JP6291805B2 - 反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム - Google Patents

反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム Download PDF

Info

Publication number
JP6291805B2
JP6291805B2 JP2013241876A JP2013241876A JP6291805B2 JP 6291805 B2 JP6291805 B2 JP 6291805B2 JP 2013241876 A JP2013241876 A JP 2013241876A JP 2013241876 A JP2013241876 A JP 2013241876A JP 6291805 B2 JP6291805 B2 JP 6291805B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
humidity
temperature
thin film
measurement
sample
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013241876A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014122888A (ja
Inventor
二宮 英隆
英隆 二宮
貴紀 村山
貴紀 村山
高敏 彼谷
高敏 彼谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2013241876A priority Critical patent/JP6291805B2/ja
Publication of JP2014122888A publication Critical patent/JP2014122888A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6291805B2 publication Critical patent/JP6291805B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)

Description

本発明は、RIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射干渉分光法)を応用した分析方法およびそのための測定システムに関する。
RIfSは、センサーチップの表面に形成された光学的な厚さの薄膜に光を照射すると、その厚さによって、干渉によって反射率が最低となる波長(ボトムピーク波長)が相違するという原理を利用する分析手法である。すなわち、試料薄膜が形成されたセンサーチップについてボトムピーク波長を測定することにより、基準となる無修飾のセンサーチップについて測定されたボトムピーク波長との差(Δλ)を算出し、そこから試料薄膜の光路長(屈折率×厚さ)に換算することができる。たとえば、試料中に含まれるアナライト(抗原分子等)と、センサーチップの表面に固定化されたリガンド(抗体等)との間で分子間相互作用(抗原抗体反応による結合)が起き、当該アナライトからなる薄膜が形成されると、その形成量(平均的な厚さ)に応じてΔλが変化するので、試料中のアナライトを標識化することなく、リアルタイムで定量的に検出することができる。RIfSの基本原理は特許文献1や非特許文献1などに記載されている。
さて、高分子材料など各種の素材について、吸水性や膨潤特性といった水が関係する物性を分析するための手段としては、次のようなものが知られている。
たとえば、試料の含水率(水を含んだ試料の全重量で水の重量を割って得られる値)は、簡易的には水を含んだ試料をオーブンで加熱し、その前後の重量を測定することによって算出することができ、より正確にはカールフィッシャー法によって測定することができ、各種の測定装置も販売されている。しかしながら、このような測定方法には比較的多量の試料が必要とされ、また環境湿度に応じて変化する水の吸着(吸湿)量およびその速度をリアルタイムに求めることはできない。
特許文献2には、QCM(水晶振動子マイクロバランス)またはその改良法であるQCM−Dを利用する手段が記載されている。すなわち、表面に膜状の試料が形成されているセンサーを用いて、その試料の上方に形成されている微小空間の相対湿度を変化させながらQCM等の測定を行うことにより、吸湿した試料の物性(膨潤性)を分析する方法や、その方法を実施するための装置(モジュール)が記載されている。さらに、非特許文献2には、特許文献2に係る出願人が販売している前記装置(モジュール)を用いて、相対湿度を数段階に変化させながら試料の厚さを測定するという応用例が開示されている。しかしながら、QCM等の理論上、測定環境が一定でないと測定は行えず(水が試料薄膜に吸着するとSauerbrey式からの乖離が大きくなるので、測定環境が変化すると計測のベースラインが変化してしまう)、またそれらの方法のための装置は一般的に機械的な駆動部を有するので測定に時間がかかる。そのため、非特許文献2中のグラフに示されているように、相対湿度を変化させる場合も、上昇又は下降させた後に一定の値でしばらく保持するといったように、段階的に変化させる必要があり、湿度を連続的に変化させながらリアルタイムで測定を行うことはできない。また、厚膜ほど前述の誤差が大きくなるため、測定対象膜厚が非常に狭い欠点もある。
非特許文献3には、密閉空間に設置した精密電子天秤と調湿装置を組み合わせた装置が開示されている。この装置では、密閉空間内の湿度条件を変化させて各湿度の平衡状態での精密電子天秤の計量により水蒸気吸着等温線を求めることで固体材料への水分の吸脱着の挙動を測定することができる。しかしながら、電子天秤の精度はマイクログラム程度である。
上記のような従来技術によってでは、原理的に水の吸脱着前後の測定量の差分としてしか見ることができず、水との相互作用に関する試料の特性を分析しようとしても得られる情報の精度には限界があり、水の挙動を巨視的に(水をバルクとして)把握することしかできなかった。
特許第3786073号公報 国際公開公報WO2009/005452号
Sandstrom et al, APPL.OPT., 24, 472, 1985 Application Note (QS 405-18-1) "Analysing vapor uptake & release with QCM-D" (http://www.q-sense.com/file/18-analyzing-humidity-effects-with-qcm-d-1.pdf) Intrinsic-Compact and Economical Dynamic Vapor Sorption System (http://www.thesorptionsolution/com/files/DVS%20Intrinsic%20Brochure.pdf)
本発明は、各種の材料からなる薄膜に対する水分子の挙動を、従来にはない観点から分析することを可能とする手段を提供することを目的とする。
発明者らは、RIfSに基づく分子間相互作用測定装置を用いて、センサーチップが置かれた雰囲気の湿度を連続的に変化させながら、センサーチップの表面に形成された試料薄膜についてΔλを測定したところ、驚くべきことに、湿度の変化に呼応してΔλ(およびそこから換算される膜厚)がサブオングストロームレベルで変化する様子を観察することができた。水分子のサイズは約0.4nmなので、仮にΔλから膜厚が0.02nm変化したと換算されれば、センサーチップの表面面積の約1/20に水分子が付着した(平均で水分子1/20個分の厚さの薄膜が形成された)ことを検出できる。つまり、試料薄膜に対する気体状の水の挙動を、バルクとしてではなく分子レベルで、定量的に観察することができることが見出された。しかも、RIfSでは光学的な界面を見ているため、湿度(および必要に応じて温度)を変化させてもベースラインは変化せず、また機械的な駆動部がないため分光器の限界(通常10msec)までリアルタイムで測定することができる。
このような知見に基づき完成された本発明は、一つの側面において、薄膜に対する水分子の挙動に関する分析方法を提供し、別の側面において、当該分析方法を実施するための測定システムを提供する。すなわち、本発明は下記の発明を包含する。
[1] 測定基板の表面に形成された被膜形成性の固体もしくは液体から形成された試料薄膜が置かれている雰囲気の湿度を1%あたり1〜3600秒の速度で連続的に変化させながら、RIfS(反射干渉分光法)により当該試料薄膜の膜厚に関するデータを測定する工程(測定工程)を含むことを特徴とする、試料薄膜に対する水分子の挙動に関する分析方法であって、前記測定工程において、前記雰囲気の温度または前記試料薄膜の温度を一定に保持したまま、または変化させて前記データを測定する、分析方法。
[2] 前記測定工程において、湿度の値の間隔が0.1〜10%である、10回以上の測定ステップが行われる、[1]に記載の分析方法。
[3] 前記測定工程において、湿度の変化が1〜100サイクル繰り返される、[1]または[2]に記載の分析方法。
] 前記測定工程において、初期の湿度を高くし、そこから湿度を低下させるように変化させる、[1]〜[]のいずれか一項に記載の分析方法。
] 前記測定工程が、前記雰囲気の湿度の変化速度が異なる条件下で、複数回行われる、[1]〜[]のいずれか一項に記載の分析方法。
] 前記測定工程が、前記雰囲気の温度または前記試料薄膜の温度が異なる条件下で、複数回行われる、[1]〜[]のいずれか一項に記載の分析方法。
] 前記試料薄膜が、被膜形成性の固体もしくは液体により形成される薄膜;測定基板の表面に固着可能な固体、液体もしくは気体により形成される薄膜;または測定基板上に形成された密閉空間内に溶解もしくは浮遊する物質により形成される薄膜である、[1]〜[]のいずれか一項に記載の分析方法。
] 前記試料薄膜の厚さが1nm〜100μmである、[1]〜[]のいずれか一項に記載の分析方法。
] 前記測定工程により得られたデータに基づいて、水分子の吸脱着量および吸脱着速度、水分子の吸脱着ダイナミクス、試料薄膜の飽和水和量、平衡時間、平衡膜厚および平衡含水率、分子レベルの微小な面積の濡れ性、環境(温度、湿度の変化)の違いやストレスをかけた前後での物質の水和性の違い、水分子の吸・脱着(加湿と除湿)に由来するヒステリシス、水和速度の違い、および水和構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの項目について分析する工程を含む、[1]〜[]のいずれか一項に記載の分析方法。
10] 前記平衡時間、平衡膜厚もしくは平衡含水率についての分析を、シミュレーション曲線または計算式に基づいて行う、[]に記載の分析方法。
11] 前記水分子の吸脱着量または吸脱着速度についての分析を、前記測定工程により得られた試料薄膜の膜厚に関するデータから算出された、試料薄膜に吸脱着した水分子の体積または質量に基づいて行う、[]に記載の分析方法。
12] 前記水和構造についての分析を、膜厚変化量−湿度曲線の変曲点に基づいて行う、[]に記載の分析方法。
13[1]〜[12]のいずれか一項に記載された分析方法に用いられるRIfS用の測定システムであって、測定基板の表面に形成された試料薄膜が置かれている雰囲気の湿度を連続的に変化させる湿度調節手段を備えることを特徴とする、RIfS用の測定システム。
14] さらに、前記雰囲気の温度または前記試料薄膜の温度を変化させる温度調節手段を備える、[13]に記載の測定システム。
15] 気体を流出入させる開口を備えた密閉空間形成部材を前記測定基板に重ね合わせることで、前記試料薄膜の周囲に密閉空間が形成されている、[13]または[14]に記載の測定システム。
なお、明細書中に記載される用語「湿度」は、「相対湿度」および「絶対湿度」の両方を包含する。温度が一定であれば、「相対湿度を連続的に変化させる」ことと「絶対湿度を連続的に変化させること」は、どちらも連続的に変化するという点で共通しており、本発明の分析方法や測定システムにおける「湿度」をどちらの意味で解釈しても支障はない。たとえば、本発明における湿度調節手段としては、一般的に販売されている湿度調節ユニットや湿度調節装置を用いることができるが、通常は相対湿度により湿度を制御しているので、それに従って相対湿度で湿度調節パターンを設定することができる。一方、相対湿度が同じであっても高温の方が多量の水分子が存在する(絶対湿度が高い)ことになり、逆に同じ質量の水分子があっても(絶対湿度が同じでも)高温の方が相対湿度は低くなる。したがって、異なる温度で測定した結果を共通の基準で比較する場合、あるいは水分子の絶対量で表示する場合は、絶対湿度で測定または換算する方が適切である。
本発明によれば、湿度を連続的に変化させたときの試料の光路長の変化をRIfSによりリアルタイムで測定することができるので、気体状の水分子の吸着、脱離といった挙動や、試料に付着(保持、固着、吸湿、保湿、水和等の様々な言葉で表される)される量などを精密に分析することができるようになる。このような本発明の分析方法は、従来の方法でも測定できた吸水率、含水率、膨潤率といった言葉で表されていた巨視的な物性に留まらず、これまで発想すらされていなかった(もちろん従来の方法では実現不可能な)水の分子レベルでの分析、たとえば試料に付着した微量の水分子の定量、さらに水分子の吸着・脱離速度の測定、分子レベルの濡れ性、環境の違いやストレスをかけた前後での物質の水和性の違いなどの物性の評価を可能とする。湿度を連続的に変化させながら測定を行うという技術的思想をRIfSに導入することにより生み出された本発明は、各種の物質に対する気体状の水分子の挙動を本質的に解析することのできる手段として画期的なものである。
図1は、本発明の測定システムの一実施形態(測定環境調節機構の第1実施形態)を示す概略図である。 図2は、本発明の測定システムの一実施形態(測定環境調節機構の第2実施形態)を示す概略図である。 図3は、様々な湿度の変化パターンを示すグラフである。 図4は、実施例のセンサーチップNo.1(ベア基板)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図5は、実施例のセンサーチップNo.2(オプツールDSX)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図6は、実施例のセンサーチップNo.3(フレッセラR)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図7は、実施例のセンサーチップNo.4(Triethoxy-1H,1H,2H,2H-tridecafluoro-n-octylsilane)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図8は、実施例のセンサーチップNo.5(Octadecyl-trimethoxysilane)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図9は、実施例のセンサーチップNo.6(Hydroxymethyl triethoxysilane)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図10は、実施例のセンサーチップNo.7(N-(3-Triethoxysilylpropyl)gluconeamide)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図11は、実施例のセンサーチップNo.8(CMD-L-05B1)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図12は、実施例のセンサーチップNo.9(CMD-D40-021205)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図13は、実施例のセンサーチップNo.10(CMD500-06F1)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図14は、実施例のセンサーチップNo.11(BSA)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図15は、実施例のセンサーチップNo.12(ニュートラアビジン)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図16は、実施例のセンサーチップNo.13(細胞膜画分)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図17は、実施例のセンサーチップNo.14(DOPC)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図18は、実施例のセンサーチップNo.15(PS1)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図19は、実施例のセンサーチップNo.16(PS2)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図20は、実施例のセンサーチップNo.17(PS3)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図21は、実施例のセンサーチップNo.18(PMMA1)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図22は、実施例のセンサーチップNo.19(PMMA2)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図23は、実施例のセンサーチップNo.20(PMMA3)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図24は、実施例のセンサーチップNo.21(PA)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図25は、実施例のセンサーチップNo.22(ハイドランCP7610)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図26は、実施例のセンサーチップNo.23(SiO2)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を表すグラフである。 図27は、実施例のセンサーチップNo.12(ニュートラアビジン)について、12時間放置前後の測定結果を対比したグラフである。 図28は、実施例のセンサーチップNo.15,16,17(PS1〜3:塗布濃度相違)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を対比したグラフである。 図29は、実施例のセンサーチップNo.18,19,20(PMMA1〜3:塗布濃度相違)の測定結果(Δλ、対相対湿度)を対比したグラフである。 図30は、実施例のセンサーチップNo.20(PMMA3)について、3段階で相対湿度を保持しながら温度を連続的に変化させたときの測定結果(λ、対温度)を対比したグラフである(上から、相対湿度が50%、30%、10%となっている)。 図31は、実施例のセンサーチップNo.23(SiO2)について、2段階で温度を保持しながら湿度を連続的に変化させたときの測定結果(Δλ、対相対湿度)を対比したグラフである。 図32は、実施例群2で用いた密閉空間形成部材(ガス流路)のイメージ図である。 図33は、実施例8に関する吸脱着曲線を表すグラフである。 図34は、実施例8(2)の水の吸脱着ダイナミクスを表すプロットである。 図35は、実施例8(3)に関する乾燥曲線および湿潤曲線を表すグラフである。 図36は、実施例9に関する膜厚変化を表すグラフである。左列の3つのグラフはそれぞれ調湿パターンに対する膜厚変化、右列の3つのグラフはそれぞれ水の吸着時および脱着時における膜厚変化を示している。 図37は、実施例9における、サンプル(c)の変曲点を求めるための補助線を引いた、膜厚変化を表すグラフである。 図38は、実施例9における、平衡調湿時間のシミュレーション(左)および平衡含水率のシミュレーション(右)に用いたグラフである。 図39は、実施例10における、正常NeutrAvidinからなる薄膜(上)および変性NeutrAvidinからなる薄膜(下)の膜厚変化を表すグラフである。 図40は、実施例11における、PS(ポリスチレン)(上段)およびPMMA(ポリメチルメタクリレート)(下段)の膜厚変化を表すグラフである。左列の2つのグラフはそれぞれ調湿パターンに対する膜厚変化、右列の2つのグラフはそれぞれ水の吸着時および脱着時における膜厚変化を示している。 図41は、実施例12における、CMD(カルボキシメチルデキストラン)(上段)およびデキストラン(下段)の膜厚変化を表すグラフである。左列の2つのグラフはそれぞれ調湿パターンに対する膜厚変化、右列の2つのグラフはそれぞれ水の吸着時および脱着時における膜厚変化を示している。 図42は、実施例12における、CMD(カルボキシメチルデキストラン)(上段)およびデキストラン(下段)の水の吸脱着ダイナミクスを表すプロットである。 図43は、実施例13(1)(調湿温度とサンプル表面温度の温度差が5℃)における、フレッセラRの膜厚変化を表すグラフ(上段)および水の吸脱着ダイナミクスを表すプロット(下段)である。 図44は、実施例13(2)(調湿温度とサンプル表面温度の温度差が10℃)における、フレッセラRの膜厚変化を表すグラフ(上段)および水の吸脱着ダイナミクスを表すプロット(下段)である。
−測定システム−
本発明は一つの側面において、試料薄膜に対する水分子の挙動に関する本発明の分析方法を実施するのに好適な、測定システムを提供する。本発明の測定システムは、RIfS、特に反射型RIfSに基づくものである。本発明の測定システムの実施形態の例を図1および図2に示すが、本発明の実施形態はこれら図に示されたものに限定されず、本発明の作用効果を妨げない範囲で改変された実施形態も含まれる。
RIfS測定システム1は基本的に、RIfS装置10、このRIfS装置10にセットして用いられるセンサーチップ21、制御装置50、および制御装置50と各要素との接続手段60を含むシステム制御手段により構成される。本発明のRIfS測定システム1はさらに、センサーチップ21が置かれた雰囲気の温湿度を連続的または不連続的に変化させるための測定環境調節手段を含み、好ましくはセンサーチップ21(試料薄膜21c)の周囲に密閉空間を形成する密閉空間形成部材23や、センサーチップ21(試料薄膜21c)の温度をより直接的に調節するためセンサーチップ用温度調節手段も含む。
(RIfS装置)
RIfS装置10は、RIfS測定機構、測定環境調節機構、センサーチップ21および必要に応じて用いられるガス流路形成部材23をセットするためのセンサーチップセット部(ステージ)およびチップカバー、これらを収納し、一部に開閉可能な遮光カバーが設けられている筐体などから構成される。
・RIfS測定機構
RIfS測定機構は、白色光源11、分光器12、測定プローブ13を含む。白色光源11が点灯すると、その白色光が光ファイバ13aを介して測定領域Aに向けられたプローブ13から照射され、測定領域Aからの反射光が光ファイバ13bを介して分光器12に導かれる。図中の矢印は入射光および反射光を表す。プローブ13から照射される白色光の届く範囲が測定領域Aに相当し、この測定領域Aの面積(以下「測定面積」と呼ぶ場合がある。)は例えば0.126mm2(直径0.4mmの円)程度である。
白色光源11は、ハロゲンランプと、これを格納する筐体とから構成される。筐体には、第一の光ファイバ13aを接続するための接続ポートが設けられており、接続ポートに接続された光ファイバ13aの端面とハロゲンランプとが対向するように配置される。
分光器12は、受光部(CCD等)で受ける光について、波長ごとに強度を検出し、分光強度として制御装置50に出力する。筐体には、第二の光ファイバ13bを接続するための接続ポートが設けられており、接続ポートに接続された光ファイバ13bの端面と受光部とが対向するように配置される。
測定プローブ13は、白色光源11からの白色光を測定領域Aに導くための第一の光伝達経路としての光ファイバ13aと、光ファイバ13aから照射された白色光の測定領域Aにおける反射光を分光器12に導くための第二の光伝達経路としての光ファイバ13bとを備える。光ファイバ13a,13bは、いずれも微細ファイバを束ねた構造となっている。光ファイバ13aの一端は、白色光源11の接続ポートに接続されており、光ファイバ13bの一端は、分光器12の受光を行う接続ポートに接続されている。光ファイバ13aおよび13bそれぞれのもう一端は、測定プローブ13で、各々の微細ファイバが一つの束となるように複合的に寄り合わされている。光ファイバ13aを構成する微細ファイバは、測定プローブ13の中央に分布し、光ファイバ13bを構成する微細ファイバは光ファイバ13aの微細ファイバの束を取り囲むようにその周囲に分布している。
なお、本実施形態においては、センサーチップ21からの反射光を分光器12で受光するようにしているが(反射型RIfS)、センサーチップ21として光透過性のものを用いて、白色光源11からの光をセンサーチップ21に照射し、センサーチップ21を透過してきた光を受光するように分光器12を配置し、透過光の分光強度を検出するよう変形することも可能である。
(センサーチップ/測定基板)
センサーチップ21は、一般的には矩形であり、基板21aと、その上に形成された光学薄膜21bと、本発明ではさらに、光学薄膜21bの上に形成された試料薄膜21cから構成される。試料薄膜21cの一部が、白色光が照射されて反射率が測定される測定領域Aとなる。
なお、従来の一般的なRIfSにおいては、各種の液体を送液することのできる流路を形成するために、枠材となるフローセルをセンサーチップに積載して用いる(センサーチップとフローセルとを組み合わせて測定部材とする)こともある。本発明では、試料薄膜は液体中には置かず、気体中に置いて気体状の水分子と接触できる状態で測定を行うので、そのようなフローセルを用いる必要はない。その代わり、本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、センサーチップ表面に形成された試料薄膜の周囲を密閉し、湿度および/または温度が調節されたガスを導入および排出するための密閉空間形成部材として、従来のフローセルに類似した、センサーチップと重ね合わせられる部材を用いることもある。
また、本明細書において、表面に試料薄膜21cが形成された状態のセンサーチップを「分析対象センサーチップ」と称する。一方、RIfS用のセンサーチップとして最小限の構成、典型的には基板21aおよび光学薄膜21bのみを備えたセンサーチップを「無修飾センサーチップ」と称する。また、このような無修飾センサーチップや、無修飾センサーチップに試料薄膜を形成するための前処理(たとえばシランカップリング剤による処理)までが施された状態(試料薄膜を形成する直前の状態)のセンサーチップであって、前記分析対象センサーチップの測定データを対比するためのもの「リファレンスセンサーチップ」と称する。
ここで、本発明では、図1に示すように無修飾センサーチップ(その最表面の光学薄膜21b)の上層に試料薄膜21cを形成した場合だけでなく、光学薄膜21bで被覆されていない基板21a自体の上層に直接試料薄膜21cを形成した場合(したがってセンサーチップとは呼びにくい場合)であっても、RIfSに基づく測定および試料薄膜の分析を行うことが可能である。本明細書では、典型的な実施形態である前者に基づき、基板21a、光学薄膜21bおよび試料薄膜21cから構成される「(分析対象)センサーチップ」という用語を用いながら本発明を説明しているが、当該用語を基板21aおよび試料薄膜21cから構成される「(分析対象)基板」に適宜読み替えながら発明を解釈することが可能である。同様に、「無修飾センサーチップ」および「リファレンスセンサーチップ」を「無修飾基板」および「リファレンス基板」に読み替えることも可能である。試料薄膜21cが塗布される対象となる、光学薄膜21bが積層されていてもされていなくてもよい基板21aをまとめて「測定基板」と称する。
・基板および光学薄膜
基板21aおよび光学薄膜21bは、白色光を照射したときに観測される反射率極小波長が適切な範囲となるような屈折率および厚みを有する材料で形成される。
基板21aは、従来の一般的なセンサーチップにおいては、Si(ケイ素、シリコンウェハ)からなる基板が好ましい。一方、本発明の一実施形態において、基板21aの上層に試料薄膜21cを形成する場合、その基板21aは、Si以外の基板、たとえばSiO2(石英ガラス)またはその他のガラス、あるいはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボート、シクロオレフィンポリマー等のプラスチックからなる基板であってもよい。
光学薄膜21bは、基板21aがSiからなるものである場合、SiN、SiO2、TiO2、Ti25などからなる薄膜とすることができるが、SiN(窒化ケイ素)からなる薄膜が好ましい。SiNの屈折率は可視光領域の波長約400から800nmの範囲において約2.0〜2.5であり、SiNの膜厚を約45〜90nmとすることにより、反射率極小波長をおよそ400nm〜800nmの範囲に調節することができる。光学薄膜21bは、基板21aの上面に、蒸着により積層することができる。
・試料薄膜
試料薄膜21cは、適切な材料により形成され、RIfSを適用することのできる膜厚、屈折率等の性質を備えたものであれば特に限定されるものではない。
試料薄膜の膜厚は、たとえば、1nm〜100μm、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは10nm〜1μmの範囲とすることができる。試料薄膜21cは、センサーチップ21の片方の表面の全てに形成されていても、一部に形成されていてもよい。
試料薄膜21cとしては、たとえば、被膜形成性の固体もしくは液体から形成された薄膜;センサーチップの表面に固着可能な固体、液体もしくは気体から形成された薄膜;またはセンサーチップ上に形成された密閉空間内に溶解もしくは浮遊する物質から形成された薄膜が挙げられる。
このうち「被膜形成性の固体」としては、疎水性ポリマー(ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなど)、親水性ポリマー(プラズマ処理等により親水化処理をしたポリメタクリル酸メチルなど)、水溶性ポリマー、生体材料(タンパク、リン脂質、核酸、糖鎖、細胞、細胞膜画分、皮膚、生体由来の分泌成分など)、表面処理剤(フッ素系撥水処理剤、親水性表面改質剤など)、塗料(インク、ペイントなど)、機能性材料が挙げられるが、無機化合物も含まれる。SiO2, Si, SiN, ZnO, TiO2などの、水分子を吸着しうる(それによって光路長が変化する)物質からなる薄膜(層)自体を試料薄膜としてもよい。「センサーチップの表面に固着可能な固体」としては、微粒子状(コロイダルシリカ、顔料、トナーなど)や単分子状の化合物(シランカップリング剤形成膜、LB膜形成膜、蒸着物など)であってもよい。
試料薄膜21cの形成方法も特に限定されるものではなく、RIfS用センサーチップを作製する場合などについてと同様の、公知の手法を用いることができる。
たとえば、合成もしくは天然の高分子材料からなる薄膜を形成する場合は、必要に応じて溶媒を用いて適度な粘度の溶液を調製した後、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング技術を用いて無修飾センサーチップの表面に塗布することができる。また、無修飾センサーチップの表面をシランカップリング剤またはアミンカップリング剤で処理して反応性官能基(アミノ基、カルボキシル基等)を導入しておき、高分子材料が有する官能基と反応させることにより当該高分子材料からなる薄膜を形成するようにしてもよい。このような官能基同士の反応のかわりに、分子間相互作用や静電吸着により高分子材料からなる薄膜を形成することもできる。あるいは、無修飾センサーチップの表面に光、熱などにより重合可能なモノマーを導入し、グラフト重合させることにより、そのモノマーから高分子材料を生成させて薄膜をを形成することもできる。その他、キャスト製法、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)等の成膜技術を用いることもできる。
また、試料薄膜21cがタンパク質、核酸等の生体関連物質からなるものである場合は、抗原抗体反応やDNAハイブリダイゼーションなどの特異的な反応、または非特異的な反応により、前記生体関連物質を捕捉できる物質をセンサーチップの表面にあらかじめ固定化しておき、前記生体関連物質の水溶液をそのセンサーチップの表面に接触させることにより成膜することができる。この際、リガンドを固定化するステップや、アナライトを捕捉するステップは、そのステップを行う前の状態のセンサーチップにフローセルを載せて密閉流路を形成し、そこに材料を含む溶液を送液するようにして行うことが可能である。さらに、骨、皮膚などの生体材料(採取された組織または人工物)も、センサーチップの表面に固着させることができる。
・試薬供給手段
測定システム1は必要に応じて、試料薄膜に微量の試薬を添加するための試薬供給手段を備えていてもよい。この場合、RIfS測定装置1は、たとえば、振動子での噴霧または静電噴霧による試薬供給機構を備える。試薬供給機構に係る制御プログラムを記憶した制御装置50は、当該機構を構成する各部材(液運搬手段など)と通信可能なように接続される。密閉空間形成部材23を利用する実施形態においては、当該部材に試薬供給口23dが設けられるので、試薬供給機構はそのような試薬供給口23dから試薬を噴霧できる位置に設置される。
(システム制御手段)
システム制御手段は、制御装置50、制御装置50と測定システム1を構成する各要素との間で電気的な信号、データ等の通信を可能とする接続手段60、制御装置50に記憶されたプログラム(ソフトウェア)などから構成される。システム制御手段の対象となる上記の各要素には、RIfSにおける基本的な要素である白色光源11、分光器12などに加えて、本発明で必要とされる測定環境調節機構、たとえばそれらを構成する温湿度調節ユニット110、温湿度センサー120などの部材が含まれ、さらに、RIfS測定装置がセンサーチップ用温度調節機や試薬供給機構を備える場合は、それらの構成部材も含まれる。
制御装置50は、オペレータからのシステムの動作やデータの処理などに関する指示の入力の受け付け、システム構成要素(それらが備えるマイコン)に向けてその指示通りに作動させるための実行指令の送信、システム構成要素からの測定データの受信、システムの動作状況や受信、処理されたデータの表示などを行うための適切なインターフェースを備える。
また、制御装置50は、測定システム1を構成する各要素から受信したデータを処理するための演算手段や、その処理を行うプログラム(ソフトウェア)や各種のデータを記憶するための記録媒体も備える。たとえば、分光器12から受信した分光強度データに基づくボトムピーク波長の変位量(Δλ)の算出や、その値に対応する温湿度センサー120から受信した温湿度データの統合などは、所定のプログラムにより処理することができる。
上記のような機能を持たせる制御装置50としては、パーソナルコンピュータを用いることが一般的である。本発明の分析システムは、制御装置50が記憶したプログラムにより、各測定ステップ、工程の開始、反復、終了等の処理が(半)自動的に行われることが好ましい。
(測定環境調節手段)
測定環境調節手段は、分析の目的に応じて密閉空間23内の湿度および/または温度が所望の状態になるよう調節するための手段である。本発明のRIfS測定システムは、少なくとも湿度調節手段を含み、好ましくはさらに温度調節手段を含むが、これらの2つが統合されている測定環境調節手段を含むことが望ましい。
測定環境調節機構の第1の実施形態として、図1に示すように配置された、温湿度調節ユニット110、温湿度センサー120、およびそれらを収納するとともに密閉空間23aを形成する筐体190によって構成される測定環境調節機構100が挙げられる。測定環境調節機構100に係る制御プログラムを記憶した制御装置50は、温湿度調節ユニット110および温湿度センサー120と制御可能なように接続されている。
本実施形態では、測定環境調節機構100の筐体190内にRIfS装置10を設置している。この場合、筐体190内の温湿度が、RIfS装置10にセットされたセンサーチップ21が置かれた雰囲気の温湿度とみなせるよう、気体の出入りが保たれた状態とする。
このような第1実施形態の測定環境調節機構100としては、温湿度調節ユニット110、湿度センサー120、およびそれらを収納する筐体190が一体的に統合されている、恒温恒湿器のような装置を用いてもよい。市販されている製品としては、たとえば、調湿恒温槽装置ARL-0680-J、ARL-1100-J、ARS-0680-J、ARS-1100-J、PFL−3K、PFL−3KH、PFU−3K、SH-221、SH-241、SH-246、SH-661(エスペック社製)が挙げられる。
測定環境調節機構100、特に上に挙げたような一体型の装置は、温湿度センサー120によって装置内の湿度を計測し、温湿度調節ユニット110による加湿又は除湿によって、そこが設定された湿度となるように湿度制御を実行することができ、湿度の上昇、下降または維持を任意のパターンで自動的に行えるよう、電子回路(マイコン)またはシステム制御手段によってプログラム制御されるものが好適である。プログラムを電子回路に記憶させるための入力手段、温湿度データの記録・出力手段、各種の情報を確認できる表示手段などは、コントロールパネル等として測定環境調節機構100自体が備えていてもよいし、測定環境調節機構100に接続された制御装置50がその機能を担うようにしてもよい。
測定環境調節機構の第2の実施形態として、図2に示すように配置された、温湿度調節ユニット110、温湿度センサー120、および排気機構130によって構成される測定環境調節機構100が挙げられる。本実施形態ではあらかじめ、フローセルに類似した密閉空間形成部材23によってセンサーチップ21の試料薄膜21c(特に測定領域A)の周囲に密閉空間23aを形成した上で、温湿度調節ユニット110から発生した温湿度が調節された気体を密閉空間23a内に導入し、試料薄膜に供給する。
また、測定環境調節機構100に係る制御プログラム(測定環境制御プログラム)を記憶した制御装置50は、これらの測定環境調節機構の各要素と制御可能なように接続される。このような測定環境調節手段において、温湿度センサー120によって密閉空間23a内の湿度および/または温度をリアルタイムで計測し、その測定値を制御装置50にフィードバックして、制御装置50に記憶された設定値と比較する。その結果に基づいて、温湿度調節ユニット110および排気機構130を適切に作動させることによって、密閉空間23aが設定された湿度および/または温度となるように制御することができる。
測定環境制御プログラムは、密閉空間23aの湿度および/または温度の上昇、下降または維持を任意のパターンで自動的に行えるようなものとすることが好適である。測定環境制御プログラムの入力手段、温湿度データの記録・出力手段、各種の情報を確認できる表示手段などは、制御装置50として一般的に用いられるPCが備えている。測定環境制御プログラムは、例えば次のような実施形態とすることができる:(1)事前に設定した「時間」および「設定温湿度」の計画を読み込み、(2)温湿度調節ユニットおよびセンサーチップの測定領域近傍に設置された温湿度センサーから、A/D変換により温湿度を変換して入力し、(3)計測された温湿度と前記設定温湿度との差分を計算して、温湿度調節ユニットを駆動して乾湿ガスの温湿度を制御する。加熱/冷却および加湿/除湿の度合い(%)の算出は、例えば、サンプリング方式(離産値)に適したPID演算方式とし、3つのPID制御パラメータ(Kp、Ki、Kd)によりチューニングすることが好ましい。
温湿度調節ユニット110および排気機構130は、それぞれ、密閉空間23aの両端に設けられた開口23b(導入口)および開口23c(排出口)に、第一のガス流路140aおよび第二のガス流路140bを介して接続される。ガス流路140aおよび140bは、好ましくは、結露した水分を排除するための水分トラップ機構150を備える。
湿度調節ユニット110は、所望の湿度をおよび/または温度を有する気体を発生させて密閉空間23aに供給するためのユニットであり、湿潤ガス発生機構、乾燥ガス発生機構、乾湿ガス供給コントロールユニット、および乾湿ガス用温度調節機構を組み合わせて構築することが好ましい。
湿潤ガス発生機構に用いることができる加湿の方式には、露点制御式(水中でバブルを発生させて環境温度の露点で湿度発生する)スチーム式(水をヒーターで加熱して沸騰させ、その蒸気を放出させる)、気化式(フィルターに水を含ませて、そのフィルターに空気を当てる事で水分を気化し、放出させる)、超音波式(超音波振動によって水を非常に細かな粒子にして放出させる)、ハイブリッド式(気化式がベースではあるが、ヒーターで熱した温風を吹き付け、気化を促進させ放出させる)、などがある。
一方、乾燥ガス発生機構に用いることができる除湿の方式には、コンプレッサー式(コンプレッサーで空気を冷却し、空気中の水分を液化させて回収し、水分が回収されて乾燥した空気を放出させる)、デシカント式(デシカントと呼ばれる吸湿剤を利用し、空気中の水分を吸着して除湿する)、ハイブリッド式(コンプレッサー式とデシカント式を組み合わせたもの)などがある。
乾湿ガス供給コントロールユニットは、湿潤ガス発生機構から発生した湿潤ガスおよび乾燥ガス発生機構から発生した乾燥ガスのそれぞれを、適切なタイミングで適切な量、密閉空間23aに供給するための機構である。乾湿ガス供給コントロールユニットに係る制御プログラムを記憶した制御装置50が、乾湿ガス供給コントロールユニットの構成要素のそれぞれと通信可能なように接続される。
乾湿ガス用温度調節機構は、後述するセンサーチップ用温度調節機構と同様で、必要に応じて適宜改変した実施形態とすることができる。たとえば、温度調節器、当該温度調節器に接続され、湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構のそれぞれに当接された温度調節ユニット(たとえばペルチェ素子および冷却ファン)および温度センサーにより、乾湿ガス用温度調節機構を構築することができる。
湿度センサー120としては、毛髪式、高分子抵抗式、高分子容量式、酸化アルミ容量式、アスマン通風式等の一般的な湿度測定方式を利用した、各種の温湿度計(乾湿計)を用いることができる。
排気機構130は、温湿度調節ユニット110から供給された後に不要となったガスをRIfS測定装置10の外部に排出する。排気機構130は、ファンや、必要に応じてガス中の水分の回収機構などを含む。排気機構130の排気能力は、密閉空間23aの容積などを考慮しながら適宜設定することができるが、たとえば0.1〜10mL/分の範囲で調整することができる。
測定環境調節機構の第3の実施形態として、RIfS装置10の内部に設置されたセンサーチップ21の周囲を、センサーチップをセットするセンサーチップセット部(ステージ)およびフローセルに被せるチップカバーに適切な構造を設けることによって、あるいはセンサーチップをRIfS装置10に着脱する際に開閉し、RIfS測定時に外部からの光を遮断する遮光カバーに適切な構造を設けることによって、密閉空間23a(チャンバー)を形成した上で、温湿度調節ユニット110から発生した温湿度が調節された気体を密閉空間23a(チャンバー)に導入するようにしてもよい。
上述した測定環境調節機構の第2および第3の実施形態において用いることのできる、外付けの調湿装置(湿度発生装置、露点計、湿度校正器、温湿度制御装置など)の例としては、Humilab(東陽テクニカ)、SRG-1R(神栄テクノロジー)、KTC-Z02A-S(コトヒラ工業)、GenRH-A、GenRH-T(Surface Measurement Systems Ltd.社製)、OVG-4、OHG-4(Owlstone co. ltd 社製)が挙げられる。
測定環境調節機構100により調節される湿度および/または温度の範囲は特に限定されるものではなく、分析の目的に応じて適宜設定することができるが、温湿度調節ユニット110は、湿度を0〜100%の範囲で、また温度を10〜60℃の範囲で、任意に設定できるものであることが好ましい。また、分析の目的に応じて、任意のパターンで湿度および/または温度を調節できるよう、温湿度調節ユニット110は、湿度であれば1%あたり1〜3600秒、たとえば15〜150秒の速度で、温度であれば1℃あたり1〜3600秒の速度、たとえば10秒〜120秒の速度で、湿度および/または温度を連続的に変化させることのできるものが好ましい。
さらに、分析の目的に応じて(たとえば水分子の運動を加速ないし制御するために)、密閉空間23aの圧力を減圧または加圧することもできる。そのために、制御装置50(制御プログラム)は、温湿度調節ユニット110によるガスの供給量および排気機構130によるガスの排出量のバランスを調節することにより、密閉空間23aの圧力を所望の値にする機能を有するものであってもよい。
また、密閉空間23aに供給される湿度および/または温度が調整されたガスには、空気のみでなく、窒素ガス、水素ガス等、測定目的に応じた種々の気体を用いることもできる。そのために、測定環境調節機構はさらに、温湿度調節ユニット110に窒素ガス、水素ガス等の空気以外のガスを供給する機構、たとえば、それらのガスを化学反応等により発生させる機構、またはボンベ(気体)ないしタンク(液体)からそれらのガスを導入する機構を有するものであってもよい。湿潤ガス発生機構および乾燥ガス発生機構は、空気と入れ替えて予め封入されたそれらのガスを用いて、所定の湿度および/または温度を有するガスを調製し、密閉空間23aに供給することができる。
(センサーチップ用温度調節手段)
測定システム1は必要に応じて、センサーチップ21(試料薄膜21c)自体をより直接的に加熱冷却するための、センサーチップ用温度調節手段を備えていてもよい。
この場合、RIfS測定装置1は、たとえば、温度調節器210、温度調節器210に接続され、センサーチップ21に当接された温度調節ユニット220および温度センサー230を含む、センサーチップ用温度調節機構200を備える。センサーチップ用温度調節機構200に係る制御プログラムを記憶した制御装置50は、温度調節器210と通信可能なように接続される。センサーチップ用温度調節手段によって制御されるセンサーチップ21の温度は、試料薄膜21c(特に測定領域A)や試薬塗布領域の温度とみなせる。
センサーチップ用温度調節手段により調節される温度の範囲は特に限定されるものではなく、分析の目的に応じて適宜設定することができる。たとえば、高温域における試料薄膜の分析が行えるよう、100〜200℃までの昇温に対応することができるものであってもよい。逆に、乾湿空気との温度差を生じさせやすいよう、−50〜−20℃までの降温に対応することができるものであってもよい。
目的に応じて温度を調節することができるようであれば、センサーチップ用温度調節手段は必ずしも温度を連続的に変化させることのできるものでなくてもよいが、任意のパターンで温度を調節できるよう、たとえば1℃あたり10〜3600秒の速度で温度を連続的に変化させることのできるものが好ましい。
温度調節器210は、温度センサー230によりセンサーチップ21の温度を計測し、温度調節ユニット220による加温又は冷却によって、センサーチップ21が設定された温度となるように温度制御を実行する。
温度調節器210は、温度調節ユニット220による加熱、冷却または温度維持を任意のパターンで自動的に行えるよう、電子回路(マイコン)によってプログラム制御されるものが好適である。プログラムを電子回路に記憶させるための入力手段、温度データの記録・出力手段、各種の情報を確認できる表示手段などは、コントロールパネル等として温度調節器210自体が備えていてもよいし、温度調節器210に接続された制御装置50がその機能を担うようにしてもよい。
温度調節ユニット220は、所望の温度を作り出すよう、加熱機能および冷却機能を有する部材、たとえばペルチェ素子および冷却ファンを組み合わせることで構成することができる。温度センサー230としては、たとえばサーミスタを用いることができる。温度調節ユニット220および温度センサー230は、分析の目的に応じた範囲の温度に対応したものを選択すればよい。
−分析方法−
本発明に係る、試料薄膜に対する水分子の挙動に関する分析方法は、分析対象センサーチップが置かれている雰囲気の湿度および/または温度を連続的または不連続的に上昇および/または下降させながら、RIfSにより当該試料薄膜の膜厚に関するデータを取得する工程(RIfS測定工程)を含むことを特徴とする。
なお、以下に説明するような本発明の分析方法は、前述したような本発明の測定システムを使用して実施することが好適であるが、本発明の分析方法を実施するための手段はそれに限定されるものではなく、他の手段によって実施される場合であっても本発明の分析方法の範囲に含まれる。
(測定工程)
測定工程では、表面に試料薄膜が形成されたセンサーチップ(分析対象センサーチップ)が置かれている雰囲気の温湿度を連続的または不連続的に変化(上昇および/または下降)させながら、RIfSにより当該試料薄膜の膜厚に関するデータを測定する。すなわち、測定工程では、温湿度の連続的または不連続的な変化と同調させて、所定の時間間隔で測定ステップが複数回繰り返される。RIfS測定装置を用いれば、1秒以下(例えば700ミリ秒)の間隔で測定することも可能である。
湿度を連続的に変化させる場合、隣接する2つの測定ステップにおける湿度の値の間隔は、比較的小さなものとなるよう適宜調整することができるが、通常は0.1〜10%であり、好ましくは0.1〜2%である。1つの測定工程に含まれる測定ステップの回数も適宜調整することができるが、通常は10回以上、好ましくは20回以上である。湿度が湿度調節手段によって自動的に変化していく場合には、測定ごとの湿度の間隔が上記のような範囲となるよう、タイミングを調節しながら自動的に測定ステップを行うようにシステムを制御することが好ましい。
一方、湿度を不連続的に変化させる場合は、所定の時間(たとえば試料薄膜に対する水分子の吸脱着が平衡に達するのに十分な時間)湿度を一定に保ってから測定を行い、その後ある間隔で(通常、前述した連続的に変化させる場合の間隔よりも大きく)離れた湿度に変化させて、再び所定の時間湿度を一定に保ってから測定を行うことを繰り返す。この場合も、隣接する2つの測定ステップにおける湿度の値の間隔や、1つの測定工程に含まれる測定ステップの回数は、適宜調整することができる。
また、必要に応じて、湿度を変化させる測定工程を異なる温度において複数回行ってもよい。たとえば、一つの測定対象センサーチップについて、第1の温度で、湿度を所定のパターンで変化させながら測定する(第1測定工程)、当該ステップ終了後に温度を変化(上昇または下降)させ、第2の温度で、再び同じ湿度のパターンで測定する(第2測定工程)、当該測定ステップ終了後にまた温度を変化させ、第3の温度で、再び同じ湿度のパターンで測定する(第3測定工程)・・・というように測定工程を繰り返してもよい。このような実施形態においては、湿度をあるパターンで連続的に変化させながら測定が行われている一つの測定工程の間は、基本的に温度は一定に固定される。逆に、温度を変化させる測定工程を異なる湿度において複数回行ってもよい。
一方、一つの測定工程内で温度と湿度の両方を変化させることもできる。たとえば、まず湿度を所定の値まで上昇させ、続いてその湿度を維持したまま温度を上昇させ、最後にその温度を維持したまま湿度を最初の値まで低下させる、というパターンで測定することも可能である。
湿度の調節(加湿または除湿)および温度の調節(加熱または冷却)は、任意の時間に任意の湿度および温度に調節できるよう、前述したような温湿度調節手段およびセンサーチップ用温度調節手段により行うことが好適である。
・湿度調節パターン
湿度調節パターン(横軸に時間、縦軸に湿度または温度をとったときのプロット)は、任意の範囲の温湿度で試料薄膜の膜厚に関するデータを連続的または不連続的に取得できるよう、温湿度の数値の間隔を空けすぎずに連続的または不連続的に変化させればよく、分析の目的に応じて様々なパターンを適用することができる。
温湿度の変化は、上昇または下降の一方のみからなるものであってもよいし、両方を含むものであってもよい。また、所定の範囲で湿度を変化させるサイクルが、1回ないし複数回(たとえば2〜100回)含まれていてもよい。上記のサイクルは、湿度または温度を先に上昇させてから湿度を下降させるパターンでも、先に下降させてから上昇させるパターンでもよい。
温湿度の変化速度(時間に対する湿度または温度の傾き)は、分析の目的に応じて適宜調整することができ、開始から終了までの間一定でもよいし、必要に応じて、途中で一回ないし複数回変化させてもよい。開始から終了までの間に温湿度が一定となる(上昇も下降もしない)時間が実質的に含まれないパターンでもよいし、必要に応じて、温湿度が一定となる任意の時間が一回ないし複数回含まれているパターン(湿度または温度が変化する時間と一定となる時間が規則的に繰り返される階段状のパターン)でもよい。たとえば、湿度の変化が速すぎると膜厚の変化が観察できない薄膜を分析対象とする場合に、階段状に湿度または温度を変化させることで適切な分析が行えるようになることがある。
温湿度の上昇および/または下降の速度は、分析の目的に応じて適宜調整することができるが、湿度であればたとえば1%あたり1〜3600秒の速度、温度であればたとえば1℃あたり1〜3600秒の速度とすることができる。たとえば、このときの湿度の速度(湿度を所定の範囲で変化させたときにかかった時間)に基づき、測定結果ら水分子の吸着速度または脱離速度を求めることができる。
さらに、図3に示すように、従来は初期の湿度を低くし、そこから湿度を上昇させるよう変化させるパターン(正調湿パターン)が一般的であったが、本発明では、初期の湿度を高くし、そこから湿度を低下させるよう変化させるパターン(逆調湿パターン)、あるいは逆調湿パターンと正調湿パターンが混合したパターン(正逆調湿パターン)としてもよい。温度についても同様である。逆調湿パターンおよび正逆調湿パターンは、たとえば親水性の高い材料(生体材料等)であって、乾燥させると変性するおそれのあるものを試験薄膜に用いる場合に有用である。
上記のような温湿度の変化は、一つのパターンの内部における変化であってもよいのと同様、複数のパターンの間での変化であってもよい。たとえば、第1のパターンでは第1の速度で湿度を変化させ、第2のパターンでは第2の速度で湿度を変化させるようにしたとき、それらのパターンの測定結果の対比から、湿度変化速度の違いによる分析試料薄膜および水分子の挙動の違いを分析することができる。
・試薬供給
試料薄膜に試薬を添加してその反応による影響を分析する場合には、適切なタイミングで試薬を添加するための操作を行えばよい。たとえば、ある試料薄膜(試薬添加前)に対して所定の温湿度の変化に関する測定を行った後、前述したような実施形態により試薬を密閉空間に噴霧する操作を行い、試薬と試料薄膜とを反応させ、続いてその試料薄膜(試薬添加後)に対して所定の温湿度の変化に関する測定を行うことができる。
・膜厚に関するデータ
「試料薄膜の膜厚に関するデータ」は、RIfSにおいては一般的に光路長を基準にしており、その取得方法は次の通りである。
まず、測定対象センサーチップについて、測定工程の各測定ステップにおいて分光器により得られる反射光の分光強度データを、基準となる白色光の分光強度データと対比し、波長ごとの反射率(=反射光の強度/白色光の強度)を算出する。白色光の分光強度データは、あらかじめ装置組み立て調整時に測定して記憶していたものでもよいし、適切な手段により(たとえば参照用反射板を用いて)測定の都度取得したものでもよい。
続いて、横軸に波長、縦軸に算出された反射率をプロットした反射スペクトルを作成し、反射率が極小となる波長(ボトム波長)、極大となる波長(ピーク波長)を決定する。反射スペクトルの波形は、膜厚が増えれば増えるほど凹凸が繰り返されるような不規則な形状を呈しており、ボトム波長とピーク波長を特定するのが困難な状態となっている場合があるが、たとえば、公知の手法を用いて反射スペクトルを高次関数で近似することにより、高次多項式からその解(極値)を求めて、これを極値の値とすることができる。
・膜厚算出方法
試料薄膜の光路長に関するデータは、分光器により得られる反射スペクトル(波長および光の強度)に基づいて、たとえば以下に述べるような(a)ボトムピーク法(Δλ等)、(b)cOPL法、(c)フーリエ解析法などにより、膜厚d、屈折率n、または光路長(=膜厚d×屈折率n)に換算することができる。いずれの算出方法を用いるにせよ、本測定データは各時点での試料薄膜と水の光路長を合算したものであり、本質的に2状態間の差分を水とするのではなく、水と薄膜の量(膜厚あるいは換算した重量として)を非破壊的に、絶対値としてリアルタイムに導出可能な方法である。膜厚算出の方式は特に限定されるものではなく、要求される精度に応じて適切なものを用いることができ、たとえばシミュレーションを用いる場合は、その精度の向上や実測値の補正により改良することが可能である。
なお、試料薄膜に保持されていない大気中の水分子は、光学的な界面の外側にあるため光路長の変化によって計測されず、試料薄膜の表面または内部に保持された水分子のみが、光路長の変化によって計測され、定量化することができる。光学的に説明すると、加湿時の屈折率は「エドレンの実験式」で求めることができるが、本発明の測定系においては乾燥空気と湿潤空気の屈折率の差が非常に小さいため無視できる。
(a)ボトムピーク法
ボトムピーク法は、従来のRIfSにおいて一般的に用いられている方法であり、Δλの値から所定の換算式により簡易的に測定対象薄膜の膜厚d等値を算出することも可能である。しかしながら、周期性を超える膜厚については膜厚の絶対値を求めることは容易ではない。
ここで、ボトムピーク法では、dの値によってΔλの換算の方式が相違する。λが400〜800nmの範囲にある場合、Δλの測定値そのものをdの算出に用いることができるのは、dが約100nm以下の場合に限られる。
dが約100nm以下の場合、dとΔλの関係における周期性を考慮する必要はない。このとき、Δλ/d=an+bという一次の近似式が成り立つ(aおよびbの値は測定条件によって変動する)。そこで、所定の測定条件下であらかじめdおよびnが既知のサンプルについてのΔλを何点か測定するか、またはそれをのシミュレーションを行うことより、nおよびΔλ/dのプロットからΔλ/d=an+bで表される回帰式を取得しておく。そして、同じ測定条件下で測定されたΔλをd=Δλ/(an+b)の換算式に当てはめる、換言すれば1/(an+b)を「膜厚換算係数」としてΔλに乗ずることで、dを算出することができる。ただし、このようなdの算出方法を適用することができるのは、nは既知で、試料薄膜に水が吸着しても変化しないとものとみなせる場合である。逆に、前記近似式より、n=(Δλ/d−b)/a=Δλ/da−b/aと求められるので、この換算式に測定されたΔλを当てはめることでnを算出することができる。ただし、このようなnの算出方法を適用することができるのは、dが既知で、試料薄膜に水が吸着しても変化しないとものとみなせる場合である。あるいは、Δλと光路長dnとの関係式を立てて、その式に測定されたΔλを当てはめることで、dおよびnの変化を一体的に反映するdnを算出することができるので、それを用いて試料の分析を行うようにしてもよい。
一方、dが約100nm以上の場合、dとΔλの関係における周期性を考慮する必要がある。したがって、測定されるλが何周期目に該当するのかという情報を別途(たとえば、試料薄膜の形成条件などから推定されるおおよその膜厚に基づき)取得し、それによって正しい膜厚を反映させるために加算すべきΔλ(加算Δλ値)を決定する必要がある。そして、測定されたΔλにその加算Δλ値を加えて得られる補正値を用いて、dが約100nm以下の場合についてと同様の方法で作成した換算式に基づき、dおよびnを個別に、または光路長dnとして、算出することができる。
周期性の境界は以下の様に定める。すなわち、(1)周期を決定する、(2)周期性と屈折率nを元に膜厚換算係数(係数×屈折率−調整項)を算出した後、Δλの値を当該膜厚換算係数で割って光路長を求める、(3)2周期目以降の場合は膜厚加算値を加算した値を膜厚値とする。膜厚の変異量も前記膜厚換算係数を用いて同様に計算する。物質そのものの膜厚値、変化量を見るためには、予めリファレンス(例えば修飾前のセンサーチップ)のλ値を引く必要があるが、周期が同一でない場合は測定値への影響は少ないので引く必要はない。
本発明では、一つの光学シミュレーションの結果として、水の屈折率を1.33としたとき、周期性がない場合(0周期)はd=Δλ/1.5、周期性がある場合(多周期)はd=Δλ/0.86の換算式を用いることができる。
(b)cOPL法(コニカミノルタ社製膜厚算出プログラム)
cOPL法(converted optical length)は、反射率曲線に表れる(複数の)極値の位置(数とボトムおよびピークの波長情報)に基づいて試料薄膜の光路長を算出する方法である。この方法では、光路長の変化、すなわち屈折率毎に膜厚を変化させた反射率曲線の(複数の)極値位置の波長シフトの関係を予めシミュレーションし、それを数学的に処理してテンプレートを作成しておく。そして、実測された反射率曲線の極値位置の波長をテンプレートに照らすと、近似的に分析対象センサーチップの光路長(L)が得られる。Lからリファレンスセンサーチップの光路長(L')を引けば、試料薄膜自体の光路長(ΔL)が求められる。このΔLは試料薄膜の光路長(=屈折率n×膜厚d)自体なので、その値を試料薄膜の屈折率nあるいは水の屈折率1.33を基に計算すると厚さdを直接的に算出することができる。光路長の解析を詳細に行うことで屈折率nと膜厚dの分離も原理的に可能である。cOPL法を用いた場合、水の膜厚の測定精度(分解能)は、高精度な分光器の場合、分子のシグナル/ノイズレベルからたとえば0.05nm程度であることが確認できている。cOPL法では前述のΔλと異なり、周期性を飛び越えても、絶対膜厚の算出が可能である。また、厚膜(概ね100nm以上)ではボトムあるいはピーク(極値と呼ぶ)が複数あるため、1個のピークしか追跡できないボトムピーク法よりもノイズに強く、測定精度は原理的に高精度である。水の吸脱着量の計算においては、例えば簡易的に任意の乾燥状態の膜厚をサンプル薄膜の膜厚として計算し、そこから更なる乾燥により水が蒸散、あるいは加湿により水が増加して行く膜厚を水分子として計算することで容易に計算できる。また、所定の湿度における光路長、あるいは調湿により変化して行く光路長から屈折率を最小二乗法により解析することにより、薄膜の膜厚と水の膜厚を独立してリアルタイムに算出することも可能である。
(c)フーリエ解析法
前記cOPL法同様に光路長の変化に対する反射率曲線の波形を予めシミュレーションし、それを数学的に処理してテンプレートを作成しておく。そして、実測された反射率曲線の波形をフーリエ解析し、前記テンプレートを参照して光路長を求めることができる。光路長の解析を詳細に行うことで屈折率nと膜厚dの分離も原理的に可能である。
・分析内容
本発明では、上述したような測定工程により得られたデータに基づき、試料薄膜に対する水分子の挙動、試料薄膜の各種の物性、その他の様々な項目について分析を行うことができる。本発明における分析内容は特に限定されるものではないが、たとえば以下のような項目について分析を行うことが可能である。それぞれの項目についての分析は、膜厚を基準として行うこともできるし、膜厚から算出可能な体積または質量を基準として行うこともできる。
(a)湿度を変化させることで、気体状の水分子の試料薄膜中への取り込みが、膜厚の変化として観察される。比較的薄い膜では表面への分子状態での水和が進行し、比較的厚い膜ではそのような膜表面への水和と、膜内部への水分子の取り込み、つまり膜の膨潤とが合わさったものになる。高湿度下で膜厚を測定することで水分子が飽和した膜厚(湿潤膜厚)または飽和水和量を求めることができる。低湿度下、たとえば真空中で脱気後に膜厚を測定することで、水分子のない膜厚(乾燥膜厚)を求めることができる。厚さの変化が観察されなければ、その試料は水分子を全くないしほとんど吸着、保持しないことが分かる。また、RIfS測定装置は極めて短い時間間隔(1秒以下)で膜厚を測定することができるので、各測定における膜厚変化量の差分を算出することにより、気体状水分子の吸脱着ダイナミクスを表現するプロットを作成することができる。
(b)湿度を連続的に変化させたときの測定結果から、各湿度におけるその試料の水分子の保持量や、保持量の変化量として表れる吸着量(プラスの変化量)または脱離量(マイナスの変化量)を定量的に測定することができる。測定結果から換算された水の膜厚に測定面積(例えば0.126mm2)を乗じることで当該領域中の水分子の体積が求まり、その体積に水の比重(つまり1)を乗じれば水分子の質量が求まり、その質量を水の質量数18で除すれば水分子の物質量(mol)が求まる。後記実施例に示すように、水の膜厚の分解能は例えば0.05nmであり、この場合水分子の質量の分解能は6.3pgとなる。また、試料薄膜の厚さが比較的膜厚い場合は、水の膜厚を試料薄膜の膜厚で除することにより、体積基準の含水率(vol%)等を求めることが可能である。一方、試料薄膜の比重が既知で、試料薄膜について膜厚×測定面積×比重からその質量が求められれば、水の膜厚を試料薄膜の質量で除することにより、質量基準の含水率(wt%)を求めることが可能である。
(c)ある試料薄膜について、いくつかの異なる膜厚における水分子の保持量、吸着量、脱離量等の値を対比することにより、膜厚効果(たとえば膜内部への水の浸透の程度)を観察できる。
(d)ある試料薄膜について、いくつかの異なる湿度変化速度における水分子の保持量、吸着量、離脱量等の値を比較することにより、湿度変化速度の違いによる水分子の挙動を観察できる。たとえば、湿度変化速度が速いとき(短時間で湿度を一定量変化させたとき)の湿度の上限値における水分子の保持量よりも、湿度変化速度が遅いとき(長時間かけて湿度を一定量変化させたとき)の湿度の上限値における水分子の保持量が高ければ、後者の保持量の方が真の水分子の飽和量に近い(平衡水和率に近い)、一方前者は飽和(平衡水和率)に達していない、と考えることができる。また、水分子の保持量が平衡に達するまでの時間(平衡時間)や、ある湿度において水の吸脱着が平衡した状態にあるときの膜厚(平衡膜厚)または膜厚基準の含水率(平衡含水率)などを、シミュレーション曲線または計算式を用いて予測することが可能となる。例えば、平衡時間に関するシミュレーション曲線および計算式は、横軸に調湿時間(湿度範囲の一端からもう一端に至るまでに要した時間)、縦軸に平均膜厚差(ある調湿時間における膜厚差の平均値)をとって測定結果をプロットすることにより求められる。そのシミュレーション曲線または計算式において平均膜厚差が0になる調湿時間が、連続的な水和が最も安定的に進む調湿時間と予測できる。一方で、横軸に調湿時間、縦軸に膜厚または膜厚基準をとって測定結果をプロットしたとき、予測された平衡時間における膜厚または膜厚基準の含水率が平衡膜厚または平衡含水率であると予測できる。
(e)水分子の吸着量または脱離量を、そのときの湿度の変化にかかった時間で除算すれば、その試料への水分子の吸着速度および脱離速度を求めることができる。たとえば、水分子の吸着速度とそのときの湿度を対比することにより、構造化水が形成されるために水吸着が遅くなっているのか、または自由水が吸着するために水吸着が早くなっているのか等を推測することができる。つまり、水分子の吸着速度および脱離速度(水和速度)の違いから水和構造についての分析(解析)をさらに行うことができる。たとえば、縦軸に膜厚等の変化量、横軸に湿度をとったグラフにおいて、直線の傾き(または曲線の接線)が吸脱着速度を表すが、その変曲点において水和構造が大きく変化していると考えられる。RIfSによりリアルタイムで測定を行うことによってこのような解析が可能となる。
(f)加湿および除湿によるサイクルを行ったとき、除湿後の低湿度下で加湿前の初期膜厚に戻る場合は、水和と脱水のバランスが取れていると評価することができる。一方、水和性の強い材料では、水分子が入りやすく出にくいため、除湿後の膜厚は初期膜厚よりも大きくなる。疎水性の強い材料では、入り込んだ水が広がっていて出やすいため、あるいは濡れ性等の水和に対するバリヤーがあるため、除湿後の膜厚は初期膜厚よりも小さくなる。これらの挙動は、プロットの除湿時の傾き/加湿時の傾きが1(加湿時と除湿時の傾きが同じ)か、1より小さい(除湿時の傾きが加湿時の傾きがより小さい)か、1より大きい(除湿時の傾きが加湿時の傾きがより大きい)か、ということに置き換えられる。
(g)ある試料薄膜について、いくつかの異なる温度における水分子の保持量、吸着量、脱離量等の値を対比することにより、異なる温度における水和挙動の違いを観察できる。さらに、測定環境調節機構によるガスの温度及び湿度の調節と、センサーチップ用温度調節機構による試料薄膜の温度の調節を通じて、温度と湿度を協調的に変化させて、高温高湿から低温低湿における気体状水分子の吸着ないし結露の様子を観察することにより、防曇性を評価することができる。
(h)水分子の吸脱着、すなわち湿度変化(加湿および除湿)のサイクルを複数回繰り返すこと(マルチサイクル)により、試料薄膜の湿度に対するヒステリシス、劣化状況、あるいは繰り返しによる水分子保持量の変化等を評価することができる。
(i)湿度および温度の組み合わせを3点以上変化させて測定することにより、試料の熱応答性および水和性の両方(環境耐性、環境順応性)を評価することができる。
(j)生体材料(骨、(人工)皮膚等)を試料とした場合、水分子の保持量、吸着量、離脱量等の測定値から、保湿性などを定量的に評価することができる。たとえば、化粧水の効果を推定することができる。
(k)ポリマー材料(天然、合成)を試料とした場合、水分子の保持量、吸着量、離脱量等の測定値から、水分保持能などを定量的に評価することができる。たとえば、電池のセパレータの通水能力を測定することができる。
(l)乾燥した材料について、湿度を上昇させながら得られたデータからは、水和性の挙動(物質が十分に水和するための水分子の量)を知ることができる。逆に、タンパク質のように水分子を保持した試料について、最初に湿度を高い状態に保っておき、湿度を低下させながら得られたデータからは、乾燥に伴う挙動を知ることができる。たとえば、タンパク質は乾燥させたときに変性しやすく、湿度を上昇させたときにタンパク質の乾燥品の水和がスムースに行かない場合、乾燥によるヒステリシスが起きていると推測することができる。
(m)湿度を上げていくと、水中の挙動に近づくことが分かっており、材料の親水性によりクリティカルな湿度が異なる。たとえば、タンパク質が水中(塩分)で集合して生体中での構造をとるのに必要な水分子の量を定量することができる。
(n)薬剤等を試料とした場合は、湿度を上昇させながら得られたデータから、薬剤の生体への浸透性(分子レベルの濡れ性)を推測することが可能である。従来、接触角を指標として評価されていた濡れ性は、分子レベルの水和性との定量的な関係性はないと考えられるが、本発明によれば水和性を分子レベルで定量化できる。
(o)モデル細胞膜を固着し、湿度を変化させながら測定を行うことによって水分子の取り込みやすさを評価することが可能である。モデル細胞膜としては、たとえば生体から採取した細胞膜画分や、合成したリン脂質二重層を用いることができる。後者はリン脂質二重層中に存在する、水分子を選択的に通過せるアクアポリンなどの膜タンパク質を含むので、アクアポリンの水取り込み速度、ひいてはアクアポリンの機構解明、正常・異常の判定、アクアポリン由来の各種疾患の罹患の危険性を予測できる可能性がある。後者は、異種リン脂質の配合比の評価を、水分固着量で定量化することが可能である。
(p)各種の薄膜の撥水性、親水性を分子レベルで定量的に評価することができる。また、基材に表面処理剤または塗料を塗布したときの水分子の吸着量を測定すれば、耐久性の初期レベルがわかる。
(q)多孔質素材で形成された薄膜(層)への水分吸着量から、空隙率を測定することができる。水は比重が1だから質量に換算することも容易である。また、湿度に対する水分子の吸着、脱離の追随性もわかる。
−実施例群1:実施例1〜7−
実施例1〜7において、RIfS装置としては反射型RIfS方式の分子間相互作用測定装置「MI−Affinity」(登録商標、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社)を使用し、無修飾センサーチップ(ベア基板)として、上記「MI−Affinity」専用のセンサーチップ(Si,厚さ1mm/SiN,厚さ66nm)を使用した。温湿度調整装置としては、ESPEC社製恒温槽PDR-3KTと専用調湿制御装置を用い、この恒温槽内に前記RIfS装置を設置した。調湿プログラムは、25℃において、まず15%(RH:相対湿度)で15分保持し、続いて15%(RH)から60%(RH)までの加湿を30分で行い、60%(RH)で15分保持後、60%(RH)から15%(RH)までの除湿を30分行い、最後に15%(RH)で15分保持するよう設定した。膜厚算出プログラムとしては、ボトムピーク法のΔλ(ボトム波長)を測定し、換算式により膜厚換算を行った。
(分析対象センサーチップの作製)
表1に示した試料、成膜方法および基板を用いて分析対象センサーチップNo.1〜23を作成した。
(a)スピンコーターによる塗布(分析対象センサーチップNo.2、3、14〜20、22)
無修飾のセンサーチップ上に、表2に示した条件に従って、各種材料をスピンコーターにより3000rpmで塗布し、加熱乾燥して分析対象センサーチップを作製した。
(b)シランカップリング剤による処理(分析対象センサーチップNo.4〜7)
95%エタノール水溶液10mLに表3に示す薬剤を各100μL添加し、室温で1時間攪拌した。得られたシランカップリング剤の中に、無修飾のセンサーチップを室温で1時間浸漬して反応させた。センサーチップを引き上げ、エタノール、超純水で順次洗浄後、窒素ブローにより乾燥させ、乾熱機にて80℃、1時間脱水縮合させることにより、分析対象センサーチップNo.4〜7を作製した。
(c)アミノ基基板を用いたカップリング固着(分析対象センサーチップNo.8〜11、21)
(c−1:アミノ化センサーチップの調製)
95%エタノール水溶液10mLに3-Aminopropyltrimethoxysilaneを100μL添加し、室温で1時間攪拌した。得られたシランカップリング剤の中に、無修飾のセンサーチップを室温で1時間浸漬しシランカップリング剤を反応させた。センサーチップを引き上げ、エタノール、超純水で順次洗浄後、窒素ブローにより乾燥させ、乾熱機にて80℃、1時間脱水縮合させることにより、アミノ化センサーチップ(アミノ基基板)を作製した。
(c−2:アミノ化センサーチップへの固着)
NHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)とWSC(水溶性カルボジイミド)とを、それぞれ50mMおよび200mMの濃度で含有する水溶液を25mM MESバッファー(pH5.0)を用いて調製した。得られた水溶液に、表4に示した各試薬を10mM(濃度5wt%)となるよう添加し、30分間撹拌後、前記アミノ化センサーチップを室温で20分間、攪拌しながら浸漬した。その後、センサーチップを引き上げ、超純水で洗浄した。化学結合に利用されていない活性エステルを加水分解するために1/10規定の苛性ソーダ水溶液中に前記反応後のセンサーチップを10分間浸漬した。希塩酸で中和後、更に超純水洗浄、乾燥を行い、目的とする分析対象センサーチップを得た。
(d)流路中で固着(分析対象センサーチップNo.12、13)
(d−1:ニュートラアビジン)
MI-AffinityにPDMS製の専用フローセルをセットし、PBSバッファーをランニングしている中に、ニュートラアビジン(NeutrAvidin)100μg/mlを100μlインジェクターから注入した。20μl/min.で10分送液後、窒素ガスを噴射して表面に付いた水を切って、直ぐに測定に用いた。
(d−2:細胞膜画分)
MI-AffinityにPDMS製の専用フローセルをセットし、PBSバッファーをランニングしている中に、膜画分100μg/mlを100μlインジェクターから注入した。20μl/min.で膜画分送液中にポンプを停止して1時間放置して基板に固着させた。窒素ガスを噴射して表面に付いた水を切って、直ぐに測定に用いた。
(水分子の定量化)
前記調湿プログラムに従って湿度を連続的に変化させながらRIfS測定を行い、その測定値に基づいて水分子の膜厚等を算出した。結果を表5に示す。水分子の膜厚は、60%(RH)と15%(RH)のΔλの差分を、水の屈折率に基づく換算係数(周期性有りまたは無しに応じたもの)で除算して求めた。リアルタイム計測なので、任意の湿度%の水分子の量を求めることができる。得られた水分子の膜厚を材料膜厚で除算を行い比較することも有益である。また、加湿と除湿の違いによる挙動も材料と水との相互作用を解析する上で重要である。
また、前記調湿プログラムに従って湿度を連続的に変化させながらRIfS測定を行ったときの、測定結果のグラフを図4〜31に示す。以下、これらの測定結果のグラフについて考察した。
[実施例1]No.1-7(ベア基板、超薄膜の濡れ性、水和性、親水性、疎水性、撥水性評価)
リファレンスとしてベア基板(No.1:図4)の水分子吸着を測定した。結露条件ではないため、本来は水分子の吸着は起きないはずだが、相対湿度が上昇するにつれて、水分子の吸着と見られるΔλの上昇がみられた。センサーチップのSiNが酸化されて一部SiO2になった可能性がある。撥水性のフッ素コート(No.2:図5、No.4:図7)を行うことで、前記ベア基板で見られた水分子吸着が抑制されることを確認した。厚みのあるNo.2の方が、分子レベルの薄膜であるNo.4よりも撥水効果が高いことも分かる。疎水性のアルキル基を有するNo.5(図8)も水分子吸着を抑制した。この結果から、本発明の方法により水和性だけでなく分子レベルの疎水性、撥水性評価も可能であることを示唆している。一方、No.3(図6)の親水性表面改質剤では、疎水性材料の20〜40倍の水を吸収している。No.6(図9)およびNo.7(図10)の親水化表面改質剤では、疎水性表面改質剤よりも水分子吸着量が増えているが、No.3程ではない。以上、厚みがほとんどなく、水による膨潤がほぼない被膜においても、水分の影響が高精度に測れていることから、従来の機器では測定できなかった、被膜表面に分子レベルで水和が起こる現象を定量化できていると考えられる。
[実施例2]No.8-14(生体関連物質の水和、吸湿性評価)
No.8(図11)、No.9(図12)、No.10(図13)のCMDは比較的水和性が高く、置換度(カルボキシル基の導入量)の低いNo.9が水和能力としては一番低いことが確認できた。No.11(図14)のBSAは、CMDよりも水和量が大きいが、加湿と除湿で大きく挙動が異なっており、加湿時の水和が起きにくいことが示唆された。BSAが大気中に長期間放置されたサンプルだったので変質が起こったと考えられる。No.12(図15)のニュートラアビジンとNo.13(図16)の細胞膜画分は水和量が非常に大きく、かつ特にNo.13は加湿で水分子が入りやすく、除湿では出にくくなっている。これは、材料の水和性が高いために膜への水の吸収速度が放出速度に勝っていることを示唆している。No.14(図17)のリン脂質膜は、膜の薄さの割に非常に大きい親水性を示しており、リン脂質二重層を形成していることが示唆された。
[実施例3]No.12(ニュートラアビジンの乾燥評価)
実施例2で用いたニュートラアビジン(No.12)を12時間大気中に放置後、水吸着性の再測定を行った(加湿2、除湿2)。図27から明らかなように、放置後の加湿2では、乾燥しているため、水和速度が遅くなっているが、除湿2のサイクルでは放置前と同様になっており、高湿度下で元に戻ったと考えられる。このような測定で、各種材料の乾燥評価が可能なことを示している。
[実施例4]No.15-22(疎水性のPS、含水率2%のPMMA、水和挙動の違い)
ポリスチレン(No.15:図18、No.16:図19、No.17:図20)では膜厚が小さい方が水和による変化が大きい結果であった。特にNo.15のPS1は、加湿時に水分子が膜に吸着しにくく、除湿時に水分子が出やすい結果であった。一方、親水性がより高いポリメタクリル酸メチル(No.18:図21、No.19:図22、No.20:図23)では膜厚が高い方が水分子の吸着が大きい結果であった。水溶性のアクリル酸(No.21:図24)と表面がカチオン性で水和性が強い「ハイドランCP7610」(No.22:図25)はいずれも水和性が高いものの、乾燥下に長時間置かれたため、加湿時に水分子が入りにくく、除湿時は出やすい傾向であった。複数の加湿サイクルを行えば、加湿と除湿の関係は徐々に逆転すると考えられる。
[実施例5](ポリマーの膜厚違いの評価)
ポリマーの膜厚違いの挙動を見ると、膜厚に対する水分子の吸着比(水膜厚/試料膜厚、%)はポリスチレンも、ポリメタクリル酸メチルも薄い方が高いことが分かる(表5)。このことは、膜厚が増えるに従って水和の効率が下がることを示唆している。また、図28および29に示されているように、ポリスチレンでは、膜厚が薄い時ほど水和性の絶対量が高いのに対し、ポリメタクリル酸メチルでは逆になっており、ポリマーの疎水性の程度に由来するものと考えられる。
[実施例6](PMMA熱応答と水和定量の組合せ)
ポリメタクリル酸メチル(PMMA3: No.20)について、湿度を変化させながら10%、30%、50%において各30分間同一温度で保持する調湿プログラムを組んだ。これらの湿度10%、30%、50%それぞれに同期させて、1℃当たり15秒で10℃から40℃まで基板を昇温させる熱応答プログラムを走らせた。結果を図30に示す。湿度10%で測定することで、物質に対する熱のみの影響を測定し、湿度10%に対して30%、50%の測定を参照することで湿度の影響が定量的に分離できる。熱と水分の影響を一度の測定で行い、それぞれの因子を分離可能な優れた測定方法であることが分かる。
[実施例7](SiO2の評価、温度違い、およびベア基板のSiO2含有量の推定)
SiO2(No.23)については加湿のみを行った。図26に示す結果から分かるように、温度を高くすることで、相対湿度が同じでも絶対水分量(絶対湿度)が高いため、湿度に対するΔλは同じ傾向で、かつ全体が持ち上がっている。本サンプルはSiO2100%になることから、No.1の部分的にSiO2になったベア基板と絶対値で比較するとSiO2含有量が約50%と推定できる。
−実施例群2:実施例8〜12−
実施例8〜12において、RIfS装置としては反射型RIfS方式の分子間相互作用測定装置「MI−Affinity」(登録商標、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社)を使用し、無修飾センサーチップ(ベア基板)として、上記「MI−Affinity」専用のセンサーチップ(Si,厚さ1mm/SiN,厚さ66nm)を使用した。小型の温湿度調整装置としては、「GenRH-A」(英国Surface Measurement Systems社製)を用いた。下記のようにして作製した分析対象センサーチップに、図32に示す形状の部材を重ね合わせてガス流路を構築し、「MI−Affinity」のセンサー部に設置した。このガス流路に上記装置および「MI−Affinity」を連結し、上記装置から発生する調湿ガスを測定領域の試料薄膜に供給した。調湿制御をリアルタイムに自動で行うための制御ソフトウェアとして、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)パッケージソフトウェアであるSpecView(米国SpecView Corporation社製)を用いて、加湿と除湿を連続的にPID制御するプログラムを作成した。PID制御に用いる湿度計はGenRH-A内蔵された湿度計のデータを用いた。膜厚算出ソフトウェアとしてはcOPL(コニカミノルタ社製)を用いて2層(下層に薄膜サンプル、上層に水分子)モデルを作成して、絶対膜厚を算出した。
(分析対象センサーチップの作製)
表6に示したサンプルを含む塗布液を調製し、スピンコーターを用いてスロープ(SL)5秒、1000rpm−60秒の条件で無修飾センサーチップの表面に塗布して、各サンプルからなる試料薄膜が表面に形成された分析対象センサーチップNo.24〜29を作製した。これらの分析対象センサーチップはそれぞれ複数枚作製した。分析対象センサーチップNo.27およびNo.28は、膜厚の異なる2種類を作製した。
[実施例8]
分析対象センサーチップNo.25(サンプルとしてCMD:カルボキシメチルデキストランを塗布)を用いてRIfSの測定を行った。MI-Affinityの温調は25℃に設定した。湿度制御は100ml/min.の流量で、図33に示したように10RH%の低湿度で10分、300RH%/hr.の調湿変化速度で連続的に80RH%の高湿度まで持って行き、10分間80RH%の高湿度下で保持し、その後300RH%/hr.の調湿変化速度で連続的に10RH%の低湿度まで持って行き、更に10分間10RH%の低湿度下で保持するものである。
(1)CMD膜の屈折率を1.45としたとき、最も乾燥した状態での膜厚は343.55nmと算出された。10RH%から80RH%まで湿度を変化させた際の水吸着量による膜厚増加量(水吸着膜厚)は51.16nmであった。80RH%の湿潤した状態における、膜厚基準の含水率は12.96%であることを定量計算できる。一方、測定領域の面積(光ファイバーの断面積、0.126mm2)を膜厚に乗ずることで、膜厚を体積に、さらに質量に換算することができる。前記水吸着膜厚から、測定領域に6.43ngの水が吸着したことが分かる。また、CMDの比重は1.05なので、湿潤膜厚を重量換算すると52.08ngとなり、重量基準の含水率としては12.34%であることが分かる。本発明により、非常に微量のサンプルを用いて、任意の設定湿度が短時間で変化する実技系で水の吸脱着現象が定量化可能であることが分かる。
(2)1秒以下程度の時間間隔で膜厚変化量(d)を測定し、その差分(Δd)を計算することで、水の吸脱着ダイナミクス(図34参照)が表現できる。例えば、分子レベルの極微量の水を短時間の変化量で計算し直すと、通常の測定では解析不可能な、水の動的平衡分析が可能である。Δdにおいて、プラスは吸着量でマイナスは脱着量を表し、吸着初期は10RH%でバランスが取れているが、湿度が上昇するにつれて徐々に吸着量が増えて行く現象が定量化可能であることが分かる。
(3)設定条件下(10RH%、100ml/min.)における平衡状態の予測
前記調湿速度では10-80RH%の範囲内で完全に安定な湿潤状態が形成されていないので、10RH%および80RH%における時間と膜厚のグラフ(表8および図35参照)から任意のシミュレーション曲線を作成し、計算式を求めることにより、最適な調湿条件を求めることができる。また、該計算式を用いれば、試料薄膜の安定な乾燥状態または湿潤状態における水吸着量の定量化も可能である。本サンプルでの水吸着膜厚は51.16nmであったが、安定な調湿条件で測定すると67.75nmであると予測できる。
[実施例9]
分析対象センサーチップNo.26(サンプルとして超親水性材料であるフレッセラRを塗布)を用いてRIfSの測定を行った。この薄膜サンプルを10RH%の低湿度で10分保持後、300RH%/hr.の調湿変化速度で連続的に80RH%の高湿度まで変化させて、10分間80RH%の高湿度下で保持し、その後300RH%/hr.の調湿変化速度で連続的に10RH%の低湿度まで持って行き、更に10分間10RH%の低湿度下で保持させた(a)。同一の薄膜サンプルを用いて、前記調湿パターンにおいて全ての連続調湿速度を100RH%/hr.に変化させた以外は全く同様にして測定を行った(b)。同一の薄膜サンプルを用いて、前記調湿パターンにおいて全ての連続調湿速度を50RH%/hr.に変化させた以外は全く同様にして測定を行った(c)。10-80RH%の測定における所要時間は、(a)14分、(b)42分、(c)84分である。結果を表9に示す。
調湿時間を変化させた(a)、(b)、(c)を比較すると(図36参照)、調湿時間が短いと、含水率が大きく、かつ吸脱着曲線が非対称であり(非対称性は(a)>(b)>(c))、水の取込が不安定な状態で進行していることが分かる。一方、長時間調湿(c)では、対称性が向上しており水が安定状態で取りこまれていることが分かる。
また、サンプル(c)について計算式から変曲点の交点を求めると湿度63RH%にあることが分かる(図37参照)。
調湿時間変化を行うことで、水吸脱着の平衡に達する時間を吸着、脱着の数値から決めることができる。例えば、平均吸着膜厚、平均脱着膜厚を求めてその差分を取り、時間と差分が0になる時間を求めることで連続的な水和が最安定に到達する調湿速度を求めることができる。ここでは、表10および図38に示すように、(a)、(b)、(c)のサンプルの近似式を導出して、0になる時間を求めたところ107分であったので、このサンプルにおいては10-80RH%の変化を107分で行えば、最安定な水和条件になることが推定できる。また、その時間に平衡に達した際の膜厚基準含水率は7.44%であることが計算可能である。
水の吸着時に調湿速度を変化させたときの吸着速度を表10にまとめた。低湿度では水が吸着しにくく、高湿度では水が吸着しやすいことが分かる。このことは、低湿度下では水と物質との相互作用が強いため、例えば構造化水形成で水吸着が遅いことを表している。一方、高湿度下では、それ以外の水吸着、例えば自由水の様に相互作用の低い水であることが示唆される。
[実施例10]
1mg/mlのNeutrAvidin−PBS溶液中に前記無修飾センサーチップ2枚を10秒間浸漬した後、水洗いして、サンプルとしてNeutrAvidinが表面に非特異的に吸着した分析対象センサーチップを作製した。1枚は正常サンプルとし、洗浄後乾燥による変性が起きないように80RH%で10分間保持し、80RH%から10RH%の調湿変化を行った。更に80RH%で10分保持後10RH%から80RH%の調湿変化、80RH%で10分間保持した。もう1枚は変性サンプルとし、70℃で水を蒸発させ、同温で3時間保持した後、再度水に1時間浸漬してから、前記調湿測定を行った。結果を表11および図39に示す。正常サンプルではスムースな水和変化が見られるが、乾燥保存された変性サンプルでは部分的に水和がスムースにいかない領域があり、結果的に顕著なヒステリシスが観測された。また、変性サンプルの方が正常サンプルよりも含水率が著しく多く、タンパクの立体構造がばらけて、水和領域が正常サンプルより多く表面に出てきたことが示唆される。
[実施例11]
分析対象センサーチップNo.27(サンプルとして疎水性合成ポリマーであるポリメチルメタクリレート(PMMA)を塗布)および分析対象センサーチップNo.28(サンプルとして同じくポリスチレン(PS)を塗布)を用いてRIfSの測定を行った。これらの疎水性合成ポリマーについては、大気圧下で安定な含水状態にするのに半年かかるとのデータもあるが、本実施例では調整直後の含水率を測定した。結果を表12および図40に示す。本実施例の結果によると、PSの含水率は膜厚基準、質量基準どちらとも0.1%以下と、水和量が圧倒的に少なく、この結果からPSの疎水性の程度が明確になった。一方、質量基準含水率が1%前後と考えられるPMMAでは、膜厚あたりの水和量はPSに比較して圧倒的に大きく、疎水性ポリマー間の親水的な程度を膜厚基準の含水率として高精度に数値化できた。
[実施例12]
分析対象チップNo.24(サンプルとしてデキストランを塗布)およびNo.25(サンプルとしてCMDを塗布)を用いてRIfSの測定を行った。デキストランとCMDは基本構造が同じ水和性材料(多糖類)である。水和性材料については、初期に乾燥状態を経ることでしばしば不可逆的な変化を起こし得るため、高湿状態から低湿状態に調湿を行う逆調湿パターンを考案したが、乾燥状態を経て水和構造が復元するか否かを見るために調湿パターンを80RH%で10分、80RH%から10RH%に300RH%/hr.の速度で変化、10RH%で10分、10RH%から80RH%に300RH%/hr.の速度で調湿パターンを考案した。結果を表13および図41に示す。膜厚基準含水率は基本構造が同じ糖鎖構造を持つこともあり、大差のない結果であった。CMDにおいては、乾燥状態を経ても10RH%から80RH%に調湿を行うことで素早く水和が進行するのに対し、デキストランでは乾燥状態を経た後、水和による膜厚が元に戻らず、不可逆的な膜の劣化を起こした可能性がある。このような調湿パターンを用いることにより、水和の復元性、水和の速さを測定可能であることが分かる。
また、図42に示すダイナミクスを比較すると、CMDでは水の脱着と吸着で形状の似通った吸脱着が進行しているのに対し、デキストランでは水脱着の膜厚低下が様々な頻度で起きており膜厚差分の分布が非常に大きい。一方その後の水吸着の膜厚差分の分布は非常に狭く秩序だって水が吸着している様が分かる。
[実施例13]
分析対象センサーチップNo.26(サンプルとして超親水性材料であるフレッセラRを塗布)を用いてRIfSの測定を行った。超親水性で、かつ防染性を有する材料が表面処理剤として注目を浴びている。室内と室外、息がかかった場合の様に環境温湿度が急速に変化した際に微小なレベルで結露して失透する現象が大きな課題となっており、性能指標として防曇性が着目されているが、科学的な測定手法が確立していない。防曇性に関しては、高温高湿から低温低湿の変化で顕著に起こるのでMI-Affinityのプログラム温調機能を利用して、温度と湿度の関係性を多面的に評価した。調湿温度とサンプル表面の温度差が5℃および10℃の2通りについて測定した。
(1)調湿温度30℃、サンプル表面温度25℃(温度差5℃)
密閉空間(調湿ガス)の温度を30℃、サンプル表面(センサーチップ)の温度を25℃に調節した測定系で、湿度を10RH%、80RH%および10RH%の順に変化させたプログラム調湿を行った。結果を図43に示す。フレッセラRでは、5℃の温度差で、湿度80RH%近辺に結露(曇点)するポイントがあり、途中から水滴になって測定範囲から外れる(大きな水滴は測定不能)様子が観察できた。
(2)調湿温度30℃、サンプル表面温度20℃(温度差10℃)
密閉空間(調湿ガス)の温度を30℃、サンプル表面(センサーチップ)の温度を20℃に調節した測定系で、湿度を10RH%、80RH%および10RH%の順に変化させたプログラム調湿を行った。結果を図44に示す。湿度60%までは、通常の水吸着が見られるが、それ以降は結露のため測定不能となった。温度差5℃の時よりも明らかに低湿度で結露が発生していると思われる。
1 測定システム
10 RifS測定装置
11 白色光源
12 分光器
13 測定プローブ
13a 第一の光ファイバ
13b 第二の光ファイバ
21 センサーチップ
21a 基板(Si)
21b 光学薄膜(SiN)
21c 試料薄膜(試料)
23 密閉空間形成部材
23a(破線) 密閉空間
23b 開口(ガス流入口)
23c 開口(ガス排出口)
23d 開口(試薬供給口)
A 測定領域
50 制御装置
60 接続手段
100 測定環境調節機構
110 温湿度調節ユニット
120 温湿度センサー
130 排気機構
140a 第一のガス流路
140b 第二のガス流路
150 水分トラップ機構
190 筐体(調湿ボックス)
200 センサーチップ用温度調節機構
210 温度調節器
220 温度調節ユニット
230 温度センサー
300 試薬供給機構

Claims (15)

  1. 測定基板の表面に形成された被膜形成性の固体もしくは液体から形成された試料薄膜が置かれている雰囲気の湿度を1%あたり1〜3600秒の速度で連続的に変化させながら、RIfS(反射干渉分光法)により当該試料薄膜の膜厚に関するデータを測定する工程(測定工程)を含むことを特徴とする、試料薄膜に対する水分子の挙動に関する分析方法であって、
    前記測定工程において、前記雰囲気の温度または前記試料薄膜の温度を一定に保持したまま、または変化させて前記データを測定する、分析方法。
  2. 前記測定工程において、湿度の値の間隔が0.1〜10%である、10回以上の測定ステップが行われる、請求項1に記載の分析方法。
  3. 前記測定工程において、湿度の変化が1〜100サイクル繰り返される、請求項1または2に記載の分析方法。
  4. 前記測定工程において、初期の湿度を高くし、そこから湿度を低下させるように変化させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の分析方法。
  5. 前記測定工程が、前記雰囲気の湿度の変化速度が異なる条件下で、複数回行われる、請求項1〜のいずれか一項に記載の分析方法。
  6. 前記測定工程が、前記雰囲気の温度または前記試料薄膜の温度が異なる条件下で、複数回行われる、請求項1〜のいずれか一項に記載の分析方法。
  7. 前記試料薄膜が、被膜形成性の固体もしくは液体により形成される薄膜;測定基板の表面に固着可能な固体、液体もしくは気体により形成される薄膜;または測定基板上に形成された密閉空間内に溶解もしくは浮遊する物質により形成される薄膜である、請求項1〜のいずれか一項に記載の分析方法。
  8. 前記試料薄膜の厚さが1nm〜100μmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の分析方法。
  9. 前記測定工程により得られたデータに基づいて、水分子の吸脱着量および吸脱着速度、水分子の吸脱着ダイナミクス、試料薄膜の飽和水和量、平衡時間、平衡膜厚および平衡含水率、分子レベルの微小な面積の濡れ性、環境(温度、湿度の変化)の違いやストレスをかけた前後での物質の水和性の違い、水分子の吸脱着(加湿と除湿)に由来するヒステリシス、水和速度の違い、および水和構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの項目について分析する工程を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の分析方法。
  10. 前記平衡時間、平衡膜厚もしくは平衡含水率についての分析を、シミュレーション曲線または計算式に基づいて行う、請求項に記載の分析方法。
  11. 前記水分子の吸脱着量または吸脱着速度についての分析を、前記測定工程により得られた試料薄膜の膜厚に関するデータから算出された、試料薄膜に吸脱着した水分子の体積または質量に基づいて行う、請求項に記載の分析方法。
  12. 前記水和構造についての分析を、膜厚変化量−湿度曲線の変曲点に基づいて行う、請求項に記載の分析方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載された分析方法に用いられるRIfS用の測定システムであって、
    測定基板の表面に形成された試料薄膜が置かれている雰囲気の湿度を連続的に変化させる湿度調節手段を備えることを特徴とする、RIfS用の測定システム。
  14. さらに、前記雰囲気の温度または前記試料薄膜の温度を変化させる温度調節手段を備える、請求項13に記載の測定システム。
  15. 気体を流出入させる開口を備えた密閉空間形成部材を前記測定基板に重ね合わせることで、前記試料薄膜の周囲に密閉空間が形成されている、請求項13または14に記載の測定システム。
JP2013241876A 2012-11-22 2013-11-22 反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム Expired - Fee Related JP6291805B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013241876A JP6291805B2 (ja) 2012-11-22 2013-11-22 反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012256376 2012-11-22
JP2012256376 2012-11-22
JP2013241876A JP6291805B2 (ja) 2012-11-22 2013-11-22 反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014122888A JP2014122888A (ja) 2014-07-03
JP6291805B2 true JP6291805B2 (ja) 2018-03-14

Family

ID=51403475

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013241876A Expired - Fee Related JP6291805B2 (ja) 2012-11-22 2013-11-22 反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6291805B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017135303A1 (ja) * 2016-02-02 2017-08-10 コニカミノルタ株式会社 測定装置
JP6818483B2 (ja) * 2016-09-23 2021-01-20 日東電工株式会社 動的透湿性評価装置、動的透湿性評価方法及び動的透湿性評価プログラム
JP6908980B2 (ja) * 2016-09-23 2021-07-28 日東電工株式会社 動的吸放湿性評価装置、動的吸放湿性評価方法及び動的吸放湿性評価プログラム
CN106645075B (zh) * 2017-03-01 2023-12-01 金华职业技术学院 一种用于原位测量聚合物薄膜中溶剂蒸汽膨胀的装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20020187511A1 (en) * 2001-03-30 2002-12-12 Gerald Birk Process for label-free measurement of modified substrate
US20130063717A1 (en) * 2010-03-10 2013-03-14 Tokyo Institute Technology Laminated structure for measuring reflected light intensity, device containing laminated structure for measuring reflected light intensity, and method for measuring film thickness and/or mass and/or viscosity of thin film
EP2697643B1 (en) * 2011-04-13 2015-01-28 3M Innovative Properties Company Method of using an absorptive sensor element

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014122888A (ja) 2014-07-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6291805B2 (ja) 反射干渉分光法を用いた薄膜への微量水分子吸着の定量化方法およびそのための測定システム
Aissaoui et al. Silane layers on silicon surfaces: mechanism of interaction, stability, and influence on protein adsorption
JP5955379B2 (ja) 揮発性有機化合物の検出方法
Migliorini et al. Practical guide to characterize biomolecule adsorption on solid surfaces
Xia et al. Time-of-flight secondary ion mass spectrometry analysis of conformational changes in adsorbed protein films
Sammon et al. FTIR− ATR studies of the structure and dynamics of water molecules in polymeric matrixes. A comparison of PET and PVC
Vörös et al. Optical grating coupler biosensors
Edvardsson et al. QCM-D and reflectometry instrument: applications to supported lipid structures and their biomolecular interactions
Awsiuk et al. Protein adsorption and covalent bonding to silicon nitride surfaces modified with organo-silanes: Comparison using AFM, angle-resolved XPS and multivariate ToF-SIMS analysis
Tabassum et al. Plasmonic crystal-based gas sensor toward an optical nose design
Jackman et al. Nanoplasmonic biosensing for soft matter adsorption: kinetics of lipid vesicle attachment and shape deformation
Andersson et al. Gradient hydrogel matrix for microarray and biosensor applications: an imaging SPR study
Wehmeyer et al. Dynamic adsorption of albumin on nanostructured TiO2 thin films
JP6205806B2 (ja) RIfS(反射干渉分光法)測定装置
Lakayan et al. Angular scanning and variable wavelength surface plasmon resonance allowing free sensor surface selection for optimum material-and bio-sensing
Gupta et al. Parallel diffusion of moisture in paper. Part 1: Steady-state conditions
US20130063717A1 (en) Laminated structure for measuring reflected light intensity, device containing laminated structure for measuring reflected light intensity, and method for measuring film thickness and/or mass and/or viscosity of thin film
Higgins et al. Novel hybrid optical sensor materials for in-breath O 2 analysis
Anderson et al. Interfacial water structure on a highly hydroxylated silica film
Zimmermann et al. Functionalized silicone nanofilaments: a novel material for selective protein enrichment
US11035792B2 (en) Nanohole array based sensors with various coating and temperature control
Özkumur et al. Spectral reflectance imaging for a multiplexed, high-throughput, label-free, and dynamic biosensing platform
Choi et al. Label-free detection of glycoproteins using reflectometric interference spectroscopy-based sensing system with upright episcopic illumination
WO2022056288A1 (en) Nanohole array based sensors with various coatings and temperature control for covid-19
WO2012161287A1 (ja) 薄膜状素材の熱応答性測定方法および薄膜膜厚測定装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160926

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170615

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170620

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170810

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180116

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180129

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6291805

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees