JP6206302B2 - 車両用フレーム構造 - Google Patents
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Description
フレームの長手方向全体を軸圧縮で圧壊させて圧縮変形させることによって、高い値の衝撃エネルギ吸収量を安定的に維持できるため、圧縮変形を用いたエネルギ吸収機構は衝撃エネルギ吸収性能の面で優れていることが知られている。
そこで、フロントサイドフレームの先端部分に軸圧縮(圧縮変形)可能なクラッシュカンを設け、フロントサイドフレームの中間部から後端部に亙って積極的に折れ変形可能な複数の衝撃吸収機構を採用することにより衝撃エネルギ吸収量を増加させて、前突時の乗員保護を図っている(特許文献1)。
特許文献2のフレーム構造は、サイドシルを構成するインナ部材とアウタ部材であって、インナ部材とアウタ部材の車幅方向縦断面が、上側接合部と、下側接合部と、両接合部の間において相手側に突出した凸部と、凸部の上下両側に設けた凹部とを有し、インナ部材とアウタ部材の上側接合部と下側接合部と凸部とを夫々接合し、凸部の上下両側に長手方向に延びる細長形状の閉断面部材を夫々形成している。
この衝撃吸収機構では、折れ変形によって吸収される衝撃荷重がエネルギ吸収量全体の大半を占めるため、折れ変形によるエネルギ吸収特性は圧縮変形によるエネルギ吸収特性よりも衝撃エネルギ吸収性能に与える影響が大きい。
つまり、折れ変形によって吸収される衝撃荷重が小さい場合、衝撃吸収のために必要なフロントサイドフレームの変形ストローク、所謂クラッシュストロークが長くなり、車体デザインの自由度が低下する虞がある。
まず、この解析の基本的な考え方について説明する。
長手方向に延びる閉断面状フレームに対して長手方向に圧縮荷重を作用させた場合、フレームは長手方向に直交する方向に向かって湾曲することから、中立面よりも湾曲中心側の面(圧縮側面)に長手直交方向から圧縮荷重が作用し、中立面よりも湾曲中心側と反対側の面(引張側面)に引張荷重が作用する状態に擬制することができる。
そこで、長手方向に延びる閉断面状フレームモデルを作成し、このフレームモデルの長手方向に延びる圧縮側面に対して長手直交方向から所定の圧縮荷重を作用させることによって、フレームモデルが支持できる荷重とフレームモデルが変形するストロークとの相関関係(以下、曲げFS特性という)について解析した。
図13に示すように、長手方向に延びる閉断面状フレームでは、所定の変形ストローク値において最大荷重が発生し、その後、急激に荷重が低下している。
即ち、荷重が作用する閉断面状フレームの特定領域のみが曲げ強度に寄与していると考えられるため、この特定領域に許容限界を越える荷重(座屈応力)が作用したとき、特定領域が座屈し、閉断面状フレーム全体が座屈変形して衝撃エネルギ吸収量が減少する。
以上のことから、曲げ強度に寄与するフレーム領域を長手方向に長く拡大し、曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持する特性に設定することによって、クラッシュストロークを短縮化し、衝撃エネルギ吸収性能を高くできることを知見した。
しかし、閉断面状フレームの板厚を厚くする場合、車体重量やフレーム自体のコストが増加し、また、閉断面状フレームの横比を縦比よりも大きく設定する場合、エンジンルームに配置される各部材の配置スペースが不利になるため、何れの場合も現実的ではない。
しかし、細長形状部を複数連結した閉断面状フレームに対して長手直交方向に圧縮荷重を作用させた場合、細長形状部の中立線よりも圧縮側に張り出した圧縮側部分が大きくなるため、細長形状部の圧縮側部分が長辺と直交する方向へ傾倒するという新たな課題を招く虞がある。また、細長形状部の圧縮側部分が長辺と直交する方向へ傾倒した場合、曲げ強度に寄与するフレーム領域が減少するため、曲げFS特性の最大荷重を一定ストロークの間維持することができず、十分な衝撃エネルギ吸収性能を確保することができない。
また、荷重入力に伴う圧縮側細長形状部の傾倒を防止しつつ、一層衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
これにより、細長形状部の引張側部分が長辺と直交する方向へ傾倒することを防止できるため、更に衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができる。
これにより、フロントサイドフレームの衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができ、乗員保護性能を向上できる。
以下の説明は、本発明を車両のフロントサイドフレームに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
まず、フロントサイドフレームが設置された前部車体構造について簡潔に説明する。
図1,図2に示すように、車両Vは、エンジンルームEと車室Cとを上下方向および車幅方向に延びて仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の前方位置で車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム2と、ダッシュパネル1の下方位置で車体後方側に延びるフロアメインフレーム3と、ダッシュパネル1の上部前方に設置されるカウルボックス4と、フロントサイドフレーム2の側方位置でタワー形状に立設されるサスタワー部5と、このサスタワー部5と前述のダッシュパネル1とを上下方向および車体前後方向に延びて連結するエプロン部6と、エプロン部6上端で車体前後方向に延びるエプロンレインメンバ7と、エプロン部6下部でフロントタイヤTを収容するよう略半円状に膨出形成されたタイヤハウス8等を備えている。尚、左右対象構造であるため、主に車体右側構造について説明し、車体左側構造については説明を省略する。また、以下、車体前後方向前方を前方とし、進行方向に対して左方を左方として説明する。
ダッシュパネル1の下部前面には、車幅方向に延びる閉断面を構成するダッシュロアクロス10を接合固定している。このダッシュロアクロス10を設けることで、ダッシュパネル1下部の剛性を高めている。
フロントサイドフレーム2の前後方向中央部には、略円柱形状のエンジンマウント11を設置して、このエンジンマウント11によってパワーユニット(図示略)を弾性支持している。また、このエンジンマウント11よりも下方のフロントサイドフレーム2内には、エンジンマウント11の取付け剛性を高めるために、マウント取付けレイン12を設置している。
また、フロントサイドフレーム2の後部上方には、エプロン部6の車幅外方側で車体上方側に延びる上部連結メンバ16を設置して、フロントピラー(図示略)とフロントサイドフレーム2の後部とを連結している。
図3に示すように、フロントサイドフレーム2は、断面略ハット形状のインナパネル21の上端フランジ部21aと下端フランジ部21bとを断面略ハット形状のアウタパネル22の上端フランジ部22aと下端フランジ部22bとに夫々接合固定することにより、上下方向に長い、所謂縦比が横比よりも大きな略長方形状の閉断面を構成している。
このフロントサイドレイン30は、正面視で視て、車幅方向縦断面が細長矩形的な細長形状に形成され且つ荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面NPが長辺と略直交するように上下方向に配列された4つの細長形状部40と、上下方向に隣り合う細長形状部40の互いに離隔した長辺同士を連結する3つの連結部41を備えている。
尚、本発明における細長矩形的な細長形状の細長形状部とは、長手方向直交断面において、1対の長辺と1対の短辺とを備え且つ性能として矩形形状の基本特性を有する形状部であり、長辺又は短辺の途中部分に基本的な矩形形状の特性を阻害しない範囲の角部、湾曲部或いは屈曲部を形成した形状を含むものである。
インナレイン31は、上下方向に配列された4つの凸部31aと、上端の凸部31aから上方へ延びる上端フランジ部31bと、下端の凸部31aから下方へ延びる下端フランジ部31bと、隣り合う凸部31aの車幅方向外側端を連結する3つの中間フランジ部31cとを備えている。
最上端の横辺31sの車幅方向外側端部から上端フランジ部31bが鉛直上方に延び、最下端の横辺31sの車幅方向外側端部から下端フランジ部31bが鉛直下方に延びている。1対の横辺31sと縦辺31tとの交差角度(内角)θ1が90度未満(例えば83度)に夫々設定されている。3つの中間フランジ部31cは、隣り合う凸部31aの互いに離隔した横辺31sの車幅方向外側端部同士を連結している。
尚、細長形状部40の短辺に対する長辺の比が2未満の場合、曲げFS特性のフラット化効果が低くなるため、細長形状部40の短辺に対する長辺の比は2以上になるように設定する。本実施例では、横辺31s(32s)を縦辺31t(32t)の2倍の長さ(長辺:短辺が4:1)に設定している。
これらの模式図において、Fはフロントサイドフレームとクラッシュボックスとからなるフロントフレーム体、Dはダッシュパネル、Mは連結補強メンバ、Iはダッシュロアクロスとトンネル部に設けたメンバ部材とからなる内側荷重伝達体、Uは上部連結メンバ、Q(ハッチング領域)はマウント取付けレイン、R(ハッチング領域)はサブフレーム取付けブラケット、Tはフロントタイヤを夫々示している。
第1ポイントP1はクラッシュカン9の前端位置、第2ポイントP2はフロントサイドフレーム2の前端位置、第3ポイントP3はフロントサイドフレーム2の中間位置、第4ポイントP4はマウント取付けレイン12の後端位置、第5ポイントP5はサブフレーム取付けブラケット13の前端位置を示している。
図8に示すように、衝突体Wがフロントフレーム体Fに衝突すると、フロントフレーム体Fの第1ポイントP1と第2ポイントP2との間と、第3ポイントP3の途中までの間とに座屈変形が生じる。第3ポイントP3から第4ポイントP4の間では、マウント取付けレインQ等が存在して変形を生じさせることができないため、第2ポイントP2と第3ポイントP3との間で一旦車幅方向内側に折れ変形(内折れ変形)を生じさせ、第3ポイントP3で車幅方向外側へ折れ変形(外折れ変形)をさせるようにしている。
第5ポイントP5では、サブフレーム取付けブラケットRでサブフレームを取り付け固定し、その後方位置で荷重分散するためにフレーム剛性を高めているから、車幅方向内方側への折れ変形(内折れ変形)が生じる。
上記のように、第5ポイントP5では、荷重Zの作用によって車幅方向外側に突出するように座屈変形していることから、前面衝撃荷重を受けたとき、フロントサイドレイン30の第5ポイントP5相当部分に対して車幅方向外側に向かう荷重が作用するものと見做すことができる。そこで、4つの細長形状部(θ=90度)を離隔状態で上下配置すると共に向かい合う長辺同士を中立面位置で連結した本実施例に相当するフロントサイドレインのモデルM1(図9(a)参照)と、4つの細長形状部を離隔状態で上下配置すると共に上下方向に隣り合う短辺を連結したフロントサイドレインのモデルM2(図9(b)参照)と、上下配置された4つの細長形状部の長辺を直接連結したフロントサイドレインのモデルM3(図9(c)参照)とを準備し、夫々のモデルM1〜M3において、図9(a)〜図9(c)に示す矢印方向から荷重fを作用させたときの変形についてCAE(Computer Aided Engineering)による第1の解析を行った。尚、モデルM1〜M3は、細長形状部の材質、前後長、形状(細長比)を同条件に設定している。
尚、モデルM1〜M3の支持可能な荷重fとモデルM1〜M3の変形ストロークとの曲げFS特性を各々のモデルM1〜M3に対応したL1〜L3で示している。
図10に示すように、モデルM2,M3は、長辺が鉛直状に配置された単一の閉断面によって構成されたフロントサイドレインに比べて高い荷重まで座屈しないものと推測されるが、荷重ピーク値を持続して維持することができないため、結果的に、衝撃エネルギ吸収量が低い。モデルM1は、モデルM2よりも最大荷重が低いものの、所定期間安定して最大荷重を維持しているため、モデルM2よりも衝撃エネルギ吸収量を高くすることができる。
それ故、前面衝撃を受けたとき、中立面NPよりも圧縮側に張り出した4つの凸部31aに圧縮荷重入力前後において曲げモーメントに伴う周長差が生じることから、凸部31aが周長差を解消するために細長形状部40の長辺と直交する方向(上方又は下方)へ傾倒するため、横辺31sや縦辺31tに変形が発生し、上記のような解析上の曲げFS特性を得ることができない。
図11に示すように、細長形状部の長辺と短辺との交差角度θが90度未満のとき、90度以上のときに比べてエネルギ吸収率が高い。
これは、交差角度θが90度未満の場合、細長形状部の上側長辺は上側に傾斜し、下側長辺は下側に傾斜しているため、荷重入力時、両長辺に夫々の傾斜方向に傾倒させる応力が発生し、両長辺を連結する短辺を介して夫々の応力が相殺されることにより両長辺の姿勢をバランスさせている。
一方、細長形状部の長辺と短辺との交差角度θが90度以上のとき、圧縮側の細長形状部の傾倒が発生し、断面崩れによってエネルギ吸収率が急激に低下する。
細長形状部の長辺と短辺との交差角度θが90度以上の場合、上側長辺は下方への傾倒応力が発生し、下側長辺は上方への傾倒応力が発生するため、両長辺を連結する短辺に圧縮応力が集中し、断面崩れを生じるものと推測される。尚、この傾向は、圧縮側部分で顕著であり、引張側部分は交差角度θが90度以上であっても、所定範囲であれば細長形状部の傾倒は生じない。
以上の結果から、少なくとも圧縮側において細長形状部の長辺と短辺との交差角度θを90度未満に設定することで、細長形状部の傾斜を抑制することができ、好ましくは、80度以上89度以下の範囲であり、交差角度θが83度のとき、最も高いエネルギ吸収率を発揮することができることが判明した。
また、本発明を閉断面状のフロントサイドフレーム2内に配設されたフロントサイドレイン30に適用したため、フロントサイドフレーム2の衝撃エネルギ吸収性能を高くすることができ、乗員保護性能を向上できる。
実施例1のフロントサイドレイン30は、凸部31aと凸部32aとを左右対称に構成したのに対し、実施例2のフロントサイドレイン30Aは、凸部51aと凸部52aとを左右非対称に構成している。尚、実施例1と同様の部材については、同一の符号を付している。
4つの凸部31aは、正面視で視て、車幅方向内側に張り出した1対の横辺31sと、これら1対の横辺31sの車幅方向内側端部を鉛直状に連結すると共に横辺31sよりも車幅方向幅が狭くなるように設定された縦辺31tとによって夫々構成されている。尚、1対の横辺31sと縦辺31tとの交差角度θ1は83度に設定している。
最上端の横辺33sの車幅方向外側端部から上端フランジ部33bが鉛直上方に延び、最下端の横辺33sの車幅方向外側端部から下端フランジ部33bが鉛直下方に延びている。1対の横辺33sと縦辺32tとの交差角度θ2が90度以上(例えば90度)に夫々設定されている。3つの中間フランジ部33cは、車幅方向外側に張り出すように湾曲形成され、隣り合う凸部33aの互いに離隔した横辺33sの車幅方向内側端部同士を連結している。
充填材42は、インナレイン31とアウタレイン33とを接合してフロントサイドレイン30を形成する際、予め、夫々の連結部41A(中間フランジ部33c)又は引張側長辺(横辺33s)に連結部41Aの前後長に対応した長さの発泡シート(図示略)が貼着され、塗装における乾燥工程の熱を利用して発泡させることにより、設置される。発泡後の充填材42は、体積が所定量(例えば5〜20倍)に膨張するため、連結部41Aと隣り合う細長形状部40Aの互いに離隔した1対の引張側長辺とに夫々当接すると同時に接着される。尚、充填材42は、間欠的に配設しても良く、また、金属製リブや合成樹脂製リブを用いても良い。
1〕前記実施形態においては、フロントサイドフレームの閉断面内部に配設されるフロントサイドレインに適用した例を説明したが、フロントサイドレインではなく、フロントサイドフレーム自体(アウタパネル・インナパネル)に適用しても良い。また、リヤサイドフレーム、サスクロスメンバ、バンパビーム、センタピラー、インパクトバー等、少なくとも、圧縮荷重と引張荷重とが作用する車両用フレームであれば何れにも適用することができる。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
2 フロントサイドフレーム
30,30A フロントサイドレイン
31a 凸部
31s 横辺
32s 横辺
33a 凸部
33s 横辺
40,40A 細長形状部
41,41A 連結部
42 充填材
Claims (3)
- 長手方向と直交する断面が細長矩形的な細長形状の複数の細長形状部を荷重入力時の圧縮側と引張側の中間の中立面が長辺と直交するように配置し、隣り合う細長形状部の互いに離隔した長辺同士を連結部で連結した車両用フレーム構造において、
前記連結部が前記中立面に一致する位置に配置され、
前記連結部よりも圧縮側において前記長辺と短辺との交差角度を80度以上89度以下に設定し、
前記連結部よりも引張側において前記長辺と短辺との交差角度を90度以上に形成し、
前記細長形状部の短辺に対する長辺の比が2以上に設定されたことを特徴とする車両用フレーム構造。 - 前記連結部よりも引張側における前記隣り合う細長形状部の間に長辺に夫々当接して前記細長形状部の前記長辺と直交する方向への傾倒を抑制する少なくとも1つの傾倒抑制部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用フレーム構造。
- 前記車両用フレーム構造が閉断面状のフロントサイドフレーム内に配設されたフロントサイドレインフォースメントであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用フレーム構造。
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