JP6206304B2 - 車両用フレーム構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用フレーム構造に関し、特にフレームの長手方向と直交する断面が細長形状の複数の細長形状部を荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面が長辺と直交するように配置した車両用フレーム構造に関する。
従来より、フロントサイドフレーム等の車両のフレーム構造において、衝突性能を向上させるために、衝突による荷重入力時、フレームを圧縮変形或いは折れ変形させることによって衝撃エネルギ吸収量を増加させることが行われている。
フレームの長手方向全体を軸圧縮で圧壊させて圧縮変形させることによって、高い値の衝撃エネルギ吸収量を安定的に維持できるため、圧縮変形を用いたエネルギ吸収機構は衝撃エネルギ吸収性能の面で優れていることが知られている。
一般に、フロントサイドフレームでは、前突時、構造上、バンパビームを介して衝撃荷重が伝達されるため、衝撃荷重がフロントサイドフレームに対して軸心方向に作用することは極めて少なく、また、フレーム上にエンジン支持部やサスペンションのサブフレーム取付け部等が設けられているため、フロントサイドフレームの長手方向に高剛性領域が間欠的に形成されている。しかも、フロントサイドフレーム全体を軸圧縮で一様に座屈変形させる場合、フレームに対して内向きに変形させる応力と外向きに変形させる応力とを交互に作用させる必要があり、これらの応力を適正にコントロールすることは容易ではない。
そこで、フロントサイドフレームの先端部分に軸圧縮(圧縮変形)可能なクラッシュカンを設け、フロントサイドフレームの中間部から後端部に亙って積極的に折れ変形可能な複数の衝撃吸収機構を採用することにより衝撃エネルギ吸収量を増加させて、前突時の乗員保護を図っている(特許文献1)。
フレーム断面形状の変更によって衝撃エネルギ吸収量を増加させる技術も公知である。
特許文献2のフレーム構造は、サイドシルを構成するインナ部材とアウタ部材であって、インナ部材とアウタ部材の車幅方向縦断面が、上側接合部と、下側接合部と、両接合部の間において相手側に突出した凸部と、凸部の上下両側に設けた凹部とを有し、インナ部材とアウタ部材の上側接合部と下側接合部と凸部とを夫々接合し、凸部の上下両側に長手方向に延びる細長形状の閉断面部材を夫々形成している。
特許文献3のフレーム構造は、インナ部材とアウタ部材とを備えたキックアップ部と、長手方向に延びる閉断面状のフロントサイドフレームとを有し、キックアップ部とフロントサイドフレームとの間を互いに接する方向に凹ませた形状にし、両者を互いに接合して結合部を形成することにより、結合部の上側に第1閉断面部と下側に第2閉断面部とを形成している。
特許第5104272号公報 特許第5196067号公報 特許第3820867号公報
特許文献1の衝撃吸収機構では、入力した衝撃荷重のうち、主に、クラッシュカンの圧縮変形とフロントサイドフレームの折れ変形とによって吸収することができない荷重がフロントサイドフレームよりも後方の車体構成部材や車室等に伝達される。
この衝撃吸収機構では、折れ変形によって吸収される衝撃荷重がエネルギ吸収量全体の大半を占めるため、折れ変形によるエネルギ吸収特性は圧縮変形によるエネルギ吸収特性よりも衝撃エネルギ吸収性能に与える影響が大きい。
つまり、折れ変形によって吸収される衝撃荷重が小さい場合、衝撃吸収のために必要なフロントサイドフレームの変形ストローク、所謂クラッシュストロークが長くなり、車体デザインの自由度が低下する虞がある。
本発明者は、上記の問題点を検証するため、断面縦長矩形状のフレームの折れ変形のメカニズムについてCAE(Computer Aided Engineering)による解析を行った。
まず、この解析の基本的な考え方について説明する。
長手方向に延びる閉断面状フレームに対して長手方向に圧縮荷重を作用させた場合、フレームは長手方向に直交する方向に向かって湾曲することから、中立面よりも湾曲中心側の面(圧縮側面)に長手直交方向から圧縮荷重が作用し、中立面よりも湾曲中心側と反対側の面(引張側面)に引張荷重が作用する状態に擬制することができる。
そこで、長手方向に延びる閉断面状フレームモデルを作成し、このフレームモデルの長手方向に延びる圧縮側面に対して長手直交方向から所定の圧縮荷重を作用させることによって、フレームモデルが支持可能な荷重とフレームモデルが変形するストロークとの相関関係(以下、曲げFS特性という)について解析した。
図14に、解析した曲げFS特性のグラフを示す。尚、縦軸がフレームモデルに作用する荷重、横軸がフレームモデルの変形ストロークである。
図14に示すように、長手方向に延びる閉断面状フレームでは、所定の変形ストローク値においてピークとなる最大荷重が発生し、その後、急激に荷重が低下している。
即ち、荷重が作用する閉断面状フレームの特定領域のみが曲げ強度に寄与していると考えられるため、この特定領域に許容限界を越える荷重(座屈応力)が作用したとき、特定領域が座屈し、閉断面状フレーム全体が座屈変形して衝撃エネルギ吸収量が減少する。
以上のことから、曲げ強度に寄与するフレーム領域を長手方向に長く拡大し、曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持する特性に設定することによって、クラッシュストロークを短縮化し、衝撃エネルギ吸収性能を高くできることを知見した。
最大荷重を一定ストロークの間維持するような曲げFS特性にする方法として、閉断面状フレームの板厚を厚くする手法や中立面が長辺と直交するように閉断面状フレームの横比を縦比よりも大きくする手法が考えられる。
しかし、閉断面状フレームの板厚を厚くする場合、車体重量やフレーム自体のコストが増加し、また、閉断面状フレームの横比を縦比よりも大きく設定する場合、エンジンルームに配置される各部材の配置スペースが不利になるため、何れの場合も現実的ではない。
特許文献2,3のように、閉断面状に形成された小型の細長形状部を複数連結した閉断面状フレームを構成することも考えられる。この場合、細長形状部の横比が縦比よりも大きくなるように長辺の幅と短辺の幅とを設定することによって、理論上、最大荷重を一定ストロークの間維持するような曲げFS特性に設定することができると推測される。
しかし、細長形状部を複数連結した閉断面状フレームに対して長手直交方向に圧縮側から荷重を作用させた場合、閉断面状フレームの中立線よりも引張側に張り出した引張側部分が大きいため、最大荷重を一定ストロークの間維持すると、細長形状部の引張側部分におけるフレーム長手方向への歪変形が非常に大きくなるため、場合によっては破断するという新たな課題を招く虞がある。そして、細長形状部の引張側部分が破断した場合、曲げ強度に寄与するフレーム領域が減少するため、曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができず、十分な衝撃エネルギ吸収性能を確保することができない。
本発明の目的は、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を確保できる車両用フレーム構造等を提供することである。
請求項1の車両用フレーム構造は、長手方向と直交する断面が細長形状の複数の細長形状部を荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面が長辺と直交するように配置し、隣り合う細長形状部の互いに離隔した長辺同士を1又は複数の連結部で連結した車両用フレーム構造において、前記複数の細長形状部は、前記連結部から圧縮側に張り出す細長形状半断面部及び引張側に張り出す細長形状半断面部を夫々有すると共に短辺に対する長辺の比が2以上になるように夫々設定され、前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記圧縮側の半断面を構成する第1断面部分と、前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記引張側の半断面を構成する第2断面部分とを備え、前記第1断面部分の細長形状半断面部が略コ字状に形成され、前記第2断面部分の細長形状半断面部が単一の頂部を有するように形成され、前記第2断面部分の細長形状半断面部の頂部が2次曲面によって形成されたことを特徴としている。
この車両用フレーム構造では、連結部よりも引張側に張り出した引張側部分が大きいにも拘らず、細長形状部の引張側部分の応力集中部位を減少することにより、引張側部分に作用する応力を緩和して、細長形状部の引張側部分の歪変形による破断を防止できる。
これにより、曲げ強度に寄与するフレーム領域を長手方向に長く拡大して曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができ、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
また、応力が集中する角形状部を形成しないため、細長形状部の引張側部分に作用する応力を一層緩和することができる。
請求項の発明は、請求項1の発明において、前記第2断面部分の細長形状半断面部の頂部と連結部半断面部とが直線又は曲線で接続されることを特徴としている。
これにより、引張側の細長形状半断面部に応力集中部位を形成しないため、細長形状部の引張側部分に作用する応力を更に緩和することができる。
請求項の発明は、請求項1又は2の発明において、前記第1,第2断面部分が夫々第1,第2パネル部材によって形成され、前記第2パネル部材の厚さが前記第1パネル部材の厚さよりも厚くなるように設定されたことを特徴としている。
これにより、引張応力に起因した細長形状部の引張側部分の歪変形による破断を防止できる。
請求項の発明は、長手方向と直交する断面が細長形状の複数の細長形状部を荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面が長辺と直交するように配置し、隣り合う細長形状部の互いに離隔した長辺同士を1又は複数の連結部で連結した車両用フレーム構造において、前記複数の細長形状部は、前記連結部から圧縮側に張り出す細長形状半断面部及び引張側に張り出す細長形状半断面部を夫々有すると共に短辺に対する長辺の比が2以上になるように夫々設定され、前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記圧縮側の半断面を構成する第1断面部分と、前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記引張側の半断面を構成する第2断面部分とを備え、前記第1断面部分の細長形状半断面部が略コ字状に形成され、前記第2断面部分の細長形状半断面部が単一の頂部を有するように形成され、前記第2断面部分の細長形状半断面部の頂部が角形状に形成され、前記荷重の入力によって前記頂部と前記連結部との距離が近づくように構成されたことを特徴としている。
これにより、連結部よりも引張側に張り出した引張側部分が大きいにも拘らず、細長形状部の引張側部分の応力集中部位を減少することにより、引張側部分に作用する応力を緩和して、細長形状部の引張側部分の歪変形による破断を防止できる。
それ故、曲げ強度に寄与するフレーム領域を長手方向に長く拡大して曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができ、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
また、引張荷重入力前後における細長形状部の引張側部分の周長差を抑制することができ、引張荷重に起因した長辺の引張側部分の歪変形による破断を防止できる。
本発明の車両用フレーム構造によれば、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を確保することができる。
実施例1に係るフロントサイドフレームをエンジンルーム内方側から視た側面図である。 図1の平面図である。 図2のIII−III線断面図である。 図2のIV−IV線断面図である。 フロントサイドレインの斜視図である。 フロントサイドレインの分解斜視図である。 前面衝撃荷重入力前の車両の状態を示す模式図である。 前面衝撃荷重入力後の車両の状態を示す模式図である。 細長形状部の連結形態が異なるフロントサイドレインの解析用モデルであって、(a)は実施例1の解析用モデルの長手直交方向断面図を示し、(b)は互いに離隔した短辺同士を連結した解析用モデルの長手直交方向断面図を示し、(c)は長辺同士を直接連結した解析用モデルの長手直交方向断面図を示している。 各解析用モデルを解析した曲げFS特性のグラフである。 実施例2に係るフロントサイドレインの長手直交方向断面図である。 実施例3に係るフロントサイドレインの長手直交方向断面図である。 荷重入力後のフロントサイドレインの長手直交方向断面図である。 従来の閉断面状フレームモデルを解析した曲げFS特性のグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両のフロントサイドフレームに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
以下、本発明の実施例1について図1〜図10に基づいて説明する。
まず、フロントサイドフレームが設置された前部車体構造について簡潔に説明する。
図1,図2に示すように、車両Vは、エンジンルームEと車室Cとを上下方向および車幅方向に延びて仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の前方位置で車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム2と、ダッシュパネル1の下方位置で車体後方側に延びるフロアメインフレーム3と、ダッシュパネル1の上部前方に設置されるカウルボックス4と、フロントサイドフレーム2の側方位置でタワー形状に立設されるサスタワー部5と、このサスタワー部5と前述のダッシュパネル1とを上下方向および車体前後方向に延びて連結するエプロン部6と、エプロン部6上端で車体前後方向に延びるエプロンレインメンバ7と、エプロン部6下部でフロントタイヤTを収容するよう略半円状に膨出形成されたタイヤハウス8等を備えている。尚、左右対象構造であるため、主に車体右側構造について説明し、車体左側構造については説明を省略する。また、以下、車体前方を前方とし、車両Vの進行方向に対して車幅方向左方を左方として説明する。
フロントサイドフレーム2の前端部には、前面衝撃荷重を受けた際、圧縮変形(軸圧縮)して、衝突エネルギの一部を吸収するためのクラッシュカン9を設置している。
ダッシュパネル1の下部前面には、車幅方向に延びる閉断面を構成するダッシュロアクロス10を接合固定している。このダッシュロアクロス10を設けることで、ダッシュパネル1下部の剛性を高めている。
フロントサイドフレーム2の前後方向中央部には、略円柱形状のエンジンマウント11を設置して、このエンジンマウント11によってパワーユニット(図示略)を弾性支持している。また、このエンジンマウント11よりも下方のフロントサイドフレーム2内には、エンジンマウント11の取付け剛性を高めるために、マウント取付けレイン12を設置している。
図1に示すように、フロントサイドフレーム2の後部には、下方に傾斜して湾曲形成された湾曲部2aを形成している。フロントサイドフレーム2の後部下面には、サスペンションサブフレーム(図示略)を取付けるサブフレーム取付けブラケット13を接合固定している。図2に示すように、フロントサイドフレーム2後部の車幅方向内方側には、略筋交状に傾斜して延びる連結補強メンバ14を設置して、フロントサイドフレーム2の湾曲部2aとダッシュロアクロス10とを強固に連結している。
そして、フロントサイドフレーム2の後端上部2b(図2参照)は、ダッシュロアクロス10に接合固定されるように構成しており、後端下部2c(図1参照)は、フロアメインフレーム3の前端に連結部15を介して連結固定されている。
また、フロントサイドフレーム2の後部上方には、エプロン部6の車幅外方側で車体上方側に延びる上部連結メンバ16を設置して、フロントピラー(図示略)とフロントサイドフレーム2の後部とを連結している。
次に、フロントサイドフレーム2について詳細に説明する。
図3に示すように、フロントサイドフレーム2は、断面略ハット形状のインナパネル21の上端フランジ部21aと下端フランジ部21bとを断面略ハット形状のアウタパネル22の上端フランジ部22aと下端フランジ部22bとに夫々接合固定することにより、上下方向に長い、所謂縦比が横比よりも大きな略長方形状の閉断面を構成している。
インナパネル21の車幅方向内方側壁面には、前端部から凹形状に窪み水平方向に延びる第1凹状溝21cを形成している。また、アウタパネル22の車幅方向外方側壁面にも、同様に、前端部から凹形状に窪み水平方向に延びる第2凹状溝22cを形成している(図2参照)。フロントサイドフレーム2の中央部位置では、図2に示すように、第1凹状溝21cの後端が、第2凹状溝22cの後端よりも後方側まで延びるように形成している。
図4に示すように、フロントサイドフレーム2の閉断面内には、サブフレーム取付けブラケット13の前端近傍位置から前方に延びるフロントサイドレインフォースメント(以下、フロントサイドレインと略す)30が配設されている。
このフロントサイドレイン30は、正面視で視て、車幅方向断面の横比が縦比よりも大きな細長形状に形成され且つ荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面NPが長辺と直交するように上下方向に配列された4つの細長形状部40と、上下方向に隣り合う細長形状部40の互いに離隔した長辺同士を連結する3つの連結部41等を備えている。
図4〜図6に示すように、フロントサイドレイン30は、前後方向に延びるインナレイン31(第1パネル部材)とアウタレイン32(第2パネル部材)とによって形成されている。フロントサイドレイン30は、上半部と下半部とが上下対称の構成であるため、以下、主に上半部について説明する。
インナレイン31は、上下方向に配列された4つの凸部31a(細長形状半断面部)と、上端の凸部31aから上方へ延びる上端フランジ部31bと、下端の凸部31aから下方へ延びる下端フランジ部31bと、隣り合う凸部31aの車幅方向外側端を連結する3つの中間フランジ部31c(連結部半断面部)とを備えている。
4つの凸部31aは、車幅方向断面が略コ字状に夫々形成されている。各々の凸部31aは、正面視にて、車幅方向内側に平行状に張り出した1対の横辺31sと、これら1対の横辺31sの車幅方向内側端部を鉛直状に連結すると共に横辺31sよりも幅が狭くなるように設定された縦辺31tとによって夫々構成されている。
最上端の横辺31sの車幅方向外側端部から上端フランジ部31bが鉛直上方に延び、最下端の横辺31sの車幅方向外側端部から下端フランジ部31bが鉛直下方に延びている。1対の横辺31sと縦辺31tとの連結部分は、所定の曲率を有する湾曲面によって形成されている。3つの中間フランジ部31cは、隣り合う凸部31aの互いに離隔した横辺31sの車幅方向外側端部同士を連結している。
アウタレイン32は、インナレイン31と同じ板厚の金属製板材にて形成され、4つの凸部32a(細長形状半断面部)と、上端の凸部32aから上方へ延びる上端フランジ部32bと、下端の凸部32aから下方へ延びる下端フランジ部32bと、隣り合う凸部32aの車幅方向内側端を連結する3つの中間フランジ部32c(連結部半断面部)とを備えている。
4つの凸部32aは、車幅方向断面が単一の頂部32pを有するように略U字状に夫々形成されている。各々の凸部32aは、正面視にて、車幅方向外側に湾曲状に張り出し且つ横辺31sと略同幅の1対の横辺32sと、これら1対の横辺32sの車幅方向外側端部が連なり且つ2次曲面によって形成された頂部32pとによって夫々構成されている。
最上端の横辺32sの車幅方向内側端部から上端フランジ部32bが鉛直上方に延び、最下端の横辺32sの車幅方向内側端部から下端フランジ部32bが鉛直下方に延びている。3つの中間フランジ部32cは、隣り合う凸部32aの互いに離隔した横辺32sの車幅方向内側端部同士を連結している。
図5,図6に示すように、フロントサイドレイン30を形成する際、予め金属製板材をプレス成形してインナレイン31とアウタレイン32とを形成し、上端フランジ部31bと上端フランジ部32b及び下端フランジ部31bと下端フランジ部32bを夫々位置決めして当接させた後、上端フランジ部31b,32bと下端フランジ部31b,32bを夫々溶接接合する。このとき、中間フランジ部31c,32cとは、少なくとも一部が当接状態に保持されている。
以上により、横辺31sとこの横辺31sに連なる横辺32sとからなる1対の長辺と、縦辺31tからなる短辺と、中間フランジ部32cに曲線的に接続された頂部32pとによって前後方向と直交する断面(車幅方向断面)が細長形状の細長形状部40が上下方向に配列して形成され、中間フランジ部31c,32cによって隣り合う細長形状部40の互いに離隔した長辺同士を連結する連結部41が形成される。各連結部41は、各細長形状部40の車幅方向中心部に沿って前後方向に延びているため、細長形状部40の中立面NPの位置に一致している。尚、細長形状部40の短辺に対する長辺の比が2未満の場合、曲げFS特性のフラット化効果が低くなるため、細長形状部40の短辺に対する長辺の比は2以上になるように設定する。本実施例では、横辺31sと横辺32sの和が縦辺31tの略4倍の長さ(長辺:短辺が4:1)に設定されている。
次に、図7、図8の模式図に基づき、車両Vが前面衝撃荷重を受けたときの変形挙動について説明する。
これらの模式図において、Fはフロントサイドフレームとクラッシュボックスとからなるフロントフレーム体、Dはダッシュパネル、Mは連結補強メンバ、Iはダッシュロアクロスとトンネル部に設けたメンバ部材とからなる内側荷重伝達体、Uは上部連結メンバ、Q(ハッチング領域)はマウント取付けレイン、R(ハッチング領域)はサブフレーム取付けブラケット、Tはフロントタイヤを夫々示している。
また、フロントフレーム体Fには、変形後の位置関係が容易に分かるように、便宜上、前後方向に略直線状に延びる複数のポイントを設定している。
第1ポイントP1はクラッシュカン9の前端位置、第2ポイントP2はフロントサイドフレーム2の前端位置、第3ポイントP3はフロントサイドフレーム2の中間位置、第4ポイントP4はマウント取付けレイン12の後端位置、第5ポイントP5はサブフレーム取付けブラケット13の前端位置を示している。
荷重Zが作用すると、フロントフレーム体Fは、圧縮変形と車幅方向の折れ変形を積極的に生じさせて衝撃エネルギを吸収する。
図8に示すように、衝突体Wがフロントフレーム体Fに衝突すると、フロントフレーム体Fの第1ポイントP1と第2ポイントP2との間と、第3ポイントP3の途中までの間とに座屈変形が生じる。第3ポイントP3から第4ポイントP4の間では、マウント取付けレインQ等が存在して変形を生じさせることができないため、第2ポイントP2と第3ポイントP3との間で一旦車幅方向内側に折れ変形(内折れ変形)を生じさせ、第3ポイントP3で車幅方向外側へ折れ変形(外折れ変形)をさせるようにしている。
第4ポイントP4でも、第1凹状溝21aが車両後方側まで延びるように形成することで、第5ポイントP5までの間を車幅方向外側に折れ変形させる。
第5ポイントP5では、サブフレーム取付けブラケットRでサブフレームを取り付け固定し、その後方位置で荷重分散するためにフレーム剛性を高めているから、車幅方向内方側への折れ変形(内折れ変形)が生じる。
以上のように、第3ポイントP3と第4ポイントP4では、車幅方向外側への折れ変形を生じさせ、第5ポイントP5では、車幅方向内側への折れ変形(内折れ変形)を生じさせることで、車体部材の後退を抑制し、車体部材の後退量や乗員への影響を小さくすることができる。
次に、本実施例の車両用フレーム構造における作用、効果について説明する。
上記のように、第5ポイントP5では、荷重Zの作用によって車幅方向外側に突出するように座屈変形していることから、前面衝撃荷重を受けたとき、フロントサイドレイン30の第5ポイントP5相当部分に対して車幅方向外側に向かう荷重が作用するものと見做すことができる。そこで、4つの細長形状部を離隔状態で上下配置すると共に向かい合う長辺同士を中立面位置で連結した本実施例に相当するフロントサイドレインのモデルM1(図9(a)参照)と、4つの細長形状部を離隔状態で上下配置すると共に上下方向に隣り合う短辺を連結したフロントサイドレインのモデルM2(図9(b)参照)と、上下配置された4つの細長形状部の長辺を直接連結したフロントサイドレインのモデルM3(図9(c)参照)とを準備し、夫々のモデルM1〜M3において、図9(a)〜図9(c)に示す矢印方向から荷重fを作用させたときの変形についてCAE(Computer Aided Engineering)による解析を行った。尚、モデルM1〜M3は、細長形状部の材質、前後長、形状(細長比)を同条件に設定している。
図10に、CAEによる解析結果を示す。
尚、モデルM1〜M3が支持可能な荷重fとモデルM1〜M3の変形ストロークとの曲げFS特性を各々のモデルM1〜M3に対応したL1〜L3で示している。
図10に示すように、モデルM2,M3は、長辺が鉛直状に配置された単一の閉断面によって構成されたフロントサイドレインに比べて座屈し難いと推測されるが、最大荷重を持続して維持することができないため、結果的に、衝撃エネルギ吸収量が低い。
モデルM1は、モデルM2よりも最大荷重が低いものの、所定期間安定して最大荷重を維持しているため、モデルM2よりも衝撃エネルギ吸収量を高くすることができる。
本実施例では、前面衝撃荷重を受けたとき、第5ポイントP5に対して車幅方向外側に向かう荷重が作用した状態に擬制されることから、フロントサイドレイン30には、インナレイン31に圧縮荷重が作用し、アウタレイン32に引張荷重が作用すると見做せる。
それ故、前面衝撃荷重を受けたとき、アウタレイン32が最大荷重を一定ストロークの間維持すると、4つの凸部32aにおける前後方向への歪変形が非常に大きくなるため、場合によっては破断する虞がある。そして、これらの凸部32aが破断した場合、上記のような解析上の曲げFS特性を得ることができない。
本車両用フレーム構造によれば、連結部41よりも引張側に張り出した凸部32aが大きいにも拘らず、凸部32aの応力集中部位を減少することにより、凸部32aに作用する応力を緩和して、凸部32aの歪変形による破断を防止できる。
これにより、曲げ強度に寄与するフレーム領域を長手方向に長く拡大して曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができ、クラッシュストロークを短縮化しつつ衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
アウタレイン32の凸部32aの頂部32pが2次曲面によって形成されている。これにより、凸部32aに角形状部を形成しないため、凸部32aに作用する応力を一層緩和することができる。
また、アウタレイン32の凸部32aの頂部32pと中間フランジ部32cとが曲線で接続されている。これにより、凸部32aに応力集中部位を形成しないため、凸部32aに作用する応力を更に緩和することができる。
次に、実施例2に係るフロントサイドレイン30Aについて図11に基づいて説明する。
実施例1のフロントサイドレイン30は、インナレイン31とアウタレイン32とを同じ板厚の金属製板材にて形成したのに対し、実施例2のフロントサイドレイン30Aは、インナレイン31とアウタレイン33との板厚が異なっている。
尚、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付している。
図11に示すように、フロントサイドレイン30Aは、正面視で視て、車幅方向断面が横比が縦比よりも大きな細長形状に形成され且つ荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面NPが長辺と直交するように上下方向に配列された4つの細長形状部40Aと、上下方向に隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した長辺同士を連結する3つの連結部41A等を備えている。
フロントサイドレイン30Aは、前後方向に延びるインナレイン31とアウタレイン33(第2パネル部材)とによって形成されている。フロントサイドレイン30Aは、上半部と下半部とが上下対称の構成であるため、以下、主に上半部について説明する。
アウタレイン33は、インナレイン31よりも板厚が厚い同種の金属製板材にて形成され、4つの凸部33a(細長形状半断面部)と、上端の凸部33aから上方へ延びる上端フランジ部33bと、下端の凸部33aから下方へ延びる下端フランジ部33bと、隣り合う凸部33aの車幅方向内側端を連結する3つの中間フランジ部33c(連結部半断面部)とを備えている。
4つの凸部33aは、車幅方向断面が単一の頂部33pを有するように略U字状に夫々形成されている。各々の凸部33aは、正面視にて、車幅方向外側に湾曲状に張り出し且つ横辺31sと略同幅の1対の横辺33sと、これら1対の横辺33sの車幅方向外側端部が連なり且つ2次曲面によって形成された頂部33pとによって夫々構成されている。
最上端の横辺33sの車幅方向内側端部から上端フランジ部33bが鉛直上方に延び、最下端の横辺33sの車幅方向内側端部から下端フランジ部33bが鉛直下方に延びている。3つの中間フランジ部33cは、隣り合う凸部33aの互いに離隔した横辺33sの車幅方向内側端部同士を連結している。
以上により、横辺31sとこの横辺31sに連なる横辺33sとからなる1対の長辺と、縦辺31tからなる短辺と、中間フランジ部33cに曲線的に接続された頂部33pとによって車幅方向断面が細長形状の細長形状部40Aが上下方向に配列して形成され、中間フランジ部31c,33cによって隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した長辺同士を連結する連結部41Aが形成される。
これにより、細長形状部40Aの引張側部分の引張剛性を増すことができ、引張側応力に起因した凸部33aの歪変形による破断を防止することができる。
次に、実施例3に係るフロントサイドレイン30Bについて図12,図13に基づいて説明する。
実施例1のフロントサイドレイン30は、アウタレイン32の凸部32aの頂部32pが2次曲面によって形成されているのに対し、実施例3のフロントサイドレイン30Bは、アウタレイン34の凸部34aの頂部34pが角形状に形成されている
尚、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付している。
図12に示すように、フロントサイドレイン30Bは、正面視で視て、車幅方向断面が横比が縦比よりも大きな細長矩形的な細長形状に形成され且つ荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面NPが長辺と直交するように上下方向に配列された4つの細長形状部40Bと、上下方向に隣り合う細長形状部40Bの互いに離隔した長辺同士を連結する3つの連結部41B等を備えている。
フロントサイドレイン30Bは、前後方向に延びるインナレイン31とアウタレイン34(第2パネル部材)とによって形成されている。フロントサイドレイン30Bは、上半部と下半部とが上下対称の構成であるため、以下、主に上半部について説明する。
アウタレイン34は、4つの凸部34a(細長形状半断面部)と、上端の凸部34aから上方へ延びる上端フランジ部34bと、下端の凸部34aから下方へ延びる下端フランジ部34bと、隣り合う凸部34aの車幅方向内側端を連結する3つの中間フランジ部34c(連結部半断面部)とを備えている。
4つの凸部34aは、車幅方向断面が単一の頂部34pを有するように略く字状に夫々形成されている。各々の凸部34aは、正面視にて、車幅方向外側に直線状に張り出した1対の横辺34sと、これら1対の横辺34sの車幅方向外側端部が角形状を形成するように連結された頂部34pとによって夫々構成されている。
最上端の横辺34sの車幅方向内側端部から上端フランジ部34bが鉛直上方に延び、最下端の横辺34sの車幅方向内側端部から下端フランジ部34bが鉛直下方に延びている。3つの中間フランジ部34cは、隣り合う凸部34aの互いに離隔した横辺34sの車幅方向内側端部同士を連結している。
尚、1対の横辺34sは、複数の断面直線部で構成しても良く、途中部分に断面角状の折れ部を有しても良い。
以上により、横辺31sとこの横辺31sに連なる横辺34sとからなる1対の長辺と、縦辺31tからなる短辺と、中間フランジ部34cに略直線的に接続された頂部34pとによって車幅方向断面が細長の細長形状の細長形状部40Bが上下方向に配列して形成され、中間フランジ部31c,34cによって隣り合う細長形状部40Bの互いに離隔した長辺同士を連結する連結部41Bが形成される。
引張荷重入力前において、頂部34pと連結部41B(中間フランジ部34c)は、離隔距離L1に設定されている。
図13に示すように、前面衝撃荷重による引張荷重入力後において、引張荷重によって頂部34pが連結部41Bに接近するように車幅方向内側へ移行する。
これにより、引張荷重入力前後において4つの凸部34aに生じる曲げモーメントに伴う周長差を解消することができ、その結果、引張側応力に起因した凸部34aの歪変形による破断を防止できる。
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、フロントサイドフレームの閉断面内部に配設されるフロントサイドレインに適用した例を説明したが、フロントサイドレインではなく、フロントサイドフレーム自体(アウタパネル・インナパネル)に適用しても良い。また、リヤサイドフレーム、サスクロスメンバ、バンパビーム、センタピラー、インパクトバー等、少なくとも、圧縮荷重と引張荷重とが作用する車両用フレームであれば何れにも適用することができる。
2〕前記実施形態においては、細長形状部を4つ配列した例を説明したが、少なくとも2つ以上設ければ良く、5つ以上配列しても良い。また、細長形状部の長辺を水平状に延びるように構成した例を説明したが、圧縮荷重(引張荷重)の作用する方向に細長形状部の短辺が対向すれば良く、圧縮荷重が鉛直方向に入力する場合、細長形状部の長辺を鉛直方向に延びるように構成することで本発明の効果を奏することができる。
3〕前記実施形態においては、インナレインとアウタレインとを形成するに当り、金属製板材を予めプレス成形してフロントサイドレインを形成した例を説明したが、アルミ合金をフレーム材料とする場合、押出成形を用いて成形することも可能である。また、合成樹脂等をフレーム材料とする場合、射出成形を用いて成形しても良い。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
V 車両
2 フロントサイドフレーム
30,30A,30B フロントサイドレイン
31 インナレイン
31s 横辺
32 アウタレイン
32s 横辺
32p 頂部
33 アウタレイン
33s 横辺
33p 頂部
34 アウタレイン
34s 横辺
34p 頂部
40,40A,40B 細長形状部
41,41A,41B 連結部

Claims (4)

  1. 長手方向と直交する断面が細長形状の複数の細長形状部を荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面が長辺と直交するように配置し、隣り合う細長形状部の互いに離隔した長辺同士を1又は複数の連結部で連結した車両用フレーム構造において、
    前記複数の細長形状部は、前記連結部から圧縮側に張り出す細長形状半断面部及び引張側に張り出す細長形状半断面部を夫々有すると共に短辺に対する長辺の比が2以上になるように夫々設定され、
    前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記圧縮側の半断面を構成する第1断面部分と、
    前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記引張側の半断面を構成する第2断面部分とを備え、
    前記第1断面部分の細長形状半断面部が略コ字状に形成され、
    前記第2断面部分の細長形状半断面部が単一の頂部を有するように形成され
    前記第2断面部分の細長形状半断面部の頂部が2次曲面によって形成されたことを特徴とする車両用フレーム構造
  2. 前記第2断面部分の細長形状半断面部の頂部と連結部半断面部とが直線又は曲線で接続されることを特徴とする請求項1に記載の車両用フレーム構造。
  3. 前記第1,第2断面部分が夫々第1,第2パネル部材によって形成され、
    前記第2パネル部材の厚さが前記第1パネル部材の厚さよりも厚くなるように設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用フレーム構造。
  4. 長手方向と直交する断面が細長形状の複数の細長形状部を荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面が長辺と直交するように配置し、隣り合う細長形状部の互いに離隔した長辺同士を1又は複数の連結部で連結した車両用フレーム構造において、
    前記複数の細長形状部は、前記連結部から圧縮側に張り出す細長形状半断面部及び引張側に張り出す細長形状半断面部を夫々有すると共に短辺に対する長辺の比が2以上になるように夫々設定され、
    前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記圧縮側の半断面を構成する第1断面部分と、
    前記複数の細長形状部と前記1又は複数の連結部の前記引張側の半断面を構成する第2断面部分とを備え、
    前記第1断面部分の細長形状半断面部が略コ字状に形成され、
    前記第2断面部分の細長形状半断面部が単一の頂部を有するように形成され、
    前記第2断面部分の細長形状半断面部の頂部が角形状に形成され、
    前記荷重の入力によって前記頂部と前記連結部との距離が近づくように構成されたことを特徴とする車両用フレーム構造。
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