JP6205806B2 - RIfS(反射干渉分光法)測定装置 - Google Patents

RIfS(反射干渉分光法)測定装置 Download PDF

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本発明は、RIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射干渉分光法)用の測定装置に関する。
RIfSは、センサーチップの表面に形成された光学的な厚さの薄膜に光を照射すると、その厚さによって、干渉によって反射率が最低となる波長(ボトムピーク波長)が相違するという原理を利用する分析手法である。すなわち、試料薄膜が形成されたセンサーチップについてボトムピーク波長を測定することにより、基準となる無修飾のセンサーチップについて測定されたボトムピーク波長との差(Δλ)を算出し、そこから試料薄膜の光路長(屈折率×厚さ)に換算することができる。RIfSの基本原理は特許文献1や非特許文献1などに記載されている。
従来、RIfSは一般的に、試料中の特定の物質を検出するために用いられてきた。たとえば、試料中に含まれるアナライト(抗原分子等)と、センサーチップの表面に固定化されたリガンド(抗体等)との間で分子間相互作用(抗原抗体反応による結合)が起き、当該アナライトからなる薄膜が形成されると、その形成量(平均的な厚さ)に応じてΔλが変化するので、試料中のアナライトを標識化することなく、リアルタイムで定量的に検出することができる。
一方、特許文献2には、RIfSの新たな用途として、センサーチップの表面に形成された分析対象薄膜の膜厚を少なくとも2つの温度において測定し、温度に対する膜厚変化を算出することにより、当該分析対象薄膜の熱応答性(たとえば、非接触測定による物質の熱膨張係数、水和性被膜の熱膨張係数、熱ヒステリシス、熱緩和時間、熱遅延時間、LCST、UCST、相転移、熱ゆらぎ、吸水性、吸湿性または水和性)を測定する方法が提案されている。この方法を実施するために、センサーチップの一方の面に分析対象薄膜を形成し、もう一方の面に温度調節部材(ペルチェ素子、冷却ファン)および温度センサー(サーミスタ)を当接させて、プログラム温度調節手段により、分析対象薄膜が所定の時間に所定の温度となるよう制御する実施形態が開示されている。
しかしながら特許文献2には、分析対象薄膜の周囲の気体の湿度を連続的に変化させながら上記の熱応答性に関する分析を行う方法は記載されておらず、そのための湿度調節ユニットを内部に備えるRIfS測定装置も記載されていない。
また、特許文献3には、QCM(水晶振動子マイクロバランス)またはその改良法であるQCM−Dを利用して、センサー(水晶振動子)の表面に形成されている膜状の試料の吸湿性(膨潤性)等の物性を分析する方法が開示されている。そのための検出器(モジュール)として、特許文献3には、蒸気を透過しうる多孔質性の膜によって仕切られた、溶液を保持するための第1空間と、試料が積層されている水晶振動子に隣接した第2空間とを備えており、第2空間の相対湿度を前記溶液からの蒸気の透過量によって調節することができる検出器が記載されている。さらに、非特許文献2には、特許文献3に係る出願人が販売している前記検出器を用いて、相対湿度を数段階に変化させながら試料の厚さを測定するという応用例が開示されている。
しかしながら、特許文献3に記載された検出器が備える機構は、試料が置かれている雰囲気の湿度を連続的に素早く調節することができるものではない。QCM等は理論上、測定環境が一定でないと測定が行えず(測定環境が変化すると計測のベースラインが変化してしまう)、またQCM等の装置は一般的に機械的な駆動部を有するので測定に時間がかかる。そのため、非特許文献2中のグラフに示されているように、相対湿度を変化させる場合も、上昇又は下降させた後に一定の値でしばらく保持するといったように、段階的に変化させる必要があり、湿度を連続的に変化させながらリアルタイムで測定を行うことはできない。したがって、試料が置かれている雰囲気の湿度を連続的に素早く調節する必要性はなく、そのための機構はこれまで開発されてこなかった。
特許第3786073号公報 国際公開公報WO2012/161287号 国際公開公報WO2009/005452号
Sandstrom et al, APPL.OPT., 24, 472, 1985 Application Note (QS 405-18-1) "Analysing vapor uptake & release with QCM-D'' (http://www.q-sense.com/file/18-analyzing-humidity-effects-with-qcm-d-1.pdf)
本発明は、各種の材料からなる薄膜に対する水分子の挙動や、そのような薄膜の熱応答性、その他の従来にはない観点から分析することを可能とする、センサーチップ(試料薄膜)が置かれた環境の温湿度の精緻な制御を可能とする手段を備えたRIfS測定装置を提供することを目的とする。
ここで、発明者らは先に、RIfS測定装置を用いて、センサーチップが置かれた環境(雰囲気)の湿度を連続的に変化させながら、センサーチップの表面に形成された試料薄膜についてΔλを測定したところ、驚くべきことに、湿度の変化に呼応してΔλ(およびそこから換算される膜厚)がサブオングストロームレベルで変化する様子が観察できることを見出しており、このような知見に基づき、発明者らは本発明とは別の発明として、薄膜に対する気体状水分子の挙動に関する分析方法および当該分析方法を実施するための測定システムを提案している(特願2012−256376)。
しかしながら、先に提案されている測定システムにおいては、湿度調節ユニットおよび湿度センサーを備えた筐体(たとえば市販されている恒温恒湿槽)内にRIfS測定装置を設置する実施形態や、RIfS測定装置内(センサーチップセット部周辺)にチャンバーを形成した上で、外付けされた調湿装置から調湿ガスを導入する実施形態が想定されている。このような実施形態では、RIfS測定装置とは別個に比較的大型の装置を購入して設置する必要があることが、コストや設置スペースの点で大きな負担となる(なお、一般的には冷凍機を付けないと40%以下の湿度を達成できないため、装置が大型化しやすい)。また、筐体が比較的大型であるため、サンプルを交換して再び測定する際に大容量の調湿を行う事となり、湿度安定までに時間がかかってトータルの測定時間が長くなる。RIfS装置とは別個の装置から発生するガスの湿度および温度(設定値)が、試料薄膜が置かれた環境の実際の湿度および温度と厳密には一致しなかったり、それらを短時間で変化させた場合にタイムラグが生じたりする問題もある。さらに前者の実施形態については、RIfS測定装置を構成する部品に対する湿度の影響にも常に留意する必要がある。
したがって、本発明はさらに、高湿度下での電気回路への悪影響を防止し、コストや設置スペースを抑えた上で、前述したような、センサーチップ(試料薄膜)が置かれた環境の温湿度の精緻な制御を可能とする手段を備えたRIfS測定装置を提供することを目的の一つとする。
本発明者らは、小型の湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構を筐体内部に備え、センサーチップの近傍に設置された温湿度計でモニタリングしながら、前記湿潤ガスおよび乾燥ガスの流量を調節することのできるRIfS測定装置が、上記の課題を解決しうることを見出した。
また、本発明者らは、試料薄膜の周囲を温度調節された乾湿ガスで満たすために、従来のRIfS測定において液体を送液するために用いられていたフローセルに類似した部材を用いて密閉空間を生み出す実施形態において、その部材に設けられた供給口から微量の試薬を添加して試料薄膜と反応させることにより、その反応の様子をリアルタイムでRIfSで観測できることも見出し、本発明を完成させるに至った。なお、このような実施形態で供給される試薬は液状ないし霧状ではあっても微量であるため、試料薄膜の上層に液体からなる新たな層を形成することはなく、RIfSを液体中ではなく気体中で行っているものとみなすことができる。
すなわち、本発明は下記の発明を包含する。
[1] センサーチップの表面に形成された試料薄膜が置かれている密閉空間を、湿度連続的に変化するガスで満たすための、湿度調節ユニットを含む測定環境調節機構を備え
前記ガスによって前記密閉空間内の湿度を連続的に変化させながら、複数の前記湿度下で反射スペクトルをそれぞれ取得できることを特徴とする、RIfS測定装置。
[2] 前記湿度調節ユニットが、湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構、および乾湿ガス供給コントロールユニット含む、[1]に記載のRIfS測定装置。
[3] 前記湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構、および乾湿ガス供給コントロールユニットが一体化している、[1]または[2]に記載のRIfS測定装置。
[4] 前記ガスの湿度を1%あたり1〜3600秒の速度で変化させることができる 、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
[5] 前記密閉空間内の湿度をリアルタイムで計測する湿度センサーと、前記湿度センサーによって計測された前記密閉空間内の湿度の実測値に基づいて、PID演算方式によって前記密閉空間内の湿度を連続的に変化させる制御部とをさらに有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
] 前記湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構と前記密閉空間とを連結するガス流路が、結露した水分を排除するための水分トラップ機構を有する、[2]〜[]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
[7] 湿度調節ユニットを含む測定環境調節機構が、前記センサーチップに積載されたフローセルによって前記試料薄膜の周囲に形成された密閉空間を、湿度が連続的に変化するガスで満たすためのものである、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
[8] 前記密閉空間の寸法は、幅2.5mm×長さ16mm×深さ0.1mmである、[7]に記載のRIfS測定装置。
[9] チップカバーおよびセンサーチップセット部、または遮光カバーが、前記密閉空間を形成するための構造を備える、[1]〜[]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
10] 前記測定環境調節機構がさらに、前記密閉空間内のガスを外部に排出するための排気機構を含む、[1]〜[]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
11] 前記測定環境調節機構がさらに、前記湿度調節ユニットに空気以外のガスを供給する機構を含む、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
12] さらに、センサーチップ用温度調節機構を備える、[1]〜[11]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
[13] 前記ガスを任意の温度に調節する温度調節機構をさらに有する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
14] さらに、前記密閉空間を形成する部材に設けられた試薬供給口から試薬を噴霧する試薬供給機構を備える、[1]〜[13]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
[15] 前記密閉空間を形成する部材としての前記チップカバーに前記試薬供給口が設けられている、[14]に記載のRIfS測定装置。
[16] 請求項[1]〜[15]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置と、当該RIfS測定装置の測定環境調節機構の制御手段と、当該RIfS測定装置がセンサーチップ用温度調節機構を備える場合はその制御手段と、当該RIfS測定装置が試薬供給機構を備える場合はその制御手段と、を含むことを特徴とする、RIfS測定システム。
17] 密閉空間を形成する部材として[1]〜[15]のいずれか一項に記載のRIfS測定装置と共に使用されるセンサーチップ用のフローセルであって、試料薄膜と反応させるための試薬が塗布されている領域が、ガス流入口の壁面に形成されていることを特徴とするフローセル。
18] 密閉空間を形成する部材として[15]に記載のRIfS測定装置と共に使用されるセンサーチップ用のフローセルであって、試薬供給口を備えることを特徴とするフローセル。
なお、明細書中に記載される用語「湿度」は、「相対湿度」および「絶対湿度」の両方を包含する。温度が一定であれば、「相対湿度を連続的に変化させる」ことと「絶対湿度を連続的に変化させること」は、どちらも連続的に変化するという点で共通しており、本発明の分析方法や測定システムにおける「湿度」をどちらの意味で解釈しても支障はない。たとえば、本発明における湿度調節手段としては、一般的に販売されている湿度調節ユニットや湿度調節装置を用いることができるが、通常は相対湿度により湿度を制御しているので、それに従って相対湿度で湿度調節パターンを設定することができる。一方、相対湿度が同じであっても高温の方が多量の水分子が存在する(絶対湿度が高い)ことになり、逆に同じ質量の水分子があっても(絶対湿度が同じでも)高温の方が相対湿度は低くなる。したがって、異なる温度で測定した結果を共通の基準で比較する場合、あるいは水分子の絶対量で表示する場合は、絶対湿度で測定または換算する方が適切である。
「湿度および/または温度」という表記は、湿度、温度のいずれか一方のみに関するものであっても、その両方に関するものであってもよいことを意味する。
また、「密閉空間」は、センサーチップの表面に形成された試料薄膜が置かれている雰囲気の湿度および/または温度(さらに任意で圧力)を、温湿度調節ユニットから発生する気体によって所望の範囲の調節することができる程度の密閉性を有する空間を指す。このような密閉空間は、温湿度調節ユニットや排気機構と接続するための開口を有するが、上述したような機能を果たしうる程度の適切な密閉性を有していればよい。
本発明のRIfS測定装置は、試料薄膜周辺の微小な密閉空間のみの温湿度を調節できる機構を備えている。そのため、高湿度下での電気回路への悪影響を防止し、コストや設置スペースを抑えることができるのみならず、短時間で安定的に設定値に到達し、設定値と実測値とのずれや変化のタイムラグが極めて小さな(オーバーシュートのような挙動を示さず追従性の高い)、温湿度の精緻な制御が可能となる。このような本発明の測定装置を使用することにより、試料薄膜に対する水分子の挙動に関する分析や、その他の試料薄膜が置かれた環境の温湿度を調節することにより行われる分析において、より一層の精度の向上や分析時間の短縮が可能となり、サンプルの出し入れも容易となる。
また、従来は試薬との反応の前後の試料薄膜を比較するためには、試薬との反応前の試料薄膜を備えたセンサーチップについてRIfS測定を行ったのち、比較的多量の試薬を送液して試料薄膜と反応させることにより別途作製しておいたセンサーチップと交換する、あるいはセンサーチップを交換しないが別途用意された送液用流路を通じて比較的多量の試薬を送液して試料薄膜と反応させた後、もう一度RIfS測定を行う必要があった。特に後者の場合は、液層が入ることで屈折率が変化するため(空気の屈折率=1、水の屈折率=1.33)、反射率も大きく変化してしまい、試薬と試料薄膜との反応による変化のみを捉えることが不可能であるため同一条件で連続的に測定を行うことはできない。その上、水の屈折率は空気よりも大きいため反射干渉の分解能も低下してしまい(センサーチップ表面の光学薄膜、たとえばSiNの屈折率は約2.0〜2.5であるが、これとの屈折率差が大きい法が分解能が高くなる)、周囲に多量の水が存在するために試料薄膜の気体中での水和の様子を定量的に測定することもできない。本発明にはこのような問題はなく、試料薄膜周辺に形成される密閉空間を利用して微量の試薬を供給することにより、試薬と試料薄膜との反応の様子や、当該反応後の試料薄膜の水和量を、同一条件のまま連続的にRIfSで観測することが可能となる。
図1は、本発明における測定システムの一実施形態を示す概略図である。 図2Aは、温湿度調節ユニットに係る第1の実施形態を示す概略図である。 図2Bは、温湿度調節ユニットに係る第2の実施形態を示す概略図である。 図3は、制御系の入力にステップ信号を加えたときの出力結果の例を示す。(a)比例制御の特性。上のグラフ:スムーズに目標値に近づけることができる。下のグラフ:操作量は偏差に比例して少なくなっていく。(b)PI制御の特性。上のグラフ:スムーズに目標値に近づけることができる。下のグラフ:比例制御より大きな操作量となる(上の曲線)。また、積分により偏差分が蓄積され、操作量として発生する(下の曲線)。(c)PID制御の特性。上のグラフ:素早く目標値に追従する。下のグラフ:微分動作により制御量が急激に大きくなる部分がある。 図4は、PID制御パラメータを求める際の描画の例を示す。 図5は、PIDパラメータによる特性の違いの例を示す。上の曲線:パラメータが大きい例の時の特性。下の曲線:パラメータが小さい例の時の特性。 図6は、密閉機構に係る第1の変形例である、センサーチップをセットするセンサーチップセット部(ステージ)と、フローセルに被せるチップカバーによって密閉空間を形成する実施形態の概略図である。 図7Aは、RIfS測定装置が備える試薬供給機構に係る第1の実施形態(振動子での噴霧)を示す概略図である。 図7Bは、RIfS測定装置が備える試薬供給機構に係る第2の実施形態(静電噴霧)を示す概略図である。 図8は、フローセルが備える試薬供給機構に係る第3の実施形態(結露による液滴添加)を示す概略図である。 図9は、実施例1による、調湿ガスの相対湿度の設定値(右軸、%)およびRIfSの測定値(左軸、Δλ)のグラフである。 図10は、調湿ガスの相対湿度の変化パターンの例を示すグラフである。 図11は、実施例2による、調湿ガスの相対湿度の設定値(右軸、%)およびRIfSの測定値(左軸、Δλ)のグラフである。矢印(測定開始から約800秒後=相対湿度10%、および約2500秒後=相対湿度45%)のタイミングで試薬(BSA)を添加した。
−測定装置・測定システム−
本発明に係るRIfS測定装置は、センサーチップの表面に形成された試料薄膜が置かれている密閉空間に、湿度および/または温度が連続的に変化するガスを供給するための温湿度調節ユニット、好ましくはさらに、前記ガスを排出するための排気機構を含む測定環境調節機構を備える。本発明に係るRIfS測定装置は、必要に応じてさらに、微量の試薬を試料薄膜に添加するための試料供給機構を備えていてもよい。
また、本発明に係る測定システムは、そのようなRIfS測定装置と、その測定環境調節機構の制御手段を備える。
以下、本発明に係る測定装置および測定システムを、図1に示す好適な一実施形態に基づき説明する。しかしながら、本発明の実施形態はこの図に示されたものに限定されず、本発明の作用効果を妨げない範囲で改変された実施形態も含まれる。
測定システム1は基本的に、RIfS装置10、このRIfS装置10にセットして用いられるセンサーチップ21およびフローセル23、制御装置50および制御装置50と各要素との接続手段60を含むシステム制御手段により構成される。
(RIfS装置)
RIfS装置10は、RIfS測定機構、測定環境調節機構、その他センサーチップ21およびフローセル23をセットするためのセンサーチップセット部(ステージ)およびチップカバー、これらを収納し、一部に開閉可能な遮光カバーが設けられている筐体などから構成される。
・RIfS測定機構
図1に示す実施形態において、RIfS測定機構は、白色光源11、分光器12および測定プローブ13を含む。白色光源11が点灯すると、その白色光が光ファイバ13aを介して測定領域Aに向けられたプローブ13から照射され、測定領域Aからの反射光が光ファイバ13bを介して分光器12に導かれる。図中の矢印は入射光および反射光を表す。
白色光源11は、ハロゲンランプと、これを格納する筐体とから構成される。筐体には、第一の光ファイバ13aを接続するための接続ポートが設けられており、接続ポートに接続された光ファイバ13aの端面とハロゲンランプとが対向するように配置される。
分光器12は、受光部(CCD等)で受ける光について、波長ごとに強度を検出し、分光強度として制御装置50に出力する。筐体には、第二の光ファイバ13bを接続するための接続ポートが設けられており、接続ポートに接続された光ファイバ13bの端面と受光部とが対向するように配置される。
測定プローブ13は、白色光源11からの白色光を測定領域Aに導くための第一の光伝達経路としての光ファイバ13aと、光ファイバ13aから照射された白色光の測定領域Aにおける反射光を分光器12に導くための第二の光伝達経路としての光ファイバ13bとを備える。光ファイバ13a,13bは、いずれも微細ファイバを束ねた構造となっている。光ファイバ13aの一端は、白色光源11の接続ポートに接続されており、光ファイバ13bの一端は、分光器12の受光を行う接続ポートに接続されている。光ファイバ13aおよび13bそれぞれのもう一端は、測定プローブ13で、各々の微細ファイバが一つの束となるように複合的に寄り合わされている。光ファイバ13aを構成する微細ファイバは、測定プローブ13の中央に分布し、光ファイバ13bを構成する微細ファイバは光ファイバ13aの微細ファイバの束を取り囲むようにその周囲に分布している。
なお、本実施形態においては、センサーチップ21からの反射光を分光器12で受光するようにしているが(反射型RIfS)、センサーチップ21として光透過性のものを用いて、白色光源11からの光をセンサーチップ21に照射し、センサーチップ21を透過してきた光を受光するように分光器12を配置し、透過光の分光強度を検出するよう変形することも可能である。
・測定環境調節機構
図1に示す実施形態において、測定環境調節機構は、温湿度調節ユニット110、温湿度センサー120、排気機構130を含む。測定環境調節機構に係る制御プログラム(測定環境制御プログラム)を記憶した制御装置50は、これらの測定環境調節機構の各要素と制御可能なように接続される。このような測定環境調節手段において、温湿度センサー120によって密閉空間23a内の湿度および/または温度をリアルタイムで計測し、その測定値を制御装置50にフィードバックして、制御装置50に記憶された設定値と比較する。その結果に基づいて、温湿度調節ユニット110および排気機構130を適切に作動させることによって、密閉空間23aが設定された湿度および/または温度となるように制御することができる。
測定環境制御プログラムは、密閉空間23aの湿度および/または温度の上昇、下降または維持を任意のパターンで自動的に行えるようなものとすることが好適である。測定環境制御プログラムの入力手段、温湿度データの記録・出力手段、各種の情報を確認できる表示手段などは、制御装置50として一般的に用いられるPCが備えている。
温湿度調節ユニット110および排気機構130は、それぞれ、密閉空間23aの両端に設けられた開口23b(流入口)および開口23c(流出口)に、第一のガス流路140aおよび第二のガス流路140bを介して接続される。ガス流路140aおよび140bは、好ましくは、結露した水分を排除するための水分トラップ機構150を備える。
温湿度調節ユニット110は、所望の湿度をおよび/または温度を有する気体を発生させて密閉空間23aに供給するためのユニットであり、湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構、乾湿ガス供給コントロールユニット113、および乾湿ガス用温度調節機構114を組み合わせて構築することが好ましい。
湿潤ガス発生機構に用いることができる加湿の方式には、スチーム式(水をヒーターで加熱して沸騰させ、その蒸気を放出させる)、気化式(フィルターに水を含ませて、そのフィルターに空気を当てる事で水分を気化し、放出させる)、超音波式(超音波振動によって水を非常に細かな粒子にして放出させる)、ハイブリッド式(気化式がベースではあるが、ヒーターで熱した温風を吹き付け、気化を促進させ放出させる)などがある。
一方、乾燥ガス発生機構に用いることができる除湿の方式には、コンプレッサー式(コンプレッサーで空気を冷却し、空気中の水分を液化させて回収し、水分が回収されて乾燥した空気を放出させる)、デシカント式(デシカントと呼ばれる吸湿剤を利用し、空気中の水分を吸着して除湿する)、ハイブリッド式(コンプレッサー式とデシカント式を組み合わせたもの)などがある。
乾湿ガス供給コントロールユニット113は、湿潤ガス発生機構から発生した湿潤ガスおよび乾燥ガス発生機構から発生した乾燥ガスのそれぞれを、適切なタイミングで適切な量、密閉空間23aに供給するための機構である。乾湿ガス供給コントロールユニット113に係る制御プログラムを記憶した制御装置50が、乾湿ガス供給コントロールユニット113の構成要素のそれぞれと通信可能なように接続される。たとえば、エアーポンプ113aと、当該エアーポンプ113a、湿潤ガス発生機構111および乾燥ガス発生機構112に接続されている三方弁113bとにより、乾湿ガス供給コントロールユニット113を構築することができる。また、シリンジポンプないしペリスタポンプを用いることにより、湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構および乾湿ガス供給コントロールユニットが(湿潤ガス発生機構および湿潤ガス供給コントロール機構と、乾燥ガス発生機構および乾燥ガス供給コントロール機構のそれぞれが)一体化されている乾湿ガス供給コントロールユニットを構築することもできる。
乾湿ガス用温度調節機構114は、後述するセンサーチップ用温度調節機構と同様で、必要に応じて適宜改変した実施形態とすることができる。たとえば、温度調節器、当該温度調節器に接続され、湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構のそれぞれに当接された温度調節ユニット(たとえばペルチェ素子および冷却ファン)および温度センサーにより、乾湿ガス用温度調節機構を構築することができる。
温湿度調節ユニット110の実施形態としては、たとえば次の2つの具体例が挙げられる。
温湿度調節ユニット110に係る第1の実施形態は、図2(A)に示すように、湿潤ガス発生機構としての加湿用ビン111と、乾燥ガス発生機構としての除湿用ビン112と、送気機構としてのエアーポンプ113aと、スイッチング機構としての三方弁113bとを含む。加湿用ビン111および除湿用ビン112は、温度調節機構による調温がなされており、湿潤ガスおよび乾燥ガスを任意の温度に調節することができる。加湿用ビン111には水が入っており、たとえば前述したスチーム式により、高湿度の湿潤ガスを発生させることができる。除湿用ビン112は、たとえば前述したコンプレッサー式により、低湿度の乾燥ガスを発生させることができる。湿度の実装値が測定値よりも低い場合は、加湿用ビン111側に三方弁113bを開放し、湿潤ガスをエアーポンプ113aで供給することにより、密閉空間23aの湿度を高くする。逆に湿度の実装値が測定値よりも高い場合は、除湿用ビン111側に三方弁113bを開放し、乾燥ガスをエアーポンプ113aで供給することにより、密閉空間23aの湿度を低くする。
温湿度調節ユニット110に係る第2の実施形態は、前記湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構および乾湿ガス供給コントロールユニット113が一体化しているものであり、図2(B)に示すように、湿潤ガス発生機構および湿潤ガス供給コントロール機構が一体化した湿潤ガス充填シリンジポンプ116と、乾燥ガス発生機構および乾燥ガス供給コントロール機構が一体化した乾燥ガス充填シリンジポンプ117とを含む。湿潤ガス充填シリンジポンプ116および乾燥ガス充填シリンジポンプ117は、温度調節機構による調温がなされており、湿潤ガスおよび乾燥ガスを任意の温度に調節することができる。湿潤ガス充填シリンジポンプ116は湿潤シート116aを備えており、前述した気化式により高湿度の湿潤ガスを発生させることができる。乾燥ガス充填シリンジポンプ117は、たとえば前述したデシカント式により、低湿度の乾燥ガスを発生させることができる。湿度の実装値が測定値よりも低い場合は、湿潤ガス充填シリンジポンプ116から湿潤ガスを供給することにより、密閉空間23aの湿度を高くする。逆に湿度の実装値が測定値よりも高い場合は、乾燥ガス充填シリンジポンプ117から乾燥ガスを供給することにより、密閉空間23aの湿度を低くする。
温湿度センサー120としては、毛髪式、高分子抵抗式、高分子容量式、酸化アルミ容量式、アスマン通風式等の一般的な湿度測定方式を利用した、各種の温湿度計(乾湿計)を用いることができる。
温湿度センサー120は密閉空間23a内(センサーチップ21の表面等)に設置することができる。たとえば、センサーチップ21をセンサーチップセット部にセットした後、ケーブルが接続された温湿度センサー120をセンサーチップ21(試料薄膜21c)の表面の適切な位置(たとえば排気機構に接続される側の開口(流出口)23cの近傍)に載せてから、フローセル23を積層するようにすればよい。また、別の実施形態において、温湿度センサー120は温湿度調節ユニット内(湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構の合流部位等)に設置することもできる。
排気機構130は、温湿度調節ユニット110から供給された後に不要となったガスをRIfS測定装置10の外部に排出する。排気機構130は、ファンや、必要に応じてガス中の水分の回収機構などを含む。これらの部材は、ガラスや、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PC(ポリカーボネート)などのプラスチックで作製することができる。排気機構130の排気能力は、密閉空間23aの容積などを考慮しながら適宜設定することができるが、たとえば0.1〜10mL/分の範囲で調整することができる。
温湿度調節手段により調節される湿度および/または温度の範囲は特に限定されるものではなく、分析の目的に応じて適宜設定することができるが、湿度調節手段は、湿度を0〜100%の範囲で、また温度を10〜60℃の範囲で、任意に設定できるものであることが好ましい。また、分析の目的に応じて、任意のパターンで湿度および/または温度を調節できるよう、温湿度調節手段は、湿度であれば1%あたり1〜3600秒、たとえば15〜150秒の速度で、温度であれば1℃あたり1〜3600秒の速度、たとえば10秒〜120秒の速度で、湿度および/または温度を連続的に変化させることのできるものが好ましい。
さらに、分析の目的に応じて(たとえば水分子の運動を加速ないし制御するために)、密閉空間23aの圧力を減圧または加圧することもできる。そのために、制御装置50(制御プログラム)は、温湿度調節ユニット110によるガスの供給量および排気機構130によるガスの排出量のバランスを調節することにより、密閉空間23aの圧力を所望の値にする機能を有するものであってもよい。
また、密閉空間23aに供給される湿度および/または温度が調整されたガスには、空気のみでなく、窒素ガス、水素ガス等、測定目的に応じた種々の気体を用いることもできる。そのために、測定環境調節機構はさらに、温湿度調節ユニット110に窒素ガス、水素ガス等の空気以外のガスを供給する機構、たとえば、それらのガスを化学反応等により発生させる機構、またはボンベ(気体)ないしタンク(液体)からそれらのガスを導入する機構を有するものであってもよい。湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構は、空気と入れ替えて予め封入されたそれらのガスを用いて、所定の湿度および/または温度を有するガスを調製し、密閉空間23aに供給することができる。
・測定環境制御プログラム
密閉空間の温湿度を自動的に調節する測定環境抑制プログラムは、たとえば以下のような実施形態のものが好ましい。なお、以下の記載では、温度および湿度のいずれか一方または両方を指す場合に、まとめて温湿度と表記する。また、温度に関する調節は、乾湿ガス用意温度調節機構のみならず、センサーチップ用温度調節機構についても同様に適用可能である。
この実施形態の概要は次の通りである:(1)事前に設定した「時間」および「設定温湿度」の計画を温湿度調節プログラムに読み込み、(2)温湿度調節ユニット(乾湿ガス用温度調節機構)およびセンサーチップの測定領域近傍に設置された温湿度センサーから、A/D変換により入力、温湿度を変換し、(3)計測された温湿度と測定環境制御プログラムの設定温湿度との差分を算出して、温湿度調節ユニットを駆動して乾湿ガスの温湿度を制御する。
温湿度設定の制御は精密に行えたほうがよいが、たとえば以下のような構成とすることは、温度は分解能0.1℃で、湿度は分解能0.1%で制御することが可能であるため好ましい。なお、動作を安定化させるため、1℃の温度変化(昇温または降温)または1%の湿度変化(加湿または除湿)に10秒以上の時間をかけるようにすることが好ましい。
温度センサーからのA/D値取り込みは、たとえば、入力対象を2種(温湿度調節ユニットおよびセンサーチップ)とし、分解能を約0.05℃(0〜50℃/10bit)ないし0,05%(0〜100℃/20bit)、サンプリング周期を1秒とし、平均処理を、10回連続で取り込み、最大および最小を除いた8回の平均値を算出するようにすることが好ましい。
温湿度変換は、A/D値(ad)から温度(t)ないし湿度(h)への変換処理を所定の変換式(多項式)を用いて行う。温度センサーとして一般的なサーミスタは非線形であるため、多項式を用いて補完することが適切である。
温湿度調整は、たとえば、出荷時調整工程において、校正された温湿度測定機にて測定した実測値とファームが温湿度センサーより取り込んだ値の差を使用すればよい。たとえば温度であれば、測定時設定温度の標準(たとえば25℃)にてオフセット値(c)を求め、次いで上限(たとえば40℃)、下限(たとえば15℃)にて傾き(k)を求め、次式により前述した温度変換で求めた温度(t)を補正することにより行う。湿度についても同様に行える。
温度(t’)=温度(t)×傾き(k)/1000+オフセット(c)。
加熱/冷却ないし加湿/除湿度合い(%)の算出は、たとえば、サンプリング方式(離散値)に適したPID演算方式とし、3つのPID制御パラメータ(Kp、Ki、Kd)によりチューニングする。基本式は次の通りである。
偏差=目標値−実測値
操作量=Kp×偏差+Ki×偏差の累積値+Kd×前回偏差との差
PID制御パラメータの求め方(ステップ応答法)は、たとえば次のようにして行う。
まず、制御系の入力にステップ信号を加える。その出力結果は、たとえば図3に示すようなものとなる。続いて、図4に示すように、出力結果の立ち上がり曲線に接線を引き、それと軸との交点、定常値の任意設定%(例えば63%)になった所の2点から、L:無駄時間、T:時定数、K:定常値の3つの値を求める。これらの値から、各パラメータを次のようにして求める。
比例制御
Kp=0.3〜0.7×T/KL
Ki=0
Kd=0
PI制御
Kp=0.35〜0.6×T/KL
Ki=0.3〜0.6/KL
Kd=0
PID制御
Kp=0.6〜0.95×T/KL
Ki=0.6〜0.7/KL
Kd=0.3〜0.45×T/K
PIDパラメータによる特性の違いは、たとえば図5に示すようなものとなる。
加熱/冷却の駆動は、たとえば、温度調節部材(たとえばペルチェ素子)の駆動回路の加熱信号または冷却信号に対してPWM出力を行い、当該駆動回路はフォトカプラにてアイソレーションされる(デューティ:0〜100%、周波数:1kHz固定)ようにする。
・密閉機構に係る変形例
図1に示す実施形態ではフローセル23により密閉空間を形成しているが、フローセルを用いる代わりに、チップカバーおよびセンサーチップセット部、または遮光カバーが、前記密閉空間を形成するための部材を備えるRIfS測定装置を用いて、以下のような密閉機構により密閉空間を形成してもよい。
密閉機構に係る第1の変形例として、センサーチップをセットするセンサーチップセット部(ステージ)と、フローセルに被せるチップカバーに適切な構造を設けることによって密閉空間を形成する実施形態が挙げられる。たとえば、図6に示すように、チップカバー19およびセンサーチップセット部17のそれぞれに、ゴムパッキンまたはこれに類する部材によって嵌合部(凸部)19aおよび被嵌合部(凹部)17aを設け、それらを嵌合させることによってセンサーチップの周囲が密閉された状態を生み出すことができる。この場合、チップカバー内側に温湿度センサー120を配置してもよい。
密閉機構に係る第2の変形例として、センサーチップをRIfS測定装置に着脱する際に開閉し、RIfS測定時に外部からの光(測定プローブから照射される白色光源からの白色光以外の光)を遮断する遮光カバーに適切な構造を設けることによって密閉空間を形成する実施形態が挙げられる。たとえば、遮光カバーにゴムパッキンまたはこれに類する部材を設け、それを用いてシーリングすることによってセンサーチップの周囲(前記密閉機構に係る第1の変形例よりも広い範囲)が密閉された状態を生み出すことができる。この場合、遮光カバー内側またはセンサーチップセット部のスペースに温湿度センサー120を配置してもよい。
・センサーチップ用温度調節手段
測定システム1は必要に応じて、センサーチップ21(試料薄膜21c)自体をより直接的に加熱冷却するための、センサーチップ用温度調節手段を備えていてもよい。特に、後述するように、試薬供給口の壁面に試薬塗布領域を設けるフローセル(試薬供給機構の第3実施形態)を使用する場合は、試薬塗布領域を結露させるために、センサーチップ用温度調節手段を備えることが好ましい。
この場合、RIfS測定装置1は、たとえば、温度調節器210、温度調節器210に接続され、センサーチップ21に当接された温度調節ユニット220および温度センサー230を含む、センサーチップ用温度調節機構を備える。センサーチップ用温度調節機構(温度調節器210)に係る制御プログラムを記憶した制御装置50は、温度調節器210と通信可能なように接続される。温度調節手段によって制御されるセンサーチップ21の温度は、試料薄膜21c(特に測定領域A)や試薬塗布領域の温度とみなせる。
センサーチップ用温度調節手段により調節される温度の範囲は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。たとえば、高温域における試料薄膜の分析が行えるよう、100〜200℃までの昇温に対応することができるものであってもよい。逆に、乾湿空気との温度差を生じさせやすいよう、−50〜−20℃までの降温に対応することができるものであってもよい。
目的に応じて温度を調節することができるようであれば、センサーチップ用温度調節手段は必ずしも温度を連続的に変化させることのできるものでなくてもよいが、任意のパターンで温度を調節できるよう、たとえば1℃あたり10〜3600秒の速度で温度を連続的に変化させることのできるものが好ましい。
温度調節器210は、温度センサー230によりセンサーチップ21の温度を計測し、温度調節ユニット220による加温又は冷却によって、センサーチップ21が設定された温度となるように温度制御を実行する。
温度調節器210は、温度調節ユニット220による加熱、冷却または温度維持を任意のパターンで自動的に行えるよう、電子回路(マイコン)によってプログラム制御されるものが好適である。プログラムを電子回路に記憶させるための入力手段、温度データの記録・出力手段、各種の情報を確認できる表示手段などは、コントロールパネル等として温度調節器210自体が備えていてもよいし、温度調節器210に接続された制御装置50がその機能を担うようにしてもよい。
温度調節ユニット220は、所望の温度を作り出すよう、加熱機能および冷却機能を有する部材、たとえばペルチェ素子および冷却ファンを組み合わせることで構成することができる。温度センサー230としては、たとえばサーミスタを用いることができる。温度調節ユニット220および温度センサー230は、分析の目的に応じた範囲の温度に対応したものを選択すればよい。
・試薬供給手段
測定システム1は必要に応じて、試料薄膜に微量の試薬を添加するための試薬供給手段を備えていてもよい。この場合、RIfS測定装置1は、たとえば、振動子での噴霧または静電噴霧による試薬供給機構を備える。試薬供給機構に係る制御プログラムを記憶した制御装置50は、当該機構を構成する各部材(液運搬手段など)と通信可能なように接続される。
試薬供給機構の第1の実施形態として、試薬を振動子で噴霧するものが挙げられる(図7A参照)。このような実施形態の試薬供給機構は、液運搬手段310、振動子付き試薬ホルダ320aなどを含む。液運搬手段310としては、たとえば押圧ポンプを用いることができる。振動子付き試薬ホルダ320aの振動子としては、たとえば超音波振動子、パルスバルブを用いることができる。振動子付き試薬ホルダ320aに貯留された試薬350に超音波振動を与えることにより、キャビテーション効果を利用して、当該試薬ホルダの下部より試薬供給口を通じて密閉空間内に試薬を噴霧することができる。
試薬供給機構の第2の実施形態として、試薬を静電噴霧するものが挙げられる(図7B参照)。このような実施形態の試薬供給機構は、試薬ホルダ320、液運搬手段310、ノズル330およびそれに連結された電圧印加部340などを含む。液運搬手段310としては、たとえば押圧ポンプを用いることができる。電圧印加部340により試薬350に高電圧を印加し、ノズル330より試薬供給口を通じて密閉空間に試薬を噴霧し、導電性のある試料薄膜に試薬を添加することができる。
その他、遠心噴霧などの公知の手法を試薬供給機構に用いてもよい。このような噴霧手法を実施するための試薬供給機構は、小型化するなど適宜本発明に適合するよう変形した上で、公知の噴霧手法において用いられているような機構に準じて作製することができる。試薬の供給に関する条件は分析の目的に応じて適宜設定することができるが、たとえば、供給速度であれば通常0.1〜10mL/分、好ましくは0.2〜5mL/分の範囲で調節することができる。
密閉空間を形成する部材としてフローセルを利用する実施形態においては、そのフローセルに試薬供給口が設けられるので、試薬供給機構はそのようなフローセルの試薬供給口から試薬を噴霧できる位置に設置される。
一方、密閉空間を形成する部材としてチップカバーおよびセンサーチップセット部を利用する実施形態においては、そのチップカバーに試薬供給口が設けられていてもよい。この場合、試薬供給機構はそのようなチップカバーの試薬供給口から試薬を噴霧できる位置に設置される。
(システム制御手段)
システム制御手段は、制御装置50、制御装置50と測定システム1を構成する各要素との間で電気的な信号、データ等の通信を可能とする接続手段60、制御装置50に記憶されたプログラム(ソフトウェア)などから構成される。システム制御手段の対象となる上記の各要素には、RIfSにおける基本的な要素である白色光源11、分光器12などに加えて、本発明で必要とされる測定環境調節機構、たとえばそれらを構成する温湿度調節ユニット110、温湿度センサー120などの部材が含まれ、さらに、RIfS測定装置がセンサーチップ用温度調節機や試薬供給機構を備える場合は、それらの構成部材も含まれる。
制御装置50は、オペレータからのシステムの動作やデータの処理などに関する指示の入力の受け付け、システム構成要素(それらが備えるマイコン)に向けてその指示通りに作動させるための実行指令の送信、システム構成要素からの測定データの受信、システムの動作状況や受信、処理されたデータの表示などを行うための適切なインターフェースを備える。
また、制御装置50は、測定システム1を構成する各要素から受信したデータを処理するための演算手段や、その処理を行うプログラム(ソフトウェア)や各種のデータを記憶するための記録媒体も備える。たとえば、分光器12から受信した分光強度データに基づくボトムピーク波長の変位量(Δλ)の算出や、その値に対応する温湿度センサー120から受信した温湿度データの統合などは、所定のプログラムにより処理することができる。
上記のような機能を持たせる制御装置50としては、パーソナルコンピュータを用いることが一般的である。本発明の分析システムは、制御装置50が記憶したプログラムにより、各測定ステップ、工程の開始、反復、終了等の処理が(半)自動的に行われることが好ましい。
(センサーチップ)
センサーチップ21は、一般的には矩形であり、基板21aと、その上に形成された光学薄膜21bと、本発明ではさらに、光学薄膜21bの上に形成された試料薄膜21cから構成される。試料薄膜21cの一部が、白色光が照射されて反射率が測定される測定領域Aとなる。
なお、本明細書において、表面に試料薄膜21cが形成された状態のセンサーチップを「分析対象センサーチップ」と称する。一方、RIfS用のセンサーチップとして最小限の構成、典型的には基板21aおよび光学薄膜21bのみを備えたセンサーチップを「無修飾センサーチップ」と称する。また、このような無修飾センサーチップや、無修飾センサーチップに試料薄膜を形成するための前処理(たとえばシランカップリング剤による処理)までが施された状態(試料薄膜を形成する直前の状態)のセンサーチップであって、前記分析対象センサーチップの測定データを対比するためのもの「リファレンスセンサーチップ」と総称する。
基板21aおよび光学薄膜21bは、白色光を照射したときに観測される反射率極小波長が適切な範囲となるような屈折率および厚みを有する材料で形成される。基板21aは、Si(ケイ素、シリコンウェハ)からなる基板が好ましい。光学薄膜21bは、基板21aがSiからなるものである場合、SiN、SiO2、TiO2、Ti25などからなる薄膜とすることができるが、SiN(窒化ケイ素)からなる薄膜が好ましい。SiNの屈折率は可視光領域の波長約400から800nmの範囲において約2.0〜2.5であり、SiNの膜厚を約45〜90nmとすることにより、反射率極小波長をおよそ400nm〜800nmの範囲に調節することができる。光学薄膜21bは、基板21aの上面に、蒸着により積層することができる。
・試料薄膜
試料薄膜21cは、適切な材料により形成され、RIfSを適用することのできる膜厚、屈折率等の性質を備えたものであれば特に限定されるものではない。
試料薄膜の膜厚は、たとえば、1nm〜100μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜700nmの範囲とすることができる。試料薄膜21cは、光学薄膜21bの上層全てに形成されていても、一部に形成されていてもよい。
試料薄膜21cとしては、たとえば、被膜形成性の固体もしくは液体から形成された薄膜;センサーチップの表面に固着可能な固体、液体もしくは気体から形成された薄膜;またはセンサーチップ上に形成された流路内に溶解もしくは浮遊する物質から形成された薄膜が挙げられる。
このうち「被膜形成性の固体」としては、疎水性ポリマー(ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなど)、親水性ポリマー(プラズマ処理等により親水化処理をしたポリメタクリル酸メチルなど)、水溶性ポリマー、生体材料(タンパク、リン脂質、核酸、糖鎖、細胞、細胞膜画分、皮膚、生体由来の分泌成分など)、表面処理剤(フッ素系撥水処理剤、親水性表面改質剤など)、塗料(インク、ペイントなど)、機能性材料が挙げられるが、無機化合物も含まれる。SiO2, Si, SiN, ZnO, TiO2などの、水分子を吸着しうる(それによって光路長が変化する)物質からなる薄膜(層)自体を試料薄膜としてもよい。「センサーチップの表面に固着可能な固体」としては、微粒子状(コロイダルシリカ、顔料、トナーなど)や単分子状の化合物(シランカップリング剤形成膜、LB膜形成膜、蒸着物など)であってもよい。
試料薄膜21cの形成方法も特に限定されるものではなく、RIfS用センサーチップについて公知の手法を用いることができる。
たとえば、合成もしくは天然の高分子材料からなる薄膜を形成する場合は、必要に応じて溶媒を用いて適度な粘度の溶液を調製した後、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング技術を用いて無修飾センサーチップの表面に塗布することができる。また、無修飾センサーチップの表面をシランカップリング剤またはアミンカップリング剤で処理して反応性官能基(アミノ基、カルボキシル基等)を導入しておき、高分子材料が有する官能基と反応させることにより当該高分子材料からなる薄膜を形成するようにしてもよい。このような官能基同士の反応のかわりに、分子間相互作用や静電吸着により高分子材料からなる薄膜を形成することもできる。あるいは、無修飾センサーチップの表面に光、熱などにより重合可能なモノマーを導入し、グラフト重合させることにより、そのモノマーから高分子材料を生成させて薄膜を形成することもできる。その他、キャスト製法、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)等の成膜技術を用いることもできる。
また、試料薄膜21cがタンパク質、核酸等の生体関連物質からなるものである場合は、抗原抗体反応やDNAハイブリダイゼーションなどの特異的な反応、または非特異的な反応により、前記生体関連物質を捕捉できる物質をセンサーチップの表面にあらかじめ固定化しておき、前記生体関連物質の水溶液をそのセンサーチップの表面に接触させることにより成膜することができる。この際、リガンドを固定化するステップや、アナライトを補足するステップは、そのステップを行う前の条他のセンサーチップにフローセルを載せて密閉流路を形成し、そこに材料を含む溶液を送液するようにして行うことが可能である。さらに、骨、皮膚などの生体材料(採取された組織または人工物)も、センサーチップの表面に固着させることができる。
・フローセル
本発明の好適な実施形態において、試料薄膜21cの周囲に密閉空間を形成するために、枠材となるフローセル23をセンサーチップ21に積載して用いる(センサーチップとフローセルとを組み合わせて測定部材とする)。従来のフローセルは主として液体を流下させるために用いられていたが、本発明においては気体(および必要に応じて添加される微量の試薬)を流下させるために用いられる。
一方、本発明の別の実施形態において、異なる部材(チップカバー等)により密閉空間を形成する場合は、そのようなフローセルを用いる必要はない。
フローセル23は、たとえばシリコーンゴム(ポリジメチルシロキサン:PDMS)製またはアクリル樹脂製の、透明な部材である。フローセル23はセンサーチップ21に対して取り替え可能となっており、ディスポーザブル(使い捨て)使用が可能となっている。フローセル23には溝が形成されており、フローセル23をセンサーチップ21に密着させると密閉空間23aが形成される。密閉空間23aおよびガス流入口23b、ガス流出口23cのサイズは特に限定されるものではないが、たとえば、密閉空間23aは、幅2.5mm×長さ16mm×深さ0.1mm程度であり、ガス流入口23bおよびガス流出口23cはそれぞれ直径1mm程度である。密閉空間23aの両端部には開口(ウェル)が設けられる。一方の開口は温湿度調節ユニット110に接続されて、温湿度が調節されたガスが供給されるガス流入口23bとして機能し、他方の開口は排気機構に接続されて前記ガスが排出されるガス流出口23cとして機能する。
本発明は、試料薄膜に微量の試薬を添加するための試薬供給手段の第3の実施形態として、ガス流入口の壁面に、試料薄膜と反応させたい試薬が塗布されているフローセルを使用することもできる(図8参照)。すなわち、密閉空間を形成するための部材としてフローセルを用いる場合に、そのフローセルのガス流入口23bの壁面に、所望の面積の試薬塗布領域23eを形成しておいてもよい。塗布された試薬は、試薬塗布領域を結露させて濡らすことにより溶かすことができるようになっており、試薬が溶けた微量の水滴が測定領域に流れ込み、試料薄膜と接触して反応する。そのため、試薬は結露により生じた水滴に溶解する、水溶性の物質である必要がある。
試薬の種類や塗布量は、分析の目的に応じて適宜設定することができる。たとえば、ある抗原に対する抗体が固定化されている試料薄膜に対して、その抗原を試薬として添加してもよい。これらの試料薄膜および試薬が抗原抗体反応を起こすと、試料薄膜は厚さを増し、RIfSの測定結果にボトムピーク波長の変化が表れる。また、タンパク質を試薬として添加し、そのタンパク質が試料薄膜に非特異的に吸着して膜厚が変化するかどうかを測定する(その測定結果によって試料薄膜の非特異的吸着の抑制効果を評価する)こともできる。試薬の塗布量(試薬塗布領域の面積、塗布された試薬の膜厚)は、第1実施形態および第2実施形態について前述したような試料薄膜の単位面積あたりの供給量を満たすようなものとすることができる。試薬塗布領域は、試薬を水ないし適切な溶媒に溶解した溶液を用いて、公知のコーティング手法によりフローセルの壁面に塗布すればよい。
−分析方法−
本発明に係るRIfS測定装置は、分析対象センサーチップが置かれている雰囲気の湿度および/または温度を連続的に変化させながら、RIfSにより当該試料薄膜の光路長に関するデータを取得する工程(RIfS測定工程)を含む、試料薄膜の分析方法に用いることができる。そのような試料薄膜の分析方法の代表例として、試料薄膜に対する水分子の挙動や、試料薄膜の熱応答性に関する分析方法が挙げられるが、本発明の測定装置の用途はこれらに限定されるものではない。本発明の測定システムは、RIfS測定装置の各構成要素が上記のような試料薄膜の分析方法を実施するために協調して作動するよう、制御手段(制御装置およびそこに記憶されているプログラム等)および接続手段により統合される。制御装置50は、目的とする分析内容に応じたRIfS工程やデータ処理を行うための適切なプログラムを記憶していることが好ましい。
(測定工程)
測定工程では、表面に試料薄膜が形成されたセンサーチップ(分析対象センサーチップ)が置かれている雰囲気の温湿度を連続的に変化(上昇および/または下降)させながら、RIfSにより当該試料薄膜の光路長に関するデータを測定する。すなわち、測定工程では、温湿度の連続的な変化と同調させて、所定の時間間隔で測定ステップが複数回繰り返される。
連続する2つの測定ステップにおける温湿度の値の間隔は、比較的小さなものとなるよう適宜調整することができるが、温度については通常0.1〜10℃、好ましくは0.5〜5℃であり、湿度については通常は0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%である。試料薄膜の分析内容に応じて、温度および湿度のいずれか一方のみを変化させてもよいし、両方を変化させてもよい。
1つの測定工程に含まれる測定ステップの回数も適宜調整することができるが、通常は10回以上、好ましくは20回以上である。温湿度が温湿度調節手段によって自動的に変化していく場合には、測定ごとの温湿度の間隔が上記のような範囲となるよう、タイミングを調節しながら自動的に測定ステップを行うようにシステムを制御することが好ましい。
また、必要に応じて、湿度を変化させる測定工程を異なる温度において複数回行ってもよい。たとえば、一つの測定対象センサーチップについて、第1の温度で、湿度を所定のパターンで変化させながら測定する(第1測定工程)、当該ステップ終了後に温度を変化(上昇または下降)させ、第2の温度で、再び同じ湿度のパターンで測定する(第2測定工程)、当該測定ステップ終了後にまた温度を変化させ、第3の温度で、再び同じ湿度のパターンで測定する(第3測定工程)・・・というように測定工程を繰り返してもよい。このような実施形態においては、湿度をあるパターンで連続的に変化させながら測定が行われている一つの測定工程の間は、基本的に温度は一定に固定される。逆に、温度を変化させる測定工程を異なる湿度において複数回行ってもよい。
一方、一つの測定工程内で温度と湿度の両方を変化させることもできる。たとえば、まず湿度を所定の値まで上昇させ、続いてその湿度を維持したまま温度を上昇させ、最後にその温度を維持したまま湿度を最初の値まで低下させる、というパターンで測定することも可能である。
湿度の調節(加湿または除湿)および温度の調節(加熱または冷却)は、任意の時間に任意の湿度および温度に調節できるよう、前述したような温湿度調節手段により行うことが好適である。
・温湿度調節パターン
温湿度調節パターン(横軸に時間、縦軸に湿度または温度をとったときのプロット)は、任意の範囲の温湿度で試料薄膜の光路長に関するデータを連続的に取得できるよう、温湿度の数値の間隔を空けすぎずに連続的に変化させればよく、分析の目的に応じて様々なパターンを適用することができる。
温湿度の変化は、上昇または下降の一方のみからなるものであってもよいし、両方を含むものであってもよい。また、所定の範囲で湿度を変化させるサイクルが、1回ないし複数回(たとえば2〜100回)含まれていてもよい。上記のサイクルは、湿度または温度を先に上昇させてから下降させるパターンでも、先に下降させてから上昇させるパターンでもよい。
温湿度の変化速度(時間に対する湿度または温度の傾き)は、分析の目的に応じて適宜調整することができ、開始から終了までの間一定でもよいし、必要に応じて、途中で一回ないし複数回変化させてもよい。開始から終了までの間に温湿度が一定となる(上昇も下降もしない)時間が実質的に含まれないパターンでもよいし、必要に応じて、温湿度が一定となる任意の時間が一回ないし複数回含まれているパターン(湿度または温度が変化する時間と一定となる時間が規則的に繰り返される階段状のパターン)でもよい。たとえば、温湿度の変化が速すぎると光路長の変化が観察できない薄膜を分析対象とする場合に、階段状に湿度または温度を変化させることで適切な分析が行えるようになることがある。
温湿度の上昇および/または下降の速度は、分析の目的に応じて適宜調整することができるが、湿度であればたとえば1%あたり1〜3600秒の速度、温度であればたとえば1℃あたり1〜3600秒の速度とすることができる。たとえば、このときの湿度の変化速度(湿度を所定の範囲で変化させたときにかかった時間)に基づき、測定結果から水分子の吸着速度または脱離速度を求めることができる。
上記のような温湿度の変化は、一つのパターンの内部における変化であってもよいのと同様、複数のパターンの間での変化であってもよい。たとえば、第1のパターンでは第1の速度で湿度を変化させ、第2のパターンでは第2の速度で湿度を変化させるようにしたとき、それらのパターンの測定結果の対比から、湿度変化速度の違いによる分析試料薄膜および水分子の挙動の違いを分析することができる。
・試薬供給
試料薄膜に試薬を添加してその反応による影響を分析する場合には、適切なタイミングで試薬を添加するための操作を行えばよい。たとえば、ある試料薄膜(試薬添加前)に対して所定の温湿度の変化に関する測定を行った後、前述したような実施形態により試薬を密閉空間に噴霧する操作を行い、試薬と試料薄膜とを反応させ、続いてその試料薄膜(試薬添加後)に対して所定の温湿度の変化に関する測定を行うことができる。
より具体的には、試薬供給手段の第1実施形態(振動子での噴霧)においては、システム制御手段により液搬送手段および振動子付き試薬ホルダを駆動させ、所定量の試薬が密閉空間に供給されるようにすればよい。また、試薬供給手段の第2実施形態(静電噴霧)においては、システム制御手段により液搬送手段、ノズルおよび電圧印加部を駆動させ、所定量の試薬が密閉空間に供給されるようにすればよい。
一方、試薬供給手段の第3実施形態(フローセルに試薬塗布領域を形成する)においては、温湿度調節ユニットから密閉空間に送り込まれる乾湿ガスと、センサーチップ用温度調節機構によって調節されるセンサーチップとの間に温度差を生じさせ(たとえば、前者を高くする、後者を低くする、またはこれら両方を同時に行う)、試薬塗布領域が結露するようにすればよい。なお、当該操作以外の測定工程の最中は結露しないように温湿度が調節されることが適切である。また、当該操作前の乾湿ガスの湿度が低い場合は、一時的に湿度を高めて、結露させるのに必要な水分を含むように調節してもよい。
・光路長に関するデータ
「試料薄膜の光路長に関するデータ」は、RIfSにおいては一般的に、当該光路長を算出する基礎となるボトムピーク波長(λ)ないしその変位量(Δλ)である。これらの取得方法は次の通りである。
まず、測定工程の各測定ステップにおいて分光器により得られる反射光の分光強度データを、基準となる白色光の分光強度データと対比し、波長ごとの反射率(=反射光の強度/白色光の強度)を算出する。白色光の分光強度データは、あらかじめ装置組み立て調整時に測定して記憶していたものでもよいし、適切な手段により(たとえば参照用反射板を用いて)測定の都度取得したものでもよい。
続いて、横軸に波長、縦軸に算出された反射率をプロットした反射スペクトルを作成し、反射率が極小となる波長(ボトムピーク波長)を決定する。反射スペクトルの波形は、通常、微小な凹凸が繰り返されるような不規則な形状を呈しており、ボトムピーク波長を特定するのが困難な状態となっている場合があるが、たとえば、公知の手法を用いて反射スペクトルを高次関数で近似することにより波形を滑らかにし、高次多項式からその解(最小値)を求めて、これをボトムピーク波長の値とすることができる。
上記と同様にして、リファレンスセンサーチップ(無修飾センサーチップ等)についてのボトムピーク波長(λ')を決定した後、前記測定対象センサーチップのボトムピーク波長λとの差(Δλ=λ−λ')を算出する。
測定工程では、連続して変化する複数の湿度H(H0,H1,H2・・・,Hn・・・)または温度T(T0,T1,T2・・・,Tn・・・)ごとに測定ステップが行われているので、それぞれの湿度または温度に対応するΔλ(Δλ0,Δλ1,Δλ2・・・, Δλn・・・)が算出される。なお、各温湿度におけるΔλは、リファレンスセンサーチップのΔλが温湿度にかかわらず不変であると仮定できる場合は、たとえば最初の湿度におけるリファレンスセンサーチップのλ'(λ'0)を基準として、それと各湿度における測定対象センサーチップのλ(λ0,λ1,λ2・・・,λn・・・)との差(λ0−λ'0,λ1−λ'1,λ2−λ'2・・・,λn−λ'n・・・)として求めてもよい。
(データ処理工程)
測定工程により得られたデータ(Δλ)は、たとえばx(横)軸に湿度をとってy(縦)軸にΔλをとったプロットを作成するだけでも、定性的な分析を行うことは可能である。しかしながら、測定工程に続いて、Δλを所定の換算式に基づいて光路長(膜厚×屈折率)に換算した上で、試料薄膜の膜厚を算出し、その結果から試料薄膜に対する水分子の挙動、試料薄膜の熱応答性などについて分析を行うためのデータを取得する、データ処理工程を設けることは、定量的な分析を行うことが可能となるため、本発明において好適である。たとえば、データ処理工程において、x軸に湿度をとり、y軸にΔλまたはそれに由来する光路長の変化量等の換算値をとってプロットし、さらにz軸に温度、測定対象膜厚の当初の厚さ等をとって3次元的にプロットしたりすることは、様々な観点からデータの解釈、測定対象薄膜の評価を可能とする。
・換算方法
試料薄膜の光路長に関するデータ(Δλ)は、分光器により得られる反射スペクトル(波長および光の強度)に基づいて、たとえば以下に述べるような(a)ボトムピーク法、(b)cOPL法、(c)フーリエ解析法などにより、膜厚d、屈折率n、または光路長(=膜厚d×屈折率n)に換算することができる。換算の方式は特に限定されるものではなく、要求される精度に応じて適切なものを用いることができ、たとえばシミュレーションを用いる場合は、その精度の向上や実測値の補正により改良することが可能である。
なお、試料薄膜に保持されていない大気中の水分子は、光学的な界面の外側にあるため光路長の変化によって計測されず、試料薄膜の表面または内部に保持された水分子のみが、光路長の変化によって計測され、定量化することができる。
(a)ボトムピーク法
ボトムピーク法は、従来のRIfSにおいて一般的に用いられている方法であり、Δλの値から所定の換算式により測定対象薄膜の膜厚d等値を算出する。
ここで、ボトムピーク法では、dの値によってΔλの換算の方式が相違する。λが400〜800nmの範囲にある場合、Δλの測定値そのものをdの算出に用いることができるのは、dが約100nm以下の場合に限られる。なお、水のnは1.33であり、測定対象薄膜のnは多くの場合1.4〜1.6程度である(測定対象薄膜の内部に水の分子が入り込むことなどによってそのnが変動する場合もあるが、概ねこの範囲に収まる)。一方、dが約100nm以上の場合、測定されるλおよびΔλには周期性が表れる(振動する)。すなわち、λは、800nmを超える範囲に表れると予測される反射率極小波長ではなく、400〜800nmの範囲に表れる別の反射率極小波長として測定されるので、Δλの測定値を補正してから光路長の算出に用いられる。それぞれの場合の具体的な手順は次の通りである。
dが約100nm以下の場合、dとΔλの関係における周期性を考慮する必要はない。このとき、Δλ/d=an+bという一次の近似式が成り立つ(aおよびbの値は測定条件によって変動する)。そこで、所定の測定条件下であらかじめdおよびnが既知のサンプルについてのΔλを何点か測定するか、またはそれをのシミュレーションを行うことより、nおよびΔλ/dのプロットからΔλ/d=an+bで表される回帰式を取得しておく。そして、同じ測定条件下で測定されたΔλをd=Δλ/(an+b)の換算式に当てはめる、換言すれば1/(an+b)を「膜厚換算係数」としてΔλに乗ずることで、dを算出することができる。ただし、このようなdの算出方法を適用することができるのは、nは既知で、試料薄膜に水が吸着しても変化しないとものとみなせる場合である。逆に、前記近似式より、n=(Δλ/d−b)/a=Δλ/da−b/aと求められるので、この換算式に測定されたΔλを当てはめることでnを算出することができる。ただし、このようなnの算出方法を適用することができるのは、dが既知で、試料薄膜に水が吸着しても変化しないとものとみなせる場合である。あるいは、Δλと光路長dnとの関係式を立てて、その式に測定されたΔλを当てはめることで、dおよびnの変化を一体的に反映するdnを算出することができるので、それを用いて試料の分析を行うようにしてもよい。
一方、dが約100nm以上の場合、dとΔλの関係における周期性を考慮する必要がある。したがって、測定されるλが何周期目に該当するのかという情報を別途(たとえば、試料薄膜の形成条件などから推定されるおおよその膜厚に基づき)取得し、それによって正しい膜厚を反映させるために加算すべきΔλ(加算Δλ値)を決定する必要がある。そして、測定されたΔλにその加算Δλ値を加えて得られる補正値を用いて、dが約100nm以下の場合についてと同様の方法で作成した換算式に基づき、dおよびnを個別に、または光路長dnとして、算出することができる。
周期性の境界は以下の様に定める。すなわち、(1)周期を決定する、(2)周期性と屈折率nを元に膜厚換算係数(係数×屈折率−調整項)を算出した後、Δλの値を当該膜厚換算係数で割って光路長を求める、(3)2周期目以降の場合は膜厚加算値を加算した値を膜厚値とする。膜厚の変異量も前記膜厚換算係数を用いて同様に計算する。物質そのものの膜厚値、変化量を見るためには、予めリファレンス(例えば修飾前のセンサーチップ)のλ値を引く必要があるが、周期が同一でない場合は測定値への影響は少ないので引く必要はない。
本発明では、一つの光学シミュレーションの結果として、水の屈折率を1.33としたとき、周期性がない場合(0周期)はd=Δλ/1.5、周期性がある場合(多周期)はd=Δλ/0.86の換算式を用いることができる。なお、加湿時の屈折率は「エドレンの実験式」で求めることができるが、本発明の測定系においては乾燥空気と湿潤空気の屈折率の差が非常に小さいため無視できる。
(b)cOPL法
cOPL法(converted optical length)は、反射率曲線に表れる(複数の)極値の位置に基づいて試料薄膜の光路長を算出する方法である。この方法では、光路長の変化、すなわち屈折率毎に膜厚を変化させた反射率曲線の(複数の)極値位置の波長シフトの関係を予めシミュレーションし、それを数学的に処理してテンプレートを作成しておく。そして、実測された反射率曲線の極値位置の波長をテンプレートに照らすと、近似的に分析対象センサーチップの光路長(L)が得られる。Lからリファレンスセンサーチップの光路長(L’)を引けば、試料薄膜自体の光路長(ΔL)が求められる。このΔLは試料薄膜の光路長(=屈折率n×膜厚d)自体なので、その値を屈折率nで割れば厚さdを直接的に算出することができる。光路長の解析を詳細に行うことで屈折率nと膜厚dの分離も原理的に可能である。
(c)フーリエ解析法
前記cOPL法同様に光路長の変化に対する反射率曲線の波形を予めシミュレーションし、それを数学的に処理してテンプレートを作成しておく。そして、実測された反射率曲線の波形をフーリエ解析し、前記テンプレートを参照して光路長を求めることができる。光路長の解析を詳細に行うことで屈折率nと膜厚dの分離も原理的に可能である。
・分析内容
本発明のRIfS測定装置を用いて、上述したような測定工程により得られたデータに基づく分析内容は特に限定されるものではないが、たとえば、試料薄膜に対する水分子の挙動、試料薄膜の熱応答性などについて分析を行うことができる。このような分析は、試料薄膜に試薬を添加する実施形態においては、その添加の前後の測定結果を比較することにより、試料薄膜と試薬との反応がその分析項目に対して与える影響を評価することができる。
試料薄膜の熱応答性に関する分析内容の詳細は、前出の特許文献2(国際公開公報WO2012/161287号)を参照することができる。
一方、試料薄膜に対する水分子の挙動は、たとえば以下のような項目について分析を行うことが可能である。
(a)湿度を変化させることで、気体状の水分子の試料中への取り込みが、厚さの変化として観察される。比較的薄い膜では表面への分子状態での水和が進行し、比較的厚い膜ではそのような膜表面への水和と、膜内部への水分子の取り込み、つまり膜の膨潤とが合わさったものになる。低湿度下、たとえば真空中で脱気後に膜厚を測定することで、水分子のない膜厚を求めることができる。厚さの変化が観察されなければ、その試料は水分子を全くないしほとんど吸着、保持しないことが分かる。
(b)湿度を連続的に変化させたときの測定結果から、各湿度におけるその試料の水分子の保持量や、保持量の変化量として表れる吸着量(プラスの変化量)または脱離量(マイナスの変化量)を定量的に測定することができる。測定、換算された水の膜厚に単位面積(mm2、μm2など)を乗じることで単位面積中の水分子の体積または質量(水の比重は1)が求まり、その質量を水の質量数18で除すれば水分子の物質量(mol)が求まる。また、試料薄膜の厚さが比較的膜厚い場合は、水の膜厚を試料薄膜の厚さで除することにより、含水率(vol%)等を求めることが可能である。また、試料と水の膜厚を質量換算すれば含水率(wt%)を求めることが可能である。
(c)ある試料薄膜について、いくつかの異なる膜厚における水分子の保持量、吸着量、脱離量等の値を対比することにより、膜厚効果(たとえば膜内部への水の浸透の程度)を観察できる。
(d)ある試料薄膜について、いくつかの異なる湿度変化速度における水分子の保持量、吸着量、離脱量等の値を比較することにより、湿度変化速度の違いによる水分子の挙動を観察できる。たとえば、湿度変化速度が速いとき(短時間で湿度を一定量変化させたとき)の湿度の上限値における水分子の保持量よりも、湿度変化速度が遅いとき(長時間かけて湿度を一定量変化させたとき)の湿度の上限値における水分子の保持量が高ければ、後者の保持量の方が真の水分子の飽和量に近い(平衡水和率に近い)、一方前者は飽和(平衡水和率)に達していない、と考えることができる。また、水分子の保持量が平衡に達するまでの時間がわかる。
(e)水分子の吸着量または脱離量を、そのときの湿度の変化にかかった時間で除算すれば、その試料への水分子の吸着速度および脱離速度を求めることができる。
(f)加湿および除湿によるサイクルを行ったとき、除湿後の低湿度下で加湿前の初期膜厚に戻る場合は、水和と脱水のバランスが取れていると評価することができる。一方、水和性の強い材料では、水分子が入りやすく出にくいため、除湿後の膜厚は初期膜厚よりも大きくなる。疎水性の強い材料では、入り込んだ水が広がっていて出やすいため、あるいは濡れ性等の水和に対するバリヤーがあるため、除湿後の膜厚は初期膜厚よりも小さくなる。これらの挙動は、プロットの除湿時の傾き/加湿時の傾きが1(加湿時と除湿時の傾きが同じ)か、1より小さい(除湿時の傾きが加湿時の傾きがより小さい)か、1より大きい(除湿時の傾きが加湿時の傾きがより大きい)か、ということに置き換えられる。
(g)ある試料薄膜について、いくつかの異なる温度における水分子の保持量、吸着量、脱離量等の値を対比することにより、異なる温度における水和挙動の違いを観察できる。
(h)湿度変化のサイクルを複数回繰り返すこと(マルチサイクル)により、試料の湿度に対するヒステリシス、劣化状況、あるいは繰り返しによる水分子保持量の変化等を評価することができる。
(i)湿度および温度の組み合わせを3点以上変化させて測定することにより、試料の熱応答性および水和性の両方(環境耐性、環境順応性)を評価することができる。
(j)生体材料(骨、(人工)皮膚等)を試料とした場合、水分子の保持量、吸着量、離脱量等の測定値から、保湿性などを定量的に評価することができる。たとえば、化粧水の効果を推定することができる。
(k)ポリマー材料(天然、合成)を試料とした場合、水分子の保持量、吸着量、離脱量等の測定値から、水分保持能などを定量的に評価することができる。たとえば、電池のセパレータの通水能力を測定することができる。
(l)乾燥した材料について、湿度を上昇させながら得られたデータからは、水和性の挙動(物質が十分に水和するための水分子の量)を知ることができる。逆に、水分子を保持した試料について、湿度を低下させながら得られたデータからは、乾燥に伴う挙動を知ることができる。
(m)湿度を上げていくと、水中の挙動に近づくことが分かっており、材料の親水性によりクリティカルな湿度が異なる。たとえば、タンパク質が水中(塩分)で集合して生体中での構造をとるのに必要な水分子の量を定量することができる。
(n)薬剤等を試料とした場合は、湿度を上昇させながら得られたデータから、薬剤の生体への浸透性(分子レベルの濡れ性)を推測することが可能である。従来、接触角を指標として評価されていた濡れ性は、分子レベルの水和性との定量的な関係性はないと考えられるが、本発明によれ水和性を分子レベルで定量化できる。
(o)モデル細胞膜を固着し、湿度を変化させながら測定を行うことによって水分子の取り込みやすさを評価することが可能である。モデル細胞膜としては、たとえば生体から採取した細胞膜画分や、合成したリン脂質二重層を用いることができる。後者はリン脂質二重層中に存在する、水分子を選択的に通過せるアクアポリンなどの膜タンパク質を含むので、アクアポリンの水取り込み速度、ひいてはアクアポリンの機構解明、正常・異常の判定、アクアポリン由来の各種疾患の罹患の危険性を予測できる可能性がある。後者は、異種リン脂質の配合比の評価を、水分固着量で定量化することが可能である。
(p)各種の薄膜の撥水性、親水性を分子レベルで定量的に評価することができる。また、基材に表面処理剤または塗料を塗布したときの水分子の吸着量を測定すれば、耐久性の初期レベルがわかる。
(q)多孔質素材で形成された薄膜(層)への水分吸着量から、空隙率を測定することができる。水は比重が1だから質量に換算することも容易である。また、湿度に対する水分子の吸着、脱離の追随性もわかる。
以下の実施例において、RIfS方式の分子間相互作用測定装置としては「MI−Affinity」(登録商標、コニカミノルタオプト株式会社)を使用し、無修飾のセンサーチップおよびフローセルとしては、上記「MI−Affinity」専用のセンサーチップ(基板:シリコンウェハ、光学薄膜:窒化シリコン)およびフローセル(PDMS製、幅2.5mm×長さ16mm×深さ0.1mmの溝及びこの溝の両末端にそれぞれ直径1mmの貫通口を有する。)を使用した。
また、実施例1および2で使用した温湿度調節ユニットは、エアーポンプを用いた乾湿ガス供給コントロールユニット、スチーム式の湿潤ガス発生機構、コンプレッサー式の乾燥ガス発生機構などにより構成した。実施例2で使用した試薬供給機構は、試薬を振動子で噴霧する形態のものとした。
[実施例1]湿度変化に伴う膜厚変化の測定
無修飾のセンサーチップ上に、PMMAをスピンコータ−により3000rpmで塗布し、120℃で60分間加熱乾燥して試料薄膜を形成した。このセンサーチップにフローセルを載せて密閉空間を形成した。温湿度調節ユニットにより、湿度をプログラムに従って調節した室温の空気を密閉空間に導入しながら、RIfSにより膜厚変化を測定した。
実施例1による、調湿ガスの相対湿度の設定値およびRIfSの測定値のグラフを図9に示す。この図では、湿度を一定時間10%で保持した後、短時間で一気に60%まで上昇させ、一定時間60%で保持した後、短時間で一気に10%まで低下させている。調湿ガスの湿度の設定値の変化に対するRIfSの測定値の変化の追従性がよいことが確認でき、密閉空間内のガスの湿度が設定値通り精度よく調節されているものと推認できる。
なお、調湿ガスの相対湿度は、図10(a)および(b)に示すように変化させることも可能である。(a)は、湿度を短時間で一気に10%から60%まで上昇させた後、直ちに短時間で一気に60%から10%まで低下させた場合である。(b)は、湿度を段階的に10%から60%まで上昇させた後、段階的に60%から10%まで低下させた場合である。
[実施例2]試薬添加に伴う膜厚変化の測定
無修飾のセンサーチップ上に、PMMAをスピンコータ−により3000rpmで塗布し、120℃で60分間加熱乾燥して試料薄膜を形成した。このセンサーチップにフローセルを載せて密閉空間を形成した。温湿度調節ユニットにより、湿度をプログラムに従って調節した室温の空気を密閉空間に導入し、さらに所定のタイミングで試薬としてBSAを添加しながら、RIfSにより膜厚変化を測定した。
実施例2による、調湿ガスの湿度の設定値およびRIfSの測定値のグラフを図11に示す。湿度10%のとき(測定開始から約800秒後)に試薬を添加しても膜厚に変化は現れなかったが、湿度を60%まで上げる途中、湿度が約45%のとき(測定開始から約2500秒後)に試薬を添加すると膜厚が大きく変化した。この結果から、湿度の変化に伴って、上記試料薄膜の試薬との反応性が変化することが分かる。また、この図においても、図9と同様、調湿ガスの湿度の設定値の変化に対するRIfSの測定値の変化の追従性がよいことが確認できる。
1 測定システム
10 RIfS測定装置
11 白色光源
12 分光器
13 測定プローブ
13a 第一の光ファイバ
13b 第二の光ファイバ
17 センサーチップセット部
17a 被嵌合部(凹部)
19 チップカバー
19a 嵌合部(凸部)
21 センサーチップ
21a 基板(Si)
21b 光学薄膜(SiN)
21c 試料薄膜(試料)
23 フローセル
23a(破線) 密閉空間
23b 開口(ガス流入口)
23c 開口(ガス流出口)
24d 開口(試薬供給口)
24e 試薬塗布領域
A 測定領域
50 制御装置
60 接続手段
110 温湿度調節ユニット
111 湿潤ガス発生機構(加湿用ビン)
112 乾燥ガス発生機構(除湿用ビン)
113 乾湿ガス供給コントロールユニット
113a エアーポンプ
113b 三方弁
114 乾湿ガス用温度調節機構
116 湿潤ガス発生機構(湿潤ガス充填シリンジポンプ)
116a 湿潤シート
117 乾燥ガス発生機構(乾燥ガス充填シリンジポンプ)
120 温湿度センサー
130 排気機構
140a 第一のガス流路
140b 第二のガス流路
150 水分トラップ機構
210 温度調節器
220 温度調節ユニット
230 温度センサー
300 試薬供給機構
310 液搬送手段
320a 振動子付き試薬ホルダ
320b 試薬ホルダ
330 ノズル
340 電荷印加部
350 試薬

Claims (18)

  1. センサーチップの表面に形成された試料薄膜が置かれている密閉空間を、湿度連続的に変化するガスで満たすための、湿度調節ユニットを含む測定環境調節機構を備え
    前記ガスによって前記密閉空間内の湿度を連続的に変化させながら、複数の前記湿度下で反射スペクトルをそれぞれ取得できることを特徴とする、RIfS測定装置。
  2. 前記湿度調節ユニットが、湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構、および乾湿ガス供給コントロールユニット含む、請求項1に記載のRIfS測定装置。
  3. 前記湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構、および乾湿ガス供給コントロールユニットが一体化している、請求項1または2に記載のRIfS測定装置。
  4. 前記ガスの湿度を1%あたり1〜3600秒の速度で変化させることができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  5. 前記密閉空間内の湿度をリアルタイムで計測する湿度センサーと、前記湿度センサーによって計測された前記密閉空間内の湿度の実測値に基づいて、PID演算方式によって前記密閉空間内の湿度を連続的に変化させる制御部とをさらに有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  6. 前記湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構と前記密閉空間とを連結するガス流路が、結露した水分を排除するための水分トラップ機構を有する、請求項2〜のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  7. 湿度調節ユニットを含む測定環境調節機構が、前記センサーチップに積載されたフローセルによって前記試料薄膜の周囲に形成された密閉空間を、湿度が連続的に変化するガスで満たすためのものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  8. 前記密閉空間の寸法は、幅2.5mm×長さ16mm×深さ0.1mmである、請求項7に記載のRIfS測定装置。
  9. チップカバーおよびセンサーチップセット部、または遮光カバーが、前記密閉空間を形成するための構造を備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  10. 前記測定環境調節機構がさらに、前記密閉空間内のガスを外部に排出するための排気機構を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  11. 前記測定環境調節機構がさらに、前記湿度調節ユニットに空気以外のガスを供給する機構を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  12. さらに、センサーチップ用温度調節機構を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  13. 前記ガスを任意の温度に調節する温度調節機構をさらに有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  14. さらに、前記密閉空間を形成する部材に設けられた試薬供給口から試薬を噴霧する試薬供給機構を備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載のRIfS測定装置。
  15. 前記密閉空間を形成する部材としての前記チップカバーに前記試薬供給口が設けられている、請求項14に記載のRIfS測定装置。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載のRIfS測定装置と、当該RIfS測定装置の測定環境調節機構の制御手段と、当該RIfS測定装置がセンサーチップ用温度調節機構を備える場合はその制御手段と、当該RIfS測定装置が試薬供給機構を備える場合はその制御手段と、を含むことを特徴とする、RIfS測定システム。
  17. 密閉空間を形成する部材として請求項1〜15のいずれか一項に記載のRIfS測定装置と共に使用されるセンサーチップ用のフローセルであって、試料薄膜と反応させるための試薬が塗布されている領域が、ガス流入口の壁面に形成されていることを特徴とするフローセル。
  18. 密閉空間を形成する部材として請求項15に記載のRIfS測定装置と共に使用されるセンサーチップ用のフローセルであって、試薬供給口を備えることを特徴とするフローセル。
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