JP4470841B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に、筒内および吸気通路内に燃料が噴射されるエンジンの制御装置に関する。
従来より、特に冷間始動時においては、燃料の霧化が悪いことが知られている。燃料が十分に霧化していない場合は、燃料の着火性が悪く、始動性が悪い。そこで、冷間時の始動性をよくするため、通常のインジェクタとは別に、コールドスタートインジェクタを設け、たとえばサージタンク内やサージタンクの上流に燃料を噴射することにより、燃料が霧化し得る時間を十分に確保して霧化を促進し、始動性を向上させる技術がある。
特開平4−232353号公報(特許文献1)は、冷間始動時にコールドスタートインジェクタから噴射される燃料が空気と十分に混合されるようにして燃料の霧化やミキシングを大幅に促進し、冷間時の始動性を向上することができるエンジンの吸気装置を開示する。特許文献1に記載のエンジンの吸気装置は、冷間始動時に燃料を噴射供給するコールドスタートインジェクタを備え、冷間始動時のエンジンの状態に応じてコールドスタートインジェクタからの燃料噴射供給の時間を調整するようにしたエンジンの吸気装置である。この吸気装置は、コールドスタートインジェクタを、吸気通路集合部(サージタンク)上流であって、スロットル弁が配置されている主吸気通路に設けるとともに、スロットル弁の開度を調整するスロットル開度調整部と、コールドスタートインジェクタからの燃料噴射供給の時間に応じてこの時間が長いほどスロットル弁の開度を大きくするように、スロットル開度調整部を制御するスロットル弁制御部とを含む。
この公報に記載の吸気装置によれば、冷間始動時でコールドスタートインジェクタからの燃料噴射供給の時間が長くされるときに、スロットル弁を通る空気の流量および流速が増大された状態で、これに向けて燃料が噴射され、十分に空気と混合される。これにより、冷間時の始動性を向上することができる。
また、コールドスタートインジェクタにより燃料を噴射する方法とは別に、点火を行なわずに予め定められた回数だけ燃料を噴射し、噴射した燃料を霧化させてから点火することにより、始動性を向上した技術がある。
特開平11−270387号公報(特許文献2)は、筒内噴射エンジンの始動性を向上させる内燃機関(エンジン)の始動制御装置を開示する。特許文献2に記載の始動制御装置は、燃料噴射弁から気筒内に燃料を直接噴射し、その混合気に点火プラグで点火する筒内噴射式の内燃機関を始動する。この始動制御装置は、始動初期の所定期間(以下「点火カット期間」という)に点火プラグの点火をカットして燃料噴射のみを実行し、点火カット期間経過後に引き続き燃料噴射を実行しながら点火を開始する始動制御部を含む。
この公報に記載の始動制御装置によれば、始動初期の点火カット期間に噴射された燃料は、その後、排気行程を経ても、ある程度の割合の燃料が排出されずに気筒内に残留する。これにより、点火カット期間経過後に最初の点火が開始されるまでの間に、始動初期に噴射された燃料が霧化する時間を十分に確保できる。そのため、燃料を十分に霧化させてから点火することができる。その結果、始動時に混合気を確実に着火、燃焼させることができて、始動性を向上できる。
特開平4−232353号公報 特開平11−270387号公報
しかしながら、特開平4−232353号公報に記載の吸気装置においては、コールドスタートインジェクタから吸気通路に多くの燃料が噴射されるため、たとえば、エンジンの始動前にクランキングが中断された場合には、吸気通路内に多くの燃料が残留し得る。この場合、吸気通路内に残留した未燃燃料が吸気通路を逆流して車外に流出し、エミッション性能に悪影響を及ぼし得るという問題点があった。特開平11−270387号公報に記載の始動制御装置においては、初爆(初めての混合気への点火)後の筒内には霧化された燃料が無くなる。そのため、初爆後のサイクルにおいて燃焼され得る燃料(霧化した燃料)が不足し得る。この場合、特にピストン等の摩擦が大きい場合においてエンジンのトルクが不足するために、エンジンの始動性が悪いという問題点があった。
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、エミッション性能に与える悪影響を抑制しつつ、エンジンの始動性を向上することができるエンジンの制御装置を提供することである。
第1の発明に係るエンジンの制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを備え、点火手段により燃料が点火されるエンジンを制御する。この制御装置は、第1の燃料噴射手段から燃料を噴射するように、第1の燃料噴射手段を制御するための第1の噴射制御手段と、予め定められた条件の下に実施される点火カット期間の終了後であって、最初に点火が実施されるサイクルの次のサイクルの吸気行程において、第2の燃料噴射手段から噴射された燃料が筒内に導入されるように、第2の燃料噴射手段を制御するための第2の噴射制御手段とを含む。
第1の発明によると、第1の燃料噴射手段により、筒内に燃料が噴射される。このような直噴エンジンにおいては、筒内に直接燃料が噴射されるため、燃料が霧化する時間が短い。そのため、特に冷間始動時においては、燃料の霧化が促進されず、燃料の着火性が悪い。そこで、第1の燃料噴射手段から燃料が噴射された回数が予め定められた回数以下の場合には点火が中止され、第1の燃料噴射手段から燃料が噴射された回数が予め定められた回数より多くなった場合には点火を開始する点火カットが行なわれる。この点火カット期間(点火が中止される期間)中に筒内に燃料を溜め、噴射された燃料が霧化する時間を十分に確保することができる。そのため、燃料の着火性を向上することができる。ところが、点火を開始すると、初爆後において筒内には霧化した燃料が無くなる。そのため、初爆後において燃焼され得る燃料が不足し得る。この場合、特にピストン等の摩擦が大きい場合においてエンジンのトルクが不足するために、完爆まで至らない(始動が完了するといえるまで回転数が上昇しない)可能性がある。そこで、霧化した燃料をさらに導入するため、点火カット期間の終了後であって、最初に点火が実施されるサイクルの次のサイクルの吸気行程において、第2の燃料噴射手段から噴射された燃料が筒内に導入されるように、第2の燃料噴射手段から吸気通路内(サージタンクを含む)に燃料が噴射される。吸気通路から筒内に燃料が到達するまでには所定の時間が必要であるため、燃料が霧化する時間を十分に確保することができる。これにより、十分に霧化した燃料を筒内に導入することができる。そのため、燃料の着火性を向上することができる。その結果、エンジン始動性を向上することができる。このとき、第2の燃料噴射手段から噴射された燃料が、点火カット期間中に筒内に導入されないように燃料が噴射される。これにより、その分だけ第2の燃料噴射手段から噴射される燃料量を抑制することができる。そのため、吸気通路内に残留し得る燃料を抑制し、吸気通路を逆流して車外に流出する未燃燃料を抑制することができる。その結果、エミッション性能に与える悪影響を抑制しつつ、エンジンの始動性を向上することができるエンジンの制御装置を提供することができる。
第2の発明に係るエンジンの制御装置は、第1の発明の構成に加え、点火カット期間の終了後であって、最初に点火が実施されるサイクルの次のサイクルの吸気行程までに、第2の燃料噴射手段からの燃料を筒内に導入できないと判断した場合には、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止するための手段をさらに含む。
第2の発明によると、点火カット期間の終了後であって、最初に点火が実施されるサイクルの次のサイクルの吸気行程までに、第2の燃料噴射手段からの燃料を筒内に導入できない場合は、第2の燃料噴射手段からの燃料噴射が禁止される。これにより、始動性の向上に役立てることができない無駄な燃料が吸気通路内に噴射されることを抑制することができる。そのため、吸気通路内に残留し得る燃料を抑制することができる。その結果、吸気通路を逆流して車外に流出する未燃燃料を抑制し、エミッション性能に与える悪影響を抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の制御装置で制御されるエンジンの全体構成図を示す。
エンジン本体10は、シリンダブロック100の上方にシリンダヘッド110が覆着されてなり、シリンダブロック100に形成されたシリンダ100A内にピストン120が摺動自在に保持されている。シリンダ100A内におけるピストン120の上下往復動がクランク軸130の回転運動に変換され、トランスミッション300等へと伝達されるようになっている。クランク軸130は、エンジン始動時にはフライホイール140を介してスタータ30と接続される。フライホイール140とトランスミッション300との間には、クラッチ310が設けられる。
本実施の形態において、トランスミッション300は、運転者の手動操作により変速されるマニュアルトランスミッションである。クラッチ310は、運転者の操作により係合されたり解放されたりする。
ピストン120の上方にはシリンダブロック100、シリンダヘッド110を室壁として燃焼室1000が形成され、燃焼室1000において燃料と空気との混合気の燃焼が行なわれ、その爆発力によりピストン120を上下往復動せしめる。混合気への点火はシリンダヘッド110を貫通し燃焼室1000内に突出して設けられた点火プラグ150により行なわれる。
混合気を構成する空気の供給は、シリンダヘッド110およびこれと接続された吸気管内部に形成された吸気通路1010により行なわれる。また、燃焼室1000からの排気は排気通路1020により行なわれる。シリンダヘッド110には、吸気通路1010と燃焼室1000との間の連通と遮断とを切り換える吸気バルブ160、排気通路1020と燃焼室1000との間の連通と遮断とを切り換える排気バルブ170が取り付けられている。
吸気管内にはフラップ状のスロットルバルブ190が設けられ、その開度に応じて吸気通路1010内の空気流を調整する。
混合気を構成する燃料の供給は、電磁式のインジェクタ210により行なわれる。インジェクタ210はシリンダヘッド110を貫通して設けられ、先端ノズル部から燃焼室1000内(筒内)に燃料を噴射するようになっている。
インジェクタ210への燃料供給は、燃料タンク250から吸い上げた燃料を低圧ポンプ240および高圧ポンプ230により2段階に昇圧して供給される。高圧ポンプ230はエンジン本体10のクランク軸130からベルト等を介して伝達される動力で駆動される。一方、低圧ポンプ240は電動駆動のもので、始動時には、インジェクタ210も低圧ポンプ240から燃料が供給される。
本実施の形態においては、インジェクタ210の他、冷間始動時において吸気通路1010内のサージタンク1012に燃料を噴射するコールドスタートインジェクタ212が設けられる。なお、噴射位置はサージタンク1012の上流であってもよい。
また、点火プラグ150、スロットルバルブ190、インジェクタ210、コールドスタートインジェクタ212等のエンジン各部を制御するエンジンコントロールコンピュータ(以下、エンジンECU(Electronic Control Unit)と記載する)60が設けられている。エンジンECU60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなる一般的な構成のもので、各種センサからの検知信号等に基づいて、点火プラグ150を作動せしめ、スロットルバルブ190に制御信号を出力してスロットルバルブ190の開度(スロットル開度)を調整し、インジェクタ210やコールドスタートインジェクタ212に、制御信号により通電し所定のタイミングで所定時間、インジェクタ210やコールドスタートインジェクタ212のノズルを開く。
エンジンECU60に入力するセンサには、エアフローメータ510、クランク角センサ520、A/Fセンサ530、スロットル開度センサ540、アクセル開度センサ550、車速センサ560、冷却水温センサ580等がある。
エアフローメータ510は、吸気通路1010内を流通する空気流量を測定する。クランク角センサ520は、エンジン回転数NEを検知するためのパルス信号を出力する、A/Fセンサ530は、排気通路1020内の空燃比を測定する。スロットル開度センサ540は、スロットルバルブ190の開度を検知する。アクセル開度センサ550は、アクセルペダル420の開度(踏込み量)を検知する。車速センサ560は、車速(車輪の回転)を検出するためのパルス信号を出力する。冷却水温センサ580は、エンジン温度を代表するエンジン冷却水温を検出する。
また、エンジンECU60には、始動時に運転者がキーを操作すると、そのイグニッション(IG)オン信号およびスタータオン信号が入力される。クラッチペダル430のストローク量が最大になった場合は、ニュートラルスタートスイッチ570がオンになり、エンジンECU60にオン信号が入力される。
エンジンECU60は、エアフローメータ510等によって検知された吸入空気量に基づいて燃焼噴射量を制御する。このとき、エンジンECU60は、各センサからの信号に基づいて、最適な燃焼状態になるように、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じた噴射量と噴射時期とを制御する。このエンジン本体10においては、燃料を筒内に直接噴射するため、噴射時期制御と噴射量制御とを同時に行なう。また、エンジンECU60は、クランク角センサ520やカムポジションセンサ等によって検知された信号(ノッキングセンサ等も含む)に基づいて、最適な点火時期になるように点火時期制御が行なわれる。このような制御により、エンジン本体10の高出力化および低エミッション化の両立を実現している。
図2を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60により、エンジンの始動時において点火プラグ150およびインジェクタ210を制御するために実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジンECU60は、点火カット実行条件が満たされているか否かを判別する。点火カットとは、サイクル(吸気、圧縮、膨張、排気の4つの行程からなる燃焼サイクルであって、クランク角で720度)において点火を行なわずに燃料噴射のみを行なうことを意味する。点火カット実行条件には、冷却水温が予め定められた温度よりも低いという条件、筒内温度が予め定められた温度よりも低いという条件、筒内に残留する燃料量が予め定められた量よりも少ないという条件等が含まれる。点火カット実行条件が満たされていると(S100にてYES)、処理はS200に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
S200にて、エンジンECU60は、点火カット許可回数C(1)を設定する。点火カット許可回数C(1)は、予め定められた点火カット実行限度C(0)から点火カット実行回数Cを減算した値として設定される。
S300にて、エンジンECU60は、スタータ30により、クランキングを開始する。S400にて、エンジンECU60は、インジェクタ210に対して制御信号を出力することにより、インジェクタ210からの燃料噴射を開始する。インジェクタ210からの燃料噴射は、予め定められたクランク角度において行なわれる。このとき、燃料が噴射されるサイクルにおいては、点火プラグ150に対して制御信号が出力されない。燃料への点火は行なわれず、燃料噴射のみが行なわれる。すなわち、点火カットが開始される。
S500にて、エンジンECU60は、点火カット実行回数Cのカウントを開始する。すなわち、点火カットが行なわれたサイクルの回数のカウントが開始される。
S600にて、エンジンECU60は、点火カット実行回数C<点火カット許可回数C(1)であるか否かを判別する。点火カット実行回数C<点火カット許可回数C(1)である場合(S600にてYES)、処理はS600に戻される。もしそうでないと(S600にてNO)、処理はS700に移される。
S700にて、エンジンECU60は、点火カット実行回数Cをクリアする。なお、点火が行なわれてから(初爆後に)点火カット実行回数Cをクリアするようにしてもよい。
S800にて、エンジンECU60は、点火プラグ150に対して制御信号を出力することにより、次のサイクルから筒内の燃料への点火を開始する。これにより、エンジンECU60は、燃料が噴射されたサイクルの回数が点火カット許可回数C(1)以下である間は点火カットを行ない、燃料が噴射されたサイクルの回数が点火カット許可回数C(1)よりも多くなると点火を開始することになる。点火は、予め定められたクランク角度において行なわれる。
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60により、エンジンの始動時においてコールドスタートインジェクタ212を制御するために実行されるプログラムの制御構造について説明する。
S1000にて、エンジンECU60は、点火カット実行条件が満たされているか否かを判別する。この点火カット実行条件は、上述したS100における点火カット実行条件と同じである。点火カット実行条件が満たされていると(S1000にてYES)、処理はS1100に移される。もしそうでないと(S1000にてNO)、この処理は終了する。
S1100にて、エンジンECU60は、コールドスタートインジェクタ212からの燃料噴射実行条件が満たされているか否かを判別する。燃料噴射実行条件には、たとえば、冷却水温が予め定められた温度よりも低いという条件、予め定められた時間内において、コールドスタートインジェクタ212から燃料が噴射されたという履歴がないという条件等が含まれる。燃料噴射実行条件が満たされていると(S1100にてYES)、処理はS1200に移される。もしそうでないと(S1100にてNO)、この処理は終了する。
S1200にて、エンジンECU60は、燃料への点火が開始されるサイクル(初爆されるサイクル)の次のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であるか否かを判別する。
初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であるか否かは、たとえば、クランキングの開始後において、クランク位置(ピストンが上死点にある気筒)が判定されてから、燃料への点火が開始されるタイミングまでのクランク角度CA(1)を用いて判別される。
図4に示すように、TDC(Top Dead of Center)において燃料への点火が行なわれるとすると、クランク角度CA(1)は、クランク位置(ピストンがTDC付近にある気筒)の判定後、筒内への燃料噴射が最初に行なわれるサイクルのTDCまでのクランク角度と、その後、点火が開始されるサイクルのTDCまでのクランク角度の和である。
クランク位置の判定後、筒内への燃料噴射が最初に行なわれるサイクルのTDCまでのクランク角度は、タイミングロータの形状、気筒数、クランクシャフトの形状、バンク角など、エンジンの形状により必然的に定まる角度である。なお、クランク位置が判定されるタイミングを基準として用いるのは、クランク位置が判定されなければ、燃料を噴射すべき気筒や時期を決定できないからである。
筒内への燃料噴射が最初に行なわれるサイクルのTDCから、点火が開始されるサイクルのTDCまでのクランク角度は、気筒間の位相差と点火カット許可回数C(1)との積になる。たとえば、6気筒エンジンの場合、気筒間の位相差は120度であるため、点火カット許可回数C(1)を12回とすると、図4に示すように、筒内への燃料噴射が最初に行なわれるサイクルのTDCから、点火が開始されるサイクルのTDCまでのクランク角度は1440度になる。
このようにして求められるクランク角度CA(1)が、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が気筒の入口(吸気バルブ160付近)に到達するまでのクランク角度CA(2)よりも長いか否かを判別することにより、初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であるか否かが判別される。コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が気筒の入口に到達するまでのクランク角度CA(2)には、実験などに基づいて予め計測された値が用いられる。
なお、クランク角度CA(1)は、点火カット許可回数C(1)に依存するため、点火カット許可回数C(1)に基づいて、初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であるか否かを判別するようにしてもよい。たとえば、点火カット許可回数C(1)が所定の回数よりも多い場合、初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であると判定するようにしてもよい。
図3に戻って、燃料への点火が開始されるサイクルの次のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であると(S1200にてYES)、処理はS1300に移される。もしそうでないと(S1200にてNO)、処理はS1500に移される。
S1300にて、エンジンECU60は、クランキングが開始されたか否かを判別する。クランキングが開始されたか否かは、たとえば、クランキングを開始した場合にフラグを設定するようにし、このフラグの有無により判別するようにすればよい。クランキングが開始されると(S1300にてYES)、処理はS1400に移される。もしそうでないと(S1300にてNO)、処理はS1300に戻される。
S1400にて、エンジンECU60は、燃料への点火が開始されるタイミング(初爆のタイミング)とコールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が気筒の入口に到達するタイミングとが同期するように、コールドスタートインジェクタ212からの燃料噴射を開始する。燃料噴射は、燃料への点火が開始されるタイミング(初爆のタイミング)から、クランク角度CA(2)を逆算したタイミング(クランク角度もしくはクランク位置の判定からの経過時間)において開始される。なお、コールドスタートインジェクタ212からの燃料噴射は連続的に行なわれ、完爆すると(始動が完了すると)燃料噴射が終了される。
S1500にて、エンジンECU60は、コールドスタートインジェクタ212からの燃料噴射を禁止する。その後、この処理は終了する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60の動作について説明する。
燃料が直接筒内に噴射されるエンジンにおいては、燃料の噴射後、点火までの時間が短く、燃料が霧化する時間が不足し得る。そのため、特に冷間始動時においては、燃料の霧化が促進されず、燃料の着火性が悪い。このような場合、所定の回数だけ燃料噴射のみを行ない、点火を行なわない点火カットが行なわれる。
この点火カットを行なう必要があるか否かを判別するため、点火カット実行条件が満たされているか否かが判別される(S100)。
点火カット実行条件が満たされていると(S100にてYES)、点火カット許可回数C(1)が設定される(S200)。点火カット許可回数C(1)を決定するのは、燃料の噴き過ぎにより筒内が濡れて逆に着火性が悪化することを、点火カットが行なわれる回数を制限することにより抑制するためである。
前回エンジンを停止する際、燃料への点火が行なわれていれば(S700にて点火カット実行回数Cがクリアされた状態であれば)、点火実行回数Cが「0」であるため、点火カット許可回数C(1)は点火カット実行限度C(0)(たとえば12回)と同じ回数に設定される。この場合、点火カットにより溜められた燃料が無くなっていると考えられる。
一方、初爆が行なわれる前に(S700にて点火カット実行回数Cがクリアされる前に)クランキングが中断された場合には、点火カット許可回数C(1)は、点火カット実行限度C(0)から点火実行回数Cを減算した回数に設定される。この場合、点火カットにより貯められた燃料が筒内に残存していると考えられる。
点火カット許可回数C(1)が設定されると、クランキングが開始され(S300)、点火カットによる燃料噴射が開始される(S400)。点火カットが行われたサイクルの回数、すなわち、点火カット実行回数Cがカウントされ(S500)、点火カット実行回数Cが点火カット許可回数C(1)と等しくなると(S600にてNO)、点火カット実行回数Cがクリアされ(S700)、次のサイクルから点火が開始される(S800)。
これにより、点火カットが行なわれたサイクルにおいて筒内に燃料を溜め、噴射された燃料が霧化する時間を十分に確保することができる。そのため、燃料の着火性を向上し、良好な初爆を得ることができる。
ところが、点火を開始すると、初爆後において、筒内には霧化した燃料が無くなる。この場合、初爆後のサイクルにおいて燃焼され得る燃料(霧化した燃料)が不足し得る。この場合、特にピストン等の摩擦が大きい場合においてエンジンのトルクが不足するために、エンジンの始動性が悪化し得る。
そこで、霧化した燃料を筒内に導入するため、点火カット実行条件が満たされ(S1000にてYES)、燃料噴射実行条件が満たされていると(S1100にてYES)、コールドスタートインジェクタ212が併用される。
ここで、たとえば前回エンジンを停止する際、初爆が行なわれる前に(S700にて点火カット実行回数Cがクリアされる前に)クランキングが中断されたため、設定された点火カット許可回数C(1)が点火カット実行制限C(0)よりも少ないと想定する。
この場合、図5に示すように、クランク位置が判定されてから、燃料への点火が開始されるタイミング(初爆のタイミング)までのクランク角度CA(1)よりも、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が気筒の入口に到達するまでのクランク角度CA(2)が長くなる場合がある。
この状態では、初爆後のサイクルにおける吸気行程で、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を吸入できないといえる。すなわち、初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入することはできないといえる(S1200にてNO)。
この場合、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を用いて完爆まで至らしめることができない。そのため、コールドスタートインジェクタ212からの燃料噴射が禁止される(S1500)。これにより、始動性の向上に役立てることができない無駄な燃料がサージタンク1012内に噴射されることを抑制することができる。そのため、吸気通路1010内に残留し得る燃料を抑制することができる。その結果、吸気通路1010を逆流して車外に流出する未燃燃料を抑制し、エミッション性能に与える悪影響を抑制することができる。
一方、点火カット許可回数C(1)が十分に多い場合には、図6に示すように、クランク位置が判定されてから、燃料への点火が開始されるタイミングまでのクランク角度CA(1)が、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が気筒の入口に到達するまでのクランク角度CA(2)よりも長くなり得る。
この状態では、初爆後のサイクルにおける吸気行程で、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を吸入できるといえる。すなわち、初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を筒内に導入可能であるといえる(S1200にてNO)。この場合、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料を用いて完爆まで至らしめることが可能である。
そこで、クランキングが開始されると(S1300にてYES)、図7に示すように、
燃料への点火が開始されるタイミングとコールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が気筒の入口に到達するタイミングとが同期するように、コールドスタートインジェクタ212からの燃料噴射が開始される。
これにより、吸気通路1010を通過する間に霧化した燃料を、初爆後のサイクルにおいて筒内に導入することができる。そのため、燃料の着火性を向上することができる。その結果、エンジン始動性を向上することができる。
また、点火カット中のサイクルにおいては、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が筒内に導入されないようなタイミングで燃料噴射が開始される。これにより、その分だけ(燃料噴射のタイミングを遅らせた分だけ)、コールドスタートインジェクタ212から噴射される燃料を抑制することができる。そのため、コールドスタートインジェクタ212からサージタンク1012内に噴射される燃料を抑制し、吸気通路1010内に残留し得る燃料を抑制することができる。その結果、吸気通路1010を逆流して車外に流出する未燃燃料を抑制し、エミッション性能に与える悪影響を抑制することができる。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUによれば、点火カット許可回数C(1)だけ燃料が噴射された後、次のサイクルから燃料への点火が開始される。燃料への点火が開始されるタイミングとコールドスタートインジェクタから噴射された燃料が気筒の入口に到達するタイミングとが同期するように、コールドスタートインジェクタからの燃料噴射が開始される。これにより、燃料への点火が開始されたサイクルの次のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタから噴射された燃料を筒内に導入することができる。そのため、初爆後においても、霧化した燃料を筒内に導入することができる。その結果、燃料の着火性を向上し、エンジン始動性を向上することができる。また、点火カット中のサイクルにおいては、コールドスタートインジェクタから噴射されて燃料が筒内に導入されないようなタイミングで燃料噴射が開始される。これにより、その分だけ(燃料噴射のタイミングを遅らせた分だけ)、コールドスタートインジェクタから噴射される燃料を抑制することができる。そのため、コールドスタートインジェクタからサージタンク内に噴射される燃料を抑制し、吸気通路を逆流して車外に流出する未燃燃料を抑制することができる。その結果、エミッション性能に与える悪影響を抑制しつつ、エンジンの始動性を向上することができる。
なお、本実施の形態においては、初爆後のサイクルにおいて、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が筒内に導入されるように、コールドスタートインジェクタから燃料噴射されていたが、初爆が行なわれるサイクル(初爆以後のサイクル)において、コールドスタートインジェクタ212から噴射された燃料が筒内に導入されるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る制御装置で制御されるエンジンの全体構成図である。 本発明の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。 本発明の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。 クランク位置が判定されてから点火が開始されるまでのクランク角度C(1)を示す図である。 クランク位置が判定されてから点火が開始されるまでのクランク角度C(1)とコールドスタートインジェクタから噴射された燃料が気筒の入口に到達するまでのクランク角度C(2)とを比較した図(その1)である。 クランク位置が判定されてから点火が開始されるまでのクランク角度C(1)とコールドスタートインジェクタから噴射された燃料が気筒の入口に到達するまでのクランク角度C(2)とを比較した図(その2)である。 点火が開始されるタイミングとコールドスタートインジェクタから噴射された燃料が気筒の入口に到達するタイミングとが同期した場合を示す図である。
符号の説明
10 エンジン本体、30 スタータ、60 エンジンECU、150 点火プラグ、160 吸気バルブ、170 排気バルブ、190 スロットルバルブ、210 インジェクタ、212 コールドスタートインジェクタ、300 トランスミッション、310 クラッチ、420 アクセルペダル、430 クラッチペダル、520 クランク角センサ、530 A/Fセンサ、540 スロットル開度センサ、550 アクセル開度センサ、560 ニュートラルスタートスイッチ、570 車速センサ、580 冷却水温センサ、1000 燃焼室、1010 吸気通路、1012 サージタンク、1020 排気通路。

Claims (2)

  1. 筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを備え、点火手段により燃料が点火されるエンジンの制御装置であって、
    前記第1の燃料噴射手段から燃料を噴射するように、前記第1の燃料噴射手段を制御するための第1の噴射制御手段と、
    予め定められた条件の下に実施される点火カット期間の終了後であって、最初に点火が実施されるサイクルの次のサイクルの吸気行程において、前記第2の燃料噴射手段から噴射された燃料が筒内に導入されるように、前記第2の燃料噴射手段を制御するための第2の噴射制御手段とを含む、エンジンの制御装置。
  2. 前記制御装置は、前記点火カット期間の終了後であって、最初に点火が実施されるサイクルの次のサイクルの吸気行程までに、前記第2の燃料噴射手段からの燃料を筒内に導入できないと判断した場合には、前記第2の燃料噴射手段からの燃料噴射を禁止するための手段をさらに含む、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
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