形した以降は、クローラベルトから回動を制限する力がより強く可動アームに作用することになる。このため、隙間の大きさを調整することにより可動アームの可動範囲を適切に設定することができ、可動アームが必要以上に回動するのをより確実に防止することができる。
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるクローラ型車両10の外観を示す外観斜視図であり、図2は、クローラ型車両10のクローラ14の形状が変化した様子を示す外観斜視図である。
クローラ型車両10は、図1に示すように、直方体状の車両本体12と、車両本体12の左右両側に取り付けられ形状変化が可能なクローラ14とにより構成され、操作者が図示しないモニタを確認しながら図示しない遠隔操作装置による遠隔操作が可能となっている。車両本体12には、車両前方を撮影するよう前面に取り付けられ撮影した画像をモニタに送信するカメラユニット12aと、クローラ14を駆動するための駆動モータやギヤ機構などから構成される駆動ユニット12bと、遠隔操作装置から送信される操作信号を受信してその操作信号に基づいて駆動モータの駆動制御などの車両全体の制御を行う制御ユニット12cと、カメラユニット12aや駆動ユニット12b(駆動モータ),制御ユニット12cに電力を供給するバッテリ12dなどが搭載されている。なお、カメラユニット12aは、車両本体12の前面に取り付けるものに限られず、後面や左右面に取り付けてもよいし、遠隔操作により撮影方向を任意に変更可能とするよう車両本体12の上面に回転可能に取り付けてもよい。また、駆動モータなどの駆動ユニット12bを車両本体12に搭載するものに限られず、各クローラ14内に搭載してもよい。なお、左右のクローラ14は、同じ構成であるため、特に区別することなく説明する。
クローラ14は、一対のプレート22a,22bが複数の固定ピン21により車両本体12に固定される固定アーム22と、駆動ユニット12bの駆動軸に接続される回転軸24aが固定アーム22の図1中後端側に取り付けられる第1プーリ24と、固定アーム22の図1中先端側に回転軸26cが取り付けられると共に一対のプレート26a,26bが回転軸26cを中心として回動自在(揺動自在)に構成される可動アーム26と、可動アーム26の図1中先端側に回転軸28aが取り付けられプレート26a,26bよりも大きな外径の第2プーリ28と、第1プーリ24と第2プーリ28とに張力を掛けた状態で環状に掛け渡されるゴム製のクローラベルト30とを備える。
可動アーム26は、クローラ型車両10が進行方向(図1中前方向)に進んで、路面の段差や障害物などがあれば、その段差などにクローラベルト30(第2プーリ28)が当接して上向きの力を受けることになる。その場合、可動アーム26は回転軸26cを中心として上方に回動するから、可動アーム26の先端側に取り付けられる第2プーリ28は上方に円弧状に移動する(図2参照)。これにより、クローラ型車両10(クローラ14)が段差などを乗り越えることができる。このように、クローラ型車両10は、路面の段差などからの力を受けることにより可動アーム26が回動してクローラ14が変形する、いわゆる受動型のクローラとして構成されている。また、クローラ14が段差などを乗り越えやすくなるように、第2プーリ28は第1プーリ24よりも大きな外径に形成されている。なお、可動アーム26の回転軸26cが固定アーム22に取り付けられるものとしたが、車両本体12に取り付けられるものとしてもよい。
図3に可動アーム26の構成の概略を示す。なお、図3では、一対のプレート26a,26bのうち図中手前側となるプレート26aの図示を省略する。可動アーム26は、図3に示すように、可動アーム26の後端側の位置即ち回転軸26cを中心として第2プーリ28と反対側の位置に回転軸32aが取り付けられる第3プーリ32と、第3プーリ32を囲むように配置される板バネ34と、プレート26a,26bに固定され板バネ34が取り付けられる角棒状の取付部材36とを備える。板バネ34は、図3中の斜視図に示すように、第3プーリ32の外径に合わせて(第3プーリ32との隙間が略均等になるように)円弧状に形成された円弧部34aと、円弧部34aの両端から平板状に延びて取付部材36に取り付けられる平板部34bとにより、断面がU字状に形成されている。また、この板バネ34は、可動アーム26が回動してクローラベルト30に押し付けられると、クローラベルト30からの反力を受けて弾性変形するようにバネ定数が定められている。なお、本実施形態のクローラ14は、第3プーリ32を囲むように板バネ34が取り付けられており、可動アーム26が回動すると、板バネ34がクローラベルト30に摺動するから、第3プーリ32がクローラベルト30に直接接触することはない。
こうして構成されたクローラ型車両10のクローラ14の可動アーム26が回動する様子について説明する。図4は、本実施形態のクローラ14を示す模式図であり、図5は、比較例のクローラ14Bを示す模式図である。比較例のクローラ14Bは、本実施形態と異なり可動アーム26Bに板バネ34が取り付けられない点を除いて、本実施形態と同じ構成要素を備えるため、同じ構成要素には本実施形態と同じ符号を付す。板バネ34を備えない比較例では、可動アーム26Bが回動すると、第3プーリ32がクローラベルト30に直接接触してクローラベルト30を押圧することになる。ここで、クローラベルト30の周囲長Lは、可動アーム26,26Bが回動していない初期状態(回動角度θが0度)において、本実施形態と比較例とで同じ周囲長L0とする。
また、第2プーリ28の外周面のうち可動アーム26の回転軸26cから最も遠い位置P1と回転軸26cの軸中心との距離をR1とし(図4(a),図5(a)参照)、板バネ34の外周面のうち回転軸26cから最も遠い位置P2と回転軸26cの軸中心との距離をR2とし(図4(a)参照)、比較例の第3プーリ32の外周面のうち回転軸26cから最も遠い位置P2Bと回転軸26cの軸中心との距離をR2Bとする(図5(a)参照)。そして、比較例のR2Bが、初期状態における本実施形態のR2と略同等となるように、比較例の第3プーリ32を配置した。このため、初期状態では、「R1+R2」と「R1+R2B」は略同等となり、比較例の第2プーリ28と第3プーリ32の軸間距離は、本実施形態の第2プーリ28と第3プーリ32の軸間距離よりも長くなる。
比較例の可動アーム26Bが回動した場合、R1,R2Bは一定で変化しないから、図5(b)に示すように、位置P1の移動軌跡は、回転軸26cを中心に半径がR1で一定の円弧状となり、位置P2Bの移動軌跡は、回転軸26cを中心に半径がR2Bで一定の円弧状となる。一方、本実施形態の可動アーム26が回動した場合、R1は一定で変化しないから、図4(b)に示すように、位置P1の移動軌跡は、比較例と同様となる。しかし、比較例と異なり、可動アーム26が回動すると板バネ34がクローラベルト30に押し付けられることにより、板バネ34が押しつぶされるように変形するから、可動アーム26の回動によりR2が変化することになる。可動アーム26の回動角度がある角度となるまでは(後述するように、回動角度が約65°となるまでは)、可動アーム26の回動角度が大きくなるほど、クローラベルト30の伸びが大きくなって張力が大きくなり易くなるから、クローラベルト30の張力を受けて変形する板バネ34の変形量も大きなものとなる。このため、可動アーム26の回動角度が大きくなるほど、距離R2は小さくなることになる。したがって、図4(b)に示すように、位置P2の移動軌跡は、比較例の位置P2Bの移動軌跡よりも内側となる。このため、本実施形態の板バネ34によるクローラベルト30の支点は、比較例の第3プーリ32による支点よりも内側にずれることになる。
ここで、本実施形態の可動アーム26が回動したときのクローラベルト30の周囲長を図6に示し、比較例の可動アーム26Bが回動したときのクローラベルト30の周囲長を図7に示す。図6に示すように、本実施形態では、第2プーリ28と第3プーリ32の軸間のベルト長さをL1、第2プーリ28へのベルト巻付き長さをL2、第2プーリ28と第1プーリ24の軸間のベルト長さをL3、第1プーリ24へのベルト巻付き長さをL4、第1プーリ24から板バネ34に接触するまでのベルト長さをL5、板バネ34へのベルト巻付き長さのうち円弧部34aと平板部34bとの境までのベルト巻付き長さをL6、平板部34bへのベルト巻付き長さをL7とすると、クローラベルト30の周囲長LはL1〜L7の和として算出することができる。一方、図7に示すように、比較例では、L1〜L4と同様に長さを定めて末尾に「B」を付加したものをL1B〜L4B、第1プーリ24と第3プーリ32の軸間のベルト長さをL5B、第3プーリ32へのベルト巻付き長さをL6Bとすると、クローラベルト30の周囲長LはL1B〜L6Bの和として算出することができる。このように考えたクローラベルト30の周囲長Lと、前述した可動アーム26,26Bの回動の様子とから、次のことがいえる。
まず、比較例の第2プーリ28と第3プーリ32の軸間距離が本実施形態の第2プーリ28と第3プーリ32の軸間距離よりも長いから、L1がL1Bよりも小さくなる。また、本実施形態の平板部34bへのベルト巻付き長さであるL7をL1に加えたものを考えても、初期状態における関係から「L1+L7」はL1Bと同等以下となる。次に、本実施形態の位置P1と比較例の位置P1との移動軌跡が同じであるから、L3とL3Bは略同等となる。そして、ベルト巻き付き長さであるL2,L4は、それぞれ、L2B,L4Bと略同等となる。さらに、前述したように、板バネ34によるクローラベルト30の支点が、比較例の第3プーリ32による支点よりも内側にずれることになる。このため、本実施形態の固定アーム22の図6中下端から板バネ34によるクローラベルト30の支点までを仮想距離Hとし、比較例の固定アーム22の図7中下端から第3プーリ32によるクローラベルト30支点までを仮想距離HBとすると、仮想距離Hが仮想距離HBよりも短くなるから、L5がL5Bよりも小さくなる。また、L6はL6Bが内側にずれたものと考えられるから、L6とL6Bは略同等となる。これらのことから、本実施形態のクローラベルト30の周囲長Lは、比較例のクローラベルト30の周囲長Lよりも伸びが抑えられることになる。
さらに、このようなクローラベルト30の周囲長Lの考え方に基づいて、可動アーム26,26Bが回動したときの周囲長Lを導出した。図8は、可動アーム26,26Bの回動角度θとクローラベルト30の周囲長Lとの関係を示す説明図である。なお、図8では、回動角度θとして30°以上の範囲を図示した。これは、可動アームの回動角度が30°未満の範囲では、板バネ34(比較例では第3プーリ32)がクローラベルト30に接触していなかったり、接触していてもクローラベルト30の伸びが小さいため、クローラベルト30の張力が大きくなっておらず、可動アーム26,26Bの回動の制限が問題となることが少ないためである。言い換えると、可動アーム26,26Bの回動角度が30°以上の範囲において、クローラベルト30の張力の増加により可動アーム26,26Bの回動が制限され易いものとなる。
図8に示すように、板バネ34を備えない比較例では、回動角度θが約30°から約65°の範囲では回動角度θが大きくなるにつれてクローラベルト30の周囲長Lが大きくなって初期状態の周囲長L0を大きく超えることになり、回動角度θが約65°を超えると、回動角度θが大きくなるにつれて周囲長Lが小さくなった。このように、比較例では、クローラベルト30の周囲長Lが大きくなって、クローラベルト30の張力も大きくなるから、可動アーム26Bがある角度以上は回動不能となることがある。また、可動アーム26Bが回動不能となる角度近傍まで回動すると、クローラベルト30の張力が過大となるため、路面から受ける上向きの力が小さくなったときでも(段差などを乗り越え終わったときでも)、可動アーム26Bが初期状態に戻らなくなることも考えられる。一方、本実施形態では、前述したように、可動アーム26の回動角度が大きくなってクローラベルト30の伸びが大きくなり易く(張力が大きくなり易く)なるほど、板バネ34の変形量も大きくなって距離R2が小さくなるから、クローラベルト30の周囲長Lが大きく伸びるのを抑制することができる。このため、本実施形態の周囲長Lの理想値は、図示するように、周囲長L0からほとんど変化することなく略一定の値となる。
このように、本実施形態では、クローラベルト30の周囲長Lの変化を抑えることができるから、クローラベルト30の張力の変化を抑制することができる。このため、クローラベルト30は、初期状態から略一定の張力を可動アーム26に掛け続けて、可動アーム26をスムーズに回動させることができる。また、可動アーム26の回動角度に拘わらず、クローラベルト30の張力を略一定とすることができるため、クローラベルト30の駆動を良好に保ち、クローラ型車両10の走行性を向上させることができる。さらに、可動アーム26をスムーズに回動させることができるから、路面から受ける上向きの力が小さくなったときに、可動アーム26を速やかに初期状態に戻すことも可能となる。本実施形態において、可動アーム26に板バネ34を取り付けるのは、こうした理由による。なお、板バネ34のバネ定数は、例えば、可動アーム26の回動角度θが所定角度(例えば、約50°や60°など)となったときに、可動アーム26の回動による力と、板バネ34の弾性力とが、クローラベルト30の張力に略相当するものとなるように、設定することが考えられる。このバネ定数の設定においては、クローラベルト30の周囲長Lが最大になるときの回動角度θやそのときの距離R2の変位量などを考慮することが必要になると考えられる。
また、本実施形態では、板バネ34の内側に、板バネ34と隙間をもって第3プーリ32が設けられているから、板バネ34の変形量が大きくなっていくと、第3プーリ32との隙間が徐々に小さくなることになる。そして、板バネ34が第3プーリ32との隙間がなくなるまで変形すると、第3プーリ32と板バネ34とが一体となって、即ち第3プーリ32が板バネ34を介してクローラベルト30を押圧することになる。そうなると、板バネ34の外周面のうち回転軸26cから最も遠い位置P2と回転軸26cの軸中心との距離R2はそれ以上小さくならないから、クローラベルト30の伸びが大きくなる(周囲長Lが増加する)ことになる。このため、クローラベルト30の張力が増加して可動アーム26に作用する力も大きくなるから、可動アーム26の回動を制限する作用が強く働くことになる。このように、板バネ34が第3プーリ32との隙間がなくなるまで変形した以降は、隙間がある場合(板バネ34が変形可能な場合)に比べて、可動アーム26の回動がより強く制限されることになる。したがって、板バネ34を設けることにより可動アーム26をスムーズに回動させるものとしても、可動アーム26が予期せぬ範囲まで一気に回動するのを防止することができる。これらのことから、第3プーリ32が可動アーム26の回動を制限する回動制限部材として機能することがわかる。なお、例えば、可動アーム26の回動角度θが所定角度より大きな角度(例えば、約70°や約80°など)となったときに、板バネ34と第3プーリ32との隙間がなくなって、それ以上の回動をより強く制限できるように、板バネ34のバネ定数に基づいて第3プーリ32と板バネ34との隙間を定めることができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のクローラ14が本発明のクローラに相当し、クローラ型車両10が形状可変クローラ型移動体に相当し、第1プーリ24が第1駆動輪に相当し、可動アーム26が可動アームに相当し、第2プーリ28が第2駆動輪に相当し、クローラベルト30がクローラベルトに相当し、板バネ34が板バネに相当する。また、第3プーリ32が押圧部材に相当する。
以上説明した本実施形態のクローラ型車両10によれば、可動アーム26に板バネ34を取り付け、可動アーム26の回動により板バネ34がクローラベルト30に押し付けられると、板バネ34がクローラベルト30からの反力を受けて弾性変形するから、可動アーム26の回動によりクローラベルト30の周囲長Lが過大となるのを抑制することができる。このため、可動アーム26の回動によりクローラベルト30の張力が大きく増加するのを防止することができるから、クローラベルト30の張力を調整するための複雑な機構を備えなくても、クローラベルト30の張力の変化を抑制することができる。この結果、板バネ34を取り付けるという簡易な構成で、クローラベルト30の必要な張力を確保しつつクローラ14の形状変化をスムーズに行うことができる。
また、板バネ34は、円弧部34aでクローラベルト30に押し付けられるから、板バネ34がクローラベルト30に押し付けられたときの摺動性を向上させることができる。さらに、板バネ34は、円弧部34aの両端から平板部34bが延びるU字状に形成するから、クローラベルト30が板バネ34(円弧部34aの両端など)に引っ掛かるのを防止することができる。これらのことから、クローラ14の駆動を良好なものとすることができる。また、板バネ34は、平板部34bで可動アーム26の取付部材36に取り付けられるから、可動アーム26に板バネ34を容易に取り付けることができる。さらに、板バネ34と隙間をもって第3プーリ32を設けるから、その隙間がなくなるまで板バネ34が変形した以降は、可動アーム26の回動をより強く制限して、可動アーム26が必要以上に回動するのを防止することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、板バネ34の円弧部34aを第3プーリ32の外径に合わせて形成したが、これに限られず、第3プーリ32の外径に合わせた円弧に形成しないものとしてもよい。また、板バネ34を円弧部34aと平板部34bとを有する断面U字状に形成したが、これに限られず、平板部34bを有さないものとしてもよい。なお、摺動性を良好にするためには、板バネ34が円弧部を有することが好ましいが、円弧部に代えて多角形状部(例えば、六角以上など)として、その多角形状部の角を滑らかに形成するものなどとしてもよい。
また、上述した実施形態では、板バネ34の内側に第3プーリ32を設けるものとしたが、これに限られず、第3プーリ32を設けないものとしてもよい。この場合、第3プーリ32に代えて、板バネ34を介してクローラベルト30を押圧可能な部材を設けてもよい。そのような部材としては、例えば、板バネ34の円弧部34aから、それぞれ所定の隙間をもって配置される複数本の丸棒などとしてもよい。あるいは、板バネ34を介してクローラベルト30を押圧可能な部材を設けないものとしてもよい。
また、上述した実施形態では、板バネ34を1つ(1枚)だけ設けるものとしたが、これに限られず、板バネ34を複数枚重ねて設けるものとしてもよい。