次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るトーコントロールアクチュエータが組み込まれたリヤサスペンション装置の斜視図、図2は、図1の矢印A方向からみた矢視図である。なお、各図中に矢印で示される、「前後」は、車両の前後方向を示し、「上下」は、車両の上下方向(鉛直方向)を示し、「左右」は、左右方向(車幅方向)を示している。
図1及び図2に示されるリヤサスペンション装置10は、ダブルウィッシュボーン式からなり、図示しない四輪操舵車両の左後輪に配置されている。このリヤサスペンション装置10は、後輪Wを回転自在に支持するナックル12と、ナックル12を上下動可能に車体フレームに連結するアッパアーム14及びロアアーム16と、後輪Wのトー角を制御すべくナックル12及び図示しない車体フレームを連結するトーコントロールアクチュエータ(伸縮アクチュエータ)18と、後輪Wの上下動を緩衝する懸架ばね付きダンパ20を含んで構成されている。
アッパアーム14及びロアアーム16の基端は、それぞれゴムブッシュジョイント22a、22bによって図示しない車体フレームに連結されている。アッパアーム14及びロアアーム16の先端は、それぞれボールジョイント24a、24bを介してナックル12の上部及び下部に連結されている(図2参照)。
トーコントロールアクチュエータ18の基端は、ゴムブッシュジョイント(第1ブッシュ)26aを介して図示しない車体フレームに連結されている。トーコントロールアクチュエータ18の先端は、ゴムブッシュジョイント(第2ブッシュ)26bを介してナックル12の後部に連結されている。
車体フレーム側のゴムブッシュジョイント26aは、図1及び図2に示されるように、リング状のエンド部材25a内に内嵌されている。エンド部材25aの外周面には、半径外方向に向かって所定長だけ突出する突出部27がエンド部材25aと一体的に設けられている。後記する図3に示されるように、この突出部27には、有底円筒状からなり内壁に雌ねじを有するボルト挿入孔29が形成されている。一方、後輪W側のゴムブッシュジョイント26bは、後記する出力ロッド32の先端部に連結されたリング状のエンド部材25b内に内嵌されている。
なお、エンド部材25a及び突出部27は、全体として「車体側接続部」として機能するものである。また、エンド部材25bは、「ナックル側接続部」として機能するものである。
懸架ばね付きダンパ20の上端は、車体(図2に示すサスペンションタワーの上壁28)に固定されている。懸架ばね付きダンパ20の下端は、ゴムブッシュジョイント26cを介してナックル12の上部に連結されている。
トーコントロールアクチュエータ18を伸長方向に駆動すると、ナックル12の後部が車幅方向外側に押されて後輪Wのトー角がトーイン方向に変化する。一方、トーコントロールアクチュエータ18を収縮方向に駆動すると、ナックル12の後部が車幅方向内側に引っ張られて後輪Wのトー角がトーアウト方向に変化する。従って、図示しないステアリングホイールの操作による通常の前輪の操舵に加えて、車速やステアリングホイールの操舵角に応じて後輪Wのトー角を制御することで、車両の直進安定性能や旋回性能を向上させることができる。
次に、図3〜図6に基づいて、トーコントロールアクチュエータ18の構造を以下詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るトーコントロールアクチュエータの軸線L方向に沿った縦断面図、図4は、トーコントロールアクチュエータを構成する遊星歯車機構の分解斜視図、図5は、図3のV−V線に沿った拡大縦断面図、図6(a)は、キャリア側から見た弾性カップリングの拡大正面図、図6(b)は、図6(a)のVIB−VIB線に沿った拡大断面図、図6(c)は、図6(a)のVIC−VIC線に沿った拡大断面図である。
図3に示されるように、トーコントロールアクチュエータ18は、車体フレーム側に連結されるゴムブッシュジョイント26aが一体に設けられた第1ハウジング30aと、ナックル12側に連結されるゴムブッシュジョイント26bが一体に設けられた出力ロッド32を伸縮自在に支持する第2ハウジング30bとを備える。なお、第1ハウジング30a及び第2ハウジング30bは、全体として「ハウジング」として機能すると共に、以下、その両者を総称して「ハウジング30」という。
第1ハウジング30a及び第2ハウジング30bの対向部は、シール部材34を介してインロー嵌合した状態で、各々の結合フランジ36a、36bを複数のボルト38で締結することにより一体的に結合されている。
車体フレーム側のゴムブッシュジョイント26aに近接するハウジング30の端部内には、ハウジング30の軸線Lを回動中心としてハウジング30が周方向へ所定角度だけ回動することを許容する回動許容部31が設けられている。
この回動許容部31は、突出部27のボルト挿入孔29に螺入されるボルト(軸部材)33と、スクリュー部材35を介して第1ハウジング30aの端部内壁に固定される軸受部材37と、第1ハウジング30aの開口部39とエンド部材25aの突出部27との間の間隙を閉塞してシールするリング状のオイルシール41とを備える。
ボルト33は、ボルト挿入孔29の雌ねじに螺入される雄ねじを有するねじ部33aと、ねじ部33aと軸方向に沿った反対側に設けられる頭部33bと、ねじ部33aと頭部33bとの間に位置し、軸受部材37の内輪に接触して軸受部材37を保持する保持部33cとを有する。
スクリュー部材35は、リング状からなり、その外周面に形成されたねじ部(雄ねじ)が、ハウジング30の端部内壁に形成されたねじ部(雌ねじ)に対して締結される。
軸受部材37は、同軸に配置される外輪37a及び内輪37bと、外輪37aと内輪37bとの間に転動可能に配置される複数のボール37cとを有する。外輪37aは、ハウジング30(30a)の端部内壁によって保持されていると共に、内輪37bは、ボルト33の保持部33c及びエンド部材25aの突出部27の先端面によって保持されている。軸受部材37は、例えば、4点接触ベアリング等のようにアキシャル方向で剛性が高い玉軸受けが好ましい。
また、第1ハウジング30aの開口部39とエンド部材25aの突出部27との間の間隙がオイルシール41でシールされることにより、ハウジング30に対して外部からの塵埃及び水等の進入が阻止される。
回動許容部31は、このように構成されることで、車体フレーム側のエンド部材25aが、ハウジング30を軸線L周りの方向に所定角度だけ回動可能に支持している。
第1ハウジング30aの内部の室40aには、駆動源となるブラシ付きのモータ(電動機)42と、減速機として機能する遊星歯車機構44(図4参照)とが収納されている。第2ハウジング30bの内部の室40bには、弾性カップリング46と、台形ねじを用いた送りねじ機構48とが収納されている。これらのモータ42、遊星歯車機構44、弾性カップリング46、及び、送りねじ機構48は、それぞれ、トーコントロールアクチュエータ18の軸線L上に直列に配置されている。
モータ42は、第1ハウジング30a側に固定される環状のステータ50と、ステータ50内で回転可能に支持されるロータ52とを備える。モータ42の外郭は、フランジ54を有するカップ状に形成されたヨーク56と、ヨーク56のフランジ54に突き当てられて固定されるベアリングホルダ58とによって構成されている。ロータ52は、棒状の回転軸(モータ軸)60を有する。回転軸60の一端は、ヨーク56の底部に設けられたボールベアリング62aに回転自在に支持されている。回転軸60の他端は、ベアリングホルダ58に設けられたボールベアリング62bに回転自在に支持されている。
ベアリングホルダ58の内面には、回転軸60の外周面に係止されて回転軸60と一体的に回転するコミュテータ64に摺接するブラシ66が支持されている。ブラシ66から延在してブラシ66と電気的に接続される導線68は、第1ハウジング30aに設けられたグロメット70を介して第1ハウジング30aの外部に引き出されている。
図3及び図4に示されるように、遊星歯車機構44は、第1ハウジング30aの略円筒状の開口部72内に嵌合して固定されるリングギヤ74と、モータ42の回転軸60の先端に直接形成されたサンギヤ76と、リングギヤ74よりも小径で略円板状に形成されるキャリア78と、キャリア78の支持孔102に圧入されて片持ち支持される3本のピニオンピン80と、各ピニオンピン80を介して回転自在に支持され、リングギヤ74及びサンギヤ76に対して同時に噛合する3つのピニオン84とから構成されている。遊星歯車機構44は、入力部材であるサンギヤ76の回転運動を、出力部材であるキャリア78に対して減速して伝達する機能を有する。
遊星歯車機構44の出力部材であるキャリア78は、送りねじ機構48の入力部材である入力フランジ86と弾性カップリング46を介して連結されている。
キャリア78は、略円板状を呈し、弾性カップリング46に対向する円形状の第1端面79と、第1端面79の反対側でピニオン84側に臨む円形状の第2端面81とを有する。キャリア78の第1端面79には、4個の爪部85が周方向に沿って等角度離間して配置されていると共に、軸線L方向に沿って突出している。
図4に示されるように、弾性カップリング46は、例えば、シリコーンゴム等のゴム体や樹脂体等で形成されている。この弾性カップリング46は、単一の環状部46aと、複数の腕部46bとが一体的に構成されている。環状部46aは、リング状からなり、その中心に円形の貫通孔92が形成されている。複数(図4中では8つを例示)の腕部46bは、環状部46aの外周面に所定角度だけ離間して配置され、環状部46aの外周面から半径外方向に放射状に突出するように配置されている。互いに隣接する腕部46b、46bの間には、正面視して略V字状の溝部からなる谷部46cが設けられている。
弾性カップリング46の貫通孔92には、コイルスプリング94が挿通されている。このコイルスプリング94の一端は、キャリア78に当接し、コイルスプリング94の他端は、入力フランジ86に当接している(図3参照)。コイルスプリング94のばね力によってキャリア78と入力フランジ86とが互いに離間する方向に付勢されている。
弾性カップリング46の腕部46bの先端側には、複数の突出部96が設けられている。複数の突出部96は、周方向に略等角度離間して8つ配置されている。8つの突出部96のうち、キャリア78と対向する腕部46bの側面には、隣接する腕部46bの1つおきに4本の突出部96aがそれぞれ突出して配置され、入力フランジ86と対向する腕部46bの側面には、隣接する腕部46bの1つおきに4本の突出部96bがそれぞれ配置されている。
換言すると、弾性カップリング46の腕部46bの先端側には、8つの突出部96のうち、キャリア78側に向かって突出する突出部96aと、入力フランジ86側に向かって突出する突出部96bとが交互に配置されている。キャリア78側に向かって突出する突出部96aは、キャリア78の第1端面79と当接可能に設けられていると共に、入力フランジ86側に向かって突出する突出部96bは、入力フランジ86の対向面98と当接可能に設けられている。
図3に示されるように、入力フランジ86は、略円板状からなり、その外周部の表裏両面を一対のスラストベアリング88a、88bに挟持されることで、回転自在に支持されている。一対のスラストベアリング88a、88bは、第2ハウジング30bの内周面に締結される環状のロックナット90により第2ハウジング30bに保持されている。一対のスラストベアリング88a、88bのうち、一方のスラストベアリング88bは、第2ハウジング30bと入力フランジ86との間のスラスト荷重を支持し、他方のスラストベアリング88aは、ロックナット90と入力フランジ86との間のスラスト荷重を支持する。
図4に示されるように、軸線L方向においてキャリア78と対向する入力フランジ86の対向面98には、4個の爪部100が周方向に沿って等角度離間して配置されていると共に、弾性カップリング46側(キャリア78側)に向かって所定長だけ突出している。なお、キャリア78の第1端面79に設けられる4個の爪部85と、入力フランジ86の対向面98に設けられる4個の爪部100とは、周方向においてその位相が約45度だけずれるように配置されている(図5参照)。
さらに、図6(a)に示されるように、弾性カップリング46の腕部46bの径方向外端部には、キャリア78側と入力フランジ86側とに向かって交互に突出する複数の突出部96が設けられている。この場合、図6(b)、図6(c)に示されるように、複数の突出部96が支点となって腕部46bを弾性変形(撓曲)させる。このとき支点となる突出部96に発生する反力が、入力フランジ86を基準としてキャリア78を軸線L方向に付勢することで、キャリア78の倒れを防止することができる。なお、図5に示されるように、複数の突出部96a、96bは、キャリア78の爪部85と入力フランジ86の爪部100との間に周方向に沿って配置されている。
ピニオンピン80とピニオン84との間には、例えば、すべり軸受けやニードル軸受け等の軸受部材(図示せず)が介装されている。この軸受部材によって回転自在に支持されるピニオン84の厚さは、ピニオンピン80の軸方向の長さよりも大きく設定されている。このため、ピニオン84の端面(外周に形成された歯部と略直交する面)が、キャリア78の第2端面81とリングギヤ74の内径フランジ部74aとの間で挟持されることによって、ピニオン84の取付姿勢を制御することができる。
弾性カップリング46の8つの谷部46cには、キャリア78の4個の爪部85が一つおきに係合すると共に、キャリア78の爪部85と異なる位相で、入力フランジ86の4個の爪部100が一つおきに係合する。すなわち、図5に示されるように、弾性カップリング46の8つの谷部46cには、キャリア78の爪部85と入力フランジ86の爪部100とが周方向に沿って交互に係合する。
従って、キャリア78の回転トルクは、キャリア78の爪部85から、弾性カップリング46の腕部46bと、入力フランジ86の爪部100を介して、入力フランジ86に伝達される。その際、弾性体で構成された弾性カップリング46が、その弾発力によって弾性変形することで、キャリア78及び入力フランジ86間の軸線のズレ(芯ズレ)を吸収すると共に、回転トルクの急変を吸収して円滑な動力伝達を遂行することができる。
図4に示されるように、キャリア保持部材106は、金属板をプレス加工したものであり、図示しないボルトを介してリングギヤ74に締結される。このキャリア保持部材106は、環状の平板からなる本体部106aと、本体部106aの内周を断面L字状に折り曲げたフランジ部106bとを有する。
図3に示されるように、第2ハウジング30bの軸線L方向の中間部の内周面には、第1スライドベアリング108aが固定されている。この第1スライドベアリング108aは、第2ハウジング30bに対する出力ロッド32の回転運動を図示しないスプラインやキー等を用いて規制することで、出力ロッド32を軸線L方向のみに摺動変位可能とする軸受である。また、第2ハウジング30bの軸線L方向の端部に螺合するエンド部材110の内周面には、第2スライドベアリング108bが固定されている。この第1スライドベアリング108a及び第2スライドベアリング108bによって、出力ロッド32が軸線L方向に沿って摺動自在に支持されている。
送りねじ機構48は、入力フランジ86の回転運動を出力ロッド32の往復直線運動に変換する機能を有する。図3に示されるように、この送りねじ機構48は、入力フランジ86と一体に形成され外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部材(送りねじ軸)112と、雄ねじ部材112の雄ねじと螺合する雌ねじを内周面の一部に有し、中空の出力ロッド32の内周面に嵌合して出力ロッド32に固定される雌ねじ部材(送りナット)114とを備える。
図3に示されるように、雄ねじ部材112の外周面には、雄ねじ部112aが設けられている。この雄ねじ部112aは、山部129と谷部131とを有する。雌ねじ部材114は、略円筒体からなり、ロックナット115を介して出力ロッド32の内周面に固定されている。雌ねじ部材114の内周面には、雌ねじ部114aが設けられている。雌ねじ部114aは、山部121と谷部123と有する。なお、雄ねじ部112aと雌ねじ部114aとの間には、図示しない潤滑油が塗布されている。
出力ロッド32の外周には、環状のストッパ116が装着されている。出力ロッド32が伸長方向に向かって最大位置まで変位したとき、ストッパ116が第2ハウジング30bに固定されたエンド部材110と当接することにより、その変位が規制されてストッパ機能が発揮される。このストッパ116を設けることにより、出力ロッド32が第2ハウジング30bから脱落することを確実に防止することができる。
第2ハウジング30bと出力ロッド32の間には、第2ハウジング30bと出力ロッド32との隙間内に水(水分)や塵埃等が進入することを防止するためにシール機構が設けられている。このシール機構は、伸縮可能な蛇腹部を有するゴム製のブーツ120と、ブーツ120の両端の嵌合部を締結する異径のバンド122a、122bとから構成されている。ブーツ120の一端部は、第2ハウジング30bの端部外周面に形成される環状段部118に嵌合され、ブーツ120の他端部は、出力ロッド32に形成された環状溝119に嵌合するように設けられている。
出力ロッド32が伸長変位すると、第1ハウジング30a及び第2ハウジング30b内の室40a、40bの容積が増加し、これとは反対に出力ロッド32が収縮変位すると、第1ハウジング30a及び第2ハウジング30b内の室40a、40bの容積が減少する。このため、室40a、40b内の圧力が変動してトーコントロールアクチュエータ18の円滑な作動を妨げるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、中空の出力ロッド32の内部空間とブーツ120の内部空間とが、出力ロッド32に形成された通気孔124を介して連通しているため、圧力変動がブーツ120の変形により緩和され、トーコントロールアクチュエータ18を円滑に作動させることができる。
第2ハウジング30bには、トーコントロールアクチュエータ18を伸縮制御する際、出力ロッド32のストローク位置(変位量)を検出して図示しない制御装置に検出信号をフィードバックするストロークセンサ126が配設されている。このストロークセンサ126は、出力ロッド32の外周面にボルト128を介して固定される永久磁石130と、永久磁石130の位置を磁気的に検出するコイル等の検出部132が収納されたセンサ本体134とを備える。第2ハウジング30bには、出力ロッド32の変位に伴って永久磁石130との干渉を回避するために、軸線L方向に延在する長溝(開口)136が形成されている。
本実施形態に係るトーコントロールアクチュエータ18が組み付けられたリヤサスペンション装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
図3において、後輪Wのトー角を変更すべく図示しない制御装置から出力される駆動信号に基づいてモータ42を駆動すると、モータ42の回転軸60に形成されたサンギヤ76の回転運動が、遊星歯車機構44(サンギヤ76と同時に噛合するリングギヤ74及びピニオン84)で減速されてキャリア78に出力される。キャリア78の回転運動は、弾性カップリング46を介して入力フランジ86に伝達され、入力フランジ86と一体的に連結された雄ねじ部材112を回転させる。雄ねじ部材112が回転すると、雄ねじ部材112に螺合する雌ねじ部材114が軸線L方向に変位し、雌ねじ部材114に連結された出力ロッド32が第2ハウジング30bから進退動作することで、トーコントロールアクチュエータ18が伸縮して後輪Wのトー角が変更される。
本実施形態では、車体側に接続されるゴムブッシュジョイント26aとハウジング30との間で、軸線L方向に沿った第1ハウジング30aの端部に回動許容部31を配置している。送りねじ機構48によってモータ42の回転運動を直線往復運動に変換する場合、例えば、運動の変換ロスによって回転方向の振動が発生するが、回動許容部31を介してハウジング30の周方向への回動動作が許容されることで、回転方向の振動が吸収される。従って、本実施形態では、送りねじ機構48で発生した回転方向の振動が車体へ伝達されることを、回動許容部31によって遮断することができる。この結果、本実施形態では、伸縮アクチュエータ18から車体側へ入力される振動が減少し、それによって発生する作動音が低減するため、静粛性を向上させることができる。
換言すると、例えば、モータの回転運動を往復直線運動に変換する送りねじ機構を備えた従来のアクチュエータでは、送りねじ軸と送りナットとの間の摩擦係数がくさび効果(wedge effect)により不安定となる場合、例えば、第1スライドベアリング108aのスプライン等による回転規制手段を設けることで、スティックスリップのような回転方向の振動の振幅を制限することが可能である。しかしながら、このような回転規制手段を設けた場合であっても、スプラインの軸(溝付き軸)と穴(溝付き穴)との間での円滑な摺動動作を確保するためには、回転方向にも僅かなガタ成分が必要であり、従来のアクチュエータでは、このガタ成分の範囲内で回転方向の振動を抑制することが困難である。
そこで、本実施形態では、車体側のゴムブッシュジョイント26aに最も近接しハウジング30の端部に設けられた軸受部材37が前記したスプラインでは除去しきれない回転方向の振動を遮断し、車体側に連結されるゴムブッシュジョイント26aによってさらに振動を減衰させることができる。この結果、本実施形態では、従来のアクチュエータで発生していた軸線L周りの回転方向の振動が車体側へ伝達されることを遮断することで、商品性の良好なトーコントロールアクチュエータ18を得ることができる。
また、本実施形態では、回動許容部31によって、出力ロッド32への負荷、及び、第2ハウジング30bの周方向の回転を規制する第1スライドベアリング108a、第2スライドベアリング108bへの負荷を低減することができる。これにより、本実施形態では、ガタの量が恒久的に低減し、打音の少ない商品性の良好なトーコントロールアクチュエータ18を得ることができる。また、本実施形態では、雄ねじ部材(送りねじ軸)112と雌ねじ部材(送りナット)114とのフリクションによるスティックスリップ(自励振動)の回転運動が恒久的に抑制され、異音の少ない商品性の良好なトーコントロールアクチュエータを得ることができる。
さらに、本実施形態では、雄ねじ部材112の周方向への回転運動が規制されていると共に、雄ねじ部材112と雌ねじ部材114との間の摩擦によって回転方向に変位する運動が抑制されているため、モータ42の回転運動が直ちに直線往復運動に変換される。これにより、トーコントロールアクチュエータ18の応答性が向上し、精度の高い制御を遂行することが可能となる。この結果、トーコントロールアクチュエータ18を車両に搭載することで、操縦性の良好な車両を得ることができる。
さらにまた、本実施形態では、エンド部材25aに連結されるボルト33と、このボルト33を回動可能に軸支する軸受部材37とからなる簡素な構造によって回動許容部31を構成することができる。この結果、回動許容部31を備えたトーコントロールアクチュエータ18を容易に製造することができる。
さらにまた、本実施形態では、例えば、アッパアーム14、ロアアーム16等のサスペンション部材の上下動作により、トーコントロールアクチュエータ18の取付点に相対的な変位が発生した場合であっても、回動許容部31を介してトーコントロールアクチュエータ18がハウジング30の周方向に回動可能に設けられているため、ハウジング30の両端に配置されたゴムブッシュジョイント26a、26bに付与される軸線L周りのストレスを低減することができる。これにより、ゴムブッシュジョイント26a、26bの耐久性が向上して、より長期間にわたって車両の静粛性を確保することができる。
さらにまた、車体フレーム側への取付点でもあるゴムブッシュジョイント26aの反力が低減することで、車体フレーム側の取付点におけるストレスが低減する。この結果、車体フレーム側での発生応力が低減するため、その分だけ車両重量を軽量化することができ、車両重量の軽量化にともなって燃費を良くすることができる。
さらにまた、本実施形態では、車体フレーム側への取付点において、例えば、寸法誤差や組立誤差が発生した場合であっても無理な力がほとんど付与されることがないため、組立作業が容易となる。この結果、生産性を向上させることができる。
さらにまた、本実施形態では、第1スライドベアリング108a、第2スライドベアリング108bを介して、第2ハウジング30bと出力ロッド32との相対的な回転が規制されている。これにより、永久磁石130と検出部132との位相が回転方向にずれることが阻止され、検出部132における検出精度が向上し、精度の良い車両制御が可能となる。
さらにまた、本実施形態では、くさび効果によるスティックスリップの回転運動を抑制することができる。これにより、無駄な回転振動を発生させるエネルギが抑制されるため、モータ42の消費電力を低減させモータ42の小型化を達成することができると共に、生産性を向上させて製造コストを低減することができる。
なお、本実施形態では、車両のリヤサスペンション装置10に組み込まれるトーコントロールアクチュエータ18に基づいて説明しているが、これに限定されるものではなく、出力部材を往復動作させる他の伸縮アクチュエータにも適用することができる。