JP6206151B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関に適用される燃料噴射制御装置に関する。
特許文献1に、筒内噴射式火花点火内燃機関が開示されている。この内燃機関においては、圧縮行程中における吸気弁の開弁中に、分割噴射による燃料噴射が実行される。これにより、噴射された燃料は、吸気ポートに逆流する筒内ガスとともに吸気ポートに流出する。この吸気ポートに流出した燃料は、次の機関サイクルまでに吸気ポート内において気化し、次の機関サイクルの吸気行程において、予混合燃料として筒内に導入される。そして、この予混合燃料によって、筒内に均質な混合気が形成されるので、良好な燃焼が得られる。
特開2009−293526号公報
しかしながら、特許文献1に記載の分割噴射のそれぞれは、燃料噴射弁が備えるニードル弁のリフト量を最大リフト量に到達させた後に減じる動作による燃料噴射(すなわち、フルリフト噴射)であるので、噴射される燃料の貫徹力(ペネトレーション)が高い。そのため、噴射された燃料の一部が依然として筒内壁面に付着したり、吸気ポートへと逆流する空気中に十分に混在することができない可能性がある。その結果、混合気の均質化が不十分となる可能性が高い。
これに対し、本発明者は、ニードル弁のリフト量を最大リフト量よりも小さい範囲において駆動させる動作による燃料噴射(すなわち、パーシャルリフト噴射)を行うことにより、燃料の貫徹力を低下させ、その噴射された燃料を吸気ポートへと逆流する空気中に十分に混在させて混合気の均質化を改善させる検討を行っている。しかしながら、そのようなパーシャルリフト噴射の1回分の燃料噴射量は小さく、さらに、圧縮行程中における吸気弁の開弁期間も限られているから、燃焼に必要な総ての燃料をパーシャルリフト噴射により賄うことは困難である。
その一方、吸気行程においては、空気が筒内に流れ込むから、筒内における空気の流動が比較的激しいので、フルリフト噴射によって噴射された燃料をその空気の流動により筒内に適当に分散させることができる。
そこで、発明者は、吸気行程においてフルリフト噴射を行うとともに、圧縮行程の吸気弁閉弁直前にパーシャルリフト噴射を複数回行うことを検討している。これにより、前回の圧縮行程においてパーシャルリフト噴射により噴射されて吸気ポートに逆流し均質混合気となり且つ今回の吸気行程において吸気ポートから筒内に流入する均質混合気と、今回の吸気行程においてフルリフト噴射により噴射された燃料によって形成される混合気と、から、今回のサイクルの燃焼に必要な燃料の量を確保しながら同今回のサイクルの燃焼をより安定させることができるとの知見を得た。
ところが、検討を進めると、機関回転数が低いほど筒内の空気流動が弱くなるので、フルリフト噴射によって噴射された燃料によって形成される混合気が所望の特性(たとえば、均質性)を有さないため、パーシャルリフト噴射の回数及び燃焼に供される燃料の総量に対するパーシャルリフト噴射によって噴射される燃料の総量の比を機関回転数に応じて変更すべきとの知見を得た。
より具体的に述べると、本発明は、筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を吸気ポート下方に備えた内燃機関に適用される燃料噴射制御装置であって、前記燃料噴射弁のニードル弁のリフト量が最大リフト量までの範囲で変更される噴射を実行する主噴射制御と、前記ニードル弁のリフト量が前記最大リフト量よりも小さいパーシャルリフト量までの範囲で変更されるパーシャルリフト噴射を連続的に複数回実行する副噴射制御と、を実行する制御部を具備する燃料噴射制御装置に関する。本発明においては、前記制御部は、バルブオーバーラップ量が所定量以下である場合において、吸気行程において前記主噴射制御を実行するとともに、圧縮行程中の吸気弁が閉弁する直前であって前記筒内のガスが吸気ポートに逆流する期間において前記副噴射制御を実行し、且つ、前記副噴射制御において、機関回転数が低いほど前記パーシャルリフト噴射の回数を増加させるとともに、1機関サイクルにおいて前記筒内に噴射される燃料の総量に対する前記パーシャルリフト噴射によって当該筒内に噴射される燃料の総量の割合を増加する。
本発明によれば、機関回転数が低いほど、1機関サイクルの噴射燃料の総量に対する副噴射制御におけるパーシャルリフト噴射燃料の総量の割合(以下「パーシャルリフト噴射割合」)が増加される。このとき、パーシャルリフト噴射の回数が同じであると、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が多くなり、したがって貫徹力が増大してしまうので、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料が吸気ポートに逆流しづらくなる。しかしながら、本発明によれば、パーシャルリフト噴射割合が増加されると、パーシャルリフト噴射の回数も増加されるので、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量の増加分が小さくなるか、またはゼロにすることができる。したがって、パーシャルリフト噴射割合が増加されたとしても、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料は、吸気ポートに逆流し易い。このため、機関回転数が低いほど、より多くの燃料が吸気ポートに逆流する。そして、次の機関サイクルの吸気行程において、より多くの気化燃料が筒内に導入される。したがって、筒内の気流の流速が低く混合気が均質化されにくい低機関回転時においても、筒内の混合気の均質性を向上させることができる。更に、バルブオーバーラップ量が所定量より大きい場合には、排気ポートへの燃料の流出が防止されるので、エミッションの悪化を防止することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料噴射制御装置が適用される内燃機関を示した図である。 図2は、第1実施形態に係る燃料噴射弁の断面図である。 図3(A)は、吸気弁のリフト量、筒内気流の逆流の強さ、およびニードルリフト量それぞれとクランク角度との関係を示した図であり、図3(B)は、図3(A)と同様の図であって、機関回転数が図3(A)における機関回転数よりも低い場合の関係を示した図である。 図4(A)は、フルリフト噴射のニードルリフト量の変化を示した図であり、図4(B)は、パーシャルリフト噴射のニードルリフト量の変化を示した図である。 図5は、パーシャルリフト噴射によって噴射される燃料の噴霧、および、吸気ポートに逆流する筒内ガスの流れの様子を示した図である。 図6(A)は、パーシャルリフト噴射割合のマップを示した図であり、図6(B)は、パーシャルリフト噴射回数のマップを示した図である。 図7(A)は、第1実施形態における燃料噴霧の形状を上方から見た図であり、図7(B)は、第1実施形態における燃料噴霧の形状を側方から見た図である。 図8は、副噴射制御の実施領域を表すマップを示した図である。 図9は、第1実施形態の燃料噴射制御フローの一例を示した図である。 図10は、第2実施形態の燃料噴射制御フローの一例を示した図である。 図11は、第3実施形態の燃料噴射制御フローの一例を示した図である。 図12は、第4実施形態の燃料噴射制御フローの一例を示した図である。
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の燃料噴射制御装置が適用される内燃機関の略断面図が図1に示されている。内燃機関本体10は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、燃料噴射弁13、点火装置14、吸気弁15、排気弁16、ピストン17、コネクティングロッド18、クランクシャフト19、および、クランクポジションセンサ20を備える。点火装置14は、イグナイタ、イグニッションコイル、および点火プラグを含む。
燃焼室(以下、「筒内」とも称呼する。)21は、シリンダヘッド11と、シリンダブロック12と、ピストン17によって画成される。シリンダヘッド11には、燃料噴射弁13、点火装置14、吸気弁15、および排気弁16が取り付けられている。シリンダヘッド11には、吸気ポート22および排気ポート23が形成されている。吸気ポート22は、その一端において燃焼室21と連通し、その他端において吸気マニホールド(図示せず)と連通している。排気ポート23は、その一端において燃焼室21と連通し、その他端において排気マニホールド(図示せず)と連通している。
燃料噴射弁13は、燃料室21上部の吸気ポート22よりも下方の機関本体10の部分(たとえば、シリンダヘッド11の部分、または、シリンダブロック12の部分)に配設されている。点火装置14は、その電極24が燃焼室21の略中央上部に位置するように、シリンダヘッド11に配設されている。吸気弁15は、燃焼室21と吸気ポート22との連通部を開放したり遮断したりするように往復動可能にシリンダヘッド11に配設されている。排気弁16は、燃焼室21と排気ポート23との連通部を開放したり遮断したりするように往復動可能にシリンダヘッド11に配設されている。なお、周知の機構により、吸気弁15の開閉タイミングは可変であり、排気弁16の開閉タイミングも可変である。機関運転状態により、バルブオーバーラップ量も可変である。吸気弁15は通常、排気行程(膨張下死点から吸気上死点まで)の途中で開弁され、圧縮行程(吸気下死点から圧縮上死点まで)の途中で閉弁される。
シリンダブロック12には、ピストン17、コネクティングロッド18、クランクシャフト19、および、クランクポジションセンサ20が備えられる。ピストン17は、コネクティングロッド18と連結され、シリンダブロック12内を往復動可能に配設されている。クランクシャフト19は、コネクティングロッド18と連結されている。
燃料噴射弁13、点火装置14、クランクポジションセンサ20、および、アクセルペダル踏込量センサ26は、電子制御装置(ECU)90に電気的に接続されている。ECU90は、燃料噴射弁13および点火装置14の動作を制御するための制御信号を燃料噴射弁13および点火装置14に与える。クランクポジションセンサ20は、クランクシャフト19の回転位置を検出する。ECU90は、クランクシャフト19の回転位置に関する情報等に基づいて機関回転数を算出する。アクセルペダル踏込量センサ26は、アクセルペダル25の踏込量を検出する。ECU90は、アクセルペダル25の踏込量に関する情報等に基づいて機関負荷を算出する。
<燃料噴射弁の構成>
図2に燃料噴射弁13の構成が示されている。燃料噴射弁13は、ノズル30、ニードル弁31、燃料噴射孔(以下「噴孔」)32、燃料通路33、ソレノイド34、スプリング35、および、燃料取込口36を備える。噴射弁軸線37は、燃料噴射弁13の長手方向に延びる軸線である。燃料噴射弁13は、いわゆる内開弁タイプの燃料噴射弁である。
燃料噴射弁13は、ニードルリフト量(すなわち、ニードル弁31のリフト量)を適宜制御することによって、フルリフト噴射またはパーシャルリフト噴射(これら噴射の詳細については、後述する)を選択的に実行可能な燃料噴射弁である。ニードルリフト量は、燃料噴射弁13への通電時間の制御によって制御可能である。
<噴孔の構成>
燃料噴射弁13の噴孔32は、スリット形状の噴孔である。すなわち、噴孔32の噴射軸線に対して垂直な平面で切ったときの噴孔32の断面の形状は、矩形である。この断面の面積は、噴孔32の入口から出口に向かう方向に徐々に広くなる。したがって、矩形の断面の長手方向に沿った平面で切ったときの噴孔32の断面の形状は、扇状である。燃料噴射弁13は、噴孔32の矩形の断面の長手方向に沿った平面がピストン17の往復動方向に対して垂直になるように、吸気ポート22の下方(シリンダブロック12、あるいは、シリンダヘッド11)に取り付けられている。
<燃料噴射制御>
図3を参照して、第1実施形態の燃料噴射制御について説明する。図3には、吸気弁リフト量(すなわち、吸気弁15のリフト量)、逆流強さ(すなわち、筒内から吸気ポート22に逆流する筒内ガスの強さ)、および、ニードルリフト量と、クランク角度との関係が示されている。図3において、参照符号♯nおよび参照符号♯(n+1)によって示されている期間は、それぞれ、1つの機関サイクルを示している。
第1実施形態においては、1機関サイクルにおいて、主噴射制御(図3に参照符号FLによって示されている制御)と、副噴射制御(図3に参照符号PLによって示されている制御)と、が順次実行される。以下、第1実施形態に従って主噴射制御と副噴射制御との両方を実行する制御を「予混合制御」とも称呼する。
<主噴射制御>
予混合制御における主噴射制御は、フルリフト噴射を1回実行する制御であり、吸気弁開弁期間Tivにおいて、吸気弁15の開弁直後から吸気下死点(吸気BDC)までの期間に実行される。フルリフト噴射とは、図4(A)に示されているように、ニードルリフト量を最大リフト量まで上昇させる燃料噴射(すなわち、最大リフト噴射)である。図4(A)には、1回のフルリフト噴射のニードルリフト量の推移が示されている。
<吸気弁開弁期間>
吸気弁開弁期間Tivとは、吸気弁15が開弁している期間である。第1実施形態においては、吸気弁15は、図3に示されているように、吸気上死点(吸気TDC)直後に開弁し始め、吸気下死点直後に全閉する。したがって、吸気弁リフト量は、吸気上死点においてゼロであり、吸気下死点においてゼロではなく、吸気下死点直後にゼロになる。なお、図示していないが、第1実施形態においては、排気弁16は、吸気弁15の開弁開始前に全閉する。したがって、吸気弁15と排気弁16とが同時に開弁している状態(いわゆるバルブオーバーラップ)はない。
<副噴射制御>
予混合制御における副噴射制御は、パーシャルリフト噴射を連続的に複数回実行する制御であり、吸気弁開弁期間Tivにおいて、主噴射制御の実行後、逆流発生期間(すなわち、筒内ガスが吸気ポート22に逆流する期間)Trfに実行される。パーシャルリフト噴射とは、図4(B)に示されているように、ニードルリフト量を最大リフト量よりも小さいリフト量までしか上昇させない燃料噴射(すなわち、部分リフト噴射)である。図4(B)には、3回のパーシャルリフト噴射のニードルリフト量の推移が示されている。
<逆流発生期間>
逆流発生期間Trfは、前述したように、筒内ガスが吸気ポート22に逆流する期間であり、より具体的には、吸気下死点から吸気弁15が全閉するまでの期間である。前述したように、吸気弁15は、吸気上死点直後に開弁を始め、吸気下死点直後に全閉する。すなわち、逆流発生期間Trfは、圧縮行程(吸気下死点から圧縮上死点まで)において吸気弁15が開弁している期間である。逆流とは、図5に示されているように、吸気弁15下方の筒内の領域から吸気ポート22に流出する筒内ガスの流れである。
<トータル目標噴射量>
第1実施形態においては、1機関サイクルにおける噴射燃料の総量は、機関運転中、吸気量(すなわち、筒内に吸入される空気の量)に応じて、目標空燃比を達成するために必要な燃料がトータル目標噴射量(すなわち、1機関サイクルにおいて燃料噴射弁から噴射すべき燃料の量)Qtとして算出される。すなわち、トータル目標噴射量は、ある一つの気筒に対し1機関サイクル当たりに供給される燃料の総量を意味する。
<パーシャルリフト噴射割合>
さらに、トータル目標噴射量に対する副噴射制御における噴射燃料の総量の割合として、機関運転状態に応じた適切な割合が実験等によって予め求められ、これら求められた割合が、図6(A)に示されているように、機関回転数NEと機関負荷KLとの関数のマップの形でパーシャルリフト噴射割合としてECU90に記憶されている。図6(A)のマップにおいては、機関回転数NEが低いほど、パーシャルリフト噴射割合が大きく、機関負荷KLが高いほど、パーシャルリフト噴射割合が大きい。
<パーシャルリフト噴射回数>
さらに、1回の副噴射制御におけるパーシャルリフト噴射の回数として、機関運転状態に応じた適切な回数が実験等によって予め求められ、これら求められた回数が、図6(B)に示されているように、機関回転数NEと機関負荷KLとの関数のマップの形でパーシャルリフト噴射回数としてECU90に記憶されている。図6(B)のマップにおいては、機関回転数NEが低いほど、パーシャルリフト噴射回数が多く、機関負荷KLが高いほど、パーシャルリフト噴射回数が多い。
<噴射量の決定>
第1実施形態においては、機関運転中、吸気量に応じて、目標空燃比を達成するために必要な燃料がトータル目標噴射量Qtとして算出され、且つ、機関回転数NEと機関負荷KLとに対応するパーシャルリフト噴射割合Rp、および、パーシャルリフト噴射回数Nが、それぞれ、図6(A)、および(B)のマップから取得される。そして、トータル目標噴射量Qtにパーシャルリフト噴射割合Rpを乗算することによって、パーシャルリフト噴射量(すなわち、副噴射制御における噴射燃料の総量)Qptが取得される(Qpt=Qt*Rp)。次いで、パーシャルリフト噴射量Qptをパーシャルリフト噴射回数Nによって割ることによって、パーシャルリフト噴射1回当たりの燃料噴射量Qpが取得される(Qp=Qpt/N)。さらに、トータル目標噴射量Qtからパーシャルリフト噴射量Qptを引くことによって、フルリフト噴射量(すなわち、主噴射制御における噴射燃料の総量)が取得される(Qf=Qt−Qpt)。
そして、主噴射制御においては、斯くして取得されたフルリフト噴射量Qfの燃料が燃料噴射弁13から噴射されるように、フルリフト噴射が実行される。一方、副噴射制御においては、斯くして取得されたパーシャルリフト噴射量Qpの燃料が1回のパーシャルリフト噴射によって燃料噴射弁13から噴射されるように、パーシャルリフト噴射がパーシャルリフト噴射回数Nだけ実行される。
前述したように、第1実施形態においては、機関回転数が低いほど、パーシャルリフト噴射割合が大きく、且つ、パーシャルリフト噴射回数が多い。このため、機関回転数が比較的高い場合のニードルリフト量等を示している図3(A)と、機関回転数NEが比較的低い場合のニードルリフト量等を示している図3(B)と、を比較すると分かるように、トータル目標噴射量が同じである場合、機関回転数が比較的低いときの副噴射制御における噴射燃料の総量は、機関回転数が比較的高いときの副噴射制御における噴射燃料の総量よりも多く、且つ、機関回転数が比較的低いときのパーシャルリフト噴射回数は、機関回転数が比較的高いときのパーシャルリフト噴射回数よりも多い。もちろん、機関回転数が比較的低いときのフルリフト噴射量は、機関回転数が比較的高いときのフルリフト噴射量よりも少ない。
<第1実施形態の効果>
1回の噴射によって噴射される燃料の量が多いほど、燃料と筒内の空気との混合が進みにくい。フルリフト噴射は、図7に参照符号51によって示されているように、一度に比較的多くの燃料を噴射する噴射であるので、当該噴射によって噴射された燃料と筒内の空気との混合が進みにくい。しかしながら、第1実施形態によれば、トータル目標噴射量のうちの一部の量の燃料は、パーシャルリフト噴射によって噴射される。したがって、その分、フルリフト噴射によって噴射される燃料の量は少なくなる。このため、副噴射制御が実行されずに主噴射制御のみが実行される場合に比べて、フルリフト噴射によって噴射された燃料と筒内の空気との混合は進み易くなる。このため、筒内の混合気の均質性が向上する。
一方、パーシャルリフト噴射は比較的短い時間だけ燃料を噴射する噴射であり、当該噴射によって噴射される燃料の総量は比較的少ない。したがって、図7に参照符号50によって示されているように、当該噴射による燃料噴霧は、筒内ガスの抵抗を受け、燃料噴射弁13から比較的近くまでしか飛行しない。つまり、パーシャルリフト噴射による燃料噴霧は、筒内において吸気弁15下方の筒内の領域に分布する。そして、第1実施形態においては、副噴射制御は、逆流発生期間に実行される。したがって、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料は、図5に示されているように、吸気ポート22に逆流する。そして、この燃料は、次の機関サイクルにおける吸気行程中に筒内に吸入される。この燃料は、筒内に吸入されるまでの間に吸気ポートにおいて十分に気化しているので、この燃料は、次の機関サイクルの吸気行程中に筒内に吸入されたときに、筒内に均質な混合気を形成する。このため、筒内の混合気の均質性が向上する。
さらに、機関回転数が低い場合、筒内の気流が弱く、フルリフト噴射によって噴射される燃料と筒内の空気との混合が進みにくい。しかしながら、第1実施形態においては、機関回転数が低いほど、副噴射制御によって噴射される燃料の量が多くされる。したがって、吸気ポート22に逆流して十分に気化した後に筒内に吸入される燃料が多くなる。このため、機関回転数が低い場合であっても、筒内の混合気の高い均質性が維持される。しかも、副噴射制御によって噴射される燃料の量が多くされることから、フルリフト噴射によって噴射される燃料の量が少なくなる。このため、フルリフト噴射によって噴射された燃料が筒内において空気と混合し易くなる。このことからも、機関回転数が低い場合であっても、筒内の混合気の高い均質性が維持される。
さらに、副噴射制御によって噴射される燃料の量が多くされた場合において、パーシャルリフト噴射回数が同じであると、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が多くなる。この場合、パーシャルリフト噴射による燃料噴霧の飛行距離が長くなり、副噴射制御が逆流発生期間に実行されたとしても、燃料噴霧が吸気弁15を越えて遠くまで飛行してしまい、吸気ポート22に逆流しない可能性がある。しかしながら、第1実施形態においては、機関回転数が低く、副噴射制御によって噴射される燃料の量が多くされたときには、パーシャルリフト噴射回数も多くされる。したがって、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料は、吸気ポートに逆流し易い状態が維持される。このため、機関回転数が低い場合であっても、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料が吸気ポートに逆流し、次の機関サイクルにおける吸気行程までに吸気ポートにおいて十分に気化し、次の機関サイクルにおける吸気行程において筒内に吸入されるので、筒内の混合気の高い均質性が維持される。
このように、第1実施形態によれば、機関回転数に依らず、筒内の混合気の高い均質性が確保される。
<主噴射制御の態様>
なお、第1実施形態において、主噴射制御は、フルリフト噴射を1回実行する制御に限られるものではなく、フルリフト噴射を複数回実行するものでも、パーシャルリフト噴射を1回実行するものでも、パーシャルリフト噴射を複数回実行するものであってもよい。
<副噴射制御の実施条件>
なお、機関回転数NEが非常に高いときには、1機関サイクルが時間的に短く、したがって、逆流発生期間が短い。このため、予混合制御における副噴射制御が実行されたとしても、所定の回数のパーシャルリフト噴射を逆流発生期間中に完了することができない可能性がある。一方、機関回転数NEが非常に高いときには、筒内の気流が強いので、燃料と筒内の空気との混合が進み易い。したがって、フルリフト噴射しか実行されなくても、筒内の混合気の均質性は十分高い状態になる。そこで、図8に示されているように、第1実施形態において、フルリフト噴射しか実行されなくても混合気の均質性が十分高くなる機関回転数の閾値Nthが定められ、機関回転数がこの閾値Nth以下である場合、予混合制御(すなわち、主噴射制御および副噴射制御)が実行され、機関回転数が閾値Nthよりも高い場合、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行されるようにしてもよい。
<パーシャルリフト噴射量の下限値>
なお、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が少なすぎると、各パーシャルリフト噴射によって所期の噴射量の燃料が安定して噴射されない可能性がある。そこで、第1実施形態において、パーシャルリフト噴射割合およびパーシャルリフト噴射回数は、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が各パーシャルリフト噴射によって所期の噴射量の燃料が安定して噴射される噴射量以上となるように設定されることが好ましい。
<パーシャルリフト噴射量の上限値>
さらに、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が多すぎると、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料の飛行距離が長く、当該燃料が吸気ポートに逆流する筒内ガスに乗らない可能性がある。そこで、第1実施形態において、パーシャルリフト噴射割合およびパーシャルリフト噴射回数は、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量がパーシャルリフト噴射によって噴射された燃料が吸気ポートに逆流する筒内ガスに確実に乗る噴射量以下となるように設定されることが好ましい。
<第1実施形態の制御フロー>
第1実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図9に示されている。図9のフローが開始されると、始めに、ステップ11において、吸気量と目標空燃比とに基づいてトータル目標噴射量Qtが算出される。
次いで、ステップ12において、機関回転数NEが閾値Nth以下(NE≦Nth)であるか否か、すなわち、副噴射制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。NE≦NEthであれば、副噴射制御の実行条件が成立しているので、ルーチンがステップ13に進み、このステップ13以降のステップによって、予混合制御(主噴射制御および副噴射制御)が実行される。一方、NE>Nthであれば、副噴射制御の実行条件が成立していないので、ルーチンがステップ17に進み、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行され、本ルーチンは一旦終了する。なお、このときの通常噴射制御においては、トータル目標噴射量Qtの燃料が噴射される。
ステップ13においては、機関回転数NEと機関負荷KLとに対応するパーシャルリフト噴射割合Rpが図6(A)のマップから取得されるとともに、機関回転数NEと機関負荷KLとに対応するパーシャルリフト噴射回数Nが図6(B)のマップから取得される。次いで、ステップ14において、トータル目標噴射量Qtとパーシャルリフト噴射割合Rpとパーシャルリフト噴射回数Nとに基づいて、フルリフト噴射量Qfとパーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量Qpとが決定される。次いで、ステップ15において、吸気弁15の開弁タイミングおよび閉弁タイミング等に基づいて、フルリフト噴射およびパーシャルリフト噴射の噴射タイミングが決定される。次いで、ステップ16において、主噴射制御と副噴射制御とが順次実行され、本ルーチンは一旦終了する。なお、このときの主噴射制御においては、噴射量Qfの燃料を噴射する1回のフルリフト噴射が実行され、副噴射制御においては、噴射量Qpの燃料を噴射するパーシャルリフト噴射が噴射回数Nだけ実行される。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、バルブオーバーラップがある場合における燃料噴射制御に関する。バルブオーバーラップがある場合において、前述した予混合制御が実行されると、吸気行程において吸気ポート22から筒内に流入した燃料がそのまま排気ポート23に流出してしまう可能性がある。そこで、第2実施形態においては、バルブオーバーラップがない場合、予混合制御が許可され、バルブオーバーラップがある場合、予混合制御が禁止され、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行される。
なお、バルブオーバーラップがある場合において、予混合制御が実行されると、吸気行程において吸気ポート22から筒内に流入した燃料が排気ポート23に流出してしまう可能性は、バルブオーバーラップ量が大きいほど高くなる。そこで、第2実施形態において、バルブオーバーラップ量が所定量以下である場合、予混合制御が許可され、バルブオーバーラップ量が前記所定量よりも大きい場合、予混合制御が禁止され、通常噴射制御が実行されるようにしてもよい。
<第2実施形態の効果>
第2実施形態によれば、バルブオーバーラップがある場合において、排気ポートへの燃料の流出が防止されるので、エミッションの悪化が防止される。
<第2実施形態の制御フロー>
第2実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図10に示されている。なお、図10のステップ21、22、24〜28は、それぞれ、図9のステップ11、12、13〜17と同じであるので、これらステップの説明は省略する。
図10のステップ23においては、バルブオーバーラップ量Tvoが0以下(Tvo≦0)であるか否かが判定される。Tvo≦0であれば、予混合制御が許可される。すなわち、ルーチンがステップ24に進み、ステップ24以降において、予混合制御が実行される。一方、Tvo>0であれば、予混合制御が禁止される。すなわち、ルーチンがステップ28に進み、予混合制御が実行されずに、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行される。
<第3実施形態>
第3実施形態は、フューエルカット制御(すなわち、燃料噴射弁13からの燃料の噴射が停止される制御)が開始されるときの燃料噴射制御に関する。燃料噴射制御が予混合制御からフューエルカット制御に移行すると、フューエルカット制御の開始後、初回の機関サイクルにおいては、燃料の噴射が停止されているにもかかわらず、前回の機関サイクルにおいて吸気ポート22に逆流した燃料が今回の機関サイクルにおいて筒内に流入する。このため、エミッションが悪化する。そこで、第3実施形態においては、フューエルカット制御の実行が要求された場合、まず、予混合制御が停止されるとともに、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行され、次の機関サイクルにおいて、フューエルカット制御が開始される。なお、通常噴射制御においては、トータル目標噴射量Qtの燃料が1回のフルリフト噴射によって噴射される。
<第3実施形態の効果>
第3実施形態によれば、予混合制御が停止された後に、フューエルカット制御が開始される。このため、フューエルカット制御の開始後、吸気ポートから筒内に流入する燃料はないので、エミッションの悪化が防止される。
<第3実施形態の制御フロー>
第3実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図11に示されている。なお、図11のステップ31、33〜39は、それぞれ、図10のステップ21、22〜28と同じであるので、これらステップの説明は省略する。以下説明するフローは、複数の気筒を有する内燃機関に関するフローである。
図11のステップ32においては、フューエルカット制御要求フラグFcsがリセットされている(Fcs=0)か否か、すなわち、フューエルカット制御の実行が要求されたか否かが判定される。Fcs=0であれば、フューエルカット制御の実行が要求されていないので、ルーチンがステップ33に進み、ステップ33以降において、第1実施形態に従った燃料噴射制御が実行される。
一方、Fcs=1であれば、フューエルカット制御の実行が要求されているので、ルーチンがステップ40に進み、通常噴射制御が実行される。次いで、ステップ41において、内燃機関の全気筒においてステップ40の通常噴射制御が実行されたか否かが判定される。全気筒に対して通常噴射制御が実行されたと判定されると、ルーチンがステップ42に進み、フューエルカット制御が開始され、本ルーチンは一旦終了する。以降、ステップ32において、Fcs=0であると判定される限り、フューエルカット制御が継続される。
一方、ステップ41において、全気筒において通常噴射制御が実行されていないと判定されると、ルーチンがステップ40に戻り、ステップ41において全気筒において通常噴射制御が実行されたと判定されるまで、フューエルカット制御は開始されず、ステップ40が繰り返し実行される。
<第4実施形態>
第4実施形態は、フューエルカット制御が終了されるときの燃料噴射制御に関する。燃料噴射制御がフューエルカット制御から予混合制御に移行すると、予混合制御の開始後、初回の機関サイクルにおいては、吸気ポート22から筒内に吸入される燃料がない。したがって、この初回の機関サイクルにおいては、筒内の燃料は、予混合制御における主噴射制御によって噴射される燃料のみであるので、筒内の混合気の高い均質性が確保されず、さらに、筒内の混合気の空燃比が所期の空燃比にならない。このため、エミッションが悪化する可能性がある。そこで、第4実施形態においては、フューエルカット制御の終了が要求された場合、まず、予混合制御における副噴射制御のみが実行され、次の機関サイクルにおいて、フューエルカット制御が終了されるとともに、予混合制御(すなわち、主噴射制御および副噴射制御)が開始される。
<第4実施形態の効果>
第4実施形態によれば、予混合制御における副噴射制御の実行後、フューエルカット制御が終了されるとともに、予混合制御が開始される。したがって、予混合制御の開始直前の機関サイクルにおいて、吸気ポート22に燃料が流入している。このため、予混合制御が開始されたときには、吸気ポート22から筒内に燃料が流入するので、筒内の混合気の高い均質性が確保され、さらに、筒内の混合気の空燃比が所期の空燃比になる。このため、エミッションの悪化が防止される。
<第4実施形態の制御フロー>
第4実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図12に示されている。なお、図12のステップ51、53〜57は、それぞれ、図11のステップ31、33〜37と同じであるので、これらステップの説明は省略する。以下説明するフローは、複数の気筒を有する内燃機関に関するフローである。
図12のステップ52においては、フューエルカット制御終了要求フラグFceがセットされている(Fce=1)か否か、すなわち、フューエルカット制御の終了が要求されたか否かが判定される。Fce=0であれば、フューエルカット制御の終了が要求されていないので、ルーチンがステップ64に進み、フューエルカット制御が継続される。一方、Fce=1であれば、フューエルカット制御の終了が要求されているので、ルーチンがステップ53に進む。
ステップ53において、NE≦Nthであると判定され、次いで、ステップ54において、Tvo≦Tthであると判定されると、ステップ55〜ステップ57において、フルリフト噴射量Qfと、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量Qpと、パーシャルリフト噴射回数Nと、フルリフト噴射およびパーシャルリフト噴射の噴射タイミングとが決定される。
次いで、ステップ58において、予混合制御における副噴射制御のみが実行される。すなわち、噴射量Qpの燃料を噴射するパーシャルリフト噴射を噴射回数Nだけ実行する副噴射制御が実行される。次いで、ステップ59において、全気筒においてステップ58の副噴射制御が実行されたか否かが判定される。全気筒においてステップ58の副噴射制御が実行されたと判定されたと判定されると、ルーチンがステップ60に進み、フューエルカット制御が終了され、次いで、ステップ61において、予混合制御が開始され、本ルーチンは一旦終了する。
一方、ステップ59において、全気筒においてステップ58の副噴射制御が実行されていないと判定されると、ルーチンがステップ58に戻り、ステップ59において全気筒においてステップ58の副噴射制御が実行されたと判定されるまで、予混合制御は開始されず、ステップ58が繰り返し実行される。
ステップ53においてNE>Nthであると判定され、あるいは、ステップ54においてTvo>Tthであると判定されると、ルーチンがステップ62に進み、フューエルカット制御が直ちに終了され、次いで、ステップ63において、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行され、本ルーチンは一旦終了する。
13…燃料噴射弁、14…点火装置、15…吸気弁、16…排気弁、21…燃焼室(筒内)、22…吸気ポート、23…排気ポート、24…点火プラグの電極、30…ノズル、31…ニードル弁、32…燃料噴射孔(噴孔)、90…電子制御装置(ECU)。

Claims (1)

  1. 筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を吸気ポート下方に備えた内燃機関に適用される燃料噴射制御装置であって、前記燃料噴射弁のニードル弁のリフト量が最大リフト量までの範囲で変更される噴射を実行する主噴射制御と、前記ニードル弁のリフト量が前記最大リフト量よりも小さいパーシャルリフト量までの範囲で変更されるパーシャルリフト噴射を連続的に複数回実行する副噴射制御と、を実行する制御部を具備する燃料噴射制御装置において、
    前記制御部は、バルブオーバーラップ量が所定量以下である場合において、吸気行程において前記主噴射制御を実行するとともに、圧縮行程中の吸気弁が閉弁する直前であって前記筒内のガスが吸気ポートに逆流する期間において前記副噴射制御を実行し、且つ、
    前記副噴射制御において、機関回転数が低いほど前記パーシャルリフト噴射の回数を増加させるとともに、1機関サイクルにおいて前記筒内に噴射される燃料の総量に対する前記パーシャルリフト噴射によって当該筒内に噴射される燃料の総量の割合を増加する、
    ように構成された、燃料噴射制御装置。
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