JPWO2012161287A1 - 薄膜状素材の熱応答性測定方法および薄膜膜厚測定装置 - Google Patents

薄膜状素材の熱応答性測定方法および薄膜膜厚測定装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、高分子材料からなる薄膜の各種の熱物性を測定するための手段を提供する。本発明に係る熱応答性測定方法は、薄膜膜厚測定装置を使用し、表面に分析対象薄膜が形成されたセンサーチップ(分析対象センサーチップ)について、少なくとも2つの温度において当該分析対象薄膜の膜厚に関するデータを測定する工程、および当該分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を算出する工程(膜厚算出工程)を含むことを特徴とする。また、このような熱応答性測定方法のためには、センサーチップの表面に形成された分析対象薄膜について、熱応答性測定を行うためのプログラム温度調節手段を備える薄膜膜厚測定装置を使用することが好適である。

Description

本発明は、分子間相互作用検出方法として知られているRIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射型干渉分光法)を応用した薄膜の膜厚測定方法、およびその薄膜の熱応答性の分析方法に関する。
近年、生体分子や有機高分子間の結合(分子間相互作用)を、標識を用いることなく直接的に検出する手法の研究開発が進められている。たとえば、光学薄膜の干渉色変化を利用したRIfS(Reflectometric Interference Spectroscopy:反射型干渉分光法)が提案され、実用化もされている。RIfS方式の基本原理は特許文献1や非特許文献1などに記載されている。
一方、高機能性高分子材料の開発に伴い、その熱物性の測定ニーズは高まりつつある。従来、熱物性は、DSC(示差走査熱量測定)、TG(熱重量測定)、TMA(熱機械分析)、DMA(動的粘弾性測定)などの熱分析(物質の温度を一定のプログラムによって変化させながら、その物質のある物理的性質を温度の関数として測定する一連の技法)によって測定されてきた。しかしながら、従来のそれらの測定方法では、高分子材料のフィルム(厚さが1mm前後)、バルク、粉末などしか対象とすることができず、高分子材料の薄膜(厚さがnm〜μm)について上記の熱分析は行うことができない。そのため、高分子材料からフィルムを作製して代用とし、マクロな測定からミクロな数値を推定するしかなく、高分子材料等の薄膜の実技的な耐性や安定性に関する情報を得にくいという問題もある。
なお、従来の分子間相互作用測定装置(たとえば商品名「MI-Affinity」(登録商標)、コニカミノルタオプト株式会社)は、機器の電源を入れてから安定的な分析を行えるようにするまでの「暖機」のために、測定部の温度の制御を行う手段(温度制御部、温度調節素子、温度検出素子等)を備えている。しかしながら、このような温度制御手段には熱分析の思想はないため、任意の温度に測定部を保持することはできるものの、所定の時間後に所定の温度に到達するようなプログラム温度コントロール機能がなく、センサーチップ表面に形成された薄膜の熱応答性に関する各種の物性を測定するための手段としては不充分であった。また、その他の膜厚測定装置では温度による屈折率の変動がほとんどないため、温度コントロールは不要と考えられており温調装置の付いたものはほとんどない。
特許第3786073号公報
Sandstrom et al, APPL.OPT., 24, 472, 1985
本発明は、高分子材料などの素材からなる薄膜の熱応答性を測定するための手段を提供することを課題とする。
発明者らは、反射型RIfSに基づく分子間相互作用測定装置を利用し、そのセンサーチップ表面にたとえばMPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー、NIPAM(n−イソプロピルアクリルアミド)、イオン性(カチオン、アニオン)ポリマー等の水和性ポリマーを10nm〜1μmまでの厚さで塗布し、当該センサーチップ(測定部)の温度コントロールを行い変化させたところ、温度を低下させると反射率極小波長が長波長側に移る、つまり膜厚が増大し、逆に温度を上昇させると反射率極小波長が短波長側に移る、つまり膜厚が減少するという、当該ポリマー特有の温度変化に合致した挙動を定量的に観察することができた。更に従来の測定方法では測定し得なかった水中で熱応答性を測定した結果、大気中とは異なる挙動を示した。また同様に機能性のないポリスチレン塗布膜を測定したところ一般的に測定されているように温度低下で膜厚が減少し、温度上昇で膜厚が増大する現象をサブオングストローム〜オングストロームレベルの微小変化で観察することが出来た。そして、RIfSや、その他の膜厚測定技術を利用することにより、高分子材料からなる薄膜の各種の熱物性を測定することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
[1] 薄膜膜厚測定装置を使用し、表面に分析対象薄膜が形成されたセンサーチップ(分析対象センサーチップ)について、少なくとも2つの温度において当該分析対象薄膜の膜厚に関するデータを測定する工程(測定工程)、および当該分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を算出する工程(膜厚算出工程)を含むことを特徴とする、熱応答性測定方法。
[2] 前記測定工程が、連続的に昇温および/または降温をかけるパターン、階段状に昇温および/または降温をかけるパターン、またはこれらの混合のパターンの温度プロファイルにおいて行われる、[1]に記載の熱応答性測定方法。
[3] 前記パターンにおける昇温および/または降温が1℃あたり10〜3600秒の速度である、[2]に記載の熱応答性測定方法。
[4] 前記パターンにおける昇温および降温が1〜100サイクル繰り返される、[2]に記載の熱応答性測定方法。
[5] 前記測定工程の後にさらに、無修飾センサーチップまたは分析対象薄膜を形成する前の段階のセンサーチップ(リファレンスセンサーチップ)について同様の条件により取得したデータを用いる、下記(1)、(2)またはこれらの両方の方法により、前記分析対象センサーチップについて得られたデータを補正する工程を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法:
(1)データを取得する温度を対応させて、前記分析対象センサーチップについて得られたデータとリファレンスセンサーチップについて得られたデータとの差分を取ることにより補正する方法;
(2)データを取得する時間を対応させて、前記分析対象センサーチップについて得られたデータとリファレンスセンサーチップについて得られたデータとの差分を取ることにより補正する方法。
[6] 前記分析対象薄膜が、被膜形成性の固体もしくは液体により形成される薄膜;センサーチップの表面に固着可能な固体、液体もしくは気体により形成される薄膜;またはセンサーチップ上に形成された流路内に溶解もしくは浮遊する物質により形成される薄膜である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法。
[7] 気体中および液体中それぞれで、前記分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を測定することにより、当該液体が分析対象薄膜の膜厚に与える影響と当該液体によらずに熱が分析対象薄膜の膜厚に与える影響とを分析することを含む、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法。
[8] 前記膜厚算出工程により、非接触測定による物質の熱膨張係数、水和性被膜の熱膨張係数、熱ヒステリシス、熱緩和時間、熱遅延時間、LCST、UCST、相転移、熱ゆらぎ、吸水性、吸湿性または水和性について分析することを含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法。
[9] 前記薄膜膜厚測定装置が反射干渉分光法(RIfS)に基づくものである、[1]〜[8]のいずれかに記載の熱応答性測定方法。
[10] センサーチップの表面に形成された分析対象薄膜について、熱応答性測定を行うためのプログラム温度調節手段を備えることを特徴とする、薄膜膜厚測定装置。
[11] 前記薄膜膜厚測定装置が反射干渉分光法(RIfS)に基づくものである、[10]に記載の薄膜膜厚測定装置。
従来、高分子からなる薄膜に関する物性値を得るためには、たとえば薄膜の膜厚はエリプソメーターを使用して測定する一方、熱分析はフィルムを代用としてDSC装置を使用して測定するというように、煩雑な分析手法が必要とされていた。本発明による改良された薄膜膜厚測定装置によれば、高分子材料等の薄膜を直接の分析対象とし、膜厚を測定すると同時に、その変化から(つまり従来とは異なる単位(dimension)により)各種の熱物性を測定することができる。たとえば、環境耐性(熱、熱−湿による実技系での寸土安定性)、加熱による液状から固形状、固形状から液状への変化、熱応答性、分子の熱応答挙動、熱安定性などに関する分析が可能となり、従来は測定することが困難であった情報も取得することができるようになる。これにより、高分子材料等からなる薄膜の研究開発に大きく貢献しうる薄膜膜厚測定装置および分析手法が提供される。
図1は、RIfSに準じた態様における、本発明の実施形態の一例の概略図である。 制御系の入力にステップ信号を加えたときの出力結果を示す例。(a)比例制御の特性。上のグラフ:スムーズに目標値に近づけることができる。下のグラフ:操作量は偏差に比例して少なくなっていく。(b)PI制御の特性。上のグラフ:スムーズに目標値に近づけることができる。下のグラフ:比例制御より大きな操作量となる(上の曲線)。また、積分により偏差分が蓄積され、操作量として発生する(下の曲線)。(c)PID制御の特性。上のグラフ:素早く目標値に追従する。下のグラフ:微分動作により制御量が急激に大きくなる部分がある。 PID制御パラメータを求める際の描画の例。 PIDパラメータによる特性の違いを示す例。上の曲線:パラメータが大きい例の時の特性。下の曲線:パラメータが小さい例の時の特性。 図5は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、膜厚150nmのPSTの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図6は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、膜厚150nmのPSTの水中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図7は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、膜厚150nmのPSTの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対時間、温度変化)のグラフである。 図8は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、膜厚217nmのPSTの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図9は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、膜厚217nmのPSTの水中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図10は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、膜厚217nmのPSTの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対時間、温度変化)のグラフである。 図11は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、カチオン性ポリマーの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図12は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、カチオン性ポリマーの水中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図13は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、カチオン性ポリマーの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対時間、温度変化)のグラフである。 図14は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、アニオン性ポリマーの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図15は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、アニオン性ポリマーの水中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図16は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、アニオン性ポリマーの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対時間、温度変化)のグラフである。 図17は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、分析対象薄膜が形成されていないリファレンス基板の大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図18は、実施例群IにおいてRIfSにより測定した、分析対象薄膜が形成されていないリファレンス基板の水中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図19は、実施例群Iにおいて従来の一般的なRIfS(プログラム温度調節手段なし)により測定した、カチオン性ポリマーの水中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対温度)のグラフである。 図20は、実施例群Iにおいて従来の一般的なRIfS(プログラム温度調節手段なし)により測定した、カチオン性ポリマーの大気中での熱応答性を示す、反射率極小波長の変化(対時間)のグラフである。 図21は実施例群IIの実施例1の測定結果を表すグラフである。 図22は実施例群IIの実施例2の測定結果を表すグラフである。 図23は実施例群IIの実施例3の測定結果を表すグラフである。 図24は実施例群IIの実施例4の測定結果を表すグラフである。 図25は実施例群IIの実施例5の測定結果を表すグラフである。 図26は実施例群IIの実施例6の測定結果を表すグラフである。 図27は実施例群IIの実施例7の測定結果を表すグラフである。 図28は実施例群IIの実施例8の測定結果を表すグラフである。 図29は実施例群IIの実施例9の測定結果を表すグラフである。 図30は実施例群IIの実施例10の測定結果を表すグラフである。
−薄膜膜厚測定装置−
本発明は一つの側面において、本発明の熱応答性分析方法に使用するために好適な薄膜膜厚測定装置を提供する。
すなわち、本発明に係る薄膜膜厚測定装置は、センサーチップの表面に形成された分析対象薄膜について、熱分析を行うためのプログラム温度調節手段を備えることを特徴とする。このような装置を使用することにより、分析対象薄膜の厚さと共に、当該分析対象薄膜の各種の熱物性を測定することが可能である。
より具体的には、たとえば、従来公知の薄膜膜厚測定装置に備えられている温度調節手段は温度を約10〜40℃の範囲で調節することしかできないが、本発明における温度調節手段は、たとえば分析対象薄膜を形成する高分子素材のガラス転移温度を測定することができるよう、高温域(たとえば100〜200℃)にまで温度調節することが可能なものであってもよい。また、プログラムによるコントロールを受けない一般的な温度調節手段では瞬時に温度が上昇、下降してしまうが、本発明のようにプログラム温度調節手段を用いることにより温度を制御する、すなわち所望の速度でゆっくりと(たとえば10秒で1℃以下、好ましくは10秒で0.5℃以下の速度で)温度を上昇、下降させることができる。さらに、各種の熱物性の測定を自動的に行えるよう、所定の時間に所定の温度に調節するための多段階のプログラムを備えていてもよい。
なお、「薄膜」とは、薄膜膜厚測定装置の種類によって適切な範囲は変動しうるが、通常1nm〜100μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜700nmの厚さを有する膜を指す。
「薄膜膜厚測定装置」には、このような膜厚を測定することのできる公知の装置全般が包含される。代表的には、検出技術として反射型RIfS(反射干渉分光法)に基づく薄膜膜厚測定装置(分子間相互作用測定装置)が挙げられるが、それ以外にも、光干渉法に基づく薄膜膜厚測定装置(光干渉式膜厚計、反射分光膜厚計)や、分光エリプソメトリーに基づく薄膜膜厚測定装置(分光エリプソメーター)なども含まれる。しかしながら、水中での熱測定や表面粗さの大きい試料等を対象とすることは、光干渉式膜厚計(反射分光膜厚計)や分光エリプソメーターでは困難であり、大気中、水中両方で高精度に、またリアルタイムで熱分析を行うことができるという観点から、RIfSが特に好ましい。
(RIfSに準じた態様)
本発明に係る薄膜膜厚測定装置は、従来の反射型RIfS(反射干渉分光法)を用いる分子間相互作用測定装置を基礎として作製することができるが、特に温度調節手段等の熱分析に関する構成について改良がなされている。反射型RIfSに準じた態様の本発明に係る薄膜膜厚測定装置の一実施形態の概要を図1に示す。
測定装置1は、主に、測定部材10,白色光源20,分光器30,光伝達部40,制御装置50,温度調節器100などから構成されている。
測定部材10は、少なくとも基板12aと、その上に形成された光学薄膜12bを含む、センサーチップ12を基本として構成される。
基板12aは、一般的には矩形で、たとえばSi(シリコン)製が好ましく、光学薄膜12bはたとえばSiN(窒化シリコン)製が好ましい。
光学薄膜12bの上層にはさらに、分析対象薄膜16が形成されている。分析対象薄膜16は、光学薄膜12bの上層全てに形成されていても、一部に形成されていてもよい。分析対象薄膜16が形成されている部位が測定部200となる。
分析対象薄膜16は、あらかじめ光学薄膜12b上に成膜されていてもよいし、密閉流路14b内で合成ないし形成できるものである場合には、フローセル14によって構築される密閉流路14bに原材料を送液し、分析時にセンサーチップ上に成膜するようにすることも可能である。
また、液中での熱分析を行うために測定部200を液体に浸漬させる必要がある場合にも、フローセル14を用いて密閉流路を形成することができる(図1はこの態様を示す)。大気中での熱分析を行う場合には、フローセル14は用いなくてもよい。
フローセル14は、たとえばシリコーンゴム(ポリジメチルシロキサン:PDMS)製の、透明な部材である。フローセル14はセンサーチップ12に対して貼り替え可能となっており、ディスポーザブル(使い捨て)使用が可能となっている。フローセル14には溝14aが形成されている。フローセル14をセンサーチップ12に密着させると、密閉流路14bが形成される。溝14aの両端部はフローセル14の表面から露出しており、一方の端部が送液部に接続されて各種液体60が供給される流入口14cとして機能し、他方の端部は廃液部に接続されて各種液体60の流出口14dとして機能するようになっている。
光伝達部40は、白色光源20からの白色光を測定部200に導くための第一の光伝達経路としての第一の光ファイバ41と、第一の光ファイバ41からの白色光の照射による反射光を測定部200から分光器30に導くための第二の光伝達経路としての第二の光ファイバ42とを備えている。第一の光ファイバ41の白色光源20側の端部は、当該白色光源20の接続ポートに接続されている。接続ポートに接続された光ファイバ41は光入射端面がハロゲンランプ21に対向するように配置されている。第二の光ファイバ42の分光器30側の端部は、当該分光器30の受光を行う接続ポートに接続されている。
上記各光ファイバ41,42は、いずれも微細ファイバを束ねた構造となっている。そして、第一の光ファイバ41と第二の光ファイバ42のフローセル14側の端部は、各々の微細ファイバが一つの束となるように複合的に寄り合わされている。即ち、第一の光ファイバ41を構成する微細ファイバは、フローセル14側の端面において中央に分布し、第二の光ファイバ42を構成する微細ファイバは第一の光ファイバ41の微細ファイバの束を取り囲むようにその周囲に分布している。
白色光源20は、ハロゲンランプと、これを格納する筐体とから構成されている。筐体には、第一の光ファイバ41を接続するための接続ポートが設けられている。なお、本実施形態では白色光源を用いているが、これに限られるものではなく、後述する反射率極小波長の変化が検出でき得る波長域にわたって分布する光を発光する光源であればよい。
白色光源20が点灯すると、その白色光が第一の光ファイバ41を介して測定部200に照射され、その反射光が光ファイバ42を介して分光器30に導かれる。この分光器30は、受光部で受光する光に含まれる一定の波長間隔ごとの光について光強度を検出し、分光強度として制御装置50に出力する。
なお、本実施形態においては、測定部材10からの反射光を分光器30で受光するようにしているが、測定部材10として光透過性のものを用いて、白色光源20からの光を測定部材10に照射し、測定部材10を透過してきた光を受光するように分光器30を配置し、透過光の分光強度を検出するよう変形することも可能である。
制御装置50は、例えばPC(Personal Computer)から構成され、オペレータから分析動作の実行の入力を受け付けて、測定装置10への分析動作制御の実行指令を出力する。これにより、制御装置50は、制御部として機能する。
また、制御装置50は演算部としても機能する。制御装置50は、分光器30から測定光の分光強度のデータを取得し、各波長帯域ごとに、測定光の分光強度を基準となる白色光の分光強度で除して反射率を算出する。基準光の分光強度データは、あらかじめ装置組み立て調整時に測定して保有していたものでもよいし、その他の手段によりたとえば測定の都度取得したものでもよい。算出された反射率に基づき反射スペクトルが作成され、反射率極小波長が決定される。
反射スペクトルの波形は、通常、微小な凹凸が繰り返されるような不規則な形状を呈しており、反射率極小波長を算出・特定するのが困難な状態となっている場合があるが、たとえば、公知の手法を用いて反射スペクトルを高次関数で近似することにより波形を滑らかにし、高次多項式からその解(最小値)を求めて、これを反射率極小波長の値として特定することができる。
マイコンは、制御装置50の制御指令に応じて白色光源20の点灯と消灯を切り換える制御を行ったり、制御装置50の設定温度指令に応じて温度制御を行ったりする。
温度調節手段(システム)は、例えば、ペルチェ素子、冷却ファンのような加温と冷却を行う温度調節部材110と、サーミスタのような温度センサー120とを備え、これらは測定部材10に併設(当接)される。そして、制御装置50が、温度調節器100を通じて温度センサー120により測定部材10の温度を計測し、温度調節部材110による加温又は冷却によって、設定温度となるように温度制御を実行する。さらに、温度調節器100は、加温又は冷却の温度および時間のパターンをプログラム制御する電子回路(マイコン)を備える。上記パターンを上記電子回路にプログラムする入力手段や、入力を確認できる表示手段は、温度調節器100が備えていてもよいし、制御装置50に機能が統合されていてもよい。
検出を行う際には予め測定部材10の暖機が行われる。即ち、制御装置50は、予め定めた設定温度となるようマイコンに指令を送り、マイコンは温度調節手段による温度制御を実行する。暖機により測定部材10の温度が安定してから、分析を始める。
つづいて、温度調節手段は、目的とする熱分析に応じて、測定部200が所定の時間に、所定の温度となるよう温度制御を実行する。この温度制御は、予めプログラムによって自動的に実行されるように設定されている。
このような本発明に係る熱分析を行うために好適なプログラム温度調節手段は、次のような従来の熱分析用装置に用いられていた検出部、温度制御部、データ記録部などの各部材を応用して構成することができる。
・検出部:ヒーター、試料設置部、検出器(センサー)を備えた部分で、試料をヒーターにより加熱冷却すると共に、試料の温度と物理的性質を検出する。
・温度制御部:ヒーターの温度制御を行う部分で、設定されたプログラムに従ってヒーターの温度を制御する。
・データ記録部:検出器と温度センサーからの信号を入力して記録する部分で、データ記録から解析までの処理を行う。
温度制御及びデータの記録、解析までは全てコンピュータで行えるようになっている。検出部のセンサーとヒーターの組み合わせにより、様々な種類の測定が行うことができ、さらに1台のコンピュータに複数種の検出部を接続できるように構成されている。
本発明に係る薄膜膜厚測定装置においては、上記検出部の機能は測定部200に統合し、上記温度制御部およびデータ記録部の機能は制御装置50およびマイコンに統合することができる。
以下、本発明に係る熱応答性測定方法を実施する上で好適な温度調節手段(システム)の実施形態の一例を記載する。
この実施形態の概要は次の通りである:(1)事前に設定した「時間」および「設定温度」の計画を温度調節プログラムに読み込み、(2)温度調節器および薄膜膜厚測定装置(センサーチップ)に設置された温度センサーから、A/D変換により入力、温度変換し、(3)計測された温度と温度調節プログラムの設定温度との差分を算出して、温度調節部材(ペルチェ素子、冷却ファン等)を駆動して温度調節部材の温度を制御する。
温度設定の制御は精密に行えたほうがよいが、たとえば以下のような構成とすることは、分解能0.1℃で制御することが可能であるため好ましい。なお、動作を安定化させるため、1℃の変化(昇温または降温)に10秒以上の時間をかけるようにすることが好ましい。
温度センサーからのA/D値取り込みは、たとえば、入力対象を2種(温度調節器および薄膜膜厚測定装置(センサーチップ))とし、分解能を約0.05℃(0〜50℃/10bit)、サンプリング周期を1秒とし、平均処理を、10回連続で取り込み、最大および最小を除いた8回の平均値を算出するようにすることが好ましい。
温度変換は、A/D値(ad)から温度(t)への変換処理を所定の変換式(多項式)を用いて行う。温度センサーとして一般的なサーミスタは非線形であるため、多項式を用いて補完することが適切である。
実温調整は、たとえば、出荷時調整工程において、校正された温度測定機にて測定した実温とファームが温度センサーより取り込んだ温度の差を使用して、測定時設定温度の標準(たとえば25℃)にてオフセット値(c)を求め、次いで上限(たとえば40℃)、下限(たとえば15℃)にて傾き(k)を求め、次式により前述した温度変換で求めた温度(t)を補正することにより行う:
温度(t’)=温度(t)×傾き(k)/1000+オフセット(c)。
加熱/冷却度合い(%)の算出は、たとえば、サンプリング方式(離散値)に適したPID演算方式とし、3つのPID制御パラメータ(Kp、Ki、Kd)によりチューニングする。基本式は次の通りである。
偏差=目標値−実測値
操作量=Kp×偏差+Ki×偏差の累積値+Kd×前回偏差との差
PID制御パラメータの求め方(ステップ応答法)は、たとえば次のようにして行う。
まず、制御系の入力にステップ信号を加える。その出力結果は、たとえば図2に示すようなものとなる。続いて、図3に示すように、出力結果の立ち上がり曲線に接線を引き、それと軸との交点、定常値の任意設定%(例えば63%)になった所の2点から、L:無駄時間、T:時定数、K:定常値の3つの値を求める。これらの値から、各パラメータを下表のように求める。
PIDパラメータによる特性の違いは、たとえば図4に示すようなものとなる。
加熱/冷却の駆動は、たとえば、温度調節部材(たとえばペルチェ素子)の駆動回路の加熱信号または冷却信号に対してPWM出力を行い、当該駆動回路はフォトカプラにてアイソレーションされる(デューティ:0〜100%、周波数:1kHz固定)ようにする。
制御装置50は、測定を継続するか判定を行い、継続しない場合には処理を終了する。かかる判定は、例えば、予め測定時間が設定され、当該測定時間が経過したか否かを判定してもよいし、測定の終了の入力を受けるまで測定を継続する設定として、測定終了の入力の有無を判定してもよい。測定を継続する場合には、再び、分光強度の測定が実行される。本発明では、少なくとも2つの温度においてセンサーチップの表面に形成された分析対象薄膜に関するデータ(たとえばRIfSでは反射率極小波長)を取得するよう、測定を繰り返す。制御装置50は、周期的に反射率の算出、反射スペクトルの作成および反射率極小波長の決定を行い、その時系列的な変化を記録する。これにより、温度に対する膜厚変化を測定することができる。
−センサーチップ−
(RIfSに準じた態様)
RIfSに準じた測定装置を用いる分析の際には、センサーチップとして、公知のRIfS用センサーチップと同様の構造、典型的には基板と、その上に形成された光学薄膜とからなる積層構造を有するものが使用される。本発明では、上記光学薄膜の上にさらに、分析対象薄膜が積層される。
基板および光学薄膜は、白色光を用いたときに観測される反射率極小波長が適切な範囲となるような屈折率および厚みを有する材質で形成される。たとえば、基板はSi製、光学薄膜はその上に蒸着されたSiN製とすることが好ましい。SiNの屈折率は可視光領域の波長約400から800nmの範囲において約2.0〜2.5であり、SiNの膜厚を約45〜90nmとすることにより、反射率極小波長をおよそ400nm〜800nmの範囲に調節することができる。上記光学薄膜は、SiO2、TiO2またはTi25製とすることもできる。
本発明における分析対象薄膜は、膜厚測定方法を適切に行える薄膜であれば特に限定されるものではないが、たとえば、被膜形成性の固体もしくは液体により形成される薄膜;センサーチップの表面に固着可能な固体、液体もしくは気体により形成される薄膜;またはセンサーチップ上に形成された流路内に溶解もしくは浮遊する物質により形成される薄膜が挙げられる。
このうち「被膜形成性の固体」としては、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、水溶性ポリマー、生体材料、機能性材料などの合成もしくは天然のポリマーが挙げられるが、有機低分子化合物や無機化合物も含まれる。また、センサーチップの表面に固着可能な固体としては、微粒子状や単分子状の化合物であって、分子間相互作用などによりセンサーチップの表面に固着しすることができる物質が含まれる。
分析対象薄膜の形成方法も特に限定されるものではない。たとえば、樹脂状の高分子材料であれば、合成後、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等、公知の手法を用いてセンサーチップ12の表面に塗布すればよい。また、タンパク質、核酸等の生体関連物質からなる薄膜であれば、抗原抗体反応やDNAハイブリダイゼーションなど、RIfS用のセンサーチップについて公知の手法を用いて、それらの生体関連物質を捕捉する物質をセンサーチップの表面に備えておくことなどにより、成膜することも可能である。さらに、シランカップリング剤を用いた処理などにより、無修飾のセンサーチップの表面に反応性官能基(アミノ基、カルボキシル基等)を導入し、高分子材料が有する官能基との反応により、当該高分子材料からなる薄膜を形成するようにしてもよい。このような官能基同士の反応のかわりに、分子間相互作用や静電吸着により高分子材料からなる薄膜を形成してもよい。あるいは、無修飾のセンサーチップの表面に光、熱などにより重合可能なモノマーを導入し、グラフト重合させることにより、当該高分子材料からなる薄膜を形成することもできる。その他、キャスト製法、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)等、公知の成膜技術を用いることができる。
なお、本発明において、RIfS用のセンサーチップとして最小限の構成、基本的にはSiからなる基板およびSiNからなる光学薄膜だけで構成されるセンサーチップを「無修飾センサーチップ」と称する。また、このような無修飾センサーチップと、無修飾センサーチップに分析対象薄膜を形成するための前処理(たとえば前述したようなシランカップリング剤による処理)までが施された、分析対象薄膜を形成する前の段階のセンサーチップをあわせて「リファレンスセンサーチップ」と称する。一方、表面に分析対象薄膜が形成されたセンサーチップを「分析対象センサーチップ」と称する。
−熱応答性測定方法−
本発明は一つの側面において、薄膜膜厚測定装置を使用し、各種の熱応答性に関する分析を行うことのできる、熱応答性測定方法を提供する。
本発明に係る熱応答性測定方法は、具体的には、薄膜膜厚測定装置を使用し、表面に分析対象薄膜が形成されたセンサーチップ(分析対象センサーチップ)について、少なくとも2つの温度において当該分析対象薄膜の膜厚に関するデータを測定する工程(測定工程)、および当該分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を算出する工程(膜厚算出工程)を含む。
(測定工程)
測定工程では、少なくとも2つの温度において分析対象薄膜の膜厚に関するデータを測定すればよいが、好ましくは、連続的に昇温および/または降温をかけるパターン、階段状に昇温および/または降温をかけるパターン、またはこれらの混合のパターンの温度プロファイルにおいて、多数の温度におけるデータを測定するようにする。各パターンにおいて、分析の目的に応じて、昇温または降温の一方のみであってもよいし、昇温後に降温させるまたは降温後に昇温させるなど往復させてもよい。「連続的に」とは一定の速度で緩やかに温度を変化させ続けることであり、「階段状に」とは短時間の内に一定幅の昇温または降温を行った後に一定時間温度を変化させないことを繰り返すことである。たとえば、温度変化が速すぎると分析対象薄膜の膜厚変化が観察できないようなときに、階段状に温度を変化させることで適切な分析が行えるようになる場合がある。
前記パターンにおける昇温および/または降温の速度は、熱応答性の分析の目的などに応じて適宜調整することができるが、1℃あたり10〜3600秒の速度であることが好ましい。温度変化が速すぎると、熱エネルギーが膜厚変化以外の振動等に消費されてしまうなどの理由により、分析対象薄膜の膜厚変化が観察できない場合がある。
また、熱応答性の分析の目的などに応じて、昇温または降温させた後、それと反対に降温または昇温させて元の温度まで戻すように、昇温および降温をサイクルさせるようにしてもよい。また、このようなサイクルを1回だけでなく複数回、たとえば2〜100サイクル繰り返すようにしてもよい。
このような熱応答性測定方法、特に上述したような温度プロファイルを含む測定工程は、自動的に精密な測定温度の調節が行える、本発明に係るプログラム温度調節手段を備える薄膜膜厚測定装置を使用して実施することが好適である。ただし、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、少なくとも2つの温度において分析対象薄膜の膜厚に関するデータを取得する手段を備える限り、その他の薄膜膜厚測定装置を使用して実施することも可能である。
(膜厚算出工程)
測定工程において測定されたデータ(Δλなど)は、所定の換算式に基づいて各温度における膜厚に換算することができる。このようにして求められる、分析対象薄膜の各温度における膜厚や、温度に対する膜厚変化の様子は、各種の熱応答性分析のために利用することができる。
・ボトムピーク法
RIfSに準じた態様において、一般的にはまず、測定工程において、表面に分析対象薄膜が形成されていないセンサーチップの反射率極小波長(ボトムピーク)(λ')を基準とし、表面に分析対象薄膜が形成されているセンサーチップの反射率極小波長(λ)との差(Δλ)などとして、分析対象薄膜の膜厚に関するデータを測定する。
なお、各温度におけるΔλ(Δλ0,Δλ1,Δλ2・・・, Δλn・・・)は、ある1点の温度におけるλ'(λ'0)と、各温度におけるλ(λ0,λ1,λ2・・・,λn・・・)を対比させたときの差(λ0−λ'0,λ1−λ'1,λ2−λ'2・・・, λn−λ'n・・・)として求められる。
続いて、測定されたΔλに基づき、分析対象薄膜の膜厚を算出する。分析対象薄膜の膜厚の算出方法は特に限定されるものではなく、要求される精度に応じて、一般的な方法や、それに改良を加えた改良法を用いることができる。
たとえば、簡易的には、下記換算式によりΔλからdを算出することができる:
d=Δλ/2n
ここで、nは分析対象薄膜の屈折率であり、通常、1.4〜1.6程度の範囲になる。
また、膜厚の算出精度をより高めたい場合は、たとえば、次のようなシミュレーションを利用して、測定されたΔλから膜厚を算出するようにしてもよい。
ここで、前記λおよびΔλの測定値そのものからdを算出することができるのは、λが400〜800nmの範囲にある場合、換算するとdが約100nm以下の場合に限られる。dが約100nm以上の場合、測定されるλ(Δλ)には周期性が表れる(振動する)。すなわち、λは、800nmを超える範囲に表れると予測される反射率極小波長ではなく、400〜800nmの範囲に表れる別の反射率極小波長として測定される。このようなことから、dが約100nm以下の場合と、約100nm以上の場合とでは、次のような異なる方法によりdを算出することが適切である。
まず、dが約100nm以下の場合、dとΔλの関係における周期性を考慮する必要はなく、Δλ/d=an+bという一次の近似式が成り立つ。そこで、あらかじめnおよびdが既知のサンプルについてのΔλを何点か測定し、nおよびΔλ/dのプロットからΔλ/d=an+bで表される回帰式を取得しておくことにより、同じ測定系においては、d=Δλ/(an+b)の換算式に測定されたΔλを当てはめる、換言すれば、1/(an+b)を「換算係数」として、測定値Δλに当該換算係数を乗ずることで、dを算出することができる。なお、測定が大気中(Dry系)で行われるか水中(Wet系)で行われるかによって、上記回帰式(aおよびbの値)は異なる。
一方、dが約100nm以上の場合、dとΔλの関係における周期性を考慮する必要がある。したがって、測定されるλが何周期目に該当するのかという情報を別途取得し(たとえば、分析対象薄膜の形成条件などから推定されるおおよその膜厚に基づき取得する)、それによって正しい膜厚を反映させるために加算すべきΔλ(加算Δλ値)を決定する必要がある。そして、測定されたΔλにその加算Δλ値を加えて得られる補正値を用いて、前記と同様の方法で取得した換算式に基づき、dを算出することが適切である。
周期性の境界は以下の様に定める。すなわち、(1)周期を決定する、(2)周期性と屈折率を元に膜厚換算係数(係数×屈折率−調整項)を算出した後、Δλの値を当該膜厚換算係数で割って膜厚値を求める、(3)2周期目以降の場合は膜厚加算値を加算した値を膜厚値とする。膜厚の変異量も前記膜厚換算係数を用いて同様に計算する。物質そのものの膜厚値、変化量を見るためには、予めリファレンス(例えば修飾前のセンサーチップ)のλ値を引く必要があるが、周期が同一でない場合は測定値への影響は少ないので引く必要はない。
・cOPL法
また、次のような、反射率の変化量を利用した光路長(cOPL)を用いる算出方法もある。光路長の変化に対する反射率曲線の(複数の)極値位置の波長シフトの関係を予めシミュレーションし、それを数学的に処理してテンプレートを作成しておく。そして、実測された反射率曲線の極値位置の波長をそのテンプレートに照らすと、近似的に分析対象薄膜の光路長が得られる。このようにして得られるcOPLは、大気中、水中の光路長(=屈折率n×膜厚d)を表しているので、cOPLを分析対象薄膜の屈折率nで割ることで、分析対象薄膜の厚さdを直接的に算出することができる。分析対象薄膜そのものの膜厚値、変化量を見るためには、予めリファレンス(例えば修飾前のセンサーチップ)のcOPLを引く必要がある。
(センサーチップの伸縮に関する補正)
センサーチップ上に分析対象薄膜を形成してその熱応答分析を行う際、センサーチップ(Si/SiN)自体も、温度差30℃の間でΔλが0.5nm変化する程度の伸縮を起こす。この伸縮は、SiNの膜厚変動値としては1Å以下であるが、RIfS方式が超高感度であるためにΔλの測定値に影響を及ぼす。
また、熱応答分析の時間が経過するにつれて、たとえば所定の2点の温度(ピークおよびボトム)の間を変動させるサイクルを繰り返す際に、Δλのピークおよびボトムが初回のサイクルから変化し、温度がピークおよびボトムに達する時間とΔλがピークおよびボトムに達する時間とがずれることもある。
したがって、分析対象薄膜の膜厚測定の精度を高めるためには、上述したような影響を極力排除できるよう、前記測定工程の後にさらに、無修飾センサーチップまたは分析対象薄膜を形成する前の段階のセンサーチップ(リファレンスセンサーチップ)について同様の条件により取得したデータを用いる、下記(1)、(2)またはこれらの両方の方法により、前記分析対象センサーチップについて得られたデータを補正する工程を行うことが好ましい:
(1)データを取得する温度を対応させて、前記分析対象センサーチップについて得られたデータとリファレンスセンサーチップについて得られたデータとの差分を取ることにより補正する方法;
(2)データを取得する時間を対応させて、前記分析対象センサーチップについて得られたデータとリファレンスセンサーチップについて得られたデータとの差分を取ることにより補正する方法。
なお、前述したボトムピーク法ではΔλの測定値に周期性が表れるが、センサーチップの伸縮は、1周期目のΔλの測定値には一定の影響を及ぼすが、2周期目以降のΔλの測定値に及ぼす影響は小さく無視することができる。したがって、上記の補正は、Δλが1周期目(分析対象薄膜の膜厚が約100nm以下)の場合にのみ適用すればよい。
以上のようにして、熱分析の間、少なくとも2つ、通常はそれより多くの温度(T0,T1,T2・・・,Tn・・・)において、センサーチップの表面に形成された分析対象薄膜の膜厚に関するデータ(Δλ0,Δλ1,Δλ2・・・, Δλn・・・など)を取得し、その膜厚(d0,d1,d2・・・,dn・・・)を算出することにより、分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を測定することができる。
(分析内容)
本発明では、上述したような膜厚算出工程により得られたデータに基づき、熱応答性に関する各種の物性値を算出やその解析を行うことができる。
特に、本発明の測定法は、熱運動(熱の伝搬、振動、回転、並進等の分子運動で熱エネルギーを消費する運動で、例えばTMAによる線膨張係数が測定手段としてある)、構造変化(膜収縮、膨張、相転移等、膜構造の変化に伴い吸熱、発熱を測定するDSCで測定する方法がある)、更に従来できなかった水和挙動を同時に測定し、適切なリファレンス、測定条件を取ることで各々の因子分離が可能な測定方法である。また、熱膨張と水和を含めたトータルの熱安定性、熱膨張性、高湿化、水中での挙動、更に水中の電解質との相互作用等が定量化できる。
本発明に基づく熱応答性に関する分析内容は特に限定されるものではないが、たとえば以下の各項目を測定データから容易に取り出し、解析することが可能である。
1.熱膨張と水和
以下の様に膜厚と測定条件、膜質(膜の性質、均一性等)との関係で測定値の意味づけが異なる。厚膜では物質の熱膨張が観察される、一方薄膜では、表面積が相対的に大きくなるため、湿度が高いと水和が観察されやすい。水中では、親水的な膜では親水性の影響が出るが、疎水的な膜では表面が水で覆われて安定化するため低湿化の測定に近い結果が得られる。水中測定において水和が進行する物質であっても長時間測定することで水和構造の変化率を測定し、水和速度に換算することが可能である。水和の中には湿度に依存し温度変化で容易に外れる水があり、これを吸湿と関連付けることができる、また熱サイクルの中でも外れない水があり、膜表面ではなく内部に入り込んでいる水と考えて吸水と区別して取り扱っている。以上の微細な水分子の動きが本発明の熱応答性測定から解析できる。
2.構造変化
測定温度範囲内に相転移点(Tg、Tm、LCST等)を有する物質では、膜厚に関わらず温度に応じて変異点が求まる。大気中、水中、電解質溶液中の比較では、水和、電解質との相互作用があり、相転移点前後の挙動が異なる。
3.ヒステリシス
下限と上限の温度によりΔλの幅ができる。高温(低湿)から冷やす場合と、低温(高湿)から上げる場合と途中の熱膨張または水和構造が異なっている。任意に設定可能だが、ここでは、25℃のΔλの幅で表す。また、熱サイクルを繰り返すことにより、サイクル安定性を求めることができる。
4.熱膨張と熱収縮
熱サイクルを繰り返すことで、徐々にΔλ(膜厚の関数)が上昇する場合、熱膨張、サイクルごとにΔλ(膜厚の関数)が低下する場合、熱収縮とみなすことができる。
5.非対称性
ヒステリシスに由来するが低温と高温とで同じ温度幅であっても伸縮量が異なる場合があり、ここでは、高温側のΔλから低温のΔλを引いている。内部構造が均一でない場合に出やすい。
6.遅延
例えば、10℃−40℃のサイクルにおいて本来熱応答は10℃で最も縮んで、40℃で最も伸びるが、熱伝搬がスムースにいかない場合、最少膜厚、最大膜厚が温度の最少、最大と時間的にずれることがある。ここでは、ずれ時間で表記する。オーバーシュートした熱膨張が通常の熱サイクルに戻る挙動を熱緩和と呼ぶ。遅延、および熱緩和は加熱速度に依存するので、より微細な変化を見るには昇温、降温速度を遅くすればよい。
以下の実施例において、RIfS方式の分子間相互作用測定装置として「MI−Affinity」(登録商標、コニカミノルタオプティクス株式会社)を使用し、無修飾のセンサーチップとして、上記「MI−Affinity」専用のセンサーチップ(Si,厚さ1mm/SiN,厚さ66nm)を使用した。
−実施例群I−
(サンプル調整)
無修飾のセンサーチップ上に表3で示したように各種ポリマーをスピンコーターで塗布し、70℃で30分間加熱乾燥を行った。
(熱膨張度の測定)
プログラム温度調整機能で温度を5℃ずつ変化させながら膜厚の変化を測定し、熱膨張率を温度に対する膜厚の変化量として計算した。表4において各膜厚は理論シミュレーションに実測値を勘案してΔλの値を係数2で割って求めた。比較2として、プログラム温度コントローラーがない「Mi-Affinity」の温調システムで熱応答性を測定した。膜厚計算において、大気中と水中では計算のベースが異なる、また100nm以上の膜厚では周期性が出るので一様な処理では膜厚は求まらないので、別途理論計算から求めた。
(結果の考察)
表4から明らかな様に、機能性のないポリスチレンは低温で膜厚が収縮し、高温で膜厚が膨張する典型的な熱膨張率を示した。測定した試料の膜厚は従来測定不可能であったサブミクロンの膜厚であり、従来測定不可能であったサブオングストロームの膜厚変動が測定可能であることが分かる。本測定に用いたRIfS測定装置のノイズレベルとシグナルレベルの検証の結果分解能は0.2オングストロームであることを確認した。また、大気中、水中両方でヒステリシスがなく大差のない熱応答挙動を示していることが確認できた。一方、水溶性の大きいカチオン性ポリマーのNo.3及びアニオン性ポリマーのNo.4は、低温で膜厚が増加し、高温で膜厚が低下する性質を有しており、ポリスチレンと逆の動きをすることが確認できた。また、大気中と水中とで挙動が大きく異なっている。水中のデータでは水和構造の変化を反映したものとなっている。水中におけるカチオン性ポリマーは高温側で水和構造の変化に伴う不可逆的な収縮を起こしていることが分かる。また、プログラム温調を行わない比較例2では温度変化が急速に起こるため、温度ストレスや過剰なエネルギー放出に対応する緩和現象が見られており、正しい熱応答性は測定できないことが分かる。以上のように、本発明の測定方法、およびプログラム温度調整機構を有するRIfS装置で熱応答性を測定することで従来になかった精度で薄膜の熱膨張、相転移、水和構造が高精度で測定できることが分かる。また、水中の変化は水和構造に大きく依存しているので、大気中の測定と比較することで熱応答性と水和構造の影響が分離して測定可能な有益な測定方法であることが分かる。
−実施例群II−
(試料作製)
以下の試料(分析対象センサーチップ)の作製では、サンプルとして表5に示した膜形成材料を用いて、同表中の「成膜方法」に従って分析対象薄膜を形成した。
(1)溶剤塗布
表6に従って膜形成材料調製液を調製した。すなわち、前記表5に示した各膜形成材料(サンプル番号1〜14)を秤量し、サンプルチューブに入れ、更に溶解性の溶剤を適宜秤量し4.5wt%の溶解液を調製した。得られた4.5wt%の溶解液を更に溶剤で希釈して、各1.5wt%、0.5wt%の溶液を調製した。
続いて、スピンコーターに無修飾のセンサーチップ(ベア基板)を真空下でセットし、前工程で調製済みの膜形成材料調製液を約300μL注液した後、3000rpmで1分間、回転塗布を行った。塗布後、ポリマー(サンプル番号1〜12)については110℃で1時間、TPG(サンプル番号13)およびNC21(サンプル番号14)は80℃30分間、電気オーブンを用いて乾燥し、目的とする分析対象センサーチップを得た。形成された分析対象薄膜の厚さはエリプソ測定装置「VASE」(ウーラム社製)で測定した。結果を表7に示す。
(2)熱プレス
前記表5に示した各膜形成材料(番号15〜17)の樹脂ペレットを剥離シートに挟み、小型熱プレス機(As one:1-6002-02)を用いて260℃でポリマーを加熱溶融して、1〜3mm厚程度のフィルムを作製した。
続いて、前記小型熱プレス機に厚さ1cmのシリコーンゴムを敷き、その上に無修飾のセンサーチップ(ベア基板)をセットした。前記フィルムをセンサーチップの大きさにカットして載せ、更にその上にガラス製プレパラートを載せて、260℃で加熱しながら圧力をかけて加熱溶融し、RIfS測定に適した1μm以下の厚さに成型した。ゆっくりと温度を降下させた後、ガラス製プレパラートを剥離して、目的とする分析対象センサーチップを得た。形成された分析対象薄膜の厚さはエリプソ測定装置「VASE」(ウーラム社製)で測定した。結果を表8に示す。
(3)アミンカップリング
以下のアミンカップリングに関する工程は表9に従って行った。
(3−1)シランカップリング剤による処理
(a)アミノ化センサーチップ
95%エタノール水溶液10mLに3-Aminopropyltrimethoxysilaneを100μL添加し、室温で1時間攪拌した。得られたシランカップリング剤の中に、無修飾のセンサーチップを室温で1時間浸漬し、水素結合的にシランカップリング剤を吸着させた。センサーチップを引き上げ、エタノール、超純水で順次洗浄後、窒素ブローにより乾燥させ、乾熱機にて80℃、1時間脱水縮合させることにより、アミノ化センサーチップ(アミノ基基板)を作製した。
(b)カルボキシル化センサーチップ
超純水10mLにTriethoxysilylpropylmaleamic acidを100μL、酢酸を100μL添加し、室温で1時間攪拌した。得られたシランカップリング剤の中に、無修飾のセンサーチップを室温で1時間浸漬し、水素結合的にシランカップリング剤を吸着させた。センサーチップを引き上げ、エタノール、超純水で順次洗浄後、窒素ブローにより乾燥させ、乾熱機にて80℃、1時間脱水縮合させることにより、カルボキシル化センサーチップ(カルボキシル基基板)を作製した。
(3−2)水和性ポリマーの固着
(a)アミノ化センサーチップへの固着
NHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)とWSC(水溶性カルボジイミド)とを、それぞれ50mMおよび200mMの濃度で含有する水溶液を25mM MESバッファー(pH5.0)を用いて調製した。得られた水溶液に、前記表5に示した各膜形成材料(番号18〜20)を10mM(濃度5wt%)となるよう添加し、30分間撹拌後、前記アミノ化センサーチップを室温で20分間、攪拌しながら浸漬した。その後、センサーチップを引き上げ、超純水で洗浄した。化学結合に利用されていない活性エステルを加水分解するために1/10既定の苛性ソーダ水溶液中に前記反応後のセンサーチップを10分間浸漬した。希塩酸で中和後、更に超純水洗浄、乾燥を行い、目的とする分析対象センサーチップを得た。
(b)カルボキシル化センサーチップへの固着
NHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)とWSC(水溶性カルボジイミド)とを、それぞれ50mMおよび200mMの濃度で含有する水溶液を25mM MESバッファー(pH5.0)を用いて調製した。得られた水溶液に、前記アミノ化センサーチップを室温で20分間、攪拌しながら浸漬した。その後、センサーチップを引き上げ、超純水で洗浄した。続いて、前記表5に示した各膜形成材料(番号21〜25)を5wt%の濃度で含有する水溶液を、10mM Acetateバッファー(pH6.0)を用いて調製した。得られた水溶液に、前記活性エステル化工程で作製したセンサーチップを室温で4時間、攪拌しながら浸漬した。その後、センサーチップを引き上げ、超純水で洗浄し、目的とする分析対象センサーチップを得た。
上記(a)および(b)で形成された分析対象薄膜の厚さはエリプソ測定装置「VASE」(ウーラム社製)で測定した。結果を表10に示す。
(4)グラフト重合
以下のグラフト重合に関する工程は表11に従って行った。
3-メタクロイルプロピルトリエトキシシシラン(信越シリコーン社製)を1g秤量し、19mlのエタノールで溶解し、室温で1時間攪拌して、加水分解を進行させた。この溶液に無修飾のセンサーチップ(ベア基板)を浸積し、室温で1時間シランカップリング反応を行った。反応後、電気オーブンで80℃、1時間乾燥させて成膜し、モノマー固着基板を作製した。
続いて、イソプロパノール中に前記表5に示した各モノマー(番号26〜28)を10wt%、重合開始剤「イルガキュア2959」(長瀬産業社製)を当該モノマーの1/100モル%を含有する溶液(モノマー反応液)を調製した。得られたモノマー反応液を前記工程で作製したモノマー固着基板に塗布し、キセノンランプを照射して光共重合反応を行い、目的とする分析対象センサーチップを得た。形成された分析対象薄膜の厚さはエリプソ測定装置「VASE」(ウーラム社製)で測定した。結果を表12に示す。
(5)SiO2
SiO2蒸着品は業者に依頼して作成した。SiO2コートはポリシラザン系コーティング剤「アクアミカNAX120」を2%に希釈し、前記スピンコーターを用いて、調製液を約300μL注液した後、3000rpmで1分間、回転塗布を行った。塗布後、80℃で8時間乾燥を行い、シリカ転化させSiO2コートサンプルを作製した。結果を表13に示す。
(熱応答性の測定)
本発明の加熱サイクルにおいては任意に昇温、降温速度、サイクル数を設定可能であるが、下記実施例では1℃当たり15秒の昇温、降温速度で3サイクル行った。
[実施例1]
疎水性ポリマー(PS1-3、PS2-3、PSC2、PSC3)の線膨張係数測定
測定条件として、大気中の湿度違い(20℃10%、20℃50%)2条件、およびRIfSでしかできない水中1条件を加えて、計3条件で10-40℃の熱応答サイクルの測定を行った。結果を表14および図21に示す。表14に最も安定している2サイクル目の10℃、40℃のλ値を求めた。更に前記2点間の変動膜厚および線膨張係数を求めた。該サンプルのボトムピークは、2周期、3周期目であるので基板の補正は行わない。線膨張係数はRIfSの膜厚、及び伸縮膜厚を用いることの利便性が高く、好ましいが、RIfSの伸縮膜厚とエリプソ膜厚を用いても算出可能なので併記する。RIfSとエリプソの測定値に大差はないが原理的にエリプソに比べて概ね20nm以下の超薄膜、500nm以上の厚膜でRIfSの測定信頼性が高い。
表から分かるように厚膜(300nm程度以上)においてRIfSの測定で得られた線膨張係数(線膨張係数_RIfS、線膨張係数_エリプソ)は文献値と一致しており、PS1とPS2の分子量違いの影響も明確である。尚且つ、RIfSでは連続的に膜厚測定を行い、3サイクルも測定を行っているため測定の信頼性が高い特徴がある。また、本発明により初めて水中での熱膨張係数を求めることができたが、概ね湿度違い、大気-水中の差異は大きくない。本発明の熱応答計測により、簡易で実技系に近い数百nmの薄膜を用いて、線膨張係数が正確に求められることが分かる。
[実施例2]
ポリスチレンPS2の膜厚違いの熱応答性測定
ポリスチレンPS2について膜厚違いの熱応答性を大気中20度10%で測定した。結果を表15および図22に示す。
PS-2-3のように膜厚が十分厚いと線膨張係数は文献値に近づくが、PS2-2のように100nm前後の厚さでは分子が熱運動しやすいため、文献値よりも大きめな値となる。PS2-1のように50nm以下の低膜厚だと水の吸脱着に伴う膜厚変位が観測され、低温ほど膜厚が大きくなる現象が見られる。100nm以下の超薄膜では疎水性ポリマーでも水との親和性が高まるとの学説を実証可能なことを示している。熱膨張計測と同時に水の吸脱着も測定可能なRIfS熱応答計測の有用性は明確である。
[実施例3]
吸水性ポリマー(PMMA1、PMMA2、PVAc)の熱膨張及び水和性測定
測定条件として、大気中の湿度違い(20℃10%、20℃30%、20℃50%)3条件、および水中1条件を加えて、計4条件で10-40℃の熱応答サイクルの測定を行った。結果を表16および図23に示す。
本実施例では疎水性ポリマーではあるが、吸水率がポリスチレンよりも高いPMMAとポリ酢酸ビニルでは、ポリスチレンに比べて膜厚がより厚い膜まで水の吸脱着が見られる。このことから熱膨張を定量化することにより、吸水率が算定可能なことを示している。吸水率の高いPMMA、酢酸ビニルの薄膜(PMMA1‐1、1‐2、2‐1、2‐2、PVAc1‐1、1‐2)では、測定環境の湿度が高いほど線膨張係数がマイナス側に大きくなっており水和(吸湿、吸水等)の評価が可能であることが分かる。PMMAのように水和が大きくない疎水性ポリマーは、水中では逆に低湿度化の熱応答性挙動に近づく傾向にある。
親水性がより高いポリ酢酸ビニルでは、熱サイクル毎に大きく変化しており、水中計測では熱膨張が下がり、大気中では上がる傾向にある。水中では、表面水和により、熱拡散が進み、大気中では、熱ヒステリシスでエネルギーがたまり熱膨張が増大して行く様が測定されていると考えられる。
[実施例4]
ポリオクタデシルメタクリレート(PodMA-1)のTm(融点)測定
結果を表17および図24に示す。Tm37.5℃前後の複雑な相転移構造が測定できており、本発明の熱応答計測では、融点以下では熱膨張が測定でき、かつDSCのようにTm(相転移点)も明確に測定できており、他に類のない多様性のある優れた測定方法であることが分かる。
[実施例5]
水溶性材料(PAA、PEG、PEO、PEI、PVA、HEMA、DAC)の熱応答性測定
結果を表18および図25に示す。水溶性材料の湿度の影響、水中での昇温、降温、水との関わり、熱応答性が分かり、ヒステリシスも観察されており膜に対する水の振る舞いがわかる。HEMAを除くと10nm前後の超薄膜なので、線膨張係数は観測されないが、水和によるマイナス方向の熱応答性が精度良く測定できる。5%NaClにおいて水和挙動が抑えられていることも分かる。
[実施例6]
ポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAMC)のLCST測定
結果を表19および図26に示す。一般的にLCST測定は、濁度法を用いて、温度を変化させながら測定していくが、本発明の熱応答測定では、簡便にかつ正確に測定できる。グラフからアミンカップリングで作製した、PNIPaamのLCST32℃が明確に測定できていることがわかる。また、大気中と水中との比較によりポリイソプロピルアクリルアミドの吸湿、および水中での相互作用も明確に分かる。グラフト重合を行ったPNIPAMでも同様のLCSTが観測された。
[実施例7]
生態材料(TPG-1、TPG-2、TPG-3、NC21-1、NC21-2、NC21-3、CMD、BSA)の熱応答性測定
結果を表20および図27に示す。生体材料である中性脂肪TPGでは水中で熱収縮が起きるが、5%NaCl中では熱膨張しており水和による膜構造の変化とNaClによる抑制が観測されている。リン脂質NC-21では大気中で起点に戻るヒステリシスが見られるが、水中では1回目のみ収縮が見られ、5%NaCl中では熱膨張が見られており水和の解析に使える。多糖類CMD、タンパクBSAでは、薄膜であるにもかかわらず、熱応答に関わる湿度の影響を高感度で測定できている。
[実施例8]
結果を表21および図28に示す。従来の機器では測定が困難な熱プレス加工フィルムのPS、PP、COPでも熱膨張測定が可能で、線膨張係数も文献値とほぼ一致する。また、PP-Pでは熱応答曲線にひずみが見えており、本発明により熱プレス加工の緻密性、均一性が分かる。
[実施例9]
SiO2の線膨張係数と水和構造の温度影響
結果を表22および図29に示す。大気中では熱応答性が見えず、水中では明確に見られる。大気中では熱膨張と同等の水吸着が起こっているが、水中では周りが水なので逆に水の出入りがなく本来の熱膨張が見えていると推定できる。
[実施例10]
換算光路長(cOPL)によるPS1、PS2の線膨張係数の算出
結果を表23および図30に示す。cOPLにより、膜厚算出が容易で精度も十分であることが分かる。
その他、PBMA、PiBMA、PVC、COP等の各サンプルでも文献値に近い線膨張係数が得られているほか、安定した熱応答性が測定されている。
1 測定装置
10 測定部材
12 センサーチップ
12a シリコン基板
12b SiN(窒化シリコン)膜
14 フローセル
14a 溝
14b 密閉流路
14c 流入口
14d 流出口
16 分析対象薄膜
20 白色光源
30 分光器
40 光伝達部
41 第一の光ファイバ
42 第二の光ファイバ
50 制御装置
60 各種液体
100 温度調節器
110 温度調節部材
120 温度センサー
200 測定部

Claims (11)

  1. 薄膜膜厚測定装置を使用し、表面に分析対象薄膜が形成されたセンサーチップ(分析対象センサーチップ)について、少なくとも2つの温度において当該分析対象薄膜の膜厚に関するデータを測定する工程(測定工程)、および当該分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を算出する工程(膜厚算出工程)を含むことを特徴とする、熱応答性測定方法。
  2. 前記測定工程が、連続的に昇温および/または降温をかけるパターン、階段状に昇温および/または降温をかけるパターン、またはこれらの混合のパターンの温度プロファイルにおいて行われる、請求項1に記載の熱応答性測定方法。
  3. 前記パターンにおける昇温および/または降温が1℃あたり10〜3600秒の速度である、請求項2に記載の熱応答性測定方法。
  4. 前記パターンにおける昇温および降温が1〜100サイクル繰り返される、請求項2に記載の熱応答性測定方法。
  5. 前記測定工程の後にさらに、無修飾センサーチップまたは分析対象薄膜を形成する前の段階のセンサーチップ(リファレンスセンサーチップ)について同様の条件により取得したデータを用いる、下記(1)、(2)またはこれらの両方の方法により、前記分析対象センサーチップについて得られたデータを補正する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法:
    (1)データを取得する温度を対応させて、前記分析対象センサーチップについて得られたデータとリファレンスセンサーチップについて得られたデータとの差分を取ることにより補正する方法;
    (2)データを取得する時間を対応させて、前記分析対象センサーチップについて得られたデータとリファレンスセンサーチップについて得られたデータとの差分を取ることにより補正する方法。
  6. 前記分析対象薄膜が、被膜形成性の固体もしくは液体により形成される薄膜;センサーチップの表面に固着可能な固体、液体もしくは気体により形成される薄膜;またはセンサーチップ上に形成された流路内に溶解もしくは浮遊する物質により形成される薄膜である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱応答性測定方法。
  7. 気体中および液体中それぞれで、前記分析対象薄膜の温度に対する膜厚変化を測定することにより、当該液体が分析対象薄膜の膜厚に与える影響と当該液体によらずに熱が分析対象薄膜の膜厚に与える影響とを分析することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法。
  8. 前記膜厚算出工程により、非接触測定による物質の熱膨張係数、水和性被膜の熱膨張係数、熱ヒステリシス、熱緩和時間、熱遅延時間、LCST、UCST、相転移、熱ゆらぎ、吸水性、吸湿性または水和性について分析することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法。
  9. 前記薄膜膜厚測定装置が反射干渉分光法(RIfS)に基づくものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱応答性測定方法。
  10. センサーチップの表面に形成された分析対象薄膜について、熱応答性測定を行うためのプログラム温度調節手段を備えることを特徴とする、薄膜膜厚測定装置。
  11. 前記薄膜膜厚測定装置が反射干渉分光法(RIfS)に基づくものである、請求項10に記載の薄膜膜厚測定装置。
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