JP6205097B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、スピノーダル分離模様の連続多孔構造を有する膜が提案されている(特許文献1参照)。また、各種触媒の担持体、電子写真のトナー、表示機器などの電子材料、クロマトグラフィー、吸着材などとして、多孔質球状粒子が知られている(特許文献2参照)。また、微生物、細菌、酵素に代表される活性物質の固定化担体として、中空および多孔質のカプセル壁を有し、カプセル壁の多孔質が、カプセルの内部の中空と微細孔を通してつながっている構造のマイクロカプセルが提案されている(特許文献3参照)。また、カプセル樹脂壁材の緻密性を制御することにより、所望の徐放特性を有するマイクロカプセルが提案されている(特許文献4参照)。さらに、活性物質のバインダーを多孔構造とする方法として、無機塩や澱粉等の有機物を造孔剤として用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかし、従来のマイクロカプセルは中空部と、それを覆う外殻とからなり、カプセル内部は中空であり活性物質を内部に担持するスペースおよび内部表面積は限られている。
また、生理的活性が強い活性物質の場合、直接人体に接触したり吸引されたりするのを防ぐ必要がある。この場合、ポリマー等の薄膜で活性物質の表面を覆う必要があるが、被覆するポリマーに連通孔がないと活性物質が有効に働かないという問題がある。
さらに、ポリマー(C)は活性物質を被覆し、溶媒(D)で除去できる物質でなければならない。通常、溶媒(D)には水が用いられるため、ポリマー(C)には水溶性ゲルが用いられるのが一般的である。水溶性ゲルは分離回収が難しく、回収するには、蒸留分離、乾燥、輸送などの単位操作を含む複雑なプロセスを必要とする。このため、濃縮後に系外にパージして活性汚泥などで別途処理することが現実的と考えられ、これは製造コストの増加につながる。
また、成形体に関しては、多孔質のポリマー成形体、および多孔質ポリマー中に形成される複数のセル内に上記活性物質が内包される成形体が、本発明により得られる。以下においては、特に後者の製造方法を詳述する。前者の製造方法に関しては、以下の説明において、ドープに活性物質を含有させない点を除いて同様である。
(ポリマー(A))
本発明の成形体は、ポリマー(A)により形成される。ポリマー(A)として疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーが挙げられる。疎水性ポリマーとして、アラミドポリマー、アクリルポリマー、ビニルアルコールポリマー、セルロースポリマーなどが挙げられる。親水性ポリマーとして、デキストリン、水溶性澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性酢酸セルロース、キトサンなどが挙げられる。
本発明の成形体は、ポリマー自体に細孔を有するポリマー(A)により形成されている。細孔は他の細孔とポリマー(A)中で連通しており、細孔同士が連結した網目構造を形成している。細孔の孔径は1nm〜10μm、好ましくは10nm〜500nmの範囲にある。細孔は、ドープをポリマー(A)の貧溶媒である溶媒(D)を含有する凝固液中で凝固させることにより相分離現象により形成される。細孔は、走査型電子顕微鏡写真、透過型電子顕微鏡写真により観察することができる。
本発明の成形体中には複数のセルが形成される。セル中には活性物質が内包されている。セルの形状は一定ではない。大きさは活性物質を含むことが出来る大きさである。本発明の成形体においては、各セルの内壁と活性物質の大部分とは、実質的に接触していない。
活性物質は、金属酸化物、金属、無機物、鉱物、合成樹脂および生物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。金属酸化物として、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、シリカなどが挙げられる。金属としては、金、白金、銀、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル、マンガンなどが挙げられる。無機物として、活性炭、ハイドロタルサイト、石膏、セメントなどが挙げられる。鉱物として雲母などが挙げられる。合成樹脂として、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンスルサイドなどが挙げられる。生物として真菌(酵母など)や細菌(大腸菌など)などの微生物、遊離細胞(赤血球、白血球など)などが挙げられる。
なお、包埋ゲルは、必要に応じて、成形後に水などの溶剤で除去することもできる。
本発明の成形体は、球状、楕円状のような塊状のもの、紐状、パイプ状、中空糸状のような繊維状のもの、また膜状のものが好ましい。
本発明の成形体の製造方法は、ドープを、凝固液を用いた凝固工程において凝固させることにより多孔質ポリマーを形成する成形体の製造方法であって、
(1)ドープは、ポリマー(A)と、ポリマー(A)を溶解する溶媒(B)と、凝固工程においてポリマー(A)の凝固状態を制御する凝固制御剤(C)を含有し、
(2)凝固液は、上記ポリマーの貧溶媒である溶媒(D)を含有することを特徴とするものである。
また、
(1A)ドープは、活性物質をさらに含有し、
(3)多孔質ポリマー中に形成される複数のセル内に上記活性物質が内包されることを特徴とするものである。
ポリマー(A)、活性物質は成形体の項で説明した通りである。ドープ中に2種以上の活性物質を含有させることもできる。
溶媒(B)は、ポリマー(A)の良溶媒である。良溶媒とは一般に言われるように、ポリマーに対し大きな溶解能を有する溶媒である。
なお、上記において、分子間結合とは物理的結合であり、ファンデルワールス力、イオン結合、水素結合および静電引力に代表される電荷や双極子により発生する電気的親和性による引力、さらには疎水性相互作用などの、いわゆる非共有結合による結合を意味し、共有結合に代表される化学的結合は含まない。特に、分子間結合としてファンデルワールス力によりポリマー(A)と結合する場合に、凝固工程におけるポリマー(A)の凝固状態の制御性は顕著となる。
ポリマー(A)がポリメタフェニレンイソフタルアミドであるとき、溶媒は水が好ましい。またポリマー(A)がポリ乳酸であるとき、溶媒はミネラルオイルが好ましい。凝固制御剤(C)は好ましくは50〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%の溶媒を含有する。他の成分は、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルスルホオキサドである。凝固制御剤(C)は、界面活性剤を含有していても良い。界面活性剤としてアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜16の直鎖モノアルキル第4級アンモニウム塩、炭素数20〜28の分岐アルキル基を有する第4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキル基及びアシル基が8〜18個の炭素原子を有するアルキルアミンオキシド、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド(EO)等を挙げることができる。界面活性剤の含有量は、溶媒100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。
なお、凝固制御剤(C)は、後述する凝固液と同じものであっても良い。特に、回収プロセスを考慮した場合、凝固液と同じものとすることで、回収コストをより低減することが可能となる。
溶媒(B)にポリマー(A)を溶解させ、凝固制御剤(C)を加えることによりポリマー溶液が得られる。そして、このポリマー溶液に、活性物質を加えて良く撹拌することで、ドープが得られる。
凝固液は、ポリマー(A)の貧溶媒である溶媒(D)を含有する。貧溶媒とは一般に言われるように、ポリマー(A)に対し溶解能を僅かしか持たない溶媒である。ポリマー(A)がポリメタフェニレンイソフタルアミドであるとき、溶媒(D)は水が好ましい。またポリマー(A)がポリ乳酸であるとき、溶媒(D)はミネラルオイルが好ましい。凝固液は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%の溶媒(D)を含有する。他の成分は、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルスルホオキサドである。
凝固液は、界面活性剤を含有していても良い。界面活性剤としてアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜16の直鎖モノアルキル第4級アンモニウム塩、炭素数20〜28の分岐アルキル基を有する第4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキル基及びアシル基が8〜18個の炭素原子を有するアルキルアミンオキシド、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド(EO)等を挙げることができる。界面活性剤の含有量は、溶媒(D)100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。凝固液の温度は、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは20〜50℃である。
本発明の成形体を得るには特殊な装置は不要である。塊状成形体は、ドープを、凝固液中に添加することにより製造することができる。例えば、ドープを凝固液中にスプレー、注射器などで滴下させるだけでよい。また、繊維状の成形体は、凝固液中にノズルで吐出して巻き取ることで製造できる。また、繊維状、紐状、パイプ状の成形体は、空中からマイクロシリンジ等でドープを吐出しながらマイクロシリンジ等を水平に移動させて、ドープを凝固液中に投入することにより得ることもできる。また、膜状成形体はキャリア物質上にドープを塗布し凝固液に浸漬することで製造できる。これらの場合、スプレーノズルの口径、塗布厚みなどを変えることにより、成形体の径や厚みを任意に調整することが可能である。
なお、当該製造方法により作製した成形体に内包される活性物質の割合は、重量比で、成形体全体の10〜99%となることが望ましい。
以下、本発明の効果を実証実験により検証する。
(ドープの調製)
室温において、ポリマー(A)である100重量部のポリメタフェニレンイソフタルアミド(PmIA)を溶媒(B)である1900重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させて、さらに、水160重量部と陰イオン性界面活性剤(花王株式会社製、製品名エマール0)を2質量部とからなる凝固制御剤を加えて、ポリマー溶液を作製した。次いで、PmIA100重量部に対して、活性物質としてハイドロタルサイト(富田製薬株式会社製、製品名TPEX)を400質量部添加し、攪拌棒で全体を充分に攪拌して、ドープを調製した。
室温において、ポリマーの貧溶媒(D)である水100重量部に陰イオン性界面活性剤(花王株式会社製、製品名エマール0)を1質量部加え、充分に溶解するまで攪拌して凝固液を調製した。
(成形加工)
室温において、ドープを1mlニードル付きマイクロシリンジに入れて、凝固液中に滴下し、直径が2〜3mmの球形成形体を得た。
作製した成形体の透過型電子顕微鏡写真を図1から図4に示す。
図1は成形体表層部の透過型電子顕微鏡写真であり、この写真から、活性物質表面の大部分は実質的に各セルの内壁と接触していないことが分かる。
上記の実証実験において用いた凝固制御剤の効果を確認するため、凝固制御剤を加えないドープを用いて、比較実験を行った。そして、得られた球形成形体を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。
図5は成形体表層部の透過型電子顕微鏡写真であり、図6は成形体中央部の透過型電子顕微鏡写真である。いずれの写真からも、活性物質表面のかなりの部分がポリマーで被覆されていることが分かる。
次に、成形体に担持された活性物質の性能を確認するための実験を行った。
この実験に用いた成形体の製造方法を以下に示す。
(ドープの調製)
室温において、ポリマー(A)である100重量部のポリメタフェニレンイソフタルアミド(PmIA)を溶媒(B)である1900重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させて、さらに、凝固制御剤(C)として水160重量部を加えて、ポリマー溶液を作製した。次いで、PmIA100重量部に対して、活性物質としてハイドロタルサイト(富田製薬株式会社製、製品名TPEX)を400質量部添加し、攪拌棒で全体を充分に攪拌して、ドープを調製した。
ポリマーの貧溶媒(D)である水を凝固液として用いた。
(成形加工)
室温において、ドープを、ギアポンプで送液し、φ0.9mmのダイから、毎分2mの吐出速度で、凝固液の中に吐出して凝固させた。凝固した成形体をハサミで3mm長に切断し、成形体Xを得た。
これらの2つ成形体XおよびYに対し、リン吸着試験を行った。
リン吸着試験は、リン濃度を0.9mgP/リットルに調整したNa2HPO4水溶液1.5リットル中に、成形体を0.5g(内ハイドロタルサイトは0.4g)添加し、室温にて撹拌した。攪拌中、定期的にNa2HPO4水溶液をサンプリングし、サンプル中のリン濃度をモリブデンブルー法にて定量した。その結果を図7に示す。
上述したように、ドープに凝固制御剤(C)を加えることで、活性物質のポテンシャルを十分に引きだすことが可能となることを確認できた。この理由を明確にするために、検証実験1と比較実験で作製したそれぞれの成形体のスキン層付近を透過型電子顕微鏡で観察した。図8は検証実験1で作製したそれぞれの成形体のスキン層付近の透過型電子顕微鏡写真であり、図9は比較実験で作製したそれぞれの成形体のスキン層付近の透過型電子顕微鏡写真である。
このように、ドープに凝固制御剤(C)を加えた場合には、スキン層は粗い構造体となるため、凝固液の内部浸透が速く、したがって、活性物質表面でも微細ドメインからなるポリマードメインを形成させることによって、活性物質表層のポリマー被覆を抑制できたと考えられる。一方、ドープに凝固制御剤(C)を加えなかった場合には、スキン層は緻密な構造となり、凝固液の内部浸透が極めて遅いために、ゆっくりした凝固が起こり、活性物質がポリマー(A)で被覆されたと考えられる。
以上のように、凝固制御剤(C)をドープに加えることにより、凝固工程においてポリマー(A)の凝固状態を制御することが可能となる。
最後に、本発明の特長についてまとめる。
第一に、凝固制御剤(C)をドープに含有させることで、均一な細孔構造を有する多孔質の成形体を容易に得ることができる。
特に、活性物質を成形体のセルに入れる構造においては、活性物質表面の大部分を、ポリマーが覆うことを抑制できるため、活性物質の表面積を最大限に活用可能であり、活性物質の持つポテンシャルを十分に発揮させることができる。
特に、活性物質を成形体のセルに入れる構造においては、スキン層の孔径は、外の物質と活性物質との接触機会を決める重要なファクターであるため、活性物質の種類によって最適な孔径等の構造を制御できることは、実用上極めて重要である。
また、コスト低減のため、使用した物質の回収を行うケースにおいては、回収すべき物質の種類が減るため、蒸留塔といった回収設備への設備投資を削減できる。特に、凝固液としては一般に水が用いられるため、活性物質を覆う別のポリマーとしては、分離回収が難しい水溶性ゲルが一般に用いられる。この水溶性ゲルの回収プロセスを不要とすることで、設備コスト及び製造コストの大きな低減が可能となる。
また、本発明の活性物質を内包する成形体は、大気や水処理などの環境浄化、化学品製造などの種々の分野で応用が期待される。例えば、VOCなどを吸着する吸着剤を内部に担持させることにより、吸着処理を効率的に行うことができる。
12、22、32、42、52、62 ポリマー
13、84 隙間
34、 空孔
Claims (1)
- ドープを、凝固液を用いた凝固工程において凝固させることにより多孔質ポリマーを形成する成形体の製造方法であって、
上記ドープは、
ポリマーと
当該ポリマーを溶解する溶媒と、
上記凝固工程において、スキン層に粒子状の小さなポリマードメインが形成され、空孔の多い粗い構造体となるように、上記ポリマーの凝固状態を制御する凝固制御剤と、
を含有し、
上記凝固液は、上記ポリマーの貧溶媒である溶媒を含有し、
上記ポリマーはポリメタフェニレンイソフタルアミドであり、
上記ポリマーを溶解する溶媒はN−メチル−2−ピロリドンであり、
上記凝固制御剤は水であり、
上記ドープは活性物質として微生物又は微粉をさらに含有し、
上記多孔質ポリマー中に形成される複数のセル内に上記活性物質が内包される
ことを特徴とする成形体の製造方法。
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