JP6206151B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の燃料噴射制御装置が適用される内燃機関の略断面図が図1に示されている。内燃機関本体10は、シリンダヘッド11、シリンダブロック12、燃料噴射弁13、点火装置14、吸気弁15、排気弁16、ピストン17、コネクティングロッド18、クランクシャフト19、および、クランクポジションセンサ20を備える。点火装置14は、イグナイタ、イグニッションコイル、および点火プラグを含む。
図2に燃料噴射弁13の構成が示されている。燃料噴射弁13は、ノズル30、ニードル弁31、燃料噴射孔(以下「噴孔」)32、燃料通路33、ソレノイド34、スプリング35、および、燃料取込口36を備える。噴射弁軸線37は、燃料噴射弁13の長手方向に延びる軸線である。燃料噴射弁13は、いわゆる内開弁タイプの燃料噴射弁である。
燃料噴射弁13の噴孔32は、スリット形状の噴孔である。すなわち、噴孔32の噴射軸線に対して垂直な平面で切ったときの噴孔32の断面の形状は、矩形である。この断面の面積は、噴孔32の入口から出口に向かう方向に徐々に広くなる。したがって、矩形の断面の長手方向に沿った平面で切ったときの噴孔32の断面の形状は、扇状である。燃料噴射弁13は、噴孔32の矩形の断面の長手方向に沿った平面がピストン17の往復動方向に対して垂直になるように、吸気ポート22の下方(シリンダブロック12、あるいは、シリンダヘッド11)に取り付けられている。
図3を参照して、第1実施形態の燃料噴射制御について説明する。図3には、吸気弁リフト量(すなわち、吸気弁15のリフト量)、逆流強さ(すなわち、筒内から吸気ポート22に逆流する筒内ガスの強さ)、および、ニードルリフト量と、クランク角度との関係が示されている。図3において、参照符号♯nおよび参照符号♯(n+1)によって示されている期間は、それぞれ、1つの機関サイクルを示している。
予混合制御における主噴射制御は、フルリフト噴射を1回実行する制御であり、吸気弁開弁期間Tivにおいて、吸気弁15の開弁直後から吸気下死点(吸気BDC)までの期間に実行される。フルリフト噴射とは、図4(A)に示されているように、ニードルリフト量を最大リフト量まで上昇させる燃料噴射(すなわち、最大リフト噴射)である。図4(A)には、1回のフルリフト噴射のニードルリフト量の推移が示されている。
吸気弁開弁期間Tivとは、吸気弁15が開弁している期間である。第1実施形態においては、吸気弁15は、図3に示されているように、吸気上死点(吸気TDC)直後に開弁し始め、吸気下死点直後に全閉する。したがって、吸気弁リフト量は、吸気上死点においてゼロであり、吸気下死点においてゼロではなく、吸気下死点直後にゼロになる。なお、図示していないが、第1実施形態においては、排気弁16は、吸気弁15の開弁開始前に全閉する。したがって、吸気弁15と排気弁16とが同時に開弁している状態(いわゆるバルブオーバーラップ)はない。
予混合制御における副噴射制御は、パーシャルリフト噴射を連続的に複数回実行する制御であり、吸気弁開弁期間Tivにおいて、主噴射制御の実行後、逆流発生期間(すなわち、筒内ガスが吸気ポート22に逆流する期間)Trfに実行される。パーシャルリフト噴射とは、図4(B)に示されているように、ニードルリフト量を最大リフト量よりも小さいリフト量までしか上昇させない燃料噴射(すなわち、部分リフト噴射)である。図4(B)には、3回のパーシャルリフト噴射のニードルリフト量の推移が示されている。
逆流発生期間Trfは、前述したように、筒内ガスが吸気ポート22に逆流する期間であり、より具体的には、吸気下死点から吸気弁15が全閉するまでの期間である。前述したように、吸気弁15は、吸気上死点直後に開弁を始め、吸気下死点直後に全閉する。すなわち、逆流発生期間Trfは、圧縮行程(吸気下死点から圧縮上死点まで)において吸気弁15が開弁している期間である。逆流とは、図5に示されているように、吸気弁15下方の筒内の領域から吸気ポート22に流出する筒内ガスの流れである。
第1実施形態においては、1機関サイクルにおける噴射燃料の総量は、機関運転中、吸気量(すなわち、筒内に吸入される空気の量)に応じて、目標空燃比を達成するために必要な燃料がトータル目標噴射量(すなわち、1機関サイクルにおいて燃料噴射弁から噴射すべき燃料の量)Qtとして算出される。すなわち、トータル目標噴射量は、ある一つの気筒に対し1機関サイクル当たりに供給される燃料の総量を意味する。
さらに、トータル目標噴射量に対する副噴射制御における噴射燃料の総量の割合として、機関運転状態に応じた適切な割合が実験等によって予め求められ、これら求められた割合が、図6(A)に示されているように、機関回転数NEと機関負荷KLとの関数のマップの形でパーシャルリフト噴射割合としてECU90に記憶されている。図6(A)のマップにおいては、機関回転数NEが低いほど、パーシャルリフト噴射割合が大きく、機関負荷KLが高いほど、パーシャルリフト噴射割合が大きい。
さらに、1回の副噴射制御におけるパーシャルリフト噴射の回数として、機関運転状態に応じた適切な回数が実験等によって予め求められ、これら求められた回数が、図6(B)に示されているように、機関回転数NEと機関負荷KLとの関数のマップの形でパーシャルリフト噴射回数としてECU90に記憶されている。図6(B)のマップにおいては、機関回転数NEが低いほど、パーシャルリフト噴射回数が多く、機関負荷KLが高いほど、パーシャルリフト噴射回数が多い。
第1実施形態においては、機関運転中、吸気量に応じて、目標空燃比を達成するために必要な燃料がトータル目標噴射量Qtとして算出され、且つ、機関回転数NEと機関負荷KLとに対応するパーシャルリフト噴射割合Rp、および、パーシャルリフト噴射回数Nが、それぞれ、図6(A)、および(B)のマップから取得される。そして、トータル目標噴射量Qtにパーシャルリフト噴射割合Rpを乗算することによって、パーシャルリフト噴射量(すなわち、副噴射制御における噴射燃料の総量)Qptが取得される(Qpt=Qt*Rp)。次いで、パーシャルリフト噴射量Qptをパーシャルリフト噴射回数Nによって割ることによって、パーシャルリフト噴射1回当たりの燃料噴射量Qpが取得される(Qp=Qpt/N)。さらに、トータル目標噴射量Qtからパーシャルリフト噴射量Qptを引くことによって、フルリフト噴射量(すなわち、主噴射制御における噴射燃料の総量)が取得される(Qf=Qt−Qpt)。
1回の噴射によって噴射される燃料の量が多いほど、燃料と筒内の空気との混合が進みにくい。フルリフト噴射は、図7に参照符号51によって示されているように、一度に比較的多くの燃料を噴射する噴射であるので、当該噴射によって噴射された燃料と筒内の空気との混合が進みにくい。しかしながら、第1実施形態によれば、トータル目標噴射量のうちの一部の量の燃料は、パーシャルリフト噴射によって噴射される。したがって、その分、フルリフト噴射によって噴射される燃料の量は少なくなる。このため、副噴射制御が実行されずに主噴射制御のみが実行される場合に比べて、フルリフト噴射によって噴射された燃料と筒内の空気との混合は進み易くなる。このため、筒内の混合気の均質性が向上する。
なお、第1実施形態において、主噴射制御は、フルリフト噴射を1回実行する制御に限られるものではなく、フルリフト噴射を複数回実行するものでも、パーシャルリフト噴射を1回実行するものでも、パーシャルリフト噴射を複数回実行するものであってもよい。
なお、機関回転数NEが非常に高いときには、1機関サイクルが時間的に短く、したがって、逆流発生期間が短い。このため、予混合制御における副噴射制御が実行されたとしても、所定の回数のパーシャルリフト噴射を逆流発生期間中に完了することができない可能性がある。一方、機関回転数NEが非常に高いときには、筒内の気流が強いので、燃料と筒内の空気との混合が進み易い。したがって、フルリフト噴射しか実行されなくても、筒内の混合気の均質性は十分高い状態になる。そこで、図8に示されているように、第1実施形態において、フルリフト噴射しか実行されなくても混合気の均質性が十分高くなる機関回転数の閾値Nthが定められ、機関回転数がこの閾値Nth以下である場合、予混合制御(すなわち、主噴射制御および副噴射制御)が実行され、機関回転数が閾値Nthよりも高い場合、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行されるようにしてもよい。
なお、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が少なすぎると、各パーシャルリフト噴射によって所期の噴射量の燃料が安定して噴射されない可能性がある。そこで、第1実施形態において、パーシャルリフト噴射割合およびパーシャルリフト噴射回数は、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が各パーシャルリフト噴射によって所期の噴射量の燃料が安定して噴射される噴射量以上となるように設定されることが好ましい。
さらに、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量が多すぎると、パーシャルリフト噴射によって噴射された燃料の飛行距離が長く、当該燃料が吸気ポートに逆流する筒内ガスに乗らない可能性がある。そこで、第1実施形態において、パーシャルリフト噴射割合およびパーシャルリフト噴射回数は、パーシャルリフト噴射1回当たりの噴射量がパーシャルリフト噴射によって噴射された燃料が吸気ポートに逆流する筒内ガスに確実に乗る噴射量以下となるように設定されることが好ましい。
第1実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図9に示されている。図9のフローが開始されると、始めに、ステップ11において、吸気量と目標空燃比とに基づいてトータル目標噴射量Qtが算出される。
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、バルブオーバーラップがある場合における燃料噴射制御に関する。バルブオーバーラップがある場合において、前述した予混合制御が実行されると、吸気行程において吸気ポート22から筒内に流入した燃料がそのまま排気ポート23に流出してしまう可能性がある。そこで、第2実施形態においては、バルブオーバーラップがない場合、予混合制御が許可され、バルブオーバーラップがある場合、予混合制御が禁止され、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行される。
第2実施形態によれば、バルブオーバーラップがある場合において、排気ポートへの燃料の流出が防止されるので、エミッションの悪化が防止される。
第2実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図10に示されている。なお、図10のステップ21、22、24〜28は、それぞれ、図9のステップ11、12、13〜17と同じであるので、これらステップの説明は省略する。
第3実施形態は、フューエルカット制御(すなわち、燃料噴射弁13からの燃料の噴射が停止される制御)が開始されるときの燃料噴射制御に関する。燃料噴射制御が予混合制御からフューエルカット制御に移行すると、フューエルカット制御の開始後、初回の機関サイクルにおいては、燃料の噴射が停止されているにもかかわらず、前回の機関サイクルにおいて吸気ポート22に逆流した燃料が今回の機関サイクルにおいて筒内に流入する。このため、エミッションが悪化する。そこで、第3実施形態においては、フューエルカット制御の実行が要求された場合、まず、予混合制御が停止されるとともに、1回のフルリフト噴射のみを実行する通常噴射制御が実行され、次の機関サイクルにおいて、フューエルカット制御が開始される。なお、通常噴射制御においては、トータル目標噴射量Qtの燃料が1回のフルリフト噴射によって噴射される。
第3実施形態によれば、予混合制御が停止された後に、フューエルカット制御が開始される。このため、フューエルカット制御の開始後、吸気ポートから筒内に流入する燃料はないので、エミッションの悪化が防止される。
第3実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図11に示されている。なお、図11のステップ31、33〜39は、それぞれ、図10のステップ21、22〜28と同じであるので、これらステップの説明は省略する。以下説明するフローは、複数の気筒を有する内燃機関に関するフローである。
第4実施形態は、フューエルカット制御が終了されるときの燃料噴射制御に関する。燃料噴射制御がフューエルカット制御から予混合制御に移行すると、予混合制御の開始後、初回の機関サイクルにおいては、吸気ポート22から筒内に吸入される燃料がない。したがって、この初回の機関サイクルにおいては、筒内の燃料は、予混合制御における主噴射制御によって噴射される燃料のみであるので、筒内の混合気の高い均質性が確保されず、さらに、筒内の混合気の空燃比が所期の空燃比にならない。このため、エミッションが悪化する可能性がある。そこで、第4実施形態においては、フューエルカット制御の終了が要求された場合、まず、予混合制御における副噴射制御のみが実行され、次の機関サイクルにおいて、フューエルカット制御が終了されるとともに、予混合制御(すなわち、主噴射制御および副噴射制御)が開始される。
第4実施形態によれば、予混合制御における副噴射制御の実行後、フューエルカット制御が終了されるとともに、予混合制御が開始される。したがって、予混合制御の開始直前の機関サイクルにおいて、吸気ポート22に燃料が流入している。このため、予混合制御が開始されたときには、吸気ポート22から筒内に燃料が流入するので、筒内の混合気の高い均質性が確保され、さらに、筒内の混合気の空燃比が所期の空燃比になる。このため、エミッションの悪化が防止される。
第4実施形態の燃料噴射制御フローについて説明する。このフローの一例が図12に示されている。なお、図12のステップ51、53〜57は、それぞれ、図11のステップ31、33〜37と同じであるので、これらステップの説明は省略する。以下説明するフローは、複数の気筒を有する内燃機関に関するフローである。
Claims (1)
- 筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を吸気ポート下方に備えた内燃機関に適用される燃料噴射制御装置であって、前記燃料噴射弁のニードル弁のリフト量が最大リフト量までの範囲で変更される噴射を実行する主噴射制御と、前記ニードル弁のリフト量が前記最大リフト量よりも小さいパーシャルリフト量までの範囲で変更されるパーシャルリフト噴射を連続的に複数回実行する副噴射制御と、を実行する制御部を具備する燃料噴射制御装置において、
前記制御部は、バルブオーバーラップ量が所定量以下である場合において、吸気行程において前記主噴射制御を実行するとともに、圧縮行程中の吸気弁が閉弁する直前であって前記筒内のガスが吸気ポートに逆流する期間において前記副噴射制御を実行し、且つ、
前記副噴射制御において、機関回転数が低いほど前記パーシャルリフト噴射の回数を増加させるとともに、1機関サイクルにおいて前記筒内に噴射される燃料の総量に対する前記パーシャルリフト噴射によって当該筒内に噴射される燃料の総量の割合を増加する、
ように構成された、燃料噴射制御装置。
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